説明

シート材及び配線板

シート材(1)において、接着層(2)を設け、この接着層(2)に高強度層(3)を積層する。接着層(2)は、熱硬化性材料であるエポキシ樹脂により形成する。また、高強度層(3)は、エポキシ樹脂の熱硬化温度において軟化せず、引張破断強度が硬化後の前記熱硬化性材料の引張破断強度よりも高く、温度が23℃のときの引張破断強度が100MPa以上であり、温度が23℃のときの破断伸率が10%以上であり、温度が−65℃のときの引張破断強度をaとし温度が150℃のときの引張破断強度をbとするとき比(a/b)の値が2.5以下であるポリイミドにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、特性が相互に異なる2種類の層を積層して形成されるシート材及びこのシート材を使用する配線板に関し、特に、ビルドアップ配線板等の半導体パッケージの配線板に使用でき、耐クラック性が高く信頼性が優れるシート材及び配線板に関する。
【背景技術】
近時の携帯機器の小型化及び多機能化、並びにインターネット通信システムの高度化に伴い、これらの用途に使用される半導体素子は益々端子数が増加し、端子間ピッチが狭くなっている。これに伴い、半導体パッケージにおいて半導体素子を搭載する配線板においても、従来以上に高密度化及び微細配線化が求められるようになっている。
このような高密度で微細な配線をもつ配線板として、ベースコア基板の外層に配線が高密度に形成されたビルトアップ配線層を設けたビルドアッププリント配線板がある。
図6は従来のビルトアッププリント配線板を示す断面図である。図6に示すように、この従来のビルトアッププリント配線板においては、ガラスエポキシからなるベースコア基板73が設けられており、このベースコア基板73にはドリルにより貫通スルーホール71が形成されている。貫通スルーホール71の直径は例えば約300μmである。そして、ベースコア基板73の両面には導体配線72が形成されており、この導体配線72を覆うように層間絶縁膜75が設けられている。層間絶縁膜75には、導体配線72に接続するようにビアホール74が形成されており、層間絶縁膜75の表面には、ビアホール74を介して導体配線72に接続するように導体配線76が設けられている。なお、必要に応じて、導体配線76上に更にビアホールが形成された層間絶縁膜及び導体配線を繰返し設けることにより、配線板を多層配線化することもある。
また、動作速度をより一層向上させた配線板として、コア基板がない薄型且つ高密度の配線板が提案されている。これは、金属板等の支持体上に配線及び絶縁膜からなる配線層を形成し、その後支持体を除去することにより前記配線層自体を配線板としたものである(例えば、特開2001−177010号公報、特開2002−83893号公報及び特開2002−198462号公報参照。)。この配線板は、通常のビルドアッププリント配線板におけるコア基板を除去してビルドアップ層のみを独立させた配線板であり、究極の薄型配線板といえる。
この配線板においては、貫通スルーホールが全く存在していないため、配線を貫通スルーホールに接続するためのランド部を設ける必要がない。このため、インピーダンスの制御が容易であると共に、ループインダクタンスが小さく、配線板全体の動作速度が高い。従って、この配線板を使用すれば、高速配線設計を行うことができる。また、支持体として、平坦性が優れ、弾性率が大きく、耐熱性が優れた金属板を使用しているため、高温プロセスを使用して、形状安定性が高く高密度且つ微細な配線パターンを形成することができる。
配線板は、主に、電気的接続のための金属配線と、この金属配線間を絶縁する絶縁膜とから構成されているが、ビルドアップ基板等の高密度で微細な配線を有する配線板の絶縁膜に使用される絶縁材料として、従来、以下に示す材料が使用されている。
セミアディティブ法又はアディティブ法により作製される配線板、即ち、無電解めっき法及び/又は電解めっき法により金属配線が形成される配線板の絶縁膜には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる絶縁材料が使用されている。この絶縁材料は半硬化状態で基板上に積層され、積層後に加熱硬化され絶縁膜となる。その後、ドリル又はレーザーによってビアが作製された後、デスミア等の処理が施され、無電解めっき法及び/又は電気めっき法により金属配線が形成される。
また、サブトラクティブ法により作製される配線板、即ち、銅箔をエッチングして金属配線が形成される配線板の絶縁膜にも、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる絶縁材料が使用されている。このサブトラクティブ法においては、銅箔上に絶縁材料を塗布して半硬化状態としたRCC(樹脂付き銅箔)を作製し、このRCCを基板上に半硬化状態で積層し、熱硬化させた後、ビアを形成し、その後、銅箔層を部分的にエッチングして除去することにより配線パターンを形成する。
更に、絶縁材料として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に無機フィラーを含有させた材料、及びガラスクロス等を基材としこの基材にエポキシ樹脂等の樹脂材料を含浸させたガラス−エポキシ複合材料も検討されている。
更にまた、配線板の絶縁膜として、複数の層からなる積層体も開示されている。例えば、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に導体層を設け、他方の面にエポキシ樹脂からなる接着層を設ける技術が開示されている。(例えば、特開2002−124751号公報参照。)。即ち、この技術においては、絶縁膜として、ポリイミド層及びエポキシ層からなる積層体を使用する。
しかしながら、上述の従来の技術には以下に示すような問題点がある。通常、半導体パッケージは、配線板にシリコン等の半導体材料からなる半導体素子を搭載して形成される。そして、この半導体素子は、動作時には発熱して温度が上昇し、停止時には発熱が停止して温度が低下する。配線板の絶縁材料として有機材料を使用する場合、一般に有機材料の熱膨張係数は数十ppm/℃であり、シリコン(Si)の熱膨張係数(約4ppm/℃)よりもかなり大きい。このため、半導体素子の動作に伴って、半導体素子と配線板との間に、熱膨張係数の差に起因する熱応力が発生する。そして、半導体素子が動作及び停止を繰返すことにより、配線板に繰返し熱応力が印加される。この結果、この熱応力により、配線板の絶縁層にクラックが発生する。また、この半導体パッケージを自動車搭載用部品等として使用する場合には、使用環境の温度変化が大きいため、半導体素子の動作に伴う温度変化に使用環境の温度変化が加算され、熱応力がより一層大きくなり、クラックがより発生しやすくなる。
特に、熱硬化性樹脂は破断伸率が数%以下と小さいため、熱硬化性樹脂からなる絶縁膜は熱応力によるクラックが発生しやすい。熱硬化性樹脂のなかでもエポキシ樹脂からなる絶縁膜は、発生したクラックが成長しやすく、金属配線を切断してしまう。これにより、配線が断線し、半導体パッケージがオープン状態となる。また、この熱応力により、配線板におけるBGA及びFC接続用のランド部と半田ボールとの接合界面が破壊されるという問題も生じる。この結果、このような金属配線の切断及びランド部の破壊等により、配線板上の半導体素子が正常に機能しないという問題が生じる。
また、エポキシ樹脂のみにより絶縁膜を形成する場合、エポキシ樹脂は伸びが小さく脆いため、エポキシ層単体の取り扱いが難しい。このため、一般に、PET(ポリエチレンテレフタレート)を支持基体としてこの上にエポキシ樹脂からなるフィルムを形成し、絶縁膜として使用する際にこの支持基体をエポキシ樹脂フィルムから剥がしている。このため、配線板を形成する際に、このエポキシ樹脂フィルムから支持基体を剥がす工程が必要になるという問題がある。
更に、熱硬化性樹脂に無機フィラーを含有させた絶縁材料については、無機材料は一般に熱膨張係数が小さいため、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に無機フィラーを入れることにより熱膨張係数を下げ、半導体素子の熱膨張係数に近づけることによって、熱応力を低減することができる。しかしながら、無機フィラーを含有させることにより、絶縁材料全体の破断伸率及び破断強度が低下するため、やはり十分な耐クラック性は得られない。
更にまた、ガラスクロス材にエポキシ樹脂を含浸させた絶縁材料においては、高強度なガラスクロスにより応力は吸収されるものの織り布の構造からガラス繊維のない部分が必然的に生じることとなり、この部分でクラックが発生し、配線の破断が生じる。また、配線板にビアを形成する方法としては、光による方法(フォトビア)及びレーザーによる方法が一般的であるが、配線板にガラス繊維が含まれていると光によるビア形成は不可能であり、また、レーザーによるビア形成についても、ガラスの融点は有機材料の融点と比べて著しく高いため、レーザーによる加工性が悪く、得られるビアも直径が100μm以上と大きいものになってしまう。このため、この絶縁材料を、微細配線及び微細ビアが必要とされる高密度基板に使用することは困難である。また、無機材料であるガラスクロス材は有機材料であるエポキシ樹脂との間の密着性が低く、ガラスクロス材とエポキシ樹脂との界面を通してマイグレーションが生じ易い。更に、ガラスクロス材はエポキシ樹脂と比べて比重が大きいため、携帯機器等、軽量化が要求される機器の配線板としては不向きである。
更に、特開2002−124751号公報に開示されているポリイミドフィルムにエポキシ樹脂等からなる接着層を積層した積層体を用いた場合には、ポリイミドフィルムの線膨張係数を小さくすることにより、配線板の作製時及び試験初期におけるクラックの発生を防止する効果がある程度得られるが、所定の温度における引張破断強度等を適切に制御していないため、配線板に繰返し熱応力が印加されると、その機械的特性が次第に劣化し、クラックが発生してしまうという問題点がある。このため、この配線板では、長期間に渡る信頼性が得られない。
