シート給送装置及び画像形成装置
【課題】シート材給送時における衝撃音の発生を防止することができると共に、シート材の先端の位置ずれや斜行を高度に補正することが可能なシート給送装置を提供する。
【解決手段】給送手段17によって給送されるシート材Pの先端が搬送手段19に突き当たる前に給送手段17の駆動を一旦停止し、その後に給送手段17の駆動を再開してシート材Pの先端を搬送手段19に突き当てると共に、給送手段17を駆動させつつ搬送手段19の駆動を開始してシート材Pを搬送するように構成したシート給送装置において、シート材Pが給送前の待機位置から搬送手段19に突き当たる前の一旦停止位置までの間で任意に定めた2定点間を通過する時間に応じて、シート材Pの先端が搬送手段19に突き当たる前に給送手段17の駆動を一旦停止するタイミングと、その後に給送手段17の駆動を再開するタイミングとを変化させる。
【解決手段】給送手段17によって給送されるシート材Pの先端が搬送手段19に突き当たる前に給送手段17の駆動を一旦停止し、その後に給送手段17の駆動を再開してシート材Pの先端を搬送手段19に突き当てると共に、給送手段17を駆動させつつ搬送手段19の駆動を開始してシート材Pを搬送するように構成したシート給送装置において、シート材Pが給送前の待機位置から搬送手段19に突き当たる前の一旦停止位置までの間で任意に定めた2定点間を通過する時間に応じて、シート材Pの先端が搬送手段19に突き当たる前に給送手段17の駆動を一旦停止するタイミングと、その後に給送手段17の駆動を再開するタイミングとを変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を給送するシート給送装置、及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置において、シート材に画像を転写する前にシート材の斜行を補正する補正手段として、一対のレジストローラが多く用いられている。
【0003】
図10は、レジストローラ対を用いた一般的なシート給送装置の構成を示す概略図である。
図10に示すように、レジストローラ対を用いた方式では、給紙ローラ200によって図の矢印Y方向に給送されたシート材Pの先端を、停止しているレジストローラ対300のニップに突き当てることにより、シート材Pに一定量のたわみを形成し、このときのシート材Pのたわみによる反力によってシート材Pの先端位置がニップに沿うことで斜行が補正される。その後、画像転写部における画像転写タイミングに合わせて、給紙ローラ200、レジストローラ対300を駆動させ、シート材を搬送する。この方式は、簡易かつ安価に構成できるため一般的に採用されているが、短所として、シート材のたわみ形成後に給紙ローラを停止した際の衝撃音が挙げられる。
【0004】
図10に示すように、通常、給紙ローラ200に対向する位置には、シート材Pを一枚ずつ分離するための分離部材500が設けられている。分離部材500は保持部材600によって保持されると共に、押圧部材700によって給紙ローラ200側へ押圧されている。また、保持部材600は、位置決め部800によって、シート搬送方向に沿う方向への可動は規制されているが、給紙ローラ200の中心へ接近離間する方向、すなわち、シート搬送方向と略垂直方向には可動するように構成されている。
【0005】
図11は、上記位置決め部800の周辺構造を示す拡大断面図である。
図11に示すように、位置決め部800は、給紙トレイ400に設けられた溝900内に挿入され、この溝900に沿って摺動するように構成されている。これにより、位置決め部800は、シート搬送方向と略垂直方向(図の矢印X方向)への可動は許容されるが、シート搬送方向に沿う方向(図の矢印Z方向)への可動は規制されている。しかし、厳密には、位置決め部800のシート搬送方向と略垂直方向への摺動性を確保するために、位置決め部800と溝900との間に微小な隙間Sを設けてシート搬送方向に沿う方向にガタを持たせている。
【0006】
このように、位置決め部800と溝900との間にガタがあると、シート材にたわみを形成した状態で給紙ローラの駆動を一旦停止した際、たわみによる反力F(図10参照)によって給紙ローラ200が微小に逆回転することにより、保持部材600がシート搬送方向上流側への力を受け、位置決め部800が溝900に当接することによる衝撃音が発生する。これを防止する対策としては、給紙ローラの駆動を一旦停止した後、給紙ローラがシート材のたわみによる反力によって微小に逆回転しないように、給紙ローラとレジストローラ対の駆動源を独立させることが考えられる。しかしながら、給紙ローラとレジストローラ対との駆動源を独立させると、駆動源が増えることにより、コストアップや装置の大型化に繋がるため、安価な機械に搭載することができなくなる問題が生じる。
【0007】
そこで、駆動源を増加することなく、たわみを形成した後のシート材の戻り(給紙ローラの逆回転)を防止する技術が特許文献1に開示されている。これは、給紙ローラによって給送されるシート材の先端がレジストローラに突き当たる前に給紙ローラの駆動を一旦停止し、その後、給紙ローラの駆動を再開してシート材の先端をレジストローラに突き当ててたわみを形成すると共に、給紙ローラを駆動させつつレジストローラ対の駆動を開始してシート材を搬送するものである。このように、たわみを形成した後、給紙ローラの駆動を停止させずに継続して回転させることにより、たわみの反力によって給紙ローラが逆回転するのを防止でき、位置決め部における衝撃音を防止できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の制御方法を採用することにより、シート材のたわみ形成後の衝撃音の問題を解消することは可能となるが、これにより新たな課題が発生する。
従来の制御においては、シート材をレジストローラに突き当てた状態で給紙ローラの駆動を一旦停止するため、シート材の先端位置が精度良く決まる。これに対し、特許文献1に記載の方法では、シート材をレジストローラに当接させる前に給紙ローラの駆動を一旦停止するため、シート材のコシや摩擦係数等のばらつき、あるいは、給紙ローラや分離部材への紙粉の付着、給紙ローラ又は分離部材の経時的劣化によって、シート材給送時にスリップが発生すると、レジストローラの手前でシート部材を停止する位置にばらつきが生じてしまう。
【0009】
例えば、スリップによってシート材の先端が所定の位置よりも搬送方向上流側で停止した場合は、その後、シート材がレジストローラに当接する前にレジストローラ対の駆動が開始される虞がある。この場合、結果として、シート材にたわみが形成されず、シート材の先端位置がばらつく、あるいは斜行補正ができないといった問題が生じる。また、このようなたわみが形成されない不具合を防止するために、スリップを考慮して通常よりもたわみを大きく形成する方法が考えられるが、たわみを大きくするとそれに伴って反力が強くなるため、特に搬送経路内でたわみの逃げ場がない場合は、シート材の先端がレジストローラ対のニップを超えて、先端位置にばらつきが生じてしまう虞がある。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑み、シート材給送時における衝撃音の発生を防止することができると共に、シート材の先端の位置ずれや斜行を高度に補正することが可能なシート給送装置及び、そのシート給送装置を備えた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、シート材を収容するシート収容部と、前記シート収容部に収容されるシート材を給送する給送手段と、前記給送手段によって給送されたシート材の先端を突き当てて停止した後に当該シート材の搬送を開始する搬送手段とを備え、前記給送手段によって給送されるシート材の先端が前記搬送手段に突き当たる前に前記給送手段の駆動を一旦停止し、その後に前記給送手段の駆動を再開してシート材の先端を前記搬送手段に突き当てると共に、前記給送手段を駆動させつつ前記搬送手段の駆動を開始してシート材を搬送するように構成したシート給送装置において、シート材が給送前の待機位置から前記搬送手段に突き当たる前の一旦停止位置までの間で任意に定めた2定点間を通過する時間に応じて、シート材の先端が前記搬送手段に突き当たる前に前記給送手段の駆動を一旦停止する一旦停止タイミングと、その後に前記給送手段の駆動を再開する駆動再開タイミングとを変化させるようにしたものである。
【0012】
シート材が前記2定点間を通過する時間に応じて、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを変化させることにより、これらのタイミングをシート材給送時のスリップ量に応じて補正することができる。これにより、安定したシート材の給送を行うことが可能となる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシート給送装置において、シート材が前記任意に定めた2定点間を通過する実際の時間をt0、その理論上の理想時間をR0とすると、前記実際の時間t0と前記理論上の理想時間R0との比である補正係数kによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにしたものである。
【0014】
補正係数kを、2定点間を通過する実際の時間t0と理論上の理想時間R0との比によって表すことで、給送時のスリップ率の予測値が得られる。このスリップ率の予測値である補正係数kによって給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを定めることにより、スリップが生じても安定したシート材の給送を行うことが可能となる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2に記載のシート給送装置において、前記補正係数kが予め設定した上限値kmaxより大きい場合は、前記上限値kmaxによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにしたものである。
【0016】
この場合、突発的なスリップなどにより補正係数kが極端に大きくなっても、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングは上限値kmaxによって定められるので、補正後のたわみ量が過多になることによる不具合などを防止できる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載のシート給送装置において、前記補正係数kが予め設定した下限値kminより小さい場合は、前記下限値kminによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにしたものである。
【0018】
この場合、シート材が所定の待機位置よりも進んだ位置から給送されることなどにより、補正係数kが極端に小さくなっても、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングは下限値kminによって定められるので、補正後のたわみ量が極端に小さくなることによる不具合などを防止できる。
【0019】
請求項5の発明は、請求項2から4のいずれか1項に記載のシート給送装置において、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを、前記補正係数kと前記給送手段によるシート材の給送速度に応じて定めるようにしたものである。
【0020】
給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを、補正係数kとシート材の給送速度に応じて定めることにより、給送速度が異なっても、シート材の位置精度の向上を図り、安定した斜行補正機能を発揮することが可能となる。
【0021】
請求項6の発明は、請求項2から5のいずれか1項に記載のシート給送装置において、前記給送手段の前記駆動再開タイミングを、前記補正係数kとシート材の種類に応じて定めるようにしたものである。
【0022】
