説明

シートクッション用成形型、及びその成形型を用いたシートクッションの製造方法

【課題】裏面材の外側に発泡材料が漏れ出すことを抑制できるシートクッション用成形型を提供する。
【解決手段】裏面材10が一体化されたシートクッションを製造するためのシートクッション用成形型のキャビティを形成する型内面には、裏面材10を型内面に取り付けるための複数の取付部3が設けられている。取付部3は型内面から突出するセットピン4と、セットピン4の基端部4aを囲む環状の磁気吸着領域を型内面に形成する磁性部5、6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートや家具用シートに用いられるシートクッションの製造方法、及び同シートクッションの製造に用いるシートクッション用成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用シートに用いられるシートクッションの裏面には、シートフレームとの摩擦による異音の発生を防止するために、フェルト、粗毛布、不織布等の裏面材が一体に裏打ちされている。こうした裏面材が一体化されたシートクッションの製造方法としては、例えば特許文献1に開示される方法が知られている。特許文献1では、まず、上型100に設けたセットピン101と、裏面材200の対応する部位に設けた挿通孔201とを位置合わせし、挿通孔201にセットピン101を挿通してセットピン101に裏面材200を係止させることにより、上型100の内面に裏面材200をセットする(図4(a)参照)。このとき、図4(b)に示すようにセットピン101の先端側に抜け止め用の膨出部102が形成されていて、挿通孔201はその膨出部102を乗り越えて所定位置にセットされる。この膨出部102と挿通孔201との係合によって、上型100にセットされた裏面材200のセットピン101からの外れが防止される。そして、上型100の内面に裏面材200をセットした状態で、キャビティ内に発泡材料Aを注入して発泡させることによって、裏面材200が裏打ちされたシートクッションが一体成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−358917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明のように、セットピン101に膨出部102を設けた場合、セットピン101を挿通可能とするために裏面材200の挿通孔201をセットピン101の膨出部102よりも大きく形成する必要がある。仮に、挿通孔201をセットピン101の膨出部102よりも小さく形成したとしても、セットピン101を挿通させる際に、膨出部102に合わせて挿通孔201が広げられてしまい、挿通後の挿通孔201はセットピン101の膨出部102と同程度の大きさになる。そのため、上型100に裏面材200をセットした状態では、裏面材200の挿通孔201とセットピン101の基端部との間に隙間が生じる。そして、発泡材料の発泡時において、上記隙間から発泡材料が裏面材200の外側、即ち裏面材200と上型100との間に漏れ出してしまうという問題があった。
【0005】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、裏面材の外側に発泡材料が漏れ出すことを抑制できるシートクッション用成形型、及びその成形型を用いたシートクッションの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載のシートクッション用成形型は、裏面材が一体化されたシートクッションを製造するためのシートクッション用成形型であって、キャビティを形成する型内面には、前記裏面材を前記型内面に取り付けるための複数の取付部が設けられ、前記取付部は、前記型内面から突出するセットピンと、該セットピンの基端部を囲む環状の磁気吸着領域を前記型内面に形成する磁性部とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のシートクッション用成形型は、請求項1に記載の発明において、前記セットピンは、基端部から先端部まで断面形状が一定、又は基端部から先端部までの断面形状のうち基端部の断面形状が最も大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のシートクッション用成形型は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記磁性部は、前記