説明

シート状石鹸

【課題】汚れの落ち難い洗浄にも洗浄力が充分であり、さらにその洗浄力を長期間安定させたものとすることができ、しかも使用感にも優れたシート状石鹸を提供する。
【解決手段】酵素と、グリセリン、トレハロース、グリコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロース、ポリグリセリン又はその誘導体、糖アルコールのうちの少なくとも一種以上を含有するものとし、ガスバリア性に優れたフィルム包装体によって包装されたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅行時や外出時等に携行するのに適したシート状石鹸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシート状石鹸としては、重量平均分子量が1000以上の特定されたポリヒドロキシ化合物と、重量平均分子量が2万以上の特定された高分子化合物と、石鹸との混練、成形物からなるものが存在する(特許文献1)。
【0003】
このような従来のシート状石鹸は、溶解速度が速く、洗浄力に優れ、しかも皮膚にソフトな感触を与えることができるとしている。
【0004】
さらに、この種のシート状石鹸としては、その成分中に絹微粒子と天然香料を含有せしめたものが存在する(特許文献2)。
【0005】
このような従来のシート状石鹸は、成分中に絹微粒子を含有するので、タンパク質汚れも落とすことができるとしており、さらに天然香料が添加されているので、その香りによって快い雰囲気を楽しむことができ、例えば旅先等で適宜天然香料の香りを嗅いで精神的な安らぎを得ることも可能となるとしている。
【特許文献1】特開平2−279800号公報
【特許文献1】特開2003−147400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載のシート状石鹸においては、洗浄力に優れているとし、特許文献2に記載のシート状石鹸においては、タンパク質汚れも落とすことができるとしているが、化粧落しのための洗願等、汚れの落ち難い洗浄に使用するには、その洗浄力が不充分であるという問題点を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、汚れの落ち難い洗浄にも洗浄力が充分であり、さらにその洗浄力を長期間安定させたものとすることができ、しかも使用感にも優れたシート状石鹸を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシート状石鹸は、酵素と、グリセリン、トレハロース、グリコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロース、ポリグリセリン又はその誘導体、糖アルコールのうちの少なくとも一種以上を含有するものとし、ガスバリア性に優れたフィルム包装体によって包装されたものとしている。
【0009】
さらに、本発明のシート状石鹸は、前記成分に加えて、マイカ、無機顔料、タルクのうちの少なくとも一種以上を含有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシート状石鹸は、以上のように構成することにより、洗浄力が充分なものとなり、さらにその洗浄力を長期間安定させたものとすることができ、しかも使用感にも優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良形態について詳細に説明する。
【0012】
先ず、本発明のシート状石鹸は、第一成分としての酵素と、グリセリン、トレハロース、グリコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロース、ポリグリセリン又はその誘導体、糖アルコールのうちの少なくとも一種以上からなる第二成分を含有するものとし、ガスバリア性に優れたフィルム包装体によって包装されたものとすることにより、洗浄力が充分なものとなり、さらにその洗浄力を長期間安定させたものとすることができた。
【0013】
さらに、本発明のシート状石鹸は、前記成分に加えて、マイカ、無機顔料、タルクのうちの少なくとも一種以上からなる第三成分を含有するものとすることにより、使用感に優れたものとすることができた。
【0014】
本発明において、シート状石鹸とは、40〜200mm程度の厚さのものを言い、大きさは任意であるが、旅行時や外出時等に携行するのに適したものとするには、2〜7×2〜8cm程度の大きさにするのが好ましい。
【0015】
本発明において、酵素としては、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素等が挙げられる。この第一成分としての酵素の添加量は、シート状石鹸1グラム当たり、0.1〜10,000単位が好ましく、より好ましくは0.1〜1,000単位である。
【0016】
本発明において、ポリグリセリンとしては、ジグリセリン、テトラグリセリン等が挙げられる。ポリグリセリン誘導体としては、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンステアレート等が挙げられる。糖アルコールとしては、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等が挙げられる。これら第二成分の添加量は、シート状石鹸全体の1.0〜20.0重量%が好ましく、より好ましくは4.0〜10.0重量%である。
【0017】
本発明において、無機顔料としては、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。この第三成分の添加量は、シート状石鹸全体の0.2〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜2.0重量%である。
【0018】
本発明において、フィルム包装体としては、ナイロン、ポリエステル、アルミ箔をラミネートしたフィルム、アルミやシリカを蒸着したフィルム等のガスバリア性に優れたものが用いられ、透明体であっても不透明体であってもよい。
