説明

ジチエノ[2,3−d:2’,3’−d]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン系の高性能で溶液加工可能な半導体

一般式(I)のジチエノベンゾジチオフェン:
【化1】


式中、
1〜R6は、各々の独立して、a)H、b)ハロゲン、c)−CN、d)−NO2、e)−OH、f)C1-20アルキル基、g)C2-20アルケニル基、h)C2-20アルキニル基、i)C1-20アルコキシ基、j)C1-20アルキルチオ基、k)C1-20ハロアルキル基、I)−Y−C3-10シクロアルキル基、m)−Y−C6-14アリール基、n)−Y−3−12員環のシクロヘテロアルキル基、またはo)−Y−5−14員環のヘテロアリール基、
[式中、各々のC1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、3−12員環シクロヘテロアルキル基、および5−14員環のヘテロアリール基は、1〜4個のR7基で置換されていてもよく、
式中、R1とR3とR2とR4は、一緒になって脂肪族の環状基を形成していてもよい]」
から選ばれ、
Yは、独立して、2価のC1-6アルキル基、2価のC1-6ハロアルキル基、または共有結合から選ばれ、
mは、独立して0、1、または2から選ばれる。
本発明はまた、請求項1〜4のいずれか一項に記載のジチエノベンゾジチオフェンの半導体または電荷輸送材としての、薄膜トランジスタ(TFT)としての、有機発光ダイオード(OLED)用の半導体部品内での、光発電部品用の、センサー内での電池の電極材料としての、光学導波路としての、あるいは電子写真用途での利用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジチエノベンゾチオフェン、その製造方法、およびその半導体または電荷輸送材としての利用に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀の後半に(マイクロ)エレクトロニクスの発展を大きく支えたものは、無機電極や絶縁体や半導体を基にする電界効果トランジスタ(FET)である。これらの材料は、信頼性が高く、高効率で、有名なムーアの法則によりますます高性能となってきている。分子状材料や高分子材料系の有機FET(OFET)は、従来のケイ素技術と競うのでなく、低性能記憶素子や、アクティブマトリックス有機発光ダイオード表示装置内のピクセルドライブ開閉素子や、RFIDタグ、スマートIDタグ、センサーなどの集積光電子装置に大きな用途を見出すであろう。
【0003】
OTFT中での有機半導体の使用は、従来から使用されている無機半導体に比べていくつかの利点がある。これらは、繊維からフィルムまでいかなる形でも加工可能であり、高い機械的柔軟性を示し、低コストで生産可能で、低重量である。しかしながら、大きな利点は、全体が半導性である部品を、大気圧で、例えば印刷法によりポリマー基板上に溶液から層を析出させて製造し、安価にFETを製造できる可能性があることである。
【0004】
OFET中で使用される有機半導体の中では、オリゴチオフェンやポリチオフェン、アセン、リレン、フタロシアネンが最もよく研究されている。例えば、複素多環系FETの最初の報告は、ポリチオフェンに関するものである。また、ポリ(3−ヘキシル)チオフェンとα,ω−ジアルキルオリゴチオフェンは、それぞれ最初の高移動度ポリマーと高移動度小分子であった。その後、これらの化合物の化学修飾により、例えば環−環結合や置換パターンの変更により、かなり多くの電子活性物質が生まれた。
【0005】
電子機器の性能は、実質的に半導体材料中での電荷キャリアの移動度とオン状態とオフ状態での電流の比(オン/オフ比)により定まる。したがって、理想的な半導体は、スイッチがオフ状態で最小の伝導度を持ち、スイッチがオン状態で最大の電荷キャリア移動度を持つ(移動度>10-3cm2-1-1、オン/オフ比>102)。また、半導体材料は、酸化劣化により部品の性能が低下するため、酸化に対して比較的安定である必要があり、即ち十分に大きなイオン化ポテンシャルを持つ必要がある。
【0006】
最も広く使用されている有機P型半導体の一つがペンタセンであり、これは通常1.5cm2/Vsを超える移動度を示す。構造が多様であり、気相から析出させる必要があるため、このアセン誘導体は装置研究を難しくする(Lin et al. IEEE Trans. Electron Devices 1997, 44, 1325)。溶液で加工可能なペンタセン誘導体で、電荷キャリア移動度が1.8cm2/Vsであるものが報告されている(Park et al. 2005 Int. Electron. Dev. Mtg. Technol. Digest 2006, 113)。しかしながら、高級アセンは一般的に不安定で、最終用途で広く使用されようにはならないであろう。
【0007】
WO2008/026602は、有機半導体として、無置換または置換の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンを開示している。これらの化合物は、3,8位で、またそれぞれ2,7位で、n−C613や、n−C613、フェニル、ペンタフルオロフェニル、p−トリフルオロメチルフェニル、ジフェニリルで置換されている。無置換のナフト[2,3−b]ナフト[2’3’:4,5]チエノ[2,3−d]チエノフェンもまた開示されている。
【0008】
JP2008−10541Aは、6,13位で、それぞれトリス(1−メチル−エチル)シリルエチニルおよび4−ヘキシル−2,6−ジイソプロピルフェニルで置換された置換ベンゾ[1”,2”:4,5:4”,5”:4’,5’]ジチエノ[3,2−b:3’,2−b’]ビス[1]ベンゾチオフェンを開示している。この構造系の部品を用いるFETでは、その最大の移動度が0.47cm2/Vsに達することが報告されている。
【0009】
この報告の高性能小分子半導体への反応経路は長く、また低収率である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2008/026602
【特許文献2】JP2008−10541A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、有機半導体材料として使用される新規の化合物であって、合成が容易で、かなり高い移動度を持ち、酸化安定性に優れ、加工が容易なものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、一般式(I)のジチエノベンゾジチオフェンで達成される:
【0013】
【化1】

