説明

シート状物及びその製造方法、並びにそれを用いてなる内装材及び衣料用資材並びに工業用資材

【課題】本発明は、良好な外観を有し、かつ環境に配慮したシート状物及びその製造方法、並びにそれを用いてなる内装材及び衣料用資材並びに工業用資材を提供する。
【解決手段】本発明のシート状物は、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布にノニオン系自己乳化型ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を含有したシート状物であって、該高分子弾性体が無機顔料を含有し、かつ該自己乳化型ポリウレタンが、その分子構造内にシロキサン結合による架橋構造を有することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な外観を有し、かつ環境に配慮したシート状物及びその製造方法、並びにそれを用いてなる内装材及び衣料用資材並びに工業用資材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主として極細繊維とポリウレタンからなるシート状物は天然皮革にない優れた特徴を有しており、種々の用途に広く利用されている。
【0003】
かかるシート状物を製造するにあたっては、極細繊維からなる不織布に、ポリウレタンの有機溶剤溶液を含浸せしめた後、該繊維シート状物をポリウレタンの非溶媒である水または有機溶剤水溶液中に浸漬してポリウレタンを湿式凝固せしめる工程が一般的に採用されている。かかる有機溶剤としては、ポリウレタンの有機溶剤としてはN,N’−ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶剤が用いられる。
【0004】
また、不織布を構成する極細繊維の製造方法としては極細繊維を直接紡糸する方法や、剥離型複合繊維や海島型複合繊維といった極細繊維発生型繊維からなる不織布を極細化処理して極細繊維を発生させる方法が挙げられる。ここで、直接紡糸法と極細繊維発生型繊維を用いる方法を比較すると、前者よりも後者の方が細繊度の極細繊維が得られることから、シート状物の表面品位や触感は良好となりやすい利点がある。しかし、極細繊維発生型繊維の極細化処理では、トルエン、トリクロロエチレン等の有機溶剤を使用するのが一般的である。
【0005】
すなわち、従来のシート状物の製造方法では、ポリウレタンの溶剤や繊維の極細化処理において、有機溶剤を使用する方法が主に用いられてきたものであった。しかし、有機溶剤は人体や環境への有害性が高いことから、シート状物の製造に際しては、有機溶剤を使用しない手法が強く求められていた。
【0006】
近年、このような背景からポリウレタンの有機溶剤使用に関しては、従来の有機溶剤タイプのポリウレタンに代えて水中にポリウレタンを分散させたポリウレタン水分散液を用い、繊維極細化工程に関しては、極細繊維発生型繊維に熱水可溶成分やアルカリ水溶液可溶成分を溶出成分として用いることで、熱水やアルカリ水溶液を用いて繊維の極細化を行う方法が検討されている。
【0007】
しかし、ポリウレタン液を不織布に含浸して凝固する際、有機溶剤溶液のポリウレタンの場合はポリウレタンの非溶媒である水または有機溶剤水溶液中に浸漬してポリウレタンを凝固せしめる湿式凝固を行うと、不織布内部でのポリウレタンの分布は不織布の厚み方向に均一に付与されるが、ポリウレタン水分散液の場合は、加熱乾燥時にポリウレタン水分散液の水分がシート状物最表面に移動する際に、ポリウレタンも最表面近傍に集中する、いわゆるマイグレーション現象が発生する。これによって、水分散性ポリウレタンを用いると得られるシート状物の風合いは非常に硬くなり、実用として十分に柔軟なシート状物は得られていない。
【0008】
また、ポリウレタンは染料で着色されていると、水洗やドライクリーニングでの色落ち、色移行等が発生しやすい、いわゆる染色堅牢性の課題がある。染色堅牢性の課題を回避する方法としては、ポリウレタンに吸尽した染料を除去する目的で、染色処理したポリウレタンを含有するシート状物に対し、アルカリ還元処理やソーピング等の洗浄を実施している。
【0009】
その結果、繊維とポリウレタンの染料吸尽性が異なってくるため、シート状物を構成する繊維とポリウレタンはそれぞれ異なった色に見えてしまい、品位の高級感に劣る問題が生じやすい。
【0010】
このような課題は、有機溶剤タイプのポリウレタンよりも水分散型ポリウレタンを用いた場合に特に顕著に現れるものである。これは、水分散型ポリウレタンが親水性部分を有していることによって有機溶剤タイプのポリウレタンよりも染料を取り込みやすい分子構造となっていることに起因する。
【0011】
水分散型ポリウレタンの親水性部分とは、ポリウレタン分子構造に導入されているカルボン酸塩等のアニオン系やポリエチレングリコール等のノニオン系が挙げられ、これらは本来ポリウレタンの水中での分散性向上のために導入されたものである。水分散型ポリウレタンは、界面活性剤で強制的にポリウレタンを乳化分散した強制乳化型ポリウレタンと、界面活性剤がなくてもポリウレタン自体が乳化分散できる自己乳化型ポリウレタンに分類できるが、前者に比べ、後者の方が親水性部分を多く有し、さらに親水性の度合いの差から親水性部分はカルボン酸塩等のアニオン系よりもポリエチレングリコール等のノニオン系である方が、より多くの親水性部分を有することとなる。すなわち、自己乳化型ポリウレタンであって、かつポリエチレングリコール等のノニオン系を有する水分散型ポリウレタンが染色において最も染料を取り込みやすく、染色堅牢性の低いポリウレタンとなる。
【0012】
染料を取り込みやすく、染色堅牢性の低い水分散型ポリウレタンを用いたシート状物の染色においては、シート状物を構成する繊維とポリウレタンの色差を少なくするための検討が行われている。
【0013】
例えば特許文献1では、予めカーボンブラック等の顔料を水分散型ポリウレタン液に添加して不織布に含浸することで、濃色での染色において、シート状物を構成する繊維とポリウレタンの色差を少なくしているが、水分散型ポリウレタンとしてはカルボン酸塩等のアニオン系の親水性基を有するものしか想定していない。
【0014】
また、前述した通り、親水性部分がアニオン系ではなく、ノニオン系である水分散型ポリウレタンの方が染料を取り込みやすいことから、繊維とポリウレタンの色差を少なくするためには、より多くのカーボンブラック等の顔料を添加する必要がある。ところが、添加量を増加すると、繊維の極細化工程や染色工程での脱落量も増加するため、脱落も考慮してより多くのカーボンブラック等の顔料を添加する必要が出てくるが、水分散型ポリウレタン液中の顔料の添加量を増加すると、顔料の沈降が発生しやすくなる不具合が生じる。よって、ノニオン系である水分散型ポリウレタンを用いたシート状物の生産を考えた場合、安定に生産することは困難である。
【0015】
このように環境に配慮し、有機溶剤を用いないプロセスで得られるシート状物において、良好な外観を有するものはまだ得られていない。
