説明

シリンダ装置

【課題】コロイダルダンパとして機能するシリンダ装置の実用性を向上させる。
【解決手段】可撓性を有し、ハウジング42とピストン44とによって区画形成されたチャンバ54の内部に密封空間を区画形成するとともにその密封空間に多孔質体100と作動液の一部84とをそれらが混合した状態で密封し、自身が弾性変形することによって、密封空間の容積の変化を許容する密封部材80を備えさせ、2つの物26,32の相対動作に応じて、多孔質体100の細孔へ流入している作動液84の量が変化することによって、それら2つの物26,32の相対動作を減衰させることで、コロイダルダンパとして機能させるだけでなく、多孔質体100の細孔に作動液84が流入した状態によって生じる密封空間内の圧力と密封部材80の弾性反力との両者に依存して、2つの物26,32のうちの上方側に位置する物32を支持するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下配置されて相対動作する2つの物の間に設けられたシリンダ装置に関し、特に、細孔を有する多孔質体と作動液とが収容されてコロイダルダンパとしても機能するシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献に記載されているシリンダ装置は、疎水化多孔質シリカゲル等の多孔質体と作動液とが混合されたコロイド溶液を内部に収容しており、多孔質体が有する細孔への作動液の流入・流出に伴って、伸縮するように構成されている。そして、その細孔に対して作動液が表面張力に抗して流入することから、作動液の細孔への流入に伴って、シリンダ装置内の圧力が高くなるように構成されている。また、細孔に対し、作動液が表面張力の作用下で繰り返し流入・流出することにより、外部から加えられたエネルギを散逸させて、ダンパとして機能するように構成されている。内部にコロイド溶液を収容するシリンダ装置は、コロイダルダンパと呼ばれ、上述したような特性を有している。
【0003】
また、このコロイダルダンパは、上述したように、多孔質体の細孔への作動液の流入に伴ってシリンダ装置内の圧力が高くなるように構成されている。このため、コロイダルダンパは、多孔質体の細孔に作動液が流入した状態におけるそのシリンダ装置内の圧力によって、シリンダ装置の上方側に連結された物を支持することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−118571号公報
【特許文献2】特開2008−309250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載のコロイダルダンパとして機能するシリンダ装置は、未だ開発途上であり、改良の余地を多分に残すものとなっている。そのため、種々の改良を施すことによって、そのコロイダルダンパとして機能するシリンダ装置の実用性が向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高いコロイダルダンパとして機能するシリンダ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のシリンダ装置は、上下に配置されて相対動作する2つの物にそれぞれ連結された(A)ハウジングと(B)ピストンと、(C)それらハウジングとピストンとによって区画形成されたチャンバの内部に収容された多数の細孔を有する多孔質体および作動液と、(D)可撓性を有し、チャンバの内部に密封空間を区画形成するとともにその密封空間に多孔質体と作動液の一部とをそれらが混合した状態で密封し、自身が弾性変形することによって、密封空間の容積の変化を許容する密封部材とを備え、(i)多孔質体の細孔に作動液が流入した状態によって生じる密封空間内の圧力と密封部材の弾性反力とに依存して、2つの物のうちの上方側に位置する物を支持するとともに、(ii)2つの物の相対動作に応じて、多孔質体の細孔へ流入している作動液の量が変化することによって、それら2つの物の相対動作を減衰させることで、コロイダルダンパとして機能するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシリンダ装置は、相対動作する2つの物の間で、バネおよびダンパの両者として機能するものとなっており、そのバネとしての機能を、多孔質体の細孔に作動液が流入した状態によって生じる密封空間内の圧力だけでなく、密封部材の弾性反力にも依存して、発揮させるものとなっている。つまり、本発明のシリンダ装置は、比較的大きな支持力を発生させることが可能となるため、シリンダ装置と並列的なスプリングを別途設けることなく、自身のみによって比較的大きな荷重を受け持つことが可能となる。そのような利点を有することで、本発明のシリンダ装置は、実用性の高いものとなる。
【発明の態様】
【0008】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0009】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、その請求項1に(2)項の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(3)項の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(11)項および(12)項の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項4に(13)項の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項5に(14)項の技術的特徴を付加したものが請求項6に、それぞれ相当する。
【0010】
(1)上下に配置されて相対動作する2つの物の間に設けられたシリンダ装置であって、
前記2つの物の一方に連結されるハウジングと、
前記2つの物の他方に連結されて前記ハウジング内を摺動可能なピストンと、
前記ハウジングと前記ピストンとによって区画形成されたチャンバの内部に収容された多数の細孔を有する多孔質体および作動液と、
可撓性を有し、前記チャンバの内部に密封空間を区画形成するとともにその密封空間に前記多孔質体と前記作動液の一部とをそれらが混合した状態で密封し、自身が弾性変形することによって、前記密封空間の容積の変化を許容する密封部材と
を備え、
前記多孔質体の細孔に前記作動液が流入した状態によって生じる前記密封空間内の圧力と前記密封部材の弾性反力とに依存して、前記2つの物のうちの上方側に位置する物を支持する力である支持力を発生させるとともに、
前記2つの物の相対動作に応じて、前記多孔質体の細孔へ流入している前記作動液の量が変化することによって、それら2つの物の相対動作を減衰させることで、コロイダルダンパとして機能するシリンダ装置。
【0011】
本項に記載されている、多孔質体と作動液とが混合されたコロイド溶液が内部に収容されたシリンダ装置は、コロイダルダンパと呼ばれ、多孔質体が有する細孔に対し、表面張力の作用下で作動液が繰り返し流入・流出することにより、外部から加えられたエネルギを散逸させるように構成されるものである。また、コロイダルダンパは、多孔質体の細孔への作動液の流入に伴ってチャンバ内の圧力が高くなるように構成されており、多孔質体に作動液が流入した状態におけるチャンバ内の圧力によって、自身の上方側に位置する物を支持する支持力を発生させることが可能である。
【0012】
本項に記載のシリンダ装置も、その支持力を発生させるものとされており、さらに、その支持力を、多孔質体の細孔に作動液が流入した状態によって生じる密封空間内の圧力だけでなく、その状態によって生じる密封部材の弾性反力にも依存して、発生させるように構成されている。つまり、本項のシリンダ装置は、自身が発生させる支持力が、上記密封空間内の圧力と密封部材の弾性反力との両者に依存しているため、比較的大きな支持力を発生させることが可能であり、比較的大きな荷重の物を支持することが可能となる。
