説明

シード成長によるバルク単結晶の製造方法

本発明は、アルカリ金属イオンを含む超臨界アンモニア含有溶媒中のガリウム含有フィードストックの溶解により作られる超臨界アンモニア含有溶液から、結晶化温度及び/又は圧力下で、より小さいエレメンタリーシードの上でガリウム含有窒化物を選択的に結晶化して、より大きい面積のガリウム含有窒化物の基板を得る方法に関し、2以上のエレメンタリーシードを備える工程と、2以上の離れたシードの上で選択的な結晶化を行い、組み合わせた、より大きい合成シードを得る工程とを含む。組み合わせた、より大きな合成シードは、新しい成長工程のシードに用い、そして、ガリウム含有窒化物の単結晶のより大きな基板を得るために用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの細長いシード(または、種結晶、seed)または2以上の細長いシードの上に、シード成長により、より大きなバルク単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガリウム含有窒化物を含むXIII属元素(IUPAC,1989)は、オプトエレクトロニクス産業にとって有益な材料である。
【0003】
バルク単結晶GaNは、エネルギーギャップがレーザーダイオード(LD)および青色光を発する発光ダイオード(LED)を作るのに用いることができるGaNのエピタキシャル層を堆積(または、蒸着、deposition)するための最適な基板だと考えられている。エピタキシー基板として用いるための条件は、単結晶の優れた結晶品質と低い表面の転位密度である。
【0004】
世界中の多くの産業および化学研究部門において実施されている研究により、生産者は、適切な品質の材料を製造できることに年々近づきつつあることを示す情報にもかかわらず、適切な技術的パラメータを有するガリウム含有窒化物についての産業界の需要は、果たされないままである。
【0005】
国際公開公報第WO 02/101120号には、窒素を含有する超臨界溶媒、好ましくはアンモニアを含んだ溶媒から、シードの上に結晶化させる方法により、ガリウム含有窒化物のバルクを製造する方法が開示されている。この方法は、品質パラメータがHVPE、MOCVDまたはMBEのような気相蒸着法で得られる、工業的に使用されている基板の品質パラメータよりもより高く、また、これらの基板よりもより低い表面転位密度を有するガリウム含有窒化物のバルクを得ることができる。国際公開公報第WO 02/101120号により既知となった方法により得られた単結晶は、体積(volume)の大幅な増加をもたらした。窒素含有溶液からの結晶化工程の平衡特性のために、当業者の世界中の多くの部門で使用されている材料と比べ、従って、非常に高品質で形成された単結晶を得ることができる。国際公開公報第WO 02/101120号により既知となった技術の主たる利点は、窒素含有溶媒に基づく超臨界溶液からのガリウム含有窒化物の再結晶処理が行われる、好ましい、圧力と温度の範囲である。
【0006】
非常に高い品質と、より低い表面転位密度を有する窒化ガリウムを得ることができるHNPのような、ガリウム含有窒化物合成の他の方法も、また、知られている。残念なことに、得られた結晶の不十分な大きさ、および、一様でない形状のために、得られた結晶は、いまのところ、LED、LD、および、他の半導体構造の工業製品に適したエピタキシー基板用の材料として、適さない。また、成長のパラメータ、および、とりわけ、非常に高い圧力が必要なことは、この方法により、工業的なスケールで必要な大きさの結晶が得られる可能性の制約となっている。
【0007】
しかしながら、この問題に関する文献には、窒素雰囲気中でガリウムの溶融液からガリウム含有窒化物が成長するフラックス法(flux method)を用いて、有望な結果が得られたことが開示されている。この方法の工業的な魅力は、比較的低い温度と低い圧力を使用することである。
【0008】
国際公開公報第WO 02/101120号に開示された、この方法の更なる研究開発の過程では、この方法の実際上の使用の制約に影響する多くの因子が特定されている。開発の技術上の障害は徐々に克服されている。
【0009】
研究の1つの傾向は、ガリウム含有単結晶の生産のためのシードの提供についてである。研究の目的は、品質パラメータを満足し、より大きなサイズを有するシードを得ることである。
【0010】
研究で、いままでのところ使用したシードは、ガリウム含有窒化物が、ヘテロ基板上、特にサファイア上にガス相から堆積されるHVPE法により得られ、基板の上に単結晶が一様成長(homogeneous growth)する条件は、与えられていないことが記載されている。ヘテロ基板の格子定数と、得られたガリウム含有窒化物の単結晶層の格子定数との差に起因し、ならびに、両方の材料の熱膨張率の差に起因して、HVPEにより得られたガリウム含有窒化物、好ましくは、窒化ガリウムは、乱れた結晶構造(disrupted crystal structure)を有し、この結果、とりわけ、得られたガリウム含有窒化物層の結晶格子は小さい曲率半径を有する。超臨界アンモニアを含む溶液からガリウム含有窒化物が再結晶する工程での、この単結晶のシードとしての使用は、シードの成長と同じ方向に成長した、該シードの上に堆積したガリウム含有窒化物層のバルクの結晶欠陥および表面転位の増加をもたらした。
【0011】
国際公開公報第WO 03/035945号は、横方向成長(または、側面成長、lateral growth)、すなわち、シードの成長方向に対して垂直な軸方向へ成長し易い表面を有するELOG構造でシードを覆うことによってもたらされる利点を示している。結晶欠陥および表面転位のランダムな分布のために、ELOG構造で覆われたシードは、HVPE法により作られた1次基板(primary substrate)から、窒素含有溶液の超臨界溶液から堆積したガリウム含有窒化物の単結晶層への結晶欠陥の伝播(propagation)を、満足のいく程度に排除することができない。互いに近傍に置かれた横方向成長し易い表面は、一次基板上に直接成長したストリップ(strip)により離される。シードへの、複数、または、代替のELOG構造の堆積は、コストの問題から考慮できないこと、例えコストを無視しても、ELOG構造上に得られた結晶の表面転位密度は少なくとも略10/cmであることを理解すべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
結晶を得る技術では、結晶成長がより早い結晶格子の方向があり、またしかし、結晶成長がより遅い他の方向もある。従って、我々はそれらを低成長(または、緩成長、slow-growing)および急成長(fast-growing)方向(および面)と呼ぶ。その方向は、結晶および成長に選択した方法に依存する。これらの方向は、得られた結晶構造の解析を基に一義的に定義可能である。
【0013】
シードを用いる方法により、バルク単結晶を得るこれまでの方法は、急成長面の消失現象が大きなサイズの単結晶を得る可能性を制限する決定的な因子であった。この現象は、また、HNP法に従った方法でも、大きなサイズの単結晶を得る可能性を制限し得る。既知の技術にかかる長時間の結晶化処理では、低成長の面の成長のみが使用可能であって、それは、この方法(または工程、process)の経済性に悪影響を与えていた。
【0014】
通常、シード成長によりバルク窒化物の単結晶を得る場合、発明者らの研究によれば、ガリウム含有窒化物の結晶成長の過程で、M面(M-face)である低成長面により制限される結晶が形成される場合、A面(A-face)である急成長面は最終的に消滅するまでその表面積が減少する(結晶のこの方向への急成長に起因する)ことを見出した。このように、その形状の変化と関連する、結晶の急成長が終了する。更なる結晶の成長工程では、結晶はその形状を保持し、成長は低成長の工程となる。このため、好ましい工程である急成長は、その時間が限られており、さらに、方向によって結晶の成長速度が異なることから、得られる結晶の形状と大きさに関して、制限を受ける。
【0015】
従って、本発明の第1の目的は、低成長方向および急成長方向が存在することにより生じるサイズと形状の制限を克服できる、シード成長によるバルク単結晶の製造方法を提供することであり、従って、大きい単結晶、とりわけ、既知の方法では充分な大きさのシードを得ることができない物質の大きい単結晶を得ることである。
【0016】
本発明の第2の目的は、大きさサイズの単結晶を得ると同時に、シードと比較して表面転位密度を低減することが可能な、シード成長によるガリウム含有窒化物単結晶のバルクの製造方法を提供することである。
【0017】
大きなサイズの単結晶を得ることができるシード成長による単結晶バルクの製造方法に用いるシードを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つの観点では、アルカリ金属イオンを伴う、超臨界アンモニアを含有する溶媒によりガリウム含有フィードストック(feedstock)を溶解して作られたアンモニア含有溶液から、結晶化温度及び/又は結晶化圧力下で、より小さいシード上にガリウム含有窒化物を選択的に結晶化させることにより、大きな面積の単結晶ガリウム含有窒化物基板を製造する方法であって、2以上のエレメンタリーシード(または、基礎シード、elementary seed)を用意する工程と、2以上の離れたシード上に選択的に結晶化を行い、組み合わせた(merged)、より大きな合成シードを得る工程と、を含む製造方法を提供可能である。
【0019】
この方法では、本発明の他の要旨に従い、組み合わせた、より大きな合成シードは新しい成長工程のシードとして用い、そして、ガリウム含有窒化物の単結晶のより大きな基板を得る。
【0020】
より一般的に、本発明に従い、シード成長により単結晶を得る工程では、2以上のエレメンタリーシードが用いられ、工程の初期段階でそれらエレメンタリーシードの少なくとも2つが、縦方向成長(straight growth)または横方向成長により組み合わさり、従って、(より大きな)合成シードを形成し、その上に単結晶の成長が起こる。
【0021】
この方法において、好ましくは、該エレメンタリーシードは、急成長の成長面を有し、低成長結晶面に対し明らかに傾斜した(tilted off)組み合わせ面(または、併合面、merging face)を有している。
【0022】
本発明の方法の好ましい変形では、方法の初期段階(すなわち、組み合わせ段階)では、縦方向成長は制限され、横方向成長による組み合わせが起こる。
【0023】
本発明の方法では、該合成シードを形成した後、この得られた合成シード上で横方向成長を行うことができる。
【0024】
他の態様では、本発明の方法では、該合成シードを形成した後、この得られた合成シード上で縦方向成長を行うことができる。
【0025】
さらに、本発明は、該合成シードを形成した後、この得られた合成シード上で自由成長(free growth)を行うことができる。
【0026】
好ましくは、エレメンタリーシードは、その成長面が部分的に重なり合い、接合面(surface of join)が重なり合った部分に位置するように配置される。
【0027】
本発明の方法では、エレメンタリーシードは、好ましくは、ホルダー内に置かれ、正確な互いの配置を確保する。
【0028】
さらに、ホルダーは、エレメンタリーシードの組み合わせた平面の互いの間の望ましい方向を確実にし得る。
【0029】
本発明のとりわけ好ましい実施形態では、エレメンタリーシードはホルダーに配置され、これによりシードの選択した面を覆う、及び/又は、露出することが可能となり、これらの面の成長が本質的に不能/可能となる。
【0030】
本発明は、また、本発明の方法に使用されるホルダーも含む。
【0031】
好ましくは、本発明の方法で、ガリウム含有窒化物単結晶、好ましくは、窒化ガリウム単結晶が得られる。
【0032】
本発明では、前記単結晶は、超臨界アンモニアを含有する溶液より成長させることが可能である。
【0033】
他の態様では、前記単結晶は、溶融液から結晶化(フラックス(Flux)法)により成長させることができる。
【0034】
本発明の方法によりガリウム含有窒化物の単結晶が得られる場合、次いでc結晶軸に平行な方向に成長したエレメンタリーシードを用いてもよい。
【0035】
他の態様では、c結晶軸に垂直な方向に成長し、急成長する成長面を有するエレメンタリーシードを用いてもよい。
【0036】
これらのエレメンタリーシードは、急成長する成長面を有し、そして、これらの成長面の間の角度が180°に等しく、一方、接合面と少なくとの1つの成長面の角度は30°〜90°、好ましくは、45°または60°になるように配置してもよい。
【0037】
好ましくは、エレメンタリーシードは、適切に形成された成長面及び/又は組み合わせ面を備えた多面体である。
【0038】
好ましくは、エレメンタリーシードは、平坦なプレート(ウエハー)の形態を有し、1つの面上に位置している。
【0039】
エレメンタリーシードの成長面及び/又は組み合わせ面は、研磨することが可能である。
【0040】
本発明では、エレメンタリーシードは、低成長する成長面を有し、そして、これらの成長面間の角度が120°に等しく、一方、接合面と少なくとの1つの成長面の角度は0°〜60°、好ましくは、15°、30°または45°になるように配置してもよい。
【0041】
好ましくは、エレメンタリーシードは、適切に形成された成長面及び/又は組み合わせ面を備えた多面体である。
【0042】
好ましくは、エレメンタリーシードは、平坦なプレート(ウエハー)の形態を有し、1つの面上に位置している。
【0043】
該エレメンタリーシードの成長面及び/又は組み合わせ面は、研磨することが可能である。
【0044】
本発明は、また、本発明の方法により得られた単結晶を含む。
【0045】
好ましくは、本発明の方法により得られた単結晶は、最も長い部分の寸法が、少なくとも2.5cm(1インチ)、好ましくは、少なくとも5cm(2インチ)、最も好ましくは10cm(4インチ)である。
【0046】
より好ましくは、さらに、同じ単結晶が、上述の最も長い寸法の方向に垂直な少なくとも1つの方向に沿った、少なくとも2.5cm(1インチ)、好ましくは少なくとも5cm(2インチ)、最も好ましくは少なくとも10cm(4インチ)の直線寸法を有する。
