説明

シート取出装置

【課題】シートの特性によらずに広く適用でき、シートの重搬送を抑制することができるシート取出装置の提供。
【解決手段】シートSを重ねて複数枚収容する収容部2からシートSを取り出すシート取出装置1であって、収容部2には、シートSが、その直下のシートSに支持される支持部s1と、その直下のシートSに支持されない非支持部s2とを有するようにして重ねて収容されており、少なくとも非支持部s2を保持して上記取り出しを行うハンド装置3を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート取出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、マガジンに収められたシート(正極、負極、セパレータ)を一枚ずつ取り出して積層する電極積層装置が開示されている。
当該電極積層装置は、シートを重ねて複数枚収容するマガジンからシートを取り出す吸引機構を備える。この吸引機構は、シートの重搬送を抑制すべく、最上層のシートをバキュームヘッドで吸着して引き上げつつ、当該シートを一対の電極押さえロッドで押さえ込むことで、最上層のシートを凸となるように湾曲させ、最上層のシートとその下のシートとの間に空気を入り込ませて、シートを容易に分離させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−50583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成では、電極押さえロッド及びコイルバネ等の機構が必要となり、シートの特性(種類、材質、剛性等)に合わせた機械的な調整が必要となる。また、上記構成は、凸となるような大変形を許容できないシートには用いることができない。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、シートの特性によらずに広く適用でき、シートの重搬送を抑制することができるシート取出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、シートを重ねて複数枚収容する収容部から上記シートを取り出すシート取出装置であって、上記収容部には、上記シートが、その直下のシートに支持される支持部と、その直下のシートに支持されない非支持部とを有するようにして重ねて収容されており、少なくとも上記非支持部を保持して上記取り出しを行うハンド装置を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、収容部においてシートを支持部と非支持部を有するようにして重ねることで、その非支持部の裏面側に空間(隙間)を形成し、シートを捲り易くする。そして、ハンド装置で、少なくとも非支持部を保持して取り出しを行うことで、非支持部の裏面側の空間に空気を回り込ませて、当該シートとその下のシートとの分離を促し、重搬送を抑制する。
【0007】
また、本発明においては、上記収容部と上記ハンド装置との上記シートの面方向における相対位置を調整する位置調整装置を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、重なり合うシートを互いにずらして収容しているため、収容部とハンド装置との相対位置をシートの面方向で調整することで、非支持部の適切な保持が可能となる。
【0008】
また、本発明においては、上記取り出しの際に、上記非支持部を上記支持部よりも先行して移動させる非支持部移動装置を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、裏面側に空間が在り捲り易い非支持部を、支持部よりも先行して移動させることで、空気を効率よくシート裏面側に回り込ませることができる。
【0009】
また、本発明においては、上記非支持部移動装置は、上記支持部を保持する第1の保持部と、上記非支持部を保持する第2の保持部と、上記第2の保持部を、上記第1の保持部に対して先行して相対的に移動させる移動装置と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、非支持部を保持する第2の保持部を、支持部を保持する第1の保持部よりも先行して相対移動させることで、非支持部を支持部よりも先行して移動させる。
【0010】