【特許文献1】特開2006−37254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、良好な外観を有し、かつ環境に配慮したシート状物及びその製造方法、並びにそれを用いてなる内装材及び衣料用資材並びに工業用資材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のシート状物は、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布にノニオン系自己乳化型ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を含有したシート状物であって、該高分子弾性体が無機顔料を含有し、かつ該自己乳化型ポリウレタンが、その分子構造内にシロキサン結合による架橋構造を有するものであることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のシート状物の製造方法は、不織布からなる繊維材料基体にノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液を含浸することにより前記の本発明にかかるシート状物を製造する方法であって、該ノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液が55℃以上90℃以下の感熱ゲル化温度を有し、かつ該ノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液中に水分散性無機顔料を含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な外観を有し、かつ環境に配慮したシート状物及びその製造方法、並びにそれを用いてなる内装材及び衣料用資材並びに工業用資材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のシート状物は、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布にノニオン系自己乳化型ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を含有したシート状物である。
【0021】
ここでいうシート状物とは、天然皮革のようなスエード、ヌバック、銀面等の優れた表面外観を有してなるものであり、好ましくはスエードやヌバックといった立毛調の外観において、滑らかなタッチと優れたライティングエフェクトを有するものである。
【0022】
本発明のシート状物を構成する不織布を構成する極細繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリエステル、6−ナイロン、66−ナイロンなどのポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種合成繊維を用いることができる。中でも、強度、寸法安定性、耐光性、染色性の観点からポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維を用いることが好ましい。
【0023】
また、該不織布は異なる素材の極細繊維が混合されて構成されていてもよく、また不織布の内部に、強度を向上させるなどの目的で、織物や編物を挿入してもよい。なお、織物や編物を構成する繊維の平均単繊維繊度は特に限定はなく、0.001dtex以上1dtex以下の極細繊維であってもよい。
【0024】
該不織布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度としては、シートの柔軟性や立毛品位の観点から0.001dtex以上0.5dtex以下であることが重要である。好ましくは0.3dtex以下、より好ましくは0.2dtex以下である。一方、染色後の発色性やサンドペーパーなどによる研削など起毛処理時の繊維の分散性、さばけ易さの観点からは、0.005dtex以上であることが好ましい。
【0025】
なお、該不織布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は、極細繊維の断面が円形または円形に近い楕円形の場合は、シート状物(もしくは不織布)表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、極細繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらにその100本の平均値を計算することで算出される。
【0026】
一方、該不織布を構成する極細繊維が異形断面の場合は、同様にして、異形断面の外周円直径を繊維径として算出する。さらに、円形断面と異形断面が混合している場合、繊度が大きく異なるものが混合している場合等は、それぞれが同数程度となるように100本を選び、算出する。
【0027】
該不織布を構成する極細繊維の繊度の均一性に関しては、繊維束内の繊度CVが10%以下であることが好ましい。ここで繊度CVとは、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)表示したものであり、値が小さいほど均一であることを示すものである。かかる繊度CVを10%以下とすることで、本発明のシート状物表面の立毛の外観は優美となり、また染色も均質で良好なものとすることができる。極細繊維の断面が円形または円形に近い楕円形でない場合の繊度CVは、平均単繊維繊度の算出と同様の方法によって算出することができる。
【0028】
かかる極細繊維の断面形状としては、丸断面でよいが、楕円、扁平、三角などの多角形、扇形、十字型などの異形断面のものを採用してもよい。
【0029】
本発明のシート状物を構成する不織布は、短繊維不織布、長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位を重視する場合には、短繊維不織布が好ましい。同様に風合いや品位を重視する場合は、短繊維の繊維長は絡合による耐摩耗性を考慮して、25mm以上90mm以下であることが好ましい。
【0030】
本発明においては、このような不織布に、高分子弾性体としてノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液を含浸して当該ノニオン系自己乳化型ポリウレタンが当該不織布の内部空間に存在する構成としたものである。
【0031】
当該不織布の内部空間に存在する自己乳化型ポリウレタンは、当該不織布を構成する極細繊維と実質的に密着していない状態が好ましく、また、自己乳化型ポリウレタンは無孔構造であることが好ましい。
【0032】
極細繊維と自己乳化型ポリウレタンが実質的に密着していないことにより、自己乳化型ポリウレタンが極細繊維の動きを阻害しないため、シート状物は非常に柔軟となりやすい。
【0033】
ここでいう実質的に密着していないとは、シート状物の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率300倍で観察した際に、自己乳化型ポリウレタンが極細繊維に接着しておらず、自己乳化型ポリウレタンと極細繊維の間に空隙が存在することを確認できることをいう。部分的には接している場合もあるが、基本的には空隙があるものである。
【0034】
また、自己乳化型ポリウレタンは無孔構造であることにより、多孔構造に比べ、揉み等の物理力に強くなることから、シート状物の耐ピリング性、耐摩耗性等は良好となり、好ましい。ここでいう無孔構造とは、シート状物の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率300倍で観察した際に、自己乳化型ポリウレタン部分において、5μm以上の孔が見えないことをいう。
【0035】
