説明

シート保持部構造

【課題】衝突時のシート側からの荷重入力に起因するサイドメンバの座屈を防止又は抑制することができるシート保持部構造を得る。
【解決手段】連結体40は、リヤフロアサイドメンバ28におけるキック部28Cの後端側屈曲部34Bの前後に亘る範囲に配設されてフロアリインフォース36と共にリヤフロアサイドメンバ28の底部32及び上端フランジ部30に固定されており、車両正面視で閉断面構造とされているので、リヤフロアサイドメンバ28の断面崩れの発生が効果的に抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドメンバ側にシート保持部材を取り付けたシート保持部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のアンダーボデー構造においては、車両前後方向に延びるリインフォース(サイドメンバ)内にロアシートレール(シート保持部材)を設置している場合がある(例えば、特許文献1参照)。このような埋設構造では、衝突時の荷重がシートを介してロアシートレールの取付部に伝達されてリインフォース(サイドメンバ)に断面崩れが生じると、リインフォース(サイドメンバ)が座屈する場合がある。
【特許文献1】実開平7−15483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記事実を考慮して、衝突時のシート側からの荷重入力に起因するサイドメンバの座屈を防止又は抑制することができるシート保持部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載する本発明のシート保持部構造は、車体フロアの下面側に結合されて略車両前後方向に延在し、前記車体フロアとで略車両前後方向に延在する閉断面部を構成すると共に、車両上下方向にオフセットした前部と後部とを繋いで前後端側が屈曲されたキック部を備えたサイドメンバと、前記キック部の近傍に形成された前記車体フロアの開口部から前記サイドメンバ内に装着され、車両上方側が開口されたボックス状のフロアリインフォースと、前記車体フロアの車両上方側で車両前後方向に延在すると共に車両用シートを支持し、後端部が前記フロアリインフォース内に挿入された長尺状のシート保持部材と、前記シート保持部材の後端部に固着されて前記フロアリインフォース内に配置され、前記キック部の前端側屈曲部及び後端側屈曲部の少なくとも一方の前後に亘る範囲に配設されて前記フロアリインフォースと共に前記サイドメンバの底部及び上端部に取り付けられ、かつ車両正面視で閉断面構造とされた連結体と、を有することを特徴とする。
【0005】
請求項1に記載する本発明のシート保持部構造によれば、シート保持部材の後端部に固着された連結体がフロアリインフォース内に配置されてサイドメンバの底部及び上端部に取り付けられているので、例えば、衝突時には、乗員からシートベルト装置に作用する荷重がシート、シート保持部材、連結体及びフロアリインフォースを介してサイドメンバへ伝達される。これにより、サイドメンバは、車両前方側斜め上方への荷重を受ける。
【0006】
ここで、連結体は、サイドメンバにおけるキック部の前端側屈曲部及び後端側屈曲部の少なくとも一方の前後に亘る範囲に配設されてフロアリインフォースと共にサイドメンバの底部及び上端部に取り付けられているので、当該屈曲部の前後に亘る範囲でサイドメンバ及びフロアリインフォースと共に荷重に抗する。このため、この範囲でのサイドメンバの変形が抑えられる。また、連結体は、車両正面視で閉断面構造とされているので、連結体の断面崩れ(断面変形)の発生、ひいてはサイドメンバの断面崩れの発生が効果的に抑えられる。これらによって、サイドメンバの前記屈曲部を起点とした座屈の発生が防止又は抑制される。
【0007】
請求項2に記載する本発明のシート保持部構造は、請求項1記載の構成において、前記連結体の閉断面部は、前記シート保持部材の後端部を覆う位置を含んで略車両前後方向に延在していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明のシート保持部構造によれば、連結体の閉断面部がシート保持部材の後端部を覆う位置を含んで略車両前後方向に延在しているので、衝突時にシート側からシート保持部材、連結体及びサイドメンバに対して車両前方側斜め上方への荷重が作用しても、該荷重が安定的に支持される。また、シート保持部材の後端部が別途カバーによって覆われなくても、連結体とシート保持部材との間への異物の入り込みが妨げられる。
【0009】