型内面に固定された磁性金属よりなる金属板と、該金属板に接触した状態で型内に配置された磁石とからなることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載のシートクッションの製造方法は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシートクッション用成形型に裏面材をセットした状態でキャビティ内に発泡材料を注入して発泡させることにより、裏面材が一体化されたシートクッションを製造するシートクッションの製造方法であって、前記裏面材における前記セットピンに対応する位置にセットピン挿通部を設けるとともに、前記セットピン挿通部を囲むように環状の磁性体部材を前記裏面材に取り付け、前記裏面材の前記セットピン挿通部に前記成形型の前記セットピンを挿通させるとともに、前記裏面材に取り付けられた前記磁性体部材と前記成形型の前記磁性部とを磁気吸着させることにより、前記成形型の内面に前記裏面材をセットすることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載のシートクッションの製造方法は、請求項4に記載の発明において、前記セットピン挿通部を前記セットピンの基端部の断面形状よりも小さく形成し、前記裏面材の前記セットピン挿通部に前記セットピンを挿通させた際に、前記セットピン挿通部の周囲を前記セットピンに沿って内側に立ち上がらせて、前記セットピンと前記セットピン挿通部とを面接触させることを特徴とする。
【0011】
本発明のシートクッション用成形型、及びその成形型を用いたシートクッションの製造方法では、成形型の内面に裏面材をセットする際、成形型の各取付部において、裏面材のセットピン挿通部にセットピンを挿通させるとともに、磁性部と裏面材に取り付けられた磁性体部材とを磁気吸着させる。このとき、成形型側の磁性部と裏面材側の磁性体部材とが、セットピン及びセットピン挿通部を囲む環状の領域で磁気吸着するため、セットピン及びセットピン挿通部を囲む環状の領域で裏面材と成形型とが密着した状態となる。これにより、発泡材料の発泡時において、裏面材のセットピン挿通部とセットピンと間の隙間から裏面材の外側に漏れ出た発泡材料は、セットピン及びセットピン挿通部を囲む環状の密着領域の内側に留められ、同領域をすり抜けて広がることが抑制される。したがって、発泡材料の発泡時において、裏面材の外側へ発泡材料が漏れ出たとしても、その範囲を環状の密着領域の内側に留めることができ、それ以上の発泡材料の漏れを抑制することができる。
【0012】
また、取付部に設けられる磁性部によって裏面材を成形型の型内面に密着させていることから、裏面材の抜け止めを目的として、セットピンに膨出部(基端部から先端部までの断面形状のうち基端部よりも断面形状の大きい部位)を設ける必要はない。そのため、セットピンを、基端部から先端部まで断面形状が一定の形状や、基端部から先端部までの断面形状のうち基端部の断面形状が最も大きくなる形状に形成することも可能である。この場合、裏面材のセットピン挿通部をセットピンの基端部の断面形状と同じ大きさに形成したとしても、セットピンを挿通させる際に、セットピンの基端部の大きさを超えてセットピン挿通部が広げられることはない。そのため、裏面材のセットピン挿通部とセットピンとの間に隙間が形成され難くなる。
【0013】
さらに、裏面材のセットピン挿通部をセットピンの基端部よりも小さく形成すると、セットピン挿通部にセットピンを基端部まで挿通させた際に、セットピン挿通部はセットピンの基端部の大きさまで広げられつつ、その周囲部分がセットピンに沿って内側に立ち上る。そして、セットピン挿通部の周囲部分とセットピンとが面で密着した状態となる。これにより、発泡材料の発泡時において、裏面材のセットピン挿通部とセットピンと間に発泡材料が入り込み難くなり、発泡材料が裏面材の外側に漏れ出すことそのものを抑制できる。
【0014】
また、シートクッション用成形型の磁性部を、型内面に固定された磁性金属よりなる金属板と、その金属板に接触した状態で型内に配置された磁石とから構成すれば、特殊な形状の磁石を用いることなく、様々な形状の磁気吸着領域を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシートクッション用成形型、及びその成形型を用いたシートクッションの製造方法によれば、裏面材の外側に発泡材料が漏れ出すことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)はシートクッション用成形型の断面図、(b)は取付部の拡大図。