【0013】
また、密封空間内の圧力に依存した支持力は、コロイド溶液の特性に依存する。詳しくは、多孔質体の粒子径,それが有する細孔の径や、多孔質体が疎液化処理されたものである場合には、その疎液化処理の程度(疎液化率等)などに依存する。それらには、ばらつきがあるために、多孔質体の細孔への作動液の流入量と密封空間内の圧力との関係、つまり、シリンダ装置のストローク量と密封空間内の圧力との関係が、設計されたものと異なる場合がある。それに対して、密封部材の弾性反力に依存した支持力は、その密封部材の剛性に依存することになる。密封部材は、製造の過程において大きな誤差が生じることはないため、シリンダ装置のストローク量と密封部材の弾性反力との関係は、比較的容易に、設計上要求されるものとすることができる。
【0014】
したがって、シリンダ装置のストローク量と密封空間内の圧力との関係にばらつきが生じても、シリンダ装置のストローク量と密封部材の弾性反力との関係を適切化することによって、シリンダ装置のストローク量と支持力との関係を、設計上要求されるものとすることが可能である。具体的に言えば、密封部材の剛性を適切化することによって、例えば、シリンダ装置が規定された長さとされている場合に発生させる支持力の大きさを設計された大きさとすることや、シリンダ装置のストローク量の変化に対する支持力の変化の勾配(シリンダ装置のバネ定数と考えることができる。)を設計された変更勾配とすることが可能である。
【0015】
本項に記載のシリンダ装置には、「多孔質体」および「作動液」が混合されたコロイド溶液が用いられる。それら「多孔質体」および「作動液」の種類は、特に限定されないが、互いに親和性が低く、容易に結合しにくいものどうしであること、平たく言えば、多孔質体が作動液に溶けにくいことが望ましい。その「多孔質体」には、nm(ナノメータ)オーダの細孔を有するμm(マイクロメータ)オーダの粒状物(マイクロ粒子)を採用可能であり、例えば、疎液性を有して作動液に容易に溶けないものや、疎液性の物質により被覆されたものを採用することが可能である。具体的には、例えば、その多孔質体には、シリカゲル,アエロゲル,セラミックス,ゼオライト,多孔質ガラス,多孔質ポリスチレン等を採用可能である。また、「作動液」には、例えば、水,水と不凍剤(エタノール,エチレングリコール,プロピレングリコール,グリセリン等)との混合液,水銀,溶融金属等を採用可能である。なお、水は表面張力が比較的大きいため、作動液として水を採用した場合には、多孔質体の細孔に水が流入・流出する際に、その大きな表面張力によって、大きな力を発生させるコロイダルダンパとなる。なお、作動液に水を用いる場合には、上述したように、多孔質体には、親水性の低いものや、疎水化処理されたものを用いることが望ましい。
【0016】
本項に記載のシリンダ装置は、コロイド溶液が密封部材によって形成される空間に密封されており、多孔質および作動液がその密封空間外へは流出しないように構成されている。つまり、本項の態様は、多孔質体がピストンと擦れ合うことがなく、ハウジング内の摩耗を防止することが可能である。したがって、本項の態様によれば、耐久性に優れたコロイダルダンパが実現することになる。
【0017】
本項に記載の態様においては、密封部材によって密封空間内に隔離された作動液の一部を除いた作動液の残部は、チャンバの内部でかつ密封空間の外部に存在することになる。つまり、本項の態様は、ハウジングおよびピストンに加わる力を、密封部材に、作動液の残部である密封空間外作動液を介して伝達するように構成された態様である。本項に記載の「作動液の一部(以下、「密封空間内作動液」という場合がある。)」と、上記の「作動液の残部(密封空間外作動液)」とは、同一の液体であってもよく、性質において互いに異なる液体であってもよい。なお、ハウジングおよびピストンに加えられた力の密封部材への伝え易さという観点からすれば、上記の密封空間外作動液には、粘度の高いものを採用することが望ましい。
【0018】
本項に記載の「密封部材」は、コロイド溶液を密封した状態を保持しつつ、多孔質体への作動液の流入・流出に伴うコロイド溶液の体積の変化を許容するためのものである。その密封部材は、密封部材のみでコロイド溶液を密封する空間を形成するものであってもよく、ハウジングと協同してコロイド溶液を密封する空間を形成するようなものであってもよい。詳しく言えば、密封部材のみでコロイド溶液を密封する空間を形成する態様は、例えば、コロイド溶液を内部に充填させる容器状の密封部材とすることで実現可能である。また、密封部材がハウジングと協同してコロイド溶液を密封する空間を形成する態様は、例えば、ハウジング内面に可撓性のある部材の外周部を固着させることで実現可能である。なお、密封部材は、弾性変形することによって、密封空間内の容積を変化させるものであり、例えば、板状のもの,袋状のもの,伸縮性を有するもの等を採用可能である。また、それの材質も特に限定されず、ゴムや金属等により製造されたものを採用可能である。ちなみに、比較的大きな荷重を受け持つような場合には、比較的大きな弾性反力を発生させる金属製のものを採用することが望ましい。
【0019】
(2)前記密封部材が、蛇腹状に形成された蛇腹部を有するものである(1)項に記載のシリンダ装置。
【0020】
本項に記載の態様は、密封部材の形状に限定を加えた態様である。本項の態様は、密封部材が、蛇腹部の伸縮によって弾性反力を発生させるように構成された態様である。本項の態様においては、例えば、蛇腹部が伸縮する方向が、ピストンが摺動する方向と同じになるように、密封部材をハウジング内に収容することで、密封部材が伸縮してもハウジングの内壁にほとんど当接することはなく、密封部材の弾性反力を、確実にハウジングおよびピストンに作用させることが可能である。なお、本項の態様においては、蛇腹部の厚みや蛇腹部を構成する山部と谷部との数を変更することで、密封部材の剛性、つまり、シリンダ装置のストローク量と密封部材の弾性反力との関係を変更することが可能であり、蛇腹部の厚みや蛇腹部を構成する山部と谷部との数を適切化することで、シリンダ装置のストローク量と支持力との関係を適切化することが可能である
【0021】
(3)前記密封部材が、
自身のみによって前記密封空間を形成して前記多孔質体と前記作動液の一部とをそれらが充填された状態で密封する密封容器である(1)項または(2)項に記載のシリンダ装置。
【0022】
本項に記載の態様は、密封部材が容器とされ、自身のみによってコロイド溶液を収容するものとされている。そのため、本項の態様のシリンダ装置は、密封容器にコロイド溶液を充填したユニットを先に準備し、そのユニットをハウジングに組み付けるようにすることで、比較的簡便な組立作業によって構成することが可能となる。
【0023】
(4)前記作動液が、水である(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
【0024】
(5)前記多孔質体が、疎水化処理された多孔質シリカゲルである(4)項に記載のシリンダ装置。
【0025】
上記2つの項に記載の態様は、コロイド溶液の構成に限定を加えた態様である。先にも述べたように、水は表面張力が大きいため、コロイダルダンパの作動液として好適である。そして、作動液を水とした場合には、多孔質体は、疎水性を有するものであることが望ましく、後者の態様は、その望ましい態様である。
【0026】
(6)前記密封空間に密封された前記作動液の一部を、密封空間内作動液とした場合に、
前記作動液の残部が、密封空間外作動液として、前記チャンバ内部における前記密封空間の外部に収容された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
【0027】