当該不織布の内部空間に存在する自己乳化型ポリウレタンは、ノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液を不織布に含浸することで得られるものであるが、本発明でいう自己乳化型ポリウレタン水分散液とは、界面活性剤等の乳化剤を用いなくても安定に水分散しているポリウレタン水分散液のことであり、自己乳化型ポリウレタン分子構造内に親水性の、いわゆる内部乳化剤を有するものである。
【0036】
なお、自己乳化型ポリウレタンは、通常、水に分散した状態で取り扱われ、メーカーからもこの状態で入手することができるが、これは一旦乾燥すると再度水に分散させることが不可能となるためである。
【0037】
本発明でいうノニオン系自己乳化型ポリウレタンとは、自己乳化型ポリウレタンであって、内部乳化剤にポリエチレングリコール等のノニオン系の分子構造を用いたポリウレタンのことをいう。カチオン系内部乳化剤は、黄変等の耐光性に劣り、アニオン系内部乳化剤は、中和剤による弊害が発生する可能性がある。すなわち、アニオン系内部乳化剤を使用する場合は中和剤が必要となるが、例えば、中和剤がアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンである場合は、製膜・乾燥時の熱によってアミンが発生・揮発し、系外へ放出される。そのため、大気放出や作業環境の悪化を抑制するために揮発するアミンを回収する装置の導入が必須となる。また、アミンは加熱によって揮発せずに最終製品であるシート状物中に残留した場合、製品の焼却時等に環境へ排出されることも考えられるが、ノニオン系内部乳化剤は中和剤を使用しないため、アミン回収装置を導入する必要はなく、アミンのシート状物中への残留の心配もない。また、中和剤が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の水酸化物等である場合、自己乳化型ポリウレタン部分が水に濡れるとアルカリ性を示すこととなるが、ノニオン系内部乳化剤は中和剤を使用しないため、自己乳化型ポリウレタンの加水分解による劣化を心配する必要もない。
【0038】
ノニオン系自己乳化型ポリウレタンは水分散液の状態において、自己乳化型ポリウレタン単独、または無機塩等による感熱ゲル化を容易とするために、自己乳化型ポリウレタン全重量に対して3重量%以上30重量%以下のポリエチレングリコールを有してもよい。少なすぎると自己乳化しにくくなり、多すぎると耐水性の低下やポリウレタン膜の強力等の物性の低下が発生しやすいことから、自己乳化型ポリウレタン全重量に対するポリエチレングリコールの含有量はより好ましくは5重量%以上20重量%以下である。
【0039】
本発明のノニオン系自己乳化型ポリウレタンは、内部乳化剤以外にポリオール、ポリイソシアネート、鎖伸長剤、内部架橋剤等を適宜反応させた構造を有するものを用いることができる。
【0040】
かかるポリオールとしては、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオール、フッ素系ジオールや、これらを組み合わせた共重合体を用いてもよい。中でも耐加水分解性の観点から、ポリカーボネート系ジオール、ポリエーテル系ジオールを用いることが好ましく、さらに耐光性、耐熱性といった観点から、ポリカーボネート系ジオールがより好ましい。
【0041】
かかるポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、などの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネートジオールでも2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネートジオールのいずれでも良い。
【0042】
また、ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族系が挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、耐光性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系が好ましい。
【0043】
次に、鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチレンビスアニリン等のアミン系、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラエチレングリコール等のジオール系、さらにはポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミン等を用いることができる。
【0044】
また、内部架橋剤とは、自己乳化型ポリウレタン分子の一部として自己乳化型ポリウレタンを合成する際にあらかじめ分子構造内に導入しておく架橋反応可能な官能基を有する化合物のことであり、本発明では、シラノール基を自己乳化型ポリウレタン分子構造内に導入するために用いる化合物のことである。シラノール基を自己乳化型ポリウレタン分子構造内に導入することで、不織布の内部空間に存在する自己乳化型ポリウレタンはシロキサン結合による架橋構造を有することになり、自己乳化型ポリウレタンの耐加水分解性等の耐久性を飛躍的に向上することができる。また、本発明の高分子弾性体は無機顔料を有するものであるが、自己乳化型ポリウレタンにシラノール基が導入されていることで、無機顔料を強く保持することができ、無機顔料の含有量が多くてもシート状物の染色や洗濯において、脱落を抑えることができる。
【0045】
前記シラノール基を自己乳化型ポリウレタン分子構造内に導入するために用いる化合物とは、1分子内に少なくとも1個のイソシアネート基と反応可能な活性水素基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物のことである。
【0046】
ここでいう加水分解性ケイ素基とは、水分により加水分解を受ける加水分解性基がケイ素原子に結合している基のことをいい、加水分解性基の具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等の一般に使用されている基が挙げられる。中でも、加水分解性が低く、比較的取扱が容易なアルコキシ基が好ましい。加水分解性基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合しているが、加水分解性シリル基の反応性、耐水性等から、2〜3個結合しているものが好ましい。
【0047】
また、イソシアネート基と反応可能な活性水素基としては、メルカプト基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
【0048】
かかる活性水素基としてメルカプト基を有し、加水分解性基としてアルコキシ基を有する加水分解性ケイ素基含有化合物は、例えばγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ―メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、活性水素基としてアミノ基を有し、加水分解性基としてアルコキシ基を有する加水分解性ケイ素基含有化合物は、例えばγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン等が挙げられる。中でも耐候性、耐加水分解性の観点から、自己乳化型ポリウレタン分子の中間部分に加水分解性ケイ素基を導入することが好ましく、さらに2個以上の活性水素基を有する加水分解性ケイ素基含有化合物が好ましい。