半導体素子の高速化及び高集積化に伴う大型化、多ピン化及び狭ピッチ化は、今後も急速に進んでいくと予想され、これら半導体素子を搭載する配線板においては、より一層の高密度化及び微細配線化が必要とされ、絶縁膜に生じるクラックの問題は今後更に顕著になっていくものと予想される。特に、前述の特開2001−177010号公報、特開2002−83893号公報及び特開2002−198462号公報に開示されたコア基板を設けない多層配線板においては、発生した応力を吸収するコア基板がないため、熱応力に伴うクラックに起因する金属配線の断線は、特に深刻な問題となる。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、半導体パッケージに使用されるビルドアップ配線板等の配線板の絶縁膜として好適なシート材及びこのシート材を使用する配線板において、耐クラック性が優れると共に基板又は下層のシート材との間の密着性が高く、信頼性が優れたシート材及び配線板を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明に係るシート材は、配線板の絶縁膜として使用されるシート材において、第1の絶縁材料からなる第1の層と、この第1の層に積層され、温度が23℃のときの引張破断強度が100MPa以上であり、温度が23℃のときの破断伸率が10%以上であり、温度が−65℃のときの引張破断強度をa(MPa)とし温度が150℃のときの引張破断強度をb(MPa)とするとき比(a/b)の値が2.5以下である第2の絶縁材料からなる第2の層と、を有することを特徴とする。
本発明においては、第2の層を、温度が23℃のときの引張破断強度が100MPa以上であり、温度が23℃のときの破断伸率が10%以上である第2の絶縁材料により形成することにより、仮に第1の層において熱応力によりクラックが発生しても、このクラックの進行を第2の層で停止させることができる。このため、シート材全体がクラックにより破断することがなく、耐クラック性が優れている。また、前記比(a/b)の値を2.5以下とすることにより、高温時と低温時の機械的特性の変動が小さくなり、長期間にわたって繰返し熱応力が印加されても、耐クラック性が低下することを防止できる。従って、本発明のシート材は信頼性が優れている。更に、本発明においては、ガラス−エポキシ複合材料等の複合材料を使用する必要がないため、ビアの加工性が良好で微細なビアを形成することができる。また、マイグレーションが生じ難く、比重が増大することがない。更にまた、このシート材が積層される基板又は下層のシート材に合わせて、第1の絶縁材料を適切に選択することにより、基板又は下層のシート材との間の密着性を確保することができる。
また、前記第2の絶縁材料はポリイミドであってもよく、この場合、多孔質ポリイミドであってもよい。ポリイミドを多孔質のポリイミドとすることにより、第2の絶縁材料の誘電率及び誘電損失が低くなり、高周波領域でも使用可能なシート材を得ることができる。
更に、ポリイミドがベンゾフェノン骨格を含むポリイミドであることがより好ましい。これにより、ベンゾフェノン基が極性基であるカルボニル基を有するため、このシート材を使用して配線板を製造する際に、銅等の金属により形成される配線との接着性が大きく改善される。
又は、前記第2の絶縁材料が液晶ポリマーであってもよく、フッ素系ポリマーであってもよい。また、これらの材料は多孔質体であってもよい。
更にまた、前記第1の絶縁材料が、所定の硬化温度範囲において硬化する熱硬化性材料であり、前記第2の絶縁材料が、前記硬化温度範囲において軟化しない耐熱性材料であることが好ましい。第1の層を熱硬化性材料により形成することにより、本発明に係るシート材を基板上又は他のシート材上に積層する場合に、第1の層はこの基板又は他のシート材との間の接着層として機能し、良好な密着性を実現することができる。また、熱硬化性材料は、熱硬化前には軟質であるため、第1の層を積層する際に、基板上又は他のシート材上に設けられた配線を埋め込むことができ、その後、加熱して硬化させることにより、第1の層の形状を配線を埋め込んだ形状のまま固定することができる。更に、第1の層の形状を固定し、その上に配線を形成し、この配線に半田接合を行う際に、半田接合に伴う熱により、第1の層が軟化することがない。即ち、半田耐性が優れる。
更にまた、前記第1の絶縁材料において、温度が150℃のときの弾性率が2.0GPa以上であることが好ましい。これにより、本発明のシート材を使用した配線板に半田ボール又はワイヤボンディング等を接続する際に、第1の絶縁材料の剛性が確保され、半田ボール又はワイヤボンディング等を確実に接続することができる。
更にまた、前記第1の絶縁材料が、アラミド繊維又はフッ素系ポリマーを含有することが好ましい。これにより、耐クラック性をより一層向上させることができる。
更にまた、前記第2の層における前記第1の層に接する表面に、深さが0.1乃至10μmの凹部が複数個形成されており、前記凹部は、開口部の面積が内部における前記第2の層の表面に平行な断面の面積よりも小さいことが好ましい。これにより、前記凹部に前記第1の絶縁材料が浸入して固化して凸部となり、この凸部が第1の層と第2の層との間のアンカーとして機能し、第1の層と第2の層との間の密着性を向上させることができる。
このとき、前記第2の層の凹部が、表面に凸部が形成された銅箔上に前記第2の絶縁材料を成膜した後、前記銅箔を除去することにより、前記凸部を前記第2の層の表面に転写させて形成されたものであることが好ましい。この方法により、前記凹部が形成された第2の層を容易に得ることができる。
また、前記凹部が形成されている前記第2の層の表面の十点平均粗さが0.1乃至10μmであることが好ましく、1乃至5μmであることがより好ましい。なお、「十点平均粗さ」については、JIS B0601においてその内容が定義されている。
更にまた、本発明に係るシート材は、金属又は合金からなり前記第1の層と共に前記第2の層を挟む位置に配置された第3の層を有していてもよい。これにより、この第3の層をエッチングして選択的に除去することにより、容易に配線を形成することができる。
本発明に係る配線板は、基板と、この基板上に設けられた前記シート材と、を有することを特徴とする。なお、前記基板はプリント基板であってもよく、金属又は合金からなる金属基板であってもよい。これにより、ビルドアップ配線板を形成することができる。
本発明に係る他の配線板は、前記シート材を有し、金属板上に前記シート材を形成した後、前記金属板を除去することにより形成されたことを特徴とする。これにより、コア基板を設けない薄型の配線板を得ることができる。
このように、本発明によれば、第1の層と、高強度材料からなる第2の層とを重ね合わせることにより、耐クラック性が優れると共に信頼性が優れる配線板用のシート材を得ることができる。このシート材及び配線板は、半導体パッケージの配線板、例えばビルドアップ配線板等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシート材を示す断面図である。
図2は、本実施形態に係る配線板を示す断面図である。
図3は、本発明の第3の実施形態における接着層と高強度層との界面を示す断面図である。
図4(a)乃至(g)は、各実施形態に係る配線板の製造方法をその工程順に示す断面図である。
図5は、シート材におけるポリイミド層とエポキシ樹脂層との界面を示す図面代用写真である(光学顕微鏡写真、倍率2000倍)。
図6は、従来のビルトアッププリント配線板を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本実施形態に係るシート材を示す断面図であり、図2は本実施形態に係る配線板を示す断面図である。本実施形態に係るシート材1は、フィルム状又はシート状の材料であり、配線板の絶縁膜として使用されるものである。図1に示すように、シート材1においては、第1の層としての接着層2が設けられ、この接着層2に、第2の層としての高強度層3が積層されている。第1の層(接着層2)はシート材1とこのシート材1が積層される基板又は下層のシート材との間の密着性を担保する層であるため、以下「接着層」と記載する。この接着層2は、例えば熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂により形成することができる。特に、接着層2を熱硬化性樹脂により形成すれば、積層時には軟質であるため、基板上又は他のシート材上に配置された配線を埋め込むことができ、その後熱硬化させることにより、半田接合時に必要な耐熱性を確保することができる。一方、第2の層(高強度層3)は、シート材1に要求される機械的特性を担保する層であるため、以下「高強度層」と記載する。
シート材1の厚さは、このシート材1が使用される配線板に要求される強度及びこの配線板におけるシート材の積層数によって異なるため、特に限定されないが、例えば1乃至100μmであり、望ましくは10乃至50μmである。また、接着層2の膜厚は例えば5乃至99μmであり、高強度層3の膜厚は例えば1乃至95μmである。
接着層2は、所定の硬化温度範囲に加熱することにより硬化する熱硬化性材料から形成されている。熱硬化性材料には、耐熱性が高く、誘電率が低く、強度が高い樹脂を使用することが好ましい。本実施形態においては、このような熱硬化性材料として、エポキシ樹脂が使用されている。なお、エポキシ樹脂の熱硬化温度は100乃至200℃程度である。
なお、接着層2を形成する熱硬化性材料は、温度150℃のときの弾性率が2.0GPa以上である。シート材1により形成される配線板に半導体素子を搭載する場合には、配線板に半田ボール、金バンプ又は金ワイヤーボンド等を接続するが、このとき、半田の溶融温度又は超音波印加時の金属の軟化温度において接続を行う。従って、高温雰囲気中において、接着層2の弾性率が低いと、配線板の剛性が不足し、確実に接続できないことがある。従って、熱硬化材料は、温度が150℃のときの弾性率が2.0GPa以上であることが望ましい。