上記「密封空間内作動液」と「密封空間外作動液」とは、先にも述べたように同一の液体であってもよく、例えば、性質,特性,種類等において互いに異なる液体であってもよい。
【0028】
(7)前記密封空間内作動液と前記密封空間外作動液とが、性質において互いに異なる(6)項に記載のシリンダ装置。
【0029】
先にも述べたように、コロイド溶液に混合される密封空間内作動液は、大きな表面張力を有するものであることが望ましく、密封空間外作動液は、ハウジングおよびピストンに加わる力を密封空間に効率的に伝達可能なものであることが望ましい。本項の態様は、そのような要望等に応じて、密封空間内作動液と密封空間外外作動液とを、それぞれ適切な液体を採用した態様とすることが可能である。本項の態様において、密封空間内作動液と密封空間外作動液とは、例えば、水とオイルのように種類の異なる液体であってもよく、高粘度のオイルと低粘度のオイルのように、同じ種類の液体で性質,特性が異なるものであってもよい。
【0030】
(8)前記密封空間外作動液が、オイルである(6)項または(7)項に記載のシリンダ装置。
【0031】
本項に記載の態様は、密封空間外作動液を限定した態様であり、例えば、鉱物油や、合成油であるシリコンオイル等を採用可能である。例えば、本項の態様と、先に述べた密封空間内作動液を水とした態様とを合わせた構成のコロイダルダンパを考える。一般的に、オイルの粘度は水の粘度より高いため、ハウジングおよびピストンに加わる力を、密封空間内のコロイド溶液に効率的に伝達することが可能である。また、例えば、本シリンダ装置が、上方側に位置する物を支持するような構成であるため、チャンバ内の圧力は比較的高くなる。つまり、本シリンダ装置においては、チャンバ内を高圧に保持するために、ハウジングに設けられるシールの密封性を確保する必要がある。粘度の高いオイルは、シールから漏れにくく、上記のようなチャンバ内を高圧に保持する必要のあるシリンダ装置において、特に有効である。また、一般的に、オイルは、潤滑性も良好であり、ハウジング内におけるピストンの摺動を円滑なものとすることが可能である。
【0032】
また、一般的に、オイルの凝固温度は、水の凝固温度より低い。例えば、密封空間外作動液が凝固し始めると、ハウジングおよびピストンに加わる力に対して、密封空間内のコロイド溶液に伝達される力が変動してしまう虞がある。しかしながら、本項の態様によれば、その凝固しにくいオイルによって、ハウジングおよびピストンに加わる力をコロイド溶液に確実に伝達することが可能である。
【0033】
さらに、一般的に、オイルの熱伝導率は、水の熱伝導率より低い。コロイド溶液内の水は、外気温の低下によって凝固する虞があるが、密封空間をオイルで覆うように構成することによって、熱伝導率の低いオイルによってコロイド溶液内の水の温度が外部に逃げることを抑え、水が凝固することを防止することが可能である。
【0034】
(11)当該シリンダ装置が、前記2つの物としての車体と車輪を回転可能に保持する車輪保持部材との間に設けられ、
前記ハウジングが、前記車体と前記車輪保持部材との一方に連結されるとともに、前記ピストンが、前記車体と前記車輪保持部材との他方に連結され、
当該シリンダ装置が、車両用サスペンション装置を構成して、前記車体を懸架する懸架シリンダとされた(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
【0035】
本項に記載の態様は、シリンダ装置を、車両用サスペンション装置の一構成要素とした態様である。詳しく言えば、本項に記載の態様は、当該シリンダ装置を、車体と車輪保持部材との相対動作を減衰させるショックアブソーバとして機能させるとともに、サスペンションスプリングとして車体を支持する力をも発生させる態様である。
【0036】
(12)当該シリンダ装置が、
前記支持力によって、自身に対応する車輪の分担荷重のすべてを受け持つように構成された(11)項に記載のシリンダ装置。
【0037】
本項に記載の態様は、車輪の分担荷重(いわゆる、1Wである)のすべてを受け持つことが可能とされた態様であり、別途、サスペンションスプリングを設ける必要がなく、コンパクトなサスペンション装置が実現することになる。
【0038】
(13)当該シリンダ装置が、
前記車体と前記車輪保持部材との相対動作が許容される範囲において、前記密封空間内の圧力と前記弾性反力との両者がともに、それら車体と車輪保持部材との相対動作量に比例した大きさとなるように構成された(11)項または(12)項に記載のシリンダ装置。
【0039】
本項に記載の態様は、密封空間内の圧力に依存した支持力と、密封部材の弾性反力に依存した支持力との両者がともに、シリンダ装置の全ストローク範囲において、サスペンションスプリングのバネ力として機能する態様となっている。なお、本項の態様においては、上記相対動作量の変化に対する密封空間内の圧力に依存した支持力の変化の勾配が、その密封空間内の圧力に対応するバネ定数と考えることができ、上記相対動作量の変化に対する密封部材の弾性反力に依存した支持力の変化の勾配が、その密封部材の弾性反力に対応するバネ定数と考えることができる。さらに、それらのバネ定数を足し合わせたものが、シリンダ装置のバネ定数と考えることができる。
【0040】
ちなみに、従来の研究や実験によって、一般的なコロイダルダンパの特性として、コロイド溶液が収容された空間内の圧力と、作動液の多孔質体への流入量とが、ほぼリニアな関係にある範囲が存在することが解っている。したがって、密封空間内の圧力が、車体と車輪保持部材との相対動作量に比例した大きさとなるように構成するには、シリンダ装置のストロークが許容される範囲が、そのコロイド溶液が収容された空間内の圧力と作動液の流入量とがリニアな関係にある範囲内となるように構成することで、実現可能である。
【0041】
さらに、シリンダ装置のストローク範囲が密封空間内の圧力と作動液の流入量とがリニアな関係にある範囲内となるようにするには、例えば、以下のようにシリンダ装置を構成することで実現可能である。まず、作動液の多孔質体への流入量は、例えば、単一のチャンバにコロイド溶液が充填された構成のコロイダルダンパにおいて、チャンバの容積の減少量に略等しい。また、例えば、シリンダ装置が液圧式ダンパと同様の構成とされた態様においては、ピストンロッドのハウジング内へ進入した体積分が、作動液の多孔質体への流入量に略等しい。そのことを考慮して、まず、多孔質体の量を、シリンダ装置がフルリバウンド位置からフルバウンド位置までストロークした場合のチャンバの容積減少量(あるいは、ピストンロッドのハウジング内へ進入した体積分)と同じ量の作動液を流入させることが可能な量に決定する。次に、作動液の量を、その多孔質体に流入する量(=チャンバの容積減少量)より多い量に決定する。つまり、それらを混合させたコロイド溶液を備えさせることで、上記の態様のシリンダ装置を構成することができる。
【0042】
(14)前記支持力のうちの前記密封空間内の圧力に依存した力を、内圧依存支持力とし、前記支持力のうちの前記弾性反力に依存した力を、弾性反力依存支持力とした場合において、
前記密封部材が、
前記車体と前記車輪保持部材との相対動作が許容される範囲において、それらの相対動作量の変化に対する前記支持力の変化の勾配が設計上要求される設計変化勾配となるように、前記相対動作量の変化に対する前記弾性反力依存支持力の変化の勾配が、前記設計変化勾配と前記相対動作量の変化に対する前記内圧依存支持力の変化の勾配との差分である変化勾配差と等しくなるようにされたものである(13)項に記載のシリンダ装置。
【0043】
本項に記載の態様は、シリンダ装置のバネ定数を設計値とするために、密封部材の剛性が適切化された態様である。先にも述べたように、コロイド溶液の特性には、ばらつきが生じるため、設計上要求されるものとすることが困難であるが、本項の態様によれば、そのコロイド溶液の特性に応じて、密封部材を設計することで、シリンダ装置のバネ定数を設計値とすることが可能である。