【0049】
前記加水分解性ケイ素基含有化合物が導入された自己乳化型ポリウレタンは、不織布の内部空間に存在した状態でシロキサン結合による架橋構造を含有する。この架橋構造により、シート状物からのポリウレタンの脱落を抑制することができる。
【0050】
ここで、シロキサン結合となるためにはポリマーに直接結合しているシラノール基同士が縮合する必要がある。従って、シロキサン結合が存在するということは、シラノール基同士が縮合したものであり、ポリマー間を結合する架橋構造であることがわかる。
【0051】
シロキサン結合の存在の有無は、ポリウレタンのNMRによる測定において、シロキサン結合に起因するピークにより、確認することができる。
【0052】
シリコン原子の含有量はポリウレタン重量に対して0重量%よりも多く、1重量%以下であることが好ましい。シロキサン結合による架橋構造は多いほど自己乳化型ポリウレタンの耐加水分解性等の耐久性は向上するが、多すぎると自己乳化型ポリウレタンの柔軟性は低下する。
【0053】
なお、シリコン原子の含有量は、シート状物、またはシート状物から抽出したポリウレタンの元素分析を行うことで、定量することができる。
【0054】
本発明の高分子弾性体はノニオン系自己乳化型ポリウレタンを主成分とするものであるが、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、シリコーン、ポリウレタン等を含有していても構わない。
【0055】
また、本発明の高分子弾性体は無機顔料を含有するものである。かかる無機顔料を含有することで、染色したシート状物の極細繊維とポリウレタンの色差を少なくすることができ、高級な外観を有するものとなる。
【0056】
かかる無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、群青、コバルトブルー等が挙げられるが、染色したシート状物の極細繊維とポリウレタンの色差は特に濃色での染色において明確になることから、カーボンブラックであることが好ましい。
【0057】
かかる無機顔料の含有量は、自己乳化型ポリウレタン重量に対して0.001重量%以上20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.005重量%以上15重量%以下である。含有量は少なすぎると染色したシート状物の極細繊維とポリウレタンの色差は軽減できない。また含有量は多すぎると、染色や洗濯、摩擦等によって脱落しやすくなる。
【0058】
本発明の高分子弾性体に含有させる無機顔料の平均粒子径は0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。ここでいう平均粒子径とは、顔料が高分子弾性体中に存在した状態における顔料の平均粒子径であって、一次粒子径の無機顔料が多数凝集したストラクチャー、一次凝集体、二次凝集体、二次粒子等と呼ばれる凝集状態での平均粒子径をいう。
【0059】
平均粒子径は大きすぎると、自己乳化型ポリウレタン水分散液と無機顔料を配合した際に、無機顔料が沈降しやすくなって、無機顔料を含有する自己乳化型ポリウレタン水分散液の不織布への含浸が不十分となり、シート状物の発色斑や色斑が生じることがある。なお、シート状物内の高分子弾性体中に含有する無機顔料の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)等でシート状物の断面及び表面を5000倍で観察することによって確認することができる。
【0060】
また、粗大粒子の存在は好ましくない。ここでいう粗大粒子とは一次粒子径の無機顔料が多数凝集したストラクチャー、一次凝集体、二次凝集体、二次粒子等と呼ばれる凝集状態での粒子径が2μm以上であるものをいう。
【0061】
次に本発明のシート状物の製造方法について説明する。
【0062】
本発明のシート状物の製造に使用するポリウレタン水分散液は水中に分散してエマルジョンとしてあるポリウレタン水分散液であり、界面活性剤等の乳化剤を含有しない自己乳化型のポリウレタン水分散液である。
【0063】
界面活性剤等の乳化剤を含有する強制乳化型のポリウレタン水分散液を用いた場合、得られたシート状物の表面は乳化剤に起因するベトツキ等が発生するため、洗浄工程が必要となり、加工工程が増加してコストアップに繋がる。さらには、強制乳化型のポリウレタン水分散液では、乳化剤の存在により、皮膜化したポリウレタン膜の耐水性が低下するため、ポリウレタンを含有するシート状物の染色において、ポリウレタンの染色液への脱落が発生しやすく、好ましくない。
【0064】
本発明に使用するポリウレタン水分散液は自己乳化型ポリウレタン水分散液であるが、自己乳化型ポリウレタン水分散液とは、界面活性剤等の乳化剤を用いなくても安定に水分散しているポリウレタン水分散液のことであり、自己乳化型ポリウレタン分子構造内に親水性の、いわゆる内部乳化剤を有するものである。
【0065】
本発明の自己乳化型ポリウレタン水分散液は、内部乳化剤部分がポリエチレングリコール等の親水性基であるノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液である。
【0066】
本発明に使用する自己乳化型ポリウレタン水分散液には、貯蔵安定性や製膜性向上のために水溶性有機溶剤を水分散液に対して40重量%以下含有していてもよいが、製膜時の加熱による大気中への有機溶剤の放出や最終製品への有機溶剤の残留等の懸念から、有機溶剤の含有量は1重量%以下であることが好ましい。
【0067】
かかる自己乳化型ポリウレタン水分散液の濃度(自己乳化型ポリウレタン水分散液に対する自己乳化型ポリウレタンの含有量)は、自己乳化型ポリウレタン水分散液の貯蔵安定性の観点から、10重量%以上50重量%以下が好ましい。
【0068】
本発明に用いる自己乳化型ポリウレタン水分散液は55℃以上90℃以下の感熱ゲル化温度を有する。かかる感熱ゲル化温度を有することで、不織布に含浸し、加熱乾燥する際のポリウレタンのマイグレーション現象を抑制することができる。ただ、感熱ゲル化温度は低すぎるとポリウレタン水分散液の貯蔵においてゲル化する可能性が高く、高すぎるとマイグレーション現象を抑制することができなくなることから、60℃以上90℃以下であることがより好ましい。
【0069】
かかる自己乳化型ポリウレタン水分散液は、単独で感熱ゲル化性を有することが好ましいが、自己乳化型ポリウレタン水分散液に感熱ゲル化性を付与する、または感熱ゲル化温度を低下させる目的で、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の無機塩を添加してもよい。
【0070】
本発明の自己乳化型ポリウレタン水分散液は水分散性無機顔料を添加して用いるものである。かかる無機顔料としては、前述のとおり、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、群青、コバルトブルー等が挙げられるが、染色したシート状物の極細繊維とポリウレタンの色差は特に濃色での染色において明確になることから、カーボンブラックであることが好ましい。
【0071】
