説明

シート貼付装置および貼付方法

【課題】被着体に対して所定の貼付位置に正確に接着シートを貼付することができるシート貼付装置および貼付方法を提供すること。
【解決手段】押圧手段4における支持体41の凹部43に接着シートSを受け入れることで、支持体41に対する接着シートSの位置ずれを防止することができるとともに、凹部43でウェハWを受け入れつつ接着シートSを貼付することで、ウェハWに対する接着シートSの位置ずれも防止することができ、ウェハWの所定の貼付位置に正確に接着シートSを貼付することができる。さらに、押圧手段4の支持体41で接着シートSを押圧しながらウェハWに貼付する際に、凹部43の外周面45で接着シートSの伸びを拘束することで、接着シートSがウェハWからはみ出すことなく所定形状を維持したまま貼付することができ、貼付精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体に接着シートを貼付するシート貼付装置および貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、被着体としての半導体ウェハ(以下、単にウェハという場合がある)の表面にダイシングテープ等の接着シートを貼付するシート貼付装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このシート貼付装置は、円柱状のサクションローラ表面に保持した接着シートをウェハ表面に押圧しながら転動させ、接着シートにウェハを貼付させて一旦サクションローラで保持するとともに、リングフレームに対してサクションローラを転動させて接着シートをリングフレームに貼付し、この接着シートを介してウェハとリングフレームとを一体化するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−339607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシート貼付装置では、サクションローラを転動させて接着シートをウェハ表面に押圧しながら貼付するため、貼付開始位置をいくら正確に位置合せしても、接着シートが押圧力によって伸びてしまい、貼付が進むにつれてウェハの外縁からはみ出したり、ウェハからずれて貼付されてしまう等の不都合が生じる。特に、近年、ウェハ外径の大型化に伴って接着シートの面積が大きくなる傾向が顕著であり、微細な伸びが積算されることによって接着シート端部における積算伸び量が増大し、これによってウェハと接着シートとのずれが生じて貼付不良や塵の付着、搬送性の悪化、ウェハの破損など、様々な問題を招来してしまうこととなる。
【0005】
本発明の目的は、被着体に対して所定の貼付位置に正確に接着シートを貼付することができるシート貼付装置および貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のシート貼付装置は、基材シートの一方の面に接着剤層を有する接着シートが所定間隔を隔てて帯状の剥離シート上に仮着された原反を繰り出す繰出手段と、前記繰出手段で繰り出された原反の剥離シートから前記接着シートを剥離する剥離手段と、前記剥離手段で剥離された接着シートを前記基材シートの他方の面側から押圧して被着体に貼付する押圧手段とを備え、前記押圧手段には、前記基材シートの他方の面に当接可能な底面と、この底面から立ち上がって前記接着シートの外縁に当接可能な外周面と、を有した凹部が設けられ、この凹部の底面および外周面を当接させた前記接着シートを前記被着体に押圧して貼付可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
この際、本発明のシート貼付装置では、前記凹部の底面には、前記基材シートの他方の面を吸引して保持する保持手段が設けられていることが好ましい。
さらに、本発明のシート貼付装置は、前記凹部で前記接着シートを支持した前記押圧手段と、前記被着体とを相対移動させる移動手段を備えて構成されていることが好ましい。
また、本発明のシート貼付装置では、前記凹部の外周面は、前記接着シートの外縁と同形状かつ当該接着シートの厚みよりも大きな立ち上がり寸法を有して形成され、当該接着シートを支持した状態で前記接着剤層よりも当該外周面の開口側の位置には、前記被着体の外縁に当接して位置決め可能な位置決め手段が設けられていることが好ましい。