【0044】
(15)前記密封部材が、
蛇腹状に形成された蛇腹部を有し、
その蛇腹部の厚みが、前記弾性反力依存支持力の前記相対動作量の変化に対する変化の勾配が前記変化勾配差と等しくなるように、設定されたものである(14)項に記載のシリンダ装置。
【0045】
(16)前記密封部材が、
蛇腹状に形成された蛇腹部を有し、
前記蛇腹部を形成する山部と谷部との数が、前記弾性反力依存支持力の前記相対動作量の変化に対する変化の勾配が前記変化勾配差と等しくなるように、設定されたものである(14)項に記載のシリンダ装置。
【0046】
上記2つの項に記載の態様は、密封部材を蛇腹部を有するものに限定した態様において、シリンダ装置のバネ定数を適切化するための手法を限定した態様である。先にも述べたように、蛇腹部の板厚や、蛇腹部を形成する山部と谷部との数を変更することで、密封部材の剛性を変更することができるため、上記2つの項の態様は、それら蛇腹部の板厚や蛇腹部を形成する山部と谷部との数を適切化した態様である。
【0047】
(21)車体と車輪を回転可能に保持する車輪保持部材との間に設けられ、(A)それら車体と車輪保持部材との一方に連結されるハウジングと、(B)それら車体と車輪保持部材との他方に連結されて前記ハウジング内を摺動可能なピストンと、(C)前記ハウジングと前記ピストンとによって区画形成されたチャンバの内部に収容された多数の細孔を有する多孔質体および作動液と、(D)可撓性を有し、前記チャンバの内部に密封空間を区画形成するとともにその密封空間に前記多孔質体と前記作動液の一部とをそれらが混合した状態で密封し、自身が弾性変形することによって、前記密封空間の容積の変化を許容する密封部材とを備え、(i)前記多孔質体の細孔に前記作動液が流入した状態によって生じる前記密封空間内の圧力と前記密封部材の弾性反力とに依存して、前記車体を支持する力である支持力を発生させるとともに、(ii)前記車体と前記車輪保持部材との相対動作に応じて、前記多孔質体の細孔へ流入している前記作動液の量が変化することによって、それら車体と車輪保持部材との相対動作を減衰させることで、コロイダルダンパとして機能するシリンダ装置において、前記車体と車輪保持部材との相対動作量の変化に対する前記支持力の変化の勾配が、設計上要求される設計変化勾配となるようにするためのシリンダ装置設計方法であって、
前記支持力のうちの前記密封空間内の圧力に依存した力を、内圧依存支持力とし、前記支持力のうちの前記弾性反力に依存した力を、弾性反力依存支持力とした場合において、
前記密封空間に密封されることになる前記多孔質体および前記作動液の一部と同じものを同じ量だけ準備する準備工程と、
その準備された多孔質体および作動液が前記シリンダ装置の前記密封空間に密封されたと仮定した場合において、その密封空間の容積の変化に対するその密封空間内の圧力の変化の勾配を測定する測定工程と、
その測定された前記密封空間の容積の変化に対するその密封空間内の圧力の変化の勾配に基づいて、前記相対動作量の変化に対する前記内圧依存支持力の変化の勾配を推定し、その推定された前記相対動作量の変化に対する前記内圧依存支持力の変化の勾配と前記設計変化勾配との差分である変化勾配差を推定する推定工程と、
前記相対動作量の変化に対する前記弾性反力依存支持力の変化の勾配が前記変化勾配差と等しくなるように、前記シリンダ装置に採用される前記密封部材を設計する密封部材設計工程と
を含むシリンダ装置設計方法。
【0048】
本項に記載の態様は、カテゴリをシリンダ装置の設計方法とした態様である。本項に記載のシリンダ装置設計方法によれば、先に説明したように、シリンダ装置のバネ定数が設計上要求される値とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】請求可能発明の実施例であるシリンダ装置を一構成要素とした車両用サスペンション装置の正面図である。
【図2】請求可能発明の実施例であるシリンダ装置の正面断面図である。
【図3】図2に示す多孔質体を模式的に示す断面図である。
【図4】従来から知られている簡便な構成のコロイダルダンパの正面断面図である。
【図5】図4に示すコロイダルダンパにおけるストロークとチャンバ内の圧力との関係を示す図である。
【図6】請求可能発明の実施例であるシリンダ装置におけるストロークと密封空間内の圧力との関係を示す図である。
【図7】請求可能発明の実施例であるシリンダ装置におけるストロークと発生させる支持力との関係を示す図である。
【図8】他の設計方法によって構成されたシリンダ装置を備えた車両用サスペンション装置の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、請求可能発明の代表的な実施形態を、実施例として、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0051】
<サスペンション装置の構成>
本実施例のシリンダ装置10は、図1に示すように、車両用サスペンション装置の一構成要素とされている。その車両用サスペンション装置は、車両が有する車輪12の各々に対応して設けられる独立懸架式のものであり、マルチリンクサスペンション装置とされている。サスペンション装置は、それぞれがサスペンションアームである第1アッパアーム20,第2アッパアーム22,第1ロアアーム24,第2ロアアーム26,トーコントロールアーム28を備えている。5本のアーム20,22,24,26,28のそれぞれの一端部は、車体に回動可能に連結され、他端部は、車輪12を回転可能に保持する車輪保持部材としてのアクスルキャリア30に回動可能に連結されている。それら5本のアーム20,22,24,26,28により、アクスルキャリア30は、車体に対して一定の軌跡に沿った上下動が許容されている。本シリンダ装置10は、車体の一部であるタイヤハウジングに設けられたマウント部32と、上記第2ロアアーム26との間に配設されている。
【0052】
図2に、シリンダ装置10の正面断面図を示す。シリンダ装置10は、概して円筒状のハウジング42と、そのハウジング42に対して摺動可能に配設されたピストン44とを含んで構成されている。ピストン44は、ピストン本体50を有しており、そのピストン本体50が、ハウジング42の内部を、自身を挟んで2つのチャンバである上室52と下室54とに区画している。ピストン44は、さらに、ピストンロッド58を有しており、そのピストンロッド58は、下端部においてピストン本体50に連結されるとともに、ハウジング42の上端部に設けられた蓋部から延び出している。そして、ピストンロッド58は、上端部において防振ゴム60を含んで構成されるアッパサポート62を介してマウント部32の下面側に連結されている。一方、ハウジング42は、それの下端部において、ブシュ64を介して第2ロアアーム26に連結されている。
【0053】
つまり、ハウジング42と、ピストンロッド58およびそれに連結されたピストン44とは、車体(マウント部32)と車輪12(アクスルキャリア30)との接近・離間に応じて軸線方向に相対移動可能とされている。換言すれば、シリンダ装置10は、車体と車輪12との接近・離間に応じて伸縮可能とされているのである。
【0054】
ちなみに、シリンダ装置10は、カバーチューブ70を備えており、そのカバーチューブ70は、上記ピストンロッド58およびハウジング42の上部を収容し、外部からの塵埃,泥等の侵入を防止するようにされている。
【0055】