また、本発明においては、上記非支持部移動装置は、上記収容部の姿勢を、上記ハンド装置に対して上記シートの面方向に延びる軸周りに相対的に変位させる姿勢変位装置を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、収容部の姿勢をハンド装置に対してシートの面方向に延びる軸周りに相対的に変位させることで、非支持部を支持部よりも先行して移動させる。
【0011】
また、本発明においては、上記取り出しの際に、上記非支持部の裏面側の空間に向けて気体を噴き付ける気体噴射装置を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、非支持部の裏面側の空間に空気(気体)が回り込みやすくなり、分離性能がさらに向上する。
【0012】
また、本発明においては、上記シートは、平面視で第1方向に延びる辺と第2の方向に延びる辺とを備える矩形状を有しており、その下のシートと、上記第1方向及び上記第2方向でずれて重ねられているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、シートが第1方向及び第2方向でずれて重なっているので、当該シートはその下のシートの第1方向に延びる辺の一部と第2方向に延びる辺の一部とに跨って重なる。このため、非支持部を捲ったときに回り込む空気が、その下のシートの第1方向に延びる辺の一部と第2方向に延びる辺の一部とからシート間に入り込み易くなるため、分離性能がさらに向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シートを重ねて複数枚収容する収容部から上記シートを取り出すシート取出装置であって、上記収容部には、上記シートが、その直下のシートに支持される支持部と、その直下のシートに支持されない非支持部とを有するようにして重ねて収容されており、少なくとも上記非支持部を保持して上記取り出しを行うハンド装置を有するという構成を採用することによって、収容部においてシートを支持部と非支持部を有するようにして重ねることで、その非支持部の裏面側に空間(隙間)を形成し、シートを捲り易くする。そして、ハンド装置で、少なくとも非支持部を保持して取り出しを行うことで、非支持部の裏面側の空間に空気を回り込ませて、当該シートとその下のシートとの分離を促し、重搬送を抑制する。このため、従来技術の複雑な機構や機械的調整を伴わずに、且つ、シートを大変形させることなく、シートの重搬送を抑制することができる。
したがって、本発明では、シートの特性によらずに広く適用でき、シートの重搬送を抑制することができるシート取出装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態におけるシート取出装置の構成を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるシート取出装置の収容部の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるシート取出装置の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるシート取出装置の構成を示す正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態におけるシート取出装置の収容部の構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態におけるシート取出装置の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の第3実施形態におけるシート取出装置の構成を示す正面図である。
【図8】本発明の第3実施形態におけるシート取出装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるシート取出装置1の構成を示す正面図である。図2は、本発明の第1実施形態におけるシート取出装置1の収容部2の構成を示す平面図である。
シート取出装置1は、収容部2と、ハンド装置3とを有する。シート取出装置1は、収容部2に積層されているシートSを一枚ずつハンド装置3で取り出す構成となっている。シートSとしては、正極、負極、セパレータ、用紙、フィルム、板材、金属板、基板等を用いることができる。
【0017】
収容部2は、内部に複数のシートSを重ねて収容している。この収容部2には、シートSが、その直下のシートSに支持される支持部s1と、その直下のシートSに支持されない非支持部s2とを有するようにして重ねて収容されている。
本実施形態のシートSは、図2に示すように、平面視でX軸方向(第1方向)に延びる辺とY軸方向(第2方向)に延びる辺とを備える矩形状を有している。このシートSは、その下のシートSと、X軸方向及びY軸方向でずれて重ねられている。