さらに、本発明のシート貼付装置では、前記接着シートの接着剤層は、前記基材シートの外縁に沿った所定幅を有した環状に形成され、前記凹部の底面は、前記外周面の基端部に沿って環状に設けられる高剛性領域と、この高剛性領域よりも内部側にて当該高剛性領域よりも剛性が低い低剛性領域とを有して構成されていることが好ましい。
【0008】
一方、本発明のシート貼付方法は、基材シートの一方の面に接着剤層を有する接着シートが所定間隔を隔てて帯状の剥離シート上に仮着された原反を繰り出し、繰り出した原反の剥離シートから前記接着シートを剥離し、剥離した接着シートを押圧手段の凹部に受け入れ、この凹部の底面を前記基材シートの他方の面に当接させるとともに、この底面から立ち上がる凹部の外周面を前記接着シートの外縁に当接させた状態で、当該接着シートを被着体に押圧して貼付することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のような本発明によれば、押圧手段の凹部に受け入れた状態の接着シートを被着体に押圧して貼付することで、接着シートが伸びようとしても、その外縁が凹部の外周面に当接することによって接着シートの伸びを拘束できることから、被着体の形状に応じて所定位置に接着シートを正確に貼付することができる。また、凹部で接着シートを受け入れることによって、貼付する際の接着シートの位置ずれを防止することもでき、これによって被着体への貼付位置をさらに正確に制御して貼付精度を高めることができる。
【0010】
この際、シート貼付装置において、凹部の底面に保持手段が設けられていれば、この保持手段で基材シートを吸引することによって、押圧手段で押圧するまでの間に接着シートがずれたり落下したりすることが防止でき、貼付位置の正確性を確保することができる。
さらに、凹部に接着シートを受け入れた状態の押圧手段と被着体とを移動手段で相対移動可能に構成すれば、剥離手段から離れた位置に被着体が支持されていても押圧手段または被着体を移動させて接着シートを貼付することができ、この移動の際にも凹部によって接着シートの移動を規制できることから、貼付位置のずれを防止することができる。
また、凹部の外周面開口側に位置決め手段が設けられていれば、この位置決め手段を被着体の外縁に当接させて位置決めすることで、凹部に受け入れた接着シートと被着体とを正確に位置決めした状態で貼付することができ、貼付精度をより一層向上させることができる。
さらに、接着シートの接着剤層が環状である場合に、この接着剤層に対応した環状の高剛性領域と、その内部側にて可撓性を有した低剛性領域とが凹部の底面に形成されていれば、高剛性領域によって接着剤層を強く被着体に押圧することができるとともに、低剛性領域が撓むことで被着体の内部側への押圧力を適宜に調節することができる。従って、例えば、被着体がその内部側(外縁部以外の部分)に電極等のバンプ(突起)を有したバンプウェハ等である場合であっても、そのバンプ部分への押圧力を適度に抑制することができ、被着体の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシート貼付装置の側面図。
【図2】図1のシート貼付装置の動作説明図。
【図3】図2に続くシート貼付装置の動作説明図。
【図4】他の動作説明図。
【図5】本発明の第2実施形態に係るシート貼付装置の部分拡大図。
【図6】本発明の変形例に係るシート貼付装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1において、本実施形態のシート貼付装置1は、帯状の剥離シートRLに仮着された接着シートSを剥離シートRLから剥離して被着体としてのウェハWに貼付するものである。ここで、接着シートSは、基材シートBSの一方の面(剥離シートRL側の面)に接着剤層ADを有するとともに、予め所定形状(例えば、円形状)に形成されて接着剤層ADが剥離シートRLに仮着された原反Rとして準備されている。接着剤層ADは、基材シートBSの外縁に沿った所定幅の円環状に形成されており、この接着剤層ADが設けられない接着シートSの内側の部分は、基材シートBSの一方の面が露出してウェハWに接着されないようになっている。また、ウェハWは、図4に示すように、その表面に複数の電極等が突出したバンプ(突起)WAを有するバンプウェハである。
【0014】
シート貼付装置1は、原反Rを繰り出す繰出手段2と、繰り出された原反Rの剥離シートRLから接着シートSを剥離する剥離手段としての剥離板3と、この剥離板3で剥離した接着シートSをウェハWに押圧して貼付する押圧手段4と、この押圧手段4の上方にてウェハWを下向きに支持するウェハ支持手段5と、押圧手段4をウェハWに対して図1中上下左右に移動させる移動手段6とを備えて構成されている。
