説明

ジポリマー・タンパク質コンジュゲートおよびその調製方法

本発明は、ジポリマー・タンパク質コンジュゲートおよびその調製方法に関する。さらに本発明は、そのようなジポリマー・タンパク質コンジュゲート、特にジPEG化タンパク質コンジュゲートの、疾患治療用の薬剤の製造のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジポリマー・タンパク質コンジュゲートおよびその調製方法に関する。さらに本発明は、そのようなジポリマー・タンパク質コンジュゲート、特にジPEG化タンパク質コンジュゲートの、疾患治療用の薬剤の製造のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然型の組換えタンパク質は、20年以上にわたり治療薬として成功裡に使用されてきた。しかしながら、タンパク質治療薬の生物学的利用能は、短い血漿中半減期およびプロテアーゼ分解への感受性によって制限されることが多く、このため該治療薬の臨床上の最大能力が制限されている。
【0003】
これらの欠点を克服すべく、タンパク質治療薬の血中半減期を長くするために、該タンパク質の修飾が、例えばタンパク質にポリエチレングリコール(PEG)のようなポリマーを化学的または酵素的に結合させることによって為されてきた。タンパク質にポリエチレングリコール部分を結合させることによるタンパク質の修飾は、PEG化としても知られている。PEG化によって成功裡に修飾されたタンパク質には、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロンα、インターフェロンβおよびインターフェロンγのようなインターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSFまたはGCSF)、IL−2およびIL−6のようなインターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF)、様々なサイトカインおよび合成赤血球形成タンパク質(合成EPO)が挙げられる。
【0004】
ポリエチレングリコールとの結合によるタンパク質の化学修飾の結果、耐熱性が改善され、酵素分解に対する感受性が低減され、タンパク質の抗原決定基が保護されて免疫原性の低下および抗体との反応性の低下がもたらされ、溶解度が増大し、PEG結合タンパク質治療薬の腎臓および細胞でのクリアランスの減少によりインビボで血漿中半減期が延長し(非特許文献1を参照)、最大血漿中濃度が低下し、血漿中濃度の変動が小さくなり、投与頻度が低下し、したがって生活の質の向上がもたらされる。したがって、PEG修飾されたタンパク質は、バイオ医学・生物工学における適用に広く使用されている(非特許文献2を参照)。
【0005】
タンパク質へのポリエチレングリコール部分の結合方法は、非特許文献3〜6に記述されている。また、プロテイノイドへのポリエチレングリコール部分の結合方法は、非特許文献7に記述されている。
【0006】
一般に、ポリエチレングリコール分子はタンパク質の官能基を介して該タンパク質に結合する。タンパク質のアミノ酸鎖中の各官能基で、求核性であるもの、すなわち電子供与体としての能力を有するものは、PEG分子に結合している相補的な基と反応する場合がある。そのような求核基には、α−アミノ、ε−アミノ、カルボキシル、チオール、ヒドロキシル、イミダゾールおよびグアニジン基が挙げられる。例えば、タンパク質のアミノ基、すなわちα−アミノ基(N末端)およびリジン残基のε−アミノ基は、PEGのカップリングのための反応性基または官能基として使用される(非特許文献5を参照)。
【0007】
特許文献1は、アシル化反応によってPEGとタンパク質との間にアミド結合を生成することによるタンパク質へのPEG結合を開示している。
特許文献2には、還元的アルキル化を用いて酵素にPEGを結合し、PEGとタンパク質との間にアミン結合を生成することが記載されている。
【0008】
さらに、タンパク質のアミノ基へのPEGのカップリングは、特許文献3(ヘモグロビンのアシル化)、特許文献4(ウロキナーゼ、カリクレインあるいは白血球インターフェロンのアシル化)、特許文献5(中性pHでのリンホカインの還元的アルキル化)、特許文献6(ウロキナーゼのアシル化)、特許文献7(インターフェロンβ、インターロイキン2およびイムノトキシンのアシル化)、特許文献8(腫瘍壊死因子のアシル化)、特許文献9(G−CSFのアシル化)、特許文献10(中性pHでのCD4免疫接着因子(immunoadhesin)のアルキル化)、特許文献11(トレシルクロライドを用いた、特にGM−CSFまたはG−SCFのアルキル化)、特許文献12(インターロイキン6のアシル化)、特許文献13(カルシトニン、インターロイキン2または顆粒球コロニー刺激因子のアシル化)および特許文献14(タンパク質のアシル化)に記載されている。しかしながら、これらの特許出願文献に記述されたPEG化反応では、多重にPEG化された生成物、つまり1つのタンパク質当たり複数のPEG部分を有するタンパク質コンジュゲートを生じる。PEG部分の数が多くなるほど、多重PEG化タンパク質コンジュゲートの特徴解析はますます難しくなり、規制当局による治療用タンパク質の医薬品としての認可を阻むことになる。
【0009】
従って、治療用タンパク質中のPEG部分の数を低く維持することは、予測可能な活性を有しかつロット間の製品一致性を備えた規定の生成物の生産を容易にし、該生成物を医薬製造に役立たせる。さらに、1タンパク質当たりのPEG部分の数が少ないと、酵素基質相互作用におけるレセプター認識が低下する危険性が低くなる。したがって、生物薬剤として適用するためのPEG化タンパク質は、1タンパク質当たりのPEGユニットの数が少ないことが好ましい。
【0010】
このことから、下記に述べるように、1タンパク質当たりのPEGユニット数の少ないPEGタンパク質コンジュゲートが開発された。
特許文献15には、還元的アルキル化の条件下およびα−アミノ基を選択的に活性化するのに十分な酸性のpH条件でポリペプチドのα−アミノ基(N末端基)に1つのポリエチレングリコール分子を結合させる方法が記載されている。N末端のα−アミノ基(pKaはpH6.8〜8.2の範囲)とリシル側鎖のε−アミノ基(pKaはpH10.4〜10.5の範囲)との間のpKa値の差(非特許文献8を参照)から、酸性環境でのPEG化により選択的にタンパク質のN末端がモノPEG化されることが示唆される。
【0011】
しかしながら、モノPEG化されたタンパク質と比較して、ジPEG化されたタンパク質は以下のようないくつかの重要な利点を有する。
― 直線状PEG1分子あたりのエチレンオキサイド単位の最大数から、分子量がおよそ30kDaに制限される(非特許文献9)。したがって、第2のPEG分子を結合することによりPEGタンパク質コンジュゲート中のPEG部分の分子量を増大させることが可能となる。
― 分子量の大きいPEG分子はPEG化タンパク質溶液の粘度を増大させる。分子量の大きい1つのPEG分子の代わりに分子量の小さい2つのPEG分子を結合することにより、この作用を弱めることができる。
― PEGタンパク質コンジュゲート全体の分子量が等しい場合には、1つのPEG分子の代わりに2つのPEG分子を結合するとPEGタンパク質コンジュゲートの流体力学半径が増大し、その結果クリアランスが延長され、したがって該コンジュゲートの生物活性の持続時間が延びる。
― 第2のPEG分子をタンパク質に連結することにより、タンパク質のエピトープをより有効に保護し、その結果タンパク質分解への感受性および免疫原性を低減するとともにPEGタンパク質コンジュゲートの安定性を改善することができる。これは、プロテイノイド、ならびに潜在的に免疫原性を増加させうる非天然リンカーによって連結される非組換えの合成タンパク質フラグメントには、特に有利である。
― 第2のPEG部分の結合により、PEGタンパク質コンジュゲートの親水性が高まる。従って、バッファー系における溶解度が改善され、コンジュゲートが凝集する危険性が低減される。
【0012】
これらの利点を考慮して、主としてジPEG化されたタンパク質コンジュゲートを合成する試みがなされた。これらの試みは、天然タンパク質配列の遺伝学的操作を含むものであり、該遺伝学的操作はジPEG化された突然変異タンパク質コンジュゲートを作製するための先行条件として部位特異的にPEGタンパク質をカップリングする手段を提供する。
【0013】
特許文献16には、ジPEG化されたレプチンおよびG−CSFの突然変異タンパク質であって、そのタンパク質配列にシステイン突然変異が導入されているものが記載されている。システイン点突然変異を導入する目的は、第2の結合部位を提供することであり、これは、N末端特異的にPEGを結合させる既存の技術を補足するものである。
【0014】
特許文献17にはG−CSF変異タンパク質コンジュゲートについて記載されており、該G−CSFのアミノ酸配列は、ヒトG−CSFのアミノ配列に対して、PEG用の結合基を含む少なくとも1つの特異的に改変されたアミノ酸残基に関して異なっている。特に、特許文献17には、特異的に導入されたアミノ基がアシル化によりPEG化されたジPEG化G−CSF突然変異体が記載されている。特許文献17によれば、G−CSF中のリジン残基のうち1つ以上に無制限に結合が生じると、得られるコンジュゲートの活性が失われたり著しく低減されたりする可能性があるため、これを回避するためにG−CSF中のリジン残基のうち少なくとも1つまたは全部を取り除き、次いでアシル化用の少なくとも1つの新しいアミノ基を導入することが好ましい。
【0015】
特許文献18には、G−CSF変異タンパク質コンジュゲートについて記述されており、該コンジュゲートにおいて、G−CSFアミノ酸配列は、ヒトG−CSFのアミノ配列と比較して、17位システインのセリンへの変異によって少なくとも1アミノ酸残基が特異的に変更されている点で異なっている。特に、特許文献18には、還元的アルキル化によってα−アミノ基が特異的にPEG化されたモノPEG化G−CSF突然変異体について記述されている。特許文献18によれば、還元的アルキル化のために適用される反応条件は、反応pHが酸性であるため主としてモノPEG化G−CSF変異タンパク質コンジュゲートと、微量のジPEG化およびトリPEG化G−CSF変異タンパク質コンジュゲートとを生じるものであり、医薬製品の製造には使用されなかった。
【0016】
突然変異タンパク質は、開発の複雑さという不利点とは別に、天然の配列のアミノ酸を変更することによって引き起こされる可能性のある免疫原性のような、別の危険性を有している。したがって、特許文献16および特許文献17に記述されたジPEG化方法とは対照的に、PEG化のためにタンパク質を変異させる必要のない野生型アミノ酸配列の組換えまたは天然タンパク質をジPEG化することが望ましいであろう。
【0017】
一例が特許文献19に挙げられており、同文献には、アシル化によってタンパク質にPEG部分をカップリングして得られる非特定的なジPEG化G−CSFコンジュゲートが記述されている。特許文献19によればPEG結合可能な部位はα−およびε−アミノ基へのアミド結合ならびに第1ヒドロキシル基へのエステル結合である。しかしながら、このPEG化反応では特異的にジPEG化されたG−CSF分子は生じなかった。
【0018】
アシル化によりG−CSFのジPEG化が可能となるが、アシル化によって合成されたPEG・タンパク質コンジュゲートは安定性が低く、凝集性が高い(非特許文献10)。
エリスロポエチン、インターフェロンあるいはヒト成長ホルモンのようなその他の商業
上興味深い分子をポリマーと結合させることが試みられたときも、同様の問題が生じた。多くの場合、PEG化反応により非特異的なポリマー結合が起きた。ある場合には、非特異的なポリマー結合を回避または低減するために上記分子の突然変異タンパク質が用いられた。
【特許文献1】米国特許第4,179,337号明細書
【特許文献2】米国特許第4,002,531号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第0 067 029号明細書
【特許文献4】欧州特許出願第0 098 110号明細書
【特許文献5】欧州特許出願第0 154 316号明細書
【特許文献6】欧州特許出願第0 154 432号明細書
【特許文献7】欧州特許出願第0 229 108号明細書
【特許文献8】欧州特許出願第0 247 860号明細書
【特許文献9】欧州特許出願第0 335 423号明細書
【特許文献10】欧州特許出願第0 372 752号明細書
【特許文献11】欧州特許出願第0 439 508号明細書
【特許文献12】欧州特許出願第0 442 724号明細書
【特許文献13】欧州特許出願第0 473 268号明細書
【特許文献14】欧州特許出願第0 539 167号明細書
【特許文献15】国際公開公報第96/11953号パンフレット
【特許文献16】国際公開公報第00/21574号パンフレット
【特許文献17】国際公開公報第01/51510号パンフレット
【特許文献18】国際公開公報第2004/083242号パンフレット
【特許文献19】国際公開公報第00/44785号パンフレット
【非特許文献1】デルガド(Delgado )ら、Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 、1992年、第9巻(3,4)、p.249−304
【非特許文献2】イナダ(Inada)ら、TIBTECH 1995年、第13巻、p.86−91
【非特許文献3】パス(Pasut )ら、Expert Opin. Ther. Patents、2004年、第14巻(6)、p.859−894
【非特許文献4】W.P.シェフィールド(Sheffield )、Curr. Drug Targets、2001年、p.1−22
【非特許文献5】F.M ベロネーゼ(Veronese)、Biomaterials、2001年、第22巻、p.405−417
【非特許文献6】S.ザリプスキー(Zalipsky)、Adv. Drug Deliv. Rev. 、1995年、第16巻、p.157−182
【非特許文献7】G.コッヘンドルファー(Kochendoerfer )、Expert Opin Biol Ther.、2003年、第8巻、p.1253−61
【非特許文献8】アザルカン(Azarkan )ら、Rec Res Develop Biotech Bioeng、1999年、第2巻、p.77−93
【非特許文献9】ハリス(Harris)およびチェス(Chess )Nat. Rev. Drug Discovery、2003年、第2巻(3)、p.214−223
【非特許文献10】キンスラー(Kinstler)ら、Pharm. Res. 、1996年、第13巻、p.996−1002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述の問題を考慮すると、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を備えた安定かつ明確なポリマー・タンパク質コンジュゲートが必要とされている。
従って本発明の目的は、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を備えた安定かつ明確なポリマー・タンパク質コンジュゲートを提供することである。特に、安定かつ明確なジ
PEG化タンパク質コンジュゲートを提供することが本発明の目的である。
【0020】
本発明のさらなる目的は、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を備えたポリマー・タンパク質コンジュゲート、特にジPEG化されたタンパク質コンジュゲートであって、該タンパク質が野生型または天然のアミノ酸配列を有するか、野生型タンパク質の合成タンパク質様模倣物すなわちプロテイノイドであって少なくとも野生型タンパク質の生物活性を有しているものを提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を備えたポリマー・タンパク質コンジュゲート、特にジPEG化されたタンパク質コンジュゲートであって、対応する非コンジュゲートタンパク質よりも血中半減期が長く、かつインビボでの生物活性が高いものを提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を備えたポリマー・タンパク質コンジュゲート、特にジPEG化されたタンパク質コンジュゲートの収量を著しく増加させる方法を提供することである。
【0023】
さらに、本発明の目的は、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を備えたポリマー・タンパク質コンジュゲートを優先的に高収率で製造する方法であって、生成物の一致性が高く反応原料(educt )が容易に利用可能である方法を提供することである。
【0024】
最後に、本発明の目的は、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を備えたポリマー・タンパク質コンジュゲート、特に、ジPEG化されたタンパク質コンジュゲートを製造する方法の条件であって、タンパク質中の予め選択された2つの結合部位に優先的にポリマー単位が結合する条件を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によれば、上記およびその他の目的は独立請求項の特徴の組合せにより達成される。本発明の利点および実施形態は従属請求項に定義されている。
1タンパク質当たり2つのポリマー単位を備えた安定かつ生物学的に活性なポリマー・タンパク質コンジュゲート、特にPEGタンパク質コンジュゲートであって、該タンパク質のアミノ基の2つの窒素原子が各々1つのポリマー単位、特にポリエチレングリコール部分と結合しているものを提供することが可能であることが見出された。
【0026】
本発明の別の態様では、少なくとも1つ、および好ましくは2つの本発明のジポリマー・タンパク質コンジュゲートを含む医薬調製物が提供される。
本発明の別の態様では、ポリマー・タンパク質コンジュゲートの製造方法であって、少なくとも2つのアミノ基を有するタンパク質を、還元剤存在下に単一のアルデヒド基を有するポリマー試薬と反応させることを含み、反応時間は、タンパク質のアミノ基の2つの窒素原子がアミン結合によってポリマー単位と結合しているポリマー・タンパク質コンジュゲートが優先的に作製されるように選択されることを特徴とする方法が提供される。
【0027】
さらに、本発明は、疾患治療用の薬剤の製造のための、本発明によるポリエチレングリコール・タンパク質コンジュゲートのようなポリマー・タンパク質コンジュゲートの使用に関する。治療される疾患の種類は、ポリマーに結合したタンパク質の種類に依存する。例えば、疾患は造血機能または免疫機能の低下を特徴とするものである場合が考えられる。タンパク質がG−CSFである場合、該疾患は通常、化学療法、放射線療法および感染のうち少なくともいずれかによって引き起こされる好中球減少症および白血病のうち少なくともいずれか一方である。タンパク質がエリスロポエチンである場合、該疾患は通常、一種の貧血症、例えば腎性貧血である。タンパク質が成長ホルモン(ソマトトロピンとも
呼ばれる)である場合、該疾患は通常、成長ホルモン欠損症である。タンパク質がインターフェロンである場合、該疾患は感染症の場合が考えられる。
【0028】
特に、本発明は、好ましくは2つのポリマー単位、特にポリエチレングリコール分子を、適切なpH、例えばおよそpH7を選択することにより、還元的アルキル化条件の下でタンパク質に結合させることが可能であるという発見に基づく。
【0029】
さらに、反応時間は、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を有するポリマー・タンパク質コンジュゲート、特に本発明のジPEG化されたタンパク質コンジュゲートを形成するための重大なパラメータであることが見出された。例えば、本発明のPEG化タンパク質コンジュゲートは、時間依存的な順序でモノPEG化、ジPEG化、トリPEG化、さらに高度にPEG化されたタンパク質コンジュゲートへと連続的に形成されることが分かった(図3を参照)。
【0030】
さらに、タンパク質とポリマーとのモル比および/またはタンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を有するポリマー・タンパク質コンジュゲート、特に本発明のジPEG化タンパク質コンジュゲートの形成にとって重要であることが分かった。さらに、非グリコシル化タンパク質と比較すると、タンパク質がグリコシル化されている場合は、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を有するポリマー・タンパク質コンジュゲート、特に本発明のジPEG化タンパク質コンジュゲートの形成には、ポリマー分子とタンパク質内のアミノ基との化学量論比がより低くてよいことが分かった。
【0031】
さらに、未反応または部分的に反応したタンパク質分子に相当する望ましくない反応生成物を、第2のポリマー結合処理ステップ、例えばジPEG化タンパク質コンジュゲートをさらに生成してジPEG化タンパク質コンジュゲートの全体的な工程歩留まりの向上に寄与する第2のPEG化反応ステップに適用する、再利用ステップの導入により、工程歩留まりが著しく増加される場合があることが分かった。予想外にも、再利用ステップにより、最初のPEG化反応で得られた品質に匹敵する高品質のジPEG化タンパク質コンジュゲートが高収率で得られる。さらに、1タンパク質当たり2つのポリマー単位を有するポリマー・タンパク質コンジュゲートをより大量に生産するために望ましくない反応生成物を再利用するというこの考え方は、他のポリマー・タンパク質コンジュゲートを形成する反応にも適用可能である。
【0032】
さらに、本発明のタンパク質修飾方法により、同じタイプのアミノ基(例えばリジン残基のε−アミノ基)でもタンパク質配列中の該反応性アミノ基を備えたアミノ酸に隣接するアミノ酸残基に応じて反応性が異なることを利用して、タンパク質の特定部位に優先的または圧倒的にポリマー単位を結合させることが可能になることが分かった。したがって、本発明の方法は、例えばタンパク質の異なるε−アミノ基、異なるグアニジノ基および/または異なるイミダゾール基の間のpKaの差異を利用するようなpHで行なわれることが好ましい。これにより、タンパク質の指定または事前選択可能または事前選択済または所定のアミノ基にポリマーが優先的に結合しているジポリマー・タンパク質コンジュゲートがほぼ均質に調製される。
【0033】
本発明の状況において「ほぼ均質」とは、調製物が、タンパク質の指定または事前選択可能または事前選択済または所定のアミノ基にポリマーが優先的に結合しているジポリマー・タンパク質コンジュゲートを主として含み、かつ非コンジュゲートタンパク質または1もしくは3以上のポリマーが結合しているタンパク質または所定のアミノ基とは別のアミノ基にポリマーが結合しているタンパク質がより少ないことを意味するように意図されている。好ましくは、調製物は、該調製物中に存在するタンパク質の総量に対して少なく
とも50%、より好ましくは少なくとも60、65、70もしくは75%、さらに好ましくは少なくとも80、85もしくは90%、そして最も好ましくは少なくとも92、94、96、98もしくは99%の、事前選択されたアミノ基にポリマーが結合しているジポリマー・タンパク質コンジュゲートを含む。
【0034】
最後に、2つのジポリマー・タンパク質アイソフォームを指定の混合物として含むか、または単一のジポリマー・タンパク質アイソフォームを含むかのいずれかのジポリマー・タンパク質コンジュゲートの均質な調製物は、同様のモノPEG化タンパク質に少なくとも匹敵し、かつ対応する非PEG化タンパク質よりも良好な生物活性を示すことが分かった。
【0035】
好ましくは、本発明のポリマー・タンパク質コンジュゲートは還元的アルキル化によって調製される。したがって本発明は、タンパク質のアミノ基の2つの窒素原子が各々アミン結合によってポリマー単位と結合しているポリマー・タンパク質コンジュゲートを提供することが好ましい。
【0036】
本発明の状況では、用語「アミノ基」としては、第一アミノ基および第二アミノ基、特に、アミノ酸側鎖のNH基またはNH基、例えばリジン側鎖のNH基、アルギニンのグアニジノ基のNH基またはNH基、あるいはヒスチジンのイミダゾール側鎖のNH基が挙げられる。特に、用語「アミノ基」には、α−(N末端)アミノ基およびリジン側鎖のNH基であるε−アミノ基が含まれる。
【0037】
ポリマー単位は、少なくとも1つのポリマー部分とリンカー部分とを含み、該リンカー部分は少なくとも1つのポリマー部分とアミン結合との間にある。リンカー部分は直線状でも分岐状でもよい。リンカー部分が分岐している場合、ポリマー単位は2以上のポリマー部分を含む場合がある。
【0038】
リンカー部分は好ましくは脂肪族リンカー部分である。適切な脂肪族リンカー部分はさらに、置換されたアルキルジアミンおよびトリアミン、リジンエステルおよびマロン酸エステル誘導体を含んでいる。リンカー部分は、ポリマー鎖が堅く固定されないように平面状でないことが好ましい。好ましくは、リンカー部分は、最大18個、より好ましくは1〜10個の炭素原子を含む、多重官能化されたアルキル基を含む。窒素、酸素あるいは硫黄のようなヘテロ原子が該アルキル鎖に含まれていてもよい。リンカー部分は、例えば炭素原子または窒素原子において分岐していてもよい。分岐状リンカー部分および該リンカー部分から生じる分枝状ポリマーユニットならびにそれらの調製方法の例は、国際公開公報第95/11924号パンフレットおよび国際公開公報第03/049699号パンフレットに記述されている。前記特許文献は参照により本願に組込まれる。本発明の意味における「分岐状」とは、くし形状の部分をも含むように意図される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、リンカー部分は、アミン結合の窒素原子に結合した少なくとも1つのメチレン基、例えば、アミン結合の窒素原子に直接結合している1〜12個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは2つのメチレン基を含む。