【0018】
本実施形態の収容部2は、図1に示すように、基台4の水平面上において移動自在な位置調整装置5に搭載されている。位置調整装置5は、収容部2とハンド装置3とのシートSの面方向(X‐Y平面方向)における相対位置を調整する構成となっている。本実施形態の位置調整装置5は、図2において矢印で示す、シートSのずらし方向(本実施形態ではシートSの対角線方向と略同一の方向)において往復移動自在なリニアステージ装置から構成されている。なお、当該構成を、例えば不図示のシート切出装置の下に配置し、切り出されたシートS毎に、図2における矢印方向に収容部2を移動させれば、シートSを手作業によらずにシートSをずらして重ねることができる。
【0019】
ハンド装置3は、図1に示すように、ロボットアーム6に接続されるハンドベース7と、ハンドベース7に支持されて複数設けられた保持部8とを有する。ロボットアーム6は、少なくともハンドベース7をZ軸方向に昇降移動させることが可能な構成を有する。本実施形態では、多軸(例えば6軸)の関節駆動機構を有するロボットアーム6を用いており、ハンドベース7を任意の方向に移動させることが可能な構成となっている。
【0020】
保持部8は、吸着面10aを有する多孔質体10と、吸着面10aの周囲を気密に閉塞して多孔質体10を保持するホルダ20と、吸着面10aから吸引を行う吸引装置30と、ホルダ20を支持し、吸着面10aの水平面に対する傾きを変位自在とするベローズ管40と、を有する。
【0021】
多孔質体10は、内部に無数の微細孔を備え、端面に平坦な吸着面10aを有する円柱形状を有する。多孔質体10の種類は、シートSの剛性や材質等に基づいて、多孔質セラミックス、多孔質プラスチック、多孔質金属等の材料から適宜選択されて構成されている。
ホルダ20は、多孔質体10を囲う有底円筒形状を有する。ホルダ20は、吸着面10aと面一のシート接触面20aを備える。ホルダ20の円筒底中央には、ホルダ20の内側空間に連通する吸引口21が貫通して形成されている。この吸引口21には、吸引装置30からの配管31がベローズ管40を介して接続されている。
【0022】
吸引装置30は、ハンドベース7に支持されている配管31を有する。吸引装置30は、真空ポンプもしくは真空エジェクタを備え、配管31内を負圧にすることで、ベローズ管40、吸引口21、多孔質体10内部の微細孔を介して吸着面10aに吸引力を作用させる構成となっている。なお、当該真空ポンプもしくは真空エジェクタは、重量の関係上、ハンドベース7ではなく基台4の外の床面等に設置されている。
【0023】
ベローズ管40は、一端部が配管31の先端部と連通し、他端部がホルダ20の吸引口21と連通するように設けられている。本実施形態のベローズ管40は、ホルダ20を吊下して支持する構成となっている。ベローズ管40は、任意の方向に自由な曲げが可能な柔軟性を有する。本実施形態のベローズ管40は、柔軟性の高い樹脂材から形成されている。なお、所定の柔軟性を確保できれば、他の材料、例えば薄板金属材等からベローズ管40を形成しても良い。また、本実施形態のベローズ管40は、吸引装置30の吸引駆動に応じて伸縮自在な構成となっている。
【0024】
上記構成の保持部8は、図2に示すように、本実施形態では4つ設けられ、シートSの4つの角部に一対一で正対できるような配置でハンドベース7に設けられている。図2において保持部8Aは、シートSの支持部s1を保持する位置に設けられている(以下、図2における保持部8Aを第1の保持部と称する場合がある)。また、図2において、保持部8B,8C,8Dは、シートSの非支持部s2を保持する位置に設けられている(以下、図2における保持部8B,8C,8Dを第2の保持部と称する場合がある)。
【0025】
図1に戻り、本実施形態のシート取出装置1は、シートSの取り出しの際に、第2の保持部を、第1の保持部に対して先行して相対的に移動させる制御装置(移動装置)50を有する。制御装置50は、各保持部8の吸引装置30に電気的に接続され、それらによる吸引力をそれぞれ制御する構成となっている。この各保持部8及び制御装置50は、シートSの取り出しの際に、非支持部s2を支持部s1よりも先行して移動させる非支持部移動装置9を構成する。
【0026】
続いて、上記非支持部移動装置9の動作を含めた本実施形態のシート取出装置1の動作について、図3を追加参照して説明する。
図3は、本発明の第1実施形態におけるシート取出装置1の動作を説明するための図である。