【0015】
繰出手段2は、その全体がベースフレーム20に支持され、このベースフレーム20には、原反Rをロール状に巻回して支持する支持軸21と、原反Rを案内する複数のガイドローラ22,23と、駆動機器である回動モータ24によって駆動される駆動ローラ25と、駆動ローラ25との間に剥離シートRLを挟み込むピンチローラ26と、図示しない駆動機器によって剥離シートRLを回収する回収ローラ27とを備えて構成されている。
剥離板3は、ベースフレーム20によって図1中左方向に延びて支持され、ガイドローラ23から延びた剥離シートRLを駆動ローラ25に向かって折り返すことで、接着シートSを剥離シートRLから剥離するようになっている。
【0016】
押圧手段4は、図1の紙面直交方向に延びる軸に沿った全体略円筒状の支持体41と、この支持体41を軸回りに回転させる駆動機器である回動モータ42とを備え、回動モータ42を介して移動手段6に支持されている。支持体41には、その外周面から凹んだ凹部43が形成され、この凹部43は、平面に展開した形状が円形となり、ウェハWおよび接着シートSにほぼ隙間なく嵌り合う展開形状を有して形成されている。つまり、凹部43は、平面に展開した形状がウェハWおよび接着シートSの平面形状と同一の形状を有した底面44と、この底面44から立ち上がる外周面45とを有して形成されている。また、図4に示すように、支持体41の中空内部には、図示しない吸引手段に接続されたチャンバー部46が形成され、底面44に形成された保持手段としての複数の吸引口47を介して外気をチャンバー部46に吸引することで、接着シートSを凹部43で吸引保持できるように構成されている。
【0017】
さらに、凹部43の底面44は、金属、硬質樹脂、硬質ゴム等の剛性が大きな素材から構成されるとともに、支持した接着シートSの接着剤層AD領域に対向する高剛性部である環状の高剛性領域44Aと、高剛性領域44Aよりも剛性が小さな軟質樹脂、軟質ゴム等の弾性部材から構成されるとともに、支持した接着シートSの接着剤層ADに対向する領域以外の領域に対向する低剛性部である円形の低剛性領域44Bとを有して形成されている。このような底面44では、支持した接着シートSをウェハWに押圧して貼付する際に、高剛性領域44Aが接着剤層ADをウェハWの外縁部表面に強く押圧して確実に貼付できる、一方、低剛性領域44Bが変形することでウェハWがバンプWAを介して局部的な押圧力を受けて破損することが防止できるようになっている。
【0018】
また、凹部43の外周面45は、接着シートSの厚み(基材シートBSと接着剤層ADとを合わせた厚み)よりも大きな立ち上がり寸法を有し、支持した接着シートSの外縁に対向する対向面部45Aと、対向面部45Aよりも支持体41の径方向外側つまり支持した接着シートSの接着剤層ADよりも外周面45の開口側に位置する位置決め手段としての位置決め部45Bとを有して構成されている。対向面部45Aは、支持した接着シートSをウェハWに押圧して貼付する際に、伸びようとする接着シートSの外縁に当接することでその伸びを拘束し、接着シートSがウェハWの所定位置に貼付できるようにするシート拘束手段として機能するようになっている。また、位置決め部45Bは、ウェハWの外縁に当接することでウェハWと接着シートSとを位置決め可能に構成され、この位置決め部45BをウェハWの外縁に沿わせつつ支持体41を回転させることで、接着シートSがウェハWからはみ出さずに貼付できるようになっている。なお、本実施形態の場合、外周面45の立ち上がり寸法は、接着シートSとウェハWとを合わせた厚みよりも小さい寸法に設定されている。
【0019】
ウェハ支持手段5は、全体矩形板状で中空状のテーブル51と、この中空内部に接続される図示しない吸引手段とを有して構成され、テーブル51の下面側に位置する支持面52には、中空内部に通じる図示しない複数の吸引口が形成され、ウェハWを支持面52で吸引保持できるように構成されている。
移動手段6は、テーブル51よりも図1の紙面奥側にて支持面52に直交した上下方向に延びる駆動機器である直動モータ61と、この直動モータ61によってスライド駆動されるスライダ62(図2参照)とを備え、このスライダ62にシート支持手段4の回動モータ42が固定されている。さらに、移動手段6は、直動モータ61よりも図1の紙面奥側にて左右方向に延びる駆動機器である直動モータ63と、この直動モータ63によってスライド駆動されるスライダ64とを備え、このスライダ64に直動モータ61が固定されている。