請求項3に記載する本発明のシート保持部構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記連結体は、車両正面視で車両上方側が開放された開断面形状に形成されて上端にフランジを備えたブラケットと、前記ブラケットのフランジ上面に接合されて当該ブラケットと共に閉断面構造を形成すると共に当該ブラケット及び前記フロアリインフォースと共に前記サイドメンバの上端部に取り付けられた蓋体と、を含んで構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明のシート保持部構造によれば、連結体は、蓋体がブラケットのフランジ上面に接合されて当該ブラケットと共に閉断面構造を形成すると共に蓋体がブラケット及びフロアリインフォースと共にサイドメンバの上端部に取り付けられているので、簡易な構成でありながら、連結体のサイドメンバ上端部への取付部近傍における剛性及び強度が効果的に高められ、衝突時にシート側からシート保持部材を介して連結体に車両前方側斜め上方への荷重が作用しても、連結体及びサイドメンバの断面崩れの発生が効果的に抑えられる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のシート保持部構造によれば、衝突時のシート側からの荷重入力に起因するサイドメンバの座屈を防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【0012】
請求項2に記載のシート保持部構造によれば、衝突時にシート側から作用する荷重を安定的に支持することができると共に、シート保持部材の後端部に別途カバーを覆う必要がなくなるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項3に記載のシート保持部構造によれば、簡易な構成でありながら、衝突時のシート側から荷重が入力されても連結体及びサイドメンバの断面崩れ(断面変形)の発生を効果的に抑えることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るシート保持部構造について図1〜図5を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0015】
図1に示されるように、車室内には、車両用シートとしてのリヤシート10(後席となる2席、3席)が配設されている。リヤシート10は、乗員が着座するシートクッション12と、このシートクッション12の後端部に起立状態で配置されたシートバック14と、このシートバック14の上端部に配置され乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、を含んで構成されている。
【0016】
リヤシート10におけるシートクッション12の下面側には、車両前後方向を長手方向とする複数本(本実施形態では計四本)のシートレッグ18が配設されており、シートレッグ18の下端部は、シートレールインナ20(図3参照)とされている。シートレールインナ20(図3参照)は、チャンネル状に形成されたシート保持部材としての長尺状のシートスライドレール22にスライド可能に挿嵌されている。図1に示されるように、シートスライドレール22は、車体フロア24の車両上方側で車両前後方向に沿って延在すると共にリヤシート10を支持している。
【0017】
車体フロア24の両サイドの下面側には、図1の2−2線に沿う拡大断面図である図2に示されるように、リヤフロアサイドメンバ28が略車両前後方向を長手方向として延在されている。図3に示されるように、リヤフロアサイドメンバ28は、長手直角方向の断面形状を車体上方側が開放されたハット形状としている。すなわち、リヤフロアサイドメンバ28は、車体フロア24に対して車両下方側へ凸状に突出されたメンバである。図2に示されるように、リヤフロアサイドメンバ28の上端フランジ部30は、スポット溶接等によって車体フロア24の下面側に結合されている。これによって、リヤフロアサイドメンバ28と車体フロア24とは、略車両前後方向に延在する閉断面部を構成している。
【0018】
図1に示されるように、車体フロア24は、リヤシート10が配設されるセンターフロア部24Bを備えると共に、センターフロア部24Bよりも車両前方側にはフロントフロア部24Aを備え、センターフロア部24Bよりも車両後方側にはリヤフロア部24Cを備えている。ここで、リヤデファレンシャルギアユニット(図示省略)やリヤサスペンション(図示省略)等が配設されている関係で、リヤフロア部24Cは、センターフロア部24Bよりも一段上がった段差形状を成している。すなわち、本実施形態の車体フロア24は、リヤフロア部24Cがセンターフロア部24Bよりも車両上方側へオフセットした構造になっている。リヤフロア部24Cとセンターフロア部24Bとの間は、車体後方側へ向けて車両上方側に傾斜した傾斜部24Dによって接続されている。
【0019】
また、図2に示されるように、リヤフロアサイドメンバ28も、側面視でメンバ後部28Aがメンバ前部28Bに対して車両上方側へ所定距離だけオフセットした形状になっている。さらに、メンバ前部28Bとメンバ後部28Aとは、側面視で車体後方側へ向けて車両上方側に傾斜されたキック部28Cを介して相互に接続されている(繋がれている)。キック部28Cは、前後端側が屈曲されている(前端側屈曲部を符号34A、後端側屈曲部を符号34Bで示す。)。