【0027】
先ず、図1に示すように、ロボットアーム6でハンドベース7を下方に移動させ、保持部8の吸着面10aを、最上層のシートSに押し当てた状態とする。次に、吸着面10aがシートSと接触した状態で、吸引装置30を駆動させ、真空ポンプに接続された配管31内を負圧にして吸引力を作用させる。そうすると、その吸引力が、ベローズ管40、吸引口21、多孔質体10内部の微細孔を介して吸着面10aに作用する。これによって、吸着面10aに接触しているシートSは、吸着面10aに吸着される。これにより、図2に示すように、保持部8Aが、シートSの支持部s1を保持し、また、保持部8B,8C,8Dが、シートSの非支持部s2を保持することとなる。
【0028】
各保持部8でシートSの各部位を保持した後、図3に示すように、ロボットアーム6でハンドベース7を下方に移動させる。ハンドベース7を上方に移動させると、各保持部8が一体的に引き上げられ、シートSが持ち上げられる。
ここで、上述したように、収容部2においてシートSを支持部s1と非支持部s2とを有するようにして重ね、その非支持部s2の裏面側に空間(隙間)を形成しているので、シートSが非支持部s2において捲り易くなっている。このため、シートSの取り出しの際に、非支持部s2の裏面側の空間に空気が回り込み、当該シートSとその下のシートSとの分離を促すことで、シートSの重搬送が抑制される。
【0029】
また、本実施形態では、図2に示すように、シートSがX軸方向及びY軸方向でずれて重なっているので、当該シートSはその下のシートSのX軸方向に延びる辺の一部e1とY軸方向に延びる辺の一部e2とに跨って重なる。このため、非支持部s2を捲ったときに回り込む空気が、その下のシートSのX軸方向に延びる辺の一部e1とY軸方向に延びる辺の一部e2との2箇所からシートS間に入り込み易くなるため、分離性能をさらに向上させることができる。
【0030】
加えて、ハンドベース7を上方に移動させる前あるいはそれと同時に非支持部移動装置9を駆動させ、裏面側に空間が在り捲り易い非支持部s2を、支持部s1よりも先行して移動させることで、空気を効率よくシートSの裏面側に回り込ませることができる。
具体的には、制御装置50が、各保持部8の吸引装置30による吸引力を調整することで、シートSの取り出しの際に、非支持部s2を支持部s1よりも先行して移動させる。
【0031】
すなわち、本実施形態のベローズ管40は、蛇腹の働きによって伸縮自在とされているので、図3に示すように、シートSを吸着すると、吸引装置30による吸引力による内部負圧の大きさによってその収縮量を調整することができる。したがって、制御装置50は、第1の保持部(保持部8A)の吸引装置30の吸引力よりも、第2の保持部(保持部8B,8C,8D)の吸引装置30の吸引力を高めることで、非支持部s2を支持部s1よりも先行して移動させることができる。
【0032】
また、第2の保持部のうちでも、最も捲り作用が大きく分離性能を高めることができる部位は、シートSのずらし方向にある保持部8Cであるから、当該保持部8Cにおける吸引力を保持部8C,8Dよりも高める、あるいは、当該保持部8Cにおける吸引力を保持部8C,8Dよりも先行して作用させることで、空気をより効率よくシートSの裏面側に回り込ませることができる。
【0033】
以上のようにして、シートSを取り出し終えたら、次にその下のシートSの取り出しを行うべく、位置調整装置5を用いて、収容部2とハンド装置3とのX‐Y平面方向における相対位置を調整する。具体的には、収容部2を、図2に示すシートSのずらし方向に移動させ、各保持部8を、次のシートSの四隅に対応する位置に配置させる。なお、次のシートSを取り出す際には、第1の保持部が保持部8Cとなり、第2の保持部が保持部8A,8B,8Dとなる。そして、上述した工程を繰り返して、次のシートSの取り出しを行うこととなる。
【0034】
したがって、上述の本実施形態によれば、シートSを重ねて複数枚収容する収容部2からシートSを取り出すシート取出装置1であって、収容部2には、シートSが、その直下のシートSに支持される支持部s1と、その直下のシートSに支持されない非支持部s2とを有するようにして重ねて収容されており、少なくとも非支持部s2を保持して上記取り出しを行うハンド装置3を有するという構成を採用することによって、収容部2においてシートSを支持部s1と非支持部s2を有するようにして重ねることで、その非支持部s2の裏面側に空間(隙間)を形成し、シートSを捲り易くする。そして、ハンド装置3で、少なくとも非支持部s2を保持して取り出しを行うことで、非支持部s2の裏面側の空間に空気を回り込ませて、当該シートSとその下のシートSとの分離を促し、重搬送を抑制する。このため、従来技術の複雑な機構や機械的調整を伴わずに、且つ、シートSを大変形させることなく、シートSの重搬送を抑制することができる。