給送手段の駆動再開タイミングを、補正係数kとシート材の種類に応じて定めることにより、シート材の種類が異なっても、適正なたわみ量を付与することができ、安定した斜行補正機能を発揮することが可能となる。
【0023】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置において、前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上で、シート材の先端を検知する検知手段を備え、前記2定点の一方を、給送前の待機位置におけるシート材の先端位置とし、他方を、前記検知手段によるシート材の先端検知位置としたものである。
【0024】
この場合、シート材が給送前の待機位置から検知手段の先端検知位置を通過する時間に応じて、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを変化させる。これにより、給送前の待機位置から検知手段の先端検知位置までの間で生じたスリップ量に応じて、給送手段の前記各タイミングを補正することができ、安定したシート材の給送を行うことが可能となる。
【0025】
請求項8の発明は、請求項7に記載のシート給送装置において、シート材が前記給送前の待機位置から前記検知手段による先端検知位置までを通過する実際の時間をt0、その理論上の理想時間をR0とすると、前記実際の時間t0と前記理論上の理想時間R0との比である補正係数kによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるように構成し、シート材が給送前の所定の待機位置とは異なる位置から給送される場合、その位置に応じて、前記理論上の理想時間R0を変更するようにしたものである。
【0026】
シート材の給送前の待機位置が異なると、シート材がその待機位置から検知手段による先端検知位置までを通過するまでの理論上の理想時間R0も異なる。そのため、待機位置に応じて理論上の理想時間R0を変更することにより、シート材の待機位置に関係なく、安定したシート材の位置精度を得られるようになる。
【0027】
請求項9の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置において、前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上で、シート材の先端を検知する第1の検知手段と、前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上であって、前記第1の検知手段よりもシート搬送方向下流側でシート材の先端を検知する第2の検知手段を備え、前記2定点の一方を、前記第1の検知手段によるシート材の先端検知位置とし、他方を、前記第2の検知手段によるシート材の先端検知位置としたものである。
【0028】
この場合、シート材が第1の検知手段の先端検知位置から第2の検知手段の先端検知位置を通過する時間に応じて、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを変化させる。これにより、2つの検知手段の先端検知位置の間で生じたスリップ量に応じて、給送手段の前記各タイミングを補正することができ、安定したシート材の給送を行うことが可能となる。しかも、この場合、シート材の待機位置のばらつきに関係なくスリップ量を予測することができるので、スリップ量の予測値の信頼性が向上し、安定したシート材の位置精度を得られるようになる。
【0029】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載のシート給送装置を備えた画像形成装置である。
【0030】
画像形成装置が、請求項1から9のいずれか1項に記載のシート給送装置を備えているので、これらのシート給送装置による上記効果が得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、シート材給送時のスリップ量に応じて、シート材の先端がレジストローラに突き当たる前に給送手段の駆動を一旦停止するタイミングと、その後に給送手段の駆動を再開するタイミングとを変化させる(補正する)ことができるので、安定したシート材の給送を行うことができる。これにより、給送時にスリップが生じても、シート材の停止位置とたわみ量を安定させることができるので、シート材の先端の位置ずれや斜行を高度に補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用する画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】前記画像形成装置に搭載したシート給送装置の構成を示す概略断面図である。
【図3】フリクションパッドの周辺構造を示す斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】給紙ローラとレジストローラ対の駆動のタイミングチャートを示す図である。
【図6】シート材をレジストローラに突き当てる前に一旦停止した状態を示す図である。
【図7】補正制御のフローチャートを示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るシート給送装置の構成を示す概略断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態における給紙ローラとレジストローラ対の駆動のタイミングチャートを示す図である。
【図10】従来のシート給送装置における給送動作を説明するための図である。
【図11】位置決め部の周辺構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0034】
まず、図1を参照して、本発明を適用する画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体100には、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1C,1M,1Y,1Kが着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kは、カラー画像の色分解成分に対応するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0035】
具体的には、各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電ローラ3等を備えた帯電装置と、感光体2の表面にトナー(現像剤)を供給する現像ローラ4等を備えた現像装置と、感光体2の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード5等を備えたクリーニング装置などを有する。
【0036】
図1において、各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kの上方には、感光体2の表面を露光する露光手段としての露光装置6が配設されている。露光装置6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザー光L1〜L4を照射するようになっている。
【0037】
また、各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kの下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、支持部材としての駆動ローラ9と従動ローラ10に張架されており、駆動ローラ9が図の反時計回りに回転することによって、中間転写ベルト8は図の矢印Bに示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。
【0038】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面を押圧しており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0039】
また、駆動ローラ9に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト8の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
【0040】
また、中間転写ベルト8の図の右端側の外周面には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配設されている。このベルトクリーニング装置13から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、転写装置7の下方に配設された廃トナー収容器14の入り口部に接続されている。
【0041】
装置本体100の下部には、上記二次転写ニップへ紙やOHP等のシート材を給送するためのシート給送装置15が配設されている。シート給送装置15は、複数枚のシート材Pを収容するシート収容部としての給紙トレイ16と、給紙トレイ16に収容されるシート材Pを給送する給送手段としての給紙ローラ17と、給紙ローラ17との間でシート材Pを一枚ずつ分離する分離手段としてのフリクションパッド18と、給紙ローラ17によって給送されたシート材Pの斜行を補正して搬送するための搬送手段としてのレジストローラ対19と、給送されるシート材Pを検知する検知手段としてのレジストフィラー20と、給紙トレイ16に収容されるシート材Pの有無を検知するシート有無検知センサ21等を備える。給紙トレイ16は、フリクションパッド18、及び後述の両面搬送部28の再給送路31と一体的に、図1において右方向に引出可能に構成されている。シート有無検知センサ21は、給紙トレイ16内にシート材Pが無くなった場合にそれを検知できると共に、給紙トレイ16の出し入れも検知可能となっている。
【0042】
また、二次転写ニップよりもシート搬送方向下流側(図1の上側)には、シート材に画像を定着するための定着装置22が配設されている。定着装置22は、図示しない加熱源によって加熱される定着部材としての定着ローラ23と、定着ローラ23を加圧して定着ニップを形成する加圧部材としての加圧ローラ24等によって構成されている。
【0043】
装置本体100の上部には、排紙部25が設けてある。排紙部25は、シート材を機外に排出するための排紙ローラ対26と、機外に排出されたシート材をストックする排紙トレイ27とを有する。
【0044】
また、装置本体100の図1の右側の部分には、両面印刷する際にシート材を搬送する両面搬送部28が設けられている。両面搬送部28は、両面搬送経路29と、両面搬送経路29にシート材を案内するための切換分岐点30と、両面搬送経路29を通過したシート材をレジストローラ対19の搬送方向上流側へ搬送するための再給送路31とを有している。なお、切換分岐点30の搬送方向上流側近傍には、シート材検知用のフィラー32が設けられている。
【0045】
以下、図1を参照して上記画像形成装置の基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kの感光体2が図の時計回りに回転駆動され、帯電ローラ3によって各感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。図示しない読取装置によって読み取られた原稿の画像情報に基づいて、露光装置6から各感光体2の帯電面にレーザー光L1〜L4が照射されて、各感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像ローラ4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0046】
中間転写ベルト8を張架する駆動ローラ9が回転駆動し、中間転写ベルト8を図の矢印Bの方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各感光体2上の各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。また、中間転写ベルト8に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、クリーニングブレード5によって除去される。