【0040】
1つの好ましい本発明のポリマー・タンパク質コンジュゲートは、下式:
[(R−L−ポリマー)−L−(CH−)−NH]−P
(式中、Rは、H、低級アルキル、アリールまたは任意の適切な保護基であり;ポリマーは、タンパク質と結合させるのに適したポリマーであり;mはメチレン基の数を表わす整数であり、Pは生物学的に活性なタンパク質またはプロテイノイドであって、該タンパク質またはプロテイノイドのアミノ基の2つの窒素原子(上記式中NHで表わされている)
は各々ポリマー単位と結合しており、LはO、N、S、および分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分のうち少なくともいずれかであって存在していても存在しなくてもよく;Lは分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分であって存在していても存在しなくてもよく;yは整数であり、ただし、Lが存在しない場合yは1であり、Lが存在する場合yは少なくとも1である)を有する。
【0041】
Rは低級アルキルまたはベンジルのようなアリールである。用語「低級アルキル」には、1〜7個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含む低級アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどがあり、特に好ましいのはメチルである。
【0042】
少なくとも1つのポリマー部分と適切な保護基との間の結合の一部であるリンカーL、および/またはPEG鎖のエチレンオキシド残基のような少なくとも1つのポリマー部分とタンパク質もしくはプロテイノイドの窒素原子との間、特に、PEG鎖のエチレンオキシド残基とメチレン基との間の結合の一部であるリンカーLは、独立に存在していても存在していなくてもよく、また上記リンカー部分、例えば(−CO)−CH−、−CO−O−、および/または−CO−NH−などの任意の構造式を有する分岐状または非分岐状のリンカー部分から独立に選択される。リンカーLは、O、Nおよび/またはSである場合もありうる。
【0043】
通常、PEG鎖のエチレンオキシド残基などのポリマー部分と、PEG試薬のようなポリマー部分が結合されるタンパク質またはプロテイノイドの窒素原子との間の結合の一部を形成しているメチレン基の数mは、1〜12の範囲、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、最も好ましくは2である。
【0044】
通常、数値yは、Lが存在する場合、1〜10の範囲、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、最も好ましくは2である。
ポリマー部分は通常、ほとんど非抗原性または非免疫原性のポリマー鎖である。さらに、使用されるポリマー部分は、水溶性ポリマー部分の中から選択されることが好ましい。これは、水溶性ポリマー部分が付着または結合したタンパク質が生理学的環境のような水性環境の中で沈殿しないという利点を有する。還元的アルキル化については、本方法で提供されるように重合度を制御可能なように、選択されたポリマーはさらに単一の反応性アルデヒドを有していなければならない。ポリマー部分と同様にポリマー単位も分岐状または非分岐状であってよい。最終生成調製物の治療的使用については、ポリマーは薬学的に許容可能なものが好ましいであろう。当業者であれば、ポリマー・タンパク質コンジュゲートが治療的に使用されるかどうか、そうであれば所望の投与量、血中循環時間、タンパク質分解への耐性およびその他の事項を考慮して、所望のポリマー部分を選択することができるであろう。
【0045】
好ましくは、ポリマー部分は、ポリアルキレン・グリコール部分、デキストランとその誘導体のような多糖部分、多糖およびその誘導体、ポリビニルピロリドンのようなピロリドン部分、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース部分、ポリビニルアルコール、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸部分および/またはポリアクリルアミド部分、ならびに/または、他の同様の非免疫原性ポリマー部分(ホモポリマーまたはランダム共重合体のいずれか)および/またはその誘導体、から成る群から選択されうる。そのようなポリマーはまた、本発明に組み入れるために官能化されてもよいし活性化されてもよい。
【0046】
特に、ポリマー部分はポリアルキレン・グリコール部分である。用語「ポリアルキレン・グリコール」は、アルキレン基が直鎖または分岐鎖の基であるポリアルキレン・グリコ
ール基またはポリアルキレン・グリコール部分を示す。用語「ポリアルキレン・グリコール」はまた、ポリエチレン基とポリプロピレン基との混合物を含んでいるポリマー、およびポリイソプロピレン基、ポリエチレン基およびポリイソブチレン基の混合物を含んでいるポリマーのような混合アルキレン・グリコールから形成されたポリアルキレン・グリコールも含む。好ましくは、本発明のポリマー・タンパク質コンジュゲート中のポリアルキレン・グリコール部分は、2つの末端ヒドロキシル基の除去によって形成されたポリエチレングリコール部分またはポリエチレングリコール残基である。
【0047】
この群には、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)などのa置換されたポリアルキレンオキシド誘導体、あるいは他の適切なアルキル置換されたポリアルキレンオキシド誘導体、例えばモノ−またはビス末端C−C基を含んでいるものがある。モノメチル・ポリエチレングリコール・ホモポリマーのような直鎖の非抗原性ポリマーが好ましい。さらに、他のポリエチレングリコール・ホモポリマー、ポリエチレングリコール・ヘテロポリマー、他のアルキルポリアルキレンオキシドブロック共重合体、およびポリアルキレンオキシドのブロック共重合体の共重合体のような別のポリアルキレンオキシドも有用である。
【0048】
上記は単なる例証であり、ここで使用するのに適した非抗原性のポリマーまたはポリマー部分のタイプを限定するものではない。
本発明による特に好ましいポリマーは、下式:
[(R−L−PEG)−L−(CH−NH]−P
(式中、R、P、L、L、y、mは上記のように定義される)のPEGタンパク質コンジュゲートを生じるポリエチレングリコールである。
【0049】
特に、PEGは式−(CH−CH−O)を有し、式中、nはポリエチレングリコール単位中のエチレンオキシド残基の数を表す。さらに、LはOであり、Lは存在せずyは1であることが好ましい。
【0050】
本発明によりポリマー単位が結合されうるアミノ基の窒素原子は、α−アミノ基、ε−アミノ基、グアニジン基およびイミダゾール基の窒素原子から成る群から選択されることが好ましい。第一アミノ基の窒素原子にポリマー単位を結合することが好ましいが、これに限定はされない。
【0051】
本発明に従ってコンジュゲートとすることが可能な、生物学的に活性なタンパク質は、従来の治療用タンパク質のうち任意のものであってよい。さらに、本発明の状況においては、用語「タンパク質」はタンパク質およびプロテイノイドを含むものとして了解される。本発明の状況においては、プロテイノイドは、対応する天然タンパク質と同一のアミノ酸配列を有するが、ペプチドの形態で化学合成され互いに連結されて天然タンパク質と同様の生物活性を示す天然タンパク質様構造を形成する、合成のタンパク質様分子である。これらのプロテイノイドは潜在的なタンパク質治療薬である。
【0052】
2つのポリマー単位と結合させることが可能であり、特に、本発明によってジPEG化することが可能であるタンパク質には、非変異型および変異型タンパク質、たとえば限定するものではないが増殖因子、抗体、ホルモン、特に治療上活性を有するタンパク質、たとえば限定するものではないがエリスロポエチン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、コンセンサスインターフェロン、G−CSF、GM−CSF、ヘモグロビン、成長ホルモン、インターロイキン2およびインターロイキン6のようなインターロイキン、腫瘍壊死因子、様々なサイトカインならびにIgG、IgE、IgM、IgA、IgDのような免疫グロブリン、および/またはそれらの構造的および/または機能的なバリアントおよび/またはフラグメントおよび/または類似体、ならびにこれ
らのプロテイノイドまたは合成タンパク質様の形態、例えば合成赤血球形成タンパク質(合成EPO)などが挙げられる。2つのポリマー単位と結合させることが可能なタンパク質はグリコシル化されていてもよいし、グリコシル化されていなくてもよい。例えばエリスロポエチンについては、その活性がグリコシル化に大きく依存することが示されている。天然のエリスロポエチンは、成熟型タンパク質の24、38、83位、および126位が、それぞれNグリコシル化およびOグリコシル化されている。本発明によるコンジュゲート作製に使用しようとするグリコシル化タンパク質は、天然のタンパク質と同じグリコシル化パターンを有することが好ましい。しかしながら、本発明はまた、天然のタンパク質とは異なったグリコシル化パターンを有するが天然タンパク質とほぼ同じかまたはそれよりも高い生物活性を有するグリコシル化タンパク質をも包含する。用語「グリコシル化タンパク質」とは、該タンパク質のアミノ酸鎖に少なくとも1つの炭水化物分子が結合していることを意味するものと意図される。
【0053】
一般に、G−CSF、エリスロポエチン、IFNα2aおよびhGHのような本発明の実施に役立つタンパク質は、哺乳類から単離された任意の形態でもよいし、ゲノムやcDNAのクローニングまたはDNA合成によって得られた外来DNA配列を原核生物もしくは真核生物の宿主で発現させた生成物でもよいし、あるいは化学合成法または内在遺伝子の活性化による生成物であってもよい。したがって、タンパク質は、組織、哺乳動物細胞または微生物細胞の培養物、植物細胞の培養物、トランスジェニック動物、酵母、菌類および/またはトランスジェニック植物から得られた天然または組換えの供給源のものでよい。適切な原核生物の宿主としては大腸菌のような様々な細菌があり;適切な真核生物の宿主としては、S.cerevisiaeまたはPichia pastorisのような酵母、チャイニーズハムスター卵巣細胞またはサルの細胞のような哺乳動物細胞、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどのトランスジェニック動物、植物細胞培養物、およびPhyscomitrella patens(苔)のようなトランスジェニック植物がある。使用される宿主によって、タンパク質発現産物は、哺乳類、植物またはその他の真核生物の炭水化物によってグリコシル化されていてもよいし、あるいは、グリコシル化されていなくてもよい。
【0054】
本発明の範囲内では、野生型タンパク質の類似体は、野生型の配列と比較して追加のアミノ基などの追加のポリマー結合部位を含まないことが好ましい。さらに、類似体は、野生型のアミノ酸配列中に本来存在するアミノ基含有アミノ酸の突然変異を含まないことが好ましい。しかしながら、野生型タンパク質のアミノ酸配列を使用することが好ましい。
【0055】
タンパク質がG−CSFである場合、G−CSF発現産物は1位に開始メチオニン・アミノ酸残基を含んでいてもよい。本発明は、ありとあらゆる形態のG−CSFの使用を企図しているが、組換えG−CSF、特に大腸菌由来のものが好ましい。ある種のG−CSF類似体が生物学的機能を有することが報告されており、これらが本発明によってコンジュゲートに供されてもよい。これらのG−CSF類似体には、配列番号1のG−CSFアミノ酸配列と比較してアミノ酸の付加、欠失および/または置換を有するものが挙げられる。本発明の範囲内で、これらの類似体は、配列番号1のG−CSFアミノ酸配列と比較して、追加のアミノ基のような追加のポリマー結合部位を含まない。さらに、類似体は、配列番号1のG−CSFアミノ酸配列中に本来存在するアミノ基含有アミノ酸の突然変異を含まない。しかしながら、配列番号1の野生型のタンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質が最も好ましい。
【0056】
好ましくは、タンパク質は、G−CSFの活性を有するもの、例えばG−CSFの突然変異体、グリコシル化G−CSF、非グリコシル化G−CSFおよび/またはその他の構造的および/または機能的修飾を有するG−CSFバリアントなどである。一層の好ましい実施形態では、タンパク質は、配列番号1(図20を参照)で特定されるG−CSFの
アミノ酸配列を有し、該配列は、174アミノ酸に加えてN末端メチオニル残基を有する細菌で生産された組換えGCSFに相当するものである。生物学的活性を有するG−CSFのアミノ酸配列であって、1位にメチオニル残基を含まないという点で配列番号1と異なるものも好ましく、野生型タンパク質と呼ばれるものも本発明の範囲内にある。
【0057】
タンパク質がG−CSFの活性を有するものである場合、2つのアミノ基は、G−CSFのα−アミノ基(N末端基)およびリジン残基のε−アミノ基から成る群から選択されることが好ましい。国際公開公報第96/11953号パンフレットには、(i)モノPEG化は、タンパク質のα−アミノ基とε−アミノ基との間のpKaの差異に基づいた反応性の違いが利用されて次の順序:N末端>リジン35>リジン41>>リジン17,24(ここでは有意なPEG化は検出できなかった)で生じ、また(ii)モノPEG化G−CSFの生物活性は次の順序:N末端>リジン35>リジン41で減少したことが示されている。ライダー−オルソン(Reidhaar-Olson)ら(Biochemistry、(1996)第35巻、p.9034−9041)によって記述されたアラニンスキャニング突然変異誘発から、リジン35およびリジン41が生物活性に関して重要な残基であることが明らかとなった。また、構造シミュレーション研究から、G−CSFのリジン17およびリジン24はタンパク質レセプター相互作用の領域内に位置するため、これらのリジンをPEG化するとタンパク質の生物活性が低くなる可能性があることが明らかとなった。したがって、これらの部位にポリエチレングリコールのようなポリマー部分を結合させれば、レセプター結合が立体的に妨害されることが考えられる。
【0058】
ここで、本発明において使用される穏やかな反応条件の下では、ジPEG化は、利用可能なε−アミノ基の間の反応性の違いが識別されて別の順序すなわちN末端>リジン17およびリジン35>>リジン24,41(ここでは有意なPEG化は検出できなかった)で生じることが見出された。したがって、PEGと結合する該タンパク質の2つのアミノ基は、N末端アミノ基、リジン17のe−アミノ基およびリジン35のe−アミノ基から成る群から選ばれることが好ましい。しかしながら、他の実施例では、PEGのようなポリマー基のカップリングは、リジン24のe−アミノ基および/またはリジン41のe−アミノ基で生じる場合もある。残基の番号は、配列番号1(図20を参照)において特定されたG−CSFのアミノ酸配列を参照するものである。
【0059】
タンパク質はインターフェロン・ファミリーのタンパク質であってもよく、好ましくはタンパク質はインターフェロンαタンパク質、最も好ましくはインターフェロンα2aである。タンパク質がインターフェロンα2aである場合、その配列は好ましくは配列番号2(図21を参照)である。本発明は、ありとあらゆる形態のインターフェロンα2a、さらには例えば生物学的機能を有する該タンパク質の類似体の使用をも企図している。これらの類似体には、配列番号2のインターフェロンα2aアミノ酸配列と比較してアミノ酸の付加、欠失および/または置換を有するものが含まれうる。本発明の範囲内では、これらの類似体は、配列番号2のインターフェロンα2aアミノ酸配列と比較して、追加のアミノ基のような追加のポリマー結合部位を含まない。さらに、類似体は、配列番号2のインターフェロンα2aアミノ酸配列中に本来存在するアミノ基含有アミノ酸の突然変異を含まない。しかしながら、配列番号2の野生型タンパク質のアミノ酸配列を使用することが好ましい。
【0060】
タンパク質がインターフェロンα2aの活性を有するものである場合、ポリマー結合用の2つのアミノ基はα−アミノ基(N末端基)およびインターフェロンα2aのリジン残基のe−アミノ基から成る群から選択されることが好ましい。潜在的なPEG結合部位の中では、配列番号2の成熟型タンパク質の121位、131位、134位、31位および49位のリジン残基が、溶媒に接触しやすいことから最も好ましいことが示された。しかしながら、本発明はさらに、PEGのようなポリマー基を、成熟型タンパク質配列のリジ
ン70、83、112、164、23および/またはリジン133のε−アミノ基に結合させることにも関する。
【0061】
タンパク質がエリスロポエチンである場合、配列番号3(図22を参照)の配列を有することが好ましい。本発明は、ありとあらゆる形態のエリスロポエチン、さらには例えば該タンパク質の生物学的機能を有する類似体の使用をも企図している。本発明はさらに、グリコシル化および非グリコシル化エリスロポエチンのいずれの使用も企図している。これらの類似体には、配列番号3のエリスロポエチン・アミノ酸配列と比較して、アミノ酸の付加、欠失および/または置換を有するものが含まれうる。本発明の範囲内では、これらの類似体は、配列番号3のエリスロポエチン・アミノ酸配列と比較して、追加のアミノ基のような追加のポリマー結合部位を含まない。さらに、類似体は、配列番号3のエリスロポエチン・アミノ酸配列中に本来存在するアミノ基含有アミノ酸の突然変異を含まない。しかしながら、配列番号3の野生型タンパク質のアミノ酸配列を使用することが好ましい。
【0062】
タンパク質がエリスロポエチンの活性を有するものである場合、ポリマー結合用の2つのアミノ基はα−アミノ基(N末端基)およびエリスロポエチンのリジン残基のe−アミノ基から成る群から選択されることが好ましい。潜在的なPEG結合部位の中では、配列番号3の成熟型タンパク質の52位、116位および152位のリジン残基が、溶媒に接触しやすいことから最も好ましいことが示された。しかしながら、本発明はさらに、PEGのようなポリマー基を、成熟型タンパク質配列のリジン20、45、97、140および/またはリジン154のε−アミノ基に結合させることにも関する。
【0063】
タンパク質がhGH(ヒト成長ホルモン)である場合、配列番号4(図23を参照)の配列を有することが好ましい。本発明は、ありとあらゆる形態のhGH、さらには例えば該タンパク質の生物学的機能を有する類似体の使用をも企図している。これらの類似体には、配列番号4のhGHアミノ酸配列と比較して、アミノ酸の付加、欠失および/または置換を有するものが含まれうる。本発明の範囲内では、これらの類似体は、配列番号4のhGHアミノ酸配列と比較して、追加のアミノ基のような追加のポリマー結合部位を含まない。さらに、類似体は、配列番号4のhGHアミノ酸配列中に本来存在するアミノ基含有アミノ酸の突然変異を含まない。しかしながら、配列番号4の野生型タンパク質のアミノ酸配列を使用することが好ましい。
【0064】
タンパク質がhGHの活性を有するものである場合、ポリマー結合用の2つのアミノ基はα−アミノ基(N末端基)およびhGHのリジン残基のe−アミノ基から成る群から選択されることが好ましい。潜在的なPEG結合部位の中では、配列番号4の成熟型タンパク質配列の140位、145位、38位および70位のリジン残基が、溶媒に接触しやすいことから最も好ましく、一方、該成熟型タンパク質の172位、41位、158位、168位および115位のリジン残基は、レセプター結合に関与することからあまり好ましくないことが示されている(クラーク(Clark )ら、(1996)J. Biol. Chem.、第271巻(36)、p.21969−21977)。しかしながら、本発明はさらに、PEGのようなポリマー基を、成熟型タンパク質配列のリジン41、115、158、168および/またはリジン172のε−アミノ基に結合させることにも関する。
【0065】
さらに、アミノ基に結合させるポリエチレングリコール部分の分子量は、2〜100kDa、好ましくは5〜60kDa、より好ましくは10〜30kDa、および最も好ましくは12〜20kDaである。本発明の一層の好ましい実施形態では、ポリエチレングリコール部分のエチレンオキシド残基の数nは、約40〜約2270、より好ましくは約110〜約1370、および最も好ましくは約225〜約680である。
【0066】
本発明の別の態様では、上記のポリマー・タンパク質コンジュゲートの医薬組成物が提供される。そのような医薬組成物は、注射による投与、あるいは経口、経肺、経鼻またはその他の形式による投与に好適であってよい。概して、本発明は、有効な量の本発明のジポリマー・タンパク質コンジュゲートを、薬学的に許容可能な希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体と一緒に含んでなる医薬組成物を提供する。そのような組成物は、トリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩のような様々なバッファー含有量、pHおよびイオン強度の希釈剤を含んでもよいし;ツウィーン80のような界面活性剤および可溶化剤、アスコルビン酸およびメタ亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤、ベンジルアルコールのような防腐剤、およびラクトースまたはマンニトールのような増量物質、などの添加剤を含んでもよく;該材料が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのようなポリマー化合物の微粒子調製物内に、あるいはリポソーム内に組み込まれてもよい。そのような組成物は、本発明によるポリマー・タンパク質コンジュゲートの物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、およびインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼす場合がある。
【0067】
既に上述したように、本発明の医薬調製物は、少なくとも1つの本発明のジポリマー・タンパク質コンジュゲートを含む。混合物中での2つのジポリマー・タンパク質コンジュゲートの比率を選択するために2つのジポリマー・タンパク質コンジュゲートの混合物を調製すると有利な場合がある。更に、望ましい場合は、様々な数のポリマー部分が結合した様々なタンパク質の混合物を調製し、この混合物を、本発明のジポリマー・タンパク質コンジュゲートと組み合わせて、本発明のジポリマー・タンパク質コンジュゲートを所定の割合で有する混合物を生成させてもよい。
【0068】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明の調製物は、α−アミノ基(N末端基)およびリジン17のe−アミノ基がポリエチレングリコール部分と結合したG−CSF、ならびにN末端アミノ基およびリジン35のe−アミノ基がポリエチレングリコール部分と結合したG−CSFから成る群から選択された、アイソフォームまたはジPEG化G−CSFアイソフォームとも呼ばれる少なくとも1つのジポリエチレングリコール−G−CSFコンジュゲートを含む。ジPEG化タンパク質コンジュゲートのアイソフォームは、該タンパク質中に3個以上のPEG結合部位、例えばアミノ基の窒素原子が3個以上ある場合に生じうる。いずれのジPEG化G−CSFアイソフォームも、ジPEG化G−CSFアイソフォームの混合物と比べて同じ生物活性を示す。
【0069】
本発明の別の実施形態では、指定のジPEG化G−CSFコンジュゲート調製物は、上述のような2つのアイソフォーム、例えば、N末端基とリジン17のe−アミノ基とにポリエチレングリコール部分を備えたアイソフォーム(以下、N末端基+リジン17とも呼ぶ)、ならびにN末端基とリジン35のe−アミノ基とにポリエチレングリコール部分を備えたアイソフォーム(以下、N末端基+リジン35とも呼ぶ)を、任意の所定の化学量論比、例えば0.1〜10、または0.5〜2、または0.75〜1.33、あるいは約1の比で含みうる。
【0070】
以下に示す実施例で実証するように、上述のような2つのジPEG化G−CSFアイソフォームの所定の混合物[(N末端基+リジン17)/(N末端基+リジン35)の混合比が例えば約0.76:1のもの]で構成される本発明の所定の生成物または調製物は、モノPEG化G−CSF(Neulasta(R)として市販)の生理活性に匹敵する生理活性を有し、かつ非修飾型G−CSF(Neupogen(R)として市販)より高い生理活性すらも有する。更に、上述のような2つのジPEG化G−CSFアイソフォームは、別の実施例において示すように同等の生理活性を有する。したがって、上述のような2つのジPEG化G−CSFアイソフォームの各々が、モノPEG化G−CSFの生理活性に匹敵し、かつ非修飾型G−CSFの生理活性よりさらに高い生理活性を有する。この
ことは、(i)構造研究から(アリトミ(Aritomi )ら、Nature、1999年、第401巻、p.713−717)、および(ii)ヤング(Young )ら記載のアラニンスキャニング突然変異誘発実験から(Protein Science 、1997年、第6巻、p.1228−1236)推測可能な、リジン17の修飾を含むPEG化G−CSFアイソフォームの生物活性への悪影響を仮定する仮説とは対照的である。
【0071】
更に、異なる分子量(すなわち12kDaおよび20kDa)を有するPEG分子が結合しているジPEG化G−CSFアイソフォームが、同等の生物活性を有することが示された。両アイソフォームの生物活性はモノPEG化G−CSFの生物活性に匹敵する。しかしながら、20kDaのPEGが結合したタンパク質は、12kDaのPEGが結合したタンパク質に比べて白血球数および好中球数がわずかに高く、応答性が維持されている。