【0014】
式中、
1〜R6は、各々の独立して、a)H、b)ハロゲン、c)−CN、d)−NO2、e)−OH、f)C1-20アルキル基、g)C2-20アルケニル基、h)C2-20アルキニル基、i)C1-20アルコキシ基、j)C1-20アルキルチオ基、k)C1-20ハロアルキル基、l)−Y−C3-10シクロアルキル基、m)−Y−C6-14アリール基、n)−Y−3−12員環のシクロヘテロアルキル基、またはo)−Y−5−14員環のヘテロアリール基、
[式中、各々のC1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、3−12員環のシクロヘテロアルキル基、および5−14員環のヘテロアリール基は、1〜4個のR7基で置換されていてもよく、
式中、R1とR3とR2とR4は、一緒になって脂肪族環状基を形成していてもよい)]、
から選ばれ、
7は、独立してa)ハロゲン、b)−CN、c)−NO2、d)オキソ、e)−OH、f)−NH2、g)−NH(C1-20アルキル)、h)−N(C1-20アルキル)2、i)−N(C1-20アルキル)−C6-14アリール、j)−N(C6-14アリール)2、k)−S(O)mH、l)−S(O)m−C1-20アルキル、m)−S(O)2OH、n)−S(O)m−OC1-20アルキル、o)−S(O)m−OC6-14アリール、p)−CHO、q)−C(O)−C1-20アルキル、r)−C(O)−C6-14アリール、s)−C(O)OH、t)−C(O)−OC1-20アルキル、u)−C(O)−OC6-14アリール、v)−C(O)NH2、w)−C(O)NH−C1-20アルキル、x)−C(O)N(C1-20アルキル)2、y)−C(O)NH−C6-14アリール、z)−C(O)N(C1-20アルキル)−C6-14アリール、aa)−C(O)N(C6-14アリール)2、ab)−C(S)NH2、ac)−C(S)NH−C1-20アルキル、ad)−C(S)N(C1-20アルキル)2、ae)−C(S)N(C6-14アリール)2、af)−C(S)N(C1-20アルキル)−C6-14アリール、ag)−C(S)NH−C6-14アリール、ah)−S(O)mNH2、ai)−S(O)mNH(C1-20アルキル)、aj)−S(O)mN(C1-20アルキル)2、ak)−S(O)mNH(C6-14アリール)、al)−S(O)mN(C1-20アルキル)−C6-14アリール、am)−S(O)mN(C6-14アリール)2、an)−SiH3、ao)−SiH(C1-20アルキル)2、ap)−SiH2(C1-20アルキル)、aq)−Si(C1-20アルキル)3、ar)C1-20アルキル基、as)C2-20アルケニル基、at)C2-20アルキニル基、au)C1-20アルコキシ基、av)C1-20アルキルチオ基、aw)C1-20ハロアルキル基、ax)C3-10シクロアルキル基、ay)C6-14アリール基、az)ハロアリール基、ba)3−12員環のシクロヘテロアルキル基、またはbb)5−14員環のヘテロアリール基から選ばれ、
Yは、独立して、2価のC1-6アルキル基、2価のC1-6ハロアルキル基、または共有結合から選ばれ、
mは、独立して0、1、または2から選ばれる。
【0015】
本発明のジチエノベンゾジチオフェンの利点は、溶液加工可能な安定な有機半導体の製造にむけての単純で高収率な合成経路である。市販の材料から目的の構造を持つ化合物が、三反応工程のみで、最高で50%(最適化なしで)の総収率で得られる。上述の構造階級を持つ単一化合物の電荷キャリア移動度は1.4cm2/Vsであり、電流オン/オフ比は108である。
【0016】
本発明はまた、本発明のジチエノベンゾジチオフェンの、半導体または電荷輸送材としての、特に光学部品、電気光学部品または電子部品中の半導体または電荷輸送材としての、薄膜トランジスタとしての、特に平型ビジュアル表示装置内の薄膜トランジスタとしての、高周波認タグ(RFIDタグ)用の、またはエレクトロルミネッセント表示などの有機発光ダイオード(OLED)用の半導体成分中での、液晶表示装置のバックライト用の、光起電部品用の、センサー中での電池の電極材料としての、光導波管としての、電子写真記録などの電子写真用途での利用を提供する。
【0017】
本発明はまた、本発明のジチエノベンゾジチオフェンを含む光学部品、電子光学部品、または電子部品を提供する。これらの部品は、例えば、FET、集積回路(IC)、TFT、OLEDまたは配向層であってもよい。
【0018】
本発明のジチエノベンゾジチオフェンは、特に半導体として好適である。これは、この目的に必要な移動度を持っているためである。アルキル基を導入すると溶解度が上がり、溶液としての加工性がよくなる。
【0019】
本明細書において、「フィールド効果移動度」または「移動度」とは、電場などの外的な刺激で誘起された電荷キャリア(例えば、p型の半導体材料の場合は正孔(または正電荷の単位)、n型の半導体材料の場合は電子)が電場の影響下で材料中を移動する速度の指標である。
【0020】
「環状の基」は、一個以上の(例えば、1〜6個の)炭素環または複素環を含む。環状の基が多環の基である場合、この多環系は相互に縮合した(すなわち、共通の結合を共有する)及び/又はスピロ原子を経由して連結された一個以上の環をもつ。この環状の基は、シクロアルキル基であってもヘテロシクロアルキル基であってもよく、上述のように必要なら置換されていてもよい。
【0021】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードをさし、好ましくはフルオロ、クロロまたはブロモをさす。
【0022】
「アルキル」は、直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基をいう。アルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n−プロピルやiso−プロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)、ペンチル基(例えば、n−ペンチル、iso−ペンチル、ネオペンチル)などが挙げられる。アルキル基は、好ましくは1〜30個の炭素原子を、例えば1〜20個の炭素原子(即ち、C1-20アルキル基)を有する。アルキル基は、特に好ましくは1〜6個の炭素原子を有し、「低級アルキル基」とよばれることもある。アルキル基は、置換しても非置換であってもよい。アルキル基は、通常他のアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基で置換されていない。
【0023】
「ハロアルキル」は、一個以上のハロゲン置換基を有するアルキル基をいう。ハロアルキル基は、好ましくは1〜20個の炭素原子、特に1〜10個の炭素原子を持つことができる。ハロアルキル基の例としては、CF3、C25、CHF2、CH2F、CCl3、CHCl2、CH2Cl、C2Cl5などがあげられる。ペルハロアルキル基、即ちすべての水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基(例えば、CF3やC25)は、「ハロアルキル」の定義内に含まれる。ペルハロアルキル基でないハロアルキル基は、さらに1〜5個のR5で置換されていてもよい。なお、R5は式(I)で定義されるものである。
【0024】
【化2】