【図2】裏面材を成形型にセットする状態を示す斜視図。
【図3】(a)は裏面材を成形型にセットする前の断面図、(b)は裏面材を成形型にセットした後の断面図。
【図4】(a)は従来のシートクッション用成形型の断面図、(b)はセットピン周辺部分の拡大図、(c)は裏面材の挿通孔が引き伸ばされる状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のシートクッション用成形型(以下、単に「成形型」という。)を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、成形型は上方に開口する下型2と、下型2の開口を閉塞する上型1とを備え、上型1と下型2との間にシートクッションの外形に対応するキャビティSを形成している。具体的には、上型1の内面がシートクッションの裏面側を形成するとともに、下型2の内面がシートクッションの表面側を形成する。上型1及び下型2を構成する材質としては磁性を有さない金属、例えばアルミニウムを用いることが好ましい。
【0018】
シートクッションの裏面側を形成する上型1の内面には、裏面材10を取り付けるための取付部3が複数箇所に設けられている。図1(b)に示すように、取付部3は上型1の型内面からキャビティS側に突出するセットピン4を備えている。セットピン4は、基端部4aから先端部4bまで断面形状(型内面と平行な断面の断面形状)が一定の円柱状に形成されるとともに、その基端部4aの先には螺子溝が刻設された螺子部4cが設けられている。また、セットピン4の先端部4bは、裏面材10を傷つけないように半球状に丸められている。そして、セットピン4は螺子部4cによって上型1に螺子止めされている。
【0019】
また、上型1の内面におけるセットピン4の根元部分には、セットピン4の周囲を囲むように、磁性金属よりなる環状の金属板5(たとえば、鉄製のワッシャー)が取り付けられている。換言すると、環状の金属板5の内域にセットピン4が位置している。本実施形態では、環状の金属板5の内域形状が、セットピン4の基端部4aの断面形状と同形状に形成され、金属板5の内周面とセットピン4の基端部4aの外周面とが全周にわたって接した状態となっている(図1(a)及び図2参照)。なお、セットピン4の基端部4aの断面形状とは、金属板5の表面と同一平面上における断面形状を意味する。また、図面においては、金属板5を強調するために、金属板5を実際よりも大きく描いている。
【0020】
また、上型1の内部には永久磁石6が金属板5と接触した状態で埋設されている。永久磁石6と金属板5とを接触させることにより金属板5に磁性が付与され、金属板5の表面に環状の磁気吸着領域が形成される。本実施形態では、金属板5と永久磁石6とによって磁性部が構成されるとともに、セットピン4と金属板5と永久磁石6とによって取付部3が構成されている。
【0021】
次に、裏面材10が一体化されたシートクッションを、上記成形型を用いて製造する方法について説明する。
まず、前処理として、図2に示すように、裏面材10における上型1の取付部3の形成位置に対応する各部位に、セットピン挿通部としての挿通孔11をそれぞれ貫通形成する。この挿通孔11はセットピン4の基端部4aの断面形状よりも小さくなるように形成されている。そして、裏面材10の外面側、即ち上型1に接する側に、挿通孔11を囲むように貫通孔12aを備える環状のフェライトシート12を接着剤により貼り付ける。また、フェライトシート12の貫通孔12aは、セットピン4の基端部4aの断面形状よりも大きく、且つ金属板5の外形よりも小さくなるように形成されている。なお、図面においては、フェライトシート12を強調するためにフェライトシート12を実際よりも大きく描いている。
【0022】
続いて、フェライトシート12を貼り付けた裏面材10を成形型の上型1にセットする。上型1の取付部3に対して、裏面材10の対応する部位に設けられた挿通孔11を位置合わせし、挿通孔11及び同挿通孔11の周囲に貼り付けられたフェライトシート12に、取付部3のセットピン4を挿通させる。このとき、図3(b)に示すように、セットピン4の基端部4aの断面形状よりも小さく形成された挿通孔11は、セットピン4の基端部4aの大きさまで広げられつつ、その周囲部分がセットピン4に沿って内側に立ち上った状態となる。
【0023】