【0072】
別の態様によれば、本発明は、上述のような少なくとも1つのジPEG化タンパク質コンジュゲートを、多重PEG化タンパク質コンジュゲートとともに混合して含む、PEGタンパク質コンジュゲートの混合医薬調製物であって、前記ジPEG化タンパク質コンジュゲートの割合が予め指定されていることを特徴とする医薬混合調製物を提供する。本発明の状況において、用語「多重PEG化タンパク質コンジュゲート」とは、1タンパク質分子当たり3以上のPEG部分を有するタンパク質コンジュゲートを意味する。混合医薬調製物中の前記少なくとも1つのジPEG化タンパク質コンジュゲートの割合は、1%〜99%、好ましくは50%〜99%、より好ましくは60、70、80または90%〜99%、ならびに最も好ましくは92、94、96、98〜99%の範囲にある。
【0073】
本発明の別の態様によれば、ポリエチレングリコール・タンパク質コンジュゲートのようなポリマー・タンパク質コンジュゲートの調製方法であって、還元的アルキル化条件の下で、ジPEG化タンパク質のようなジポリマー・タンパク質コンジュゲートを主として生成する方法が提供される。好ましくは、PEG試薬のようなポリマー試薬をタンパク質とともにこのようにジポリマー・タンパク質コンジュゲートへと変換することは、適切な反応時間、適切なタンパク質濃度、ポリマーとタンパク質との適切なモル比および適切な反応温度のような、ジポリマー・タンパク質コンジュゲートが豊富に得られる反応条件を選択することにより達成される。ジPEG化タンパク質コンジュゲートを主として調製するための方法を提供することが特に好ましい。
【0074】
本発明の状況において、ポリマーをタンパク質とともに選択的または優先的または主としてジポリマー・タンパク質コンジュゲートへと変換すること、あるいはジポリマー・タンパク質コンジュゲートを選択的または優先的または主として生産すること、あるいはタンパク質のアミノ基の2つの窒素原子が各々1つのポリマー単位と結合しているポリマー・タンパク質コンジュゲートを選択的または優先的または主として調製することは、本発明の方法による反応混合生成物の少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、そして最も好ましくは少なくとも40%または少なくとも45%、あるいはさらに少なくとも50%または少なくとも60%が、本発明のジポリマー・タンパク質コンジュゲートであることを意味する。本発明の状況において、反応混合物中のジポリマー・タンパク質コンジュゲートの割合(%)は、HPLCシステムを使用した陽イオン交換クロマトグラフィーおよび質量分析によって決定された反応混合物中のすべての同定された分子種または生成物の量に関する少なくとも1つのジポリマー・タンパク質コンジュゲートの量である。
【0075】
本発明の状況において、PEGをタンパク質とともに選択的または優先的または主としてジPEG化PEGタンパク質コンジュゲートへと変換すること、あるいはジPEG化PEGタンパク質コンジュゲートを選択的または優先的または主として生産すること、ある
いはタンパク質のアミノ基の2つの窒素原子が各々1つのポリエチレングリコール単位と結合しているポリエチレングリコール・タンパク質コンジュゲートを選択的または優先的または主として調製することは、本発明の方法による反応混合生成物の少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、そして最も好ましくは少なくとも40%または少なくとも45%、あるいはさらに少なくとも50%または少なくとも60%が、本発明のジPEG化されたPEGタンパク質コンジュゲートであることを意味する。本発明の状況において、反応混合物中のジPEG化されたPEGタンパク質コンジュゲートの割合(%)は、HPLCシステムを使用した陽イオン交換クロマトグラフィーおよび質量分析によって決定された反応混合物中のすべての同定された分子種または生成物の量に関する少なくとも1つのジPEG化PEGタンパク質コンジュゲートの量である(表1も参照のこと)。
【0076】
好ましくは、本発明の2つのプロセス・サイクルの各々の反応時間は、約6h〜約48h、より好ましくは12h〜32hである。他の好ましい反応時間は、約7h、約8h、約9h、約10h、約11h、約13h、約14h、約15h、約16h、約17h、約18h、約19h、約20h、約21h、約22h、約23h、約24h、約25h、約26h、約27h、約29h、約30h、約31h、約33h、約34hあるいは約35hである。しかしながら、当業者であれば、反応時間は反応温度のような他のプロセス・パラメータと相互関係を有するという事実を承知している。この点では、シャモフ(Chamov)ら(Bioconjugate Chemistry(1994)第5巻(2)、p.133−140)により、反応温度を増加させると反応時間が少なくとも2分の1に減少することが実証されている。さらに、非グリコシル化タンパク質については、反応時間はタンパク質に対するポリマーのモル比にも依存することが見出されている。例えば、所与のタンパク質濃度に対してポリマー量を2倍にすると、ジポリマー・タンパク質コンジュゲートの形成反応時間を2分の1に減少させることができる。
【0077】
反応は、2℃〜50℃の温度で、より好ましくは2℃〜8℃の温度で、最も好ましくは約4℃の温度で行なわれることが好ましい。既に上に述べたように、特定温度の選択は反応時間に影響する場合があり、反応時間はタンパク質のアミノ基の2つの窒素原子がアミン結合によってポリマー単位と結合しているポリマー・タンパク質コンジュゲートが優先的に調製されるように選択されるべきである。特に、反応時間は好ましくは約6h〜約48hであるが、反応温度を上昇させた場合には6h未満、例えば1h、2h、4h、または5hであってもよい。例えば、反応が15℃〜25℃、好ましくは18℃〜24℃、および最も好ましくは22℃の温度で行なわれる場合、反応時間は少なくとも6h、好ましくは6h〜12hまたは8h〜10hであり、反応が5℃で行なわれる場合は少なくとも18hである。
【0078】
さらに、タンパク質濃度が0.5〜100mg/ml、より好ましくは1〜10mg/ml、最も好ましくは3〜7mg/mlで反応が行なわれることが好ましい。
さらに好ましい本発明の実施形態によれば、反応はタンパク質とポリマーとのモル比を1:1〜1:400、好ましくは1:5〜1:50、最も好ましくは1:15〜1:30として行われる。本発明の状況においては、タンパク質とポリマーとのモル比は、反応試料中の所与のタンパク質濃度におけるタンパク質のモル数とポリマーのモル数との間の比を意味する。タンパク質とポリマーとのモル比に基づいて、タンパク質内のアミノ基とポリマー分子との化学量論比を推定することが可能である。本発明の状況においては、アミノ基とポリマー分子との化学量論比は、タンパク質分子の数に対するタンパク質内のα−およびε−アミノ基の数を意味する。
【0079】
非グリコシル化タンパク質については、アミノ基の数に対して、例えばインターフェロンα2aの場合には少なくとも1.25倍過剰、GCSFの場合には2倍過剰の数のポリ
マー分子が、ポリマー基が2つ結合したタンパク質を主に生産するのに必要であり、一方グリコシル化タンパク質については、ポリマー分子の数に対してアミノ基の数が過剰であってもジポリマー・タンパク質コンジュゲートが主として生産される、ということが見出された。
【0080】
したがって、非グリコシル化タンパク質については、ポリマー分子の数に対するアミノ基の数の化学量論比が、1:1〜1:80、好ましくは1:1.25〜1:80、より好ましくは1:1.25〜1:50、さらに一層好ましくは1:1.25〜1:30、最も好ましくは1:2〜1:10の範囲にあることが好ましい。
【0081】
グリコシル化タンパク質については、ポリマー分子の数に対するタンパク質内のアミノ基の数の化学量論比が、10:1〜1:50、好ましくは1:0.3〜1:50、より好ましくは2:1〜1:25、さらに一層好ましくは1:0.8〜1:10の範囲にあることが好ましい。最も好ましくは、化学量論比は、10:1、5:1、1:0.3、1:0.4、2:1、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9あるいは1:1である。他の好ましい化学量論比は、1:2〜1:10または1:2〜1:5である。
【0082】
本発明の一層好ましい実施形態では、反応時間は約6h〜約48h、より好ましくは12h〜32hである。他の好ましい反応時間は、約7h、約8h、約9h、約10h、約11h、約13h、約14h、約15h、約16h、約17h、約18h、約19h、約20h、約21h、約22h、約23h、約24h、約25h、約26h、約27h、約29h、約30h、約31h、約33h、約34hあるいは約35hであり、タンパク質とポリマーとのモル比は1:1〜1:400、好ましくは1:5〜1:50、最も好ましくは1:15〜1:30である。
【0083】
本発明の一層好ましい実施形態では、反応時間は約6h〜約48h、より好ましくは12h〜32hである。他の好ましい反応時間は、約7h、約8h、約9h、約10h、約11h、約13h、約14h、約15h、約16h、約17h、約18h、約19h、約20h、約21h、約22h、約23h、約24h、約25h、約26h、約27h、約29h、約30h、約31h、約33h、約34hあるいは約35hであり、アミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、非グリコシル化タンパク質について、1:1〜1:80、好ましくは1:1.25〜1:80、より好ましくは1:1.25〜1:50、さらに一層好ましくは1:1.25〜1:30、最も好ましくは1:2〜1:10の範囲にあることが好ましい。
【0084】
本発明の一層好ましい実施形態では、反応時間は約6h〜約48h、より好ましくは12h〜32hである。他の好ましい反応時間は、約7h、約8h、約9h、約10h、約11h、約13h、約14h、約15h、約16h、約17h、約18h、約19h、約20h、約21h、約22h、約23h、約24h、約25h、約26h、約27h、約29h、約30h、約31h、約33h、約34hあるいは約35hであり、タンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、グリコシル化タンパク質について、10:1〜1:50、好ましくは1:0.3〜1:50、より好ましくは2:1〜1:25、さらに一層好ましくは1:0.8〜1:10の範囲にあり、最も好ましくは、化学量論比は、10:1、5:1、1:0.3、1:0.4、2:1、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9あるいは1:1である。
【0085】
本発明の一層好ましい実施形態では、反応時間は約6h〜約48h、より好ましくは12h〜32hである。他の好ましい反応時間は、約7h、約8h、約9h、約10h、約11h、約13h、約14h、約15h、約16h、約17h、約18h、約19h、約20h、約21h、約22h、約23h、約24h、約25h、約26h、約27h、約
29h、約30h、約31h、約33h、約34hあるいは約35hであり、反応は、2℃〜50℃の温度、より好ましくは2℃〜8℃、最も好ましくは約4℃の温度で行なわれ、タンパク質とポリマーとのモル比は1:1〜1:400、好ましくは1:5〜1:50、最も好ましくは1:15〜1:30である。
【0086】
本発明の一層好ましい実施形態では、反応時間は約6h〜約48h、より好ましくは12h〜32hである。他の好ましい反応時間は、約7h、約8h、約9h、約10h、約11h、約13h、約14h、約15h、約16h、約17h、約18h、約19h、約20h、約21h、約22h、約23h、約24h、約25h、約26h、約27h、約29h、約30h、約31h、約33h、約34hあるいは約35hであり、反応は、2℃〜50℃の温度、より好ましくは2℃〜8℃の温度、最も好ましくは約4℃の温度で行なわれ、アミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、非グリコシル化タンパク質について、1:1〜1:80、好ましくは1:1.25〜1:80、より好ましくは1:1.25〜1:50、さらに一層好ましくは1:1.25〜1:30、最も好ましくは1:2〜1:10の範囲にある。
【0087】
本発明の一層好ましい実施形態では、反応時間は約6h〜約48h、より好ましくは12h〜32hである。他の好ましい反応時間は、約7h、約8h、約9h、約10h、約11h、約13h、約14h、約15h、約16h、約17h、約18h、約19h、約20h、約21h、約22h、約23h、約24h、約25h、約26h、約27h、約29h、約30h、約31h、約33h、約34hあるいは約35hであり、反応は、2℃〜50℃の温度、より好ましくは2℃〜8℃の温度、最も好ましくは約4℃の温度で行なわれ、タンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、グリコシル化タンパク質について、10:1〜1:50、好ましくは1:0.3〜1:50、より好ましくは2:1〜1:25、さらに一層好ましくは1:0.8〜1:10の範囲にあり、最も好ましくは、化学量論比は、10:1、5:1、1:0.3、1:0.4、2:1、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9あるいは1:1である。
【0088】
タンパク質がG−CSFである場合、反応時間は好ましくは12h〜24hであり、反応温度は好ましくは約4℃であり、タンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、好ましくは1:2〜1:10である。
【0089】
タンパク質がインターフェロンα2aである場合、反応時間は好ましくは12h〜24hであり、反応温度は好ましくは約4℃であり、タンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、好ましくは1:1〜1:10の範囲にあり、最も好ましくは1:1.25である。
【0090】
タンパク質がエリスロポエチンである場合、反応時間は好ましくは12h〜24hであり、反応温度は好ましくは約4℃であり、タンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、好ましくは1:0.5〜1:8の範囲にあり、最も好ましくは1:0.625である。
【0091】
タンパク質がhGHである場合、反応時間は好ましくは12h〜24hであり、反応温度は好ましくは約4℃であり、タンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、好ましくは1:1〜1:8の範囲にあり、最も好ましくは1:1.6である。
【0092】
還元的アルキル化において使用される還元剤は、NaCNBHまたはNaBHから選択されることが好ましいが、これらに限定はされない。
さらに、反応は、特にタンパク質がG−CSF、エリスロポエチン、hGHまたはインターフェロンの生物活性を有するタンパク質である場合には、中性付近、例えば、pH6
〜8、より好ましくはpH6.9〜7.8、最も好ましくはpH7.2〜7.5で行なわれることが好ましい。他のタンパク質については、pH4.5〜7.5または5.0〜6.5または約5.5からpHを選択することが望ましい場合がある。
【0093】
好ましい範囲のpHを維持するために、反応を、バッファー(例えば、リン酸塩、酢酸塩、HEPES、MESおよび/またはbicineバッファーから選択可能)の存在下で行うとよい。
【0094】
本発明の方法において使用されるPEG試薬は一般に、次式:
[R−L−(CH−CH−O)−L−(CH−)m−1−CHO(式中、Rは、H、低級アルキル、アリールまたは任意の適切な保護基であり;nは、ポリエチレングリコール部分の中のエチレンオキシド残基の数を表す整数であり;mはメチレン基の数を表わす整数であり;Lは、O、N、Sおよび分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分のうち少なくともいずれかであって存在していても存在しなくてもよく;Lは、分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分であって存在していても存在しなくてもよく;yは整数であって、ただしLが存在しない場合にはyは1であり、Lが存在する場合にはyは少なくとも1である)を有する試薬である。
【0095】
好ましくは、R、m、n、L、Lおよびyは、本発明のポリマー・タンパク質コンジュゲートについて上記されているように定義される。
さらに、該ポリマー試薬がPEGアルデヒド、より好ましくはPEGアセトアルデヒド、最も好ましくはメトキシポリエチレングリコール・アセトアルデヒド(mPEGアセトアルデヒド)であることが好ましい。
【0096】
タンパク質と反応させるための、単一のアルデヒド基を有するポリエチレングリコールは、対応するアセタールの形態で保存可能である。該PEGアセタール先駆物質は、結合しようとするタンパク質とともに変換させる前のどの時点で活性化してPEGアルデヒド試薬としてもよいが、ただし活性化されたPEGアルデヒドが本発明の方法によりタンパク質と結合するまで安定であることを条件とする。例えば、単一のアセトアルデヒド基を有するポリエチレングリコール試薬を得るためには、対応するポリエチレングリコールジエチルアセタールを活性化すればよい。
【0097】
この問題に関連して、メトキシポリエチレングリコール・アセトアルデヒドのようなポリエチレングリコール・アセトアルデヒドの長期保存方法が提供され、該方法では、ポリエチレングリコール・アセトアルデヒドは窒素のような不活性雰囲気下で約−20℃以下の温度で固体物質として保存される。この方法によれば、メトキシポリエチレングリコール・アセトアルデヒドのようなポリエチレングリコール・アセトアルデヒドを、少なくとも1か月、好ましくは少なくとも2か月、より好ましくは少なくとも3か月、最も好ましくは少なくとも4または6か月保存可能である。
【0098】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、該方法は、分離ステップまたは精製ステップをさらに含み、該ステップは、ジポリマー・タンパク質コンジュゲート、好ましくはジPEG化ポリエチレングリコール・タンパク質コンジュゲートであって、タンパク質の2つの所定のアミノ基が各々1つのポリマー単位と結合しているコンジュゲートのプール(生成物プールとも呼ばれる)をもたらし、かつ、未反応タンパク質、未反応ポリマー試薬、生成物プールのジポリマー・コンジュゲート以外のジポリマー・タンパク質コンジュゲート・アイソフォーム、および/またはタンパク質の2未満もしくは3以上のアミノ基がポリマー単位と結合しているポリマー・タンパク質コンジュゲートを含有するプール(残余物プールとも呼ばれる)を生じさせる。
【0099】
この生成物プールおよび残余物プールを生成する分離ステップまたは精製ステップは、イオン交換クロマトグラフィーによって行われることが好ましい。
本発明の方法の化学反応および穏やかな反応条件により、本発明の別の方法(例えば本発明による別のジPEG化方法)についての望ましくない安定な反応生成物のフラクションを再利用することが可能となる。従って、別の好ましい実施形態によれば、残余物プールを再び本発明の方法に供する。例えば、PEG試薬による変換において非PEG化タンパク質のみを使用する代わりに、残余物プールを、還元的アルキル化条件の下で、単一のアルデヒド基(例えばアセトアルデヒド基)を有するポリエチレングリコール試薬と反応させる。このとき、反応時間、反応温度、モル比および/または化学量論比は、タンパク質のアミノ基の窒素原子2つが各々1つのポリエチレングリコール単位と結合しているポリエチレングリコール・タンパク質コンジュゲートが選択的に調製されるように選択する。反応時間、反応温度、モル比および化学量論比は、本発明の方法について上述したようにして選択される。
【0100】
この好ましい再利用ステップにより、本発明のジPEG化PEGタンパク質コンジュゲートのようなジポリマー・タンパク質コンジュゲートの収量を著しく増加させることが可能となる。特に、タンパク質のアミノ酸鎖の所定位置のアミノ基の窒素原子にPEG部分が結合しているジPEG化PEGタンパク質コンジュゲート・アイソフォームを得ることができる。
【0101】
本発明の状況において、ジPEG化タンパク質コンジュゲートには、広義には、2つのポリエチレングリコール単位と結合し、該ポリエチレングリコール単位が両方とも各々タンパク質の1つのアミノ基と結合している、任意のタンパク質が含まれる。本発明のジPEG化タンパク質コンジュゲートは、タンパク質のアミノ基由来のアミンとポリエチレングリコール単位のエチレンオキシド残基の鎖との間にCリンカーを有するジPEG化PEGタンパク質コンジュゲートを選択的に生じさせる還元的アルキル化条件の下で、ポリエチレン・アセトアルデヒド分子をタンパク質と反応させることにより得られることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0102】
本発明の特徴および利点は、さらなる好ましい実施形態についての以降の記載からより詳細に明らかとなろう。最良の形態を含むこれらの実施形態では、G−CSF、IFNα2a、エリスロポエチンおよびヒト成長ホルモンがタンパク質として例証され、PEGがポリマー部分として例証される。しかしながらこのことは、上記タンパク質とPEGとのジPEG化PEGタンパク質コンジュゲートが特に好ましいとはいっても、本発明を上記タンパク質とPEGとのコンジュゲートに限定するものとして解釈すべきではない。
【0103】
本発明の1つの態様は、ポリエチレングリコール・アルデヒド部分を、還元的アルキル化条件の下でタンパク質のa−アミノ基およびe−アミノ基に結合させることにより、ジPEG化タンパク質コンジュゲートを調製する方法に関する。
【0104】
この方法の第1のステップは、任意選択で、タンパク質とともに変換させるべき相応のポリエチレングリコール試薬を準備することであってよい。好ましい実施形態では、ポリエチレングリコール試薬はポリエチレングリコール・アセトアルデヒドであり、より好ましくはメトキシポリエチレングリコール・アセトアルデヒドである。米国特許第5,252,714号明細書には、メトキシPEGアセトアルデヒドがアルドール分解および酸化により水溶液中で不安定であることが記載されている。従って、本発明の1つの実施形態では、ポリエチレングリコール試薬を提供する方法は、メトキシPEGアセトアルデヒドの安定な保存形態であるメトキシPEGジエチルアセタールを活性化してメトキシPEGアセトアルデヒドにすることを含む。
【0105】
しかしながら、驚くべきことに、窒素下および低温、例えば−20℃以下で固体物質として保存すると、PEGアセトアルデヒドの活性は、少なくとも4か月、好ましくは少なくとも6か月、最も好ましくは少なくとも1年間保存可能であり、従ってその期間に再現性良くジPEG化を行うことが可能であることがわかった。本発明の状況において、再現性の良いジPEG化とは、ジPEG化タンパク質の収率および反応速度論において同等であることを意味する。従って、本発明の他の実施形態では、PEGアセトアルデヒドはタンパク質との反応の直前に提供される必要はない。むしろ、PEGジエチルアセタール先駆物質を、タンパク質(好ましくはG−CSF)との反応の数時間前(例えば12時間または24時間前)、好ましくは数週間前(例えば1週間または2週間前)、あるいは数か月前(例えば2、3または4か月前)あるいはそれ以前に、PEGアセトアルデヒド、好ましくはメトキシPEGアセトアルデヒドへと活性化してもよい。
【0106】
さらに、本発明の再利用ステップを含むジPEG化方法の収率および/または反応速度論に影響を及ぼすパラメータが同定された。これらのパラメータには、タンパク質濃度、タンパク質とPEGとのモル比、タンパク質がグリコシル化されているか否かによって変化するタンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比、pH、還元的アルキル化において使用される還元剤、温度、インキュベーション時間、共溶媒、撹拌速度および撹拌方法、バッファーのイオン強度が含まれる。
【0107】
国際公開公報第96/11953号パンフレットは、十分に酸性のpHでは、α−アミノ基およびe−アミノ基のpKa差からみてα−アミノ基のモノPEG化が選択的に生じることを教示している。国際公開公報第03/049699号パンフレットには、pH5.5〜7.5の範囲のpHでのPEG化はα−アミノ基においてのみ生じ、その結果モノPEG化タンパク質が得られることが記載されている。シャモウ(Chamow)ら(Bioconjugate Chemistry(1994)第5巻(2)、p.133−140)は、pH7.5ではCD4−IgGのa−アミノ基がプロトン化されていないために主にこのアミノ基がPEG化され、一方、e−アミノ基はプロトン化されているためPEG化されないままであることを述べている。この結果としてほぼ完全にモノPEG化タンパク質分子が生じる。
【0108】
しかしながら、今回、タンパク質の異なるe−アミノ基の間で検知される反応性の違いを利用してジPEG化タンパク質を優先的に生産するパラメータを、本発明の方法について選択可能であることが見出された。ジPEG化G−CSF、IFNα2a、エリスロポエチンおよびhGHについては、本発明によるPEG化反応は、中性付近、例えばpH6.5〜7.5で行なわれることが好ましい。本発明による他のジポリマー・タンパク質コンジュゲートPEG化反応については、より酸性またはより塩基性のpH、例えばpH3、4、5、5、8、9または10に調節することが望ましい場合もある。
【0109】