【0047】
また、作像動作が開始されると、給紙ローラ17が回転することにより、給紙トレイ16に収容されたシート材Pが、給紙ローラ17とフリクションパッド18とで挟持されることにより一枚ずつ分離され、レジストローラ対19へと給送される。そして、給送されたシート材Pは、停止しているレジストローラ対19に突き当てられて一定量のたわみが形成されることにより斜行が補正される。その後、所定のタイミングでレジストローラ対19の駆動を開始し、上記中間転写ベルト8上に転写された画像が二次転写ニップに到達するタイミングに合わせて、シート材Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト8上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上のトナー画像がシート材P上に一括して転写される。また、シート材Pに転写しきれなかった中間転写ベルト8上のトナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去された後、廃トナー収容部14に回収される。
【0048】
その後、シート材Pは定着装置22に送り込まれ、定着ローラ23と加圧ローラ24による熱と圧力によってトナー画像がシート材P上に定着される。そして、シート材Pは排出ローラ対26によって排紙トレイ27上に排出される。
【0049】
また、両面印刷を行う場合は、上述のようにシート材Pの表側の面(片面)にトナー画像を転写して定着した後、シート材Pの後端が切換分岐点30を通過した時点で、排紙ローラ対26を逆回転させ、シート材Pの先端と後端を入れ換えて両面搬送経路29へと搬送する。そして、シート材Pは再給送路31を通って再びレジストローラ対19へと搬送される。その後、上記のようにシート材Pの表側の面にトナー画像を転写し定着したのと同様にして、シート材Pの裏面にトナー画像を転写及び定着し、そのシート材Pを排紙トレイ27へ排出する。
【0050】
以上の説明は、シート材にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1C,1M,1Y,1Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0051】
次に、図2〜図4に基づいて、上記シート給送装置の構成について詳しく説明する。
図2において、符号33は、給紙トレイ16に設けられた底板である。底板33は、図の左端に設けた図示しない回動軸を中心に図の右端が上下方向に回動可能に構成されている。また、底板33は、押圧部材としての底板加圧スプリング34によって上方へ押圧されており、この押圧によって、底板33上に積載された最上位のシート材Pはその積載量に限らず常に給紙ローラ17に当接している。
【0052】
フリクションパッド18は、給紙ローラ17に対して接近離間する方向に可動する保持部材35によって保持されている。また、保持部材35は押圧部材としてのフリクションパッド加圧スプリング36によって給紙ローラ17側へ押圧されている。これにより、給紙ローラ17が回転してシート材Pがフリクションパッド18に給送された際に、シート材Pに対し一定の摩擦力をかけることができ、給紙ローラ17とフリクションパッド18との圧接部に二枚のシート材Pが給送された場合でも、前記摩擦力によりシート材Pを一枚ずつ分離することが可能となっている。
【0053】
図3は、フリクションパッドの周辺構造を示す斜視図、図4は、図3のA−A断面図である。
図3及び図4に示すように、フリクションパッド18を保持する保持部材35には、位置決め部37が設けられており、位置決め部37は、給紙トレイ16に設けられた溝38内に挿入されている。位置決め部37がこの溝38に沿って摺動することにより、保持部材35のシート搬送方向と略垂直方向(図4の矢印X方向)への可動が許容される。一方、保持部材35のシート搬送方向に沿う方向(図4の矢印Z方向)への可動は、位置決め部37と溝38とが干渉することによって規制されている。しかし、厳密には、位置決め部37と溝38との間に微小な隙間Sが設けてあり、シート搬送方向に沿う方向にガタを持たせて、位置決め部37のシート搬送方向と略垂直方向への摺動性を確保している。
【0054】
図2に示すレジストフィラー20は、給紙ローラ17とレジストローラ対19との間のシート搬送経路上でシート材Pの先端を検知する。詳しくは、給紙ローラ17によって給送されるシート材Pがレジストフィラー20に当接すると、レジストフィラー20の先端が揺動して図示しない透過型センサ(レジストセンサ)を遮光することにより、シート材Pの先端の到達を検知できる仕組みとなっている。
【0055】
また、給紙ローラ17とレジストローラ対19は、同一の駆動源(モータ)によって駆動されるようになっており、それぞれ電磁クラッチ(給紙ローラ17用の給紙クラッチと、レジストローラ対19用のレジストクラッチ)により駆動のON/OFFのタイミングを自由に決定できるように構成されている。
【0056】
以下、図5のタイミングチャートを参照して、給紙ローラとレジストローラ対の駆動のタイミングについて説明する。
図5に示すように、まず、t1の時点で給紙ローラの駆動を開始し、シート材をレジストローラ対に向かって給送する。給送されるシート材がt2の時点でレジストフィラーによって検知された後、シート材の先端がレジストローラ対に到達する前の所定の時点t3で給紙ローラの駆動を一旦停止する(図6参照)。その後、t4の時点で給紙ローラの駆動を再開し、シート材の先端をレジストローラに突き当ててたわみを形成すると共に、給紙ローラを駆動させつつ、t5の時点でレジストローラ対の駆動を開始してシート材を搬送する。
【0057】
このように、本実施形態では、たわみを形成した後、給紙ローラの駆動を停止させずに継続して回転させることにより、たわみの反力によって給紙ローラが逆回転するのを防止できる。すなわち、たわみを形成している間は、たわみの反力が発生しているが、給紙ローラには駆動力が伝達されているため、給紙ローラの逆回転が防止される。これにより、フリクションパッドの保持部材がたわみの反力(シート搬送方向上流側への力)の影響を受けないので、上記位置決め部37と溝38との間にガタがあっても(図4参照)、位置決め部37が溝38に当接することによる衝突音の発生を防止できる。なお、図5において、給紙ローラが初めに駆動を開始してからレジストローラ対の駆動が開始されるまでの時間Trは、従来技術の制御タイミングと同値であり、単位時間当たりのシート材の搬送枚数は従来に比べて減少しない。
【0058】
しかしながら、上記のようにシート材の給送をレジストローラに当接させる前に一旦停止する制御では、シート材を給送する際にスリップが発生すると、シート材をレジストローラの手前で停止させる位置にばらつきが生じる虞がある。具体的には、スリップが生じることによって、図5に示すt1からt3まで及びt4からt5まで時間における給紙ローラによるシート材の搬送距離が変動する。
【0059】
そのため、本実施形態では、シート材の給送を開始した時点t1からレジストフィラーによってシート材を検知する時点t2までの時間Taにおけるスリップ量を予測し、予測したスリップ量に基づいて、レジストフィラーによってシート材を検知する時点t2から給紙ローラの駆動を一旦停止する時点t3までの時間Tbと、給紙ローラの駆動を再開した時点t4からレジストローラ対の駆動を開始する時点t5までの時間Tcを補正するようにしている。すなわち、補正によって、シート材の先端がレジストローラに突き当たる前に給紙ローラの駆動を一旦停止するタイミング(一旦停止タイミング)t3と、その後に給紙ローラの駆動を再開するタイミング(駆動再開タイミング)t4とを変化させる。
【0060】
なお、補正の値に関わらず、レジストローラ対の駆動を開始するタイミングt5は変動させない。このため、給紙ローラが初めに駆動を開始してからレジストローラ対の駆動が開始されるまでの時間Trは変動しないので、単位時間当たりのシート材の搬送枚数が減少することはない。
【0061】
上記時間TbとTcの補正は、下記の式(1)〜(3)を用いて行う。
k=t0/R0・・・(1)
Tb=k×R1・・・(2)
Tc=k×R2・・・(3)
【0062】
上記式(1)において、kは補正係数、t0は上記時間Taの実際の時間、R0はその理論上の理想時間である。すなわち、t0は、シート材が給送前の所定の待機位置からレジストフィラーの検知位置を通過するまでの実際の時間、R0は、前記2定点間をシート材がスリップしないで通過する場合の理論上の理想時間であり、補正係数kはこの実際の時間t0と理論上の理想時間R0との比で表されるスリップ率の予測値である。
また、上記式(2)におけるR1は、スリップが生じないと仮定した場合の時間Tbの理想時間であり、同様に、上記式(3)におけるR2は、スリップが生じないと仮定した場合の時間Tcの理想時間である。式(2)及び(3)に示すように、時間TbとTcは、それぞれの理想時間R1とR2に、式(1)によって求められた補正係数kを乗算することで補正される。
【0063】
以下、図7のフローチャートを参照して、本実施形態における駆動時間の補正制御について説明する。
図7に示すように、給紙ローラの駆動をONにしてシート材の給送を開始した後、レジストフィラーによってシート材が検知されることにより、その間のシート材の実際の通過時間が測定される。そして、その通過した実際の時間t0と予め設定されている理想時間R0との比によって補正係数kが算出され、この補正係数kに基づき上記時間TbとTcが補正される。
【0064】
その後、時間t3(図5参照)が経過した時点で、給紙ローラの駆動をOFFにして、シート材がレジストローラ対の手前で一旦停止される。ここで、前記時間t3は、上記補正後の時間Tbによって決定された時間である。
その後、時間t4(図5参照)が経過した時点で、給紙ローラの駆動をONにし、シート材をレジストローラに突き当ててたわみを形成する。また、ここでの前記時間t4は、上記補正後の時間Tcによって決定された時間である。
その後、時間t5(図5参照)が経過した時点で、レジストローラ対の駆動をONにし、シート材を搬送する。
【0065】
上記のように、補正係数kを算出し、この補正係数kに基づき給紙ローラの駆動時間TbとTcを補正することによって、スリップを考慮したシート材の位置制御が可能となる。しかし、万が一、突発的なスリップなどにより補正係数kが極端に大きくなった場合、これに基づいて補正すると、たわみ量が過多になってシート材が折れたりジャム化したりする可能性がある。また、たわみ量の増大により、シート材がガイド板に衝突して衝突音が発生したり、搬送経路内でたわみの逃げ場がない場合は、シート材の先端がレジストローラ対のニップを超えて、先端位置にばらつきが生じたりする可能性もある。そこで、これらの不具合を防ぐために、補正係数kに上限値kmaxを設定し、算出した補正係数kが上限値kmaxより大きい場合は、上限値kmaxによって、時間TbとTcを補正することが好ましい。また、上限値kmaxとしては、例えば、シート材にジャムが生じない程度に定める。具体的には、k≦2とし、好ましくはk≦1.5とする。
【0066】
一方、補正係数kが極端に小さくなった場合は、これに基づいて補正すると、たわみ量が極端に小さくなり、シート材の斜行補正ができない、あるいは、レジストローラ対の駆動開始時にシート材の先端がレジストローラ対に届かずに先端位置にばらつきが生じる可能性がある。補正係数kが極端に小さくなる場合としては、例えば、先行のシート材の給送時に後行のシート材が連れ出され、後行のシート材が所定の待機位置よりも進んだ位置から給送される場合などである。この場合、上記不具合を防止するために、補正係数kに下限値kminを設定し、算出した補正係数kが下限値kminより小さい場合は、下限値kminによって、時間TbとTcを補正することが好ましい。例えば、補正係数kは1≦kとする。
【0067】