さらに、裏面材10をセットピン4の基端部4aまで押し込み、裏面材10に貼り付けられたフェライトシート12と、セットピン4の周囲に位置する金属板5とを磁気吸着させる。環状のフェライトシート12と環状の金属板5とが磁気吸着することにより、セットピン4及び挿通孔11を囲む環状の領域で裏面材10と上型1の内面(環状の金属板5)とが密着した状態となる。このように、裏面材10の挿通孔11に取付部3のセットピン4を挿通させるとともに、裏面材10のフェライトシート12と取付部3の金属板5とを磁気吸着させることによって、上型1に裏面材10がセットされる(図1の破線部分参照)。
【0024】
上型1に裏面材10がセットされた状態では、セットピン4に裏面材10の挿通孔11が接触して位置決めされることにより、上型1の内面に対する裏面材10の面方向の位置ずれが規制される。また、セットピン4及び挿通孔11の周囲において、金属板5とフェライトシート12とが磁気吸着することにより、上型1の内面から裏面材10が離れて、セットピン4から裏面材10が外れることが規制される。
【0025】
上型1に裏面材10をセットした後、成形型のキャビティS内に発泡材料を注入し、これを発泡させることにより、裏面材10が裏打ちされたシートクッションが一体成形される。発泡材料の発泡時において、発泡材料が裏面材10の挿通孔11に達すると、発泡圧により発泡材料は裏面材10の挿通孔11とセットピン4との間から裏面材10の外側に漏れ出ようとする。ここで、図1(b)及び図3(b)に示すように、裏面材10の挿通孔11の周囲部分がセットピン4に沿って内側に立ち上り、挿通孔11の周囲部分とセットピン4の周面とが面で密着した状態となっている。こうした密着部分がセットピン4の先端部4b側から基端部4a側へ向かう発泡材料の流動を抑え、挿通孔11とセットピン4との間に発泡材料が入り込み難くなる。また、セットピン4と挿通孔11との間から裏面材10の外側に発泡材料が漏れ出したとしても、セットピン4及び挿通孔11を囲む環状の領域で裏面材10と上型1の内面とが密着しているため、漏れ出した発泡材料は密着領域の内側に留められる。
【0026】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態のシートクッションの製造方法では、上型1の内面に裏面材10をセットする際、上型1の各取付部3において、裏面材10の挿通孔11にセットピン4を挿通させるとともに、磁性部を構成する環状の金属板5と裏面材10に貼り付けた環状のフェライトシート12とを磁気吸着させている。そのため、仮に、発泡材料の発泡時において、裏面材10の挿通孔11とセットピン4との隙間から裏面材10の外側に発泡材料が漏れ出たとしても、その発泡材料は、フェライトシート12と金属板5とが磁気吸着して形成される環状の密着領域の内側に留められ、同領域をすり抜けて広がることが抑制される。
【0027】
(2)図4(c)に示すように、従来の構成では、裏面材200の挿通孔201とセットピン101とを係合させた状態で裏面材200が面方向に引っ張られると、裏面材200の引っ張られた方向に挿通孔201が伸びて変形してしまうという場合があった。こうした挿通孔201の伸び変形は、挿通孔201とセットピン101との間に大きな隙間を形成し、発泡材料の発泡時において裏面材の外側への発泡材料が漏れを助長する。
【0028】
本実施形態では、裏面材10の外面に、挿通孔11を囲むように環状のフェライトシート12を貼り付けている。これにより、挿通孔11とセットピン4とを係合させた状態で裏面材10が面方向に引っ張られたとしても、裏面材10が一定以上移動したところで、挿通孔11を囲むフェライトシート12の内周面とセットピン4とが当接する。これにより、裏面材10の移動が規制されて、それ以上の挿通孔11の伸び変形が抑制される。
【0029】
(3)裏面材10に貼り付けたフェライトシート12と上型1の磁性部との磁気吸着によって、セットピン4の根元部分にて上型1の内面に裏面材10を貼り付けている。これにより、図4に示す従来構成のように、セットピン4から裏面材10が抜けることを防止するための膨出部をセットピン4に設ける必要はなく、セットピン4の設計の自由度が高まる。
【0030】
(4)セットピン4を基端部4aから先端部4bまでの断面形状が一定である円柱状に形成するとともに、裏面材10の挿通孔11をセットピン4の基端部4aの断面形状よりも小さく形成している。そして、挿通孔11にセットピン4を挿通させる際に、挿通孔11をセットピン4の基端部4aの大きさまで広げつつ、その周囲部分をセットピン4に沿って内側に立ち上がらせるようにしている。これにより、上型1に裏面材10をセットした状態では、裏面材10の挿通孔11の周囲部分とセットピン4の周面とが面で密着する。よって、発泡材料の発泡時において、裏面材10の挿通孔11とセットピン4と間に発泡材料が入り込み難くなり、発泡材料が裏面材10の外側に漏れ出すことそのものを抑制できる。