特に、G−CSFのようなタンパク質のPEG化度について重要な1つのパラメータは、反応時間であることが分かった。好ましい実施形態では、好ましい反応時間は、反応混合物の少なくとも20%が、ジPEG化PEGタンパク質コンジュゲート、すなわちタンパク質の2つのアミノ基が各々1つのポリエチレングリコール単位と結合しているポリエチレングリコール・タンパク質コンジュゲートからなるように選択される。他の好ましい実施形態では、ジPEG化反応の反応時間は、反応混合物の少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%あるいは少なくとも50%が、ジPEG化GCSFのようなジPEG化タンパク質からなるように選択される。
【0110】
特に、タンパク質濃度、タンパク質とPEGとのモル比、タンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比、pHおよび温度などのパラメータの所定のセットについて、ポリエチレングリコール試薬、好ましくはポリエチレングリコール・アセトアル
デヒド、より好ましくはメトキシポリエチレングリコール(mPEG)アセトアルデヒドを、タンパク質、好ましくはG−CSF、IFNα2a、エリスロポエチンおよびhGHとともにインキュベーションするための、ジPEG化PEGタンパク質コンジュゲートの形成に有利に働く特定の時間フレームが存在することが分かった。G−CSFの例に関して図3に示すように、各mPEG−G−CSFコンジュゲート、すなわちモノ−、ジ−、トリ−およびテトラPEG化物の収量はインキュベーション時間に依存して変わる。インキュベーションの初期には、モノPEG化物の収量が最大に達して減少が始まる(データは示さない)のに対し、ジPEG化およびトリPEG化G−CSFコンジュゲートは漸増的に形成される。次に、ジPEG化G−CSFコンジュゲートの収量が最大に達して数時間維持された後で減少し始める一方、トリPEG化G−CSFコンジュゲートは漸増的に形成される。調べたインキュベーション時間内では、トリPEG化およびそれ以上にPEG化されたコンジュゲートはその最大収量に達しない。
【0111】
従って、本発明の方法の反応時間に関して所定の時間フレームを選択することは、G−CSFなどのPEG化タンパク質の特定のアイソフォームまたは分子種を高収率で生産するために不可欠であることが分かった。
【0112】
ジPEG化タンパク質の生産のための別の重要なパラメータは、タンパク質とPEGとのモル比、およびタンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数の化学量論比であり、化学量論比はグリコシル化タンパク質と非グリコシル化タンパク質とで異なっている。
【0113】
通常、本発明の方法はPEG化状態の異なる形態の混合生成物を生じ、該混合生成物はジPEG化タンパク質コンジュゲートが非常に豊富、すなわち反応混合物のうち好ましくは少なくとも20%、またはより好ましくは少なくとも30%がジPEG化タンパク質コンジュゲートからなる。しかしながら、該反応混合物は、未反応タンパク質、未反応ポリマーおよび別のPEG化状態のタンパク質コンジュゲートをも含んでいる。したがって、本発明の方法は、望ましくない物質からジPEG化物を分離するために、例えばクロマトグラフィー、好ましくはイオン交換クロマトグラフィーのステップ、より好ましくは陽イオン交換クロマトグラフィーのステップ(C−IEX)による精製ステップをさらに含むことが好ましい。この精製ステップでは、ジPEG化タンパク質コンジュゲートは、未反応タンパク質、未反応PEG試薬、および/または1タンパク質当たり3以上もしくは2未満のポリエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール・コンジュゲートから分離されうる。さらに、PEG結合部位が所望のジPEG化PEGタンパク質コンジュゲート生成物と異なっているジPEG化タンパク質コンジュゲート・アイソフォームが分離される場合もある。ジPEG化タンパク質コンジュゲート生成物を含むプールは生成物プールとも呼ばれ、望ましくない化合物を含むプールは残余物プールまたは生成物非含有溶出液とも呼ばれる。
【0114】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ジPEG化タンパク質コンジュゲートの全収量は、本発明の別のPEG化方法において、C−IEXステップのような精製ステップから得られた生成物非含有溶出液を再利用することによってさらに増加させることが可能と思われる。この実施形態では、クロマトグラフィーカラム(例えばC−IEXカラム)の溶出液を、通常は、バッファー交換および濃縮のために限外濾過および/または透析濾過に供し、次に、ポリエチレングリコール・アルデヒド試薬、好ましくはメトキシポリエチレングリコール・アセトアルデヒドのようなアセトアルデヒドを用いて変換させる。
【0115】
本発明の別の態様では、本発明のジPEG化タンパク質コンジュゲートが高い生物活性を示し、該活性が本発明のジPEG化G−CSFアイソフォームおよびアイソフォーム混合物のバイオアッセイで実証されたことが示された。本発明のコンジュゲートは、天然G−CSFの造血性の生物学的特性を示した。特に、インビボのデータから、本発明のジP
EG化G−CSFアイソフォームおよびアイソフォーム混合物を投与すると好中球および白血球数が増加することが明らかとなり、さらに、生物活性の時間が持続されることが明らかとなったが、このことは、コンジュゲートではないG−CSF(Neupogen(R))の反復注射と比較して、治療コース当たりのG−CSFの注射を少なくすることができるため、患者にとって実際的な利点をもたらすものである。
【0116】
本発明のPEG化方法のさらなる実施形態をより詳細に以下に説明する。
[ポリエチレングリコール・アセタールの活性化]
本発明の方法において、タンパク質コンジュゲートの作製に次式:
(R−O−(CH−CH−O)−CH−CHO
を有するポリエチレングリコール・アルデヒドを使用することが好ましく、上記式中、RはHまたはメチルのような低級アルキルであり;nは、ポリエチレングリコール部分のエチレンオキシド残基の数を表わす整数であって好ましくは225〜680であり;mはメチレン基の数を表わす整数であり;Lは不在であり;Lは不在であり;yは1である。当業者は、これらの化合物および本発明による他のポリマー試薬を生産するためのプロトコールおよび条件についてよく承知している(例えば欧州特許出願第0 154 316号明細書;米国特許第5,990,237号明細書;シャモフ(Chamov)ら、Bioconjugate Chem.、1994年、第5巻、p.133−140を参照のこと)。
【0117】
1つの実施形態では、本発明の方法は、メトキシポリエチレングリコール・アセタールのようなポリエチレングリコール試薬の前駆物質化合物を、メトキシポリエチレングリコール・アルデヒドのような活性化されたポリエチレングリコール・アセトアルデヒドに変換することにより開始される。この活性化は通常、水溶液中で、例えば最大3時間、酸性pH、例えばpH2(任意の有機酸および/または無機酸を加えることにより達成可能)で行なわれる。通常、ポリエチレングリコール・アセタールからポリエチレングリコール・アルデヒドへの変換はH−NMRスペクトル測定による成分分析により検知される。
【0118】
[PEG化反応]
PEG化反応において変換されるタンパク質としては、任意の天然もしくは組換えタンパク質、または任意の原核生物もしくは真核細胞から得られるようなタンパク質バリアントまたはタンパク質変異体を使用することができる。ヒトのタンパク質が好ましい。特に、野生型形態の活性を有する任意のタンパク質、例えばバリアント、突然変異タンパク質、構造上または機能的に同等なタンパク質ならびにタンパク質様の合成物を使用することができる。しかしながら、野生型タンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質の使用が好ましい。
【0119】
好ましくは、G−CSFの活性を有するタンパク質、より好ましくは配列番号1に特定されたアミノ酸配列を有するG−CSFが、本発明の方法において使用される。天然または組換えの供給源からG−CSFを入手し単離することはよく知られている。(例えば欧州特許出願第0 237 545号、同第0 169 566号明細書)通常、G−CSFは、適切なバッファー、例えば10mMの酢酸Naバッファー(pH4.0)中にて低濃度、例えば約1mg/mlで保存される。
【0120】
他の好ましいタンパク質は、インターフェロン・ファミリーのタンパク質、好ましくはIFNα2aと、エリスロポエチンおよびヒト成長ホルモンであって、それぞれ配列番号2、配列番号3および配列番号4のアミノ酸配列を有するもの、ならびにその類似体である。
【0121】
さらに、本発明によるPEG化反応は、G−CSF、IFNα2a、エリスロポエチンまたはヒト成長ホルモンのようなタンパク質と、生理学的バッファー系と、メトキシポリ
エチレングリコール・アセトアルデヒドのような活性化ポリエチレングリコール・アルデヒドと、還元剤とを含んでいる適切なインキュベータ中で一般に行なわれる。さらに、反応混合物を低温で静かに撹拌することが好ましい。反応は、反応混合物の酸性化によって停止可能である。
【0122】
反応バッファー
本発明によるPEG化反応用の典型的な反応バッファーには、リン酸、クエン酸/リン酸、カコジル酸、炭酸、HEPES、MES、BES、MOPS、bicineおよび/またはその他の適切なバッファーが挙げられる。
【0123】
バッファーの使用濃度は、使用されるタンパク質の量に依存して変更可能である。典型的な濃度は50〜200mMのリン酸バッファーなどのバッファーである。しかしながら、イオン強度が異なってもジPEG化生成物の収量には影響しない。
【0124】
タンパク質濃度
本発明のPEG化方法に使用されるタンパク質の濃度は、溶解度および凝集性のようなタンパク質の物理化学的性質、ならびに方法の経済性に依存する。タンパク質濃度が高いほど、同等な生成物収量とするためのタンパク質とポリエチレングリコール試薬との規定モル比は小さくなる。
【0125】
本発明によるG−CSFのPEG化については、反応混合物中のタンパク質の濃度は、好ましくは1〜20mg/ml、より好ましくは約2または2.4〜約5.7または6mg/mlの範囲であり、最も好ましくは約3.2mg/mlである。
【0126】
ポリエチレングリコール・アルデヒドとタンパク質とのモル比
ポリエチレングリコール・アルデヒド部分の濃度はジPEG化タンパク質の最終的な収量に影響しないことが分かった。しかしながら、一定のタンパク質濃度に対するポリエチレングリコール濃度が高いほど、反応はより速く終了点に達する。
【0127】
従って、本発明によるタンパク質のジPEG化は、広範囲のタンパク質とポリエチレングリコール試薬とのモル比において実施可能である。好ましくは、ポリエチレングリコール・アルデヒド、例えばメトキシポリエチレングリコール・アセトアルデヒドのタンパク質に対するモル比が約5:1〜400:1であることが好ましい。より好ましくは、特に非グリコシル化G−CSFのジPEG化について、モル比は10:1〜50:1であり、最も好ましくは15:1〜30:1である。
【0128】
タンパク質内のアミノ基に対するポリエチレングリコールの化学量論比
非グリコシル化タンパク質について、2つのポリマー基を備えたタンパク質を生産するためには、タンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、1:1.25〜1:50、好ましくは1:1.25〜1:30、より好ましくは1:2〜1:10の範囲であることが好ましい。
【0129】
グリコシル化タンパク質については、PEG結合に関し接触可能となるアミノ基の数が所与のタンパク質濃度におけるポリマー分子の数に対して過剰であっても、主としてジポリマー・タンパク質コンジュゲートが生産される。
【0130】
したがって、タンパク質内のアミノ基の数とポリマー分子の数との化学量論比は、グリコシル化タンパク質については、10:1〜1:50、好ましくは1:0.3〜1:50、より好ましくは2:1〜1:25、さらに一層好ましくは1:0.8〜1:10までの範囲であり、最も好ましくは化学量論比は10:1、5:1、1:0.3、1:0.4、
2:1、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9または1:1である。
【0131】
ポリエチレングリコール・アルデヒド試薬の分子量
本発明によるタンパク質のジPEG化は、広範囲の分子量のポリエチレングリコール試薬(すなわち2〜100kDa)において実施されうる。ポリエチレングリコール・アルデヒド試薬の好ましい分子量は、10〜30kDa、例えば12〜20kDaの範囲にある。分子量が大きいほど、ジPEG化の収量は低くなる可能性があり、次いで反応混合物の粘性が増大する場合がある。
【0132】
ポリエチレングリコール・アルデヒド試薬の化学構造は重要ではなく、したがって直線状のものに限定されるものではなく分岐状であってもよい。
反応温度
通常、本発明による方法の反応温度は、約2℃〜50℃、より好ましくは2℃〜20℃の範囲にある。好ましくは、化学的または物理的なプロセスによるタンパク質の分解および/または凝集のような非特異的な変性を最小限にするために、本発明の方法は低い温度で行なわれる。従って、本発明の方法について最も好ましい反応温度は、約2℃〜約8℃の範囲にあり、例えば約4℃である。
【0133】
還元剤
PEG化タンパク質コンジュゲートの収量に対する還元剤の影響は、欧州特許出願第0
154 316号明細書(100〜400倍モル濃度過剰のNaCNBH)および国際公開公報第96/11953号パンフレット(75倍モル濃度過剰のNaCNBH)のいずれにも報告されていない。欧州特許出願第0 154 316号明細書には、還元剤は水溶液中で安定であるべきで、還元的アルキル化の初期過程で形成されたシッフ塩基だけを還元することができると好ましいことが述べられている。
【0134】
好ましい還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムおよびシアノ水素化ホウ素ナトリウムから成る群から選択可能であり、使用されるタンパク質の濃度に対して過剰に加えるべきである。シアノ水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤のモル濃度過剰量が低い、すなわち117倍モル濃度過剰より少ないと、ジPEG化G−CSFの形成は減速するが、最大180倍モル濃度過剰のモル濃度過剰量など高濃度の還元剤と比較してジPEG化タンパク質コンジュゲートの最大収量は同じになることが見出された。120倍モル濃度過剰の範囲より高いモル濃度過剰量のシアノ水素化ホウ素ナトリウムでは、ジPEG化タンパク質コンジュゲートの速度論的形成は、使用される還元剤の濃度に依存しない。
【0135】
攪拌方法および攪拌速度
PEG化反応混合物のインキュベーションに旋回式撹拌を加えても加えなくても、最終的なジPEG化タンパク質コンジュゲートの収量には影響しないことがわかった。更に、旋回式撹拌の速度が速いほど、同じインキュベーション時間での最終的なジPEG化タンパク質コンジュゲート収量が低くなることがわかった。
【0136】
共溶媒
イオン性液体を、部位選択的なPEG化のための共溶媒として試験したところ、1−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロホウ酸などの共溶媒の濃度を増大させると最終的なジPEG化タンパク質コンジュゲートの収量が減少することが明らかとなった。
【0137】
[精製]
既に上述したように、本発明によるPEG化反応を好ましくは酸性化によって停止させた後、一般には反応混合物を精製ステップに、好ましくは反応混合物を陽イオン交換クロマトグラフィーに供する。
【0138】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、すべての一般的かつ/または市販の陽イオン交換マトリクスを用いて実施することが可能である。本発明の目的で使用されうる典型的なイオン交換樹脂は、SP−5PW(ドイツ連邦共和国所在のトーソーハース・バイオサイエンス(Tosohaas Biosciences))、Source S(ドイツ連邦共和国所在のアマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences))、Fractogel(R)SO 650(ドイツ連邦共和国所在のメルク(Merck ))、SP Sepharose HP(ドイツ連邦共和国所在のアマシャム・バイオサイエンス)およびSP FF Sepharose(ドイツ連邦共和国所在のアマシャム・バイオサイエンス)を含む。
【0139】
通常、精製ステップは2℃〜周囲温度で、好ましくは室温で行なわれる。
希釈、平衡化、洗浄および溶出については、リン酸塩、酢酸ナトリウム、TRIS/HCl、HEPESまたはその他の適切なバッファーを含む、イオン交換クロマトグラフィーに一般的に使用される任意のバッファーを使用することができる。典型的には、バッファーは分析されるタンパク質に応じて選択され、かつpH3.5〜8.5、好ましくはpH4〜6に調節される。
【0140】
好ましくは、希釈、洗浄および平衡化バッファーはpH4.2で15mMの酢酸ナトリウムを含む。溶出バッファーは平衡化バッファーと同じ組成であってよく、かつ約1MのNaClを含みうる。
【0141】
クロマトグラフィー・ステップの好ましい実施形態では、反応混合物を例えば平衡化バッファーで3倍に希釈して、導電率をおよそ6mS/cmに低下させてもよい。これにより、本発明のタンパク質コンジュゲートをイオン交換カラムに完全に結合させる条件が提供される。
【0142】
C−IEXによる精製は典型的には下記ステップ:
1カラム体積のバッファーAによりカラムを平衡化するステップ;
サンプルを装荷するステップ;
0.2〜1カラム体積でカラムを洗浄するステップ;および/または
およそ17カラム体積のバッファー中0〜35%の1M NaCl溶液により直線勾配溶出を行うステップ
を含む。
【0143】
1例として、すべてのクロマトグラフィー・ステップに約68cm/hの線形流速を使用可能であるが、例外としてサンプルの装荷は17cm/hで行うとよい。
本発明の方法の精製ステップの好ましい実施形態では、2つのプールが溶出液から形成される。第1のプールは、生成物プールIとも呼ばれ、タンパク質の1つまたは2つのジPEG化アイソフォームのフラクション(第1および/または第2のジPEG化フラクションあるいはG−CSFのようなジPEG化タンパク質の分子種とも呼ばれる)を含んでいる。第2のプールは、残余物プールとも呼ばれ、その他のタンパク質フラクションを含んでおり、非PEG化、モノPEG化、第1および/または第2のジPEG化アイソフォームとは同一でないジPEG化アイソフォーム、およびさらに高度にPEG化されたタンパク質フラクションを含みうる。残余物プールはまた、生成物プールのジPEG化アイソフォームを微量含む場合もあるが、本質的に生成物プールのジPEG化アイソフォームを含まない。この残余物プールは、別のPEG化反応に再利用されることが好ましく、該反応は本発明の方法について上述したようにして実施される。
【0144】
この再利用または再循環化または再PEG化ステップでは、残余物プールは通常、修飾タンパク質を濃縮し、かつ本発明の方法によってPEG化反応を行うのに適したバッファ
ーへバッファー交換を行うために、限外濾過/透析濾過に供される。次いで、残余物プールは、本発明の方法について上述したようにしてPEG化反応に供され、任意選択でその後上述のような陽イオン交換精製に供される。次に、この再PEG化ステップから得られ、任意選択で精製された生成物プールIIを、生成物プールIと混合すればよい(図1を参照)。
【0145】
以下の実施例は本明細書に記載の発明を例証するために提供されるものであり、本発明をどのようにも限定することを意図したものではない。
実施例
以下の実施例は、(i)還元的アルキル化によるG−CSFのジPEG化および2つの異なるジPEG化G−CSFコンジュゲートの精製、ならびに(ii)本発明によるIFNα2a、エリスロポエチンおよびヒト成長ホルモンのジPEG化、のための好ましい実施形態を例証するものである。
【0146】
A)12kDa mPEGアセタールを用いたG−CSFのPEG化
1.ポリエチレングリコール試薬の準備
a)mPEGアルデヒドへのmPEGアセタールの活性化
150mgの12kDa mPEGアセタールを80mMのリン酸に溶解し、50℃で3時間加水分解した。氷上でおよそ2〜8℃まで冷却した後、該溶液に重炭酸ナトリウム溶液(5%)を滴下してpH7に中和した。該混合物をNaClで飽和させ、2mlの塩化メチレンで3回抽出した。回収した3つの有機相を合わせ、硫酸ナトリウムを加えて脱水し、容量を1.5mlに減少させた(窒素流)。
【0147】
30mlの氷冷ジエチルエーテルを加えることによりmPEGアセトアルデヒドを沈殿させた。沈殿物を減圧濾過(G4漏斗)によって単離し、減圧下にて室温で乾燥させ、気密のチューブ中へ移した。該チューブを密閉する前に窒素ガスでフラッシングし、−20℃で保存した。
【0148】
b)活性化されたmPEGアルデヒドの安定性
先行技術によれば、mPEGアセタールは一般に、各PEG化反応について新たに活性化されるか、あるいは最大でも一晩保存されるかであった。
【0149】
窒素下−20℃で保存された活性化mPEGアルデヒドの安定性を調査するために、保存されたmPEGアルデヒドをPEG化反応に供した(以下を参照)。ジ−PEG化G−CSFコンジュゲートの収量および生成物形成の反応速度を読み取り値として用いた。
【0150】
c)ポリエチレングリコール試薬の分析論
アセタールのアルデヒドへの変換の質を評価するために、以下の3つのパラメータを求めた:
検出される活性:
アセタールからアルデヒドへの変換の程度を測定するための、mPEGアセタールおよび活性化mPEGアルデヒドのH−NMRスペクトル測定(400MHz分光器、溶剤としてCDCl)。
【0151】
質量収率の活性:
使用したmPEGアセタール量に対する回収された抽出物(educt )の量を測定するための、乾燥させた活性化mPEGアルデヒドの風袋測定(tarring )。
【0152】
PEG化の反応速度および生成分子種:
反応混合物中の分子種の分布を測定するための分析型C−IEX HPLC(「PEG化
反応」を参照)。
【0153】
d)結果
mPEGアセタールをmPEGアルデヒドへ繰り返し活性化したときの同一性は、以下によって立証可能であると考えられる:
使用されたmPEGアセタール量に対して活性化後のmPEGアルデヒドの収量は平均85±7%。
両サンプルについて繰り返しH−NMRスペクトルを測定したところ、PEG骨格の吸収は3.51ppmであった。mPEGアセタールは4.6ppmにアセタール・トリプレット(−CH−CH−(O−C)、1.1ppmにエチル・トリプレット(−CH−CH)の吸収を示す。活性化後、アセタール・トリプレットのシグナルはもはや検出できなかったが、アルデヒド・シングレットが9.7ppmに出現した。
同等のジPEG化G−CSFコンジュゲート最大収量ならびに同等の生成物形成速度(以下を参照)。
活性化されたmPEGアルデヒドは、遮光し、密封チューブ中で、N雰囲気下−20℃で保存された場合、少なくとも125日間安定のようである(図2を参照)。
【0154】
2.限外濾過濃縮
PEG化反応に先立って、希釈されたG−CSFサンプルを限外濾過によって濃縮した。最終サンプル濃度に応じて、カットオフ分子量10kDaのYM10メンブレンを装備したアミコンセル(50ml)またはcentricon(R)チューブ(2ml)を使用して、G−CSFをおよそ4−8mg/mlまで濃縮した。
【0155】
限外濾過後の回収率は使用したタンパク質の量に関して平均で89±5%であった。
UV280nmにおける吸収
G−CSFについては、280nmで0.86±0.015の吸光度は1mg/mlのタンパク質に相当する。PEG化G−CSFコンジュゲートについてタンパク質濃度の測定値を計算するために、同じモル吸光係数を適用した。
【0156】
3.PEG化反応
a)反応
25mgの固体のmPEGアルデヒド(分子量12kDa)を、100mMリン酸バッファー(pH7.5)中3.2mg/mlのG−CSFに加え、G−CSFとmPEGアルデヒドとのモル比を1:25とした。20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを加え、反応混合物を2〜8℃でさらに数時間インキュベートした。8NのHClで酸性化して反応を停止させた。
【0157】
b)分析論
分析用陽イオン交換高性能液体クロマトグラフィー(C−IEX HPLC)
PEG G−CSF反応混合物中の分子種の分布(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−)を、C−IEX HPLCによって測定した。したがって、停止させた反応混合物を15mMの酢酸バッファー(pH4.2)で3倍に希釈し、ダイオネックス(Dionex)システムまたは島津製作所HPLCシステムに装備されたトーソーハース・バイオサイエンス(Tosohaas Bioscience )製のSP−5PW充填カラム(75×7.5mm、粒径10μm、カラム体積3.3ml)に通した。
【0158】
カラムは15mM NaAc、pH4.2で平衡化させた。流量は0.4ml/分とし、一般に200μgのタンパク質を注入した。カラムは室温で使用したが、サンプルはオートインジェクタ中で5℃に維持した。
【0159】
PEG化状態の異なる分子種の同定については、分析用C−IEXの溶出ピークを質量分析した。
質量分析
C−IEX HPLCピークの質量分析(MALDI−TOF、マトリックス支援レーザ脱離イオン化−飛行時間型)によって、各PEG化G−CSFコンジュゲートを溶出ピークの保持時間に割り当てることができた。
【0160】
c)結果
MALDI−TOFによって決定された単一PEG化G−CSF種の質量は、アミノ酸配列およびPEG部分に基づいた事前の推定質量と一致した(表1を参照)。
【0161】
【表1】