【0047】
好ましくは、本発明の方法により得られた単結晶は、(0002)面からのX線ロッキングカーブ(CuのKα1ラインを用いて)の半値幅(FWHM)の値が60arcsec未満、好ましくは約20arcsecである。
【0048】
好ましくは、本発明の方法で得られた単結晶は、大きな結晶格子の曲率半径を有し、好ましくは15mより大きく、より好ましくは30mより大きく、最も好ましくは約70mである。
【0049】
好ましくは、本発明の方法で得られた単結晶は、10/cm未満、好ましくは10/cm以下の転位密度を有する。
【0050】
最も好ましい場合、本発明の方法により得られた単結晶は、上述した全ての好ましいパラメータ、即ち、サイズ、半値幅、結晶格子の曲率半径および表面転位密度を同時に有する。
【0051】
本発明の方法により得られた単結晶に、ドナー型及び/又はアクセプタ型及び/又は磁気型ドーパントを1017/cm〜1021/cmの濃度でドープし、n型、p型または補償型(半絶縁性)材料を含んでもよい。
【0052】
本発明は、また、本発明の方法により得られた単結晶より切り出された、または、形成された極性または無極性ウエハーに関する。
【0053】
ウエハーの領域は、好ましくは、接合面を含まない。
【0054】
さらに、本発明は、このようなウエハーを単結晶より切り出す方法も含み、該ウエハーは、好ましくは、接合面を含まない。
【0055】
本発明は、また、前記単結晶または前記ウエハーの全部または一部を、横方向成長、縦方向成長または自由成長のためのシードとして使用することに関する。
【0056】
本発明によれば、前記単結晶または前記ウエハーの全部または一部を、エピタキシー基板として用いてもよい。
【0057】
本発明は、同様に、前記単結晶から切り出した極性または非極性基板を含む。
【0058】
好ましくは、基板の領域は、接合面を含まない。
【0059】
本発明は、また、基板上に堆積した半導体構造に関する。
【0060】
本発明にかかるシード上の成長を通した単結晶のバルクの製造方法において、それぞれのエレメンタリーシードで別々に得ることができるよりも大きいサイズの単結晶のバルクを得ることができる。
【0061】
本発明では、シードのホルダーは、隣接するシードの互いの方向を安定させ、同時に、シード上での成長を進行させる環境へのアクセスをシードの成長面および組み合わせ面に提供でき、さらに、シード上での縦方向成長、横方向成長および自由成長を可能にする。窒化ガリウムの場合、上述の環境は、好ましくは、可溶状態(または、溶けた状態のsoluble form)のガリウムを含む超臨界アンモニア含有溶液である。
【0062】
更に、結晶品質の改善は、シードの選択した表面の結晶成長を抑制/不能化(不可能にする)することで達成できる。成長は、例えば適切なシードホルダーを用いることにより抑制できる。このようなホルダーの断面を、概略的に図2と図7に示す。もし、シード72が、シードを形成する間に欠陥が本質的に、シードの上面および下面に垂直な線に沿って伝播するように得られたのであれば、シードのこれら表面での結晶の成長は、ホルダー71によりこれら表面を覆うことにより不能化されるべきである(ここで「上」および「下」は、図2および図7でのシードの位置および方向を意味する。)。しかしながら、本質的に無欠陥である、シードの側面での結晶成長は可能である。このような結晶は、ギャップ73を介して、シードが成長した方向と本質的に垂直な方向に成長する。この結晶成長の方向の変化およびシードの欠陥の多い表面での成長が不可能であることによって、得られた結晶の表面転位密度は、シードの表面転位密度と比べ、顕著に減少している。さらに、このような結晶は極めて好ましい結晶格子のパラメータを有する((0002)面からのX線のロッキングカーブ(CuのKα1ラインを用いて)の半値幅の値が60arcsec未満であり、好ましくは約20arcsecである。結晶格子の曲率半径は大きく、好ましくは、15mより大きく、より好ましくは、30mより大きく、最も好ましくは、約70mである)。
【0063】
シードの適切な形状および適切な空間配置のお陰で、本発明では、基本的な目的、すなわち、大きいサイズの単結晶を得ることを実現できる。
【0064】
本発明は、用いたシードよりも数倍大きなサイズの単結晶を得ることができ、得られた結晶を切断する方法を規定するとともに、適切な成長方向を用いることは、非常に高品質の結晶及び/又はウエハーを得ることを可能にする。
【0065】
シードの結晶格子の整合した空間方向が与えられると、所望の直線寸法(linear size)を得ることができ、隣接するシードのよく発達した接合面を得ることができ、同時に適切な、シードの成長方向の選択の結果として、合成シードの急成長面の使用により、図24(a)、および、図24(b)に示すように、オプトエレクトリック産業界が要求する基準を満たす大きさと品質パラメータを備えたエピタキシー基板およびウエハーを得ることができることが明らかになった。
【0066】
ウエハーが、3インチ以上の長さを有する合成シード上で成長する場合、その結果である大きく成長した結晶を得るとともに、生成したウエハーから1または2インチの多くの基板を得ることができる。さらに、生成した結晶が厚さ500ミクロンに達する場合、1回の成長工程で多くの基板を作ることができる。
【0067】
エレメンタリーシードの互いの方向を合わせるためにホルダーを用いることは、エレメンタリーシードから結晶欠陥が拡がるのを最小限にする方向への成長を選択的に実施することを可能にする。
【0068】
本発明では、ガリウム含有窒化物は大きなサイズと一定の形状を有すると同時に、オプトエレクトロニクス業界の技術的要求に適応する完全な結晶品質を有する。
【0069】
本発明のとりわけ好ましい実施形態では、ガリウム含有窒化物結晶は、更に、電気伝導度の仮定パラメータ(assumed parameter)を有する。本発明のガリウム含有窒化物から作られたエピタキシー基板のこの特性は、レーザー構造の変化を可能にし、エピタキシー基板の単位面積あたりの得ることができるこのような構造の数を増やすであろう。
【0070】
コストに関して、主に、所望の大きな結晶を得るのに要する時間の明らかな減少に起因して、本発明にかかる解決手段は、非常に好ましいものであることを、また、示しておくべきである。
【0071】
添付の図面と関連する以下に示す明細書の内容、および、特許請求の範囲から明らかになる本発明により前述の内容および目的は達成される。しかしながら、図面は説明のみを目的とし、発明の範囲を限定すること意図したものではないことを明確に理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
[用語の定義]
本発明に関する明細書および特許請求の範囲に亘って、用いられているいかなる技術用語も、以下に示す定義(アルファベット順)に従って、解釈されなければならない。
【0073】
オートクレーブとは、その形態にかかわらず、上述の温度および圧力範囲で、液相からの結晶化が行われる閉鎖系反応室(closed reaction chamber)をいう。本発明にかかる方法により超臨界アンモニアを含む溶液から結晶化するように、図21に概略的に示す装置を用いるのが好ましい。この装置の詳細は、本明細書でさらに示す。
【0074】
超臨界溶液におけるガリウム含有窒化物の化学輸送(chemical transport)とは、臨界溶液へのガリウム含有フィードストックの溶解、臨界溶液中のガリウム錯体化合物の循環、および、過飽和超臨界溶液からのガリウム含有窒化物の結晶化を含む連続工程を意味する。概して、化学輸送は、溶解したフィードストックと結晶化生成物との間の、温度差、圧力差、濃度差、または、他の化学的もしくは物理的差により生ずる。本発明にかかる単結晶ガリウム含有窒化物のバルクは、溶解ゾーン(または、溶解領域)と結晶化ゾーン(または、結晶化領域)との2つのゾーン(領域)の間の温度差により生じる、オートクレーブの溶解ゾーンと結晶化ゾーンとの間の化学輸送の効果により得てもよい。ところで、結晶化ゾーンの温度は、溶解ゾーンより高くなければならない。
【0075】
本明細書における対流工程(convection process)とは、フィードストックとシードとの間の輸送が本質的に対流により進む結晶成長の工程を意味する。
【0076】
溶融液からの結晶化とは、フラックス法による結晶化を意味する。
【0077】
結晶方位(または、結晶学的方位)c、aまたはmは、以下のミラー指数を有する、六方格子のc、aまたはm方向を意味する:

【0078】
結晶面(または、結晶学的面)C、Aまたは、Mは、以下のミラー指数を有する、六方格子のC面、A面またはM面の表面を意味する:

これら表面は、対応する結晶方位(c、aおよびm)に対して垂直である。
【0079】
本明細書における拡散工程とは、フィードストックとシードの間の輸送が本質的に拡散により進む結晶成長工程を意味する。
【0080】
シードの成長の方向とは、本発明にかかる方法で用いられたエレメンタリーシード(シード)が作られた結晶の成長方向である。この方向はシードを作製するのに用いた方法により決まる。同時に、この方向は、シード内を転位が伝播する主たる方向である。例えば、HVPE法で得たGaNウエハーは、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化によるGaN成長工程のシードとして用いることが可能である、HVPE法では、ウエハーは本質的には窒化ガリウム結晶格子のc方向に成長する。従って、この場合c方向がシードの成長方向である。
【0081】
ガリウム含有フィードストックの溶解とは、該フィードストックの外側に、例えばガリウム錯体化合物のような超臨界溶媒に溶解可能なガリウム化合物を形成する可逆または不可逆工程を意味する。ガリウム錯体化合物とは、NH分子、または、NH、NH2−等のNHの誘導体のような、配位子が、ガリウムを配位中心として取り囲む錯体化合物を意味する。
【0082】
ELOG (Epitaxial Lateral Overgrowth)とは、気相から、または、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶成長方法であり、結晶は特定の基板の上に成長する。窒化ガリウム結晶の場合、横方向成長をし易い表面を有する、マトリクスの平行なリッジ(または、平行な嶺、parallel ridge)(高さ、数ミクロンおよび幅数ミクロン)が基板の表面に形成される。通常、窒化ガリウム結晶は、c方向に成長する。そしてリッジは、m方向およびA面と重なって横方向成長し易い表面に沿って形成される。この場合、横方向成長は、数ミクロン、または数十ミクロンに制限され、成長した結晶によりリッジ同士の間が覆われると終了する。次いで、バルク結晶の主たる成長がc方向に沿って進む。これにより、基板に存在する転位のいくらかは、生成した結晶に進入するのを阻まれる。
【0083】
急成長結晶面と低成長結晶面および急成長方向と低成長方向:
所定の方法による所定の結晶の成長過程で、いくつかの結晶格子の方向に沿った成長が他の方向に沿った成長より早いのが観察された場合、急成長と低成長が区別される。当然ながら、急成長方向は、成長が、より早く進む方向に沿った方向であり、低成長方向は、成長がよりゆっくり進む方向である。これに応じて、急成長方向に垂直な結晶面(および、これら面を含む結晶表面)は、急成長面(急成長表面)と呼ばれ、一方、低成長方向に垂直な結晶面(および、これら面を含む結晶表面)は低成長面(低成長表面)と呼ばれる。これらの方向は、選択した成長方法に加え、成長した結晶(結晶化した基板およびその結晶構造)に依存する。アルカリ金属のミネラライザーを含む超臨界アンモニア含有溶液内のシード上のガリウム含有窒化物の成長では、急成長結晶面はA面(A-plane)であり、低成長結晶面はM面(M-plane)であることが見出されている。
【0084】
フラックスとは、フラックス法で反応環境に加えられる物質を意味し、この物質は、工程全体を通して、液相中での反応を維持するのを助ける。
【0085】
窒化ガリウムを得るためのフラックス法とは、アジドが、金属の混合液(溶融液)と窒素含有ガス(とりわけ、窒素ガス、または、窒素とアンモニアの混合物)との間の化学反応の結果得られる、方法のグループを意味する。溶融液は、とりわけガリウムとフラックス(または、溶剤、flux)とを含む。当然ながら、この工程は、適正な温度および圧力の条件において進む。よく知られたフラックスであるナトリウムの場合、一般的な、工程温度は、約600℃〜800℃であり、一般的な圧力は約5MPaである。
【0086】
自由成長は、可能な全ての方向への結晶の成長を意味し、ほとんどの場合、縦方向成長と横方向成長の組合せである。
【0087】
ガリウム含有フィードストックとは、ガリウム含有窒化物、または、その前駆体である。フィードストックとして、GaNは、各種方法、とりわけ、フラックス法、HNP法、HVPE法、または、多結晶GaNを用いて得てもよい。
【0088】
ガリウム含有窒化物とは、その構造に少なくとも1つのガリウム原子と、少なくとも1つの窒素原子とを含む化合物である。ガリウム含有窒化物は、これらに制限されものではない、2元化合物−GaN、3元化合物−AlGaN、InGaN、または、4元化合物−AlInGaNを含み、好ましくは、少なくともドーパント量よりも多い、かなりの割合でGaを含む。この化合物のガリウムに対する他の元素の組成は、アンモノ塩基性(ammonobasic)の結晶化技術の特性が維持される限り、変えてもよい。
【0089】
XIII属元素末端側、Ga末端側、N末端側:
ウルツ鉱型構造を有する結晶では、cで表される、結晶のC対称軸に平行な結晶方位(結晶軸)を識別することが可能である。ウルツ鉱型構造を有するXIII属元素の窒化物では、c軸に垂直な結晶面(C面)は互いに等価ではない。これらを、それぞれ、XIII属元素末端側(XIII element terminated side)および窒素末端側、または、XIII属元素極性(polarity)を有する面および窒素極性を有する面と呼ぶ傾向がある。特に、単結晶窒化ガリウムでは、ガリウム末端側(Ga−side)と、窒素末端側(N−side)とを区別することができる。これらの末端側は、異なる化学特性と物理特性(例えば、エッチングのし易さ、または、耐熱性)を有する。気相によるエピタキシー法では、層がXIII属元素末端側上に堆積される。急成長に起因して、急成長面が消滅し、低成長面による結晶粒界を形成する。そして結晶はゆっくり成長し、その形状を維持する。従って、急成長方向および低成長面は得られた結晶、とりわけ自発的に形成した結晶の観察により決定できる。