接着層2は、シート材1を基板(図示せず)に被着させる場合には、この基板との間の接着層として機能し、シート材1を複数層積層させる場合又は他のシート材上にシート材1を積層する場合には、下層のシート材との間の接着層として機能する。また、接着層2は、熱硬化前には軟質であり容易に変形するため、基板上又は下層のシート材上に形成された配線を埋め込む機能を持つ。そして、配線を埋め込んだ後、硬化させることにより、接着層2の形状が固定され、シート材1が基板又は下層のシート材に接着される。
高強度層3は、耐熱性及び強度が優れた高強度材料により形成する。この高強度材料は、接着層2を形成するエポキシ樹脂の熱硬化温度範囲において軟化・変形せず、引張破断強度が硬化後のエポキシ樹脂の引張破断強度よりも高く、温度が23℃のときの引張破断強度が100MPa以上、望ましくは200MPa以上、より望ましくは300MPa以上であり、破断伸率が10%以上、望ましくは20%以上、さらに望ましくは50%以上である。また、温度が−65℃のときの破断強度をa(MPa)とし、温度が150℃のときの破断強度をb(MPa)とするとき、比(a/b)の値は2.5以下であり、例えば0.4以上である。本実施形態においては、高強度層3を形成する高強度材料としてポリイミドを使用する。本実施形態において使用するポリイミドは、全芳香族ポリイミド又は熱可塑性ポリイミドであり、またベンゾフェノン骨格を含むポリイミドである。
次に、本実施形態に係る配線板について説明する。図2に示すように、本実施形態に係る配線板4においては、プリント基板5が設けられている。プリント基板5は、例えば、FR−4等のガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させた材料を構成材料とする基板である。プリント基板5は、前述のガラスクロス−エポキシ複合材料等の絶縁材料からなる単層構造の基板であってもよく、この絶縁材料からなる層が複数層積層された多層構造の基板であってもよい。また、基板の表面に配線(外層配線)が形成されていてもよい。更に、プリント基板5が多層構造の基板である場合は、層間に配線(内層配線)が形成されていてもよい。そして、このプリント基板5上に、シート材1が2層積層されている。プリント基板5の表面には配線6aが形成されており、下層のシート材1の表面には配線6bが形成されており、上層のシート材1の表面には配線6cが形成されている。配線6aは下層のシート材1の接着層2に埋め込まれており、配線6bは上層のシート材1の接着層2に埋め込まれている。また、シート材1中にはビア7が形成されており、このビア7を介して、配線6aが配線6bに接続され、配線6bが配線6cに接続されている。本実施形態に係る配線板4は、例えばビルトアップ配線板であり、半導体素子(図示せず)を搭載して半導体パッケージを形成するものである。
配線板4は、接着層2と高強度層3とを相互に貼り合わせた後、プリント基板5に貼付することにより作製される。又は、高強度層3上に未硬化のエポキシ樹脂を塗布して半硬化状態の接着層2とし、これをプリント基板5上に配置した後、接着層2を硬化させてもよい。又は、プリント基板5上に未硬化のエポキシ樹脂を塗布し、硬化させて接着層2を形成し、その後、この接着層2上に高強度層3を形成してもよい。
以下、本発明の各構成要件における数値限定理由について説明する。
温度が23℃のときの第2の層の引張破断強度:100MPa以上
第2の層(高強度層3)の破断強度が100MPa未満であると、シート材に必要とされる機械的特性が確保できない。従って、温度が23℃のときの第2の層の破断強度は100MPa以上とする。
第2の層において、温度が−65℃のときの破断強度をa(MPa)、温度が150℃のときの破断強度をb(MPa)とするとき、比(a/b)の値:2.5以下
前記比(a/b)の値が2.5を超えると、シート材の温度が上昇して高温(150℃)になったときの破断強度の低下が著しくなる。このため、低温(−65℃)及び常温(23℃)において、シート材が十分な強度を有していたとしても、低温時と高温時での強度の変動が大きくなり、繰返し印加される熱応力に耐えられず、シート材にクラックが発生する可能性が高くなる。従って、比(a/b)の値は2.5以下とする。一方、比(a/b)の値の下限値については特に限定されないが、上限値(2.5)の逆数である0.4以上であれば、クラックの発生を抑えることができると考えられる。但し、現時点では比(a/b)の値が1.0未満になる樹脂材料は存在しておらず、実験での確認はできていない。理想的には、温度が−65℃の場合と150℃の場合とで物性が全く変化しない材料、即ち、比(a/b)の値が1.0となる材料により基体絶縁膜を形成すれば、温度変化による物性の変化がなく、ヒートサイクルの影響を全く受けないことになるので、最高の信頼性を得ることができる。
温度が23℃のときの第2の層の破断伸率:10%以上
第2の層(高強度層3)の破断伸率が10%未満であると、シート材に必要とされる機械的特性が確保できない。従って、温度が23℃のときの第2の層の破断伸率は10%以上とする。
温度が150℃のときの第2の層の弾性率:2.0GPa以上
前記弾性率を2.0GPa以上とすることにより、高温におけるシート材の剛性が確保され、シート材が、このシート材に加わる応力に対して過剰に変形することを防止できるため、配線板に取り付けた半田ボールが破損することを防止できる。従って、温度が150℃のときの第2の層の弾性率は2.0GPa以上であることが好ましい。
上述の如く構成された本実施形態のシート材及び配線板においては、フィルム状又はシート状のシート材1を、エポキシ樹脂からなる接着層2と、高強度層3とを積層して形成している。そして、高強度層3を温度が23℃のときの引張破断強度が100MPa以上であり、破断伸率が10%以上であるポリイミドにより形成している。これにより、仮に接着層2においてクラックが発生した場合においても、このクラックの進行が高強度層3で止められるため、クラックの進行による金属配線の断線、バンプの破壊等という重大事態にまで至ることがない。
また、高強度層3において、温度が−65℃のときの破断強度をa(MPa)とし、温度が150℃のときの破断強度をb(MPa)とするとき、比(a/b)の値は2.5以下である。これは温度差による機械的特性の差が小さいことを示し、これにより、熱応力に対する耐久性が高く、繰返し印加される熱応力によってクラックが発生及び伝播することを確実に防止できる。この結果、配線板4は長期間にわたって高い信頼性を維持することができる。このように、本実施形態に係るシート材及び配線板は、耐クラック性及び信頼性が優れている。
更に、ポリイミドはエポキシ樹脂と比べて誘電率及び誘電損失が低いため、本実施形態のように、積層板の一部にポリイミドを使用することにより、配線に伝送させる信号の周波数領域が高周波領域であっても問題なく使用できる高周波対応の配線板を得ることができる。また、ポリイミドが多孔質のポリイミドである場合には、絶縁層が更に低誘電率及び低誘電損失になり、更に高周波領域でも使用可能な配線板を得ることができる。
更にまた、一般にポリイミドは、化学的安定性が高いため、耐熱性及び耐溶剤性が高い反面、銅等の金属からなる金属配線との接着性が不十分である。しかしながら、本実施形態においては、ポリイミドがベンゾフェノン骨格を含むため、ベンゾフェノン基が極性基であるカルボニル基を有する。これにより、金属配線との接着性が改善されている。
更にまた、シート材1を形成する際に、高強度層3が接着層2の支持基体を兼ねるため、シート材をエポキシ樹脂のみにより構成する場合と異なり、接着層2の硬化後に支持基体を接着層2から剥がす工程が不要になる。
なお、接着層2と高強度層3との界面は、必ずしも明確に存在する必要はない。即ち、シート材1は、接着層2と高強度層3との間で組成が連続的に変化している傾斜材料等であってもよい。また、本実施形態においては、基板としてプリント基板5を使用したが、基板として、金属又は合金からなる金属基板を使用してもよく、例えば、銅又は銅合金からなる板状の基板を使用してもよい。これにより、例えば、本実施形態の配線板をGaAs系LSIパッケージに使用する場合に、放熱性を向上させることができる。また、基板として、プリント基板5の代わりに、セラミック基板を使用してもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係るシート材においては、前述の第1の実施形態と比較して、高強度層における接着層の反対側の面に銅からなるフィルム(銅箔)が形成されている。即ち、本実施形態に係るシート材は、片面銅張ポリイミドフィルムにエポキシ樹脂層を貼り合わせたものである。本実施形態のシート材における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態に係るシート材と同様である。なお、片面銅張ポリイミドフィルムは、銅箔が直接ポリイミドフィルムに積層されたフィルム、所謂2層CCL(Copper Clad Laminate)であってもよく、銅箔が接着層を介してポリイミドフィルムに積層されたフィルム、所謂3層CClであってもよい。
上述の如く構成された本実施形態のシート材及び配線板においては、高強度層の片面に銅箔が設けられているため、このシート材を使用して配線板を作製する際に、サブトラクティブ法により配線を形成することができる。即ち、銅箔をエッチングして選択的に除去することにより、容易に配線パターンを形成することができる。
また、高強度層の片面に銅箔を設けることにより、高強度層から銅箔をエッチングして除去した後に、高強度層の表面に銅箔マット面が写し込まれた凹部が形成される。この凹部の深さは0.1乃至10μmである。そして、この凹部にPd等の触媒を付着させることができるため、この触媒により高強度層の表面に無電解めっきを施すことが可能になる。この結果、アディティブ法及びセミアディティブ法により配線板を製造することが可能になる。