無機顔料は無機顔料単独、または分散剤の添加により水中に分散するものを用いる。分散剤を用いる場合、その種類は特に限定はないが、無機顔料に対する分散剤の量は、20重量%以上80重量%以下であることが好ましい。分散剤の量が少なすぎると無機顔料を安定に水分散できず、また多すぎると分散剤の影響によってシート状物内の高分子弾性体の物性が低下する。
【0072】
本発明の自己乳化型ポリウレタン水分散液は、無機顔料以外に必要に応じてポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、シリコーン、ポリウレタン等の水分散液や染料、防カビ剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、帯電防止剤、抗菌剤、消臭剤、シリコーンオイル等の消泡剤、セルロース等の充填剤、ポリウレタン凝固調整剤等を添加して用いてもよい。
【0073】
本発明のシート状物の製造方法は、(1)〜(3)を順に経て得られるものであることが好ましい。
(1)アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子物質の組み合わせからなる極細繊維発生型繊維を用いて不織布を作成する工程。
(2)無機顔料を含有する自己乳化型ポリウレタン水分散液を不織布に含浸する工程。
(3)該ノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液を含浸した不織布をアルカリ水溶液で処理して極細繊維を発現せしめる工程。
【0074】
(1)〜(3)の順に実施することで、自己乳化型ポリウレタンと極細繊維間、および/または極細繊維と極細繊維間に空隙を生成することができ、非常に柔軟なシート状物を得ることができる。特に極細繊維発生型繊維が海島型複合繊維であると、自己乳化型ポリウレタンと極細繊維は実質的に密着していない構造を形成するため、さらに柔軟なシート状物を得ることができ、好ましい。
【0075】
ここでいう実質的に密着していないとは、シート状物の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率300倍で観察した際に、自己乳化型ポリウレタンが極細繊維に接着しておらず、自己乳化型ポリウレタンと極細繊維の間に空隙が存在することを確認できることをいう。部分的には接している場合もあるが、基本的には空隙があるものである。
【0076】
かかる不織布を構成する極細繊維を得る手段としては極細繊維発生型繊維を用いてもよい。極細繊維発生型繊維をあらかじめ絡合した後に繊維の極細化を行うことによって、極細繊維が絡合してなる不織布を得ることができる。
【0077】
かかる極細繊維発生型繊維としては、アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2種類以上の熱可塑性高分子成分を海成分・島成分とし、海成分をアルカリ水溶液を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性高分子成分を繊維断面を放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも、海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、不織布の柔軟性や風合いの観点からも好ましい。
【0078】
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海・島の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子配列体方式による海島型複合繊維がより好ましい。
【0079】
本発明におけるアルカリ水溶液に対する溶解性の異なるとは、極細繊維を発現せしめる条件下で溶解速度が20倍以上、より好ましくは40倍以上異なることをいう。20倍未満であれば、極細繊維を発現せしめる際に溶解性の低い熱可塑性高分子成分の繊度を制御することが困難になるので好ましくない。
【0080】
なお、アルカリ水溶液に対する溶解速度は、JIS K6911法(1995)の耐薬品性試験(試験液:水酸化ナトリウム10%)に準じて処理時間を1時間として得た重量比より算出できる。
【0081】
アルカリ水溶液に対する溶解性の高い海島型複合繊維の海成分としては、アルカリ水溶液に対する溶解速度と紡糸安定性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルに5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸等を5〜12mol%共重合した共重合ポリエステルや、ポリ乳酸などを用いることができる。特に耐熱性、弱アルカリ水溶液への溶解性から、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを5〜12mol%共重合したポリエチレンテレフタレート共重合体やポリ乳酸を用いることが好ましい。また、これらの共重合体は2元のみならず、3元以上の多元共重合体であってもよい。
【0082】
極細繊維発生型繊維は捲縮加工を施し、所定長にカットして不織布の原綿を得る。捲縮加工やカット加工は通常の方法を用いることができる。
【0083】
得られた原綿を、クロスラッパー等によりウエブとし、次いで繊維を絡合して不織布とする。
【0084】
繊維を絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチ等の通常の方法を用いることができる。
【0085】
得られた前記不織布には、繊維の緻密感向上のために、熱水やスチーム処理による収縮処理や、熱プレス等の圧縮処理を施してもよい。
【0086】
前記不織布は、自己乳化型ポリウレタン水分散液を付与する前に、不織布厚み方向に半裁(2枚に分割すること)、ないしは数枚に分割されて得られるものでもよい。
【0087】
自己乳化型ポリウレタン水分散液を前記不織布に付与するにあたっては、不織布に当該ポリウレタン水分散液を含浸、または付与し乾熱凝固する方法、不織布に当該ポリウレタン水分散液を含浸後、湿熱凝固して加熱乾燥する方法、熱水中で湿式凝固して加熱乾燥する方法、およびその組み合わせがあるが、特に限定することはない。
【0088】
なお、乾燥温度は低すぎると乾燥時間が長時間となり、高すぎると自己乳化型ポリウレタンの熱劣化の原因となる可能性があることから、80℃以上180℃以下が好ましい。より好ましくは90℃以上160℃以下である。
【0089】
かかる自己乳化型ポリウレタン水分散液を不織布に含浸する際、不織布重量に対する固形分(自己乳化型ポリウレタン)の含有量は20重量%以上200重量%以下であることが好ましい。20重量%以上とすることで、シート強度を得て、かつ繊維の脱落を防ぐことができ、200重量%以下とすることで、風合いが必要以上に硬くなるのを防ぎ、柔軟な風合いと良好な立毛品位を得ることができる。より好ましくは30重量%以上180重量%以下である。
【0090】
本発明のシート状物の製造方法は、自己乳化型ポリウレタン水分散液を含浸した極細繊維発生型繊維からなるシートをアルカリ水溶液で処理して極細繊維を発現せしめるものであることが好ましい。
【0091】
ここでいうアルカリ水溶液としては、特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液、アンモニア塩等を用いることができる。
【0092】
かかるアルカリ水溶液の濃度は極細繊維が発現できれば特に限定はないが、0.05mol/L以上10mol/L以下が好ましい。