【0090】
成長面、組み合わせ面、および、接合面:
本発明では、少なくとも2つのエレメンタリーシードが互いに近接して配置され、工程の最初の段階で、結晶層は、これらシ−ド上で結晶面が接触し、そして、これらのシードが1つの(より大きい)合成シードに組み合わされるまで成長する。この工程で、結晶層は、従って、得られた合成シード上で成長する。工程の初期段階で接触する、エレメンタリーシードの面は、組み合わせ面と呼ばれている。組み合わせ面同士が接触する面は接合面と呼ばれている。結晶層の成長が組み合わせに依存せずに進行する、エレメンタリーシードの面は、成長面と呼ばれている。これらの定義は図22に示す。この図は、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化による窒化ガリウムの成長に用いる、HVPE法により得られる窒化ガリウムよりなる細長型(slender-type)のエレメンタリーシードを示している。
【0091】
HVPE(ハロゲン化物気相成長)(halide vapor phase epitaxy)法はとは、気相からエピタキシャル層を堆積する方法を意味し、(窒化物の場合)金属のハロゲン化物およびアンモニアが基板として用いられる。
【0092】
本明細書中の横方向成長とは、シードの元来の成長方向に対して垂直な方向への、シード上のバルク成長を意味する。横方向成長では、横方向に成長した結晶は本質的にシードから転位を「継承」していないという特徴がある。ELOG(Epitaxial Lateral Overgrowth)と対照的に、横方向成長は明らかに巨視的(シードの寸法のオーダー、または、より大きいオーダー)である。さらに、横方向成長した結晶のシードの元来の成長方向に平行な方向の突起は、用いたシードの突起を上回る。ELOG(Epitaxial Lateral Overgrowth)の場合は、これら2つの突起は、本質的に同一である。
【0093】
MBE(分子線エピタキシー)法とは、いわゆる「分子線(molecular beam)」からの分子を基板上に堆積することにより、原子レベルの厚さのエピタキシャル層を得る方法を意味する。
【0094】
本発明における溶融液とは、溶融した金属の混合物を意味する。
【0095】
本明細書における液相からの結晶化方法とは、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化方法、または、フラックス法を意味する。
【0096】
ミネラライザーとは、超臨界アンモニア含有溶液に1以上のI属元素(アルカリ金属)のイオンを供給する物質であり、フィードストックの溶解を助力する。
【0097】
MOCVD(有機金属化学気相成長)法は、気相からエピタキシャル層を堆積する方法を意味し、(窒化ガリウムの場合)アンモニアとガリウムの有機金属化合物が基板として用いられる。
【0098】
極性(polar)または非極性(non polar)結晶表面:
ウルツ鉱型構造のXIII属元素の窒化物で、結晶のc軸に平行な結晶面(および、これらの面を含む結晶表面)を非極性表面といい、一方、結晶のc軸に垂直な結晶面(および、これらの面を含む結晶表面)を極性表面という。
【0099】
極性または非極性のさらに処理可能(further-processable)な表面とは、上に少なくとも1つのオプトエレクトロニクスデバイスを形成可能な、窒化物層のエピタキシャル堆積(epitaxial deposition)に適した表面を意味する。このような表面は、MOCVD法、MBE法、または、他の窒化物層のエピタキシャル堆積法により、エピタキシーに充分なサイズを有するべきであり、好ましくは、10mmより大きく、最も好ましくは、100mmより大きい。
【0100】
ガリウム含有窒化物の前駆体(precursor)とは、少なくともガリウムを含み、選択的にI属(アルカリ金属)の元素、II属(アルカリ土類金属)の元素、III属(属の番号はIUPAC1989による)の元素、窒素、及び/又は、水素を含む物質または混合物であり、とりわけ、元素の形態、または、金属間化合物、水素化物、アミド、イミド、アミドイミドおよびアジドのような化合物の形態であり、超臨界アンモニア含有溶媒に可溶なガリウム化合物を形成しうる。
【0101】
シード:過程の初期段階で組み合わせる小さい結晶を、本明細書では、エレメンタリーシード、または、(短く)シードと呼び、一方、エレメンタリーシードを組み合わせた結果、生じる結晶を合成シードと呼ぶ。工程において、結晶層が合成シード上で成長する。本発明にかかる工程において、所望のガリウム含有窒化物のバルクを得るためには、シードの適切な選択は、重要である。本発明の好ましい実施形態では、エレメンタリーシードは、円柱、針、ウエハー、長方形、平行六面体、平行四辺形、台形、立方体等からなる群より選択された形状を有してもよい。接合されるエレメンタリーシードの端部(すなわち組み合わせ面)は、好ましくは、互いに接合するようにテーパーを有するように作り、端部表面は、C−面、A−面、M−面、R−面、または、ここに記載した面から傾斜した他の結晶表面となるように構成可能である。合成シードは、細長シードおよび枝状シードとして一方向に延在したスタイル(one direction extended style)、円形スタイル(surround style)、ジグザグスタイル等からなる群より選択される形態に配置されてもよい。
【0102】
オートクレーブ内のシードの配置:
図23(a)、図23(b)および図23(c)に示すように、シードの成長により、同時に多くの合成シード、または、ウエハーを得るように、オートクレーブ内に多くのエレメンタリーシードが、立てられ、及び/又は、吊り下げられている。
【0103】
シード上の選択的結晶化とは、自発的な結晶化がない、または、無視できる程度の自発的な結晶化を伴い、シード表面上で起こる結晶化工程を意味する。この工程は、ガリウム含有窒化物を得るために必須であり、同時に、本発明の本質的要素である。
【0104】
溶解度:発明者らの実験では、充分な高温および圧力において、固体(ガリウム含有窒化物)と超臨界溶液との間が平衡状態になることが見出されている。従って、ガリウム含有窒化物の溶解度は、上述のガリウム含有窒化物の溶解工程で得られるガリウム複合化合物の濃度と定義してもよい。この工程では、平行濃度、すなわち、溶解度は、溶媒濃度、温度及び/又は圧力を変化させて制御してもよい。
【0105】
過飽和超臨界アンモニア含有溶液からの自発的結晶化とは、オートクレーブ内で、シード表面を除く任意のサイトで起こるガリウム含有窒化物の核生成および成長の望ましくない工程を意味する。この定義は、また、成長した結晶がシードの方位と異なる方位を有するシード表面上の成長を含む。
【0106】
縦方向成長とは、シードの成長方向に対して、本質的に平行な方向の成長を意味する。縦方向成長は、シード内に存在するほとんどの転位が、この方向に成長した結晶層内に伝播するという特徴がある。従って、得られた結晶層は、用いたシードと同様な表面転位密度を有している。
【0107】
バルク単結晶ガリウム含有窒化物基板とは、MOCVD法により、または、HVPEのようなエピタキシャル成長法により、発光ダイオード(LED)、または、レーザーダイオード(LD)のような電子デバイスを、その上に得ることができる、ガリウム含有窒化物の単結晶基板を意味する。
【0108】
超臨界アンモニア含有溶液とは、超臨界アンモニア含有溶媒へのガリウム含有フィードストックの溶解の結果得られる溶液を意味する。
【0109】
超臨界アンモニア含有溶媒とは、少なくとも、1種以上のI属元素(アルカリ金属)を含み、ガリウム含有窒化物の溶解を助力するアンモニアよりなる超臨界溶媒である。超臨界アンモニア含有溶媒は、また、アンモニアの誘導体、及び/又は、その混合物、とりわけヒドラジンを含んでもよい。
【0110】
過飽和:超臨界アンモニア含有溶液の可溶性ガリウム化合物濃度が、ある物理化学的条件において、ガリウム含有窒化物の溶解度よりも高い場合、これら条件での超臨界アンモニア含有溶液のガリウム含有窒化物に対する過飽和を、実際の濃度と、溶解度との差として定義可能である。閉じた系でガリウム含有窒化物を溶解している間に、例えば、温度を上げる、または、圧力を下げることにより、飽和状態を得ることが可能である、
【0111】
溶解度の温度係数、および、圧力係数(TCSおよびPCS)
溶解度の負の温度係数とは、他の全てのパラメータを保持するとき溶解度が温度の減少関数となることを意味する。同様に、溶解度の正の圧力係数とは、他の全てのパラメータを保持するとき溶解度が圧力の増加関数となることを意味する。発明者らの研究では、超臨界アンモニア溶媒における溶解性窒化ガリウムの溶解度は少なくとも300℃〜550℃の温度範囲、そして100MPaから550MPaの圧力範囲では、負の温度係数(負のTCS)および正の圧力係数(正のPCS)として現れる事を見出している。
【0112】
反応の温度および圧力:
本明細書における実施例では、オートクレーブ内部の温度測定は、オートクレーブが空の状態、すなわち、超臨界アンモニア含有溶液が無い状態で実施した。従って、実施例で示された温度値は、超臨界状態で工程が実施された実際の温度値ではない。圧力は、選択した工程温度およびオートクレーブの容量でのアンモニア含有溶媒の物理および化学データに基づいて、計算または直接測定した。
【0113】
[本発明にかかる好ましい実施形態の詳細な説明]
物質が、過飽和溶液から、または、溶融液から容易に結晶化する場合は、シード上に結晶化する方法によりバルク単結晶を得ることに困難はない。このような化合物のバルク単結晶は、既知のチョクラルスキー法で容易に得ることができる。
【0114】
ガリウムを含む、XIII属元素の窒化物の場合、このような窒化物の融点と分解温度とが近いことから、チョクラルスキー法または同様の方法は、用いることができない。
【0115】
アンモニアまたはヒドラジンのような、超臨界アンモニア含有溶媒の環境は、適切なシードが利用可能な状況において、バルク単結晶成長の有望な条件を与える。例え、平衡法である、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化が、ガリウム含有窒化物単結晶の結晶格子の欠陥を明らかに減らすことが可能であり、また、結晶層の厚さとともに単結晶の品質を改良することが可能であるとしても、ガリウム含有窒化物のシード、および、単結晶のための無欠陥結晶材料(その体積全体に亘り欠陥のない)を得ようとする動機は、いかなる表面特性、および、いかなる結晶格子の軸方向に対しても無欠陥のウエハーを任意に成形可能なためであると理解されている。
【0116】
国際公開公報第WO 02/101120号により既知の方法の実施、および単結晶形態のガリウム含有窒化物の製造方法についての該公報の内容の実験的な検証における発明者らの経験を分析すると、ガリウム含有窒化物のバルク単結晶の成長は、各種環境において異なる速度で進行し、さらに、窒化ガリウム、あるいは同様に、他のガリウム含有窒化物が結晶化したウルツ鉱型結晶格子の六方晶の種々の軸方向において異なる速度で進行することを見出している。この知見は、このような窒化物の単結晶の製造工程において自発的結晶化により生じるガリウム含有窒化物単結晶の生成を示唆している。
【0117】
超臨界アンモニア含有溶液からの成長方法により得られたガリウム含有窒化物の体積パラメータは、一方でシードのサイズ、形状および方向の結果であり、他方で、系における工程の長さ、フィードストックの量の結果であることが見出されている。
【0118】
国際公開公報第WO 02/101120号により既知の方法に従って実施した自由結晶化(free crystallization)条件における、自発的な核生成の結果生じる結晶の形状、および、シード上の成長面の消滅の観察は、一般にバルク単結晶の急成長方向を見出すことを可能にする。
【0119】
これまで未公表の超臨界アンモニア含有溶液からの成長方法の研究結果では、c軸と平行な方向への結晶の成長は、たとえこのような成長が実質的に幾何学的に制限され、非常にゆっくりしかできないとしても、c軸に垂直な方向と同様に可能であるという結果である。超臨界アンモニアからの自由結晶化の長期間の工程におけるこのような制限の結果として、6角形状交差(hexagonal intersection)を有する延在した結晶を得ることができる。
【0120】
同時に、これまで未公表のフラックス法についての実験結果では、発明者らは、この方法の条件においてc軸に垂直な方向に成長した単結晶ガリウム含有窒化物を得ている。
【0121】
実験は、シードに現れる結晶格子の欠陥の伝播の範囲について予想外の観察結果をもたらした。単結晶の成長が、シードの成長方向と平行な方向に導かれた場合、欠陥は伝播しなかった。本明細書において、この方向への単結晶の成長を横方向成長(lateral growth)と呼ぶ。
【0122】
最近まで、ガリウム含有窒化物の単結晶シードの供給源は、格子定数(または、結晶格子のパラメータ、parameter of the crystal lattice)が類似するが、しかし、同じではなく、そして、異なる熱膨張特性を有する、ヘテロ基板上でc軸に平行な方向に成長したHVPE法により得た結晶であった。ヘテロ基板と、所定の基板上に堆積したガリウム含有窒化物との、物理的・化学的違いは、得られるガリウム含有単結晶の結晶格子の欠陥の原因であった。
【0123】
国際公開公報第WO 03/03594号公報では、例えば、N極性側(または、N末端側、side of N-polarity)上のみで窒化ガリウム単結晶が成長するように、Ga極性側(またはGa末端側、side of Ga-polarity)が互いに向かい合い、そして近付けて配置するように、c軸に垂直な結晶表面を有する2つの平坦なシードを接合することで、結晶が成長することが望ましくない結晶表面へのアクセスを制限することにより、単結晶の自由成長を抑制して、シードのいくらかの構造欠陥が減少できることが開示されていた。この公報に開示された成長は、まだシードの成長の方向に平行な方向への成長のみである。