【0025】
「アルコキシ」は、−O−アルキル基をいう。アルコキシ基は、以下の例には限定されないが、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n−プロポキシやソプロポキシ)、t−ブトキシ基などがあげられる。−O−アルキル基中のアルキル基は、さらに1〜5個のR7で置換されていてもよい。なお、R7は式(I)で定義されるものである。
【0026】
「アルキルチオ」はS−アルキル基をいう。アルキルチオ基の例としては、以下の例には限定されないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ(例えば、n−プロピルチオやイソプロピルチオ)、t−ブチルチオ基等があげられる。−S−アルキル基中のアルキル基は、さらに1〜5個のR7で置換されていてもよく、R7は式(I)で定義されるものである。
【0027】
「アリールアルキル」は、アルキル−アリール基をいう。なお、このアリールアルキル基は、アルキル基を経由して特定の化学構造に共有結合している。アリールアルキル基は、−Y−C6-14アリール基で定義されるもので、Yは本明細書に定義するものである。アリールアルキル基の一例は、ベンジル基(−CH2−C65)である。アリールアルキル基は、さらに置換されていてもよく、即ち、アリール基及び/又はアルキル基が、本明細書に開示のように置換されていてもよい。
【0028】
「アルケニル」は、一個以上の炭素−炭素二重結合をもつ直鎖または分岐状のアルキル基をいう。好ましいアルケニル基は、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基である。一個以上の炭素−炭素二重結合が内部にあってもよく(例えば2−ブテン)、末端にあってもよい(例えば、1−ブテン)。いろいろな実施様態において、アルケニル基は、2〜30個の炭素原子を、例えば2〜20個の炭素原子(即ち、C2-20アルケニル基)をもつことができる。いくつかの実施様態においては、アルケニル基は、本明細書に開示のように置換されていてもよい。アルケニル基は、通常他のアルケニル基、アルキル基またはアルキニル基で置換されていない。
【0029】
「アルキニル」は、一個以上の炭素−炭素三重結合をもつ直鎖または分岐状のアルキル基をいう。好ましいアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基があげられる。一個以上の炭素−炭素三重結合が内部にあっても(例えば、2−ブチン)、末端にあってもよい(例えば、1−ブチン)。いろいろな実施様態において、アルキニル基は、2〜30個の炭素原子を、例えば2〜20個の炭素原子(即ち、C2-20アルキニル基)もつことができる。いくつかの実施様態においては、アルキニル基は、本明細書に開示のように置換されている。アルキニル基は、通常他のアルキニル基、アルキル基、アルケニル基で置換されていない。
【0030】
「シクロアルキル」は、環状のアルキル基やアルケニル基、アルキニル基を含む非芳香族炭素環基をいう。好ましいシクロアルキル基は、3〜20個の炭素原子を、例えば3〜14個の炭素原子(即ち、C3-14シクロアルキル基)をもつことができる。シクロアルキル基は、単環(例えば、シクロヘキシル)であっても、多環(例えば、縮合環、架橋環及び/又はスピロ環系)であってもよく、その場合、炭素原子は、環系の内部または外部に存在する。シクロアルキル基の環のいずれかの適当な位置が、特定の化学構造と共有結合している。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカリル、アダマンチル、スピロ[4,5]デカニル基、およびこれらの同族体や異性体等があげられる。シクロアルキル基は、本明細書に開示のように置換されていてもよい。
【0031】
「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外のいずれかの元素をいい、例えば、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、リン、セレンがあげられる。
【0032】
「シクロヘテロアルキル」は、少なくとも一種の、O、S、Se、N、P、Si(例えば、O、S、N)から選ばれる環ヘテロ原子と、必要に応じて一個以上の二重結合または三重結合をもつ非芳香族シクロアルキル基をいう。シクロヘテロアルキル基は、3〜20個の環原子を、例えば3〜14個の環原子(即ち、3−14員環シクロヘテロアルキル基)をもつことができる。シクロヘテロアルキル環中の一個以上のN、P、S、またはSe原子(例えば、NまたはS)が酸化されていてもよい(例えば、モルホリンN−オキシド、チオモルフォリンS−オキシド、チオモルフォリンS−ジオキシド)。シクロヘテロアルキル基の窒素または燐原子は、置換基を、特にアルキル基を有していてもよい。シクロヘテロアルキル基は、また一個以上のオキソ基を持っていてもよく、例としては、オキソピペリジル、オキソオコサゾリジル、ジオキソ−(1H,3H)−ピリミジル、オキソ−2(1H)−ピリジル等があげられる。これ以外に好ましいシクロヘテロアルキル基としては、モルホリニル、チオモルフォリニル、ピラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、ピベラジニルがあげられる。シクロヘテロアルキル基は、置換していても非置換であってもよい。
【0033】
「アリール」は、芳香族単環式炭化水素環系、または2個以上の芳香族炭化水素環が縮合した(即ち、共通の結合をもつ)、または少なくとも一種の芳香族単環式炭化水素環が一個以上のシクロアルキル及び/又はシクロヘテロアルキル環と縮合した多環系をいう。好ましくは、アリール基は、複数の縮合環をも含むその環系内に6〜16個の炭素原子をもつ(例えば、C6-16アリール基)。特に好ましくは、多環アリール基が8〜16個の炭素原子をもつ。好ましい、一個以上の芳香族炭素環のみを持つアリール基としては、フェニル、1−ナフチル(二環)、2−ナフチル(二環)、アントラセニル(三環)、フェナンスレニル(三環)があげられる。好ましい、少なくとも一個の芳香族炭素環が一個以上のシクロアルキル及び/又はシクロヘテロアルキル環と縮合している多環の環系としては、特に、シクロペンタンのベンゾ誘導体(即ち、5,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系であるインダニル基)、シクロヘキサン(即ち、6,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系であるテトラヒドロナフチル基)、イミダゾリン(即ち、5,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系であるベンズイミダゾリニル基)、およびピラン(即ち、6,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系であるクロメニル基)があげられる。他の好ましいアリール基としては、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、クロマニル、インドリニル基等があげられる。いくつかの実施様態においては、アリール基は、本明細書に開示のように置換されていてもよい。いくつかの実施様態においては、アリール基は、1個以上のハロゲン置換基を持っていてもよく、この場合は「ハロアリール」基とよばれる。ペルハロアリール基、即ちすべての水素原子がハロゲン原子で置換されたアリール基(例えば、−C65)は、「ハロアリール」の定義内に含まれる。特定の実施様態においては、アリール基が他のアリール基で置換されており、ビアリール基とよばれる。ビアリール基中の各々のアリール基は、置換されていてもされていなくてもよい。
【0034】
「ヘテロアリール」は、少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む芳香族単環式または多環式の環系をいう。ヘテロ原子は、好ましくは、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、およびセレン(Se)、または多環の環系から選ばれるが、特にこれに限定されるわけではない。多環ヘテロアリール基としては、2個以上の相互に縮合したヘテロアリール環と、1個以上の芳香族炭素環、非芳香族炭素環及び/又は非芳香族シクロヘテロアルキル環と縮合した単環式ヘテロアリール環があげられる。好ましくは、ヘテロアリール基が、5〜16個の環原子と1〜5個の環ヘテロ原子とを含む(即ち、5−16員環のヘテロアリール基)。ヘテロアリール基の具体例としては、以下に示す5員または6員単環式環系および5−6二環式環系があげられる。
【0035】
【化3】

【0036】
式中、Tは、O、S、NH、N−アルキル、N−アリール、n−(アリールアルキル)(例えば、N−ベンジル)、SiH2、SiH−(アルキル)、Si(アルキル)2、SiH−(アリールアルキル)、Si−(アリールアルキル)2、またはSi(アルキル)(アリールアルキル)である。このようなヘテロアリール環の例としては、ピロリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾイル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサジアゾイル、ベンズオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インダリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノビリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノキサゾリル、チエノイミダゾリル基等があげられる。ヘテロアリール基の他の例としては、4,5,6,7−テトラヒドロインドリル、テトラヒドロキノリニル、ベンゾチエノピリジニル、ベンゾフロビリジニル基等があげられる。いくつかの実施様態においては、ヘテロアリール基が、本明細書に開示のように置換されていてもよい。
【0037】
本明細書の化合物は、他の二個の基と共有結合を形成可能な連結基として定義される「2価の基」を含む。例えば、本明細書の化合物には、2価のC1-20アルキル基、例えばメチレン基があげられる。
【0038】
好ましいジチエノベンゾジチオフェンは、式(I)に示されるものであり、
式中
1〜R6は、上述のように、各々の独立して、a)H、f)C1-20アルキル基、i)C1-20アルコキシ基、m)−Y−C6-14アリール基から選ばれる。
【0039】
より好ましいジチエノベンゾジチオフェンは式(I)に示されるものであり、
式中、