【0020】
以上のシート貼付装置1でウェハWに接着シートSを貼付する手順としては、先ず、図1に示すように、移動手段6が直動モータ61および直動モータ63を駆動して剥離板3の先端位置近傍に支持体41を配置させる。また、押圧手段4は、回動モータ42を駆動して凹部43の第1端部43Aを真下に向けることで、この第1端部43Aで接着シートSの先端を受け入れ可能な初期状態とする。この初期状態から、繰出手段2で原反Rを繰り出すと、接着シートSの先端が第1端部43Aに当接し、この当接したことが図示しないセンサ等の検出手段によって検出されると、接着シートSの繰り出しと同期して(同じ速度で)回動モータ42によって支持体41を図1の時計回りに回転駆動する。そして、図2に示すように、剥離板3によって剥離シートRLから剥離される接着シートSを凹部43に受け入れつつ、底面44の吸引口47で基材シートBSを吸引して接着シートSを保持することで、繰出手段2から押圧手段4に接着シートSが受け渡される。この際、凹部43の対向面部45Aで接着シートSの外縁をガイドしつつ、押圧手段4が接着シートSを受け取ることで、接着シートSは凹部43からはみ出したり大きく離隔したりすることなく、凹部43にほぼ隙間なく嵌り合った状態で接着シートSが保持されるようになっている。
【0021】
(第1貼付手順)
次に、回動モータ42および直動モータ63を駆動して凹部43の中央(接着シートSの中央)がウェハ支持手段5の中央(ウェハWの中央)に対向するように支持体41を移動および回転させるとともに、移動手段6が直動モータ61を駆動して押圧手段4を上昇させる。そして、凹部43にウェハWを受け入れるとともに、接着剤層ADの一部をウェハWの中央部に線状に接触させ、接着剤層ADのウェハWへの押圧力を適宜に調節したら直動モータ61の駆動を停止してその位置を維持させるとともに、吸引口47による吸引保持も停止する。この貼付開始位置から接着剤層ADをウェハWに押圧した状態のまま、先ず、移動手段6が直動モータ63を駆動して押圧手段4を図3の右方向(一点鎖線の矢印で示す方向)に移動させるとともに、この移動に同期して(同じ速度で)押圧手段4が回動モータ42を駆動して支持体41を反時計回り(図3の一点鎖線の矢印で示す回転方向)に回転させ、この移動と回転を継続して凹部43の第1端部43AをウェハWの一方端(図3の右側端)まで到達させることにより、接着シートSの略半分の接着剤層ADをウェハWに貼付する。次に、直動モータ63を逆向きに駆動して押圧手段4を図3の実線の矢印で示す方向に移動させるとともに、この移動に同期して(同じ速度で)回動モータ42も逆回転して図3の実線の矢印で示す時計回りの回転方向に支持体41を回転させ、貼付開始位置まで押圧手段4を移動させる。これに続いて、さらに直動モータ63および回動モータ42の駆動を継続し、押圧手段4を図3の二点鎖線の矢印で示す方向に移動および回転させ、凹部43の第2端部43BをウェハWの他方端(図3の左側端)まで到達させることにより、接着シートSの残り半分の接着剤層ADをウェハWに貼付する。
【0022】
このような接着シートSの貼付に際し、凹部43の底面44のうち、高剛性領域44Aが接着剤層ADをウェハWの外縁部表面に強く押圧して貼付する。一方、低剛性領域44Bは、基材シートBSとウェハWのバンプWAとが当接した反力によって支持体41の内部側に変形し、このように低剛性領域44Bが変形することでバンプWAに強い押圧力が作用せず、当該バンプWAを介してウェハWが破損することを防止できるようになっている。以上のように接着シートS全体の接着剤層ADをウェハWに貼付したら、移動手段6および押圧手段4が直動モータ61,63および回動モータ42をそれぞれ駆動して支持体41を初期状態の位置に配置させて、次の接着シートSの受け入れ状態で待機する。また、ウェハ支持手段5は、接着シートSが貼付されたウェハWを図示しない搬送手段に受け渡し、次のウェハWを受け取って支持面52の所定位置に吸引保持して待機する。その後、上述と同様の手順を繰り返すことで複数のウェハWに順次接着シートSを貼付できるようになっている。
【0023】
(第2貼付手順)