また、要求される画質などに応じてシート材の搬送速度を変更可能に構成されている場合、搬送速度によってスリップ率も変化する。そのため、シート材の給送速度が変化する場合は、上記時間TbとTcを上記補正係数kとシート材の給送速度に応じて定めることにより、シート材の位置精度の向上を図り、安定した斜行補正機能を発揮することが可能となる。ここで、シート材の給送速度に基づく補正係数をkvとすると、時間TbとTcは下記の式(4)(5)によって求めることができる。なお、式(4)(5)におけるk、R1及びR2は、上記式(1)〜(3)に表されているものと同様である。
Tb=k×R1×kv・・・(4)
Tc=k×R2×kv・・・(5)
【0068】
また、シート材の種類が異なると、それによって厚みやコシ、摩擦係数等が異なるため、適正なたわみ量もシート材の種類によって異なってくる。従って、シート材に適正なたわみ量を付与するには、シート材の種類に応じてたわみを形成するための上記時間Tcの値を変化させる必要がある。そこで、シート材の種類ごとに適正なたわみ量を付与するために変化させる時間Tcの値をΔR2とすると、時間Tcの補正は下記の式(6)を用いて行えばよい。これにより、シート材の種類が異なっても、適正なたわみ量を付与することができ、安定した斜行補正機能を発揮することが可能となる。なお、式(6)おけるk及びR2は、上記式に表されているものと同様である。
Tc=k(R2+ΔR2)・・・(6)
【0069】
さらに、上記式(5)と(6)を組み合わせた下記の式(7)を用いることにより、シート材の種類と給送速度の両方を考慮した補正が可能となる。
Tc=k(R2+ΔR2)×kv・・・(7)
【0070】
また、本実施形態のシート給送装置では、給紙トレイにシート材を補給した後、最初に給送される1枚目のシート材の待機位置と2枚目以降のシート材の待機位置は異なっている。具体的には、1枚目のシート材は、図2に示すように、その先端位置が給紙ローラ17とフリクションパッド18の圧接部よりも搬送方向上流側近傍に配置された状態で待機しているが、2枚目以降のシート材は、先行するシート材の給送時に連れ出されるため、その先端位置は給紙ローラ17とフリクションパッド18の圧接部より搬送方向下流側に配置される。このように、1枚目と2枚目以降とでは待機位置が異なるため、シート材が待機位置からレジストフィラーの検知位置を通過するまでの上記理論上の理想時間R0も異なることになる。従って、シート材が給送前の所定の待機位置とは異なる位置から給送される場合、その位置に応じて、前記理想時間R0を変更する必要がある。本実施形態では、2枚目以降のシート材の待機位置を所定の待機位置(基準待機位置)としているため、1枚目のシート材を給送する場合は、2枚目以降の場合の理想時間R0よりも大きい値に設定する。これにより、シート材の待機位置に関係なく、安定したシート材の位置精度を得られるようになる。
【0071】
なお、給紙トレイに積載されたシート材の先端が揃った状態でセットされるのは、給紙トレイの出し入れ後であるので、図1に示すシート有無検知センサ21で給紙トレイ16の出し入れを検知した後、1枚目に給送するシート材に対して2枚目以降のシート材とは異なる理想時間R0を用いて制御するように構成してもよい。
【0072】
図8は、本発明の他の実施形態に係るシート給送装置の構成を示す概略断面図である。
図8に示す実施形態では、図2に示す上記実施形態の構成に加え、レジストフィラー20よりもシート搬送方向の上流側に、シート材の先端を検知する検知手段としての給紙フィラー39が配設されている。それ以外は、図2に示す実施形態と同様の構成である。この給紙フィラー38は、レジストフィラー20と同様の仕組みでシート材を検知するように構成されている。
【0073】
以下、図9のタイミングチャートを参照して、本実施形態における給紙ローラとレジストローラ対の駆動のタイミングについて説明する。
図9に示すように、まず、t1の時点で給紙ローラの駆動を開始し、シート材をレジストローラ対に向かって給送する。給送されるシート材がt2の時点で第1の検知手段である給紙フィラー38によって検知された後、t3の時点で第2の検知手段であるレジストフィラーによって検知される。そして、シート材の先端がレジストローラ対に到達する前の所定の時点t4で給紙ローラの駆動を一旦停止する。その後、t5の時点で給紙ローラの駆動を再開し、シート材の先端をレジストローラに突き当ててたわみを形成すると共に、給紙ローラを駆動させつつ、t6の時点でレジストローラ対の駆動を開始してシート材を搬送する。
【0074】
このように、本実施形態でも、上記実施形態と同様に、たわみを形成した後、給紙ローラの駆動を停止させずに継続して回転させるので、上記位置決め部37と溝38との間にガタがあっても(図4参照)、位置決め部37が溝38に当接することによる衝突音の発生を防止できる。なお、給紙ローラが初めに駆動を開始してからレジストローラ対の駆動が開始されるまでの時間Trは変動しないので、単位時間当たりのシート材の搬送枚数が減少することはない。
【0075】
また、本実施形態においても、シート材給紙時のスリップ量に基づいて、レジストフィラーによってシート材を検知する時点t3から給紙ローラの駆動を一旦停止する時点t4までの時間Tbと、給紙ローラの駆動を再開した時点t5からレジストローラ対の駆動を開始する時点t6までの時間Tcの補正を行う。しかし、ここでは、上記実施形態とは異なり、スリップ量の予測を、給紙フィラー38によってシート材を検知した時点t2からレジストフィラーによってシート材を検知する時点t3までの時間Tdにおいて行う。
【0076】
図2に示す上記実施形態では、スリップ量の予測を、シート材が待機位置からレジストフィラーまでの通過時間を測定することにより行っているため、シート材の待機位置にばらつきがあると、スリップ量にも誤差が生じてくる。これに対し、図8に示す実施形態の場合は、スリップ量の予測を、シート材が2つのフィラー間を通過する時間を測定することにより行っているので、待機位置のばらつきに関係なくスリップ量を予測することができる。これにより、スリップ量の予測値の信頼性が向上し、安定したシート材の位置精度を得られるようになる。
【0077】
なお、本実施形態における補正は、上記式(1)のt0を、シート材が給紙フィラーの検知位置からレジストフィラーの検知位置を通過するまでの(図9に示す時間Tdにおける)実際の時間とし、R0をその理論上の理想時間とする以外は、上記実施形態と基本的に同様に行えばよい。
【0078】
また、図8に示す実施形態においても、上記実施形態と同様に、補正係数kの上限値kmaxや下限値kminを設定したり、シート材の種類や給送速度を加味して補正を行うようにしたりすることも可能である。
【0079】
また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上記実施形態では、スリップ量の予測を、シート材の待機位置からレジストフィラーの位置までの2定点間、あるいは、給紙フィラーの位置からレジストフィラーの位置までの2定点間で行っているが、スリップ量を予測するための2定点は、シート材の給送が開始されてから一旦停止されるまでの間であれば任意に定めることが可能である。また、本発明に係る画像形成装置も、図1に示すカラーレーザープリンタに限らず、その他のプリンタ、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置であってもよい。
【0080】
以上のように、本発明によれば、シート材給送時のスリップ量に応じて、シート材の先端がレジストローラに突き当たる前に給紙ローラの駆動を一旦停止するタイミングと、その後に給紙ローラの駆動を再開するタイミングとを変化させる(補正する)ことができるので、安定したシート材の給送を行うことができる。これにより、給送時にスリップが生じても、シート材の停止位置とたわみ量を安定させることができるので、シート材の先端の位置ずれや斜行を高度に補正することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
15 シート給送装置
16 給紙トレイ(シート収容部)
17 給紙ローラ(給送手段)
19 レジストローラ対(搬送手段)
20 レジストフィラー(検知手段)
39 給紙フィラー(検知手段)
P シート材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特許平4−133070号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を給送するシート給送装置、及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置において、シート材に画像を転写する前にシート材の斜行を補正する補正手段として、一対のレジストローラが多く用いられている。
【0003】
図10は、レジストローラ対を用いた一般的なシート給送装置の構成を示す概略図である。
図10に示すように、レジストローラ対を用いた方式では、給紙ローラ200によって図の矢印Y方向に給送されたシート材Pの先端を、停止しているレジストローラ対300のニップに突き当てることにより、シート材Pに一定量のたわみを形成し、このときのシート材Pのたわみによる反力によってシート材Pの先端位置がニップに沿うことで斜行が補正される。その後、画像転写部における画像転写タイミングに合わせて、給紙ローラ200、レジストローラ対300を駆動させ、シート材を搬送する。この方式は、簡易かつ安価に構成できるため一般的に採用されているが、短所として、シート材のたわみ形成後に給紙ローラを停止した際の衝撃音が挙げられる。
【0004】
図10に示すように、通常、給紙ローラ200に対向する位置には、シート材Pを一枚ずつ分離するための分離部材500が設けられている。分離部材500は保持部材600によって保持されると共に、押圧部材700によって給紙ローラ200側へ押圧されている。また、保持部材600は、位置決め部800によって、シート搬送方向に沿う方向への可動は規制されているが、給紙ローラ200の中心へ接近離間する方向、すなわち、シート搬送方向と略垂直方向には可動するように構成されている。
【0005】
図11は、上記位置決め部800の周辺構造を示す拡大断面図である。
図11に示すように、位置決め部800は、給紙トレイ400に設けられた溝900内に挿入され、この溝900に沿って摺動するように構成されている。これにより、位置決め部800は、シート搬送方向と略垂直方向(図の矢印X方向)への可動は許容されるが、シート搬送方向に沿う方向(図の矢印Z方向)への可動は規制されている。しかし、厳密には、位置決め部800のシート搬送方向と略垂直方向への摺動性を確保するために、位置決め部800と溝900との間に微小な隙間Sを設けてシート搬送方向に沿う方向にガタを持たせている。
【0006】
このように、位置決め部800と溝900との間にガタがあると、シート材にたわみを形成した状態で給紙ローラの駆動を一旦停止した際、たわみによる反力F(図10参照)によって給紙ローラ200が微小に逆回転することにより、保持部材600がシート搬送方向上流側への力を受け、位置決め部800が溝900に当接することによる衝撃音が発生する。これを防止する対策としては、給紙ローラの駆動を一旦停止した後、給紙ローラがシート材のたわみによる反力によって微小に逆回転しないように、給紙ローラとレジストローラ対の駆動源を独立させることが考えられる。しかしながら、給紙ローラとレジストローラ対との駆動源を独立させると、駆動源が増えることにより、コストアップや装置の大型化に繋がるため、安価な機械に搭載することができなくなる問題が生じる。
【0007】