更に、高強度材料は反応性が乏しいものが多く、前述の第1の実施形態に係るシート材1(図1参照)を複数層積層するか、又はこのシート材1の上に他のシート材を積層して多層配線板を作製する場合、その積層界面において密着性が不十分となる場合がある。また、金属配線との密着性が不十分となる場合もある。これに対して、本実施形態によれば、高強度層の表面に微細な凹部を形成することにより、この凹部に上層のシート材又は金属配線の一部が流入して凸部を形成し、この凸部のアンカー効果により、上層のシート材又は金属配線との密着性を改善することができる。なお、凹部の深さが0.1μm未満であると、触媒を付着させる効果が不十分になると共に、アンカー効果が不十分となる。一方、凹部の深さが10μmを超えると、高強度層を薄膜化した際に、高強度層の強度が低下するため、シート材の強度を確保できなくなる場合がある。従って、凹部の深さは0.1乃至10μmであることが好ましい。本実施形態に係る上記以外の効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図3は、本実施形態における接着層と高強度層との界面を示す断面図である。図3に示すように、本実施形態においては、高強度層3aにおける接着層2a側の面に微細な凹部9が形成されている。この凹部9の深さは0.1乃至10μmであり、開口部の面積が内部における高強度層3aの表面に平行な断面の面積よりも小さくなっており、「蛸壺」状の形状を持っている。なお、高強度層3aにおける接着層2a側の面の十点平均粗さは1乃至5μmである。そして、この凹部9内に接着層2aを形成するエポキシ樹脂が入り込んでいる。
本実施形態に係るシート材の製造方法について説明する。先ず、少なくとも片面がマット面となっており、表面に凸部が形成された銅箔を作製する。この凸部は、例えば、銅箔の表面において銅を再結晶させて形成する。そして、この銅箔の表面に液状のポリイミドを塗布し、硬化させる。これにより、片面銅張ポリイミドフィルムを作製する。そして、この片面銅張ポリイミドフィルムからウエットエッチング等の手段により銅箔を除去する。これにより、銅箔のマット面をポリイミドフィルムの片面に写し込むことができ、表面に凹部9が形成された高強度層3aを形成することができる。次に、高強度層3a上に液体状態のエポキシ樹脂を塗布する。このとき、エポキシ樹脂は凹部9内に浸入する。次に、エポキシ樹脂を加熱して熱硬化させる。これにより、本実施形態に係るシート材を製造することができる。本実施形態に係る上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
前述の如く、一般に、ポリイミド等の強度が高い樹脂は、化学的安定性が高く、接着層との間の密着性が不十分となることがある。これに対して、上述の如く構成された本実施形態のシート材及び配線板においては、高強度層における接着層側の表面に微細な凹部が形成され、この凹部内に接着層を形成する樹脂が入り込んで凸部を形成しているため、この凸部によるアンカー効果が得られ、高強度層と接着層との密着性が良好である。これにより、本実施形態のシート材及び配線板において、良好な信頼性が得られる。また、高強度層における配線側の表面に凹部が形成されていると、表皮効果により高周波伝送時の特性がやや低下することになるが、配線側に凹部がない場合にはこのような問題がない。本実施形態における上記以外の効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
なお、本第3の実施形態は、前述の第2の実施形態と組み合わせて実施することもできる。即ち、両面銅張ポリイミドフィルムを使用して、高強度層の両面に微細な凹部を形成してもよい。これにより、前述の接着層側の表面のみに凹部を形成した場合と比較して、高周波伝送時の特性はやや劣化するものの、高強度層と接着層との間の密着性並びに高強度層と他のシート材及び配線との密着性を向上させると共に、サブトラクティブ法、アディティブ法又はセミアディティブ法により、容易に配線を形成することが可能なシート材を得ることができる。また、前述の第2及び第3の実施形態においては、銅張ポリイミドフィルムから銅箔を除去することにより、銅箔のマット面を転写して、高強度層の表面に凹部を形成したが、本発明はこれに限定されず、他の方法により凹部を形成してもよい。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態においては、ポリイミドからなる高強度層の表面に表面処理が施されている。この場合、高強度層における接着層と接する側の面に表面処理が施されている場合と、金属配線と接する側の面に表面処理が施されている場合とがある。表面処理としては種々の処理があるが、例えば、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオンビーム処理、アルカリ処理等がある。
紫外線照射処理においては、紫外線の波長は特に制限されないが、特に、波長が300nm以下の短波長の紫外線を照射することにより、高強度層と接着層、他のシート材又は配線との間の密着性が大きく改善される。このような紫外線光源としては、UVランプ及びエキシマランプ等がある。エキシマランプの例としてウシオ電機製エキシマVUV洗浄装置を挙げることができる。この光源は型式により、126nm、146nm、172nm、222nm、308nmの単波長に近い紫外線を照射することができる。なお、このような紫外線を照射することにより密着性が向上する原因として、表面の有機付着物の分解による清浄化、材料表面の化学反応等が考えられるが詳細は明らかではない。
プラズマ処理としては、プラズマ装置に酸素、窒素又はフッ化水素等の気体を導入した後、この気体をプラズマ化し、高強度層に対してエッチング等の表面処理を行う。特に、高強度材料がポリイミドの場合に著しい効果が認められる。なお、プラズマ処理時に導入する気体は、酸素、窒素及びフッ化水素に限定されない。
イオンビーム処理においては、イオンビームを加速して高強度層の表面に照射する。これにより、特に、後述するように高強度層がフッ素系ポリマーからなる場合に、配線との間で良好な密着性が得られる。
アルカリ処理としては、KOH、NaOH等の水溶液による表面処理がある。特に高強度材料がポリイミドである場合には、高強度層に強アルカリ溶液を接触させることにより、ポリイミドのイミド環が開環し、カルボキシル基及びアミド基が生成する。これらの基は反応性が高いため、高強度層と接着層、他のシート材又は配線との間で、高い密着性が得られる。
このように、本実施形態においては、高強度層の表面に表面処理を施すことにより、高強度層と接着層との間、高強度層と他のシート材との間、及び高強度層と金属配線との間の密着性を向上させることができる。これにより、熱サイクル試験の他、THB(steady−state Temperature Humidity Bias life test)及びHAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)等の信頼性試験の評価結果も向上する。また、高強度層の表面に表面処理を施す場合は、この表面に形成される凹凸が分子レベルか又はそれに近いほど小さいため、高強度層における金属配線側の表面に形成される凹凸の存在が、高速伝送においてまったく問題にならないという利点がある。本実施形態に係る上記以外の効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
なお、本実施形態における表面処理は、上述の処理のいずれか1の処理を行ってもよく、複数の処理を順次施すこともできる。
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態においては、高強度層を液晶ポリマーにより形成する。液晶ポリマーとしては、アゾメチン系、アゾ系、エステル系、スチルベン系、ビフェニル系、ターフェニル系、トラン系、シクロヘキサン系、ピリミジン系、フルオレン系等のメソゲン基(剛直基)を有する液晶ポリマーがある。これらのメソゲン基は、ポリマーの側鎖に存在してもよいが主鎖に存在することが望ましい。なお、これらの液晶ポリマーは多孔質体であってもよい。本実施形態に係る上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
上述の如く構成された本実施形態のシート材及び配線板においては、高強度層を形成する高強度材料として、液晶ポリマーを使用している。これにより、液晶ポリマーは分子オーダーの配向性を有するため熱膨張係数が小さく、シリコンに近い熱膨張係数を有する材料、及び配線を形成する銅等の金属の熱膨張係数に近い材料を作製することができる。例えば、高強度層として、シリコンに近い熱膨張係数を有する材料を作製することにより、配線板と半導体素子との間の熱膨張係数の差が小さくなり、熱サイクルが印加されたときに、熱応力の発生を小さく抑えることができる。また、金属の熱膨張係数に近い材料を作製すれば、高強度層と配線との間の熱応力を低減することができる。また、液晶ポリマーは誘電率及び誘電損失が小さく、吸水率が小さい等の特性があり、それらの点からも、液晶ポリマーは配線板材料として望ましい。
なお、液晶ポリマーを単体で配線板の絶縁膜として使用する方法も考えられる。しかし、はんだ耐熱性等を有する液晶ポリマーは軟化点が300℃前後と高いため、加熱温度が200℃程度の通常の加熱プレス機では使用できないという問題がある。また、軟化したときに急激に粘度が低下するために、積層時の制御が困難であること、多層配線化する場合には上層プレス時の熱によってすでに作製した下層が軟化変形してしまうため多層配線化が困難であるという問題がある。これに対して、本実施形態においては、高強度層のみを液晶ポリマーにより形成し、この高強度層を接着層に積層させてシート材を形成しているため、基板又は下層のシート材との接着は接着層により行うことができ、液晶ポリマーからなる高強度層を軟化温度まで加熱する必要はない。このため、液晶ポリマーを単体で使用する場合に生じる問題は発生しない。
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態においては、接着層を、エポキシ樹脂にアラミド繊維を含有させた複合材料により形成する。この複合材料におけるアラミド繊維の含有率は、例えば10乃至50質量%である。また、高強度材料として液晶ポリマーを使用する。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第5の実施形態と同様である。