1〜R4は、上述のように、各々の独立して、a)H、f)C1-20アルキル基、i)C1-20アルコキシ基、m)−Y−C6-14アリール基から選ばれ、
5とR6は水素である。
【0040】
特に好ましいジチエノベンゾジチオフェンは式(I)に示されるもので、
式中、
1とR2は、上述のように、各々の独立して、a)H、f)C1-20アルキル基、i)C1-20アルコキシ基、m)−Y−C6-14アリール基から選ばれ、
3〜R6は水素である。
【0041】
特に好ましい置換基R1〜R6は、R1とR2がC1-20アルキル基で、R3〜R6が水素である。
【0042】
本明細書のジチエノベンゾジチオフェンは、下の合成経路1に示す手法に従って、市販の出発原料、文献より既知の化合物または容易に合成される中間体から、標準的な合成方法や当業界の熟練者には既知の方法で製造可能である。有機分子の製造や官能基の変換、操作のための標準的な合成方法や手順は、関連する科学文献や本分野の標準的な教科書から容易に入手可能である。特に断りのない限り、典型的なあるいは好ましいプロセス条件(即ち、反応温度や時間、反応物のモル比、溶媒、圧力等)が与えられても、他のプロセス条件も使用可能であることがわかるであろう。至適反応条件は用いる具体的な反応物や溶媒により異なるが、このような条件は通常の最適化手法で当業界の熟練者により決定可能である。本明細書に記載の化合物の合成を最適化するために、与えられた合成工程の内容と順序を変更することができることは、有機合成の技術の熟練者には自明であろう。
【0043】
本明細書に記載のプロセスは、既知の適当な方法のいずれかで追跡可能である。例えば、生成物の形成は、核磁気共鳴分光法(NMR、例えば1Hまたは13C)、赤外分光法(IR)、吸光分光分析(例えば、UV−可視)、質量分析(MS)などの分光的な手段で、あるいは高速液体クロマトグラフ法(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)または薄層クロマトグラフィー(TLC)などのクロマトグラフィーで追跡可能である。
【0044】
本明細書に記載の反応やプロセスは適当な溶媒中で実施可能であり、これらの溶媒は有機合成の技術の熟練者により容易に選択される。好適な代表的な溶媒は、反応が行われる温度で、即ち溶媒の凍結温度から溶媒の沸点の範囲で、実質的に反応物、中間体及び/又は生成物に反応しないものである。特定の反応は、ある溶媒中で、あるいは二種以上の溶媒の混合物中で実施可能である。特定の反応工程では、その特定の反応工程に適当な溶媒が選択される。
【0045】
式(I)のジチエノベンゾジチオフェンは、好ましくは以下の反応経路1を用いて合成される:
【0046】
【化4】