そこで、駆動源を増加することなく、たわみを形成した後のシート材の戻り(給紙ローラの逆回転)を防止する技術が特許文献1に開示されている。これは、給紙ローラによって給送されるシート材の先端がレジストローラに突き当たる前に給紙ローラの駆動を一旦停止し、その後、給紙ローラの駆動を再開してシート材の先端をレジストローラに突き当ててたわみを形成すると共に、給紙ローラを駆動させつつレジストローラ対の駆動を開始してシート材を搬送するものである。このように、たわみを形成した後、給紙ローラの駆動を停止させずに継続して回転させることにより、たわみの反力によって給紙ローラが逆回転するのを防止でき、位置決め部における衝撃音を防止できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の制御方法を採用することにより、シート材のたわみ形成後の衝撃音の問題を解消することは可能となるが、これにより新たな課題が発生する。
従来の制御においては、シート材をレジストローラに突き当てた状態で給紙ローラの駆動を一旦停止するため、シート材の先端位置が精度良く決まる。これに対し、特許文献1に記載の方法では、シート材をレジストローラに当接させる前に給紙ローラの駆動を一旦停止するため、シート材のコシや摩擦係数等のばらつき、あるいは、給紙ローラや分離部材への紙粉の付着、給紙ローラ又は分離部材の経時的劣化によって、シート材給送時にスリップが発生すると、レジストローラの手前でシート部材を停止する位置にばらつきが生じてしまう。
【0009】
例えば、スリップによってシート材の先端が所定の位置よりも搬送方向上流側で停止した場合は、その後、シート材がレジストローラに当接する前にレジストローラ対の駆動が開始される虞がある。この場合、結果として、シート材にたわみが形成されず、シート材の先端位置がばらつく、あるいは斜行補正ができないといった問題が生じる。また、このようなたわみが形成されない不具合を防止するために、スリップを考慮して通常よりもたわみを大きく形成する方法が考えられるが、たわみを大きくするとそれに伴って反力が強くなるため、特に搬送経路内でたわみの逃げ場がない場合は、シート材の先端がレジストローラ対のニップを超えて、先端位置にばらつきが生じてしまう虞がある。
【0010】
本発明は、斯かる事情に鑑み、シート材給送時における衝撃音の発生を防止することができると共に、シート材の先端の位置ずれや斜行を高度に補正することが可能なシート給送装置及び、そのシート給送装置を備えた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、シート材を収容するシート収容部と、前記シート収容部に収容されるシート材を給送する給送手段と、前記給送手段によって給送されたシート材の先端を突き当てて停止した後に当該シート材の搬送を開始する搬送手段とを備え、前記給送手段によって給送されるシート材の先端が前記搬送手段に突き当たる前に前記給送手段の駆動を一旦停止し、その後に前記給送手段の駆動を再開してシート材の先端を前記搬送手段に突き当てると共に、前記給送手段を駆動させつつ前記搬送手段の駆動を開始してシート材を搬送するように構成したシート給送装置において、シート材が給送前の待機位置から前記搬送手段に突き当たる前の一旦停止位置までの間で任意に定めた2定点間を通過する時間に応じて、シート材の先端が前記搬送手段に突き当たる前に前記給送手段の駆動を一旦停止する一旦停止タイミングと、その後に前記給送手段の駆動を再開する駆動再開タイミングとを変化させるようにしたものである。
【0012】
シート材が前記2定点間を通過する時間に応じて、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを変化させることにより、これらのタイミングをシート材給送時のスリップ量に応じて補正することができる。これにより、安定したシート材の給送を行うことが可能となる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシート給送装置において、シート材が前記任意に定めた2定点間を通過する実際の時間をt0、その理論上の理想時間をR0とすると、前記実際の時間t0と前記理論上の理想時間R0との比である補正係数kによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにしたものである。
【0014】
補正係数kを、2定点間を通過する実際の時間t0と理論上の理想時間R0との比によって表すことで、給送時のスリップ率の予測値が得られる。このスリップ率の予測値である補正係数kによって給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを定めることにより、スリップが生じても安定したシート材の給送を行うことが可能となる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2に記載のシート給送装置において、前記補正係数kが予め設定した上限値kmaxより大きい場合は、前記上限値kmaxによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにしたものである。
【0016】
この場合、突発的なスリップなどにより補正係数kが極端に大きくなっても、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングは上限値kmaxによって定められるので、補正後のたわみ量が過多になることによる不具合などを防止できる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載のシート給送装置において、前記補正係数kが予め設定した下限値kminより小さい場合は、前記下限値kminによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにしたものである。
【0018】
この場合、シート材が所定の待機位置よりも進んだ位置から給送されることなどにより、補正係数kが極端に小さくなっても、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングは下限値kminによって定められるので、補正後のたわみ量が極端に小さくなることによる不具合などを防止できる。
【0019】
請求項5の発明は、請求項2から4のいずれか1項に記載のシート給送装置において、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを、前記補正係数kと前記給送手段によるシート材の給送速度に応じて定めるようにしたものである。
【0020】
給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを、補正係数kとシート材の給送速度に応じて定めることにより、給送速度が異なっても、シート材の位置精度の向上を図り、安定した斜行補正機能を発揮することが可能となる。
【0021】
請求項6の発明は、請求項2から5のいずれか1項に記載のシート給送装置において、前記給送手段の前記駆動再開タイミングを、前記補正係数kとシート材の種類に応じて定めるようにしたものである。
【0022】
給送手段の駆動再開タイミングを、補正係数kとシート材の種類に応じて定めることにより、シート材の種類が異なっても、適正なたわみ量を付与することができ、安定した斜行補正機能を発揮することが可能となる。
【0023】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置において、前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上で、シート材の先端を検知する検知手段を備え、前記2定点の一方を、給送前の待機位置におけるシート材の先端位置とし、他方を、前記検知手段によるシート材の先端検知位置としたものである。
【0024】
この場合、シート材が給送前の待機位置から検知手段の先端検知位置を通過する時間に応じて、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを変化させる。これにより、給送前の待機位置から検知手段の先端検知位置までの間で生じたスリップ量に応じて、給送手段の前記各タイミングを補正することができ、安定したシート材の給送を行うことが可能となる。
【0025】
請求項8の発明は、請求項7に記載のシート給送装置において、シート材が前記給送前の待機位置から前記検知手段による先端検知位置までを通過する実際の時間をt0、その理論上の理想時間をR0とすると、前記実際の時間t0と前記理論上の理想時間R0との比である補正係数kによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるように構成し、シート材が給送前の所定の待機位置とは異なる位置から給送される場合、その位置に応じて、前記理論上の理想時間R0を変更するようにしたものである。
【0026】
シート材の給送前の待機位置が異なると、シート材がその待機位置から検知手段による先端検知位置までを通過するまでの理論上の理想時間R0も異なる。そのため、待機位置に応じて理論上の理想時間R0を変更することにより、シート材の待機位置に関係なく、安定したシート材の位置精度を得られるようになる。
【0027】
請求項9の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置において、前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上で、シート材の先端を検知する第1の検知手段と、前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上であって、前記第1の検知手段よりもシート搬送方向下流側でシート材の先端を検知する第2の検知手段を備え、前記2定点の一方を、前記第1の検知手段によるシート材の先端検知位置とし、他方を、前記第2の検知手段によるシート材の先端検知位置としたものである。
【0028】
この場合、シート材が第1の検知手段の先端検知位置から第2の検知手段の先端検知位置を通過する時間に応じて、給送手段の一旦停止タイミングと駆動再開タイミングとを変化させる。これにより、2つの検知手段の先端検知位置の間で生じたスリップ量に応じて、給送手段の前記各タイミングを補正することができ、安定したシート材の給送を行うことが可能となる。しかも、この場合、シート材の待機位置のばらつきに関係なくスリップ量を予測することができるので、スリップ量の予測値の信頼性が向上し、安定したシート材の位置精度を得られるようになる。
【0029】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載のシート給送装置を備えた画像形成装置である。
【0030】
画像形成装置が、請求項1から9のいずれか1項に記載のシート給送装置を備えているので、これらのシート給送装置による上記効果が得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、シート材給送時のスリップ量に応じて、シート材の先端がレジストローラに突き当たる前に給送手段の駆動を一旦停止するタイミングと、その後に給送手段の駆動を再開するタイミングとを変化させる(補正する)ことができるので、安定したシート材の給送を行うことができる。これにより、給送時にスリップが生じても、シート材の停止位置とたわみ量を安定させることができるので、シート材の先端の位置ずれや斜行を高度に補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用する画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
【図2】前記画像形成装置に搭載したシート給送装置の構成を示す概略断面図である。
【図3】フリクションパッドの周辺構造を示す斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】給紙ローラとレジストローラ対の駆動のタイミングチャートを示す図である。
【図6】シート材をレジストローラに突き当てる前に一旦停止した状態を示す図である。
【図7】補正制御のフローチャートを示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るシート給送装置の構成を示す概略断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態における給紙ローラとレジストローラ対の駆動のタイミングチャートを示す図である。