【0093】
アルカリ水溶液での処理は、自己乳化型ポリウレタン付与後の極細繊維発生型繊維からなるシートを浸漬し、窄液を行うものであり、剥離型複合繊維の場合は、アルカリ水溶液処理と揉み作用等の物理力で分割し、海島型複合繊維の場合は、アルカリ水に溶解する海成分を溶出して極細繊維を発生させるものであることから、方法に特に限定はないが、例えば液流染色機や精錬装置等、さらにはそれらの組み合わせを用いての処理が挙げられる。
【0094】
液流染色機を用いた処理での温度、時間はそれぞれ50℃以上140℃以下、5分以上90分以下であることが好ましい。
【0095】
なお、極細繊維の発生を効率化する目的で、適宜加熱処理やスチーム処理、界面活性剤等の浸透剤を添加しての処理を行ってもよく、さらにはpH3以下の酸性水溶液による処理をあらかじめ行った後にアルカリ水溶液で処理してもよい。
【0096】
このようにして得られた不織布、つまりシート状物は、少なくとも片面に極細繊維の立毛を有している立毛調の皮革様シート状物としてもよい。
【0097】
シート状物表面に立毛を形成するための起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。
【0098】
起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によってシート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる傾向にあり好ましい。
【0099】
また、シート状物は、起毛処理を行う前に、シート厚み方向に半裁、ないしは数枚に分割されて得られるものでもよい。
【0100】
さらに、シート状物は、染色してもよい。染色方法は、シート状物を染色すると同時に揉み効果を与えてシート状物をさらに柔軟化することができることから、液流染色機を用いることが好ましい。液流染色機は、通常の液流染色機を使用することができる。
【0101】
染色温度は高すぎると自己乳化型ポリウレタンが劣化する場合があり、逆に低すぎると繊維への染着が不十分となるため、繊維の種類により変更するのがよく、一般に80℃以上150℃以下が好ましく、110℃以上130℃以下がより好ましい。
【0102】
染料は特に限定はなくシート状物を構成する極細繊維にあわせて選択すればよいが、例えばポリエステル系極細繊維であれば分散染料、ポリアミド系極細繊維であれば酸性染料や含金染料といった染料、及びそれらを組み合わせた染料を用いることができる。
【0103】
分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行ってもよい。
【0104】
また、染色の均一性や再現性をアップする目的で染色時に染色助剤を使用することは好ましい。さらにシリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤、耐光剤、消臭剤、ピリング防止剤等の仕上げ剤処理を施してもよく、仕上げ処理は染色後でも、染色と同浴でもよい。
【0105】
本発明の製造方法で得られるシート状物は、家具、椅子、壁材や、自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席、天井、内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴、婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、及びそれらの一部に使用した衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布等の工業用資材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[評価方法]
(1)平均単繊維繊度
不織布、またはシート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して繊維の素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらに100本の平均値を計算することで算出した。
【0107】
(2)繊度CV
不織布、つまりシート状物の内部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2000倍で観察し、その写真から、束状繊維の1つの束内を構成する極細繊維の繊維径を測定し、繊維径から各単繊維の繊度に換算して、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)で表した。5つの束状繊維について、同様の測定を行い、平均値を繊度CVとした。
【0108】
(3)シート状物構造
シート状物の内部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率300倍で観察し、その写真からポリウレタンと極細繊維の密着状態、ポリウレタン部分の構造を判断した。
【0109】
(4)シロキサン結合の確認とシリコン原子含有量の定量
シート状物のランダムな3箇所以上からサンプリングしたポリウレタンについてそれぞれNMRによる測定を行い、少なくともいずれかの測定においてシロキサン結合に起因するピークを確認することにより、シロキサン結合の存在有無を確認した。また、シート状物、またはシート状物から抽出したポリウレタンの元素分析を少なくとも5回以上行い、その平均値をシリコン原子の含有量として定量した。
【0110】
(5)ポリエチレングリコールの確認
シート状物のランダムな3箇所以上からサンプリングしたポリウレタンについてそれぞれNMRによる測定において、基準物質に起因するピークとポリエチレングリコールに起因するピーク(例えば、酸素原子隣のエチレン鎖部分のプロトン)の面積を比較することで、算出し平均した。
【0111】
(6)高分子弾性体内の無機顔料の平均粒子径
走査型電子顕微鏡(SEM)等でシート状物の断面及び表面の少なくとも5カ所を5000倍で観察し、その平均値を平均粒子径とした。
【0112】
(7)自己乳化型ポリウレタン水分散液の感熱ゲル化温度
試験管に固形分濃度10重量%の自己乳化型ポリウレタン水分散液を10g入れ、95℃の恒温熱水浴中で昇温し、自己乳化型ポリウレタン水分散液が流動性を失ってゲル化・凝固するときの温度を感熱ゲル化温度とした。
【0113】
(8)自己乳化型ポリウレタン水分散液の含有有機溶剤量
含浸に使用する固形分濃度のポリウレタン水分散液において、分散媒のガスクロマトグラフィー分析(HITACHI製263−50、カラム:有機溶剤の種類によって異なるが、N,N−ジメチルホルムアミドの場合はPEG20Mを使用。)にて含有有機溶剤量を定量した。
【0114】
(9)外観品位
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、シート状物の表面品位を目視にて5段階で級判定し、その平均値を外観品位とした。
【0115】
5級:極細繊維と高分子弾性体に色差が全く見られない
4級:極細繊維と高分子弾性体に色差が極わずかに見える
3級:極細繊維と高分子弾性体に色差がわずかに見える
2級:極細繊維と高分子弾性体に色差が見える
1級:極細繊維と高分子弾性体の色差が明確に見える
(10)風合い
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、風合いの評価を触感にて5段階で級判定し、その平均値を風合いとした。