質量分析の情報から、保持時間を対応するPEG化G−CSF分子種に割り当てることができた。分析C−IEXにより、保持時間に応じて1つのモノPEG化G−CSF、3つのジPEG化G−CSFアイソフォーム、4つのトリPEG化G−CSFアイソフォーム、および1つのテトラPEG化G−CSFを分離することができた。
【0162】
一般に、組換えヒトG−CSFとmPEGアルデヒドをモル比1:25として用いてPEG化G−CSFコンジュゲートに変換させると、18h〜42hインキュベーションの反応時間で主としてジPEG化G−CSFが生成され、約30hのインキュベーション時間で最大収量に達する(図3aを参照)。
【0163】
d)プロセス・パラメータの最適化
i)いくつかのプロセス・パラメータの影響
ジPEG化G−CSFの生産が最大となるインキュベーション時間(約30h)を特定したところで、他のパラメータ(i)リン酸バッファーの濃度、(ii)リン酸バッファーのpH、(iii)還元剤シアノボロハイドライドの濃度、(iv)生成物の収量に対するタンパク質濃度およびタンパク質とPEGとのモル比、ならびに(v)撹拌速度、の影響を調べた。
【0164】
同様の反応速度プロファイルおよび最大生成物収量が達成されたのは:
バッファー濃度が50mM〜150mMリン酸(pH7.5)のとき、
100mMリン酸バッファーでpH範囲がpH6.9〜7.8のとき、
還元剤の濃度が≧20mMのとき;対照的に、10mMのような低濃度ではジPEG化G
−CSFの形成が減速する(42hで最大生成物収量)、
最大で5.7mg/mlのタンパク質濃度および対応するモル比のとき(タンパク質濃度のさらなる増加は、タンパク質の凝集の危険性がありうるので回避した。PEG濃度を増加させても最大生成物収量は向上しない。)
≦700rpmの速度で旋回撹拌するとき
であった。
【0165】
ii)モル比の影響
様々な量の固体のmPEGアルデヒド(15〜38mg)を、様々なタンパク質濃度(2.4mg/ml、3.2mg/ml、5.7mg/ml)に対して加え、モル比を約1:10、1:15、1:20、1:25、1:30および1:50(タンパク質:PEG)とした。反応は実施例3aに記述されるように低温(5℃)で実施し、サンプルは実施例3bに従って分析した。
【0166】
所与のタンパク質濃度、例えば2.4、3.2または5.7mg/mlでは、モル比で表現されるPEG量を増加させると、主としてジPEG化を達成するための総インキュベーション時間が縮小される(図3bを参照)。すべてのタンパク質濃度について、PEG量を2倍にすると、ジPEG化およびジ’PEG化G−CSFアイソフォームを含む最大のジPEG化G−CSFコンジュゲートを生産するためのインキュベーション時間が、少なくとも2分の1に縮小されることが示されている。
【0167】
タンパク質とポリマーとのモル比が1:30までのとき、mPEGアルデヒド分子とタンパク質内のアミノ基の数との化学量論比が6:1である場合、18時間インキュベーションの後に主としてジPEG化G−CSFコンジュゲートが生産されるが、G−CSF:PEGのモル比が1:50で化学量論比がより高い10:1では、2.4mg/mlのG−CSFでモル比G−CSF:PEGが1:50の条件においてみられるように、反応および最大のジPEG化G−CSFコンジュゲート生成物形成は18h未満のインキュベーションで生じる。
【0168】
しかしながら、ジPEG化G−CSFコンジュゲートの最大合成収量(40%、図3cを参照)は、PEG分子とタンパク質内のアミノ基の数との化学量論比を変えても影響を受けない。
【0169】
iii)温度の影響
タンパク質:PEGの化学量論比に加えて、温度は、ジPEG化G−CSF生成物生産のためのインキュベーション時間にさらなる影響を及ぼすものと思われる。ジPEG化生成物収量(ジPEG化G−CSFアイソフォーム混合物)および生成物形成の反応速度に対する温度の影響を試験するために、2つの反応条件(5.7mg/mlのG−CSF、PEGとのモル比は1:10または1:20のいずれか)について2つの異なる温度(5℃および22℃)で試験を実施し、本発明に従って低温(5℃)および高温(22℃)の影響を比較分析した。
【0170】
温度をおよそ+20℃増加させるとPEG化反応は2倍に加速し、チャモウ(Chamow)ら(1994)の結果を確認している。
PEGの総量を増加させると、ジPEG化を主とするためのインキュベーション時間が縮小される(図3dを参照)。PEG量を2倍(18mgの代わりに36mg)にすることにより、低温(5℃)でも高温(22℃)でも生成物の形成が最大となるインキュベーション時間は2分の1(42h→〜21h)に縮小される。
【0171】
驚いたことに、本発明者らは、反応物中の所与のタンパク質濃度に対するPEG量を少
なくとも2倍にし、その結果選択された温度とは関係なくPEG結合に利用可能なアミノ基(アミノおよびε)に対してPEG分子を少なくとも2−10倍過剰とすることにより、優先的にジPEG化タンパク質コンジュゲートを生産するためのPEG化反応をさらに加速させることが可能であることを見出した。
【0172】
一般に、G−CSFの選択的ジ−PEG化を促進するためには、(i)反応のpHは、(標的タンパク質のε−アミノ基の反応性の差異を利用するために)中性付近とすべきであり、(ii)PEGは、標的タンパク質中の利用可能なα−およびε−アミノ基に対して少なくとも2−10倍過剰に加えるべきであり、これはG−CSFの場合にはG−CSF:PEGのモル比がほぼ1:10〜1:50であることに相当する。
【0173】
e)反応の再現性
上記に列挙した条件下で実施された5回の単一PEG化反応について、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用して分析した。これにより、本発明によるG−CSF PEG化反応の再現性が実証された。
【0174】
30hインキュベーション時点のPEG G−CSF反応混合物中の平均的なアイソフォーム組成を決定した(表2を参照)。
【0175】
【表2】