なお、接着シートSの貼付手順としては、上述の第1貼付手順以外に、以下の第2貼付手順を採用してもよい。すなわち、接着シートSを支持した押圧手段4を移動手段6の直動モータ61で上昇させる際に、凹部43にウェハWを受け入れ可能でかつ接着剤層ADがウェハWに接触しない程度の高さまで押圧手段4を上昇させたら、一旦直動モータ61の駆動を停止する。この高さ位置において、先ず、移動手段6が直動モータ63を駆動して押圧手段4を左右いずれかの方向に移動させるとともに、この移動に同期して押圧手段4が回動モータ42を駆動して支持体41を回転させる。そして、例えば、図4に示すように押圧手段4をウェハWの右側端部まで移動させたら、回動モータ42で支持体41を反時計方向に回転させ、凹部43の第1端部43AをウェハWの端縁に当接させ、凹部43とウェハWとの位置合わせを実施する。その後、移動手段6の直動モータ61を駆動して接着剤層ADをウェハWに押圧してから、直動モータ63を駆動して押圧手段4を図の左方向に移動させるとともに、この移動に同期して(同じ速度で)回動モータ42駆動して支持体41を図の時計回りに回転させ、接着剤層ADを順次ウェハWに押圧して貼付し、凹部43の第2端部43BがウェハWの左側端部にくるまで押圧手段4の移動および回転を継続することにより、接着シートS全体の接着剤層ADをウェハWに貼付する。
【0024】
本実施形態によれば、次のような効果がある。
すなわち、押圧手段4における支持体41の凹部43に接着シートSを受け入れて支持することで、支持体41に対する接着シートSの位置ずれを防止することができるとともに、凹部43でウェハWを受け入れてガイドしつつウェハWに接着シートSを貼付することで、ウェハWに対する接着シートSの位置ずれも防止することができ、ウェハWの所定の貼付位置に正確に接着シートSを貼付することができる。さらに、移動手段6によって支持体41で接着シートSを押圧しながらウェハWに貼付する際に、凹部43の外周面45で接着シートSの伸びを拘束することで、接着シートSがウェハWからはみ出すことなく所定形状を維持したまま貼付することができ、貼付精度を向上させることができる。また、ウェハ支持手段5が下向きにウェハWを支持して、その下方からシート支持手段4を上昇させて接着シートSを貼付することで、ウェハWの表面に埃などが付きにくくできる。
また、第1貼付手順を採用することで、第2貼付手順に比べて接着シートSにおける貼付方向への積算伸び量を半分とすることができ、接着シートSが対向面部45Aによって拘束される積算拘束量が半分となり、ウェハWに貼付後の接着シートSにおける内部応力を半減することができる。これにより、例えば、接着シートSが貼付されたウェハWが数十μmにまで研削された場合、この接着シートSの内部応力によってウェハWがカールした(反り返った)状態となって、当該ウェハWが破損するような不都合を防止することができる。これはウェハWの大型化に伴って顕著化する不都合を効果的に解消することができる。
【0025】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るシート貼付装置1Aを図5に基づいて説明する。
本実施形態のシート貼付装置1Aにおいて、押圧手段4は、第1実施形態と同様の構成を備えるものの、剥離板3の先端近傍にて移動不能かつ回転可能に支持された支持体41を備える、一方、ウェハ支持手段5は、移動手段6Aによって図5中左右方向および上下方向に移動自在に支持されている。すなわち、移動手段6Aは、図5中左右方向に延びる駆動機器である直動モータ65と、この直動モータ65のスライダ66上に設けられてウェハ支持手段5のテーブル51を昇降させる駆動機器である直動モータ67とを有して構成されている。また、シート貼付装置1Aには、テーブル51の前方位置において剥離板3から突出した接着シートSの下方からエアを吹き付けて接着シートSの垂れ下がりを防止し、接着シートSの先端部を押圧手段4の凹部43に案内するアシスト手段7が設けられている。
【0026】
このようなシート貼付装置1Aにおける接着シートSの貼付手順としては、先ず、押圧手段4が凹部43の第1端部43Aを真下に向けた初期状態で待機する。この初期状態から、繰出手段2で原反Rを繰り出すと、剥離板3によって剥離シートRLから接着シートSが剥離され、剥離された接着シートSの先端がアシスト手段7でアシストされて当該接着シートSの先端が第1端部43Aに当接して吸引保持される。この吸着が図示しないセンサ等の検出手段によって検出されると、アシスト手段7のエア吹き出しと繰出手段2の原反Rの繰り出しが停止する。次いで、移動手段6AによってウェハWを上面に支持したテーブル51を移動させ、ウェハWの図中左端を第1端部43Aに当接させたら、その移動を停止することにより、凹部43とウェハWとの位置合わせが行われる。このとき、テーブル51は、ウェハWが凹部43に受け入れ可能でかつ接着剤層ADがウェハWに接触しない程度の高さとなるように、直動モータ67によってその高さ位置が設定されている。そして、直動モータ67を駆動してテーブル51を上昇させることで、接着シートSの先端の接着剤層ADをウェハWの外縁部に接触させ、接着剤層ADのウェハWへの押圧力を適宜に調節したら直動モータ67の駆動を停止してその位置を維持させるとともに、押圧手段4による接着シートSの吸引保持も停止する。