【0020】
車体フロア24には、キック部28Cの近傍(キック部28Cの対向部位及びその近傍部位を含む範囲)に開口部26が形成されている。この開口部26には、キック部28Cの断面内方へフロアリインフォース36が挿入されており、フロアリインフォース36は、開口部26からリヤフロアサイドメンバ28内に装着されている。
【0021】
フロアリインフォース36は、車両上方側が開口されたボックス状とされており、その底壁部36Aは、後端側屈曲部34Bの(車両前後方向における)前後に亘る範囲(リヤフロアサイドメンバ28におけるキック部28Cの後部及びキック部28Cの車両後方側の近傍部位)の底面に当接状態で配置されている。また、フロアリインフォース36は、この底壁部36Aの前端部から略車両上方側へ屈曲された前壁部36Bと、底壁部36Aの後端部から略車両上方側へ屈曲された後壁部36Cと、左右一対の側壁部36D(図3参照)と、を備えると共に、開口周縁部に折り曲げにより形成された枠状の取付フランジ部36Eを備えている。取付フランジ部36Eは、車体フロア24の上面にスポット溶接等によって固着されている。
【0022】
車体フロア24の開口部26からフロアリインフォース36内には、シートスライドレール22の後端部22Aが挿入されている。車体フロア24に開口部26を形成してシートスライドレール22の後端部22Aをフロアリインフォース36内に挿入させる構成としているのは、車体フロア24に対するシートスライドレール22の車両上方側への突出量を抑えるためである。なお、シートスライドレール22の突出量が抑えられることでフラットなフロアカーペット面(図示省略)の高さ位置を抑えることができる。
【0023】
シートスライドレール22の後端部22Aには、連結体40の一部を構成するシートレールブラケット42の前部上端が溶接により固着されている。シートレールブラケット42は、フロアリインフォース36内に配置され、キック部28Cの後端側屈曲部34Bの(車両前後方向における)前後に亘る範囲(換言すれば、キック部28Cの後部から後端側屈曲部34B(後端側の屈曲点)を越えた位置までの範囲)に配設されている(後端側の屈曲点のカバー)。
【0024】
シートレールブラケット42は、高張力鋼板で形成された剛体に近い強固な部材であり、図3に示されるように、車両正面視で車両上方側が開放された開断面形状に形成されて上端にフランジ52を備えている(すなわち、正面視でハット形状に形成されている。)。図2に示されるように、シートレールブラケット42の下部44は、フロアリインフォース36の底壁部36Aの後部形状にほぼ沿った形状とされている。図5に示されるように、シートレールブラケット42の下部44の前端には、ボルト挿通孔44Aが貫通形成されている。図2に示されるように、シートレールブラケット42の下部44の前端は、フロアリインフォース36の底壁部36Aに当接状態で配置されて、ボルト46及びウエルドナット48で、フロアリインフォース36の底壁部36Aと共にリヤフロアサイドメンバ28の底部32に共締めによって取り付けられて(固定されて)いる。
【0025】
また、図3に示されるように、シートレールブラケット42は、下部44の車幅方向両端部から略車両上方側へ屈曲された左右一対の側部50を備えている。シートレールブラケット42の深さ(側部50の高さ)は、比較的深めとされており、略車両上下方向に作用する荷重に対して変形しにくい構造となっている。左右一対の側部50の上端部からは互いに離反する方向へ屈曲されてフランジ52が形成されている。
【0026】
図5に示されるように、左右一対のフランジ52のフランジ後端部54は、さらに左右に張り出されて取付用とされている。フランジ後端部54には、ボルト挿通孔54Aが貫通形成されている。図4に示されるように、フランジ後端部54の上面(フランジ上面)には、連結体40の一部を構成する蓋体としてのプレート56が溶接によって接合されている。プレート56には、フランジ後端部54のボルト挿通孔54Aと連通するボルト挿通孔56Aが貫通形成されている。
【0027】
図3に示されるように、プレート56の接合されたフランジ後端部54は、フロアリインフォース36の取付フランジ部36Eに当接状態で配置されている。プレート56及びフランジ後端部54は、ボルト58及びウエルドナット60によって、フロアリインフォース36及び車体フロア24と共にリヤフロアサイドメンバ28の上端フランジ部30に共締めによって取り付けられて(固定されて)いる。すなわち、プレート56、シートレールブラケット42のフランジ後端部54、フロアリインフォース36の取付フランジ部36E、車体フロア24及びリヤフロアサイドメンバ28の上端フランジ部30は、ボルト58及びウエルドナット60によって締結荷重を受けている。これにより、シートレールブラケット42のリヤフロアサイドメンバ28側への取付点は、底部32側への一点に加えて上端フランジ部30側への二点が追加されることになる。