ハウジング42内の下端部には、金属製のベローズ80が固定されており、下室54に収容されている。そのベローズ80には、疎水化多孔質シリカゲル82と、水84とが混合されたコロイド溶液90が充填された状態で密封されている。なお、ベローズ80は、ハウジング42内に固定された状態において、上下方向に伸縮するようになっている。したがって、ベローズ80は、容器状に形成されたものであり、自身のみによって密封空間を形成してその内部にコロイド溶液90を密封する密封部材として機能するものとなっており、本シリンダ装置10は、ベローズ80とコロイド溶液90とを含んで構成されたコロイド溶液密封体92を備えたものとなっている。また、水84は、密封空間内作動液である。
【0056】
図3に、疎水化多孔質シリカゲル82の1つの粒子の断面図を模式的に示す。疎水化多孔質シリカゲル粒子100は、外径Dが数μm〜数十μmオーダで、かつ、細孔102の内径dが数nm〜数十nmオーダの球形シリカゲル粒子を、それの表面(細孔内も含む)を疎水性物質で疎水化処理したものである。つまり、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の各々が、多孔質体として機能するものとなっている。
【0057】
下室54には、上記コロイド溶液密封体92が収容された状態で、密封空間外作動液としての鉱物油110が充填されている。また、上室52にも、鉱物油110が充填されている。先に述べたピストン本体50には、それを軸方向に貫通し、上室52と下室54とを連通させる複数の連通路112が設けられている。つまり、ハウジング42に対するピストン44の摺動に伴って上室52および下室54の容積が変化する場合に、上記連通路112によって、上室52と下室54との間で、鉱物油110の流通が許容されるのである。ちなみに、後に詳しく説明するが、ハウジング42の内部は高圧になるため、ハウジング42の上端部の蓋部、および、下端部の蓋部には、鉱物油110の漏れを防止するために、複数の高圧シール114,116が設けられている。特に、ピストンロッド58が摺動する上端部の蓋部には、そのピストンロッド58の摺動面に接する2つのシール116が設けられている。それら2つのシール116の間にグリースが密封されており、シール性が高められている。
【0058】
シリンダ装置10は、車体と車輪との接近離間動作を規制する機構、いわゆるバウンドストッパ、および、リバウンドストッパを有している。具体的には、バウンドストッパは、カバーチューブ70の内側の上端に貼着された環状の緩衝ゴム140を含んで構成され、ハウジング42の上端部が、緩衝ゴム140を介してカバーチューブ70に当接するように構成されている。また、リバウンドストッパは、ハウジング42の上方側の蓋部の下面に貼着された環状の緩衝ゴム142を含んで構成され、ピストン44の上面とハウジング42の上方側の蓋部とが、緩衝ゴム142を介して当接するように構成されている。
【0059】
<コロイダルダンパとしての特性>
i)一般的なコロイダルダンパの特性
上述したように、本サスペンション装置は、シリンダ装置10を主体として構成され、そのシリンダ装置10は、コロイド溶液90を内部に収容するコロイダルダンパである。そのシリンダ装置10のコロイダルダンパとしての機能について、以下に詳しく説明する。まず、本シリンダ装置10について説明する前に、図4に示す簡便な構成のコロイダルダンパ150を例に、コロイダルダンパの一般的な特性について、図5をも参照しつつ詳しく説明する。コロイダルダンパ150は、ハウジング152と、そのハウジング152内を摺動するピストン154とを含んで構成されるシリンダ装置156を備えている。そして、コロイダルダンパ150は、それらハウジング152とピストン154とによって形成されるチャンバ158内に、多孔質体160と作動液162とが混合されたコロイド溶液164が充填されたものである。
【0060】
図5は、ハウジング152とピストン154との相対動作量S(シリンダ装置156のストローク)と、チャンバ158の内圧pとの関係を示す図である。コロイダルダンパ150において、シリンダ装置156を収縮させる力が外部から加わると、まず、チャンバ158内の作動液162の液圧が大きく(急な勾配で)上昇する(図5における(I)の範囲)。作動液162の液圧が、ある高さ付近まで上昇すると、作動液162は、その作動液162の表面張力に抗して多孔質体160の細孔に流入し始め、加わる力の大きさに比例した量だけ作動液162が流入することになる(図5における(II)の範囲)。その多孔質体160への作動液162の流入によって、コロイド溶液164の容積が減少し、シリンダ装置156が収縮するようにストロークすることになる。つまり、作動液162の流入量とチャンバ158の容積変化とは等しいのであり、作動液162の流入量とシリンダ装置156のストロークとは、リニアな関係にあると言える。また、作動液162の流入量が多くなれば、チャンバ158の内圧も大きくなる。つまり、図5における(II)の範囲に示すように、シリンダ装置156のストロークSと、チャンバ158の内圧pとは、リニアな関係となっている。そして、作動液162が、流入できる限界付近まで多孔質体160内に流入すると、作動液の162の液圧が大きく上昇し始めるのである(図5における(III)の範囲)。
【0061】
次に、シリンダ装置156に加えていた力を取り除くと、作動液162の液圧が大きく(急な勾配で)低下する(図5における(IV)の範囲)。その後、作動液162の液圧が低下すると、多孔質体160の細孔から作動液162が流出するのである(図5における(V)の範囲)。その多孔質体160からの作動液162の流出によって、コロイド溶液164の容積が増加し、シリンダ装置156が伸張するようにストローク動作することになる。なお、この図5における(V)の範囲に示す作動液162が流出する場合も、作動液162が流入するときと同様に、シリンダ装置156のストロークSと、チャンバ158の内圧pとは、リニアな関係となっている。
【0062】
多孔質体160と作動液162との間の状態を、それら多孔質体160と作動液162との間の接触角を用いて説明すれば、多孔質体160へ作動液162が流入する際に接触角が大きく、多孔質体160から作動液162が流出する際に接触角が小さくなる。そのため、図5に示したように、作動液流入時(収縮時)のチャンバ158の内圧と、作動液流出時(伸張時)のチャンバ158の内圧とには、差が生じる。つまり、図5に示すように、シリンダ装置156のストロークSの変化に対するチャンバ158の内圧pの変化に、ヒステリシスが生じるのである。そして、そのことによって、コロイダルダンパ150は、エネルギを散逸して2つの相対動作する物の相対動作を減衰させる構成とされている。ちなみに、図5のヒステリシスによって囲まれた部分の面積が、散逸したエネルギに相当する。
【0063】
ii)本シリンダ装置のコロイダルダンパとしての特性
本シリンダ装置10は、コロイド溶液90がベローズ80内に密封されているが、外部から加えられた力は、鉱物油110を介してコロイド溶液密封体92に伝達される。そして、コロイド溶液密封体92は、自身に力が加わると、ベローズ80内に収容された水84の液圧が上昇する。その水84の液圧が、ある高さまで上昇すると、その水84は、表面張力に抗して疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102内に流入する。それに伴って、ベローズ80は収縮しつつ、コロイド溶液密封体92は、体積が減少することになるのである。一方、自身に加わる力がなくなると、水84の液圧が低下し、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102から水84が流出する。それに伴って、ベローズ80は伸張しつつ、コロイド溶液密封体92は、体積が増加することになる。つまり、本シリンダ装置10も、上述したコロイダルダンパ150と同様の特性を有している。なお、図6に、本シリンダ装置10のストロークSと、コロイド溶液密封体92の内圧pとの関係を示す。
【0064】
<本シリンダ装置の機能>
i)サスペンションスプリングとしての機能