4.再PEG化およびその再現性
工程歩留まりを改善するために、分取用C−IEXクロマトグラフィー(実施例5を参照)からの残余物プールの再PEG化を、追加処理ステップとして実施した。
【0176】
この再PEG化ステップのために、微量の本発明の生成物を含むすべての分子種を含んだ、分取用C−IEXクロマトグラフィー(図4を参照)の残余物プールを回収し、限外濾過/透析濾過によって脱塩かつ濃縮し、PEG修飾G−CSF(3.2mg/ml)を用いた以外は、再び前記PEG化反応(実施例3を参照)に供した。
【0177】
様々なインキュベーション時間での分子種の分布を分析したところ、PEG化時間を18hまで短縮するとジPEG化G−CSFコンジュゲートの収量は平均で4%減少するが、再循環化のための残余物プール内のモノPEG化G−CSFの割合が平均で15%増加することが観察された。これは、再PEG化ステップにおける収量を増加させ、全体としては使用されるタンパク質のジPEG化G−CSF生成物収量の著しい増加に結びつくものと予想された。
【0178】
各18時間で2回のPEG化サイクル後の反応混合物中の平均ジPEG化G−CSFコンジュゲート収量を決定した(表3を参照)。
【0179】
【表3】

5.分取用C−IEXによる精製
a)クロマトグラフィー
最初のPEG化反応後、または再PEG化の後での他の分子種からのジPEG化G−CSFコンジュゲートの分離は、下記ステップ:
SP−5PWゲル材料(ゲル材料10.6ml、粒径20μm、ドイツ連邦共和国所在のトーソーハース・バイオサイエンス・ゲーエムベーハー(Tosohaas Bioscience GmbH))を充填したECO 15/200カラム(ドイツ連邦共和国所在のクロンラブ・ゲーエムベーハー(Kronlab GmbH));
1カラム体積の15mM NaAcバッファー、pH4.2(バッファーA)でカラムを平衡化;
タンパク質を装荷(6.1mgの反応混合物);
0.2CVのバッファーAでカラムを洗浄;
およそ17カラム体積中0〜35%の1M NaClバッファーA溶液による直線勾配溶出;および/または
214nmおよび280nmでの溶出液のモニタリングとフラクション3mlの回収
を含む陽イオン交換クロマトグラフィーによって行われた。
【0180】
直線流量は、タンパク質の装荷を17cm/hで実施したことを除きすべてのクロマトグラフィー・ステップについておよそ68cm/hとした。
b)分析論
回収した各フラクション中のPEG化G−CSFコンジュゲートのタンパク質濃度を決定するための、UV280nmでの吸収(上記参照)
各溶出ピーク内の対応するPEG化G−CSF分子種およびアイソフォームを同定するための、分析用陽イオン交換高性能液体クロマトグラフィー(C−IEX HPLC)(上記参照)。
【0181】
c)結果
直線勾配溶出により6つのピークが得られた。該ピークを図4に示し、また表4に概要を示す。
【0182】
【表4】