【0031】
ところで、上型1に裏面材10をセットした際の安定性の観点から、裏面材10における挿通孔11の形成位置、及び上型1における取付部3の形成位置は、シートクッションの隅部から中央部に対応する位置に全体的に配置されていることが好ましい。しかしながら、従来の構成では、挿通孔11から裏面材10の外側に漏れ出した発泡体部分とシートフレームとの接触を避けるために、シートフレームと接触しやすい中央部に対応する部位に挿通孔11及び取付部3を形成することは避けられていた。上記構成によれば、成形時における発泡材料の裏面材10の外側への漏れ出しを抑制できるため、シートフレームの位置を考慮することなく、挿通孔11及び取付部3の形成位置を自由に設定することが可能になる。
【0032】
(5)本実施形態の成形型の上型1には、裏面材10を型内面に取り付けるための複数の取付部3が設けられている。取付部3は、上型1の内面から突出するセットピン4と、セットピン4の基端部4aを囲む環状の磁気吸着領域を上型1の内面に形成する磁性部とを備えている。上記構成の成形型によれば、裏面材10として、セットピン4を挿通させる挿通孔11を備えるとともに挿通孔11を囲むように環状のフェライトシート12が貼り付けられた裏面材を用いた場合に、発泡材料の発泡時における裏面材10の外側への発泡材料の漏れ出しを抑制することができる。
【0033】
(6)上型1の内面に固定された環状の金属板5と、金属板5に接触した状態で上型1内に配置された永久磁石6とから磁性部を構成している。上記構成によれば、特殊な形状の磁石を用いることなく、金属板5の形状を変更するのみで、様々な形状の磁気吸着領域を容易に形成することができる。
【0034】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。また、次の変更例を互いに組み合わせ、その組み合わせの構成のように上記実施形態を変更することも可能である。
【0035】
・ セットピン4の形状は特に限定されるものではない。ただし、裏面材10のセット時に挿通孔11がセットピン4の基端部4aの断面形状よりも大きく広げられることを避けるという観点から、基端部4aから先端部4bまで断面形状が一定の形状や、基端部から先端部までの断面形状のうち基端部4aの断面形状が最も大きくなる形状が好ましい。基端部4aから先端部4bまで断面形状が一定の形状としては、例えば、円柱状や角柱状が挙げられる。基端部4aの断面形状が最も大きくなる形状としては、例えば、円錐状や角錐状が挙げられる。
【0036】
・ 磁性部を構成する金属板5の形状は円環状に限定されるものではない。たとえば、内部に円形の孔を有する多角形状の環状金属板であってもよい。また、環状の金属板5の内域をセットピン4の基端部4aの断面形状よりも大きくし、金属板5の内周面とセットピン4の基端部4aの外周面との間に多少の隙間を設けてもよい。さらに、金属板5を環状でなく単なる板状としてもよく、この場合にはセットピン4の基端部4aを金属板5の表面に固定すればよい。
【0037】
・ 金属板5の表面と上型1の内面とが面一となるように、上型1内に金属板5を配置してもよい。この場合、成形されたシートクッションの裏面材10に金属板5の跡が残り難くなる。
【0038】
・ 永久磁石6の代わりに電磁石を用いてもよい。また、環状の金属板5及び永久磁石6に代えて、環状の永久磁石により磁性部を構成してもよい。
・ たとえば、金属板5に対して永久磁石6を接離可能に構成し、金属板5に磁性を付与したオン状態と、金属板5に磁性を付与しないオフ状態とに磁性部の状態を切り換え可能としてもよい。このように構成した場合、成形後に磁性部を上記オフ状態とすると、金属板5と裏面材10のフェライトシート12との間の磁気吸着が解消され、上型1から成形されたシートクッションを容易に取り外すことができる。また、上型1からシートクッションを取り外す際に、フェライトシート12が裏面材10から剥がれて金属板5側に残ることを抑制できる。
【0039】
・ 成形型に対する取付部3の設置数及び設置位置は特に限定されるものではない。たとえば、シートクッションの中央部分に対応する位置に取付部3を設けてもよい。