本シリンダ装置10は、上述したように、サスペンション装置の構成要素の主体となるものである。まず、本シリンダ装置10は、サスペンションスプリングとしての機能を有するものとなっている。シリンダ装置10は、マウント部32と第2ロアアーム26との間に配設され、自身に対応する車輪12の分担荷重(いわゆる、1Wである)を受けて、収縮することになる。シリンダ装置10が収縮する際、疎水化多孔質シリカゲル100の細孔102に水84がある量だけ流入し、コロイド溶液密封体92内の圧力が上昇する。また、その疎水化多孔質シリカゲル100の細孔102への水84の流入に伴って、コロイド溶液90を密封しているベローズ80は収縮し、ベローズ80は、その収縮によって弾性反力を発生させることになる。つまり、下室54におけるコロイド溶液密封体92の外部の圧力は、コロイド溶液密封体92の内圧と、ベローズ80の弾性反力との両者に依存したものとなっている。したがって、シリンダ装置10は、コロイド溶液密封体92の内圧とベローズ80の弾性反力との両者に依存して、車体を支持する力である支持力Fを発生させるように構成されており、その支持力Fによって、車輪の分担荷重を受け持つことになる。
【0065】
まず、コロイド溶液密封体92の内圧に依存する支持力について、詳しく説明する。本シリンダ装置10は、図6に示すように、本シリンダ装置10は、ストロークが許容される範囲において、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102からすべての水84が流出しないように、かつ、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102への水84の流入量が流入できる限界値には達しないように構成されている。その図6からも分かるように、コロイド溶液密封体92が収容された下室54の容積が減少するようにストロークする場合、平たく言えば、シリンダ装置10が収縮するようにストロークする場合に、コロイド溶液密封体92の内圧pが、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102への水84の流入量に比例した大きさとなる。なお、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102への水84の流入量は、ピストンロッド58のハウジング42内へ進入した体積分に等しい。つまり、コロイド溶液密封体92の内圧pは、シリンダ装置10のストローク量(車体と車輪保持部材との相対動作量)に比例した大きさとなっている。したがって、本シリンダ装置10は、リバウンドストッパおよびバウンドストッパによって定まるシリンダ装置10の全ストローク範囲において、1Wを受け持つ力を発生させていると考えることができる。
【0066】
また、図6に示すように、シリンダ装置10のストローク範囲においては、ストローク量の変化に対するコロイド溶液密封体92の内圧pの変化の勾配は、ほぼ一定となっている。そのため、コロイド溶液密封体92の内圧に依存する支持力である内圧依存支持力FCのストローク量の変化に対する変化勾配も、ほぼ一定となる。つまり、その内圧依存支持力は、シリンダ装置10が発生させるバネ力の一部と考えることができ、その内圧依存支持力の変化勾配は、コロイド溶液密封体92の内圧に依存するバネ力のバネ定数KCと考えることができるのである。
【0067】
次に、ベローズ80の弾性反力に依存する支持力について説明する。ベローズ80の弾性反力は、収縮した量に比例したものとなる。ベローズ80の収縮によってコロイド溶液密封体92減少した容積は、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102への水84の流入量に等しいため、ベローズ80の収縮量は、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102への水84の流入量に比例する。つまり、ベローズ80の弾性反力も、その水84の流入量に比例すると考えられる。なお、先にも述べたように、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102への水84の流入量は、ピストンロッド58のハウジング42内への進入した体積分に等しい。したがって、ベローズ80の弾性反力も、シリンダ装置10のストローク量(車体と車輪保持部材との相対動作量)に比例した大きさとなっているのである。ちなみに、ベローズ80は、シリンダ装置10がフルバウンドした状態においても、収縮する限界には至らないようになっている。
【0068】
また、シリンダ装置10のストローク範囲において、ベローズ80の弾性反力のストローク量の変化に対する変化勾配は、ほぼ一定であり、ベローズ80の弾性反力に依存する支持力である弾性反力依存支持力FBのストローク量の変化に対する変化勾配も、ほぼ一定となる。つまり、その弾性反力依存支持力は、シリンダ装置10が発生させるバネ力の一部と考えることができ、その弾性反力依存支持力の変化勾配は、ベローズ80の弾性反力に依存するバネ力のバネ定数KBと考えることができる。
【0069】
図7に、シリンダ装置10が発生させる支持力Fと、シリンダ装置10のストロークとの関係を示す。シリンダ装置10が発生させる支持力Fは、前述したように、コロイド溶液密封体92の内圧とベローズ80の弾性反力の両者に依存しているため、上記の内圧依存支持力FCと弾性反力依存支持力FBとを足し合わせたものとなり、次式のようになる。
F=FC+FB
=KC・S+KB・S
したがって、シリンダ装置10が発生させる支持力Fのストローク量の変化に対する変化勾配、つまり、シリンダ装置10がサスペンションスプリングとしての機能する際のバネ定数Kは、次式のようになる。
K=KC+KB
なお、そのシリンダ装置10のバネ定数Kは、設計上要求される設計バネ定数KPとされている。
【0070】
ちなみに、先に述べたように、本シリンダ装置10は、シリンダ装置10の内圧pが疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102への水84の流入量に比例する範囲内でストロークするように構成されている。本シリンダ装置10は、そのような構成とするために、コロイド溶液密封体92に収容される疎水化多孔質シリカゲル86の量(体積)と水84の量(体積)が定められている。まず、シリンダ装置10において、標準状態(例えば、車両に一人も乗車しておらず、かつ、何も積載しておらず、さらに、水平面上において停車している状態)における中立位置から、バウンド方向にストローク量Sb,リバウンド方向にストローク量Srだけストロークできるようにすると、シリンダ装置10の上室52と下室54とを合わせた容積変化ΔVは、フルバウンド時とフルリバウンド時とで、次式のように求まる。
ΔV=A・(Sb+Sr
ここで、Aは、ハウジング42内の圧力がピストン44に作用する面積である受圧面積であり、シリンダ装置10においては、ピストンロッド58の断面積が相当する。
【0071】
そして、本シリンダ装置10においては、この容積変化ΔVに等しい量の水84を疎水化多孔質シリカゲル86が流入できる必要がある。つまり、疎水化多孔質シリカゲル86の容積に対する疎水化多孔質シリカゲル86の水84を流入できる限界値の比をηとすれば、疎水化多孔質シリカゲル86の必要最低量(体積である)VSminが、次式によって定まる。
Smin=ΔV/η
なお、疎水化多孔質シリカゲル86は、疎水化処理の際に、全てが疎水化されずに吸水性を有するシリカゲルが残ってしまう場合がある。例えば、疎水化処理を行った全量に対する、疎水化されなかったシリカゲルの量を除いた疎水化されたシリカゲルの量の割合を、疎水化率βと定義すれば、その疎水化率のばらつき等に対応するために、実際の疎水化多孔質シリカゲル86の量(体積である)VSは、次式によって決められ、疎水化多孔質シリカゲル86のその必要最低量VSminより多くされている。