【0019】
次に、本発明を以下の実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
[酵素活性の測定]
下記表1〜5に示す実施例1〜30のシート状石鹸の酵素活性を測定した。本実施例では、酵素としてタンパク質分解酵素を用いた。タンパク質分解酵素は、主として老化した肌の角質を効果的に除去する目的で配合されるものであり、タンパク質分解酵素としてパパイン酵素(シート状石鹸1グラム当たり、500単位)を用いることで、その活性の維持について評価した。
【0021】
評価方法は、Bz−DL−Arg−p−NA.HCl(BAPA)を用いる方法で、活性の強さを希釈液の濃度と比較して10段階の評価基準を作成し、目視にて判断した。
【0022】
(評価方法)
(1) BAPAの0.1mol/L DMSO溶液を要時調製する。
(2) 0.1mol/L BAPA溶液を0.1mol/L燐酸緩衝液(pH6〜8)で100倍希釈する。
(3) 実施例1〜30で製造したシート状石鹸の希釈液1重量部に対し、(2) で調製した溶液を5重量部の割合で混合し、34〜37℃で30分間保温する。
(4) (3) で調製した溶液に1mol/L HCl溶液1重量部を添加し、反応を停止する。
(5) 色の濃さを標準サンプルと比較して評価する。
【0023】
評価値は、失効がない状態を8とし、まったく反応が残っていないものを0とした。呈色を確認できる範囲で段階的に希釈し、8〜0で評価した。結果を、表1〜5の下段に示した。なお、製品劣化を評価するため、開封直後のものの他に、開封1カ月経過後のものについても評価を行った(加速試験)。
【0024】
[官能テスト]
下記表1〜5に示す実施例1〜3、5、12、16,17、23〜25、27、28及び比較例のシート状石鹸を使用して、洗顔後のさっぱり感を評価した。
【0025】
(洗顔方法)
上記実施例及び比較例のシート状石鹸約200〜250mgを用いて十分に手の上で泡立てた後、洗顔した。一回毎のテストは2〜3時間の間隔をあけて、さっぱり感をその度に評価した。
【0026】
(評価方法)
20〜50代の男女10人に上記の通り洗顔方法を指導し、評価してもらった結果を集計し、平均値をとった。評価は、1:ほとんど効果を感じない、2:少し効果がある、3:はっきりとした効果がある、4:かなり効果がある、5:効果があり過ぎる、の5段階とした。結果を、表1〜5の下段に示す。なお、製品劣化を評価するため、開封直後のものの他に、開封1カ月経過後のものについても評価を行った(加速試験)。
【0027】
[実施例1〜30、比較例]
先ず、表1〜5に示す実施例1〜30のシート状石鹸を、次の工程により製造した。
(1) No.1〜9の成分を常温で混合し、攪拌しつつ70℃未満に加熱する。
(2) No.10の成分にNo.11の成分を分散させてから、(1) に混合し攪拌する。
(3) 十分に混ざったらNo.12の成分を3〜5回に分けて添加する。添加の際には、一回毎に十分に攪拌する(中和工程)。
(4) No.14の成分をNo.13の成分(熱水にしておく)に分散させて(3) に添加、攪拌し、低速のホモジナイザーで10〜25分間ホモジナイジングする。
(5) 冷却タンクに移送して5℃未満に冷却する。
(6) 40〜70℃に再度加温して、攪拌しつつ脱泡する。
(7) No.15の成分とNo.16の成分を予め練り合わせておく。
(8) (6) の工程の最中に、(7) とNo.17の成分とNo.18の成分を混合して、十分に攪拌する。
(9) 塗工機に掛けて薄く展ばし、60〜90℃に加熱し乾燥する。
(10)巻き取った後、定幅にスリットして、個包装機械にて個別に袋入れする。
【0028】
次に、表5に示す比較例のシート状石鹸は、従来のシート状石鹸に含まれている成分と同様の成分としており、前記実施例1〜30のシート状石鹸の製造工程の(7) 及び(8) を省いた工程により製造した。
【0029】
なお、実施例1〜5のシート状石鹸は、前記第一成分と、第二成分の一種を含有するものとしている。実施例6〜19のシート状石鹸は、前記第一成分と、第二成分の二種を含有するものとしている。実施例20、21のシート状石鹸は、前記第一成分と、第二成分の三種を含有するものとしている。実施例22〜29のシート状石鹸は、前記第一成分と、第二成分の一種と、第三成分の一種を含有するものとしている。実施例30のシート状石鹸は、前記第一成分と、第二成分の二種と、第三成分の一種を含有するものとしている。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
本発明のシート状石鹸は、第一成分を添加することにより洗い心地がよくなり、第一成分の添加時に第二成分を同時に添加することにより酵素活性が維持できると共に、洗い心地がさらによくなり、さらに第三成分を添加することにより、酵素活性がより維持されるだけでなく、加速試験による製品劣化も抑制されるものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素と、グリセリン、トレハロース、グリコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトオリゴシルトレハロース、ポリグリセリン又はその誘導体、糖アルコールのうちの少なくとも一種以上を含有するものとし、ガスバリア性に優れたフィルム包装体によって包装されていることを特徴とするシート状石鹸。
【請求項2】
マイカ、無機顔料、タルクのうちの少なくとも一種以上を含有することを特徴とする請求項1記載のシート状石鹸。



【公開番号】特開2009−73974(P2009−73974A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245520(P2007−245520)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(500138696)昭和化工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】