上述の如く構成された本実施形態のシート材及び配線板においては、接着層に含まれるアラミド繊維自身にクラックの発生を抑える効果があるため、この接着層を高強度層と組み合わせてシート材を形成した場合に、より優れた耐クラック性が得られる。また、アラミド繊維を含む熱硬化性樹脂は熱膨張係数が小さいため、高強度材料として液晶ポリマーを使用し、熱硬化性材料としてアラミド繊維を含むエポキシ樹脂を使用することにより、接着層の熱膨張係数を、半導体素子を形成するシリコン(Si)の熱膨張係数にほぼ等しくすることができる。この結果、熱サイクルが印加されても、ほとんど熱応力が生じない、従ってクラック及び反りが発生しない配線板の作製が可能となる。本実施形態における上記以外の効果は、前述の第1の実施形態と同じである。
なお、本実施形態においては、熱硬化性材料のマトリックスはエポキシ樹脂に限定されず、他の熱硬化性樹脂を使用してもよい。また、熱硬化性材料として、アラミド繊維を含む熱硬化性樹脂の替わりに、フッ素系ポリマーを含む熱硬化性樹脂を使用してもよい。エポキシ樹脂は、一般に誘電率及び誘電損失がやや大きいが、低誘電率且つ低誘電損失樹脂であるフッ素樹脂が分散されたものを使用することにより、この点が改善される。このような材料として、例えば、延伸PTFEにエポキシ樹脂を含浸させた材料(例えば、ゴアテックス社製マイクロラム600等)がある。
また、本実施形態における熱硬化性樹脂は、配線板を高周波領域で使用することを考慮すると、可及的に低誘電率且つ低誘電損失のものが望ましい。このようなものとして、エポキシ樹脂の他に、ポリオレフィン及びビニル系の樹脂がある。また、熱硬化性樹脂として、BTレジンを使用してもよい。
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態においては、高強度層をフッ素系ポリマーにより形成する。フッ素系ポリマーとは、分子構造内にフッ素原子を含むポリマーをいい、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド等がある。なお、これらのフッ素系ポリマーは多孔質体であってもよい。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第1の実施形態と同様である。
上述の如く構成された本実施形態のシート材及び配線板においては、高強度層をフッ素系ポリマーにより形成している。フッ素系ポリマーは、誘電率及び誘電損失が樹脂の中で最も低く、高周波数を用いた高速伝送配線板に特に望ましい材料である。また、フッ素系ポリマーは強度が小さいが伸びが極めて大きいため、クラックの発生を防止する効果が大きい。但し、フッ素系ポリマーは疎水性であるため、他の樹脂層及び金属配線との密着性が低い。このため、フッ素系ポリマーからなる高強度層の表面に、前述の第4の実施形態において示した表面処理を施すことが望ましい。
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。本実施形態に係るシート材は、前述の第1の実施形態に係るシート材1(図1参照)と同じである。本実施形態においては、配線板を作製する際に、金属板上にシート材1を形成し、配線6a乃至6c及びビア7を形成した後、金属板をエッチングして除去する。これにより、本実施形態に係る配線板が作製される。
本実施形態においては、配線板の作製工程においては、金属板上にシート材を形成するため、金属板が支持基板として機能し、平坦性が優れた配線板を容易に作製することができる。そして、最終的に金属板を除去することにより、支持基板がない極めて薄型の配線板を得ることができる。このような薄型の配線板においては熱応力を吸収する支持基板がなく、発生した応力がすべて積層したシート材に集中する。このため、本発明の耐クラック性が良好なシート材は特に有効である。本実施形態における上記以外の効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
なお、本実施形態においては、前述の第2乃至第4の実施形態において示したように、高強度層の表面に微細な凹部を形成するか、又は表面処理を施し、接着層、他のシート材又は配線との密着性を向上させることが好ましい。この理由は、本実施形態の配線板は、応力を吸収する支持基板を持たないため、シート材の界面密着性が乏しいものであれば、容易に界面剥離が発生し、配線板の特性及び信頼性を低下させるからである。
次に、前述の第8の実施形態に係る配線板の製造方法について説明する。図4(a)乃至(g)は、本実施形態に係る配線板の製造方法をその工程順に示す断面図である。先ず、図4(a)に示すように、接着層2と高強度層3とを相互に貼り合わせて、シート材1を作製する。このとき、接着層2は半硬化状態となっている。
次に、図4(b)に示すように、金属板8上に配線6aを形成する。そして、この配線6aを覆うように、金属板8上にシート材1を配置する。このとき、シート材1の接着層2が金属板8に接するようにする。これにより、シート材1の接着層2が変形し、配線6aを埋め込む。その後、加熱して、接着層2を熱硬化させる。
次に、図4(c)に示すように、シート材1における配線6aの直上域の一部に、レーザー加工等の方法により、ビアホール11を形成する。次に、図4(d)に示すように、このビアホール11の内部に導体層を埋め込み、ビア7を形成する。次に、図4(e)に示すように、シート材1上に配線6bを形成する。このとき、配線6bはビア7を介して配線6aに接続されるようにする。
次に、図4(f)に示すように、シート材1の上に、他のシート材1(以下、シート材1aという)を積層して熱硬化させる。このとき、シート材1aの接着層2が配線6bを埋め込む。次に、シート材1aにおける配線6bの直上域の一部にビア7を形成する。そして、シート材1a上に配線6cを形成する。このとき、配線6cはシート材1a中のビア7を介して、配線6bに接続されるようにする。
次に、図4(g)に示すように、金属板8をエッチングにより除去する。これにより、第8の実施形態に係る配線板が作製される。
なお、図4(a)乃至(g)に示す製造方法においては、支持基板として金属板8を使用したが、支持基板は平坦性を備えた基板であれば特に金属板に限定されるものではない。また、支持基板の除去方法もエッチングに限定されず、剥離等、エッチング以外の方法を使用してもよい。
また、前述の第1の実施形態に係る配線板4を作製する場合には、図4(a)乃至(f)に示す工程において、金属板8の代わりにプリント基板上にシート材1及び1aを積層する。そして、図4(g)に示す工程は省略する。これにより、図2に示す配線板4を製造することができる。
また、前述の第1乃至第8の実施形態において、熱硬化性樹脂の替わりに、熱可塑性樹脂を使用してもよい。
以下、本発明の実施例について、その特許請求の範囲から外れる比較例と比較して具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変形、変更が可能である。
以下に示す実施例及び比較例においては、高強度層を形成する材料及び表面状態が異なるシート材を作製し、このシート材を使用して配線板のサンプルを、後述する各実施例及び比較例について夫々20個作製した。そして、10個のサンプルについては、温度変化範囲が−65〜150℃の熱サイクル試験を行い、その後、配線抵抗を測定した。また、他の10個のサンプルについては、耐湿試験(HAST)を行い、所定の時間経過後、高強度層と接着層との間の力学的な剥離強度の測定及び絶縁抵抗の測定を行った。また、高強度層の引張強度を測定した。更に、一部の実施例については、高強度層と配線との間のピール強度を測定した。
以下、熱サイクル試験及び耐湿試験の目的及び詳細な試験方法について説明する。半導体デバイスの熱応力耐久性を、実使用条件(25〜70℃)において評価すると、評価に長時間を要してしまう。このため、サンプルに(−65〜150℃)の熱サイクルを印加し、加速試験を行う。即ち、−65℃の温度に30分間保持した後、+150℃の温度に30分間保持する基本サイクルを所定の回数繰り返す熱サイクルを印加する。なお、低温(−65℃)から高温(+150℃)へ移行する移行時間及び高温から低温へ移行する移行時間は、ヒートサイクル試験機の能力及びサンプルの熱容量により異なるため、適宜調整する。仮に、熱サイクル試験中に、熱応力により絶縁膜中にクラックが発生し、このクラックが配線板の配線を切断していれば、前記配線抵抗は熱サイクル試験前よりも増加する。このため、配線抵抗を測定することにより、配線板の信頼性を評価することができる。
また、前述の如く、ポリイミド等の高強度材料は、その化学的安定性から他の材料との密着性及び接着性が低い場合が多い。このような密着性及び接着性が低い材料を他の材料と積層した場合には、両材料の界面の強度が不十分となる。この不十分な接着強度はそのままでも評価することは可能であるが、サンプルが置かれた環境に極性が高い水が存在すると、この水が、接着が弱い界面に容易に浸入し、この界面の接着強度をより一層低下させると共に、絶縁抵抗を低下させる。従って、高湿高温下にサンプルを長時間置くことによって接着強度が十分であるか否かをより明確に検出することができる。このような試験として、HAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test、規格:JESD22−A110−B)及びTHB(steady−state Temperature Humidity Bias life test、規格:JESD22−A110−B)を挙げることができる。なお、試験規格JESDは、「JEDEC Standards」を意味し、JEDECはJoint Electron Device Engineering Council(米国の電子デバイスに関する標準化団体、homepageはhttp://www.jedec.org)を示している。
以下、各実施例及び比較例について、詳細に説明する。
【実施例1】