【0028】
また、リヤフロアサイドメンバ28側への取付点間を結ぶプレート56は、シートレールブラケット42の左右一対のフランジ後端部54同士を連結しており、シートレールブラケット42と共に閉断面構造を形成している。すなわち、連結体40は、プレート56とシートレールブラケット42とが一体化されることで、車両正面視で閉断面構造とされている。
【0029】
以上のように、本実施形態に係るシート保持部構造は、シートスライドレール22が取り付けられたボデー骨格の座屈、変形を防止するためのボデー骨格補強構造となっており、シートレールブラケット42の剛性及び強度を活かした構造となっている。
【0030】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
図2に示されるように、シートスライドレール22の後端部22Aに固着されたシートレールブラケット42(連結体40)が、フロアリインフォース36内に配置されてリヤフロアサイドメンバ28の底部32及び上端フランジ部30に取り付けられているので、例えば、前面衝突時には、乗員からシートベルト装置(図示省略)に作用する荷重(より具体的には、ウエビングを介してベルトアンカに作用する荷重)がリヤシート10、シートスライドレール22、連結体40及びフロアリインフォース36を介してリヤフロアサイドメンバ28へ伝達される(シート取付部への入力)。これにより、リヤフロアサイドメンバ28は、車両前方側斜め上方へ(図2及び図3の矢印F方向参照)の荷重Fを受ける(すなわち、負荷がかかる)。
【0032】
ここで、シートレールブラケット42(連結体40)は、リヤフロアサイドメンバ28におけるキック部28Cの後端側屈曲部34Bの前後に亘る範囲に配設されてフロアリインフォース36と共にリヤフロアサイドメンバ28の底部32及び上端フランジ部30に固定されているので、後端側屈曲部34Bの前後に亘る範囲でリヤフロアサイドメンバ28及びフロアリインフォース36と共に荷重Fに抗する。このため、この範囲でのリヤフロアサイドメンバ28の変形が抑えられる。
【0033】
また、図3に示されるように、連結体40は、車両正面視で閉断面構造とされているので、連結体40の断面崩れ(断面変形)の発生、ひいてはリヤフロアサイドメンバ28の断面崩れの発生が効果的に抑えられる。特に、本実施形態では、連結体40は、プレート56がシートレールブラケット42のフランジ後端部54の上面に接合されて当該シートレールブラケット42と共に閉断面構造を形成すると共にプレート56の両端部がシートレールブラケット42及びフロアリインフォース36と共にリヤフロアサイドメンバ28の上端フランジ部30に取り付けられているので、簡易な構成でありながら、連結体40のリヤフロアサイドメンバ28の上端フランジ部30への取付部近傍における剛性及び強度が効果的に高められ、衝突時にシートスライドレール22を介して連結体40に車両前方側斜め上方への荷重Fが作用しても、連結体40及びリヤフロアサイドメンバ28の断面崩れの発生が効果的に抑えられる。
【0034】
これらによって、図2に示されるリヤフロアサイドメンバ28の後端側屈曲部34Bを起点とした座屈の発生が防止又は抑制される。補足すると、例えば、シートスライドレールの後端部に固着されたブラケットが車体フロアの開口部内においてキック部内に配設されかつリヤフロアサイドメンバの下部側にのみ固定されているような対比構造では、本実施形態に比べて断面剛性及び強度が低い。ここで、仮に後端側屈曲部の車両前方側近傍においてリヤフロアサイドメンバの下面及び側面が大きく変形して断面が崩れてしまうと、断面崩れの後にシートスライドレール取付部の車両後方側直近にある後端側屈曲部を起点として座屈が発生してしまうが、本実施形態では、このような座屈の発生が防止又は抑制される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係るシート保持部構造によれば、衝突時のリヤシート10側からの荷重入力に起因するリヤフロアサイドメンバ28の座屈を防止又は抑制することができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るシート保持部構造について、図6を用いて説明する。図6には、本発明の第2の実施形態に係るシート保持部構造の要部が斜視図にて示されている。この図に示されるように、第2の実施形態に係るシート保持部構造は、連結体62の閉断面部がシートスライドレール22の後端部22Aを覆う位置を含んで略車両前後方向に延在している点で、第1の実施形態に係るシート保持部構造とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図6に示されるように、蓋体としてのプレート64は、シートレールブラケット42のフランジ52の後部上面(フランジ上面)にスポット溶接(図中ではスポット打点を「×」印で示す)によって接合されてシートレールブラケット42と共に閉断面構造を形成している。プレート64には、フランジ52の後端部に形成されたボルト挿通孔(図示省略)と連通するボルト挿通孔64Aが貫通形成されている。なお、本実施形態では、プレート64がスポット溶接によってシートレールブラケット42のフランジ52の上面に接合させているが、プロジェクション溶接によって接合させてもよい。