S=VSmin/β
また、疎水化多孔質シリカゲル86の量VSに対して、水84の量VFは、ΔV以上であればよいため、本シリンダ装置10においては、VF=VSとされている。
【0072】
ii)ショックアブソーバとしての機能
本シリンダ装置10において、中立位置からの1サイクルの動作におけるコロイド溶液密封体92の内圧の変化を、シリンダ装置10のストロークSとの関係で示せば、図6に示す二点鎖線のようになる。シリンダ装置10は、先に説明した一般的なコロイダルダンパ150と同様に、作動液流入時(収縮時)のコロイド溶液密封体92の内圧と、作動液流出時(伸張時)のコロイド溶液密封体92の内圧とに差が生じ、図6に示すように、シリンダ装置10のストロークSの変化に対するコロイド溶液密封体92の内圧pの変化に、ヒステリシスが生じる。そして、その図6の二点鎖線によって囲まれた面積が、1サイクルの動作において散逸したエネルギに相当する。つまり、本シリンダ装置10は、車体と車輪12との相対動作を減衰させることになるのであり、ショックアブソーバとして機能することとなる。
【0073】
<本コロイダルダンパの特徴>
【0074】
上述したように、コロイダルダンパとしての機能を有する本シリンダ装置10は、ショックアブソーバとしての機能だけでなく、サスペンションスプリングとしての機能をも有している。そのことから、本サスペンション装置は、別途、サスペンションスプリングを設ける必要がなく、簡便な構成のものとなっている。
【0075】
本シリンダ装置10は、多孔質体と作動液とからなるコロイド溶液が密封容器内に密封されており、作動液がその密封容器外へは流出しないように構成されている。つまり、本シリンダ装置10は、比較的硬度の高い疎水化多孔質シリカゲル粒子100がハウジング42やピストン44と擦れ合うことがなく、シリンダ装置10内の摩耗を防止することが可能である。また、例えば、ハウジングのピストンが摺動する部分から、フィルタや容器によって多孔質体を隔離する構成のコロイダルダンパも存在する。しかしながら、そのフィルタや容器によって多孔質体を隔離した構成のコロイダルダンパは、ストレス等によって粉砕されて小さくなった多孔質体が、そのフィルタや容器に目詰まりしたり、それを通過したりしてしまうという問題がある。それに対して、本シリンダ装置10は、コロイド溶液が密封容器に密封されているため、多孔質体が粉砕されて小さくなったとしても、当然に密封容器外へ流出することがない。したがって、本シリンダ装置10は、耐久性に優れたコロイダルダンパとなっている。
【0076】
また、本シリンダ装置10は、疎水化多孔質シリカゲル粒子100の細孔102に流出入させる密封空間内作動液と、外部から加えられる力をコロイド溶液密封体92に伝達するためにチャンバ52,54内に充填された密封空間外作動液とが、異なる液体とされて、互いに異なる性質,特性を有するものとなっている。具体的に言えば、密封空間外作動液である鉱物油110と、密封空間内作動液である水84とは、動粘度が互いに異なり、密封空間外作動液の動粘度が、密封空間内作動液の動粘度より高いものとなっている。それによって、密封空間外作動液である鉱物油110は、シリンダ装置10に加えられる力をコロイド溶液密封体92に効率的に伝達することが可能である。また、本シリンダ装置10は、1Wを受け持つために、シリンダ装置10の内圧を高圧に保持することが必要となる。本シリンダ装置10は、密封空間外作動液である鉱物油110が粘度の高いものとされているため、ハウジング42に設けられるシール114,116の密封性が確保されたものとなっている。
【0077】
また、密封空間外作動液である鉱物油110と、密封空間内作動液である水84とは、熱伝導率が互いに異なり、密封空間外作動液の熱伝導率が、密封空間内作動液の熱伝導率より低いものとなっている。本シリンダ装置10は、コロイド溶液密封体92が鉱物油110によって覆われるような構成とされている。つまり、本シリンダ装置10は、密封空間内作動液である水84は、外気温が低下すると凝固する虞があるが、熱伝導率の低い鉱物油110によって水84の温度が外部に逃げることを抑え、水84の温度低下を抑制することが可能とされている。
【0078】
さらに、密封空間外作動液である鉱物油110と、密封空間内作動液である水84とは、凝固温度が互いに異なり、密封空間外作動液の凝固温度が、密封空間内作動液の凝固温度より低いものとなっている。例えば、密封空間外作動液が凝固し始めると、外部からシリンダ装置10に加わる力に対して、コロイド溶液密封体92に伝達される力が変動してしまう虞がある。しかしながら、本シリンダ装置10は、その凝固しにくい鉱物油110によって、外部からシリンダ装置10に加わる力をコロイド溶液密封体92に確実に伝達することが可能とされている。
【0079】
さらにまた、本シリンダ装置10は、自身が発生させる支持力が、コロイド溶液密封体92の内圧とベローズ80の弾性反力との両者に依存しているため、比較的大きな支持力を発生させることが可能であり、比較的大きな分担荷重を受け持つことが可能となる。
【0080】
また、コロイド溶液密封体92の内圧に依存した支持力は、コロイド溶液90の特性に依存する。詳しくは、疎水化多孔質シリカゲル82の粒子径,それが有する細孔102の径や、疎液化処理の程度(疎液化率等)などに依存する。それらには、ばらつきがあるために、コロイド溶液密封体92の内圧に依存するバネ力のバネ定数KCが、設計されたものと異なる場合がある。つまり、コロイド溶液密封体92の内圧にのみ依存して支持力を発生させるシリンダ装置は、設計上要求されるバネ定数を得ることが難しいという問題がある。それに対して、ベローズ80の弾性反力に依存するバネ力のバネ定数KBは、ベローズ80の製造の過程において大きな誤差が生じることはないため、比較的容易に、設計上要求されるものとすることができる。本シリンダ装置10は、コロイド溶液90の特性の設計に対する誤差を考慮してベローズ80が設計されているため、シリンダ装置10のバネ定数Kが設計バネ定数KPとされたものとなっているのである。つまり、本シリンダ装置10は、コロイダルダンパとしての機能を有するものであっても、そのバネ定数が設計上要求される値とされた精度の良いものとなっている。
【0081】
<密封部材の設計方法>
以下に、本シリンダ装置10の設計方法、詳しくは、上述したベローズ80の設計方法について説明する。上述したように、疎水化多孔質シリカゲル82の粒子径,それが有する細孔102の径のばらつきや、疎液化処理の程度(疎液化率等)によって、コロイド溶液密封体92の内圧に依存するバネ力のバネ定数KCが、設計されたものと異なる場合がある。そこで、まず、実際にシリンダ装置10に用いられる疎水化多孔質シリカゲル82および水84と同じものを、同じ量だけ用意する。(準備工程)
【0082】
次に、それら疎水化多孔質シリカゲル82および水84を、図4に示したシリンダ装置のチャンバに充填する。そのシリンダ装置に、そのシリンダ装置を収縮する力を加え、チャンバの容積変化に対するチャンバ内の圧力を測定する。それにより、疎水化多孔質シリカゲル82に水84が流入する場合の、シリンダ装置10のストローク量の変化に対するコロイド溶液密封体92の内圧の変化勾配が求められる。(測定工程)
【0083】
続いて、そのシリンダ装置10のストローク量の変化に対するコロイド溶液密封体92の内圧の変化勾配に基づいて、シリンダ装置10のストローク量の変化に対する内圧依存支持力FCの変化の勾配、つまり、コロイド溶液密封体92の内圧に依存したバネ定数KCが求められる。次いで、シリンダ装置10のバネ定数Kが設計バネ定数KPとなるように、その設計バネ定数KPと、コロイド溶液密封体92の内圧に依存したバネ定数KCとに基づいて、ベローズ80のバネ定数KBが、次式に従って求められる。(推定工程)