高強度材料として両面銅張ポリイミドフィルム(宇部興産製ユピセルN、銅箔厚さ:12μm、ポリイミド厚さ:25μm)を使用した。両面銅張ポリイミドフィルムの両面の銅箔をアルカリ銅エッチング液により溶解した。銅箔エッチング後のポリイミドフィルムの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察すると、銅箔のマット面が写し込まれて形成された微細な凹部が観察された。
次に、銅箔をエッチングしたポリイミドフィルムと半硬化状態(Bステージ)のエポキシ樹脂材(味の素製ABF、厚さ:40μm)とを、80℃の温度に加熱して真空ラミネート法により貼り合わせ、シート材とした。一方、銅板上にエッチングバリア層としてのNiめっき層を形成し、このエッチングバリア層上に金層及び銅層の2層膜からなるBGAランド部を形成した。そして、この銅板上に前記シート材を積層プレスし、170℃の温度に60分間保持してエポキシ樹脂を硬化させた。この銅板上に形成されたシート材の一部を切り出し、その断面を観察した。
図5は、シート材におけるポリイミド層とエポキシ樹脂層との界面を示す断面光学顕微鏡写真である。なお、図5にはスケールが写し込まれており、このスケールの最小単位は1μmである。図5に示すように、高強度層としてのポリイミド層13と接着層としてのエポキシ樹脂層12との界面において、ポリイミド層13の表面に蛸壺状の凹部14が形成されており、この凹部14にエポキシ樹脂が流れ込み、エポキシ樹脂層12がポリイミド層13に噛み込んだ構造となっていた。この状態で、ポリイミド層13とエポキシ樹脂層12とを相互に引き離そうとしたが、両者は強固に密着しており、引き離すことができなかった。
次に、この銅板上のシート材に炭酸ガスレーザーでビアを形成した後、デスミア処理を行い、パラジウムを触媒とする無電解めっきを施した。この結果、めっき液に接しているシートの表面及びビアの側面に均一な無電解めっき層が形成された。無電解めっき層が形成された試料にめっきレジストを用いてパターンを形成し、電気めっきによって厚さが約18μmの配線を形成すると共に、ビアをめっき充填した。次に、エッチングにより不要な無電解めっき層を選択的に除去した。
上述の工程を繰り返して多層配線板を作製した。次に、この配線板上にテスト用の半導体素子をフリップチップ接続で搭載した。その後、下層の銅板をエッチングして除去し、続いてエッチングバリア層であるNi層も除去した。以上の工程により、半導体素子が搭載された配線板を得た。なお、製造した配線板には、半導体素子を搭載していない領域に、HAST試験用のビアと配線を設けたTEG(テストエレメントグループ)領域を設けた。
この配線板のBGAランド部にはんだボールを搭載した後、半導体素子毎に切断し、試験サンプルとした。この試験サンプルを10サンプル使用して、温度変化範囲が−65〜150℃である熱サイクル試験を行った。その結果、熱サイクル1000サイクル終了後においても断線等による配線抵抗の増加は発生しなかった。
他の10サンプルについてHAST試験(温度:130℃、湿度:85%RH、印加電圧:5V)を行った。HAST試験は、ビア間の絶縁抵抗について行った(ビア/ランド径:90/150μm、ビアピッチ:300μm)。HAST試験では、400時間経過後においても絶縁抵抗値の低下等の問題は発生しなかった。また、HAST試験後のサンプルについてポリイミド層−エポキシ樹脂層間での引き離しを試みたが、両者は相互に強固に密着し、引き離すことができなかった。
無電解めっき層が形成された他の銅板上のシート材に電気めっきによってパネルめっきを施し、厚さが約18μmの銅層を形成した。この銅層を幅が10mmの短冊状に残して残部を除去し、90度ピール強度(引きはがし強度、JIS C6481に準拠)を測定した。ピール強度は1.5kN/mであった。
また、使用した銅箔エッチング後のポリイミドフィルムを幅10mmの短冊状に切り出し、引張測定を行った。引張試験は、「JPCA規格 ビルトアップ配線板 JPCA−BU01」に準拠した。この結果、破断伸びが78%(温度:23℃)、引張強度が450MPa(温度:23℃)、480MPa(温度:−65℃)、350MPa(温度:150℃)であった。従って、前述の(a/b)比、即ち、温度が−65℃のときの引張破断強度aと、温度が150℃のときの引張破断強度bとの比は、1.37であった。
【実施例2】
両面銅張ポリイミドフィルムの片面を保護フィルムでカバーし、実施例1と同じエッチング液により片面の銅箔のみを除去した。なお、このポリイミドフィルムの膜厚及び機械的特性は、前述の実施例1のポリイミドフィルムと同じである。ポリイミドフィルムにおける銅箔をエッチングした側の面に、半硬化状態のエポキシ樹脂(日本ペイント製プロビコート、厚さ:50μm)を真空ラミネートして積層シート材を得た。
実施例1と同様の銅板にこの積層材を積層プレスし、銅板上に形成されたシート材を得た。次に、残存している側の銅箔をパターニングし、サブトラクティブ法により配線を形成した。次に、半導体素子を搭載し、エッチングにより銅板を除去し、配線板を作製した。
本実施例においては、実施例1と同様に、ポリイミドフィルムの表面の凹部にエポキシ樹脂層が噛み込んだ構造となっており、両者を引き離すことはできなかった。
また、実施例1と同様に、熱サイクル試験及びHAST試験を行った。熱サイクル1000サイクル終了後においても断線等による配線抵抗の増加は発生せず、HAST試験400時間経過後においても絶縁抵抗値の低下等の問題は発生しなかった。また、HAST試験後のサンプルについてポリイミドフィルム−エポキシ樹脂層間での引き離しを試みたが、両者は強固に密着し、引き離すことができなかった。
前述の実施例1及び2においては、金属板上に作製され、最終的に金属板が除去された配線板の実施例について説明した。これは、最終的に金属板を除去し、シート材からなる絶縁膜と金属配線のみからなる配線板の方が、コア基板を持つ配線板よりも、半導体素子等を搭載したときに発生する熱応力の影響が大きいからである。つまり、発生する熱応力を薄い絶縁膜により吸収しなければならないため、絶縁膜に要求される破断強度等は大きなものとなる。このことは、最終的に金属板が除去される配線板で使用可能な材料であれば、プリント配線板等のコア基板を有する配線板にもおよそ使用可能であることを意味している。しかし、プリント配線板等のコア基板を有する配線板においても、シート材と線膨張係数が異なり、ピン数が多い半導体素子を搭載する場合には、シート材と金属配線及びその他の異種材料との界面を起点としてクラックが発生する可能性があるため、本発明に示すような耐クラック性が高いシート材は有効である。以下、実施例3として、プリント基板を持つ配線板について説明する。
【実施例3】
実施例1と同様に作製した積層シート材を、プリント配線を有するFR−4基板に積層プレスし、170℃の温度に80分間保持してシート材下層のエポキシ樹脂を硬化させることでFR−4基板と接着させた。このFR−4基板を含む積層材の一部を切り出し、その断面を観察したところ、ポリイミドフィルムの凹部にエポキシ樹脂層が噛み込んだ構造となっていた。この状態でポリイミド層とエポキシ樹脂層を引き離そうとしたが、両層は相互に強固に密着しており、引き離すことができなかった。
FR−4基板上の上記シート材にレーザーでビアを形成した後、デスミア処理を行い、パラジウムを触媒とする無電解めっきを施した。これによりシート材の上面及びビア部の内面に無電解めっき層による電気めっき下地層を形成した。
次に、めっき下地層が形成された試料にレジストを用いて配線パターンを形成し、電気めっきを行い、レジストを除去することにより、所望のパターンの配線を得ると共に、ビア内にめっきを充填した。配線の厚さは約18μmになるように調整した。その後、不要な無電解めっき層を選択的に除去した。
上述の工程を繰り返して多層基板を作製した。次に、この多層基板上に半導体素子をフリップチップ接続で搭載した。これにより、半導体素子が搭載された配線板を得た。
この多層配線板を半導体素子毎に切断し、試験サンプルとした。この試験サンプルを20サンプル使用して熱サイクル試験(−65℃〜150℃)を行った。1000サイクル終了後においても断線等の問題は発生しなかった。
【実施例4】
熱硬化性樹脂として、アラミド繊維を補強基材、エポキシ樹脂をマトリックスとする半硬化の熱硬化性材料(新神戸電機製EA541、アラミド繊維含有率は30質量%)を使用した。これ以外は実施例1と同様な方法により、配線板を作製した。即ち、本実施例に使用したポリイミドフィルムは、前述の実施例1で使用したポリイミドフィルムと同じものである。
本実施例の配線板においても、ポリイミド層の凹部に接着層が噛み込んだ構造となっており、両層を引き剥がすことができなかった。また、熱サイクル試験も1000サイクルにおいても断線等の問題は発生せず、HAST試験400時間経過後においても、絶縁抵抗値の低下等の問題は発生しなかった。
【実施例5】
熱硬化性樹脂として、延伸多孔質フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン)にエポキシ樹脂を含浸させ半硬化とした熱硬化性材料からなる熱硬化性材料(ゴアテックス製マイクロラム、フッ素系ポリマーの含有率は25%)を使用し、配線板を作製した。本実施例の配線板における上記以外の構成は、前述の実施例1と同様とした。即ち、本実施例に使用したポリイミドフィルムは、前述の実施例1で使用したポリイミドフィルムと同じものである。
本実施例の配線板においても、ポリイミド層の凹部に接着層が噛み込んだ構造となっており、両層を相互に引き剥がすことができなかった。また、1000サイクルの熱サイクル試験においても、断線等の問題は発生しなかった。
【実施例6】
ベンゾフェノン骨格を含むポリイミドとして、ポリ[N,N’−(1,4−フェイニレン)−3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボキシル イミド](アルドリッチ試薬)をPTFE上にバーコーターにより塗布し、乾燥させてポリイミドフィルムを形成し、その後、このポリイミドフィルムをPTFEから剥がした。これにより第2の層に用いるベンゾフェノン骨格を含むポリイミドフィルム(フィルム膜厚:20μm)を得た。得られたポリイミドフィルムは両面がほぼ平坦であった。このポリイミドフィルムと半硬化状態のエポキシ樹脂材(味の素製ABF、厚さ:40μm)とを、80℃の温度に加熱して真空ラミネートにより貼り合わせ、シート材とした。このシート材からサンプルを採取し、ポリイミド層とエポキシ樹脂層と間のピール強度試験、熱サイクル試験及びHAST試験、ポリイミド層と配線との間のピール強度試験、ポリイミドフィルムの引張試験に供した。