【0116】
5級:非常に柔軟である
4級:柔軟である
3級:わずかに柔軟である
2級:硬い
1級:非常に硬い
[化学物質の表記]
各実施例・比較例で用いた化学物質の略号の意味は以下の通りである。
PHC:ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール
H12MDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
PET:ポリエチレンテレフタレート
Ny6:6−ナイロン
PEG:ポリエチレングリコール
[ポリウレタン種]
実施例、比較例で用いたポリウレタン水分散液の組成は下記の通りである。また、各溶液の固形分濃度は30重量%とした。さらに、各ポリウレタン水分散液の特性を表1に示した。
【0117】
(1)ポリウレタン水分散液I(PU−I)
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :エチレンジアミン
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.1重量%
無機顔料 :水分散性カーボンブラック
ポリウレタン重量に対する無機顔料添加量:12重量%。
【0118】
(2)ポリウレタン水分散液II(PU−II)
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :エチレンジアミン
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.1重量%
無機顔料 :水分散性カーボンブラック
ポリウレタン重量に対する無機顔料添加量:0.1重量%。
【0119】
(3)ポリウレタン水分散液III(PU−III)
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :エチレンジアミン
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.2重量%
無機顔料 :水分散性コバルトブルー
ポリウレタン重量に対する無機顔料添加量:15重量%。
【0120】
(4)ポリウレタン水分散液IV(PU−IV)
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :エチレンジアミン
内部架橋剤 :なし
含有有機溶剤 :0.2重量%
無機顔料 :水分散性カーボンブラック
ポリウレタン重量に対する無機顔料添加量:12重量%。
【0121】
(5)ポリウレタン水分散液V(PU−V)
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :エチレンジアミン
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.2重量%
無機顔料 :添加なし。
【0122】
(6)ポリウレタン水分散液VI(PU−VI)
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :なし
外部乳化剤 :ノニオン系界面活性剤
内部架橋剤 :なし
含有有機溶剤 :0.8重量%
無機顔料 :水分散性カーボンブラック
ポリウレタン重量に対する無機顔料添加量:12重量%。
【0123】
[実施例1]
5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として45部、島成分としてPETが55部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が36島含まれる形態であり、平均繊度が2.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。
【0124】
この不織布を90℃の湯中で2分処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、ポリウレタン水分散液I(PU−I)を含浸し、乾燥温度125℃で10分熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対する高分子弾性体重量が80重量%となるように高分子弾性体を付与したシートを得た。
【0125】
次にこのシートを90℃に加熱した濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。脱海シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.04dtex、繊度CVは7.4%であることを確認した。また、シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、ポリウレタンと極細繊維は密着していないことを確認し、さらにポリウレタン中のカーボンブラックの平均粒子径は0.30μmであることを確認した。
【0126】
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面を240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機にて焦げ茶色の分散染料により染色を行い、シート状物を得た。
【0127】
得られたシート状物の外観品位、風合いは良好であった。
【0128】
[実施例2]
実施例1にてポリウレタン水分散液I(PU−I)に替わって、ポリウレタン水分散液II(PU−II)を用い、かつ染色時に黄土色の分散染料を用いた以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。
【0129】
シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、ポリウレタンと極細繊維は密着していないことを確認し、さらにポリウレタン中のカーボンブラックの平均粒子径は0.16μmであることを確認した。
【0130】
得られたシート状物の外観品位、風合いは良好であった。
【0131】
[実施例3]
ポリ乳酸を海成分として20部、島成分としてNy6が80部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が16島含まれる形態であり、平均繊度が3.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。
【0132】
この不織布を90℃の湯中で2分処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、ポリウレタン水分散液III(PU−III)を含浸し、乾燥温度100℃で10分熱風乾燥することで、不織布重量に対する高分子弾性体重量が85重量%となるように高分子弾性体を付与したシートを得た。
【0133】
次にこのシートを90℃に加熱した濃度40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海シートを得た。脱海シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.2dtex、繊度CVは7.5%であることを確認した。また、シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、ポリウレタンと極細繊維は密着していないことを確認し、さらにポリウレタン中のコバルトブルーの平均粒子径は0.62μmであることを確認した。
