説明

シルセスキオキサン化合物とその製造方法、硬化性組成物、硬化物、透明フィルムおよび積層体

【課題】高い透明性、表面硬度・耐擦傷性、機械強度に優れたシルセスキオキサン化合物材料を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表されるシラン化合物(A)および一般式(2)で表されるシラン化合物(B)の加水分解共縮合により得られるシルセスキオキサン化合物。


:炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基、R:水素原子またはメチル基、R:ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、またはヒドロキシブチル基、m:1または2、A:m=1の場合はNH基、m=2の場合は窒素原子


:炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、ラジカル重合性官能基を含有する有機基またはカチオン重合性官能基を含有する有機基、R:炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルセスキオキサン化合物とその製造方法、硬化性組成物、硬化物、透明フィルムおよび積層体に関する。更に詳しくは、樹脂類との相溶性が良好であり、コーティング材料、電子材料、光学材料などへの表面硬度・耐擦傷性、機械強度付与成分として利用可能なシルセスキオキサン化合物とこれらの製造方法、シルセスキオキサン化合物を含有する硬化性組成物、硬化物、透明フィルムおよび積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料と無機材料をナノレベルで緻密に複合化させることにより、高い耐熱性、耐久性、表面硬度・耐擦傷性、機械強度、光学特性などを併せ持つ有機無機ナノハイブリッド技術開発が活発化している。中でも、かご構造やはしご構造など特異な構造を有し、有機材料との複合化が容易なシリコーン材料として、シルセスキオキサン化合物が注目され、様々な材料開発が行われている。
【0003】
シルセスキオキサン化合物の中でも、かご構造を有するものは、その硬直なポリシロキサン骨格と、サブナノレベルの分子サイズから、高い透明性、耐熱性、表面硬度・耐擦傷性、機械強度、有機材料との複合化による高機能化などが期待され、様々な有機置換基を有するものが市販されている。一般的に、アルキル基、フェニル基を有するものは、特定の有機溶剤に溶解させることは可能であるが、硬化性組成物の成分である(メタ)アクリレート化合物、シリカゾル、エポキシ樹脂などの樹脂類への溶解は困難であり、機能性付与成分としての使用が困難であった。
【0004】
一方、特許文献1には3−アミノプロピルトリエトキシシランとグリシドールとの付加物から誘導されたシルセスキオキサン化合物が、非特許文献1には、3−アミノプロピルトリエトキシシランとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物から誘導されたシルセスキオキサン化合物が開示されている。これらの化合物は、前述の硬化性組成物に溶解できることが本発明者の追試で確認できた。しかし、これらの化合物を含む硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、表面硬度・耐擦傷性、機械強度などの機能面で課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Langmuir,2007,9014-9027
【特許文献1】特表2008−500292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、樹脂類との相溶性が良好であり、コーティング材料、電子材料、光学材料などへの表面硬度・耐擦傷性・機械強度付与成分として利用可能なシルセスキオキサン化合物を提供することにある。また、該化合物の製造方法、該化合物を含有する硬化性組成物、硬化物、透明フィルムおよび積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、高い透明性を有し、表面硬度・耐擦傷性、機械強度付与成分として優れたかご構造を有するシルセスキオキサン化合物を見出し、本発明に至った。即ち、第1の発明は、一般式(1)で表されるシラン化合物および一般式(2)で表されるシラン化合物の加水分解共縮合により得られるシルセスキオキサン化合物である。
【0008】
【化1】

:炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基
:水素原子またはメチル基
:ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、またはヒドロキシブチル基
m:1または2
A:m=1の場合はNH基、m=2の場合は窒素原子
【0009】
【化2】


:炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、ラジカル重合性官能基を含有する有機基またはカチオン重合性官能基を含有する有機基
:炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基
【0010】
第2の発明は、前記一般式(1)で表されるシラン化合物(A)および前記一般式(2)で表されるシラン化合物(B)を加水分解共縮合する第1の発明のシルセスキオキサン化合物の製造方法である。その際、無機酸および第4級アンモニウム塩からなる群の少なくとも一種の化合物を触媒として加水分解共縮合を行うことが好ましい。
【0011】
第3の発明は、第1の発明のシルセスキオキサン化合物のうち重合性官能基を有するシルセスキオキサン化合物を含有する硬化性組成物である。
【0012】
第4の発明は、前記の硬化性組成物を、硬化させることで得られる硬化物である。
【0013】
第5の発明は、硬化物からなる透明フィルムである。
【0014】
第6の発明は、基材上に前記の硬化物からなる層が形成された積層体である。
【0015】
尚、本明細書において、「(メタ)アクリ」は「アクリ」又は「メタクリ」を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、高い透明性を有し、表面硬度・耐擦傷性、機械強度に優れた材料を提供でき、更に透明フィルム、積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
シルセスキオキサン化合物
本発明のシルセスキオキサン化合物は、一般式(1)で示されるシラン化合物(A)および一般式(2)で示されるシラン化合物(2)の共縮合により得られる化合物である。一般式(2)におけるRが、炭素数1〜10のラジカル重合性官能基を含有する有機基またはカチオン重合性官能基を含有する有機基であるシラン化合物(B)の場合、製造されるシルセスキオキサン化合物は重合性官能基を有する。このような重合性官能基を有するシルセスキオキサン化合物は、硬化性組成物の成分として有用である。重合性官能基有するシルセスキオキサン化合物は、硬化性組成物において、表面硬度・耐擦傷性、機械強度を付与することができる。尚、シルセスキオキサンとは、分子内に有機基1つを有する3官能アルコキシシランの縮合物の総称である。本発明のシルセスキオキサン化合物には、かご構造を有するものと有さないものがある。前述の共縮合により製造されるシルセスキオキサン化合物は、通常、かご構造を有するものと有さないものの混合物である。シルセスキオキサン化合物の代表的なかご構造として、構造式(3)〜(6)を下記に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