B=KP−KC
【0084】
そして、シリンダ装置10に用いられるベローズは、それのバネ定数が上記のように求められたバネ定数KBとなるように、板厚および蛇腹を形成する山部と谷部との数が設定される。その板厚,山部と谷部との数に基づいて、ベローズ80が製造される。(密封部材設計工程)
【0085】
このような設計方法により、シリンダ装置10が発生させるバネ力のバネ定数、つまり、本サスペンション装置が発生させるバネ力のバネ定数が、ほぼ設計された値に設定されているのである。なお、ベローズ80は、バネ定数がそれぞれ異なる複数のものを準備しておき、その中から上記のように求められたバネ定数KBに最も近いバネ定数となっているものを選択するような方法を採用することもできる。ちなみに、その場合、準備しておく複数のベローズは、例えば、板厚がそれぞれ異なるものであってもよく、山部と谷部との数がそれぞれ異なるものであってもよい。
【0086】
<コロイダルダンパを有するサスペンション装置のその他の設計方法>
図8には、上記実施例と同様に、車両用サスペンション装置が発生させるバネ力のバネ定数が、ほぼ設計された値に設定された車両用サスペンション装置200を示す。その車両用サスペンション装置200は、上記実施例のシリンダ装置10と同様に構成されたシリンダ装置202を備えたものである。つまり、シリンダ装置202は、上記実施例のシリンダ装置10と同様に、疎水化多孔質シリカゲル82と水84とが混合されたコロイド溶液90を密封するベローズ204を有し、そのベローズ204の内圧と弾性反力との両者に依存して、車体を支持するための支持力を発生させるように構成されたものである。
【0087】
ただし、このサスペンション装置200は、上記実施例のサスペンション装置が受け持つ分担荷重よりも、大きな分担荷重を受け持つものである。つまり、サスペンション装置200は、その大きな分担荷重を受け持つために、さらに、シリンダ装置202と並列的に設けられたコイルスプリング210をも備えている。したがって、サスペンション装置200は、車体を支持するための支持力を、ベローズ204内の内圧とベローズ204の弾性反力との両者だけでなく、コイルスプリング210のバネ力にも依存して、発生させるように構成されている。なお、コイルスプリング210は、シリンダ装置10が発生させる支持力を担保するものであって、コイルスプリング210が発生させる支持力は、シリンダ装置10が発生させる支持力より小さくされている。
【0088】
したがって、サスペンション装置200が発生させるバネ力のバネ定数Kは、ベローズ204の内圧に依存したバネ定数KC,ベローズ204の弾性反力に依存したバネ定数KB,コイルスプリング210のバネ定数KSを足し合わせたものとなる。
K=KC+KB+KS
このことから、本サスペンション装置200において、本サスペンション装置200のバネ定数Kを設定されたバネ定数KPとするためには、ベローズ204の内圧に依存したバネ定数KCとコイルスプリング210のバネ定数KSとに基づいて、ベローズ204のバネ定数KBを設計するようにしてもよく、ベローズ204の内圧に依存したバネ定数KCとベローズ204のバネ定数KBとに基づいて、コイルスプリング210のバネ定数KSを設計するようにしてもよい。以上のことから、本サスペンション装置200は、上記実施例シリンダ装置10を備えたサスペンション装置と同様に、そのバネ定数が設定された値とされた精度の良いサスペンション装置となっている。
【符号の説明】
【0089】
10:シリンダ装置(コロイダルダンパ) 12:車輪 26:第2ロアアーム 30:アクスルキャリア(車輪保持部材) 32:マウント部(車体の一部) 42:ハウジング 44:ピストン 50:ピストン本体 52:上室(チャンバ) 54:下室 58:ピストンロッド 80:ベローズ(密封部材) 82:疎水化多孔質シリカゲル 84:水(密封空間内作動液) 90:コロイド溶液 92:コロイド溶液密封体 100:疎水化多孔質シリカゲル粒子(多孔質体) 102:細孔 110:鉱物油(密封空間外作動液) 200:サスペンション装置 202:シリンダ装置(コロイダルダンパ) 204:ベローズ(密封部材) 210:コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に配置されて相対動作する2つの物の間に設けられたシリンダ装置であって、
前記2つの物の一方に連結されるハウジングと、
前記2つの物の他方に連結されて前記ハウジング内を摺動可能なピストンと、
前記ハウジングと前記ピストンとによって区画形成されたチャンバの内部に収容された多数の細孔を有する多孔質体および作動液と、
可撓性を有し、前記チャンバの内部に密封空間を区画形成するとともにその密封空間に前記多孔質体と前記作動液の一部とをそれらが混合した状態で密封し、自身が弾性変形することによって、前記密封空間の容積の変化を許容する密封部材と
を備え、
前記多孔質体の細孔に前記作動液が流入した状態によって生じる前記密封空間内の圧力と前記密封部材の弾性反力とに依存して、前記2つの物のうちの上方側に位置する物を支持する力である支持力を発生させるとともに、
前記2つの物の相対動作に応じて、前記多孔質体の細孔へ流入している前記作動液の量が変化することによって、それら2つの物の相対動作を減衰させることで、コロイダルダンパとして機能するシリンダ装置。
【請求項2】
前記密封部材が、蛇腹状に形成された蛇腹部を有するものである請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記密封部材が、
自身のみによって前記密封空間を形成して前記多孔質体と前記作動液の一部とをそれらが充填された状態で密封する密封容器である請求項1または請求項2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
当該シリンダ装置が、前記2つの物としての車体と車輪を回転可能に保持する車輪保持部材との間に設けられ、
前記ハウジングが、前記車体と前記車輪保持部材との一方に連結されるとともに、前記ピストンが、前記車体と前記車輪保持部材との他方に連結され、
当該シリンダ装置が、車両用サスペンション装置を構成して、前記車体を懸架する懸架シリンダとされ、
前記支持力によって、自身に対応する車輪の分担荷重のすべてを受け持つように構成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のシリンダ装置。
【請求項5】
当該シリンダ装置が、
前記車体と前記車輪保持部材との相対動作が許容される範囲において、前記密封空間内の圧力と前記弾性反力との両者がともに、それら車体と車輪保持部材との相対動作量に比例した大きさとなるように構成された請求項4に記載のシリンダ装置。
【請求項6】
前記支持力のうちの前記密封空間内の圧力に依存した力を、内圧依存支持力とし、前記支持力のうちの前記弾性反力に依存した力を、弾性反力依存支持力とした場合において、
前記密封部材が、
前記車体と前記車輪保持部材との相対動作が許容される範囲において、それらの相対動作量の変化に対する前記支持力の変化の勾配が設計上要求される設計変化勾配となるように、前記相対動作量の変化に対する前記弾性反力依存支持力の変化の勾配が、前記設計変化勾配と前記相対動作量の変化に対する前記内圧依存支持力の変化の勾配との差分である変化勾配差と等しくなるようにされたものである請求項5に記載のシリンダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−97860(P2012−97860A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247180(P2010−247180)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】