【0038】
プレート64の後端部及びフランジ52の後端部は、第1の実施形態と同様に、図3に示されるフロアリインフォース36の取付フランジ部36E及び車体フロア24と共にリヤフロアサイドメンバ28の上端フランジ部30に共締めによって取り付けられている。図6に示されるように、プレート64は、シートスライドレール22の後端部22Aの上部側を覆う位置まで設けられており、その前端側中央部は、シートスライドレール22の後端部22Aの上部を避ける位置に膨出されている。このように、連結体62の閉断面部は、シートスライドレール22の後端部22Aを覆う位置を含んで略車両前後方向に延在している。なお、シート調整に伴うシートレールインナ20(図3参照)の車両前後方向へのスライドは、阻害されないように構成されている。
【0039】
上記構成によれば、連結体62の強度が上がって断面崩れがより生じにくくなり、衝突時にシートスライドレール22、連結体62及びリヤフロアサイドメンバ28(図2参照)に対して図2に示されるような車両前方側斜め上方への荷重Fが作用しても、該荷重Fが安定的に支持される。また、図6に示されるシートスライドレール22の後端部22Aが別途カバー(樹脂カバー等)によって覆われなくても、連結体62とシートスライドレール22との間へ異物(例えば、ゴミや小石等)が落ち込む(入り込む)のを妨げることができる。さらに、プレート64によって、シートスライドレール22の後端部22A付近における見栄えが改善される。
【0040】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係るシート保持部構造について、図7を用いて説明する。図7には、本発明の第3の実施形態に係るシート保持部構造の要部が縦断面図(第1の実施形態における図2に相当する図)にて示されている。この図に示されるように、第3の実施形態に係るシート保持部構造は、連結体66がリヤフロアサイドメンバ28におけるキック部28Cの前端側屈曲部34Aの(車両前後方向における)前後に亘る範囲に配設されている点等で、第1の実施形態に係るシート保持部構造とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
また、図7に示されるように、フロアリインフォース36は、その底壁部36Aが前端側屈曲部34A及び後端側屈曲部34Bの(車両前後方向における)前後に亘る範囲(リヤフロアサイドメンバ28におけるキック部28Cの全域及びキック部28Cの前後近傍部位)の底面に当接状態で配置されており、第1の実施形態におけるフロアリインフォース36よりも車両前方側に延設されているが、他の基本構成は、第1の実施形態におけるフロアリインフォース36と同様である。よって、フロアリインフォース36については、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
図7に示されるように、シートスライドレール22の後端部22Aには、連結体66の一部を構成するシートレールブラケット68の上部後端が溶接により固着されている。シートレールブラケット68は、フロアリインフォース36内に配置されおり、キック部28Cの前端側屈曲部34Aの(車両前後方向における)前後に亘る範囲に配設されている(前端側の屈曲点のカバー)。
【0043】
シートレールブラケット68は、第1の実施形態におけるシートレールブラケット42(図3参照)と同様に車両正面視で車両上方側が開放された開断面形状に形成されて上端にフランジ74を備えている(すなわち、正面視でハット形状に形成されている。)。シートレールブラケット68の下部70は、フロアリインフォース36の底壁部36Aの前部形状にほぼ沿った形状とされている。このシートレールブラケット68の下部後端は、フロアリインフォース36の底壁部36Aに当接状態で配置されて、ボルト46及びウエルドナット48で、フロアリインフォース36の底壁部36Aと共にリヤフロアサイドメンバ28の底部32に共締めによって取り付けられて(固定されて)いる。
【0044】
また、シートレールブラケット68は、下部70の車幅方向両端部から略車両上方側へ屈曲された左右一対の側部72を備えている。左右一対の側部72の上端部からは互いに離反する方向へ屈曲されてフランジ74が形成されている。左右一対のフランジ74のフランジ前端部76は、さらに左右に張り出されている。フランジ前端部76の上面(フランジ上面)には、プレート56が溶接によって接合されている。
【0045】