ジPEG化G−CSFについては、10種の可能なアイソフォームのうちの3つを同定することができた。2つのアイソフォーム、ジおよびジ’PEG化G−CSFは、主要な単一ピークとして溶出された。第三の微量のアイソフォームはトリPEG化G−CSFアイソフォームとともに溶出する。
【0183】
ジPEG化G−CSF調製物の生成物を正確に定義するために、アイソフォームの数を低く維持して、2つのアイソフォームすなわちジ−体(ピーク2)およびジ’−体(ピーク3)からなる本発明のジPEG化G−CSF生成物を定義した。これらのアイソフォームのPEG結合部位は、MALDI−MS/ナノLC ESI−MS/MSおよびエドマン法の配列決定を組み合わせて使用することにより、N末端基とリジン17またはN末端基とリジン35にそれぞれ位置することが特定された(「生成物の特徴解析」を参照)。
【0184】
定義されたジPEG化G−CSF生成物は、少なくとも90%の、ジおよびジ’アイソフォームをおよそ0.76(ジ)対1(ジ’)の比で含むジPEG化G−CSF種を含有しており、かつ極めて純度が高いものであった(表5を参照)。
【0185】
【表5】

6.生成物の特徴解析
単離されたジPEG化G−CSF生成物は、2つの主要な(ジおよびジ’)ジPEG化G−CSFアイソフォームで構成されており、該アイソフォームは活性を有する主要なジPEG化生成物に相当する。
【0186】
a)組成および純度
最終ジPEG化G−CSF生成物の組成および純度について、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。
【0187】
最終ジPEG化G−CSF生成物の組成をコントロールするC−IEX HPLC
カラム:トーソー SP 5PW 10μm 75×7.5mm(3.31ml)
流量:0.4ml/分
バッファーA:15mM NaAc、pH4.2
バッファーB:15mM NaAc、pH4.2;1.000mM NaCl
サンプル:50μg
勾配:直線、17カラム体積中0〜45%、0.5CV中45〜100%
UVモニタ:214nm
結果:
ジPEG化G−CSF生成物の異性体組成をC−IEX HPLCによって分析したところ(図5を参照)、該組成は定義された生成物の規格(表6を参照)内にあった。
【0188】
【表6】

ジPEG化G−CSFの非特異的な凝集をコントロールするSEC−HPLC解析
カラム:TSK G 3000 SWXL 300×7.8mm、TOSOH BIOSEP
バッファーA:100mM Pi;pH6.9
サンプル:20μg
流量:0.5ml/分
勾配:アイソクラチック
実行時間:60分
結果:
SEC分析(図6を参照)によれば、最終生成物は、>90%のジPEG化G−CSFで構成され、該ジPEG化G−CSFはジおよびジ’PEG化G−CSFアイソフォームを一定の混合比で含んでいる。保持時間11分と13分との間のピークはさらに分析はしなかったが、より高度の分子凝集体である可能性が考えられた(〜1.5%、表7を参照)。
【0189】
【表7】

b)構造の一致性
構造安定性を示すためのジPEG化G−CSF生成物の円偏光二色性(CD)測定
タンパク質修飾後の二次構造の変化を分析するために、ジPEG化G−CSF最終生成物(サンプルB)および天然の非修飾型G−CSF(サンプルA)を、円偏光二色性分光法によって分析した。CDスペクトルは日本国所在のJascoのJ−720分光偏光計を使用して、波長180〜260nmで記録した。
【0190】
結果:
これらのスペクトル(ジPEG化G−CSFおよび非修飾G−CSF)が極めて類似していることから、PEG修飾によりG−CSFの二次構造は変化しないことが示される(図7を参照)。
【0191】
c)PEG結合部位の同定
PEG結合部位を同定するために、ジPEG化G−CSFアイソフォーム(ジ−およびジ’PEG化G−CSF)をペプチドマッピングによって分析した。参照用のrpHPLCクロマトグラムを作成するために、PEG化されていないG−CSFを同じように処理した。
【0192】
その処理手順は、次のステップ、すなわち(i)PEG化G−CSFアイソフォームの変性および還元的アルキル化による遊離SH基のキャッピング、(ii)変性PEG化G−CSFアイソフォームのキモトリプシン消化、(iii)rpHPLCによるペプチド分離、ならびに(iv)エレクトロスプレー・タンデム質量分析およびMALDI−MS/N末端配列決定の組み合わせによる配列分析、を含むものとした。
【0193】
(i)SH基のカルボキシメチル化
ジPEG化G−CSFコンジュゲート・アイソフォームのおよそ1mgの分割試料をspeed vac(R)によって乾燥し、6M塩酸グアニジンを含む700μlの0.3Mトリス−HCLバッファー、pH8.3中1mgの濃度に再構成した。試料にヨード酢酸を加えてカルボキシメチル化し、37℃で1時間インキュベートした。DTTを加えて反応を停止させ、次いで試料を注射用水に対して透析して脱塩し、最後に、speed vacで乾燥させた。
【0194】
(ii)キモトリプシン消化
ジPEG化G−CSFアイソフォームの乾燥試料を、消化用に、1mlの0.1M炭酸水素アンモニウムバッファー、pH7.8中1mgの濃度に再構成した。このアイソフォームを、キモトリプシンにより(酵素と基質との重量比は1:100)37℃で3時間消化した。
【0195】
(iii)rpHPLCペプチドマッピング
タンパク質消化物をVydac(R)C4カラム(4.6×250mm、粒径5m、孔径300Å)に注入し、0.1%TFA中のアセトニトリルの直線濃度勾配(アセトニトリルを1分間に1%上昇させながら90分間)を使用したHPLCにより、ペプチドをマッピングした。得られたペプチドを、ナノLC ESI MS/MSおよびN末端配列決定の組合せによってペプチド配列決定するために回収した。
【0196】
(iv)ナノLC−ESI/MS/MS:
単一のアイソフォームの完全消化物ならびに単離されたPEG化ペプチドを、ESI MS/MSと組み合わせたナノLCによって分析し、PEG化ペプチドのアミノ酸配列およびPEG結合部位を決定した。
【0197】
(v)MALDI−MS/N末端配列決定
ジPEG化G−CSFアイソフォームおよび非PEG化G−CSFの分解物のrpHPLCクロマトグラムの比較から、2つの新しいピークの出現が明らかとなった。第1に、この新しいピークの質量をMALDI−MSによって測定し、第2に、該ピークの同定のためにN末端配列を決定した。
【0198】
結果:
想定されるジPEG化G−CSFアイソフォームのキモトリプシン消化シミュレーションによれば、3種の潜在的PEG化ペプチドが予想可能であった。実験では、2つのジPEG化体アイソフォーム(ジおよびジ’PEG化G−CSF)各々のキモトリプシン消化物は、2つのPEG化ペプチドに帰着した。1つのPEG化ペプチドについては、ナノLC ESI−MS/MSによるペプチドマス配列決定から、N末端メチオニンのα−アミノ基にPEGが結合しているアミノ酸1〜13位の配列:M−T−P−L−G−P−A−S−S−L−P−Q−S−F(MW 1470 m/z)が同定された。
【0199】
アイソフォーム当たりのもう1つのPEG結合部位の同定は、この技法では失敗に終わった。したがって、選択されたrpHPLCのフラクションを質量分析し、続いてN末端アミノ酸配列分析に供した。
【0200】
ジPEG化G−CSFアイソフォームについては、N末端配列分析(22サイクル)により、リジン17のε−アミノ基にPEGが結合しているアミノ酸14〜40位の配列:LLCLEQVRKIQGDGAALQEKLCATYが決定された。
【0201】
ジ’PEG化G−CSFアイソフォームについては、N末端配列分析(22サイクル)により、リジン35のε−アミノ基にPEGが結合しているアミノ酸14〜40位の配列:LLKCLEQVRKIQGDGAALQELCATYが決定された。
【0202】
従って、ジPEG化G−CSFアイソフォームはN末端基およびリジン17においてジPEG化され、ジ’PEG化G−CSFアイソフォームはN末端基およびリジン35においてジPEG化されている。
【0203】
d)生物活性
i)ジPEG化およびジ’PEG化G−CSFコンジュゲートの混合物からなるジPE
G化G−CSF生成物の生物活性
本発明によるジPEG化およびジ’PEG化G−CSFコンジュゲート・アイソフォームの混合物からなるジPEG化G−CSF生成物をインビボで試験し、非修飾型G−CSF(Neupogen(R))に対し活性が向上していることを示し、かつその生物活性を市販のモノPEG化G−CSF(Neulasta(R))と比較した。
【0204】
このインビボ試験は、Neupogen(R)およびNeulasta(R)とジPEG化G−CSF生成物との、オープンかつ無作為、並行群間の、単回用量での生物学的同等性(biocomparability)試験であった。同試験はオスのラットに0.1mg/kgの皮下注射を行うことにより実行された。1つの時点につき1群当たり6匹の動物から採血した。血清試料は、該試料を採取したのと同じ日に完全な血球数測定を実施した。平均白血球数および好中球数が計算された。
【0205】
結果:
ジPEG化およびジ’PEG化G−CSFコンジュゲート・アイソフォームの混合物を含むジPEG化G−CSF生成物は、非修飾型G−CSF(Neupogen(R))と比較して、WBCおよび好中球の数が多く、WBCおよび好中球の応答性がより長く保持された(図8および図9を参照)。
【0206】
Neulasta(R)との比較では、本発明によるジPEG化G−CSF生成物は、少なくとも生物学的に類似しており(biosimilar)、最大のWBCおよび好中球数がわずかに高いことから恐らくは潜在的により良いものであった(図8および図9を参照)。
【0207】
ii)2つのアイソフォーム、ジPEG化G−CSFおよびジ’PEG化G−CSFの生物活性
ジPEG化G−CSF生成混合物の全体的な生物活性に対する個々の単一のアイソフォーム(ジPEG化G−CSFおよびジ’PEG化G−CSF)の寄与を示すために、アイソフォームを陽イオン交換クロマトグラフィーによって均質に精製した。各アイソフォーム生成物(ジPEG化G−CSFおよびジ’PEG化G−CSF)の純度および組成は、サイズ排除クロマトグラフィーおよび陽イオン交換HPLCによって分析した。
【0208】
結果:
確定された単一アイソフォーム生成物(ジPEG化G−CSFおよびジ’PEG化G−CSF)は、それぞれのジPEG化G−CSFコンジュゲート・アイソフォームを少なくとも95%含んでいた(表8を参照)。
【0209】
【表8】

単一アイソフォーム生成物、ジPEG化およびジ’PEG化G−CSFコンジュゲート生成物、および実施例5に記述されるような両方のアイソフォームを含むジPEG化G−
CSFコンジュゲート生成混合物をインビボで試験して、相互に生物活性を比較した。
【0210】
このインビボ試験は、両アイソフォームの混合物であって本発明により定義された生成物としてのジPEG化G−CSFコンジュゲート混合物と、単一アイソフォーム生成物であるジPEG化およびジ’PEG化G−CSFコンジュゲートとについての、オープンかつ無作為、並行群間の、単回用量での生物学的同等性試験であった。このインビボ試験は、前記生成物各々をオスのラットに0.1mg/kg皮下注射することにより実施した。1つの時点につき1群当たり12匹の動物から採血した。血清試料は、該試料を採取したのと同じ日に完全な血球数測定を実施した。平均白血球数および好中球数が計算された。
【0211】
結果:
両アイソフォームすなわちジPEG化G−CSFおよびジ’PEG化G−CSFは、ジPEG化G−CSF生成混合物と比較して同等の高いWBC数および好中球数を生じ、かつ同様に保持されたWBCおよび好中球の応答性を示した(図10および図11を参照)。両アイソフォームは同等の生物活性を有し、従って、ジPEG化G−CSF生成混合物の全体的な生物活性に均等に寄与している。この観測結果は、アリトミ(Aritomi )ら(Nature、1999年、第401巻、p.713−717)およびヤング(Young )ら(Protein Science 、1997年、第6巻、p.1228−1236)によって示唆されるような、G−CSFのリジン35のPEG修飾と比較してG−CSFのリジン17のPEG修飾はそのアイソフォームの生物活性を低減するだろうという仮説とは大きく異なるものである。
【0212】
B)G−CSFおよび20kD mPEGアセタール
1.PEG化反応と分析論
PEG化反応のために、反応原料である20kDa mPEGアセタールおよびG−CSFを実施例A1aおよびA2に従って調製した。32mgの固体mPEGアルデヒド(分子量20kDa)を、100mMリン酸バッファー(pH7.5)中2.4mg/mlのG−CSFまたは3.2mg/mlのG−CSFに加え、G−CSFのmPEGアルデヒドに対するモル比がそれぞれ1:25(2.4mg/ml)および1:19(3.2mg/ml)となるようにした。反応を実施し、試料を実施例3aおよび3bに記述されるようにC−IEX HPLCによって分析した。
【0213】
結果:
mPEG(12kDa)G−CSFコンジュゲートの分析C−IEX溶出プロファイルから推定して、対応するmPEG(20kDa)G−CSFコンジュゲートのピークを同定して割り当てることができた(図12を参照)。より高分子量のPEGとG−CSFとのコンジュゲートについては、分析用C−IEXにより、1つのモノPEG化G−CSFコンジュゲート(39kDaの総分子量を有する)、2つのジPEG化G−CSFコンジュゲート(59kDaの総分子量を有する)および3つのトリPEG化G−CSFコンジュゲート(79kDaの総分子量を有する)の分離が可能であった。
【0214】
一般に、組換えヒトG−CSFと20kDaのmPEGアルデヒドを1:19またはそれ以上のモル比で用いてPEG化G−CSFコンジュゲートへと変換すると、低温で20時間のインキュベーション後に総分子量59kDaのジPEG化G−CSFコンジュゲートが主として生産された(図13を参照)。
【0215】
2.ジ’PEG(20kDa)G−CSFコンジュゲート・アイソフォームの生物活性
ジ’PEG(20kDa)G−CSFコンジュゲート・アイソフォームの生物活性をインビボで試験するために、この単一アイソフォームを分取用陽イオン交換クロマトグラフィーによって高度に精製した。確定された生成物は、実施例A6の段落d)ii)で述べ
たように、少なくとも95%のジ’PEG化G−CSFコンジュゲート・アイソフォームを含んでいた。
【0216】
このインビボ試験は、Neupogen(R)およびNeulasta(R)と上記ジ’PEG化G−CSFコンジュゲート・単一アイソフォームとの、オープンかつ無作為、並行群間の、単回用量での生物学的同等性試験であった。同試験はオスのラットに0.1mg/kgの皮下注射を行うことにより実行された。1つの時点につき1群当たり6匹の動物から採血した。血清試料は、該試料を採取したのと同じ日に完全な血球数測定を実施した。平均白血球数および好中球数が計算された。
【0217】
結果:
本発明によるジ’PEG(20kDa)G−CSFコンジュゲート・単一アイソフォームでは、非修飾型G−CSF(Neupogen(R))と比較して、i)WBC数および好中球数が高く、ii)WBCおよび好中球の応答性が長く保持されていた(図14および図15を参照)。
【0218】
Neulasta(R)との比較では、本発明のジ’PEG化G−CSFコンジュゲート・アイソフォームは、最大WBC数および好中球数が高く、かつWBCおよび好中球の応答性が長く保持されることから、生物学的に改善(bioimproved )されている(図14および図15を参照)。
【0219】
3.薬物動態学的調査
(i)実施例A6による、ジPEG(12kDa)G−CSFおよびジ’PEG(12kDa)G−CSFコンジュゲート・アイソフォームを含んでなるジPEG化G−CSF生成混合物(総分子量43kDa)、ならびに(ii)単一アイソフォームである実施例Bのジ’PEG(20kDa)G−CSFコンジュゲート(総分子量59kDa)、のクリアランス機構を、市販のモノPEG化G−CSF(Neulasta(R))と比較してインビボで試験した。
【0220】
このインビボ試験は、Neulasta(R)と、ジPEG化G−CSF生成混合物またはジ’PEG(20kDa)G−CSFコンジュゲート・単一アイソフォームのいずれかとについて、シャム手術群(対照群)および腎摘出群のラットにおいて行うオープンかつ無作為、並行群間のクリアランス試験であった。この試験は、オスのラットに0.005mg/kgのコンジュゲートを静脈内注射することより実行された。1つの時点につき1群当たり4匹の動物から採血した。血清試料について、G−CSFの血漿中残存濃度を測定し、血漿中半減期などの関連する薬物動態学的データを算出した。
【0221】
結果:
Neulasta(R)、ジPEG(12kDa)G−CSF生成混合物、および本発明によるジ’PEG(20kDa)G−CSFコンジュゲート・単一アイソフォームが、同様の薬物動態学的データを示し(表9を参照)かつ同様のクリアランス動態を示したことから、3つの生成物がいずれも好中球のレセプターを介したクリアランスによって主に排泄されることが示唆される。
【0222】
【表9】