【0027】
次に、直動モータ65がテーブル51を図5中左方向への移動を開始させると同時に、回動モータ42,24(第1実施形態参照)によって支持体41を図5の時計回りに回転駆動させるとともに、原反Rを繰り出すことで、接着シートSを凹部43に受け入れ、外周面45によって接着シートSの伸びやずれを規制しつつ、底面44で基材シートBSの側から接着シートSを押圧して接着剤層ADをウェハWに貼付する。このとき、接着シートSにおける貼付後半領域が外周面45によって拘束されていないことによって、接着シートSにおける貼付方向の伸びを規制することができない場合、繰出手段2による接着シートSの繰出速度をテーブル51の搬送速度に比べて若干速くすることで解決することができる。このように接着シートSの繰出速度を速くした場合、接着シートSの繰出方向に直交する方向に当該接着シートSが伸びようとするが、外周面45が存在することで、この伸びも規制することができる。なお、接着シートSの繰出速度は、接着シートSの材質や雰囲気の温度等によって適宜オペレータが調整することができる。このようにして接着シートS全体をウェハWに貼付したら、ウェハ支持手段5は、接着シートSが貼付されたウェハWを図示しない搬送手段に受け渡し、移動手段6Aおよび押圧手段4は、直動モータ65,67および回動モータ42をそれぞれ駆動して支持体41を初期状態の位置に配置させて、次の接着シートSの受け入れ状態で待機する。その後、上述と同様の手順を繰り返すことで複数のウェハWに順次接着シートSを貼付できるようになっている。
【0028】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は前記記載で開示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され且つ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状などの詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は本発明に含まれるものである。
【0029】
例えば、前記実施形態では、被着体が半導体ウェハWである場合を示したが、被着体は半導体ウェハWに限定されるものではなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の部材も対象とすることができ、半導体ウェハとしては、シリコン半導体ウェハや化合物半導体ウェハ等が例示できる。さらに、ウェハは、前記実施形態のようなバンプウェハに限らず、バンプのない表面がフラットなウェハであってもよい。
また、接着シートSは、マウント用シートや、保護シート、ダイシングテープ、ダイボンディングテープなど、半導体ウェハに貼付される各種シートやテープ、フィルムであってもよいし、被着体が半導体ウェハ以外の部材である場合には、表面コーティング用のシートやフィルム、装飾用のシートなど、適宜な用途のシートが利用可能である。
さらに、縁環状の接着剤層ADの内側に接着剤層が設けられていてもよいし、接着剤層は縁環状に形成されたもの以外に、基材シートBSの一方の全面に積層されたものであってもよい。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
さらに、外周面45の立ち上がり寸法を接着シートSとウェハWとを合わせた厚みよりも大きい寸法に設定してもよく、この場合、支持体41の材質が凹む程度に押圧手段4を押圧したり、テーブル51の支持面52をウェハWの外縁からはみ出さない寸法に設定したりすればよい。
また、凹部43は、平面に展開した形状がウェハWおよび接着シートSの平面形状と完全に一致する形状でなく、部分的に一致する形状であってもよい。
【0030】