【0124】
上述の観察により証明されているように、全ての既知の方法でのガリウム含有窒化物の成長は、同じまたは違う方法により得たシードの成長の方向と、同じ方向に少なくとも部分的に起こる。このことは、残念ながら、堆積したガリウム含有窒化物の単結晶層で、シードに存在する結晶欠陥の伝播が、少なくとも部分的に起こることを意味する。
【0125】
結晶の優先成長方位と、適切なシードの準備とを設定することで、所望の大きさと品質のガリウム含有窒化物バルク単結晶を得ることができると言われている。
【0126】
縦方向成長の表面へのアクセスを制限することにより、一般に、c軸に垂直な方向に横方向成長させている。c軸に平行な方向への成長と対照的に、この場合、工程の継続時間は、c軸に垂直な方向に成長するウエハーのサイズに影響を与える最も重要な因子ではない。寸法は、c軸に平行な急成長面の消滅、および、低成長面による結晶の「閉鎖(closing)」のために、ほとんど制限される。
【0127】
いまのところ、上記のc軸に平行な低成長面の消失に起因する問題の解決法は、2、3のより小さなエレメンタリーシードから得られ、それらの組み合わせにより生じる、合成シードの意外な使用により与えられる。研究を行う過程で、c軸に平行な横方向成長の成長した表面を得るのに成功するための条件は、全てのシードの結晶軸(または、結晶学的軸)が一致すること、および、隣接するシードに急成長面を露出すること、さらには、シード上に、互いに向き合っている組み合わせ面を形成することであり、これらは、ガリウム含有窒化物結晶の低成長面と明らかに異なっている(図22)ことを明らかにした。概して、用いられるシードは、得られた結晶の低成長面と本質的に異なる組み合わせ面を有する必要があり、さらに、急成長面を有する必要もある。組み合わせ面での結晶の急成長は、隣接するエレメンタリーシードの結晶軸の方向が一致するという条件下では、隣接するエレメンタリーシードの組み合わせをもたらす。
【0128】
本発明では、少なくとも2つのエレメンタリーシードが互いに接近して配置され、工程の初期段階で、結晶層がこれらのシード上で、結晶面が接触し、従ってシードが1つの(より大きな)合成シードに組み合わされるまで成長する。工程の中で、結晶層は、このようにして得られた合成シード上で成長する。工程の初期段階で接触したエレメンタリーシードの面を、組み合わせ面と呼ぶ。組み合わせ面が接触する表面を、接合面と呼ぶ。組み合わせに依存せずに結晶層の成長ができるエレメンタリーシードの表面を成長面と呼ぶ。
【0129】
これらの定義を図22に示す。この図には、超臨界アンモニア含有溶液から結晶化することにより窒化ガリウムを成長するのに用いる、HVPE法により得た、窒化ガリウムよりなる2つの細長型エレメンタリーシードを示す。
【0130】
本発明では、少なくとも2つのエレメンタリーシードの組み合わせにより生じた合成シードの使用により大きいサイズの単結晶のバルクを得る。
【0131】
大きいサイズの単結晶バルクの製造方法には、2つの段階がある。第1段階(予備段階)では、適切に用意された成長面を備えたエレメンタリーシード上の結晶層の堆積と、一方、エレメンタリーシードを互いに本発明にかかる適切な空間配置で維持することにより、エレメンタリーシードが組み合わさり合成シードをもたらす。
【0132】
後の段階では、合成シード上で方向性を有する成長(directed growth)が起こり、ここでこの成長は、横方向、縦方向、または、代わりにこれらの両方の成長が可能であり、または、自由成長が可能である。
【0133】
この方法の両方の段階は、結晶層の成長の同じ環境により1つの工程で実施することが可能であり、または、合成シードを別に得て、そしてこのような合成シード上に別に成長を行う、別々の工程として実施することが可能である。
【0134】
所望の寸法および形状の合成シードを得るには、エレメンタリーシードの適切な処理が必要である。
【0135】
エレメンタリーシードは、平坦(2次元)な配置、または、いかなる空間(3次元)配置を有してもよい。しかしながら、それぞれのエレメンタリーシードの成長および組み合わせの適切な用意は、さらに、短い時間で効率的にエレメンタリーシードが組み合わされるように、互いに組み合わされる、エレメンタリーシードの位置の配置は、エレメンタリーシードを合成シードに組み合わせる主要な条件である。エレメンタリーシードの成長面と組み合わせ面との間に望ましい角度が認められることは重要である。
【0136】
これは、エレメンタリーシードの位置を互いに、安定にするホルダーを用いることで可能となる。本発明の好ましい実施形態では、このようなホルダーは、単にエレメンタリーシードを互いに適切な位置に保持するためだけに用いるのではなく、望ましくない方向への成長を制限するためにも用いる。
【0137】
エレメンタリーシードの組み合わせは、より大きな合成シードを得るだけでなく、好ましくない転位の消滅および合成シード内での移動の結果である、少なくとも1つの急成長面の発達した面を得ることができるように合成シードを配列するように行う。
【0138】
好ましくは、大きな寸法の単結晶を得る工程は、急成長面が消滅するまで実施される。しかしながら、結晶化工程は、急成長面が最終的に消滅する前に停止してもよく、あるいは、結晶化プロセスは、急成長面が消滅した後、急成長面の消滅を通じて成長する低成長面上に引き続いて層が堆積することにより、従って単結晶の低成長相の進行が継続してもよい。
【0139】
結晶化する物質の種類、生成した単結晶バルクの使用目的、選択した結晶化方法に応じて、合成シードの寸法および露出した急成長面が選択される。
【0140】
本発明に係る方法は、好ましくは、ガリウム含有窒化物の単結晶のバルクを得るのに用いられる。
【0141】
合成シードの面の、ガリウム含有窒化物の結晶格子の軸に対する角度により、相当の程度、ガリウム含有窒化物のバルク単結晶の形状に影響を与えることが可能である。
【0142】
ガリウム含有窒化物の得られた単結晶は、例えば、平坦なウエハー、または、続いて、極性を有しない結晶表面、もしくは、所望の極性の結晶面を有する結晶格子に対して所望の方向性を備えた多くのウエハーを切り出す多面体の形状を有してもよい。
【0143】
特筆すべきは、生成した単結晶を切断した結果得られるウエハーは、これらをより大きな合成シードに組み合わせてよい、本発明にかかる方法および他の工程のエレメンタリーシードとして用いてもよく、従って、本発明の方法に用いるシードのサイズの範囲に関する制限、それゆえ、これらシードより生じる単結晶バルクの大きさの範囲についての制限が排除される。
【0144】
ガリウム含有窒化物の単結晶を作製する場合、合成シード上での結晶の成長は、好ましくは、超臨界アンモニア溶液からの結晶化により成される。
【0145】
本発明にかかる他の態様では、成長は、溶融液からの結晶化により成される(フラックス法)。
【0146】
c軸に沿って成長したガリウム含有窒化物単結晶より形成したシードは、本明細書に示す工程に用いられるエレメンタリーシードの供給源(source)の1つである。
【0147】
このようなシードの一例は、10/cm以下の表面転位密度を有する、気相からの成長方法、好ましくはHVPEにより作られた、c結晶軸に垂直な方向を向いたウエハーの形態のガリウム含有窒化物の単結晶である。
【0148】
HNP法で作られたガリウム含有窒化物の単結晶も、また、表面転位密度の極めて低いシードとして用いてもよい。
【0149】
さらに、フラックス法により、自発的結晶化の結果として得られるガリウム含有窒化物の単結晶は6角形のウエハーの形態のシードとして用いてもよい。
【0150】
本発明によれば、ガリウム含有窒化物の単結晶バルクは、フィードストックとシードとを用い、少なくとも1つの、結晶のc軸に垂直な成長面、および、少なくとも1つの、結晶のc軸に平行な方向に成長面を含む、特定の方向に向いた単結晶の成長を制御することにより作ってもよい。
【0151】
一般的には、しかしながら、本発明にかかるガリウム含有窒化物のバルク単結晶を製造するために、HVPE法により得たガリウム含有窒化物ウエハーが用いられる。
【0152】
好ましくは、c軸方向に成長し、急成長面を有するエレメンタリーシードを、それらの成長面が互いに180°となり、一方、接合面と少なくとも1つの成長面との間の角度が30°〜90°、好ましくは30°〜75°、最も好ましくは45°、または、60°となるように、配置する。
【0153】
他の態様では、c軸方向に成長したエレメンタリーシードにおいて、低成長面は覆われなくてもよく、シードを、それらの成長面が120°の角度をなし、一方、接合面と少なくとも1つの成長面との角度が0°〜60°、好ましくは15°、30°、または、45°となるように配置してもよい。
【0154】
好ましくは、両方のタイプのエレメンタリーシードは、適切に形成された、成長面、及び/又は、組み合わせ面を有する多面体である。
【0155】
好ましくは、これらシードは、平坦なウエハーの形状を有し、1つの面上に位置している。
【0156】
好ましくは、また、これらシードの成長面、及び/又は、組み合わせ面は、研磨されている。
【0157】
本発明では、c軸に垂直な方向に成長し、急成長面を有するエレメンタリーシードも、また、ガリウム含有窒化物を得るのに用いる。
【0158】
好ましくは、このようなエレメンタリーシードは、適切に形成された、成長面、及び/又は、組み合わせ面を有する多面体である。
【0159】
好ましくは、また、このようなシードは、平坦なウエハーの形状を有し、1つの面上に位置している。
【0160】
好ましくは、このようなエレメンタリーシードの成長面、及び/又は、組み合わせ面は、研磨されている。
【0161】
窒化ガリウムのシードの場合、エレメンタリーシードの好ましい長さは、25mm〜100mmであり、一方、合成シードの場合は、好ましい長さは、50mm〜250mmである。このようなシード上に得られた好ましいガリウム含有窒化物の単結晶はc軸に垂直な断面の面積が5cm〜120cmである。
【0162】
本発明により得られる好ましい単結晶は、ガリウム含有窒化物の単結晶であり、とりわけ窒化ガリウムの単結晶である。本発明では、最も長い直線寸法が、少なくとも2.5cm(1インチ)、好ましくは、少なくとも5cm(2インチ)、最も好ましくは、10cm(4インチ)のガリウム含有窒化物の単結晶を作ることができる。
【0163】
好ましくは、さらに、このような単結晶は、最も長い直線寸法の方向に垂直な少なくとも1つの方向に沿って、少なくとも2.5cm(1インチ)、好ましくは、少なくとも5cm(2インチ)、最も好ましくは、10cm(4インチ)の直線寸法を有する。
【0164】
本発明では、ガリウム含有窒化物の単結晶、とりわけ窒化ガリウムの単結晶は、(0002)面からのX線ロッキングカーブ(CuのKα1ラインを用いて)の半値幅の値が60arcsec未満、好ましくは約20arcsecである。
【0165】
本発明では、ガリウム含有窒化物の単結晶、とりわけ窒化ガリウムの単結晶は、好ましくは15mより大きい、さらに好ましくは30mより大きい、結晶格子の大きな曲率半径を有する。
【0166】
本発明では、ガリウム含有窒化物の単結晶、とりわけ窒化ガリウムの単結晶は、表面転位密度(EPD)が10/cm未満、好ましくは10/cm以下である。
【0167】
好ましくは、本発明により製造されたガリウム含有窒化物の単結晶、とりわけ窒化ガリウムの単結晶は、前記の全ての好ましい特徴を同時に兼ね備える。
【0168】
前記のように、ガリウム含有窒化物、とりわけ窒化ガリウムは、オプトエレクロニクス産業に用いられる有用な材料である。
【0169】
本発明は、また、大きい寸法を有するガリウム含有窒化物の単結晶の製造を可能にする本発明により得られる単結晶より、切り出される、または、形成される基板に堆積させた半導体構造に関する。
【0170】
基板の完全な品質、および、低い表面転位密度が、これら基板をオプトエレクトロニクス産業に用いる条件である。
【0171】
本発明は、選択した方向に生成する単結晶の成長の制御、すなわち、急成長面が消滅するまで、成長の全て、または、主要な部分がエレメンタリーシードの成長方向に垂直な方向に起こる単結晶を作ることができる結果、および、これら領域で、エレメンタリーシードに存在する結晶格子の欠陥の伝播のないことの結果として、これらの基準を満足するガリウム含有窒化物の結晶が得られる。
【0172】
オプトエレクトニクスデバイスの少なくともいくつかの窒化物半導体層は、このようなデバイスを製造する際にMOCVD法を用いる必要があることに留意すると、ガリウム含有窒化物の結晶のc軸に垂直な面内に大きなエピタキシャル領域を有するエピタキシー用の基板への大きな需要がある。
【0173】
本発明は、当初c軸方向に成長し、結晶格子のc軸に平行な大きな急成長面を有するエレメンタリーシードの組み合わせにより得られる合成シードを用い得ること、および、このようなシード上で、結晶格子のc軸に垂直な方向に、選択的に成長させ得ることから、このような需要を満たすことができる。この目的のために用いられる合成シードの急成長面の最も長い直線寸法は、好ましくは、ガリウム含有窒化物の単結晶のc軸に平行な面内に位置する。この工程を図4および図5に示す。このような条件下では、シード結晶の欠陥は、上述した合成シード内の単結晶には伝播せず、この結果、生成した単結晶の表面転位密度は、シードと比べ、十分に減少している。
【0174】
本発明では、シード上での単結晶の成長は、超臨界窒素含有溶液からの、好ましくは、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化法により行うことができる。
【0175】