したがって、本実施形態では、シートSの特性によらずに広く適用でき、シートSの重搬送を抑制することができるシート取出装置1が得られる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図4は、本発明の第2実施形態におけるシート取出装置1の構成を示す正面図である。図5は、本発明の第2実施形態におけるシート取出装置1の収容部2の構成を示す平面図である。
【0036】
図4に示すように、第2実施形態のシート取出装置1は、シートSの取り出しの際に、非支持部s2の裏面側の空間に向けて気体を噴き付ける気体噴射装置60を有する。また、第2実施形態の収容部2の側壁部には、シートSの重ね方向(Z軸方向)において所定間隔で複数のスリット2aが形成されている。スリット2aは、非支持部s2とその下の非支持部s2との空間(隙間)が設けられる位置にそれぞれ設けられている。シートが薄い場合は、スリットを上下方向に分けず一体の開口部としてもよい。
【0037】
気体噴射装置60は、外部の気体(空気)を取り込み、スリット2aのいずれか一つから収容部2内に導入する構成となっている。本実施形態の気体噴射装置60は、ファンを内蔵し、スリット2aと略同一のスリット形状を有する不図示の噴射口を備え、該噴射口をスリット2aのいずれかひとつに合わせ込むことで、任意の高さから気体を収容部2内に気体を導入する構成となっている。なお,静電気によりシート同士が固着するような場合は、イオナイザー等を用い、吹き付ける空気を帯電させてシートの静電気を中和する。
【0038】
この気体噴射装置60は、図5に示すように、シートSのずらし方向においてそれぞれ設けられる。また、本実施形態の気体噴射装置60は、非支持部s2の裏面側の空間に向けてX軸方向及びY軸方向から気体を噴き付けることが可能な構成となっている。なお、図2において不図示であるが、スリット2aもシートSのずらし方向においてそれぞれ設けられており、収容部2の角部においてX軸方向及びY軸方向に跨って形成されている。
【0039】
上記構成によれば、図6に示すように、シートSの取り出しの際に、非支持部s2の裏面側の空間に向けて空気を噴き付けることによって、非支持部s2の裏面側の空間に空気が回り込みやすくなり、分離性能が向上する。また、図5に示すように、空気をシートSのずらし方向から噴き付けることにより、保持部8Cにおける捲り作用を大きくして、さらに分離性能を高めることができる。また、空気をX軸方向及びY軸方向から噴き付けることにより、非支持部s2を捲ったときに、その下のシートSのX軸方向に延びる辺の一部e1とY軸方向に延びる辺の一部e2との2箇所から、空気がシートS間に入り込み易くなる。
したがって、第2実施形態によれば、より確実にシートSの重搬送を抑制することができる。また、第2実施形態によれば、剛性が高く非支持部s2の捲り作用が小さいシートSであっても、その小さな隙間から空気をシートS間に導入することができるため、剛性の高いシートSに対して効果が高い。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図7は、本発明の第3実施形態におけるシート取出装置1の構成を示す正面図である。
【0041】
図7に示すように、第3実施形態におけるシート取出装置1は、非支持部移動装置9として、収容部2の姿勢を、ハンド装置3に対してシートSの面方向(X‐Y平面方向)に延びる軸71周りに相対的に変位させる姿勢変位装置70を有する。
なお、第3実施形態では、説明の容易化のため、シートSを、X軸方向においてのみ相互にずらして、収容部2に収容している。また、第3実施形態では、収容部2とハンド装置3とのシートSの面方向における相対位置の調整を、ロボットアーム6を用いて行う構成となっている。
【0042】
姿勢変位装置70は、基台4上において収容部2をY軸方向に延びる軸71周りに回動自在に支持する支持部材72と、収容部2を軸71周りに回動させるアクチュエータ73とを有する。アクチュエータ73は、支持部材72をX軸方向で挟んだ位置にそれぞれ設けられている。本実施形態では、アクチュエータ73として、例えば、基台4と収容部2との間において伸縮自在なシリンダ装置を用いている。
【0043】