上記、構造式(3)〜(6)において、Rは以下の一般式(7)で示される有機基またはRである。
【0022】
【化7】

:水素原子またはメチル基
:ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、またはヒドロキシブチル基
m:1または2
A:m=1の場合はNH基、m=2の場合は窒素原子
【0023】
は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、ラジカル重合性官能基を含有する有機基またはカチオン重合性官能基を含有する有機基である。ラジカル重合性官能基としては、ビニル基、アリル基および(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
【0024】
シルセスキオキサン化合物の共縮合成分であるシラン化合物(A)およびシラン化合物(B)について、以下に詳述する。
【0025】
シラン化合物(A)
シルセスキオキサン化合物の共縮合成分の1つであるシラン化合物(A)は、例えば、アミノ基を含有するシランカップリング剤(a1)(以下、化合物(a1))と単官能(メタ)アクリレート化合物(a2)(以下、化合物(a2))とのマイケル付加反応により製造することができる。ここで、化合物(a1)としては、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、特に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好適である。
【0026】
また、化合物(a2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びフォスフォエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中で、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好適である。
【0027】
化合物(a1)と化合物(a2)とのマイケル付加反応により、化合物(a1)1モルに化合物(a2)2モルが付加したシラン化合物(A)を製造することができる。化合物(a1)と化合物(a2)との反応モル比は、未反応物を少なくできることから、化合物(a1)1モルに対して化合物(a2)2〜4モルが好ましく、2〜2.5モルがより好ましい。化合物(a1)と化合物(a2)の付加反応は、無溶媒で行うことができる。付加反応の反応温度は、十分に反応が進行し、副反応を抑える点から、0〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。
【0028】
また、本マイケル付加反応は有機溶媒中で行うこともできる。有機溶媒としては、化合物(a1)や化合物(a2)を溶解できるものであれば特に限定はないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0029】
更に、本マイケル付加反応は、触媒を用いることができる。触媒としては、マイケル付加反応に使用されるアミン類、アルカリ金属アルコキシドなどの公知のものを用いることができる。
【0030】
シラン化合物(B)
シルセスキオキサン化合物の共縮合成分の1つであるシラン化合物(B)は、分子内に1つの有機基を有する3官能アルコキシシラン化合物である。シラン化合物(B)としては、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中で、特に、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが好適である。
【0031】
シルセスキオキサン化合物の製造方法
本発明のシルセスキオキサン化合物は、シラン化合物(A)および(B)を加水分解共縮合させることにより製造することができる。前述のように、重合性官能基を有するシルセスキオキサン化合物は、一般式(2)におけるRが、炭素数1〜10のラジカル重合性官能基を含有する有機基またはカチオン重合性官能基を含有する有機基であるシラン化合物(B)を用いて製造することができる。また、前述のように、製造されるシルセスキオキサン化合物は、通常、かご構造を有するものと有さないものの混合物である。この混合物はそのまま利用することもできるが、構造のことなるシルセスキオキサン化合物を分離して利用してもよい。構造の異なるシルセスキオキサン化合物を単離する方法としては、例えば、分子量差を利用したGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法、特定の溶媒に対する溶解度差を利用した再結晶法等が利用できる。
【0032】
共縮合のモル比は、シラン化合物(A):シラン化合物(B)=90:10〜10:90の範囲であることが好ましい。ここで、シラン化合物(A)が90以内ならば、十分な表面硬度や耐熱性を得ることができる。また、シラン化合物(A)が10以上ならば、樹脂類に対する溶解性が良好である。
【0033】
シラン化合物(A)および(B)の共縮合の触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸およびフッ化水素酸などの無機酸、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドおよびベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第4級水酸化アンモニウム、ならびに、アンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドおよびベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などが好適である。
【0034】
触媒量は、シラン化合物(A)および(B)の合計100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。0.01質量部以上では十分な触媒活性を得ることができる。また、20質量部以下ならば、残留触媒の硬化物性への影響を低く抑えることができる。
【0035】
シラン化合物(A)および(B)の加水分解に使用する水量は、加水分解性アルコキシ基モル数の理論量合計の0.1〜10倍が好ましく、1〜3倍がより好ましい。
【0036】
加水分解共縮合の反応温度は、0〜100℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。0℃以上ならば十分に反応が進行する。100℃以下ならば副反応の誘発やゲル化の可能性が少ない。
【0037】
加水分解共縮合反応時には、有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒としては、シラン化合物(A)および(B)を溶解できるものであれば特に限定はないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0038】
硬化性組成物
本発明の硬化性組成物は、前述のシルセスキオキサン化合物を含む。シルセスキオキサン化合物が重合性官能基を有していない場合は、重合性官能基を有する他の化合物を含む必要がある。シルセスキオキサン化合物が重合性官能基を有する場合には、重合性官能基を有する他の化合物は必ずしも必要ないが、シルセスキオキサン化合物のハンドリング性向上、硬化物の物性調節の目的で含むことができる。重合性官能基を有する他の化合物に含まれる重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのラジカル重合基もしくはイオン重合基、エポキシ基、オキセタニル基などのカチオン重合基、アルコキシシリル基、シラノール基などの重縮合基などが挙げられる。重合性官能基を有する化合物の具体例としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びフォスフォエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン]、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メトキシスチレン、α−メチル−m−メトキシスチレン、α−メチル−p−クロロスチレン、α−メチル−m−クロロスチレンなどスチレン化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル、ブチルプロペニルエーテル、メチルブテニルエーテル、エチルブテニルエーテル、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカルバゾール、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテルなどのビニル化合物、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル、ジアリルエーテル、ジエチレングリコールビスアリルエーテル、アリルアセテート、アリルブチラート、アリルヘキサノエート、アリルカプロエート、アリルクロルアセテート、アリルメタクリレート、ジアリルマレート、ジアリルスクシネート、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメレテート、1,3,5−トリアリルベンゼンカルボン酸、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル化合物、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−ドデシレンオキサイド、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシシクロヘキシル)カルボシキレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、2−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、レゾルシノールビス(3−メチル−3−オキセタニルエチル)エーテル、m−キシリレンビス(3−エチル−3−オキセタニルエチルエーテル)等のオキセタン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルシリケート(テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)、エチルシリケート(テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物)、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、これらの化合物を加水分解・縮合して得られる、アルコキシシリル基および/またはシラノール基を有するシリコーン化合物などが挙げられる。これらの重合性官能基を有する化合物の中で、特に(メタ)アクリレート化合物が好適である。
【0039】
