説明

シンチレータプレート及び放射線画像撮影装置

【課題】グリッドとシンチレータの間隔を最小化することにより、放射線検知パネルから出力される画像の品質を向上させること、及び、このようにして得られた放射線検知パネルを用いた放射線画像撮影装置を実現すること。
【解決手段】被写体を透過する際に散乱した放射線を吸収するグリッドの後方に配置され、前記グリッドを透過した放射線を受け蛍光を発するシンチレータ層を基板上に形成したシンチレータプレートにおいて、前記グリッドの一つの面を基板として前記シンチレータ層を形成したことを特徴とするシンチレータプレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にCsI(ヨウ化セシウム)等のシンチレータ層を形成したシンチレータプレート、及び、このようなシンチレータプレートを用いた放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像に代表される放射線画像は、従来から病気診断、非破壊検査等に広く用いられているものである。
【0003】
最近では、被写体を透過した放射線を、放射線検知パネルにより検知して、得られたデジタル情報から放射線画像を得る放射線撮影システムも多用されている。
【0004】
なお、上述の放射線検知パネルとは、放射線を受けて蛍光を発する蛍光体(シンチレータ)を有するプレート(シンチレータプレート)と、発光した蛍光を受光する受光素子を1枚のプレート上に2次元に配置した受光部とを重ねたものの呼称である。
【0005】
この放射線検知パネルは、それに関わる制御基板等と共に一つの薄い箱形の収容器(カセッテ)に収められ、可搬型の放射線画像撮影装置とされることも一般的になっている。
【0006】
通常、放射線検知パネルとの前面には、被写体によって散乱された放射線がそのまま放射線検知パネルのシンチレータに入射することによって発生する画像ぼけを防止するために、グリッドが設けられる。
【0007】
グリッドとは、鉛のように放射線を透過しない吸収材とアルミニウムのように放射線をほとんど吸収しない透過材とを交互に並べた構造をしており、被写体を透過した放射線のうち、予め設計上決められる角度以上の角度を持ってグリッドに入射する放射線を除くことを目的とする公知の技術手段である。
【0008】
既に述べたように、グリッドを透過した放射線はグリッドに近接して配置される放射線検知パネルのシンチレータに入射して、入射線量に比例した強さの蛍光が発光する。
【0009】
発光した蛍光は、前記シンチレータに近接して配置される光電変換素子アレイによって受光され、各受光素子からは受光量に応じた大きさの電気的出力がなされる。
【0010】
ところが、グリッドとシンチレータの間隔が大きいと、シンチレータの入射面にてグリッドの一つのセルを透過した放射線と隣接したセルを透過した放射線とが相互に入り交じる可能性が高くなり、それが画像ぼけの原因となる。
【0011】
このような問題を解決するために、シンチレータと光電変換素子をグリッドの同一セル内に形成する提案もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
しかしながら、このような構成のイメージングプレートの作成に際しては、技術上の困難が多く、コストも上昇させてしまう危険性がある。
【特許文献1】特開2002−71815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述したような状況に鑑みてなされたもので、その目的は、グリッドとシンチレータの間隔を最小化することにより、放射線検知パネルから出力される画像の品質を向上させることと、このようにして得られた放射線検知パネルを用いた放射線画像撮影装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、以下の発明を実現することにより達成される。
1.被写体を透過する際に散乱した放射線を吸収するグリッドの後方に配置され、前記グリッドを透過した放射線を受け蛍光を発するシンチレータ層を基板上に形成したシンチレータプレートにおいて、
前記グリッドの一つの面を基板として前記シンチレータ層を形成したことを特徴とするシンチレータプレート。
2.前記1に記載のシンチレータプレートを有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、放射線画像撮影装置により撮影される放射線画像の画像品質向上、特に画像ぼけの改善が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態例を図を基に説明する。
【0017】
図1は、可搬型放射線画像撮影装置Dの概念図である。
【0018】
可搬型放射線画像撮影装置Dは、上部外装部材1と下部外装部材2とからなるカセッテKに、グリッド3、シンチレータプレート4、光電変換部5を主構成要素とする放射線検知パネルP、電源部PS、制御部C等を収容した装置である。
【0019】
カセッテKを構成する部材としては、収容物を保護するために充分な強度を有する必要があり、また、上部外装部材1は放射線の透過を妨げるものであってはならないことから、炭素繊維樹脂、アルミニウム合金等が採用される。
【0020】
カセッテKの表面と端面には、操作表示部6、コネクタ7が設けられている。
【0021】
図2は、可搬型放射線画像撮影装置Dの内部構成を説明する図である。
【0022】
上述したように、前記放射線検知パネルPは、グリッド3、シンチレータプレート4、光電変換部5から構成される。
【0023】