本発明の1つの実施形態では、結晶化段階において、オートクレーブ中に、ガリウム含有フィードストック、好ましくは窒化ガリウム結晶と、選択的に添加されるII属元素、及び/又は、その化合物を伴い、ミネラライザーを構成するI属元素、及び/又は、その混合物、及び/又は、その化合物(特に、窒素及び/又は水素、好ましくはアジドを、含有する)とが存在し、アンモニアを伴うミネラライザーは、アンモニア含有溶媒として機能する。所望のガリウム含有窒化物の結晶化は、フィードストックの溶解の温度および圧力よりも、高い結晶化温度と低い結晶化圧力において、シード表面のアンモニア含有超臨界溶液から行われる。2つの温度領域が作られる。溶解ゾーンではフィードストックが配置され、結晶化ゾーンでは、1を上回る数のエレメンタリーシード、すなわち少なくとも2つのシードが、工程の初期に、1つの合成シードに組み合わせる。溶解ゾーンは、結晶化ゾーンよりも高い位置にあり、物質の移動が溶解ゾーンと結晶化ゾーンの間で起こる。
【0176】
好ましくは、溶解ゾーンと結晶化ゾーンの温度差は1℃〜150℃であり、より好ましくは、10℃〜100℃であり、結晶化ゾーンでは、温度は350℃以上であり、好ましくは400℃以上であり、最も好ましくは約500℃〜約550℃である。
【0177】
本発明のガリウム含有窒化物の単結晶のバルクは、好ましくは、超臨界アンモニア含有溶液からの成長技術によって、同じ化学組成を有する単結晶ガリウム含有窒化物のシードの成長方向に対し直角の方向に成長させて作る。
【0178】
好ましくは、国際公開公報第WO 02/101120号に開示されている方法を用いるが、しかし、ガリウム含有窒化物の化学成分によっては、他の条件、および、特に、用いられるフィードストック、用いられるミネラライザー、ならびに、ガリウム含有窒化物が結晶化する環境の純粋なアンモノ塩基性(ammonobasic)からの乖離を含む結晶化の特定の段階の圧力および温度条件に関する、超臨界アンモニア含有溶液から結晶化する工程の他のパラメータが、適用可能である。
【0179】
他の好ましい成長方法は、ガリウム含有溶融液(好ましくはリチウムベース)からの液相中で行われるフラックス法である。
【0180】
フラックス法での結晶化工程の異なる条件のために、この方法における急成長面および低成長面は、超臨界アンモニアによる結晶化工程の急成長面および低成長面とことなるかもしれない。
【0181】
本発明において、ガリウム含有窒化物単結晶のバルクを得るための、エレメンタリーシードの適切な大きさ、および、形状は、成長が、ガリウム含有窒化物の結晶格子のc軸に平行な方向とc軸に垂直な方向とに変化(または交代alternate)する初期段階にシードを曝すことにより達成され得るであろう。結晶の成長の所望の方向への変化は、例えば、Ga−Liからのフラックス法によるc軸に垂直な方向への成長、ならびに、超臨界アンモニア含有溶液からのc軸に平行な方向への成長を交互に適用することにより行われる。他の態様としては、以降の段階で、垂直な方向への成長を抑制しながら、これらの方法の1つを用いて交互に所望の方向の成長面を曝すことである。
【0182】
ガリウム含有窒化物の単結晶の特定の方向への成長を抑制するのに用いられる典型的な手法が、国際公開公報第WO 03/035945号に開示されている。
【0183】
本発明によれば、ガリウム含有窒化物の単結晶のバルクに、ドナー及び/又はアクセプタ及び/又は磁気型ドーパントを1017/cm〜1021/cmの濃度でドープしてもよい。ドーピングは、本発明のガリウム含有窒化物をn型、p型または補償型(半絶縁性)材料にする。
【0184】
ドーピングは、適切なドーピング化合物を単結晶の成長環境に導入することで実施する。XIII属元素の窒化物(特に、窒化ガリウム)の場合、典型的な、アクセプタタイプのドーパントは、マグネシウムと亜鉛であり、ドナータイプのドーパントはシリコンであり、磁気タイプのドーパントはマンガンである。上記の元素は、出発材料(原料)とともに工程の環境に純粋な(元素の)形態、または、化合物の形態で導入してもよい。
【0185】
本発明にかかる方法による結晶化を実施するのに用いる装置は既知のものである。
【0186】
超臨界アンモニア含有溶液からのガリウム含有窒化物の結晶化は、例えば、国際公開公報第WO 02/101120号に開示された装置により実施されてもよい。装置の大きさ等に起因して、詳細が異なる構造を有するオートクレーブを用いることが可能である。
【0187】
超臨界アンモニアから成長するための典型的な、好ましい装置を図21に示す。
【0188】
図21は、ガリウム含有窒化物を得るための装置であり、超臨界溶媒を生成するオートクレーブ1を有し、該オートクレーブは対流管理装置(installation for establishing convection flow)2を備え、加熱装置5及び/又は冷却装置6を備えた炉ユニット(set of furnaces)4に設置されることを特徴とする。
【0189】
炉ユニット4は、オートクレーブ1の結晶化ゾーン14に相当する、加熱装置5及び/又は冷却装置6を備えた高温領域、ならびに、オートクレーブ1の溶解ゾーン13に相当する、加熱装置5及び/又は冷却装置6を備えた低温領域を有する。対流管理装置2は、結晶化ゾーン14と溶解ゾーン13とを区分し、中心あるいは周囲に穴のある、1枚または複数の横型バッフル12を有する。オートクレーブ1内では、フィードストック16が溶解ゾーン13に配置され、少なくとも2つのシード17が結晶化ゾーン14に配置され、管理装置2により領域13と領域14との間に超臨界溶液の流れを生じる。溶解ゾーン13が横型バッフル12の上方に位置し、また、結晶化ゾーン14が横型バッフル12の下方に位置するこが特徴である。
【0190】
アルカリ金属、または、NaNHもしくはKNHのようなアルカリ金属の化合物が導入されると、GaNは超臨界NHに対し高い溶解度を示す。発明者らによる研究の結果、溶解度は、圧力の増加関数であり、温度の減少関数であることが見出されている。この見出された関係に基づき、本発明を実施し、所望の結晶を作ることが可能である。
【0191】
フィードストックは、反応装置の上部ゾーンに配置される。このゾーンは、少なくとも2つの単結晶シードが配置される反応装置の下部ゾーンと異なる温度条件に維持する。
【0192】
特に、反応の環境におけるGaNの溶解度の温度係数が負であることは、温度勾配を生じることにより、反応装置において、窒化ガリウムのフィードストックのある溶解ゾーンである、低温の上部ゾーンから、結晶化ゾーンである高温の下部ゾーンに化学輸送(cemical transport)が生じることを意味する。
【0193】
窒化ガリウムの結晶を好ましいフィードストックとして用いることは、窒化ガリウムの結晶が、工程を実施するのに必要な量のガリウムを容易に溶解でき、徐々に溶液に移動していくことから好ましい。
【0194】
アルカリ金属、これらの化合物(特に窒素、水素、それらの混合物を含むもの)をミネラライザーとして用いてもよい。アルカリ金属は、Li、Na、K、RbおよびCsより選択し得る。またこれらの化合物は水素化物、アミド、イミド、アミドイミド、窒化物およびアジドより選択し得る。
【0195】
本発明の窒化ガリウムを作るのに用いるアルカリ金属イオンを添加した超臨界アンモニア含有溶液の環境は、得られる窒化ガリウム単結晶の特性を改良(変更)するように他の金属のイオン、および、他の元素の可溶な形態を含んでもよい。しかしながら、この環境は、また、出発材料(原料)により導入される意図しない不純物、および、工程において装置を構成する元素より放出される意図しない不純物を含んでもよい。意図しない不純物の量は、非常に高い純度の試薬を用いるか、または、工程の必要性に応じ付加的に精製(purify)することにより制限できる。装置に由来する不純物は、適切な構造材料を選択し、当該技術分野で知られた基準に従うことで制御できる。
【0196】
好ましくは、本発明の方法により制御された、結晶の成長は、以下の実施例に示す詳細と、添付の図のチャートに示される工程の温度と保持時間とに従い実施される。
【0197】
図3に従い、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化段階では、図21に概略的に示す溶解ゾーンである上部ゾーンでは、結晶ゾーンが保持されている温度よりも低い温度で、結晶化の段階全体に亘り、実質的に一定のレベルに保持される。
【0198】
これらの条件において、ゾーン間の温度差と温度勾配が生じることに起因して、溶解ゾーンでは、フィードストックが溶解し、対流によりゾーン間の化学輸送が起こり、結晶化ゾーンでは、シード上での選択的なGaNの結晶化が、GaN過飽和の超臨界アンモニア含有溶液を生成することにより、実施される。
【0199】
超臨界アンモニア含有溶液からの成長の間、ゾーン間の温度差の値は、広い範囲内で変わってもよく、好ましくは、数℃から100数10℃の範囲である。さらに本発明によれば、ゾーン間の温度差は工程の途中で変化してもよい。このように、得られる単結晶窒化ガリウムの成長速度と品質を制御できる。
【0200】
さらに、この基本的な工程は、変更されてもよく、変更は、例えば、両方のゾーン温度の周期的な変化であってもよい。しかしながら、結晶化ゾーンの温度は、常に溶解ゾーンの温度より高くなければならない。
【0201】
従来、ガリウム含有窒化物の結晶の制御された成長に用いられているフラックス法の最適化で、図16に示すモリブデンの坩堝が使用されている。これらの坩堝は、雰囲気を制御し、高圧化で操作するように構成され、ゾーン毎に加熱する装置を備えた高温反応装置内に配置されていた。図16では、坩堝Aは、Bi、In、K、Na、Pb、Rb、Sb、Sn、および、Teよりなる群から選択されるフラックスを添加したLi−Ga溶融液により満たされている。坩堝Aの底部には、GaNで形成される結晶フィードストックCが存在し、フィードストックCは窒素の内部供給源である。エレメンタリーシードBが工程の特定の段階で、不図示の機構により、溶融液に導入され、溶液中を降ろされ、そして、溶液より引き上げられる。エレメンタリーシードは、シード上の結晶の坩堝内の成長ゾーンのいろいろな位置に配置されてよい。工程が実施される方法(例えば、対流型または拡散型工程)に応じて、このゾーンは坩堝の異なる部分に位置してよい、
【0202】
本発明の窒化ガリウム単結晶のバルクは、表面転位密度が低いことが特徴である。本発明の窒化ガリウム単結晶のバルクは、約0.1ppm以上のアルカリ金属、さらに約1.0ppm以上、さらには10ppmを超える、フラックス、または、ミネラライザー(選択的な方向に結晶成長を制御する工程の種類に応じて)として導入されたアルカリ金属を含んでもよい。得られた本発明のサンプルのGDMS(グロー放電質量分析)のプロファイルは、0.1ppm〜数ppmのレベルのアルカリ金属が存在することを示している。さらに、特定の遷移金属(Fe、Cr、Ni、Co、Ti、Mn)が測定可能なレベルで反応環境下に存在する。比較のための、HVPE法で得られたGaNのシード結晶の類似のプロファイルは、カリウムが0.1ppm未満存在していることを示している。一方、遷移金属のプロファイルは、ノイズ(または、バックグランド)のレベルであり、HVPE法のシード結晶のこれら元素の量が非常に少ないことを示している。
【0203】
実施した研究に基づいて、前記の付加的なフラックスが存在するGa−Li溶融液から得たシードの上に、超臨界アンモニア含有溶液からGaN単結晶を成長させる工程のための制御および操作条件を確立した。これらの条件は、また、他のXIII族元素の窒化物、ならびに、ガリウム含有窒化物と他のXIII族元素の混合物にも有用なことを確認した。ガリウム、アルミニウム、インジウムの窒化物の結晶の格子定数が近いことから、本発明により得られる窒化ガリウムでは、ガリウムの一部をインジウム及び/又はアルミニウムにより置換可能である。
【0204】
しかしながら、発明者らの発明は、概して、いかなる物質、および、いかなるシードによる成長方法(所望の寸法のシードが利用できない場合でも)にも適用可能である。本明細書では、GaNの成長により本発明を説明したが(フラックス法または超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化による)、これはいかなる場合においても本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【0205】
本発明を、さらに以下の説明のみを目的とする実施例により説明する。実施例および添付の図面は、本発明の説明のみを目的とし、いかなる場合も、特許請求の範囲により定められる本発明の技術的範囲を制限するよう解釈してはならない。
【実施例】
【0206】
・実施例1 超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化による単結晶窒化ガリウムの成長
100cmの高圧オートクレーブの溶解ゾーンに7.1g(約102mmol)の6Nの金属ガリウムをフィードストックとして挿入した。さらに、4.4g(約190mmol)の4Nのナトリウムもオートクレーブに導入した。
【0207】
2つのエレメンタリーシードを結晶化ゾーンに配置した。エレメンタリーシードは、HVPE法により得た単結晶窒化ガリウムより作製したウエハーの形態を有している。ウエハーは、本質的に、結晶のc軸に垂直な方向に向けられた。それぞれのウエハーは、長さ約44mm、厚さ約200μmであった。概略的に図1に示す、ウエハーは、急成長面と、急成長面に対し角度α=45°の組み合わせ面を有していた。1つの面内に位置する、エレメンタリーシードは、シードの成長面同士の間に180°の角度与え、また、シードの組み合わせ面が互いに接触する特定のホルダーの中に配置した。用いたホルダーを概略的に図2に示す。ホルダーの構造は、工程の初期には、本質的に単結晶層の成長を組み合わせ面および1つの成長面に制限している。これにより、横方向成長により、エレメンタリーシードが組み合わさる。結晶がホルダーの外側に成長すると(例えば、図2のギャップ73を横切ることにより)、さらなる自由成長が可能である。
【0208】
そして、オートクレーブに35.7gの5Nのアンモニアを入れ、しっかりと密閉し炉ユニット内に配置した。
【0209】