【図10】従来のシート給送装置における給送動作を説明するための図である。
【図11】位置決め部の周辺構造を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0034】
まず、図1を参照して、本発明を適用する画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体100には、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1C,1M,1Y,1Kが着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kは、カラー画像の色分解成分に対応するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0035】
具体的には、各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電ローラ3等を備えた帯電装置と、感光体2の表面にトナー(現像剤)を供給する現像ローラ4等を備えた現像装置と、感光体2の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード5等を備えたクリーニング装置などを有する。
【0036】
図1において、各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kの上方には、感光体2の表面を露光する露光手段としての露光装置6が配設されている。露光装置6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザー光L1〜L4を照射するようになっている。
【0037】
また、各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kの下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、支持部材としての駆動ローラ9と従動ローラ10に張架されており、駆動ローラ9が図の反時計回りに回転することによって、中間転写ベルト8は図の矢印Bに示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。
【0038】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面を押圧しており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0039】
また、駆動ローラ9に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト8の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
【0040】
また、中間転写ベルト8の図の右端側の外周面には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が配設されている。このベルトクリーニング装置13から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、転写装置7の下方に配設された廃トナー収容器14の入り口部に接続されている。
【0041】
装置本体100の下部には、上記二次転写ニップへ紙やOHP等のシート材を給送するためのシート給送装置15が配設されている。シート給送装置15は、複数枚のシート材Pを収容するシート収容部としての給紙トレイ16と、給紙トレイ16に収容されるシート材Pを給送する給送手段としての給紙ローラ17と、給紙ローラ17との間でシート材Pを一枚ずつ分離する分離手段としてのフリクションパッド18と、給紙ローラ17によって給送されたシート材Pの斜行を補正して搬送するための搬送手段としてのレジストローラ対19と、給送されるシート材Pを検知する検知手段としてのレジストフィラー20と、給紙トレイ16に収容されるシート材Pの有無を検知するシート有無検知センサ21等を備える。給紙トレイ16は、フリクションパッド18、及び後述の両面搬送部28の再給送路31と一体的に、図1において右方向に引出可能に構成されている。シート有無検知センサ21は、給紙トレイ16内にシート材Pが無くなった場合にそれを検知できると共に、給紙トレイ16の出し入れも検知可能となっている。
【0042】
また、二次転写ニップよりもシート搬送方向下流側(図1の上側)には、シート材に画像を定着するための定着装置22が配設されている。定着装置22は、図示しない加熱源によって加熱される定着部材としての定着ローラ23と、定着ローラ23を加圧して定着ニップを形成する加圧部材としての加圧ローラ24等によって構成されている。
【0043】
装置本体100の上部には、排紙部25が設けてある。排紙部25は、シート材を機外に排出するための排紙ローラ対26と、機外に排出されたシート材をストックする排紙トレイ27とを有する。
【0044】
また、装置本体100の図1の右側の部分には、両面印刷する際にシート材を搬送する両面搬送部28が設けられている。両面搬送部28は、両面搬送経路29と、両面搬送経路29にシート材を案内するための切換分岐点30と、両面搬送経路29を通過したシート材をレジストローラ対19の搬送方向上流側へ搬送するための再給送路31とを有している。なお、切換分岐点30の搬送方向上流側近傍には、シート材検知用のフィラー32が設けられている。
【0045】
以下、図1を参照して上記画像形成装置の基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1C,1M,1Y,1Kの感光体2が図の時計回りに回転駆動され、帯電ローラ3によって各感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。図示しない読取装置によって読み取られた原稿の画像情報に基づいて、露光装置6から各感光体2の帯電面にレーザー光L1〜L4が照射されて、各感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像ローラ4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0046】
中間転写ベルト8を張架する駆動ローラ9が回転駆動し、中間転写ベルト8を図の矢印Bの方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各感光体2上の各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。また、中間転写ベルト8に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、クリーニングブレード5によって除去される。
【0047】
また、作像動作が開始されると、給紙ローラ17が回転することにより、給紙トレイ16に収容されたシート材Pが、給紙ローラ17とフリクションパッド18とで挟持されることにより一枚ずつ分離され、レジストローラ対19へと給送される。そして、給送されたシート材Pは、停止しているレジストローラ対19に突き当てられて一定量のたわみが形成されることにより斜行が補正される。その後、所定のタイミングでレジストローラ対19の駆動を開始し、上記中間転写ベルト8上に転写された画像が二次転写ニップに到達するタイミングに合わせて、シート材Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト8上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上のトナー画像がシート材P上に一括して転写される。また、シート材Pに転写しきれなかった中間転写ベルト8上のトナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去された後、廃トナー収容部14に回収される。
【0048】
その後、シート材Pは定着装置22に送り込まれ、定着ローラ23と加圧ローラ24による熱と圧力によってトナー画像がシート材P上に定着される。そして、シート材Pは排出ローラ対26によって排紙トレイ27上に排出される。
【0049】
また、両面印刷を行う場合は、上述のようにシート材Pの表側の面(片面)にトナー画像を転写して定着した後、シート材Pの後端が切換分岐点30を通過した時点で、排紙ローラ対26を逆回転させ、シート材Pの先端と後端を入れ換えて両面搬送経路29へと搬送する。そして、シート材Pは再給送路31を通って再びレジストローラ対19へと搬送される。その後、上記のようにシート材Pの表側の面にトナー画像を転写し定着したのと同様にして、シート材Pの裏面にトナー画像を転写及び定着し、そのシート材Pを排紙トレイ27へ排出する。
【0050】
以上の説明は、シート材にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1C,1M,1Y,1Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0051】
次に、図2〜図4に基づいて、上記シート給送装置の構成について詳しく説明する。
図2において、符号33は、給紙トレイ16に設けられた底板である。底板33は、図の左端に設けた図示しない回動軸を中心に図の右端が上下方向に回動可能に構成されている。また、底板33は、押圧部材としての底板加圧スプリング34によって上方へ押圧されており、この押圧によって、底板33上に積載された最上位のシート材Pはその積載量に限らず常に給紙ローラ17に当接している。
【0052】
フリクションパッド18は、給紙ローラ17に対して接近離間する方向に可動する保持部材35によって保持されている。また、保持部材35は押圧部材としてのフリクションパッド加圧スプリング36によって給紙ローラ17側へ押圧されている。これにより、給紙ローラ17が回転してシート材Pがフリクションパッド18に給送された際に、シート材Pに対し一定の摩擦力をかけることができ、給紙ローラ17とフリクションパッド18との圧接部に二枚のシート材Pが給送された場合でも、前記摩擦力によりシート材Pを一枚ずつ分離することが可能となっている。
【0053】
図3は、フリクションパッドの周辺構造を示す斜視図、図4は、図3のA−A断面図である。
図3及び図4に示すように、フリクションパッド18を保持する保持部材35には、位置決め部37が設けられており、位置決め部37は、給紙トレイ16に設けられた溝38内に挿入されている。位置決め部37がこの溝38に沿って摺動することにより、保持部材35のシート搬送方向と略垂直方向(図4の矢印X方向)への可動が許容される。一方、保持部材35のシート搬送方向に沿う方向(図4の矢印Z方向)への可動は、位置決め部37と溝38とが干渉することによって規制されている。しかし、厳密には、位置決め部37と溝38との間に微小な隙間Sが設けてあり、シート搬送方向に沿う方向にガタを持たせて、位置決め部37のシート搬送方向と略垂直方向への摺動性を確保している。
【0054】
図2に示すレジストフィラー20は、給紙ローラ17とレジストローラ対19との間のシート搬送経路上でシート材Pの先端を検知する。詳しくは、給紙ローラ17によって給送されるシート材Pがレジストフィラー20に当接すると、レジストフィラー20の先端が揺動して図示しない透過型センサ(レジストセンサ)を遮光することにより、シート材Pの先端の到達を検知できる仕組みとなっている。
【0055】
また、給紙ローラ17とレジストローラ対19は、同一の駆動源(モータ)によって駆動されるようになっており、それぞれ電磁クラッチ(給紙ローラ17用の給紙クラッチと、レジストローラ対19用のレジストクラッチ)により駆動のON/OFFのタイミングを自由に決定できるように構成されている。
【0056】
以下、図5のタイミングチャートを参照して、給紙ローラとレジストローラ対の駆動のタイミングについて説明する。