【0047】
工程(a)、(b)、(c)、(d)は、以下の文献に記載されている。
(a)van Breemen et al. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 2336−2345;
(b)Qin et al. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 7015−7018;
(c)Zhao et al. J. Org. Chem. 2007, 72, 6364−6371 ;
(d)Sirringhaus et al. J. Mater. Chem. 1999, 9, 2095。
【0048】
Rの種類によっては、化合物5が市販されていることもある。
【0049】
本発明は、本発明の化合物の酸化型と還元型の両方を含む。電子の欠乏または過剰により、高伝導度の非局在化イオンを形成する。これは、通常のドーパントでドーピングすることで行われる。ドーパントおよびドーピングの方法は、例えばEP−A0528662、US5198153、またはWO96/21659により周知である。好適なドーピング方法としては、例えば、ドーピングガスでのドーピング、ドーパントを含む溶液中での電気化学的ドーピング、熱拡散によるドーピング、ドーパントの半導体材料へのイオン注入によるドーピングがあげられる。
【0050】
電子を電荷キャリアとして使用する場合は、ハロゲン(例えば、I2や、Cl2、Br2、ICl、ICl2、IBr、IF)、ルイス酸(例えば、PF5や、AsF5、SbF5、BF3、BCl3、SbCl5、BBr3、SO3)、無機酸(例えば、HFや、HCl、HNO3、H2SO4、HClO4、FSO3H、ClSO3H)、有機酸またはアミノ酸、遷移金属化合物(例えば、FeCl3や、FeOCl、Fe(ClO43、Fe(4−CH364SO33、TiCl4、ZrCl4、HfCl4、NbF5、NbCl5、TaCl5、MoF5、MoCl5、WF5、WCl6、UF6、LnCl3(式中、Lnはランタノイド))、アニオン(例えば、Cl-や、Br-,I-、I3-、HSO4-、SO42-、NO3-、ClO4-、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、FeCl4-、Fe(CN)63-、アリール−SO3-などの異なるスルホン酸のアニオン)を用いることが好ましい。正孔を電荷キャリアとして用いる場合は、カチオン(例えば、H+や、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+)、アルカリ金属(例えば、Liや、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(例えば、Caや、Sr、Ba)、O2、XeOF4、(NO2+)(SbF6-)、(NO2+)(SbCl6-)、(NO2+)(BF4-)、AgClO4、H2IrCl6、La(NO33、FSO2OOSO2F、Eu、アセチルコリン、R4+、R4+、R6As+、R3+(式中、Rはアルキル基)を使用することが好ましい。
【0051】
伝導型の本発明のジチエノベンゾジチオフェンは、有機伝導体として、具体的には有機発光ダイオード(OLED)中の電荷注入層やITO平坦化層、フラットスクリーンやタッチスクリーン、静電防止フィルム、プリント回路、キャパシターとして利用可能であるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0052】
本発明のジチエノベンゾジチオフェンは、光学材料や電子材料、半導体材料の製造に、特に電界効果トランジスタ(FET)の電荷輸送材、例えば集積回路(IC)の部品、IDタグまたはTFTの製造に使用可能である。また、これらを、有機発光ダイオード(OLED)のエレクトロルミネッセント表示、またはブラックライト(例えば液晶表示装置(LCD)、太陽電池用途、またはセンサー、電子写真記録などの半導体用途に使うこともできる。
【0053】
本発明のジチエノベンゾジチオフェンは溶解性がよいため、溶液として基板に塗布可能である。したがって、安価なプロセスで、例えば回転塗布や印刷により層を形成することができる。
【0054】
好適な溶媒や溶媒混合物としては、例えばエーテルや、芳香族化合物、特に塩素化溶媒があげられる。
【0055】
FETや、他の半導体材料を含む部品、例えばダイオードは、貴重品の、例えば紙幣やクレジットカード、IDカードや運転免許書、またゴム印、郵便切手、切符などの金銭的価値のある文書の真正性を示し偽造を防止するためのIDタグまたは安全ラベルに好ましく使用できる。
【0056】
また、本発明のポリマーを、有機発光ダイオード(OLED)中で、例えばディスプレー中で、あるいは液晶表示装置(LCD)用のバックライト中として使用することができる。通常OLEDは、多層構造を有している。発光層は、一般的には1層以上の電子輸送層及び/又は正孔輸送層の間に設けられている。電圧が印加されると、電子または正孔が発光層の方向に移動し、そこで再結合し、発光層中の発光化合物を励起させて、発光させる。これらのポリマーや材料や層は、それらの電気的性質や光学的性質に応じて、1層以上の輸送層及び/又は発光層中で使用される。これらの化合物、材料または層が電子発光性であるか電子発光性の基または化合物を持っている場合は、これらは、特に発光層に好適である。
【0057】
気相析出法やいろいろな溶液加工法など、いろいろな析出方法が有機半導体とともに利用されている。例えば、プリントエレクトロニクス技術の多くが、インクジェット印刷を注目している。これは、主にこの方法が、特定部品の位置制御や多層間位置制御を可能とするためである。インクジェット印刷は非接触プロセスであり、前もってマスターを作る必要がなく(接触印刷法と比べて)、また吐出量の数値制御が可能でオンデマンド型印刷を可能とするなどの長所を持っている。マイクロディスペンス法は、もう一つの非接触印刷法である。しかしながら、接触印刷法は、非常に高速のロール−ロール加工に適しているという長所をもつ。接触印刷法の例としては、以下の例には限定されないが、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、リソグラフ印刷、パッド印刷、マイクロコンタクト印刷があげられる。本明細書において、「印刷」には、インクジェット印刷やマイクロディスペンス法などの非接触プロセスと、スクリーン印刷や、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、リソグラフ印刷、パッド印刷、マイクロコンタクト印刷などの接触プロセスが含まれる。他の溶液加工法には、例えば、回転塗布、滴下流延、ゾーン塗布、浸漬塗布、ブレード塗布、または吹付塗布が含まれる。
【0058】
本明細書に開示されている化合物を利用するいろいろな製造物は、例えば電界効果トランジスタ(例えば、薄膜トランジスタ)、太陽電池、有機発光ダイオード(OLED)、相補的な金属酸化物半導体(CMOS)、相補インバータ、Dフリップフロップ、整流器、リング発振器などの電子機器や光学機器、光電子機器は、すべて本明細書の範囲に含まれ、またその製造方法もまた本明細書の範囲に含まれる。
【0059】
したがって、本明細書はまた半導体材料の製造方法を提供する。この方法は、本明細書に開示されている一種以上の溶媒からなる液状媒体中に溶解または分散した1種以上の本明細書に開示の化合物を含む組成物を調整し、この組成物を支持体上に塗布して半導体材料前駆体をつくり、この半導体前駆体を加工(例えば、加熱)して本明細書に開示されている化合物を含む半導体材料(例えば、薄膜半導体)を製造することからなる。多くの実施様態において、この液状媒体が、有機溶媒、水などの無機溶媒、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施様態においては、この組成物は、さらに独立して、洗剤や分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、殺生剤、静菌剤から選ばれる1種以上の添加物を含むことができる。例えば、界面活性剤及び/又は他のポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリ−メチルメタクリレート等)は、分散剤、結合剤、相溶化剤及び/又は消泡剤として含めることができる。いくつかの実施様態においては、析出工程を、インクジェット印刷やいろいろな接触印刷法(例えば、スクリーン印刷や、グラビア印刷、オフセット印刷、パッド印刷、リソグラフ印刷、フレキソ印刷、マイクロコンタクト印刷)などの印刷で行ってもよい。他の実施様態においては、この析出工程を、回転塗布、滴下流延、ゾーン塗布、浸漬塗布、ブレード塗布、または吹付塗布により行うことができる。
【0060】
本明細書はまた、本明細書の半導体材料を含む複合物と基板部品及び/又は誘電体部品とからなるいろいろな本明細書に記載の装置などの製造物を提供する。この基板部品は、ドープしたケイ素、酸化インジウムスズ(ITO)、ITO被覆のガラス、ITO被覆のポリイミドまたは他のプラスチック、アルミニウムなどの純金属あるいはそれをポリマーなどの基板に塗布させたもの、ドープしたポリチオフェンなどから選ばれる。誘電体部品は、いろいろな酸化物(例えば、SiO2、Ai23、HfO2)などの無機誘電体材料、いろいろなポリマー材料(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリハロエチレン、ポリ−アクリレート)などの有機誘電体材料、また自己組織化超ラティス/自己組織化ナノ誘電体(SAS/SAND)材料(例えば、Yoon, M−H. et al., PNAS, 102 (13): 4678−4682 (2005)に記載のもの、本文献の開示のすべてを本明細書の引用文献とする)、さらには有機/無機複合誘電体材料(例えば、U.S.特許出願No.11/642,504に記載のもの、本文献の開示のすべてを本明細書の引用文献とする)から製造できる。いくつかの実施様態においては、この誘電体部品が、U.S.特許出願No.11/315,076と60/816,952、60/861,308に記載の架橋ポリマーブレンドを含むことができる。なお、各文献の開示のすべてを本明細書の引用文献とする。この複合物は、1個以上の電気接点をもっていてもよい。ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極に好適な材料には、金属(例えば、Au、Al、Ni、Cu)や、透明伝導性酸化物(例えば、ITO、IZO、ZITO、GZO、GIO、GITO)、伝導性ポリマー(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy))があげられる。1個以上の本明細書に記載の複合物を、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、具体的には有機電界効果トランジスタ(OFET)や、センサー、キャパシター、ユニポーラ回路、相補回路(例えば、インバータ回路)などのいろいろな有機電子装置、光学装置および光電子装置中に埋め込むことができる。
【0061】
本明細書の材料を使用するのが有用な他の製造物は、太陽電池または太陽電池セルである。本明細書の部品は広い光吸収及び/又は大きく正にシフトした還元電位を示すため、このような用途に好適となる。したがって、本明細書に記載の物質は、pn接合を形成しているn型半導体を含む光起電装置中で、p型半導体として使用することができる。これらの化合物は、支持体上に載せて複合物を形成できるような薄膜半導体の形であってもよい。本明細書の小分子の開発も、当分野の熟練者の知識内に属する。
【0062】
したがって、本明細書の他の側面は、本明細書の半導体材料を用いた有機電界効果トランジスタの製造方法に関する。本明細書の半導体材料は、トップ−ゲート上部接触キャパシター構造、トップ−ゲート下部接触キャパシター構造、ボトム−ゲート上部接触キャパシター構造、およびボトムゲート下部接触キャパシター構造などのいろいろな型式の有機電界効果トランジスタの組み立てに用いることができる。図1は、四つの通常型のOFET構造、即ち上部接触ボトム−ゲート構造(a)、下部接触ボトム−ゲート構造(b)、下部接触トップ−ゲート構造、(c)、上部接触トップ−ゲート構造(d)を示す。図1に示すように、一つのOFETは、誘電体層(例えば、それぞれ図1a、1b、1c、1の8、8’、8”、8’”で示す)と、半導体層(例えば、それぞれ図1a、1b、1c、1の6、6’、6”、6’”で示す)と、ゲート接点(例えば、それぞれ図1a、1b、1c、1の10、10’、10”、10’”で示す)と、基板(例えば、それぞれ図1a、1b、1c、1の12、12’、12”、12’”で示す)と、ソース接点とドレイン接点(例えば、それぞれ図1a、1b、1c、1の2、2’、2”、2’”と4、4’、4”、4’”で示す)とを含む。
【0063】
特定の実施様態においては、OTFT装置を、この化合物を用いて、SiO2を誘電体として用いているドープ後のケイ素基板上に、上部接触構造で形成することができる。特定の実施様態においては、少なくとも本明細書の材料を含む活性な半導体層を、室温または高温で析出させることができる。他の実施様態においては、少なくとも本明細書の化合物を含む活性半導体層が、上述のように回転塗布または印刷により形成される。上部接触装置を得るには、シャドウマスクを用いて金属性接点をフィルム上にパターン状に形成することができる。
【0064】
すべての定量データ(百分率、ppm等)は、特に断らない限り、混合物の全重量に対する、重量ベースの値である。
【実施例】
【0065】
ジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの合成
【0066】
実施例1
反応スキーム1:
【0067】
【化5】