【0134】
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面を240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機にて青色の分散染料により染色を行い、シート状物を得た。
【0135】
得られたシート状物の外観品位、風合いは良好であった。
【0136】
[比較例1]
実施例1にて、ポリウレタン水分散液I(PU−I)に替わって、ポリウレタン水分散液IV(PU−IV)を用いた以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。
【0137】
シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、ポリウレタンと極細繊維は密着していないことを確認し、さらにポリウレタン中のカーボンブラックの平均粒子径は0.28μmであることを確認した。
【0138】
染色時にカーボンブラックの脱落が確認でき、得られたシート状物の外観品位は悪いものとなった。
【0139】
[比較例2]
実施例1にて、ポリウレタン水分散液I(PU−I)に替わって、ポリウレタン水分散液V(PU−V)を用いた以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。
【0140】
シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、ポリウレタンと極細繊維は密着していないことを確認した。
【0141】
得られたシート状物の外観品位は悪いものとなった。
【0142】
[比較例3]
実施例1にて、ポリウレタン水分散液I(PU−I)に替わって、ポリウレタン水分散液VI(PU−VI)を用いた以外は実施例1と同様にしてシート状物を得た。
【0143】
シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、ポリウレタンと極細繊維は密着していないことを確認し、さらにポリウレタン中のカーボンブラックの平均粒子径は0.26μmであることを確認した。
【0144】
アルカリ液による脱海工程や染色時にポリウレタンとカーボンブラックの脱落が見られた。
【0145】
得られたシート状物の外観品位は悪いものとなった。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布にノニオン系自己乳化型ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を含有したシート状物であって、該高分子弾性体が無機顔料を含有し、かつ該自己乳化型ポリウレタンが、その分子構造内にシロキサン結合による架橋構造を有するものであることを特徴とするシート状物。
【請求項2】
前記無機顔料がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載のシート状物。
【請求項3】
前記無機顔料の含有量がポリウレタン重量に対して0.001重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のシート状物。
【請求項4】
前記自己乳化型ポリウレタン部分が無孔構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート状物。
【請求項5】
前記自己乳化型ポリウレタンと該極細繊維は実質的に密着していないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシート状物。
【請求項6】
前記自己乳化型ポリウレタンの分子構造内のシリコン原子の含有量がポリウレタン重量に対して0重量%よりも多く、1重量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のシート状物。
【請求項7】
前記自己乳化型ポリウレタンがポリウレタン全重量に対して3重量%以上30重量%以下のポリエチレングリコールを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のシート状物。
【請求項8】
不織布からなる繊維材料基体にノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液を含浸することにより請求項1〜7のいずれかに記載のシート状物を製造する方法であって、該ノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液が55℃以上90℃以下の感熱ゲル化温度を有し、かつ該ノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液中に水分散性無機顔料を含有することを特徴とするシート状物の製造方法。
【請求項9】
次の(1)〜(3)の工程をこの順番で経ることを特徴とする請求項8に記載のシート状物の製造方法。
(1)アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2種類以上の高分子物質の組み合わせからなる極細繊維発生型繊維を用いて不織布を作成する工程。
(2)無機顔料を含有する自己乳化型ポリウレタン水分散液を不織布に含浸する工程。
(3)該ノニオン系自己乳化型ポリウレタン水分散液を含浸した不織布をアルカリ水溶液で処理して極細繊維を発現せしめる工程。
【請求項10】
前記無機顔料がカーボンブラックであることを特徴とする請求項8または9に記載のシート状物の製造方法。
【請求項11】
前記極細繊維発生型繊維が海島型複合繊維であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のシート状物の製造方法。
【請求項12】
前記海島型複合繊維の海成分がテレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分とし、全酸成分に対し、5〜12mol%の5−スルホイソフタル酸ナトリウムを含有する共重合ポリエステルからなることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載のシート状物の製造方法。
【請求項13】
前記自己乳化型ポリウレタン水分散液が有機溶剤を1重量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のシート状物の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載のシート状物を表皮材とすることを特徴とする内装材。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載のシート状物を用いることを特徴とする衣料用資材。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載のシート状物を用いることを特徴とする工業用資材。

【公開番号】特開2008−184707(P2008−184707A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19008(P2007−19008)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】