図5に示すように、まず、t1の時点で給紙ローラの駆動を開始し、シート材をレジストローラ対に向かって給送する。給送されるシート材がt2の時点でレジストフィラーによって検知された後、シート材の先端がレジストローラ対に到達する前の所定の時点t3で給紙ローラの駆動を一旦停止する(図6参照)。その後、t4の時点で給紙ローラの駆動を再開し、シート材の先端をレジストローラに突き当ててたわみを形成すると共に、給紙ローラを駆動させつつ、t5の時点でレジストローラ対の駆動を開始してシート材を搬送する。
【0057】
このように、本実施形態では、たわみを形成した後、給紙ローラの駆動を停止させずに継続して回転させることにより、たわみの反力によって給紙ローラが逆回転するのを防止できる。すなわち、たわみを形成している間は、たわみの反力が発生しているが、給紙ローラには駆動力が伝達されているため、給紙ローラの逆回転が防止される。これにより、フリクションパッドの保持部材がたわみの反力(シート搬送方向上流側への力)の影響を受けないので、上記位置決め部37と溝38との間にガタがあっても(図4参照)、位置決め部37が溝38に当接することによる衝突音の発生を防止できる。なお、図5において、給紙ローラが初めに駆動を開始してからレジストローラ対の駆動が開始されるまでの時間Trは、従来技術の制御タイミングと同値であり、単位時間当たりのシート材の搬送枚数は従来に比べて減少しない。
【0058】
しかしながら、上記のようにシート材の給送をレジストローラに当接させる前に一旦停止する制御では、シート材を給送する際にスリップが発生すると、シート材をレジストローラの手前で停止させる位置にばらつきが生じる虞がある。具体的には、スリップが生じることによって、図5に示すt1からt3まで及びt4からt5まで時間における給紙ローラによるシート材の搬送距離が変動する。
【0059】
そのため、本実施形態では、シート材の給送を開始した時点t1からレジストフィラーによってシート材を検知する時点t2までの時間Taにおけるスリップ量を予測し、予測したスリップ量に基づいて、レジストフィラーによってシート材を検知する時点t2から給紙ローラの駆動を一旦停止する時点t3までの時間Tbと、給紙ローラの駆動を再開した時点t4からレジストローラ対の駆動を開始する時点t5までの時間Tcを補正するようにしている。すなわち、補正によって、シート材の先端がレジストローラに突き当たる前に給紙ローラの駆動を一旦停止するタイミング(一旦停止タイミング)t3と、その後に給紙ローラの駆動を再開するタイミング(駆動再開タイミング)t4とを変化させる。
【0060】
なお、補正の値に関わらず、レジストローラ対の駆動を開始するタイミングt5は変動させない。このため、給紙ローラが初めに駆動を開始してからレジストローラ対の駆動が開始されるまでの時間Trは変動しないので、単位時間当たりのシート材の搬送枚数が減少することはない。
【0061】
上記時間TbとTcの補正は、下記の式(1)〜(3)を用いて行う。
k=t0/R0・・・(1)
Tb=k×R1・・・(2)
Tc=k×R2・・・(3)
【0062】
上記式(1)において、kは補正係数、t0は上記時間Taの実際の時間、R0はその理論上の理想時間である。すなわち、t0は、シート材が給送前の所定の待機位置からレジストフィラーの検知位置を通過するまでの実際の時間、R0は、前記2定点間をシート材がスリップしないで通過する場合の理論上の理想時間であり、補正係数kはこの実際の時間t0と理論上の理想時間R0との比で表されるスリップ率の予測値である。
また、上記式(2)におけるR1は、スリップが生じないと仮定した場合の時間Tbの理想時間であり、同様に、上記式(3)におけるR2は、スリップが生じないと仮定した場合の時間Tcの理想時間である。式(2)及び(3)に示すように、時間TbとTcは、それぞれの理想時間R1とR2に、式(1)によって求められた補正係数kを乗算することで補正される。
【0063】
以下、図7のフローチャートを参照して、本実施形態における駆動時間の補正制御について説明する。
図7に示すように、給紙ローラの駆動をONにしてシート材の給送を開始した後、レジストフィラーによってシート材が検知されることにより、その間のシート材の実際の通過時間が測定される。そして、その通過した実際の時間t0と予め設定されている理想時間R0との比によって補正係数kが算出され、この補正係数kに基づき上記時間TbとTcが補正される。
【0064】
その後、時間t3(図5参照)が経過した時点で、給紙ローラの駆動をOFFにして、シート材がレジストローラ対の手前で一旦停止される。ここで、前記時間t3は、上記補正後の時間Tbによって決定された時間である。
その後、時間t4(図5参照)が経過した時点で、給紙ローラの駆動をONにし、シート材をレジストローラに突き当ててたわみを形成する。また、ここでの前記時間t4は、上記補正後の時間Tcによって決定された時間である。
その後、時間t5(図5参照)が経過した時点で、レジストローラ対の駆動をONにし、シート材を搬送する。
【0065】
上記のように、補正係数kを算出し、この補正係数kに基づき給紙ローラの駆動時間TbとTcを補正することによって、スリップを考慮したシート材の位置制御が可能となる。しかし、万が一、突発的なスリップなどにより補正係数kが極端に大きくなった場合、これに基づいて補正すると、たわみ量が過多になってシート材が折れたりジャム化したりする可能性がある。また、たわみ量の増大により、シート材がガイド板に衝突して衝突音が発生したり、搬送経路内でたわみの逃げ場がない場合は、シート材の先端がレジストローラ対のニップを超えて、先端位置にばらつきが生じたりする可能性もある。そこで、これらの不具合を防ぐために、補正係数kに上限値kmaxを設定し、算出した補正係数kが上限値kmaxより大きい場合は、上限値kmaxによって、時間TbとTcを補正することが好ましい。また、上限値kmaxとしては、例えば、シート材にジャムが生じない程度に定める。具体的には、k≦2とし、好ましくはk≦1.5とする。
【0066】
一方、補正係数kが極端に小さくなった場合は、これに基づいて補正すると、たわみ量が極端に小さくなり、シート材の斜行補正ができない、あるいは、レジストローラ対の駆動開始時にシート材の先端がレジストローラ対に届かずに先端位置にばらつきが生じる可能性がある。補正係数kが極端に小さくなる場合としては、例えば、先行のシート材の給送時に後行のシート材が連れ出され、後行のシート材が所定の待機位置よりも進んだ位置から給送される場合などである。この場合、上記不具合を防止するために、補正係数kに下限値kminを設定し、算出した補正係数kが下限値kminより小さい場合は、下限値kminによって、時間TbとTcを補正することが好ましい。例えば、補正係数kは1≦kとする。
【0067】
また、要求される画質などに応じてシート材の搬送速度を変更可能に構成されている場合、搬送速度によってスリップ率も変化する。そのため、シート材の給送速度が変化する場合は、上記時間TbとTcを上記補正係数kとシート材の給送速度に応じて定めることにより、シート材の位置精度の向上を図り、安定した斜行補正機能を発揮することが可能となる。ここで、シート材の給送速度に基づく補正係数をkvとすると、時間TbとTcは下記の式(4)(5)によって求めることができる。なお、式(4)(5)におけるk、R1及びR2は、上記式(1)〜(3)に表されているものと同様である。
Tb=k×R1×kv・・・(4)
Tc=k×R2×kv・・・(5)
【0068】
また、シート材の種類が異なると、それによって厚みやコシ、摩擦係数等が異なるため、適正なたわみ量もシート材の種類によって異なってくる。従って、シート材に適正なたわみ量を付与するには、シート材の種類に応じてたわみを形成するための上記時間Tcの値を変化させる必要がある。そこで、シート材の種類ごとに適正なたわみ量を付与するために変化させる時間Tcの値をΔR2とすると、時間Tcの補正は下記の式(6)を用いて行えばよい。これにより、シート材の種類が異なっても、適正なたわみ量を付与することができ、安定した斜行補正機能を発揮することが可能となる。なお、式(6)おけるk及びR2は、上記式に表されているものと同様である。
Tc=k(R2+ΔR2)・・・(6)
【0069】
さらに、上記式(5)と(6)を組み合わせた下記の式(7)を用いることにより、シート材の種類と給送速度の両方を考慮した補正が可能となる。
Tc=k(R2+ΔR2)×kv・・・(7)
【0070】
また、本実施形態のシート給送装置では、給紙トレイにシート材を補給した後、最初に給送される1枚目のシート材の待機位置と2枚目以降のシート材の待機位置は異なっている。具体的には、1枚目のシート材は、図2に示すように、その先端位置が給紙ローラ17とフリクションパッド18の圧接部よりも搬送方向上流側近傍に配置された状態で待機しているが、2枚目以降のシート材は、先行するシート材の給送時に連れ出されるため、その先端位置は給紙ローラ17とフリクションパッド18の圧接部より搬送方向下流側に配置される。このように、1枚目と2枚目以降とでは待機位置が異なるため、シート材が待機位置からレジストフィラーの検知位置を通過するまでの上記理論上の理想時間R0も異なることになる。従って、シート材が給送前の所定の待機位置とは異なる位置から給送される場合、その位置に応じて、前記理想時間R0を変更する必要がある。本実施形態では、2枚目以降のシート材の待機位置を所定の待機位置(基準待機位置)としているため、1枚目のシート材を給送する場合は、2枚目以降の場合の理想時間R0よりも大きい値に設定する。これにより、シート材の待機位置に関係なく、安定したシート材の位置精度を得られるようになる。
【0071】
なお、給紙トレイに積載されたシート材の先端が揃った状態でセットされるのは、給紙トレイの出し入れ後であるので、図1に示すシート有無検知センサ21で給紙トレイ16の出し入れを検知した後、1枚目に給送するシート材に対して2枚目以降のシート材とは異なる理想時間R0を用いて制御するように構成してもよい。
【0072】
図8は、本発明の他の実施形態に係るシート給送装置の構成を示す概略断面図である。
図8に示す実施形態では、図2に示す上記実施形態の構成に加え、レジストフィラー20よりもシート搬送方向の上流側に、シート材の先端を検知する検知手段としての給紙フィラー39が配設されている。それ以外は、図2に示す実施形態と同様の構成である。この給紙フィラー38は、レジストフィラー20と同様の仕組みでシート材を検知するように構成されている。
【0073】
以下、図9のタイミングチャートを参照して、本実施形態における給紙ローラとレジストローラ対の駆動のタイミングについて説明する。
図9に示すように、まず、t1の時点で給紙ローラの駆動を開始し、シート材をレジストローラ対に向かって給送する。給送されるシート材がt2の時点で第1の検知手段である給紙フィラー38によって検知された後、t3の時点で第2の検知手段であるレジストフィラーによって検知される。そして、シート材の先端がレジストローラ対に到達する前の所定の時点t4で給紙ローラの駆動を一旦停止する。その後、t5の時点で給紙ローラの駆動を再開し、シート材の先端をレジストローラに突き当ててたわみを形成すると共に、給紙ローラを駆動させつつ、t6の時点でレジストローラ対の駆動を開始してシート材を搬送する。
【0074】
このように、本実施形態でも、上記実施形態と同様に、たわみを形成した後、給紙ローラの駆動を停止させずに継続して回転させるので、上記位置決め部37と溝38との間にガタがあっても(図4参照)、位置決め部37が溝38に当接することによる衝突音の発生を防止できる。なお、給紙ローラが初めに駆動を開始してからレジストローラ対の駆動が開始されるまでの時間Trは変動しないので、単位時間当たりのシート材の搬送枚数が減少することはない。
【0075】
また、本実施形態においても、シート材給紙時のスリップ量に基づいて、レジストフィラーによってシート材を検知する時点t3から給紙ローラの駆動を一旦停止する時点t4までの時間Tbと、給紙ローラの駆動を再開した時点t5からレジストローラ対の駆動を開始する時点t6までの時間Tcの補正を行う。しかし、ここでは、上記実施形態とは異なり、スリップ量の予測を、給紙フィラー38によってシート材を検知した時点t2からレジストフィラーによってシート材を検知する時点t3までの時間Tdにおいて行う。