また、図6に示すように、平板状の支持体41Aを有し、その下面側に凹部43が形成された押圧手段4Aと、テーブル上面に支持面52を有したウェハ支持手段5Aとを備えたシート貼付装置1Bが利用できる。この場合には、剥離板3によって剥離される前の接着シートSの上方から支持体41Aを下降させて凹部43に接着シートSを受け入れ、底面44に設けられた図示しない吸引口で基材シートBSを吸引して接着シートSを保持する。そして、繰出手段2による接着シートSの繰り出しに同期して(同じ速度で)移動手段6が押圧手段4Aを図の左方向に移動させつつ、剥離板3で剥離シートRLから剥離された接着シートSを支持体41Aで支持する。次いで、移動手段6で押圧手段4Aを下降させ、ウェハ支持手段5Aに支持したウェハWの上面に接着シートSを押圧して接着シートSをウェハWに貼付するような貼付手順を採用することができる。
なお、シート貼付装置1Bにおいて、ウェハ支持手段5Aの支持面52をテーブル51の上面に設けたが、これに限らず、前記ウェハ支持手段5と同様にテーブル下面側にウェハWを支持する構成であってもよい。この場合には、押圧手段4Aが回転手段を備え、この回転手段で支持体41Aを回転させて接着シートSの接着剤層ADを上向きにしてから、移動手段6で押圧手段4Aを上昇させて接着シートSをウェハWの下方から押圧して貼付するように構成すればよい。
【符号の説明】
【0031】
1,1A,1B シート貼付装置
2 繰出手段
3 剥離板(剥離手段)
4,4A 押圧手段
6,6A 移動手段
43 凹部
44 底面
44A 高剛性領域
44B 低剛性領域
45 外周面
45B 位置決め部(位置決め手段)
47 吸引口(保持手段)
R 原反
RL 剥離シート
S 接着シート
BS 基材シート
AD 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に接着剤層を有する接着シートが所定間隔を隔てて帯状の剥離シート上に仮着された原反を繰り出す繰出手段と、
前記繰出手段で繰り出された原反の剥離シートから前記接着シートを剥離する剥離手段と、
前記剥離手段で剥離された接着シートを前記基材シートの他方の面側から押圧して被着体に貼付する押圧手段とを備え、
前記押圧手段には、前記基材シートの他方の面に当接可能な底面と、この底面から立ち上がって前記接着シートの外縁に当接可能な外周面と、を有した凹部が設けられ、この凹部の底面および外周面を当接させた前記接着シートを前記被着体に押圧して貼付可能に構成されていることを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記凹部の底面には、前記基材シートの他方の面を吸引して保持する保持手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシート貼付装置。
【請求項3】
前記凹部で前記接着シートを支持した前記押圧手段と、前記被着体とを相対移動させる移動手段を備えて構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート貼付装置。
【請求項4】
前記凹部の外周面は、前記接着シートの外縁と同形状かつ当該接着シートの厚みよりも大きな立ち上がり寸法を有して形成され、当該接着シートを支持した状態で前記接着剤層よりも当該外周面の開口側の位置には、前記被着体の外縁に当接して位置決め可能な位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシート貼付装置。
【請求項5】
前記接着シートの接着剤層は、前記基材シートの外縁に沿った所定幅を有した環状に形成され、
前記凹部の底面は、前記外周面の基端部に沿って環状に設けられる高剛性領域と、この高剛性領域よりも内部側にて当該高剛性領域よりも剛性が低い低剛性領域とを有して構成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載のシート貼付装置。
【請求項6】
基材シートの一方の面に接着剤層を有する接着シートが所定間隔を隔てて帯状の剥離シート上に仮着された原反を繰り出し、
繰り出した原反の剥離シートから前記接着シートを剥離し、
剥離した接着シートを押圧手段の凹部に受け入れ、この凹部の底面を前記基材シートの他方の面に当接させるとともに、この底面から立ち上がる凹部の外周面を前記接着シートの外縁に当接させた状態で、当該接着シートを被着体に押圧して貼付することを特徴とするシート貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−74476(P2012−74476A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217279(P2010−217279)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】