プレート56の接合されたフランジ前端部76は、第1の実施形態と同様に、フロアリインフォース36の取付フランジ部36Eに当接状態で配置されている。プレート56及びフランジ前端部76は、ボルト58及びウエルドナット60によって、フロアリインフォース36及び車体フロア24と共にリヤフロアサイドメンバ28の上端フランジ部30に共締めによって取り付けられて(固定されて)いる。また、プレート56は、第1の実施形態と同様に、シートレールブラケット68の左右一対のフランジ前端部76同士を連結しており、シートレールブラケット68と共に閉断面構造を形成している。すなわち、連結体66は、プレート56とシートレールブラケット68とが一体化されることで、車両正面視で閉断面構造とされている(図示省略)。
【0046】
このような構成によれば、衝突時にリヤフロアサイドメンバ28がリヤシート10側から車両前方側斜め上方への荷重Fを受けた場合、連結体66は、前端側屈曲部34Aの前後に亘る範囲でリヤフロアサイドメンバ28及びフロアリインフォース36と共に荷重Fに抗する。
【0047】
また、連結体66は、車両正面視で閉断面構造とされているので、連結体66の断面崩れ(断面変形)の発生、ひいてはリヤフロアサイドメンバ28の断面崩れの発生が効果的に抑えられる。特に、本実施形態では、連結体66は、シートレールブラケット68のフランジ前端部76の上面にプレート56が接合されて当該シートレールブラケット68と共に閉断面構造を形成すると共にプレート56の両端部がシートレールブラケット68及びフロアリインフォース36と共にリヤフロアサイドメンバ28の上端フランジ部30に取り付けられているので、簡易な構成でありながら、連結体66のリヤフロアサイドメンバ28の上端フランジ部30への取付部近傍における剛性及び強度が効果的に高められ、連結体66の断面崩れの発生、ひいてはリヤフロアサイドメンバ28の断面崩れの発生が効果的に抑えられる。これらによって、リヤフロアサイドメンバ28の前端側屈曲部34Aを起点とした座屈の発生が防止又は抑制される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係るシート保持部構造によれば、衝突時のリヤシート10側からの荷重入力に起因するリヤフロアサイドメンバ28の座屈を防止又は抑制することができる。
【0049】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係るシート保持部構造について、図8を用いて説明する。図8には、本発明の第4の実施形態に係るシート保持部構造の連結体78の形成前における状態が斜視図にて示されている。この図に示されるように、第4の実施形態に係るシート保持部構造は、連結体78が別体のプレート56(図5参照)を用いずに閉断面部を形成する点で、第1の実施形態に係るシート保持部構造とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
なお、連結体78は、第1の実施形態におけるシートレールブラケット42(図5参照)の下部44から延設された延設部80が折り曲げられてフランジ後端部54等に接合された構成となっているので、第1の実施形態におけるシートレールブラケット42(図5参照)と同様の構成部については同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図8(A)には、延設部80の折り曲げ前の状態が示されている。図8(A)に示されるように、連結体78は、その下部44から車両後方側へ延設された延設部80を備えている。延設部80は、連結体78の後端側を塞ぐための後側構成部82と、後側構成部82の車幅方向両側における下部44寄りから離反する方向に張り出された接合用の張出部84と、後側構成部82の後端側に設けられて左右一対のフランジ後端部54に接合されることで連結体78の後部に閉断面構造を形成するための蓋部86と、を備えている。蓋部86は、第1の実施形態におけるプレート56(図3参照)と同様の形状となっており、フランジ後端部54のボルト挿通孔54Aと連通させるためのボルト挿通孔86Aが貫通形成されている。
【0052】
図8(B)には、延設部80が折り曲げられて連結体78が形成される途中段階が示されている。図8(B)に示されるように、後側構成部82が連結体78の後端側を塞ぐように(図8(A)の矢印A方向参照)折り曲げられた後、張出部84が側部50側(矢印B方向)へ折り曲げられて側部50にスポット溶接により接合され、蓋部86が略直角に(矢印C方向へ)折り曲げられてその両端部がフランジ後端部54にスポット溶接により接合される(連結体後部のボックス化)。
【0053】