【0076】
図2に示す上記実施形態では、スリップ量の予測を、シート材が待機位置からレジストフィラーまでの通過時間を測定することにより行っているため、シート材の待機位置にばらつきがあると、スリップ量にも誤差が生じてくる。これに対し、図8に示す実施形態の場合は、スリップ量の予測を、シート材が2つのフィラー間を通過する時間を測定することにより行っているので、待機位置のばらつきに関係なくスリップ量を予測することができる。これにより、スリップ量の予測値の信頼性が向上し、安定したシート材の位置精度を得られるようになる。
【0077】
なお、本実施形態における補正は、上記式(1)のt0を、シート材が給紙フィラーの検知位置からレジストフィラーの検知位置を通過するまでの(図9に示す時間Tdにおける)実際の時間とし、R0をその理論上の理想時間とする以外は、上記実施形態と基本的に同様に行えばよい。
【0078】
また、図8に示す実施形態においても、上記実施形態と同様に、補正係数kの上限値kmaxや下限値kminを設定したり、シート材の種類や給送速度を加味して補正を行うようにしたりすることも可能である。
【0079】
また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上記実施形態では、スリップ量の予測を、シート材の待機位置からレジストフィラーの位置までの2定点間、あるいは、給紙フィラーの位置からレジストフィラーの位置までの2定点間で行っているが、スリップ量を予測するための2定点は、シート材の給送が開始されてから一旦停止されるまでの間であれば任意に定めることが可能である。また、本発明に係る画像形成装置も、図1に示すカラーレーザープリンタに限らず、その他のプリンタ、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置であってもよい。
【0080】
以上のように、本発明によれば、シート材給送時のスリップ量に応じて、シート材の先端がレジストローラに突き当たる前に給紙ローラの駆動を一旦停止するタイミングと、その後に給紙ローラの駆動を再開するタイミングとを変化させる(補正する)ことができるので、安定したシート材の給送を行うことができる。これにより、給送時にスリップが生じても、シート材の停止位置とたわみ量を安定させることができるので、シート材の先端の位置ずれや斜行を高度に補正することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
15 シート給送装置
16 給紙トレイ(シート収容部)
17 給紙ローラ(給送手段)
19 レジストローラ対(搬送手段)
20 レジストフィラー(検知手段)
39 給紙フィラー(検知手段)
P シート材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特許平4−133070号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を収容するシート収容部と、前記シート収容部に収容されるシート材を給送する給送手段と、前記給送手段によって給送されたシート材の先端を突き当てて停止した後に当該シート材の搬送を開始する搬送手段とを備え、
前記給送手段によって給送されるシート材の先端が前記搬送手段に突き当たる前に前記給送手段の駆動を一旦停止し、その後に前記給送手段の駆動を再開してシート材の先端を前記搬送手段に突き当てると共に、前記給送手段を駆動させつつ前記搬送手段の駆動を開始してシート材を搬送するように構成したシート給送装置において、
シート材が給送前の待機位置から前記搬送手段に突き当たる前の一旦停止位置までの間で任意に定めた2定点間を通過する時間に応じて、シート材の先端が前記搬送手段に突き当たる前に前記給送手段の駆動を一旦停止する一旦停止タイミングと、その後に前記給送手段の駆動を再開する駆動再開タイミングとを変化させるようにしたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
シート材が前記任意に定めた2定点間を通過する実際の時間をt0、その理論上の理想時間をR0とすると、前記実際の時間t0と前記理論上の理想時間R0との比である補正係数kによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにした請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記補正係数kが予め設定した上限値kmaxより大きい場合は、前記上限値kmaxによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにした請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記補正係数kが予め設定した下限値kminより小さい場合は、前記下限値kminによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにした請求項2又は3に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを、前記補正係数kと前記給送手段によるシート材の給送速度に応じて定めるようにした請求項2から4のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記給送手段の前記駆動再開タイミングを、前記補正係数kとシート材の種類に応じて定めるようにした請求項2から5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上で、シート材の先端を検知する検知手段を備え、
前記2定点の一方を、給送前の待機位置におけるシート材の先端位置とし、他方を、前記検知手段によるシート材の先端検知位置とした請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
シート材が前記給送前の待機位置から前記検知手段による先端検知位置までを通過する実際の時間をt0、その理論上の理想時間をR0とすると、前記実際の時間t0と前記理論上の理想時間R0との比である補正係数kによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるように構成し、
シート材が給送前の所定の待機位置とは異なる位置から給送される場合、その位置に応じて、前記理論上の理想時間R0を変更するようにした請求項7に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上で、シート材の先端を検知する第1の検知手段と、前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上であって、前記第1の検知手段よりもシート搬送方向下流側でシート材の先端を検知する第2の検知手段を備え、
前記2定点の一方を、前記第1の検知手段によるシート材の先端検知位置とし、他方を、前記第2の検知手段によるシート材の先端検知位置とした請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のシート給送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
シート材を収容するシート収容部と、前記シート収容部に収容されるシート材を給送する給送手段と、前記給送手段によって給送されたシート材の先端を突き当てて停止した後に当該シート材の搬送を開始する搬送手段とを備え、
前記給送手段によって給送されるシート材の先端が前記搬送手段に突き当たる前に前記給送手段の駆動を一旦停止し、その後に前記給送手段の駆動を再開してシート材の先端を前記搬送手段に突き当てると共に、前記給送手段を駆動させつつ前記搬送手段の駆動を開始してシート材を搬送するように構成したシート給送装置において、
シート材が給送前の待機位置から前記搬送手段に突き当たる前の一旦停止位置までの間で任意に定めた2定点間を通過する時間に応じて、シート材の先端が前記搬送手段に突き当たる前に前記給送手段の駆動を一旦停止する一旦停止タイミングと、その後に前記給送手段の駆動を再開する駆動再開タイミングとを変化させるようにしたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
シート材が前記任意に定めた2定点間を通過する実際の時間をt0、その理論上の理想時間をR0とすると、前記実際の時間t0と前記理論上の理想時間R0との比である補正係数kによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにした請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記補正係数kが予め設定した上限値kmaxより大きい場合は、前記上限値kmaxによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにした請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記補正係数kが予め設定した下限値kminより小さい場合は、前記下限値kminによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるようにした請求項2又は3に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを、前記補正係数kと前記給送手段によるシート材の給送速度に応じて定めるようにした請求項2から4のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記給送手段の前記駆動再開タイミングを、前記補正係数kとシート材の種類に応じて定めるようにした請求項2から5のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上で、シート材の先端を検知する検知手段を備え、
前記2定点の一方を、給送前の待機位置におけるシート材の先端位置とし、他方を、前記検知手段によるシート材の先端検知位置とした請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
シート材が前記給送前の待機位置から前記検知手段による先端検知位置までを通過する実際の時間をt0、その理論上の理想時間をR0とすると、前記実際の時間t0と前記理論上の理想時間R0との比である補正係数kによって、前記給送手段の前記一旦停止タイミングと前記駆動再開タイミングとを定めるように構成し、
シート材が給送前の所定の待機位置とは異なる位置から給送される場合、その位置に応じて、前記理論上の理想時間R0を変更するようにした請求項7に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上で、シート材の先端を検知する第1の検知手段と、前記給送手段と前記搬送手段との間のシート搬送経路上であって、前記第1の検知手段よりもシート搬送方向下流側でシート材の先端を検知する第2の検知手段を備え、
前記2定点の一方を、前記第1の検知手段によるシート材の先端検知位置とし、他方を、前記第2の検知手段によるシート材の先端検知位置とした請求項1から6のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のシート給送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−96880(P2012−96880A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245287(P2010−245287)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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