溶解ゾーンを450℃まで加熱し(約2℃/分で)、一方、結晶化ゾーンは加熱しなかった。工程の開始から約4時間後(図3)に、溶解ゾーンが目標の450℃に達し、結晶ゾーンの温度は約260℃であった。この温度分布をさらに約4日間維持した(図3)。この間に、ガリウムが部分的に溶液に遷移(transition)し、残りのガリウムは多結晶窒化ガリウムへの反応が完結する。次いで、結晶化ゾーンの温度を550℃(約3℃/時間で)まで昇温し、溶解ゾーンの温度は475℃(0.04℃/時間)まで昇温し、オートクレーブ内では約380MPaの圧力を得た。このような温度分布は、オートクレームのゾーン間の対流を起こし、溶解ゾーン(上部)から結晶化ゾーン(下部)への窒化ガリウムの化学輸送をもたらし、結晶化ゾーンではシード上に窒化ガリウムが堆積した。この温度分布(すなわち、溶解ゾーンが475℃、結晶化ゾーンが550℃)を、さらに16日間維持した(図3)。そして、過飽和度を増加させ、これによりGaNの成長速度を増加させるように、溶解ゾーンの温度を450℃(0.36℃/時間で、図3)まで下げることにより、ゾーン間の温度差を増加させた。この結果、オートクレーブ内の圧力は、約370MPaに低下した。この温度分布(すなわち、溶解ゾーンが450℃、結晶化ゾーンが550℃)を、工程の終わりまで、すなわち、さらに24日間保持した(図3)。
【0210】
この工程により、フィードストック(すなわち、多結晶GaN)の部分的な溶解がおこった。結晶化ゾーンでは、エレメンタリーシードの組み合わせと、こうして得られた合成シード77上での単結晶窒化ガリウムの結晶化が認められた。結晶化した窒化ガリウムは、図4(全体図)および図5(図4のA−A線断面)に概略的に示す横方向成長、および、その後の自由成長の形態を有していた。エレメンタリーシードを組み合わせたことに起因する欠陥が、得られた結晶82に認められた。欠陥は、図4の点線の近傍に集まっていた。寸法が約84mmX4mmX2500μmの、上記のようにして得られた結晶82は、ワイヤーソーにより(組み合わせた)エレメンタリーシードより切り離された。切り離した後、結晶は、次の工程の自由成長のシードとして用いた。約88mmX3mmX200μmの寸法の単結晶GaNにより構成されている(組み合わせた)エレメンタリーシード77も、次の工程のシード(横方向成長用の)として用いた。
【0211】
得られた結晶の(0002)面からのX線(CuのKα1線による)ロッキングカーブの半値幅(FWHM)は22arcsecであり、その結晶格子の曲率半径は、12mであった。結晶のC面の顕微鏡的な調査により、この面の表面転位密度(エッチピットの密度により測定した、EPD法)は、2x10/cmであり、一方、上述の工程で用いたHVPEエレメンタリーシードは、EPD法により、10/cmであることを見出した。電気的な特性については、得られた結晶はn型の電気伝導性を有し、その抵抗は約0.04Ω・cmであった。
【0212】
・実施例2
エレメンタリーシードが、図6aに示すように、それらの組み合わせ面に平行に互いにずれていたことを除き、実施例1と同じ手順を実施した。得られた結晶は、FWHM、EPD、曲率半径、および、電気特性の値が、実施例1で得られたものと同様であった。実施例1と同様に、得られた結晶と、組み合わせたエレメンタリーシードとは、次の工程の自由成長と横方向成長に用いるように確保された。
【0213】
・実施例3
エレメンタリーシードが、図6bに示すように、それらの組み合わせ面に平行に互いにずれていたことを除き、実施例1と同じ手順を実施した。得られた結晶は、FWHM、EPD、曲率半径、および、電気特性の値が、実施例1で得られたものと同様であった。実施例1と同様に、得られた結晶と、組み合わせたエレメンタリーシードとは、次の工程の自由成長と横方向成長に用いるように確保された。
【0214】
・実施例4、5および6
用いたエレメンタリーシードが、急成長面を有し、かつ、この成長面に対し角度α=60°で組み合わせ面を有していた(図1)ことを除き、実施例1、2および3と同じ手順を実施した。エレメンタリーシードが、図6a、または、図6bに示すように、それらの組み合わせ面に平行に互いにずれていてもよい。得られた結晶は、FWHM、EPD、曲率半径、および、電気特性の値が、実施例1〜3で得られたものと同様であった。上述した実施例と同様に、得られた結晶と、組み合わせたエレメンタリーシードとは、次の工程の自由成長と横方向成長とに用いるように確保された。
【0215】
・実施例7、8および9
用いたエレメンタリーシードの一方が、急成長面を有し、かつ、この成長面に対し角度α=60°で組み合わせ面を有し(図1)、用いたエレメンタリーの他方が急成長面を有し、かつ、この成長面に対し角度α=45°で組み合わせ面を有していた(図1)ことを除き、実施例1、2および3と同じ手順を実施した。エレメンタリーシードが、図6a、または、図6bに示すように、それらの組み合わせ面に平行に互いにずれていてもよい。得られた結晶は、FWHM、EPD、曲率半径、および、電気特性の値が、実施例1〜3で得られたものと同様であった。上述した実施例と同様に、得られた結晶と、組み合わせたエレメンタリーシードとは、次の工程の自由成長と横方向成長とに用いるように確保された。
【0216】
・実施例10〜18
用いたエレメンタリーシードが別の種類のホルダー内に配置されたことを除き、実施例1〜9と同じ手順を実施した。このホルダーの断面を概略的に図7に示す。得られた結晶は、FWHM、EPD、曲率半径、および、電気特性の値が、実施例1〜9で得られたものと同様であった。上述した実施例と同様に、得られた結晶と、組み合わせたエレメンタリーシードとは、次の工程の自由成長と横方向成長とに用いるように確保された。
【0217】
・実施例19
エレメンタリーシードが、HVPE法で得られた単結晶窒化ガリウムウエハーの形態を有していたことを除き、実施例1と同じ手順を実施した。ウエハーは、本質的に結晶のc軸と垂直な方向を向いていた。それぞれのウエハーは長さ約20mm、厚さ約200μであった。図1に概略的に示すウエハー低成長面を有し、かつ、この成長面に対し角度α=30°で組み合わせ面を有していた(図8)。1つの面内に位置する、エレメンタリーシードは、シードの成長面同士に120°の角度を与え、シードの組み合わせ面同士を互いに接触させる特定のホルダー内に配置された。
【0218】
この工程により、エレメンタリーシードの組み合わせ、および、この得られた合成シード上での窒化ガリウム単結晶の結晶化が認められた。結晶化した窒化ガリウムは、図9に概略的に示す横方向成長82の形態を有していた。エレメンタリーシードを組み合わせたことよる欠陥が得られた結晶82に認められた。欠陥は、図9の点線の近傍に集まっていた。寸法35mmX10mmX2000μmを有する、この得られた結晶82は、(組み合わせた)エレメンタリーシード77から、ワイヤーソーにより切り離された。切り離された後、結晶は、次の工程で自由成長のためのシードとして用いられた。得られた結晶は、FWHM、EPD、曲率半径、および、電気特性の値が、実施例1で得られたものと同様であった。
【0219】
・実施例20 実施例1〜18に示された工程により得られたGaN結晶の継続した自由成長(超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化による)
【0220】
国際公開公報第WO 02/101120号の開示によると、1350cmの高圧オートクレーブの溶解ゾーンにガリウム含有フィードストック、シード、ミネラライザー、および、アンモニアが入れられた。
【0221】
実施例1〜18に示した工程により得られた結晶の中から選択された結晶をシードとして用いた。選択した結晶(シード)は、シードの上で自由成長できるように、オートクレーブの結晶化ゾーンに配置された。
【0222】
金属ナトリウムがミネラライザーとして用いられた。フィードストックが溶解ゾーンに配置され、シードは結晶化ゾーンに取り付けた。結晶化工程は、結晶化ゾーンの温度T2=550℃、および、溶解ゾーンの温度T1=450℃の温度一定の条件化で実施された。オートクレーブ内部のこの温度分布は、76日間維持された(図10)。このような条件で、オートクレーブ内の圧力は410MPaであった。
【0223】
この工程により、溶解ゾーンでフィードストック(すなわち、多結晶GaN)の部分的な溶解が起こった。結晶化ゾーンでは、合成シード上の、さらなる単結晶窒化ガリウムの成長が確認された。得られた結晶を概略的に図11に示す。これらは、約6mmの厚さで、図11に示す底面を有する角柱(または、プリズム、prism)を有した。底面の最も長い対角線は長さ約85mmであり、底面の幅(最も長い対角線に垂直な方向に測定した)は、約30mmであった。エレメンタリーシードを組み合わせたことによる欠陥が、得られた結晶の中に認められた。欠陥は、図11の点線83の近傍に集まっていた。円形のウエハー状の2つの結晶(図11に破線(dashed line)で示す)がそれぞれの結晶から切り出された。これらウエハーは接合面を含んでおらず、また、その近傍に集まった欠陥はなかった。このように得られた1インチの結晶の(0002)面からのX線(CuのKα1線による)ロッキングカーブの半値幅(FWHM)は20arcsecであり、その結晶格子の曲率半径は、38mであった。結晶のC面の顕微鏡的な調査により、この面の表面転位密度(エッチピットの密度により測定した、EPD法)は、2x10/cmであることがわかった。電気的な特性については、実施例1で得られた結晶と同様であった。このようにして得られた結晶をウエハーにスライスした。これらウエハーのいくらかは、次の工程でシードとして用いた。機械的および化学機械的研磨(CMP)を含む一般的な工程によりエピタキシー用の円形の1インチウエハーが残りのウエハーより作られた。
【0224】
・実施例21
実施例20と同じ手順が実施された。実施例1〜18に示す工程により得られた結晶より選択した結晶をシードとして用いた。シードは、初期に結晶層の成長がシードのNサイドのみで可能なように、オートクレーブの結晶化ゾーンに配置された。このように成長した結晶が十分大きくなると、工程の後期では、さらに自由成長が可能であった。得られた結晶は、実施例20で得られた結晶と同様の寸法、FWHMの値、EPD、曲率半径および電気特性を有した。実施例20と同じく、接合面を含んでいない円形のウエハー状の結晶が、得られた結晶から切り出された。次いで、エピタキシー用の基板、および、次の工程のシードがそのウエハーから作られた。
【0225】
・実施例22 ドーピング
0.05gの金属亜鉛、または、0.02gの金属マグネシウムをフィードストックに添加したことを除いて、実施例20と同じ手順が実施された。このような量の亜鉛、または、マグネシウムは、本質的にGaN結晶の成長速度に影響を与えなかった。得られた結晶は、実施例20で得られた結晶と同様の寸法、FWHMの値、EPD、および、曲率半径を有した。電気特性に関しては、得られた材料は補償型(半絶縁型)で約10Ω・cmの電気抵抗を有した。実施例20と同じく、接合面を含んでいない円形のウエハー状の結晶が、得られた結晶から切り出された。次いで、エピタキシー用の基板が、そのウエハーから作られた。
【0226】
・実施例23 ドーピング
0.10gの金属亜鉛、または、0.04gの金属マグネシウムをフィードストックに添加したことを除いて、実施例20と同じ手順が実施された。このような量の亜鉛、または、マグネシウムは、本質的にGaN結晶の成長速度に影響を与えなかった。得られた結晶は、実施例20で得られた結晶と同様の寸法、FWHMの値、EPD、および、曲率半径を有した。電気特性に関しては、得られた材料はp型の電気伝導性を示し、約1.5X10−3Ω・cmの電気抵抗を有した。実施例20と同じく、接合面を含んでいない円形のウエハー状の結晶が、得られた結晶から切り出された。次いで、エピタキシー用の基板がそのウエハーから作られた。
【0227】
・実施例24 ドーピング
0.02gのシリコンをフィードストックに添加したことを除いて、実施例20と同じ手順が実施された。このような量の亜鉛、または、マグネシウムは、本質的にGaN結晶の成長速度に影響を与えなかった。得られた結晶は、実施例20で得られた結晶と同様の寸法、FWHMの値、EPD、および、曲率半径を有した。電気特性に関しては、得られた材料はn型の電気伝導性を示し、約1.2X10−3Ω・cmの電気抵抗を有した。実施例20と同じく、接合面を含んでいない円形のウエハー状の結晶が得られた結晶から切り出された。次いで、エピタキシー用の基板がそのウエハーから作られた。
【0228】
・実施例25
HVPE法により得られた単結晶窒化ガリウムから作られたウエハーの形態の3つのエレメンタリーシードを用いたことを除いて、実施例1と同じ手順が実施された。これらのウエハーは本質的には、結晶のc軸に対して垂直方向を向いていた。それぞれのウエハーは約200μmの厚さであった。両側のウエハーは、約25mmの長さを有し、中央のウエハーは、約50mmの長さを有していた。ウエハーは、急成長面を有し、この成長面に対して角度α=45°または別の実施形態では、角度α=60°の組み合わせ面を有していた。実施例1と同じく、1つの面内に位置する、エレメンタリーシードは、シードの成長面同士の間に180°の角度与え、また、シードの組み合わせ面が互いに接触する特定のホルダーの中に配置した。ホルダー構造は、工程の初期には、本質的に単結晶層の成長を組み合わせ面および1つの成長面に制限している。この結果、横方向成長により、エレメンタリーシードが組み合さる。工程の途中では、さらに、このようにして得られた合成シード上での自由成長が可能である。
【0229】
この工程により、エレメンタリーシードの組み合わせと、このようにして得られた合成シード77上での単結晶窒化ガリウムの結晶化が認められた。結晶化した窒化ガリウムは、図11に概略的に示す、横方向成長、および、その後の自由成長82の形態を有していた。エレメンタリーシードを組み合わせたことに起因する欠陥が、得られた結晶82に認められた。欠陥は、図12の点線の近傍に集まっていた。寸法が約96mmX3mmX2300μmの上記のようにして得られた結晶82は、ワイヤーソーにより(組み合わせた)エレメンタリーシードより切り離された。切り離した後、結晶は、次の工程の自由成長のシードとして用いた。約100mmX3mmX200μmの寸法の単結晶GaNにより構成されている(組み合わせた)エレメンタリーシード77も、次の工程のシード(横方向成長用の)として用いた。
【0230】
得られた結晶の(0002)面からのX線(CuのKα1線による)ロッキングカーブの半値幅(FWHM)は25arcsecであり、その結晶格子の曲率半径は、20mであった。結晶のC面の顕微鏡的な調査により、この面の表面転位密度(エッチピットの密度により測定した、EPD法)は、1x10/cmであることを見出した。結晶の電気的な特性については、実施例1で得られたものと同様であった。