グリッド3は、被写体を透過し、図の矢印aに方向から入射する放射線のうち、所定の入射角度範囲外の角度をもって入射する放射線を除くもので、被写体によって散乱した放射線がそのままシンチレータプレート4に入射することを防止する公知の手段である。
【0024】
シンチレータプレート4は、グリッド3を経由して入射した放射線を受けて、受けた放射線の強さに応じた光を発する蛍光体(シンチレータ)層を基板上に形成したものである。なお、蛍光体の材料としてはCsI(ヨウ化セシウム)等が採用される。
【0025】
光電変換部5は、光電変換素子をガラス板上に格子状に配列したもので、前記シンチレータプレート4の発光光を受光して電気信号に変換する。
【0026】
光電変換部5から出力された電気信号は、フレキシブル回路基板である接続ケーブル8を介して、制御基板9に送られ、制御基板9は、光電変換部5から送られた電気信号を基に、撮影画像情報を生成する。
【0027】
パネル支持板10は、前記放射線検知パネルP、前記制御基板9を支持するもので、前記放射線検知パネルPの平面性を維持するために必要な平面性と剛性を有しており、支持部材21によって下部外装部材2に固定されている。
【0028】
図3は、グリッド3とシンチレータプレート4の関係を説明する図である。
【0029】
シンチレータプレート4の上面に配置されるグリッド3は、図の斜線で示す放射線吸収部材31と、放射線透過部材32と、カバー部材33等から構成される。
【0030】
放射線吸収部材31としては鉛箔、放射線透過部材32としてはアルミニウムや炭素繊維樹脂、カバー部材33としてはアルミニウム等が採用される。
【0031】
グリッド3に入射した放射線Rのうち、図の矢印R1のようにグリッドの放射線吸収部材31に当たらずにシンチレータプレート4に入射した放射線は、シンチレータ41にて蛍光Fを発光させる。
【0032】
一方、矢印R2のように、放射線吸収部材31に入射した放射線は、放射線吸収部材31に吸収され、シンチレータプレート4に到達しない。
【0033】
ところが、矢印R3で示す様な放射線は、放射線吸収部材31により吸収されることなくシンチレータプレート4に到達するが、グリッド3とシンチレータプレート4の間隔dが大きい場合には、本来望ましい図に示す点線枠内ではなく、枠外にて蛍光Fを発光させる。
【0034】
このような現象は画像のボケとなって現れることから、グリッド3とシンチレータプレート4の蛍光体との間隔Lはできる限り小さいことが望ましい。
【0035】
本発明は、このグリッド3とシンチレータプレート4の間隔Lをできる限り小さくすることによって、画像品質の低下を防止しようとするものである。
【0036】
図4は、グリッド3の片面に形成したシンチレータ41を説明する図である。
【0037】
本発明においては、先ず、グリッド3を作成し、次いで、グリッド3の一つの面を基体としてシンチレータ41を形成する。
【0038】
本実施の形態のグリッド3は、放射線吸収部材31としては鉛箔、放射線透過部材32及びカバー部材33としてはアルミニウムを用いている。
【0039】
グリッドのサイズ(h×d)、鉛箔の厚さ(t1)、およびカバー部材の厚さ(t2)は、例えば、h=1.2mm、d=0.12、t1=0.05mm、t2=0.05mmとすることができるが、これらの値は設計時に決定されるものである。
【0040】
このように構成されたグリッド3を基体として、その片面上にシンチレータ41を蒸着によって柱状結晶構造に形成する。
【0041】
蒸着は、Arガスが導入された0.1Pa程度の真空度の蒸着装置内で、蛍光体であるCsIと複数の添加剤を加熱ルツボにより加熱して、150℃に保持したグリッド3の片面に蒸着させるもので、公知の技術を採用することができる。
【0042】
蒸着終了後、シンチレータ41の表面には防湿等を目的とする保護層42が付与され、グリッド3の片面に形成されたシンチレータプレート4が完成する。
【0043】
以上説明したように作られたシンチレータプレート4とグリッド3との間隔Lは、グリッド3のカバー部材の厚さt2と等しくなり、グリッド3とシンチレータプレートの蛍光体との間隔Lが最小化される。
【0044】
その結果、グリッド3とシンチレータプレート4との間隔Lが大きいことにより発生する画像ボケが減少する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】可搬型放射線画像撮影装置の概念図である。
【図2】可搬型放射線画像撮影装置の内部構成を説明する図である。
【図3】グリッドとシンチレータプレートの関係を説明する図である。
【図4】グリッドの片面に形成したシンチレータを説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
3 グリッド
4 シンチレータプレート
41 シンチレータ(蛍光体)
D 可搬型放射線画像撮影装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過する際に散乱した放射線を吸収するグリッドの後方に配置され、前記グリッドを透過した放射線を受け蛍光を発するシンチレータ層を基板上に形成したシンチレータプレートにおいて、
前記グリッドの一つの面を基板として前記シンチレータ層を形成したことを特徴とするシンチレータプレート。
【請求項2】
請求項1に記載のシンチレータプレートを有することを特徴とする放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−63475(P2009−63475A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232433(P2007−232433)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】