本発明の硬化性組成物は、重合・硬化反応を促進させる為に、重合開始剤を含むことができる。重合開始剤は、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤などの公知のものを使用することができる。具体的に例示すると、ラジカル重合開始剤としては、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(イソブチレート)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルブチレート)及びジメチル−2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルペンタノエート)、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過炭酸ナトリウム等であり、また有機過酸化物としてはt−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ターシャリジブチルなどの熱ラジカル重合開始剤、あるいは、3,3−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1,2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどの光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0040】
また、カチオン重合開始剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。これらのうち、特にヨードニウム塩およびスルホニウム塩は、バリエーションが比較的豊富で、安価なものもあるため、好ましい光カチオン重合開始剤である。
【0041】
ヨードニウム塩の具体例としては、(トリクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム・テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0042】
また、スルホニウム塩の具体例としては、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・テトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン、トリフェニルスルホニウム六フッ化ヒ素、トリ(4−メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素等が挙げられる。
【0043】
本発明の硬化性組成物は、固形分濃度調整、塗布性向上、基材への密着性向上等を目的として、有機溶媒を含有できる。有機溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、セロソルブ類及び芳香族化合物類が挙げられる。
【0044】
有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2−メトキシエチルアルコール、2−エトキシエチルアルコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0045】
また、本発明の硬化性組成物は、その他、必要に応じて、無機微粒子、染料、顔料、顔料分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を含有できる。
【0046】
硬化物
本発明の硬化性組成物を重合により硬化させることで硬化物を得ることができる。硬化方法としては、熱ラジカル重合、光ラジカル重合、熱カチオン重合、光カチオン重合、熱重縮合、光重縮合などが好適である。これらの硬化方法において、活性エネルギー線を使用することがより好適である。即ち、本発明の硬化性組成物に、活性エネルギー線を照射することにより、硬化物を製造することができる。ここでいう活性エネルギー線とは、電子線、紫外線、可視光線、赤外線を示す。光源(線源)としては、電子銃、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、白熱電球、太陽光線、IRヒーターなどが挙げられる。また、加熱炉などの輻射熱を利用することもできる。
【0047】
透明フィルム
本発明の硬化性組成物を、押出成形法、キャスティング法など、フィルム製造に広く利用されている方法で所望の膜厚に成膜した後、活性エネルギー線を照射すると、透明フィルムを作製することができる。この透明フィルムは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネル、太陽電池、電子ペーパーなどのエレクトロニクスデバイスのプラスチック基板などに利用できる。
【0048】
積層体
本発明は、基材上に本発明の硬化物からなる層が形成された積層体である。この積層体は、例えば、本発明の硬化性組成物を基材に塗布し、重合硬化させることで作製することができる。積層体に使用される基材としては、例えば、プラスチック、金属、缶、紙、木質材、無機質材、及びこれらの基材にプライマー層を形成したものが挙げられる。これらの中で、プラスチック基材が好適であり、中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの透明プラスチック基材が特に好適である。
【0049】
基材への本発明の組成物の塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、スピンコート法、フローコート法及び静電塗装法などの公知の方法を用いることができる。硬化方法は、前記の活性エネルギー線の照射が好適である。
【0050】
本発明の積層体は、携帯電話、ノートパソコン等のディスプレイ前面板、ヘッドランプカバー等の自動車部品、車両用プラスチック窓材等の各種用途に好適である。
【0051】
合成樹脂類とシルセスキオキサン化合物のブレンド
本発明のシルセスキオキサン化合物は、合成樹脂類にブレンドすることにより、合成樹脂類の改質が期待される。
【0052】
合成樹脂類の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0054】
[合成例1]シラン化合物(A1)の合成
窒素置換した2口フラスコに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン5.00g(22.6mmmol)とジブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.025gを加え、氷冷下で撹拌しながら、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.25g(45.2mmol)を滴下した。滴下終了後、40℃で6時間撹拌した。そこに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン1.00g(4.52mmol)を加え、40℃で20分撹拌した。得られた生成物をヘキサンで洗浄後、溶媒を減圧留去し、シラン化合物(A1)を得た。
【0055】
[合成例2]シルセスキオキサン化合物(SQ1)の合成
ナスフラスコに、合成例1で得られたシラン化合物(A1)0.50g(1.1mmol)とメチルトリエトキシシラン0.196g(1.1mmol)を加え、窒素置換した後に撹拌しながらメタノール3.6mlを加え溶解し、フッ化水素酸水溶液(3.2%)を0.123ml滴下した。滴下終了後、混合物を室温で2時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。生成物を40℃、800Paで4時間乾燥し、透明固体のSQ1を得た。
【0056】
[合成例3]シルセスキオキサン化合物(SQ2)の合成
合成例2において、メチルトリエトキシシランの代わりに、ビニルトリエトキシシラン0.21g(1.1mmol)を用いた以外は同様の手順で、シルセスキオキサン化合物(SQ2)を定量的に得た。
【0057】
[合成例4] シルセスキオキサン化合物(SQ3)の合成
合成例2において、メチルトリエトキシシランの代わりに、2−メタクリロキシプロピル0.29g(1.1mmol)を用いた以外は同様の手順で、シルセスキオキサン化合物(SQ3)を定量的に得た。
【0058】
[比較合成例1]シルセスキオキサン化合物(SQc)の合成
合成例2において、シラン化合物として、メチルトリエトキシシランを用いず、合成例1で得られたシラン化合物(A1)1.00g(2.2mmol)だけを用いた以外は同様の手順により、透明固体のSQcを得た。
【0059】
[実施例1]
合成例2で得られた化合物(SQ1)25部、エポキシアクリレート(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールDA314)67.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、商品名:アクリエステルHO)7.5部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャルティケミカルス株式会社製、商品名:DAROCURE1173)5部を混合し、硬化性組成物C1を調製した。
【0060】
積層体の作製および評価
<積層体の作製>
硬化性組成物C1を、基材である長さ10cm、幅5cm、厚み3mmのアクリル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリライトEX)上に、バーコートで厚さ10μmになるように塗布した後、コンベアを備えた120W/cmの高圧水銀ランプ((株)オーク製作所製、紫外線照射装置、商品名:ハンディーUV−1200、QRU-2161型)を用いて、積算光量3000mJ/cmの紫外線を照射し、基材上に硬化性組成物の硬化物層が形成された積層体L1を形成した。
【0061】
尚、紫外線照射量は紫外線光量計((株)オーク製作所製、商品名:UV−351型、ピーク感度波長360nm)で測定した。
【0062】
得られた積層体L1の硬化物層について、次の評価を行った。
<積層体の硬化物層の評価>
(1)外観
目視にて硬化物層の透明性並びにクラック及び白化の有無を観察し、以下の基準で外観を評価した。
「○」:透明で、クラック及び白化などの欠陥の無いもの。
「×」:不透明な部分があるもの又はクラック若しくは白化などの欠陥があるもの。
【0063】
(2)鉛筆硬度
鉛筆引っかき試験(JIS−K−5600)に準じて硬化物層の鉛筆硬度を評価した。
【0064】
(3)耐擦傷性
ラビングテスター((株)井元製作所製、商品名:A1566改)を使用し、硬化物層の表面を#0000スチールウールで、1cm当たり9.8×10Paの荷重を加えて10往復擦った。次いで、ヘイズメーター(日本電色工業(株)製、商品名:NDH2000)で、傷が発生した部分をヘイズメーターでヘイズ値を測定し、試験前のヘイズ値を差し引いた値(ΔHz(%))で以下のように評価した。
「A」:ΔHzが5%未満
「B」:ΔHzが5%以上〜10%未満
「C」:ΔHzが10%以上
【0065】
[実施例2〜3および比較例1〜2]
実施例1において、硬化性組成物の組成比を表1のように変更した以外は、同様の手順で硬化性組成物C2〜C5を調製した。次いで、実施例1と同様にして積層体L2〜L5を作製して、積層体の硬化物層の評価を実施した。
【0066】
組成物C1〜C5の組成を表1に、積層体L1〜L5の評価結果を表2に示す。
【0067】
【表1】