上記構成によれば、図8に示すように、シートSの取り出しの際に、+X側のアクチュエータ73を収縮駆動させ、−X側のアクチュエータ73を伸長駆動させることによって、収容部2の姿勢をハンド装置3に対してシートSの面方向に延びる軸71周りに相対的に変位させることができる。そうすると、非支持部s2を支持部s1よりも先行して移動させることができる。したがって、非支持部s2の裏面側の空間に空気が回り込みやすくなり、シートSの分離性能が向上する。
したがって、第3実施形態によれば、シートSの重搬送を抑制することができる。また、第3実施形態によれば、非支持部移動装置9が収容部2側に設けられるため、ハンド装置3の構造の簡略化、軽量化を図ることができる。
【0044】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、シートSを所定方向において相互にずらして重ねる構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、シートSを所定方向において順々にずらして重ねる構成であっても、鉛直軸(Z軸)を中心としてその軸周りに順々にずらして重ねる構成であってもよい。
【0046】
また、例えば、上記実施形態では、シートSが平面視で矩形状である構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、平面視で他の多角形状や円形状等であってもよい。
【0047】
また、例えば、上記実施形態では、保持部8の構成を多孔質体10の吸着面10aを介した吸着構造とする構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、吸盤構造や磁着構造等であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…シート取出装置、2…収容部、3…ハンド装置、5…位置調整装置、8(8A,8B,8C,8D)…保持部(第1の保持部、第2の保持部)、9…非支持部移動装置、50…制御装置(移動装置)、60…気体噴射装置、70…姿勢変位装置、71…軸、S…シート、s1…支持部、s2…非支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを重ねて複数枚収容する収容部から前記シートを取り出すシート取出装置であって、
前記収容部には、前記シートが、その直下のシートに支持される支持部と、その直下のシートに支持されない非支持部とを有するようにして重ねて収容されており、
少なくとも前記非支持部を保持して前記取り出しを行うハンド装置を有することを特徴とするシート取出装置。
【請求項2】
前記収容部と前記ハンド装置との前記シートの面方向における相対位置を調整する位置調整装置を有することを特徴とする請求項1に記載のシート取出装置。
【請求項3】
前記取り出しの際に、前記非支持部を前記支持部よりも先行して移動させる非支持部移動装置を有することを特徴とする請求項1または2に記載のシート取出装置。
【請求項4】
前記非支持部移動装置は、
前記支持部を保持する第1の保持部と、
前記非支持部を保持する第2の保持部と、
前記第2の保持部を、前記第1の保持部に対して先行して相対的に移動させる移動装置と、を有することを特徴とする請求項3に記載のシート取出装置。
【請求項5】
前記非支持部移動装置は、
前記収容部の姿勢を、前記ハンド装置に対して前記シートの面方向に延びる軸周りに相対的に変位させる姿勢変位装置を有することを特徴とする請求項3または4に記載のシート取出装置。
【請求項6】
前記取り出しの際に、前記非支持部の裏面側の空間に向けて気体を噴き付ける気体噴射装置を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート取出装置。
【請求項7】
前記シートは、平面視で第1方向に延びる辺と第2の方向に延びる辺とを備える矩形状を有しており、その下のシートと、前記第1方向及び前記第2方向でずれて重ねられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート取出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−46338(P2012−46338A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191072(P2010−191072)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】