【0068】
4,4,5,5−テトラメチル−2−(5−ペンチルチオフェン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(4a)の合成
冷却した(−78℃)無水THF(60ml)中の2−n−ペンチルチオフェン(5.0g、32.1mmol)とピナコール(11.5g、97.23mmol)の混合物に、n−BuLi(22.3ml、35.6mmol)のヘキサン溶液を滴下した。この混合物を−78℃で10分間攪拌した。この反応混合物を0℃として1時間攪拌し、−78℃に冷却後にトリイソプロピルボレート(7.3g、38.9mmol)のTHF、(24ml)溶液を滴下ロートを用いて滴下した。一夜かけて、攪拌しながらこの混合物を室温に戻した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ヘキサン/EA)10:1)で精製して、赤褐色の液体を得た(7.35g、81.0%)。
【0069】
1H NMR (CDCl3)δ(ppm):7.46 (d、1H、J=3.6Hz)、6.86 (d、1H、J=3.6Hz)、2.85 (t、2H、J=7.6Hz)1.70−1.64 (m、2H)、1.34−0.90 (m、18H)、0.87 (t、3H、J=7.2Hz)
【0070】
5,5’−(2,5−ビス(メチルスルフィニル)−1,4−フェニレン)ビス(2−ペンチルチオフェン)(2a)の合成
1,4−ジブロモ−2,5−ビス(メチルスルフィニル)ベンゼン3(1g、2.8mmol)を、4,4,5,5−テトラメチル−2−(5−ペンチルチオフェン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(3.4g、12.2mmol)の無水THF溶液(17ml)に添加し、得られた混合物を窒素で30分間置換した。次いで、Pd(PPh34(87mg、0.075mmol)を加え、反応混合物を60℃で一夜加熱した。この混合物をジクロロメタンで抽出し、塩水で洗浄した。濾液をMg2、SO4上で乾燥後、濾過し、溶媒を真空下で除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ヘキサン/EA)3:1)で精製して、0.885g(63%)の2aを得た。
【0071】
1H NMR (CDCl3)δ(ppm):8.13 (s, 2H)、7.08 (d、2H、J=3.6Hz)、6.80 (d、2H、J=3.6Hz)、2.84 (t, 4H、J=7.2Hz)、2.62 (s、6H)、1.74−1.70 (m、4H)、1.38−1.35 (m、6H)、0.92 (t、6H、J=2.8Hz)
【0072】
ジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンの合成
5,5’−(2,5−ビス(メチルスルフィニル)−1,4−フェニレン)ビス(2−ペンチルチオフェン)(2a)(885mg、1.7mmol)と五酸化リン(93mg、0.658mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸(20ml)とを丸底フラスコに投入した。この混合物を室温で72時間攪拌して暗褐色の溶液を得た。これを氷水(100ml)に注ぎ入れた。黄色の沈殿物を吸引濾過で捕集し、真空下で乾燥させた。この化合物は非極性有機溶媒に不溶であり、その構造はスルホニウム塩であると考えられた。ピリジン(132ml)中で12時間攪拌して固体の脱メチル化を行った。この懸濁液を室温にまで冷却し、大量のCH2Cl2を加えて生成物を抽出した。ヘキサンを溶離液として用い、ジクロロメタンから再結晶して、ジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(1a)を、くすんだ白色の粉末として得た(200mg、26%)。
【0073】
1H NMR (CDCl3)δ(ppm):8.17 (s、2H)、7.01 (s、2H)、2.94 (t、4H、J=7.6Hz)、1.77−1.55 (m、4H)、1.42−1.37 (m、8H)、0.90 (t、6H、J=6.8Hz)
【0074】
実施例2
反応経路2:
【0075】
【化6】

【0076】
2−ヘキシル−チオフェン(5b)の合成
冷却した(−70℃)チオフェン(17.6g、0.21mol)と無水THF(100ml)との混合物に、n−BuLi(137.5ml、1,6、M、0.22mol)のヘキサン溶液を滴下した。0℃で1時間攪拌後、この混合物を−40℃に冷却し、1−ヘキシルブロミド(0.22mol)を添加した。この混合物をゆっくり室温にまで暖めた。水(250ml)を加え、その混合物をジエチルエーテルで抽出した(3×150ml)。有機相を集め、Mg2、SO4上で乾燥し、真空下で濃縮した。この生成物を真空蒸留により精製した。一般的な方法で、この生成物が無色の油として得られた(26.5g、75、%)。
【0077】
5−ヘキシル−2−トリメチルスタンニルチオフェン(4b)の合成
2−ヘキシルチオフェン(23.0g、0.137mol)を250mlのTHFに溶解し、0℃でn−BuLi(94ml、1.6Mヘキサン中、0.150mol)を滴下した。この混合物を0℃で1時間攪拌し、−78℃まで冷却した。トリメチルスズ塩化物(32.8g、0.164mol)の100mlTHF溶液を滴下した。混合物をゆっくりと室温まで暖め、2時間攪拌した。氷水中に投入して処理して得られた生成物を、高真空下で108℃で蒸留した。5−ヘキシル−2−トリメチルスタンニルチオフェンが、無色の液体として得られた(40.8g、収率90、%)。
【0078】
5,5’−(2,5−ビス(メチルスルフィニル)−1,4−フェニレン)ビス(2−ヘキシルチオフェン)(2b)の合成
1,4−ジブロモ−2,5−ビス(メチルスルフィニル)ベンゼン3(0.900g、2.5mmol)を、4b(1.82g、5.5mmol)の無水DMF(30ml)溶液に添加し、得られた混合物をArで30分間置換した。次いでPd(PPh34(87mg、0.075mmol)を添加し、反応混合物を80℃で一夜加熱した。過剰のDMFを高真空下で除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、10%のKF水溶液で処理した。この混合物をセライトの層で濾過した。この濾液をMg2、SO4上で乾燥後濾過し、溶媒を真空下で除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ヘキサン/THF)1:1)で精製して、1g(75%)の2bを得た。
【0079】
ジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(1b)の合成
5,5’−(2,5−ビス(メチルスルフィニル)−1,4−フェニレン)ビス(2−ヘキシルチオフェン)(2b)(200mg、0.53mmol)と五酸化リン(28mg、0.2mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸(6ml)とを、10mlの丸底フラスコに投入した。この混合物を室温で72時間攪拌して暗褐色の溶液を得、これを次いで氷水(100ml)に注入した。黄色の沈殿物を吸引濾過で捕集し、真空下で乾燥させた。この化合物は非極性有機溶媒に不溶で、その構造はスルホニウム塩と考えられた。ピリジン(40ml)中で12時間攪拌して固体の脱メチル化を行った。この懸濁液を室温にまで冷却し、大量のCH2Cl2を加えて、生成物を抽出した。ヘキサンを溶離液としてジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(1a)を、くすんだ白色の粉末として得た(120mg、70、%)。
【0080】
実施例3:
2−プロピル−5−トリメチルスタンニルチオフェン(4c)の合成
2−プロピルチオフェン(5.0g、39.6mmol)を160mlのTHFに溶解し、n−BuLi(27ml、1.6、Mヘキサン、43.6mmol)を0℃で滴下した。この混合物を0℃で1時間攪拌し、その後−78℃に冷却した。トリメチルスズクロリド(8.679g、43.6mmol)の50ml−THF溶液を滴下した。この混合物をゆっくりと室温まで暖めて2時間攪拌した。氷水中に投入し、その水を処理をして、生成物として薄褐色の液体を得た(10.1348g、収率88.6、%)。
【0081】
1H NMR (CDCl3) δ(ppm):7.02−7.01 (m、1H)、6.91−6.90 (m、1H)、2.84 (t、2H、J=7.6Hz)、1.74−1.69 (m、4H)、0.986 (t、6H、J=7.6Hz)、0.341 (s、9H)
【0082】
5,5’−(2,5−ビス(メチルスルフィニル)−1,4−フェニレン)ビス(2−プロピルチオフェン)(2c)の合成
1,4−ジブロモ−2,5−ビス(メチルスルフィニル)ベンゼン3(2.60g、7.21mmol)を、2−プロピル−5−トリメチルスタンニルチオフェン(5.0g、17.3mmol)の無水トルエン(48ml)溶液に添加し、得られた混合物を窒素で30分間置換した。次いで、Pd(PPh34、(0.833g、0.072mmol)を添加し、この反応混合物を100℃で一夜加熱した。過剰のトルエンは高真空下で除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、10%KF水溶液で処理した。この混合物をセライトの層を通して濾過した。濾液はMg2、SO4上で乾燥後濾過し、溶媒を真空下で除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ヘキサン/EA)=2:1)で精製して、2.63、g、(81%)の2cを得た。
【0083】
1H NMR (CDCl3)δ(ppm):8.13 (s、2H)、7.08 (d、2H、J=3.6Hz)、6.80 (d、2H、J=3.6Hz、2.76 (t、4H、J=7.2Hz)、2.50 (s、6H)、1.70−1.65 (m、4H)、0.94 (t、6H、J=7.2Hz)
【0084】
ジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(1C)の合成
5,5’−(2,5−ビス(メチルスルフィニル)−1,4−フェニレン)ビス(2−プロピルチオフェン)(2c)(1.0g、2.2mmol)と五酸化リン(0.1g、0.703mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸(20ml)とを、丸底フラスコに投入した。この混合物を室温で72時間攪拌して、暗褐色の溶液を得、これを次いで氷水(120ml)に注ぎ入れた。黄色の沈殿物を吸引濾過で捕集し、真空下で乾燥した。この化合物は非極性有機溶媒に不溶であり、その構造はスルホニウム塩と考えられた。ピリジン(167ml)中で12時間攪拌して固体の脱メチル化を行った。この懸濁液を室温にまで冷却し、大量のCH2Cl2を加えて生成物を抽出した。ヘキサンを溶離液として用い、ジクロロメタン(370mg、43、%)から再結晶させて、ジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(1c)を、くすんだ白色の粉末として得た。
【0085】
1H NMR (CDCl3) δ(ppm):8.17 (s、2H)、7.01 (s、2H)、2.93 (t、4H、J=7.6Hz)、1.83−1.77 (m、4H)、1.04 (t、6H、J=7.2Hz)
【0086】
実施例4:化合物1〜4を用いるOFETの製造
【0087】
【化7】