このように形成された連結体78は、第1の実施形態における連結体40と同様に、図2に示されるフロアリインフォース36内に配置され、キック部28Cの後端側屈曲部34Bの前後に亘る範囲に配設されてフロアリインフォース36と共にリヤフロアサイドメンバ28の底部32及び上端フランジ部30に取り付けられ、かつ車両正面視で閉断面構造とされている。なお、リヤフロアサイドメンバ28への連結体78(図8参照)の取付けは、第1の実施形態と同様である。上記構成によっても、前述した第1実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【0054】
[実施形態の補足説明]
なお、第1、第2、第4の実施形態では、連結体40、62、78がキック部28Cの後端側屈曲部34Bの前後に亘る範囲に配設されており、第3の実施形態では、連結体66がキック部28Cの前端側屈曲部34Aの前後に亘る範囲に配設されているが、連結体は、キック部の前端側屈曲部の(車両前後方向における)前後に亘ると共にキック部の後端側屈曲部の(車両前後方向における)前後にも亘るような範囲で配設されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1の実施形態に係るシート保持部構造が適用された車体フロア付近のボデー構造を示す斜視図である。
【図2】図1に示されるボデー構造をリヤフロアサイドメンバに沿って切断しこれを車両側方から見た状態を示す縦断面図(図1の2−2線に沿う拡大断面図)である。
【図3】図2の3−3線に沿う拡大断面図である。
【図4】第1の実施形態に係るシート保持部構造のシートスライドレールの後端部及び連結体を示す斜視図である。
【図5】第1の実施形態に係るシート保持部構造のシートスライドレールの後端部及び連結体を示す分解斜視図である。
【図6】第2の実施形態に係るシート保持部構造のシートスライドレールの後端部及び連結体を示す斜視図である。
【図7】第3の実施形態に係るシート保持部構造をリヤフロアサイドメンバに沿って切断しこれを車両側方から見た状態で示す縦断面図である。
【図8】第4の実施形態に係るシート保持部構造の連結体の形成前における状態を示す斜視図である。図8(A)は、延設部の折り曲げ前の状態を示す。図8(B)は、延設部を折り曲げた状態を示す(最終形状の一部を二点鎖線で示す。)。
【符号の説明】
【0056】
22 シートスライドレール(シート保持部材)
22A 後端部
24 車体フロア
26 開口部
28 リヤフロアサイドメンバ(サイドメンバ)
28A メンバ後部(後部)
28B メンバ前部(前部)
28C キック部
30 上端フランジ部(上端部)
32 底部
34A 前端側屈曲部
34B 後端側屈曲部
36 フロアリインフォース
40 連結体
42 シートレールブラケット(ブラケット)
52 フランジ
56 プレート(蓋体)
62 連結体
64 プレート(蓋体)
66 連結体
68 シートレールブラケット(ブラケット)
74 フランジ
78 連結体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアの下面側に結合されて略車両前後方向に延在し、前記車体フロアとで略車両前後方向に延在する閉断面部を構成すると共に、車両上下方向にオフセットした前部と後部とを繋いで前後端側が屈曲されたキック部を備えたサイドメンバと、
前記キック部の近傍に形成された前記車体フロアの開口部から前記サイドメンバ内に装着され、車両上方側が開口されたボックス状のフロアリインフォースと、
前記車体フロアの車両上方側で車両前後方向に延在すると共に車両用シートを支持し、後端部が前記フロアリインフォース内に挿入された長尺状のシート保持部材と、
前記シート保持部材の後端部に固着されて前記フロアリインフォース内に配置され、前記キック部の前端側屈曲部及び後端側屈曲部の少なくとも一方の前後に亘る範囲に配設されて前記フロアリインフォースと共に前記サイドメンバの底部及び上端部に取り付けられ、かつ車両正面視で閉断面構造とされた連結体と、
を有することを特徴とするシート保持部構造。
【請求項2】
前記連結体の閉断面部は、前記シート保持部材の後端部を覆う位置を含んで略車両前後方向に延在していることを特徴とする請求項1記載のシート保持部構造。
【請求項3】
前記連結体は、車両正面視で車両上方側が開放された開断面形状に形成されて上端にフランジを備えたブラケットと、前記ブラケットのフランジ上面に接合されて当該ブラケットと共に閉断面構造を形成すると共に当該ブラケット及び前記フロアリインフォースと共に前記サイドメンバの上端部に取り付けられた蓋体と、を含んで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート保持部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−126474(P2009−126474A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306930(P2007−306930)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】