【0231】
・実施例26 上記の実施例で得られた結晶の継続した自由成長
工程の所用期間が約140日であり、実施例25に示す工程で得られた結晶をシードとして用いたことを除き、実施例20と同じ手順を実施した。シードは、シード上で自由成長が可能なように、オートクレーブの結晶化ゾーンに配置した。
【0232】
この工程により、合成シード上で窒化ガリウムの単結晶の更なる成長が認められた。得られた結晶を概略的に図13に示す。得られた結晶は、9mmの厚さと、ひし形の底面を備えた角柱の形状とを有した。底面のより長い対角線の長さは約97mmであり、底面のより短い対角線の長さは約58mmであった。エレメンタリーシードを組み合わせたことよる欠陥が、得られた結晶に認められた。欠陥は、図13の点線83の近傍に集まっていた。円形のウエハー状の1つの結晶(図13に破線で示す)が結晶から切り出されたウエハーは接合面を含んでおらず、また、その近傍に集まった欠陥はなかった。このようにして得られた2インチの結晶の(0002)面からのX線(CuのKα1線による)ロッキングカーブの半値幅(FWHM)は17arcsecであり、その結晶格子の曲率半径は、62mであった。結晶のC面の顕微鏡的な調査により、この面の表面転位密度(エッチピットの密度により測定した、EPD法)は、3x10/cmであることがわかった。電気的な特性については、実施例1で得られた結晶と同様であった。このようにして得られた結晶をウエハーにスライスした。これらウエハーのいくらかは、次の工程でシードとして用いた。機械的および化学機械的研磨(CMP)を含む一般的な工程によりエピタキシー用の円形の2インチウエハーが残りのウエハーより作られた。
【0233】
実施例27 アジドを用いた工程におけるオーバーラップを伴う組み合わせ
84cmの高圧オートクレーブの溶解ゾーンに6.4g(約76mmol)の6Nの多結晶窒化ガリウムを挿入した。さらに、9.8g(約150mmol)の5Nのアジ化ナトリウムもオートクレーブに導入した。
【0234】
2つのエレメンタリーシードを結晶化ゾーンに配置した。エレメンタリーシードは、HVPE法により得た単結晶窒化ガリウムより作製したウエハーの形態を有している。ウエハーは、本質的に、結晶のc軸に垂直な方向に向けられた。それぞれのウエハーは、長さ約40mm、厚さ約200μmであった。ウエハーは、急成長面を有していた。エレメンタリーシードを、実施例1で示したのと同様の構造を有するホルダーに配置した。エレメンタリーシードは、1つの面内に位置し、部分的に重なって(overlap)おり、シードの成長面同士の間に180°の角度が与えられた(シードの配置を概略的に図14に示す)。
【0235】
そして、オートクレーブに39gの5Nのアンモニアを入れ、しっかりと密閉した。炉ユニット内に配置した後、オートクレーブを、300℃(約2℃/分で)まで加熱した。 この間にアジドが分解し、多結晶窒化ガリウムが部分的に溶液に遷移するのを可能にするアンモノ塩基性の特性を有する溶媒が形成された、2日後に溶解ゾーンの温度は400℃(約2℃/分で)に昇温され、結晶化ゾーンの温度は、500℃(こちらも約2℃/分で)に昇温された。この温度分布は、さらに32日間(図15)維持された。オートクレーブ内の予想される圧力は、約230MPaである。実際の圧力は、約330MPaであり、この圧力の増加は、アジドの分解により生じたガス状の窒化物に起因する。
【0236】
この工程により、溶解ゾーンでフィードストック(すあわち、多結晶GaN)の部分的な溶解が起こった。結晶化ゾーンでは、エレメンタリーシードの組み合わせと、こうして得られた合成シード上での単結晶窒化ガリウムの結晶化が認められた。結晶化した窒化ガリウムは、横方向成長とその後の自由成長の形態を有し、図4に概略的に示す実施例1のものと同様であった。エレメンタリーシードを組み合せたことに起因する欠陥が、得られた結晶に認められた。欠陥は、エレメンタリーシードのオーバーラップに対応する幅の広い線に沿って集まっていた。寸法が約76mmX3mmX1800μmの、上記のようにして得られた結晶は、ワイヤーソーにより(組み合わせた)エレメンタリーシードより切り離された。切り離した後、結晶は、次の工程の自由成長のシードとして用いた。約80mmX3mmX200μmの寸法の単結晶GaNにより構成されている(組み合わせた)エレメンタリーシードも、次の工程のシード(横方向成長用の)として用いた。
【0237】
得られた結晶の構造的なパラメータは、実施例1のものよりわずかに悪かった。得られた結晶の(0002)面からのX線ロッキングカーブ(CuのKα1線による)の半値幅(FWHM)は34arcsecであり、その結晶格子の曲率半径は、10mであった。結晶のC面の顕微鏡的な調査により、この面の表面転位密度(エッチピットの密度により測定した、EPD法)は、1x10/cmであり、一方、上述の工程で用いたHVPEエレメンタリーシードは、EPD法により、10/cmであることを見出した。電気的な特性については、実施例1のものと同様であった。
【0238】
・実施例28 実施例1の組み合わせの配列で対流フラックス法を用いた
モリブデンの坩堝A内の250cmの容量を有する高温反応装置の中にモル比でGa:Liが1:2であった、金属ガリウムとリチウムの混合物を挿入した。さらに、GaNを含有するフィードストックCを坩堝の底に配置した。In、K、Na、Pb、Rb、Sb、Sn、および、Teからなる群より選択した付加的なフラックスを、モル比で、X:Ga:Liが0.8:1.0;2.0になるように加えた。さらに、GaNを含有するフィードストックCを坩堝の底に配置した。混合物は、アルゴン雰囲気で、坩堝の上部ではT1(図16)=760℃まで、坩堝の下部ではT2=840℃まで加熱した(それぞれ、図17の直線、および、破線)。この結果、所定のモル比X:Ga:Liの上記金属の合金を得た。この反応系の温度分布を約24時間保持した。そして、雰囲気を圧力2.3MPaの窒素に変えた。この反応装置内の温度および圧力条件を、さらに、3日間保持した。
【0239】
次に、窒化ガリウムのエレメンタリーシードBを坩堝の低温(上部)部分に浸漬した。より短いウエハーを使用(それぞれのウエハーは約20mmの長さ)したことを除き、シードは実施例1に示したものと同じ形態および配置を有した。ウエハーは、実施例1で示したのと同一の構造をしたホルダー内に配置した。
【0240】
この工程の条件で、さらに32日間で、単結晶窒化ガリウムがシードの上に成長した。そして反応装置を、650℃まで0.1℃/分で冷却し、さらに、1℃/分で室温(RT)まで冷却した。他の態様では、シードは、工程の条件下で、ゆっくりと溶融した合金から引き抜かれた。
【0241】
この工程により、エレメンタリーシードの組み合わせと、こうして得られた合成シード上に、横方向成長とその後の自由成長の形態を有する単結晶窒化ガリウムの結晶化が認められた。得られた結晶は、概略的に図4に示す実施例1の結晶とよく類似していた。上述した実施例と同じく、エレメンタリーシードを組み合わせたことに起因する欠陥が、得られた結晶に認められた。欠陥は、接合面(図4の点線)の近傍に集まっていた。
【0242】
得られた結晶は、約36mmX2mmX1200μmの寸法を有し、その結晶パラメータは工程で用いたHVPEエレメンタリーシードの結晶パラメータより良好であった。
【0243】
・実施例29 エレメンタリーシードの平坦な(2次元)配置の実施例
本実施例で示す工程が、事前に得た結晶の成長の継続ではなく、エレメンタリーシードの組み合わせを目的にする点を除き、実施例20と同じ手順が実施された。
【0244】
結晶化ゾーンに6つのエレメンタリーシードを配置した。エレメンタリーシードは、HVPE法により得られた窒化ガリウムの単結晶より作られたウエハーの形態を有する。ウエハーは、本質的に、結晶のc軸に垂直な方向に向けられた。それぞれのウエハーは、長さ約20mm、厚さ約200μmであった。ウエハーは、急成長面(長い)と、急成長面に対し角度α=60°の組み合わせ面(短い)を有していた。エレメンタリーシードを、正6角形の辺に沿って、特定のホルダー内に配した(この実施例のエレメンタリーシードの配置を概略的に図18に示す)。
【0245】
この工程により、エレメンタリーシードの組み合わせと、こうして得られた合成シード上に横方向成長の形態を有する単結晶窒化ガリウムの結晶化が認められた。このようにして得られた窒化ガリウムの単結晶は、辺の長さが約20mmの正6角形の形態を有した。上述した実施例と同じく、エレメンタリーシードを組み合わせたことに起因する欠陥が、得られた結晶に認められた。本実施例では、欠陥は6角形のより長い対角線に沿って集まっていた。
【0246】
得られた6角形の結晶のより長い対角線は、約40mmの長さを有していた。得られた結晶は、約5mmの厚さを有し、その結晶パラメータは工程で用いたHVPEエレメンタリーシードの結晶パラメータより良好であった。
【0247】
・実施例30 エレメンタリーシードの空間的(3次元)配置の実施例
本実施例で示す工程が、事前に得た結晶の成長の継続ではなく、エレメンタリーシードの組み合わせを目的にする点のみを除き、実施例20と同じ手順が実施された。
【0248】
結晶化ゾーンに4つのエレメンタリーシードを配置した。エレメンタリーシードは、超臨界アンモニア含有溶液からの再結晶(recrystallization)により得られた窒化ガリウムの単結晶により作られた直方体(cuboid)の形態を有する。それぞれのエレメンタリーシードは、約2mmX約2mmX約20mmの寸法を有していた。シードは、急成長面(長い)と、短い組み合わせ面を有していた。エレメンタリーシードは、図19aに概略的示す配置で、特別のホルダー内に配置された。これは空間的(3D)配置である。
【0249】
この工程により、エレメンタリーシードの組み合わせと、こうして得られた合成シード上に横方向成長と(図19に示す)x、yおよびz方向への自由成長の形態を有する単結晶窒化ガリウムの結晶化が認められた。このようにして得られた窒化ガリウムの単結晶は、直方体に近い形態を有し、約10mmX約6mmX約42mmの寸法を有していた。その結晶パレメータは、この工程に用いたエレメンタリーシードの結晶パラメータと同様であった。
【0250】
・実施例31 エレメンタリーシードの空間的(3次元)配置の別の実施例
本実施例で示す工程が、事前に得た結晶の成長の継続ではなく、エレメンタリーシードの組み合わせを目的にする点のみを除き、実施例20と同じ手順が実施された。
【0251】
結晶化ゾーンに2つのエレメンタリーシードを配置した。エレメンタリーシードは、超臨界アンモニア含有溶液からの再結晶により得られた窒化ガリウムの単結晶により作られた直方体(cuboid)の形態を有する。それぞれのエレメンタリーシードは、約2mmX約2mmX約20mmの寸法を有していた。シードは、急成長面(長い)と、短い組み合わせ面を有していた。エレメンタリーシードは、図19bに概略的に示す配置で、プレートの上に取り付けられた。これは空間的(3D)配置である。図19bのシードの組み合わせ面を点線で示す。さらに、組み合わせ面は、急成長面に対して、α=45°(1つの工程)またはα=60°で傾けられている(図19b)。−x方向への成長は、シードを取り付けたプレートにより阻止される。エレメンタリーシードの組み合わせは可能である。
【0252】
この工程により、エレメンタリーシードの組み合わせと、こうして得られた合成シード上では、横方向成長と、−x方向を除く全ての方向への自由成長との形態を有する単結晶窒化ガリウムの結晶化が認められた。このようにして得られた窒化ガリウムの単結晶は、直方体に近い形態を有し、約4mmX約6mmX約42mmの寸法を有していた。その結晶パレメータは、この工程に用いたエレメンタリーシードの結晶パラメータと同様であった。
【0253】
・実施例32 本発明の基板上に形成した半導体UVレーザー
添付の図20は、本発明の基板上に形成した、AlGa1−XN(0≦X<0.7)マルチ量子井戸(multi-quantum、MQW)構造を有するリッジ型(ridge type)UVレーザーダイオードの断面を示す。
【0254】
最初に、上述の実施例で示したように、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化により、高品質の窒化ガリウムの単結晶を得た。単結晶窒化ガリウムより作られ約5インチの直径のウエハーの形態を有し、かつ、本質的に結晶のc軸に垂直な表面を有する極性基板(polar substrate)101を、この結晶より作った。基板101のGa末端側は、2X10/cmの転位密度を有した。
【0255】
図20に示すように、基板101に上には、MOCVD法により順番に、Siをドープした5μmのAl0.05Ga0.95Nのn型のコンタクト層103と、800℃で形成した、Siをドープした、0.15μmのAl0.06Ga0.94Nのクラック予防(crack preventing)層104と、5X1018/cmのSiをドープした2.5nm(25オングストローム)のAl0.05Ga0.95Nが100層、および、非ドープの(アンドープの)2.5nmのAl0.1Ga0.9Nが100層を含む超格子のn型クラッド層105と、0.15μmの非ドープのAl0.15Ga0.85Nの光学ガイド(optical guide)層106とを形成した。n型クラッド層105を除く、他の層は、デバイスの特性によってはなくてもよい。
【0256】
n型の窒化物半導体層103〜106の上に、4.5nmの非ドープのGaN井戸層と、10nmのAl0.15Ga0.85N層との組み合わせにより作られるマルチ量子井戸構造を含む活性層107を形成した。ここで量子井戸層は、非ドープでよく、一方、バリア層は、1017/cm〜1017/cmのSiのようなドナー(n型)ドーパントをドープしてもよい。好ましい場合では、この最も上部のバリア層は、次の層、すなわち、Mgのようなアクセプタ(p型)を含むp型キャリア閉じ込め(confining)層108からのMgの拡散を防止するように、非ドープであってもよい。
【0257】