ポリイミド層とエポキシ樹脂層と間のピール強度試験においては、前記シート材を銅板上に積層プレスし、170℃の温度に60分間保持してエポキシ樹脂を硬化させた。その後、実施例1と同様な方法でポリイミド層とエポキシ樹脂層と間のピール強度を測定しようとしたが、両者が強固に密着し、引き離すことができなかった。
一方、熱サイクル試験及びHAST試験においては、実施例1と同様に、銅板上にBGAランド部を形成し、この銅板上に、前述のラミネート後のシート材を積層プレスし、170℃の温度に60分間保持してエポキシ樹脂を硬化させ、銅板上に形成されたシート材からなる絶縁膜を得た。そして、この絶縁膜上にスパッタリングにより金属層を形成した。なお、この金属層は、密着用の下層と銅からなる上層の2層膜とした。次に、この金属層をシード層として無電解めっきを施し、配線を形成した。その後、前述の実施例1と同様な方法により、半導体素子を搭載した配線板を作製し、BGAランド部にはんだボールを搭載した。
次に、この配線板を半導体素子毎に切断し、試験サンプルとした。その後、実施例1と同様に熱サイクル試験及びHAST試験を行った。その結果、熱サイクル試験においては、800サイクル終了後においても断線等による配線抵抗の増加は発生せず、HAST試験においては、400時間経過後においても絶縁抵抗値の低下等の問題は発生しなかった。また、HAST試験後のサンプルについてポリイミドフィルム−エポキシ樹脂層間での引き離しを試みたが両者が強固に密着し、引き離すことができなかった。
更に、ポリイミド層と配線との間のピール強度試験においては、実施例1と同様に、前記シート材を銅板上に積層し、170℃の温度に60分間保持して硬化させた。その後、スパッタで銅の薄膜を付け、これをシード層として電気めっきにより、厚さが約18μmの銅箔を形成した。そして、実施例1と同様な方法により、ポリイミド層と銅箔との間のピール強度を測定したところ、ピール強度は1.2kN/mであった。
使用したベンゾフェノン骨格を含むポリイミドフィルムを幅10mmの短冊状に切り出し引張測定を行った。破断伸びは19%(温度:23℃)、引張強度は170MPa(温度:23℃)、190MPa(温度:−65℃)、79MPa(温度:150℃)であった。従って、前記(a/b)比は2.41であった。
【実施例7】
高強度材料として、片面に銅箔が形成された銅箔付液晶ポリマー(新日鐵化学製エスパネックス)を使用した。液晶ポリマー層の膜厚は25μmであり、銅箔の膜厚は18μmである。これ以外は実施例1と同様な方法により、配線板を作製し試験を行った。熱サイクル試験では、900サイクルにおいても断線等の問題は発生せず、HAST試験(温度:120℃、湿度:85%RH)においても400時間において問題が発生しなかった。銅箔のピール強度は1.2kN/mであった。
銅箔を除去した後の液晶ポリマー層の引張破断強度を測定したところ、破断伸びは28%(温度:23℃)、引張破断強度は190MPa(温度:23℃)、230MPa(温度:−65℃)、120MPa(温度:150℃)であった。従って、前記(a/b)比は1.92であった。
【実施例8】
高強度材料としてポリイミドフィルム(宇部興産製ユーピレックス、厚さ:25μm)を準備した。このポリイミドフィルムを幅が1cmの短冊状に切り出し、引張測定を行ったところ、破断伸びは120%(温度:23℃)、引張強度は270MPa(温度:23℃)、310MPa(温度:−65℃)、210MPa(温度:150℃)であった。従って、前記(a/b)比は1.48であった。
前述のポリイミドフィルムを3枚準備し、そのうち1枚に紫外線照射処理を施し、他の1枚にプラズマ処理を施し、残りの1枚は無処理とした。その後、これらのポリイミドフィルムに夫々半硬化状態のエポキシ樹脂(味の素製ABF)を真空ラミネートし、積層シート材を得た。紫外線照射処理は、エキシマUVランプ(ウシオ電機製、中心波長:172nm)を2分間照射した。プラズマ処理においては、温度が45℃の酸素プラズマにより3分間処理した。そして、このようにして作製された3種類のシート材から夫々サンプルを切り出し、ポリイミド層−エポキシ樹脂層間のピール強度試験、熱サイクル信頼性試験、配線−ポリイミド層間のピール試験に供した。
ポリイミド層−エポキシ樹脂層間のピール強度試験においては、得られたシート材を銅板上に積層プレスし、170℃の温度に60分間保持してエポキシ樹脂を硬化させた後、ポリイミド−エポキシ樹脂間のピール強度を測定した。その結果、無処理サンプルについては、ピール強度が0.6kN/mであった。紫外線照射処理サンプル及びプラズマ処理サンプルについては、ポリイミド層とエポキシ樹脂層とが相互に強固に密着しており、両者を引き剥がすことができなかった。この場合、ピール強度は2kN/m以上と推定された。
一方、熱サイクル信頼性試験においては、実施例1と同様に、銅板上にBGAランド部を形成し、この銅板上に夫々のシート材を積層プレスし、170℃の温度に60分間保持してエポキシ樹脂を硬化させ、絶縁膜を得た。そして、電気めっき用のシード層として無電解めっき層の代わりにスパッタリングによる金属層を用いた以外は、実施例1と同様な方法により、半導体素子を搭載した配線板を作製し、BGAランド部にはんだボールを搭載した。なお、スパッタリングによる金属層は、密着用の金属からなる下層と銅からなる上層との2層膜とした。
次に、このようにして作製した配線板を半導体素子毎に切断し、試験サンプルとした後、実施例1と同様に熱サイクル試験、HAST試験を行った。無処理サンプルについては、熱サイクル800サイクル及び900サイクル時に配線抵抗が増加したサンプルが各1個発生したが、残りの8個のサンプルについては、熱サイクル1000サイクル終了後においても断線等による配線抵抗の増加は認められなかった。また、無処理サンプルについては、HAST試験350時間経過後において、2サンプルに絶縁抵抗値の10%の低下が認められたが、残りの8サンプルについては、絶縁抵抗値の低下等の問題は発生しなかった。また、HAST試験後の各サンプルについてポリイミドフィルム−エポキシ樹脂層間での引き離しを試みたところ、紫外線照射処理サンプル及びプラズマ処理サンプルについては、両層が相互に強固に密着し、引き離すことができなかった。無処理サンプルについては、HAST試験前より接着強度が低下していることが認められた。
配線−ポリイミド層間のピール試験においては、前述のシート材におけるポリイミド層上に、スパッタリングによりシード層を形成し、その後、電気めっきによってパネルめっきを施し、厚さが約18μmの銅層を形成した。この銅層を選択的に除去して幅が10mmの短冊状に残し、90度ピール強度(引きはがし強度)を測定したところ、ピール強度は紫外線照射処理サンプルについては1.0kN/m、プラズマ処理サンプルについては1.2kN/mであった。
【実施例9】
高強度材料として、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン製カプトン)を使用し、表面処理方法としてアルカリ処理を使用した以外は実施例8と同様な方法により配線板を作製し、評価した。なお、使用したポリイミドフィルムの引張測定を行ったところ、破断伸びが45%(温度:23℃)、引張強度が280MPa(温度:23℃)、320MPa(温度:−65℃)、230MPa(温度:150℃)であった。従って、前記(a/b)比は1.39であった。
アルカリ処理は、温度が50℃であり濃度が5Nである水酸化ナトリウム水溶液に、各サンプルを10分間浸漬することにより行った。アルカリ処理後、ポリイミド層−エポキシ樹脂層間のピール強度を測定したところ、アルカリ処理を行っていない無処理品についてはピール強度が0.4kN/mであったが、アルカリ処理後のサンプルについては、両層が相互に強固に密着しており、引き剥がすことができなかった。
一方、実施例8と同様に半導体素子を搭載した配線板を作製し、熱サイクル試験及びHAST試験を行った。アルカリ処理サンプルは何れも1000サイクル終了後においても断線等の問題は発生せず、またHAST400時間において問題は発生しなかった。アルカリ処理サンプルにおける銅層のピール強度は0.9kN/mであった。
【実施例10】
高強度材料として、多孔質のポリイミド(日東電工製)を使用し、実施例8と同様な方法により紫外線照射を行い、配線板を作製した。本実施例における上記以外の条件は前述の実施例8と同様である。熱サイクル試験を行った結果、800サイクルにおいても断線等の問題は発生しなかった。また、HAST試験を行った結果、500時間経過後においても問題は発生しなかった。
なお、本実施例において使用した多孔質ポリイミドフィルムの引張特性は、破断伸びが15%、引張強度が130MPa(温度:23℃)、150MPa(温度:−65℃)、95MPa(温度:150℃)であった。従って、前記(a/b)比は1.57であった。
(比較例1)
配線板用絶縁材料としてエポキシ樹脂フィルム(味の素製ABF−SH、厚さ:60μm)を用いた。このエポキシフィルムを幅が1cmの短冊状に切り出し、引張測定を行った結果、破断伸びが5.9%(温度:23℃)、引張強度が64MPa(温度:23℃)、130MPa(温度:−65℃)、25MPa(温度:150℃)であった。従って、前記(a/b)比は5.2であった。
シート材として単層のエポキシ樹脂フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様な方法により、半導体素子が搭載された配線板を作製した。この配線板を半導体素子毎に切断し、試験サンプルとした。そして、実施例1と同様に、各10サンプルについて熱サイクル試験及びHAST試験を行った。
熱サイクル試験では200サイクルから400サイクルで全サンプルの配線抵抗値が増加した。試験終了後にサンプルを切断し断面を観察すると、ランド周辺部から絶縁層に発生したクラックが金属配線を切断していることが観察された。HAST試験においては、400時間後も絶縁抵抗の低下等は認められなかった。