【0088】
化合物
1:R=CH3
2:R=C613
3:R=2−エチルヘキシル
4:R=C919
【0089】
すべての装置には、150nm厚の熱形成二酸化珪素層を有する多量にドープ処理したシリコンウエハーを基板として用いる。ボトムゲート下部接触OFET用に、従来のフォトリソグラフィーにより、チャネル長が10μmで幅が5mmのソース電極とドレイン電極とをSiO2上に設け、その上にCr/Auを2/40nmの高さに蒸着する。
【0090】
ボトムゲート上部接触OFET用に、シャドウマスクによりチャネル長が25μmで幅が290μmのソース電極とドレイン電極とを形成し、その上にAuを高さが80nmとなるまで蒸着する。
【0091】
界面トラップの問題のため、これらの誘電体は、未処理で使用されるか、フェニルトリエトキシシラン(PTES)またはヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理して用いられる。
【0092】
なお、PTESは、基板を0.1体積%のTHF溶液に二時間浸漬し、120℃で2時間熱処理して析出させる。HMDSは、気相で120℃で3時間析出させる。
【0093】
電極から半導体及び/又は他の層への電荷注入に影響を与えるため、基板を0.1体積%エタノール溶液に24時間浸漬して、異なるチオール(例えば、プロパンチオール、オクタンチオール、ヘキサデカンチオール、4−ニトロベンゼンチオール、ペルフルオロデカンチオール、ペンタフルオロ−ベンゼンチオール)を用いて電極を被覆する。
【0094】
半導体の溶液加工のために、汎用の有機溶媒が、例えばトルエンやクロロホルム、THF、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼンが用いられる。滴下流延や回転塗布、熱処理、すべての電気測定は、窒素雰囲気下のグローブボックス中で行なった。浸漬塗布とゾーン製膜は大気下で行った。装置の特性は、ケイスレー4200−SCSを用いて測定した。
【0095】
半導体分子の可能性を示すため、ボトムゲート下部接触OFETを、化合物1〜4の溶液をペンタフルオロベンゼンチオールで処理された電極を有する未処理SiO2基板上に回転塗布(4000min-1、40s)して形成した。なお、化合物2〜4にはクロロホルムを用いたが、化合物1にはクロロベンゼンを用いた。化合物1がクロロホルムに不溶であったためである。試料を100℃で30分間熱処理後、飽和領域で最大0.1cm2-1-1の正孔移動度と最大107のオン/オフ比が得られた。結果を表1にまとめて示す。
【0096】
移動度
他の有機FETとの比較のために、移動度(μ)は、標準的な電界効果トランジスタの計算式で計算した。従来の金属−絶縁体−半導体型のFET(MIS−FET)中では、ISD−VSD曲線中では、通常異なるVGのところに、線状の領域と飽和した領域ができる(なお、ISDはソース−ドレイン飽和電流であり、VSDはソースとドレイン間の電圧であり、VGはゲート電圧である)。VSDが大きくなると、電流が飽和し、次式で表わされる。
【0097】
【数1】

【0098】
式中、LとWは、それぞれ装置チャネルの長さと幅であり、Ciは誘電体の静電容量であり、Vは閾値電圧である。したがって、移動度(μ)は、飽和領域において、計算式(1)に代えて次式で計算される。
【0099】
【数2】

【0100】
移動特性
図2に示すように、ソース電極からドレイン電極(ISD)に流れる電流は、ある特定のVSD下では、VGの増加とともに、ほぼ四角状に増加する。移動曲線の典型的な表示例では、ISDの平方根がVGに対してプロットされる。このようなグラフでは、閾値電圧(Vt)は、VG対(ISD1/2のプロットの直線部のX切片として求められる。
【0101】
【表1】