最後のバリア層の上には、1X1019/cmのMgをドープした10nmのp型Al0.3Ga0.7Nのp型電子閉じ込め層108と、Mgをドープした0.15μmのAl0.04Ga0.96Nの光学ガイド層109と、90層の2.5nmのp型のAl0.1Ga0.9Nおよび2.5nmのAl0.05Ga0.95N(超格子を形成する少なくと1種類の層はMgをドープされている)よりなる、厚さ0.45μmのp型超格子クラッド層110と、1021/cmのMgをドープした15nmのコンタクト層とを含む、p型の窒化物半導体を形成する。p型クラッド層110を除く、他の層は、デバイスの特性によってはなくてもよい。
【0258】
レーザーダイオードは、エッチングされた光学ガイド層109の両側の厚さが0.1μm以下のとなるようにエッチングして作られた帯状のリッヂを備える。ここに示したデバイスは、また、Ni/Auの帯状のp型電極120と、Ti/Alの帯状のn型電極121と、ZrOの保護層162と、SiOおよびTiOの誘電体マルチ層164と、Ni−Ti−Auのパッド電極122、123とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】実施例1のエレメンタリーシードの構成を示す、
【図2】実施例1で用いられるホルダーの概略断面を示す。
【図3】実施例1に示す工程の時間経過によるオートクレーブ内の温度変化を示す。
【図4】実施例1の組み合わせたエレメンタリーシード上に得られた結晶の概要を示す。
【図5】実施例1の組み合わせたエレメンタリーシード上に得られた結晶の概略断面を示す。
【図6a】図1に示すエレメンタリーシードの構成の選択した変形を示す。
【図6b】図1に示すエレメンタリーシードの構成の選択した別の変形を示す。
【図7】実施例10〜18で用いたホルダーの概略断面を示す。
【図8】実施例19のエレメンタリーシードの構成を示す。
【図9】実施例19の組み合わせたエレメンタリーシード上に得られた結晶の概要を示す。
【図10】実施例20に示す工程の再結晶段階の間の時間経過によるオートクレーブ内の温度変化を示す。
【図11】実施例20において、実施例1〜18に示す工程で得られた結晶より選択した結晶の上にさらに成長させた結果得られた結晶の概要を示す。
【図12】実施例25の組み合わせたエレメンタリーシード上に得られた結晶の概要を示す。
【図13】実施例26において、実施例25に示す工程に得られた結晶の上にさらに成長させた結果得られた結晶の概要を示す。
【図14】実施例27のエレメンタリーシードの構成を示す。
【図15】実施例27に示す工程の時間経過によるオートクレーブ内の温度変化を示す。
【図16】フラックス法によるガリウム含有窒化物の単結晶の成長が実施される(実施例28)坩堝の概要を示す。
【図17】実施例28に示す工程の時間経過によるオートクレーブ内の温度変化を示す。
【図18】実施例29のエレメンタリーシードの平坦な(2次元)構成を示す。
【図19a】実施例30のエレメンタリーシードの空間(3次元)構成を示す。
【図19b】実施例31で用いられたエレメンタリーシードの別の空間(3次元)構成を示す。
【図20】本発明にかかる基板上に得られた窒化物半導体レーザーの横断面図を示す。
【図21】1以上のシード上の成長工程を実施するように構成された、超臨界アンモニア含有溶液から結晶化する方法に用いるオートクレーブと炉ユニットの軸方向の断面図を示す。
【図22】2つの隣接するエレメンタリーシードの例を用いて、成長面、組み合わせ面および接合面の定義をお説明する。
【図23a】オートクレーブ内の多数のエレメンタリーシードについて、3種類の配置スタイルを示す。
【図23b】オートクレーブ内の多数のエレメンタリーシードについて、3種類の配置スタイルを示す。
【図23c】オートクレーブ内の多数のエレメンタリーシードについて、3種類の配置スタイルを示す。
【図24a】合成シード上に成長した、より大きな結晶からウエハーを切り出す方法を示す。
【図24b】合成シード上に成長した、より大きな結晶からウエハーを切り出す方法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属イオンを含む超臨界アンモニア含有溶媒中のガリウム含有フィードストックの溶解により作られる超臨界アンモニア含有溶液から、結晶化温度及び/又は結晶化圧力下で、より小さいエレメンタリーシードの上でガリウム含有窒化物を選択的に結晶化して、より大きい面積のガリウム含有窒化物の基板を得る方法であって、
2以上のエレメンタリーシードを用意する工程と、
2以上の離れたシードの上で選択的な結晶化を行い、組み合わせた、より大きい合成シードを得る工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記エレメンタリーシードが、急成長面と、低成長結晶面から大きく傾いた組み合わせ面とを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法の初期段階(すなわち、組み合わせ段階)において、縦方向成長が制限され、横方向成長による組み合わせが引き起こされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記合成シードが形成された後、形成された該合成シードの上で横方向成長を行わせることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記合成シードが形成された後、形成された該合成シードの上で縦方向成長を行わせることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記合成シードが形成された後、形成された該合成シードの上で自由成長を行わせることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
エレメンタリーシードの成長面が部分的に重なり、接合面が、成長面の重なった部分に位置するように、エレメンタリーシードが配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
エレメンタリーシードが、その互いの正確な配置を確保するホルダー内に、配置されることを特徴とする請求項1また2に記載の方法。
【請求項9】
エレメンタリーシードが、その組み合わせ面が互いに所望の方向となるホルダー内に、配置されることを特徴とする請求項1また2に記載の方法。
【請求項10】
エレメンタリーシードが、面上の結晶成長を本質的に可能または不可能にするように、エレメンタリーシードの選択した面を、覆う及び/又は暴露することができるホルダー内に配置されることを特徴とする請求項1また2に記載の方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の方法に用いるホルダー。
【請求項12】
ガリウム含有窒化物の単結晶、好ましくは、窒化ガリウムの単結晶を得ることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記単結晶が、超臨界アンモニア含有溶液からの結晶化により成長することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記単結晶が、溶融液からの結晶化(フラックス法)により成長することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
結晶のc軸に対して垂直な方向に成長させたエレメンタリーシードを用いることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
結晶のc軸に対して垂直な方向に成長させ、かつ、急成長面を有するエレメンタリーシードを用いることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記エレメンタリーシードが、急成長面を有し、かつ、成長面間の角度が180°に等しく、他方、接合面と少なくとも1つの成長面との角度が、30°〜90°、好ましくは45°、または、60°になるように配置することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記エレメンタリーシードが、適切に形成した成長面及び/又は組み合わせ面を備えた多面体であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エレメンタリーシードが、平坦な板状(ウエハー)の形態を有し、1つの面内に位置していることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記エレメンタリーシードの成長面及び/又は組み合わせ面が研磨されていることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記エレメンタリーシードが、低成長面を有し、かつ、成長面間の角度が120°に等しく、他方、接合面と少なくとも1つの成長面との角度が、0°〜60°、好ましくは15°、30°、または、45°になるように配置することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記エレメンタリーシードが、適切に形成した成長面及び/又は組み合わせ面を備えた多面体であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エレメンタリーシードが、平坦な板状(ウエハー)の形態を有し、1つの面内に位置していることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記エレメンタリーシードの成長面及び/又は組み合わせ面が研磨されていることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法で得られた単結晶。
【請求項26】
最も長い対角線が少なくとも2.5cm(1インチ)、好ましくは、少なくとも5cm(2インチ)、最も好ましくは、少なくとも10cm(4インチ)であることを特徴とする請求項12〜24のいずれかに記載の方法で得られた単結晶。
【請求項27】
さらに、請求項26で規定する方向に垂直な方向に沿った、少なくとも2.5cm(1インチ)、好ましくは、少なくとも5cm(2インチ)、最も好ましくは、少なくとも10cm(4インチ)の直線寸法を有することを特徴とする請求26に記載の単結晶。
【請求項28】
(0002)面からのX線ロッキングカーブ(CuのKα1線による)のFWHM値が、60arcsec未満、好ましくは約20arcsecであることを特徴とする請求項12〜24のいずれかに記載方法で得られた単結晶。
【請求項29】
結晶格子の曲率半径が、大きい、好ましくは、15mより大きい、より好ましくは、30mより大きい、最も好ましくは、約70mであることを特徴とする請求項12〜24のいずれかに記載の方法により得られた単結晶。
【請求項30】
表面転位密度が、10/cm未満、好ましくは、10/cm以下であることを特徴とする請求項12〜24のいずれかに記載の方法により得られた単結晶。
【請求項31】
請求項26〜30に記載の特徴を同時に全て有する単結晶。
【請求項32】
ドナー型及び/又はアクセプタ型及び/又は磁性型ドーパントを1017/cm〜1021/cmの濃度でドープされ、かつ、n型、p型、または、補償(半絶縁)型の材料を含むことを特徴とする請求項12〜24のいずれかに記載の方法により得られた単結晶。
【請求項33】
請求項25〜32のいずれかに記載の単結晶から切り出す、または、形成することを特徴とする極性、または、非極性ウエハー。
【請求項34】
ウエハーの領域が、接合面を含まないことを特徴とする請求項33に記載のウエハー。
【請求項35】
請求項34に記載のウエハーを単結晶から切り出す方法であって、該ウエハーが、好ましくは、接合面を含まないことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項25〜32のいずれかに記載の単結晶、または、請求項33もしくは34に記載のウエハーの、一部または全部の横方向成長、縦方向成長、または、自由成長のためのシードへの使用。
【請求項37】
請求項25〜32のいずれかに記載の単結晶、または、請求項33もしくは34に記載のウエハーの、一部または全部のエピタキシー用基板への使用。
【請求項38】
請求項25〜32のいずれかに記載の単結晶から切り出す、または、形成することを特徴とする極性、または、非極性基板。
【請求項39】
基板の領域が接合面を含まないことを特徴とする請求項38に記載の基板。
【請求項40】
請求項38または39に記載の基板の上に堆積する半導体構造。請求項1または2に記載のガリウム含有窒化物のより大きな領域の基板を得る方法であって、組み合わせた、より大きな合成シードを、新しい成長工程のシードに用い、そして、ガリウム含有窒化物の単結晶のより大きな基板を得るために用いることを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19a】
image rotate

【図19b】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23a】
image rotate

【図23b】
image rotate

【図23c】
image rotate

【図24a】
image rotate

【図24b】
image rotate


【公表番号】特表2008−521737(P2008−521737A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525083(P2007−525083)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【国際出願番号】PCT/JP2005/022396
【国際公開番号】WO2006/057463
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(502177901)アンモノ・スプウカ・ジ・オグラニチョノン・オドポヴィエドニアウノシツィオン (12)
【氏名又は名称原語表記】AMMONO Sp.zo.o.
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】