(比較例2)
配線板材料としてポリイミド系絶縁樹脂フィルム(旭電化製BUR−201、厚み40μm)にマット面を有する電解銅箔を積層プレスし硬化させたものを高強度材料として使用した。ポリイミドフィルムの両面の銅箔をアルカリ銅エッチング液により溶解した。銅箔エッチング後のポリイミドフィルムの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察すると、銅箔のマット面が写しこまれ微細な凹部が観察された。
使用したポリイミドフィルム(銅箔エッチング後)を幅10mmの短冊状に切り出し引張強度測定を行った。その結果、破断伸びは8%(温度:23℃)、引張強度は80MPa(温度:23℃)、120MPa(温度:−65℃)、42MPa(温度:150℃)であった。従って、前記(a/b)比は2.86であった。なお、本比較例のポリイミドフィルムは、実施例1のポリイミドフィルムよりも引張強度が低くなっている。一般に、ポリイミドの強度は分子構造に依存し、分子構造がリニアであれば強度が高く、3次元構造であれば強度が低い傾向がある。
銅箔をエッチングしたポリイミドフィルムと半硬化状態のエポキシ樹脂材(味の素製ABF、厚さ:40μm)を真空ラミネートにより貼り合わせシート材とし、これを用いて実施例1と同様な方法により、半導体素子が搭載された配線板を作製した。
この配線板のBGAランド部にはんだボールを搭載した後、配線板を半導体素子毎に切断し試験サンプルとした。その後、実施例1と同様に各10サンプルについて熱サイクル試験及びHAST試験を行った。
熱サイクル試験については、400サイクルから配線抵抗値が増加するサンプルが発生し、700サイクルで全サンプルが高抵抗値となった。試験終了後にサンプルを切断し断面を観察すると、ランド周辺部から絶縁膜に発生したクラックがポリイミド層を貫通し金属配線を切断していることが観察された。
HAST試験については、200時間経過後より絶縁抵抗値の低下が認められ、400時間経過後にはすべてのサンプルの絶縁抵抗値が、HAST試験前の1×10−3乃至1×10−6倍程度まで低下した。
(比較例3)
高強度材料として銅箔付の液晶ポリマーフィルム(ゴアテックス製 銅箔厚さ:12μm、液晶ポリマー厚さ:25μm)を用いた。この液晶ポリマーフィルムから銅箔をエッチングして除去した後、幅が10mmの短冊状に切り出し、引張測定を行った。その結果、破断伸びが9%(温度:23℃)、引張強度が81MPa(温度:23℃)、130MPa(温度:−65℃)、32MPa(温度:150℃)であった。従って、前記(a/b)比は4.06であった。
一方、銅箔を銅エッチング液により溶解した後、半硬化状態のエポキシ樹脂材(味の素製ABF、厚さ:40μm)を真空ラミネートにより貼り合わせシート材とした。そして、このシート材を用いて、実施例1と同様な方法により、半導体素子が搭載された配線板を作製した。
この配線板のBGAランド部にはんだボールを搭載した後、配線板を半導体素子毎に切断し、試験サンプルとした。その後、実施例1と同様に、各10サンプルについて熱サイクル試験及びHAST試験を行った。
熱サイクル試験については、300サイクルから配線抵抗値が増加するサンプルが発生し、700サイクルで全サンプルが高抵抗値となった。試験終了後にサンプルを切断し断面を観察すると、ランド周辺部から絶縁膜に発生したクラックが液晶ポリマー層を貫通し金属配線を切断している様子が観察された。
HAST試験においては、300時間経過後より絶縁抵抗値の低下が認められた。400時間経過後においてもサンプルの絶縁抵抗値は、HAST試験前の0.1倍程度であった。
【産業上の利用可能性】
本発明は、半導体素子を搭載する配線板の絶縁膜として使用されるシート材、及びこのシート材を使用した配線板に関する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線板の絶縁膜として使用されるシート材において、第1の絶縁材料からなる第1の層と、この第1の層に積層され、温度が23℃のときの引張破断強度が100MPa以上であり、温度が23℃のときの破断伸率が10%以上であり、温度が−65℃のときの引張破断強度をa(MPa)とし温度が150℃のときの引張破断強度をb(MPa)とするとき比(a/b)の値が2.5以下である第2の絶縁材料からなる第2の層と、を有することを特徴とするシート材。
【請求項2】
前記第2の絶縁材料がポリイミドであることを特徴とする請求項1に記載のシート材。
【請求項3】
前記ポリイミドが多孔質ポリイミドであることを特徴とする請求項2に記載のシート材。
【請求項4】
前記ポリイミドがベンゾフェノン骨格を含むポリイミドであることを特徴とする請求項2又は3に記載のシート材。
【請求項5】
前記第2の絶縁材料が液晶ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のシート材。
【請求項6】
前記第2の絶縁材料がフッ素系ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のシート材。
【請求項7】
前記第1の絶縁材料が、所定の硬化温度範囲において硬化する熱硬化性材料であり、前記第2の絶縁材料が、前記硬化温度範囲において軟化しない耐熱性材料であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項8】
前記第1の絶縁材料において、温度が150℃のときの弾性率が2.0GPa以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項9】
前記第1の絶縁材料が、アラミド繊維又はフッ素系ポリマーを含有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項10】
前記第2の層における前記第1の層に接する表面に、深さが0.1乃至10μmの凹部が複数個形成されており、前記凹部は、開口部の面積が内部における前記第2の層の表面に平行な断面の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項11】
前記第2の層における前記第1の層に接していない側の表面に、深さが0.1乃至10μmの凹部が複数個形成されており、前記凹部は、開口部の面積が内部における前記第2の層の表面に平行な断面の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項12】
前記第2の層の凹部が、表面に凸部が形成された銅箔上に前記第2の絶縁材料を成膜した後、前記銅箔を除去することにより、前記凸部を前記第2の層の表面に転写させて形成されたものであることを特徴とする請求項10又は11に記載のシート材。
【請求項13】
前記凹部が形成されている前記第2の層の表面の十点平均粗さが0.1乃至10μmであることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項14】
前記凹部が形成されている前記第2の層の表面の十点平均粗さが1乃至5μmであることを特徴とする請求項13に記載のシート材。
【請求項15】
前記第2の層の表面の少なくとも一部に紫外線照射処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項16】
前記第2の層の表面の少なくとも一部にプラズマ処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項17】
前記第2の層の表面の少なくとも一部にイオンビーム処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項18】
前記第2の層の表面の少なくとも一部にアルカリ溶液処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項19】
金属又は合金からなり前記第1の層と共に前記第2の層を挟む位置に配置された第3の層を有することを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項20】
前記第1の層及び前記第2の層のうち少なくとも一方が複数層設けられており、前記第1の層及び前記第2の層が交互に積層されていることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項21】
基板と、この基板上に設けられた請求項1乃至20のいずれか1項に記載のシート材と、を有することを特徴とする配線板。
【請求項22】
前記基板がプリント基板であることを特徴とする請求項21に記載の配線板。
【請求項23】
前記基板が金属又は合金からなる金属基板であることを特徴とする請求項21に記載の配線板。
【請求項24】
前記基板上に、前記第1の層及び前記第2の層が順次積層されて形成されたことを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項25】
前記第1の層と前記第2の層とが相互に積層されてシート材が形成された後、このシート材が前記基板に被着されて形成されたことを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載の配線板。
【請求項26】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載のシート材を有し、金属板上に前記シート材を形成した後、前記金属板を除去することにより形成されたことを特徴とする配線板。

【国際公開番号】WO2004/060660
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564474(P2004−564474)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014732
【国際出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】