【0102】
現在までの最良の結果は、未処理のSiO2ボトムゲート上部接触装置上に化合物2の2mg/mlトルエン溶液を浸漬塗布(0.5μm/s)したもので得られた。得られたフィルムは、高結晶性で、大きなドメインがミリメーターにまで達し、光学異方性を示した。典型的なFET移動特性を示す図2の飽和領域におけるトランジスタ特性から推定して、1.4cm2-1-1の正孔移動度と108のオン/オフ比が得られた。ソース電極とドレイン電極間の電流を、ゲートバイアスに対してプロットした。この曲線を直線とするため、ゲートバイアスをソース/ドレイン電流の平方根に対してプロットした、
【0103】
実施例5:
OTFTの製造
溶液の調製:
試料1〜4について、化合物をキシレン中に濃度が2mg/mlまたは5mg/mlで溶解した。これらの溶液を、50℃で加熱し、この溶液を0.45μmフィルターで濾過した。
【0104】
試料5では、1重量%の化合物と0.75重量%のポリスチレンとをトルエンに溶解した。この溶液を50℃に加熱し、0.45μmフィルターで濾過した。
【0105】
装置の組み立て
試料1〜3
ボトムゲート上部接触装置(BGTC)を組み立てるために、200nmの熱成長させたSiO2をもつ未処理のSiを用いた。この基板をまず70℃または80℃に加熱し、上記の溶液をその上に滴下塗布した。この滴下塗布は、大気中で行った。フィルムが完全に乾燥後、35nmの金のソース電極とドレイン電極をその上に蒸着させた。流路幅/長さ比は70であった。
【0106】
試料3では、このフィルムを熱処理後、金を100℃で30分間不活性雰囲気下で蒸着させた。
【0107】
試料4
ボトムゲート上部接触装置を組み立てるために、自然酸化によるSiO2をもつ未処理Si基板を用いた。まず、架橋性のポリマー誘電体を基板上に、厚みが500nmで回転塗布させた。次いで、UVで2分間硬化させ、ホットプレートを用いて100℃で2分間乾燥させた。
【0108】
次いで基板を70℃に加熱し、上記溶液をその上に滴下塗布した。この滴下塗布は大気中で行った。フィルムが完全に乾燥後、35nmの金のソース電極とドレイン電極をその上に蒸着させた。流路幅/長さ比は70であった。
【0109】
試料5
ボトムゲート上部接触装置を組み立てるために、200nmの熱成長させたSiO2をもつ未処理Si基板を用いた。この基板を、大気下で12.5mm/minの速度で引き出しながら浸漬塗布した。35nmの金のソース電極とドレイン電極をその上に蒸着させた。流路幅/長さ比は70であった。
【0110】
装置の組み立てを、以下の表1にまとめる。
【0111】
【表2】

【0112】
装置特性は、ケイスレー4200−SCSで測定した。この結果を以下の表2にまとめる。
【0113】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のジチエノベンゾジチオフェン:
【化1】

式中
1〜R6は、各々の独立してa)H、b)ハロゲン、c)−CN、d)−NO2、e)−OH、f)C1-20アルキル基、g)C2-20アルケニル基、h)C2-20アルキニル基、i)C1-20アルコキシ基、j)C1-20アルキルチオ基、k)C1-20ハロアルキル基、l)−Y−C3-10シクロアルキル基、m)−Y−C6-14アリール基、n)−Y−3−12員環のシクロヘテロアルキル基、またはo)−Y−5−14員環のヘテロアリール基、
[式中、各々のC1-20アルキル基、C2-20アルケニル基、C2-20アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、3−12員環のシクロヘテロアルキル基、および5−14員環のヘテロアリール基は、1〜4個のR7基で置換されていてもよく、
式中、R1とR3とR2とR4は、一緒になって脂肪族環状基を形成していてもよい]、
から選ばれ、
7は、独立して、a)ハロゲン、b)−CN、c)−NO2、d)オキソ、e)−OH、f)−NH2、g)−NH(C1-20アルキル)、h)−N(C1-20アルキル)2、i)−N(C1-20アルキル)−C6-14アリール、j)−N(C6-14アリール)2、k)−S(O)mH、l)−S(O)m−C1-20アルキル、m)−S(O)2OH、n)−S(O)m−OC1-20アルキル、o)−S(O)m−OC6-14アリール、p)−CHO、q)−C(O)−C1-20アルキル、r)−C(O)−C6-14アリール、s)−C(O)OH、t)−C(O)−OC1-20アルキル、u)−C(O)−OC6-14アリール、v)−C(O)NH2、w)−C(O)NH−C1-20アルキル、x)−C(O)N(C1-20アルキル)2、y)−C(O)NH−C6-14アリール、z)−C(O)N(C1-20アルキル)−C6-14アリール、aa)−C(O)N(C6-14アリール)2、ab)−C(S)NH2、ac)−C(S)NH−C1-20アルキル、ad)−C(S)N(C1-20アルキル)2、ae)−C(S)N(C6-14アリール)2、af)−C(S)N(C1-20アルキル)−C6-14アリール、ag)−C(S)NH−C6-14アリール、ah)−S(O)mNH2、ai)−S(O)mNH(C1-20アルキル)、aj)−S(O)mN(C1-20アルキル)2、ak)−S(O)mNH(C6-14アリール)、
al)−S(O)mN(C1-20アルキル)−C6-14アリール、am)−S(O)mN(C6-14アリール)2、an)−SiH3、ao)−SiH(C1-20アルキル)2、ap)−SiH2(C1-20アルキル)、aq)−Si(C1-20アルキル)3、ar)C1-20アルキル基、as)C2-20アルケニル基、at)C2-20アルキニル基、au)C1-20アルコキシ基、av)C1-20アルキルチオ基、aw)C1-20ハロアルキル基、ax)C3-10シクロアルキル基、ay)C6-14アリール基、az)ハロアリール基、ba)3−12員環のシクロヘテロアルキル基、またはbb)5−14員環のヘテロアリール基
から選ばれ、
Yは、独立して、2価のC1-6アルキル基、2価のC1-6ハロアルキル基、または共有結合から選ばれ;
mは、独立して0、1、または2から選ばれる。
【請求項2】
1〜R6が、各々独立して、a)H、f)C1-20アルキル基、i)C1-20アルコキシ基、およびm)−Y−C6-14アリール基でから選ばれる請求項1に記載のジチエノベンゾジチオフェン。
【請求項3】
5〜R6が水素である請求項1または2に記載のジチエノベンゾジチオフェン。
【請求項4】
3〜R6が水素である請求項1〜3のいずれか一項に記載のジチエノベンゾジチオフェン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のジチエノベンゾジチオフェンの、半導体または電荷輸送材としての、薄膜トランジスタ(TFT)としての、有機発光ダイオード(OLED)用の半導体部品内での、光発電部品用の、センサー内での電池の電極材料としての、光学導波路としての、あるいは電子写真用途での利用。
【請求項6】
液状媒体中に溶解または分散した1種以上の請求項1〜4のいずれか一項に記載のジチエノベンゾジチオフェンを含む組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のジチエノベンゾジチオフェンを1個以上含む薄膜半導体。
【請求項8】
基板とその基板上に析出した請求項7の薄膜半導体からなる複合物。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のジチエノベンゾジチオフェンを液状媒体に溶解して溶液を生成する工程、その溶液を支持体上に施す工程、溶媒を除いて基板上に薄膜半導体を形成する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の複合物の製造方法。
【請求項10】
上記溶液が、回転被覆、浸漬被覆、滴下塗布または印刷により施される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項7の薄膜半導体または請求項8の複合物を含む電界効果トランジスタ装置。
【請求項12】
請求項7の薄膜半導体または請求項8の複合物を含む光発電装置。
【請求項13】
請求項7の薄膜半導体または請求項8の複合物を含む有機発光ダイオード装置。

【公表番号】特表2011−526588(P2011−526588A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515389(P2011−515389)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057985
【国際公開番号】WO2010/000670
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(506209857)マクス−プランク−ゲゼルシャフト、ツール、フェルデルング、デァ、ヴィセンシャフテン、イー、ファウ (5)
【Fターム(参考)】