・ セットピン挿通部としての挿通孔11の大きさは特に限定されるものではないが、上型1に裏面材10をセットした際に、挿通孔11とセットピン4の基端部4aとの間に隙間が形成されないように、セットピン4の基端部4aと同じ、又はそれよりも小さく形成することが好ましい。また、挿通孔11の形状は円形状に限定されるものではなく、楕円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0040】
・ 裏面材10に設けられるセットピン挿通部の構成は挿通孔11に限定されるものではなく、例えば十字状の切り込みであってもよい。
・ 上記実施形態では、裏面材10の外面側に磁性体部材としてのフェライトシート12を貼り付けていたが、裏面材10の内面側に貼り付けるようにしてもよい。
【0041】
・ フェライトシート12の形状は、円環状に限定されるものではなく、内部に貫通孔12aを有していればどのような形状であってもよい。たとえば、全体として多角形状をなし、内部に円形の貫通孔12aを備える形状であってもよい。また、フェライトシート12は金属板5よりも大きく形成されていてもよいし、金属板5よりも小さく形成されていてもよい。
【0042】
・ 上記実施形態では磁性体部材としてフェライトシート12を用いていたが、磁性体部材の構成はこれに限られるものではない。たとえば、磁性部を構成する金属板5と同様の環状の金属板を裏面材10に貼り付けてもよいし、磁性体塗料を裏面材10の挿通孔11を囲む所定の範囲に塗布又は含浸させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
S…キャビティ、1…上型、2…下型、3…取付部、4…セットピン、4a…基端部、4b…先端部、5…金属板、6…永久磁石、10…裏面材、11…挿通孔、12…フェライトシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面材が一体化されたシートクッションを製造するためのシートクッション用成形型であって、
キャビティを形成する型内面には、前記裏面材を前記型内面に取り付けるための複数の取付部が設けられ、
前記取付部は、前記型内面から突出するセットピンと、該セットピンの基端部を囲む環状の磁気吸着領域を前記型内面に形成する磁性部とを備えることを特徴とするシートクッション用成形型。
【請求項2】
前記セットピンは、基端部から先端部まで断面形状が一定、又は基端部から先端部までの断面形状のうち基端部の断面形状が最も大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシートクッション用成形型。
【請求項3】
前記磁性部は、前記型内面に固定された磁性金属よりなる金属板と、該金属板に接触した状態で型内に配置された磁石とからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシートクッション用成形型。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシートクッション用成形型に裏面材をセットした状態でキャビティ内に発泡材料を注入して発泡させることにより、裏面材が一体化されたシートクッションを製造するシートクッションの製造方法であって、
前記裏面材における前記セットピンに対応する位置にセットピン挿通部を設けるとともに、前記セットピン挿通部を囲むように環状の磁性体部材を前記裏面材に取り付け、
前記裏面材の前記セットピン挿通部に前記成形型の前記セットピンを挿通させるとともに、前記裏面材に取り付けられた前記磁性体部材と前記成形型の前記磁性部とを磁気吸着させることにより、前記成形型の内面に前記裏面材をセットすることを特徴とするシートクッションの製造方法。
【請求項5】
前記セットピン挿通部を前記セットピンの基端部の断面形状よりも小さく形成し、
前記裏面材の前記セットピン挿通部に前記セットピンを挿通させた際に、前記セットピン挿通部の周囲を前記セットピンに沿って内側に立ち上がらせて、前記セットピンと前記セットピン挿通部とを面接触させることを特徴とする請求項4に記載のシートクッションの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−20449(P2012−20449A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159055(P2010−159055)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】