表中の略号は以下の化合物を示す。
DA314:エポキシアクリレート(ナガセケムテックス(株)製、商品名:デナコール「アクリレートDA314」)
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:「アクリエステルHO」)
D1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャルティケミカルス(株)、商品名:「DAROCURE1173」)
【0068】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるシラン化合物(A)および一般式(2)で表されるシラン化合物(B)の加水分解共縮合により得られるシルセスキオキサン化合物。
【化1】

:炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基
:水素原子またはメチル基
:ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、またはヒドロキシブチル基
m:1または2
A:m=1の場合はNH基、m=2の場合は窒素原子

【化2】


:炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、ラジカル重合性官能基を含有する有機基またはカチオン重合性官能基を含有する有機基
:炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるシラン化合物(A)および前記一般式(2)で表されるシラン化合物(B)を加水分解共縮合する請求項1記載のシルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項3】
無機酸および第4級アンモニウム塩からなる群の少なくとも一種の化合物を触媒として加水分解共縮合を行うことを特徴とする、請求項2記載のシルセスキオキサン化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のシルセスキオキサン化合物を含む硬化性組成物。
【請求項5】
請求項4記載の硬化性組成物を硬化させることで得られる硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物からなる透明フィルム。
【請求項7】
基材上に請求項5記載の硬化物からなる層が形成された積層体。

【公開番号】特開2012−224672(P2012−224672A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91042(P2011−91042)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】