C)IFNα2aのジPEG化
1.PEG化反応および分析論
12kDa mPEGアセタールを、実施例A1に記述したようにPEG化反応用に活性化した。PEG化反応に先立って、凍結乾燥されたIFNα2a試料を水に溶解し、酸性の酢酸バッファー溶液に対して透析し、最後に、カットオフ分子量が10kDaのYM10メンブレンを装備したcentricon(R)チューブ(2ml)を使用して、限外濾過により反応条件に応じておよそ4〜8mg/mlの濃度に濃縮した。
【0223】
IFNα2aについては、280nmで吸光度1.05のとき1mg/mlのタンパク質に相当する。PEG化されたIFNα2aコンジュゲートのタンパク質濃度測定値を計算するために、同じモル吸光係数を適用した。
【0224】
27mgの固体mPEGアルデヒド(分子量12kDa)を6mg/mlの100mMリン酸バッファー(pH7.5)中IFNα2a溶液に加え、IFNα2aとmPEGアルデヒドとのモル比を1:15とした。20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを加え、反応混合物を穏やかに撹拌しながら2〜8℃で数時間さらにインキュベートした。反応は8N HClで酸性化することによって停止させた。
【0225】
PEG IFNα2a反応混合物中の分子種の分布(モノ体、ジ体、トリ体)を、C−IEX HPLCによって決定した。従って、反応を停止させた反応混合物を、40mM酢酸バッファー溶液(pH4.2)で3倍に希釈し、ダイオネックス(Dionex)システムまたは島津製作所HPLCシステムに装備されたSP−5PW充填カラム(75×7.5mm、粒径10μm、カラム体積3.3ml、トーソーハース・バイオサイエンス(Tosohaas Bioscience )製)に通した。
【0226】
カラムを40mM NaAc、pH4.2で平衡化した。流量は0.4ml/分とし、典型的には200μgのタンパク質が注入された。カラムは室温で使用したが、試料はオートインジェクタ内で5℃に維持した。
【0227】
PEG化状態の異なる分子種の同定については、分析用C−IEX HPLCの溶出ピークを、質量分析(MALDI−TOF)にかけるか、あるいはSDS−PAGE分析を行うかのうち少なくともいずれかを実施し、溶出ピークの保持時間に対して各PEG化IFNα2aのピークが割り当てられるようにした。
【0228】
質量分析と、クマシー染色(タンパク質の標識)およびヨード染色(PEGの標識)を伴うSDS−PAGEとを組み合わせた分析結果は、アミノ酸配列およびPEG部分に基づいた事前の質量推定と一致した(表10を参照)。
【0229】
【表10】

質量分析/SDS−PAGEからの情報を用いて、保持時間を対応するPEG化IFNα2a分子種に割り当てることができた。分析用C−IEXから、モノPEG化、ジPEG化およびトリPEG化IFNα2aアイソフォームを保持時間に応じて分離することが可能となった。
【0230】
一般に、例えば6mg/mlの濃度の組換えヒトIFNα2aを、1:15のモル比でmPEGアルデヒドを用いてPEG化IFNα2aコンジュゲートへと変換すると、およそ20時間の反応時間以降に主としてジPEG化IFNα2aコンジュゲートが生じた(図16aを参照)。
【0231】
【表11】

別の実験セットでは、様々な量の固体mPEGアルデヒド(3〜30mg)を異なるタンパク質濃度(3mg/ml、6mg/ml)に対して加え、モル比を約1:1.5、1:3、1:5、1:10、1:15および1:30(タンパク質:PEG)とした。反応は上述のように低温(5℃)で実施し、試料を上述のようにして分析した。
【0232】
ジPEG化IFNαを主に形成させるためには、モル比IFN:PEGは少なくとも1:15でなければならなかったが、このモル比は、タンパク質内(合計12個のアミノ基中)の利用可能なアミノ基の数とPEG分子の数との化学量論比が少なくとも1:1.25であることに相当する。
【0233】
最大の生成物形成(〜40%の合成収量)は、20時間インキュベーション後に達成されたが、生成物形成の反応速度は、温度の上昇(+20℃)およびPEG量の増加(少なくとも2倍)により影響を受ける場合もあった(図16bを参照)。
【0234】
ジPEG化IFNα2aコンジュゲートの合成収量を増加させるために、本発明において実施例A3およびA4に記述されるように、いくつかのプロセス・パラメータ、例えば限定するものではないが反応pH、タンパク質濃度、タンパク質:PEGモル比をさらに最適化することや、場合によっては再利用ステップを導入してジPEG化タンパク質コンジュゲート収量をより高めることが推奨される。
【0235】
重要なパラメータであることが確認されたインキュベーション時間に加えて、使用されるタンパク質濃度に対するPEG濃度(タンパク質とPEGとのモル比で表現される)は、主としてジPEG化IFNα2a生成物を形成するための反応の別の重要な促進要因である。タンパク質とPEGとのモル比=1:15である場合、反応はジPEG化に向かう。
【0236】
2.分取C−IEXによる精製
最初のPEG化反応の後に、ジPEG化IFNα2aコンジュゲートを、実施例A5に記述されるような分取用陽イオン交換クロマトグラフィーにより、C−IEX HPLC分析に使用されたものと同一の直線的塩濃度勾配を適用して、他のIFNα2aアイソフォームから分離した。各溶出ピークを再度クロマトグラフィ(C−IEX HPLC)で分析して対応するPEG化IFNα2aアイソフォームを識別した(上記参照)。
【0237】
結果
直線勾配溶出の結果、3つの主要ピークが得られたが、これを図17に示し、表12に要約する。
【0238】
【表12】

ジPEG化IFNα2aについては、1つの主要なジPEG化IFNα2aピークを同定することができた。しかしながら、ピークの形から、66種の可能なアイソフォームのうちの2以上が同時に溶出していることが想定される。IFNについて考えられる生成物は、対応するピークが2つの肩を示すことから、少なくとも3つのアイソフォームで構成される可能性が高いと思われる。
【0239】
D)グリコシル化エリスロポエチン(EPO)のジPEG化
1.PEG化反応および分析論
12kDaのmPEGアセタールを、実施例A1に記述されるようにしてPEG化反応用に活性化した。PEG化反応に先立って、グリコシル化EPOの試料を酸性の酢酸バッファー溶液に対して透析し、最終的には分子量カットオフ値10kDaのYM10メンブレンを装備したcentricon(R)チューブ(2ml)を使用して、反応条件に応
じておよそ4〜8mg/mlまで限外濾過により濃縮した。
【0240】
EPOについては、280nmで吸光度が0.815のとき1mg/mlのタンパク質に相当する。PEG化されたEPOコンジュゲートのタンパク質濃度測定値を計算するために、同じモル吸光係数を適用した。
【0241】
6mgの固体のmPEGアルデヒド(分子量12kDa)を6mg/mlの100mMリン酸バッファー(pH7.5)中グリコシル化EPO溶液に加え、EPOとmPEGアルデヒドとのモル比を1:5とした。20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを加え、反応混合物を穏やかに撹拌しながら50℃で数時間さらにインキュベーションした。反応は8NのHClで酸性化することにより停止させた。
【0242】
PEGとEPOとの反応混合物中の分子種(モノ体、ジ体、トリ体)の分布は、C−IEX HPLCによって決定した。従って、反応を停止させた反応混合物を、40mM酢酸バッファー溶液(pH3.8)で3倍に希釈し、ダイオネックス(Dionex)システムまたは島津製作所HPLCシステムに装備されたSP−5PW充填カラム(75×7.5mm、粒径10μm、カラム体積3.3ml、トーソーハース・バイオサイエンス(Tosohaas Bioscience )製)に通した。
【0243】
カラムを40mM NaAc、pH3.8および20%イソプロパノール(v/v)で平衡化した。流量は1ml/分とし、典型的には200μgのタンパク質を注入した。カラム洗浄の後、直線勾配溶出は、およそ20カラム体積の、20%(v/v)イソプロパノールを含有する40mM NaAc、pH3.8中の1M NaClを用いて実施した(図18cを参照)。
【0244】
カラムは室温で使用したが、試料はオートインジェクタ内で5℃に維持した。
PEG化状態の異なる分子種の同定については、分析用C−IEX HPLCの溶出ピークを、質量分析(MALDI−TOF)にかけ、かつSDS−PAGE分析を実施し、溶出ピークの保持時間に対して各PEG化状態のEPOのピークが割り当てられるようにした。
【0245】
質量分析と、クマシー染色(タンパク質の標識)およびヨード染色(PEGの標識)を伴うSDS−PAGEとを組み合わせた分析結果は、アミノ酸配列およびPEG部分に基づいた事前の質量推定と一致した(表13を参照)。
【0246】
【表13】

質量分析/SDS−PAGEからの情報を用いて、保持時間を対応するPEG化EPO分子種に割り当てることができた。分析用C−IEXから、モノPEG化、ジPEG化およびトリPEG化EPOアイソフォームを保持時間に応じて分離することが可能となった。
【0247】
一般に、組換えヒトグリコシル化EPOを、mPEGアルデヒドを1:5のモル比(グリコシル化EPO:PEG)で用いて変換すると、およそ12〜18時間以降の反応時間で主としてジPEG化EPOコンジュゲートが生じた(図18aを参照)。
【0248】
別の実験セットでは、様々な量の固体mPEGアルデヒド(3〜13mg)を異なるタンパク質濃度(3mg/ml、6mg/ml)に対して加え、モル比を約1:5、1:15、1:25および1:30(タンパク質:PEG)とした。反応は上述のように低温(5℃)で実施し、試料を上述のようにして分析した。
【0249】
興味深いことには、タンパク質グリコシル化の影響により恐らくタンパク質表面上の遮蔽効果が引き起こされる結果、選択的なPEG結合がもたらされる。したがって、タンパク質内のアミノ酸の数とPEG分子の数との化学量論比が1:0.5で既にジPEG化が生じることは、驚くべきことではない(図18bを参照)。
【0250】
ジPEG化グリコシル化EPOコンジュゲートの合成収量を増加させるために、本発明において実施例A3およびA4に記述されるように、タンパク質濃度およびモル比(タンパク質:PEG)など(これらに限定はされない)のパラメータをさらに最適化することや、場合により再利用ステップを導入してより高いジPEG化タンパク質コンジュゲート合成収量を達成することが推奨される。
【0251】
重要なパラメータであると確認されたインキュベーション時間に加えて、使用されるタンパク質濃度に応じたPEG濃度(タンパク質とPEGとのモル比、またはより好ましくは標的タンパク質のPEG結合に利用可能なアミノ基に対するモル過剰量で表現される)は、反応が主としてジPEG化エリスロポエチン生成物を形成するように促進する別の重要な因子である。標的タンパク質とPEGとのモル比が約1:5、またはより好ましくはタンパク質内のアミノ基の数とPEG分子の数との化学量論比が少なくとも1:0.5であるとき、反応はジPEG化を指向する。
【0252】
E)ヒト成長ホルモン(hGH)のジPEG化
1.PEG化反応および分析論
12kDaのmPEGアセタールを実施例A1に記述したようにしてPEG化反応用に活性化した。PEG化反応に先立って、凍結乾燥されたヒト成長ホルモン試料を水に溶解し、bicineバッファーに対して透析し、最終的に分子量カットオフ値が10kDaのYM10メンブレンを装備したcentricon(R)チューブ(2ml)を使用して、反応条件に応じておよそ4〜8mg/mlの濃度まで限外濾過により濃縮した。
【0253】
hGHについては、280nmでの吸光度が0.72のとき1mg/mlのタンパク質に相当する。PEG化されたhGHコンジュゲートのタンパク質濃度測定値を計算するために、同じモル吸光係数を適用した。
【0254】
25mgの固体のmPEGアルデヒド(分子量12kDa)を、100mM bicineバッファー、pH7.5中の6.0mg/ml hGH溶液に加え、hGHとmPEGアルデヒドとのモル比を1:15とした。20mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムを加え、反応混合物を穏やかに撹拌しながら2〜8℃で数時間さらにインキュベーションした。反応は8NのHClで酸性化することにより停止させた。
【0255】
PEGとhGHとの反応混合物中の分子種(モノ体、ジ体、トリ体)の分布は、C−IEX HPLCによって決定した。したがって、反応を停止させた反応混合物を40mM
NaAcバッファー(pH4.2)で3倍に希釈し、ダイオネックス(Dionex)システムまたは島津製作所HPLCシステムに装備されたSP−5PW充填カラム(75×7.5mm、粒径10μm、カラム体積3.3ml、トーソーハース・バイオサイエンス(Tosohaas Bioscience )製)に通した。
【0256】
カラムを同じバッファーで平衡化し、流量は0.4ml/分として、典型的には200μgのタンパク質を注入した。カラムは室温で使用したが、試料はオートインジェクタ内で5℃に維持した。
【0257】
異なるPEG化状態の分子種の同定については、分析用C−IEX HPLCの溶出ピークについて、MALDI/TOFおよびSDS−PAGEによって質量を分析し、溶出ピークの保持時間に対してPEG化hGHの各ピークを割り当てることができた。
【0258】
MALDI/TOFの結果は、アミノ酸配列およびPEG部分に基づいた事前の質量推定と一致した(表14を参照)。
【0259】
【表14】

MALDI/TOFおよびSDS−PAGE分析からの情報を用いて、保持時間を対応するPEG化hGH分子種に割り当てることができた。分析C−IEXにより、モノPEG化、ジPEG化およびトリPEG化hGHアイソフォームを保持時間に応じて分離することが可能となった。
【0260】
一般に、組換えヒトhGHを、mPEGアルデヒドを1:15のモル比で用いてPEG化hGHコンジュゲートに変換すると、およそ15時間の反応時間以降に主としてジPEG化hGHコンジュゲートが生じた(図19を参照)。この1:15のモル比は、タンパク質内のアミノ基の数(9)とPEG分子の数との化学量論比が1:1.6であることに相当する。
【0261】
重要なパラメータであると確認されたインキュベーション時間に加えて、使用されるPEG濃度(タンパク質とPEGとのモル比で表現される)は、反応が主としてジPEG化hGHコンジュゲート生成物を形成するように促進する。タンパク質とPEGとのモル比=1:10のとき、反応はジPEG化を指向する。
【図面の簡単な説明】
【0262】
【図1】本発明のジポリマー・タンパク質コンジュゲートの生産におけるすべての処理ステップの概観を示す図。
【図2】ジPEG化G−CSFコンジュゲート・アイソフォーム全体の最大収量および形成の反応速度を、該PEG化反応に使用される活性化mPEGアルデヒドの低温保存時間に関して示す図。
【図3a】1〜4本の12kDa mPEGアルデヒド鎖を有する組換えG−CSFコンジュゲートが時間依存的に順次形成されるのを示す図。最大のジPEG化G−CSF収量は30時間インキュベーションでみられる。
【図3b】2つのアイソフォームの混合物であるジPEG化G−CSFコンジュゲート生成物の形成について、使用したタンパク質およびPEGの量に依存した反応速度を示す図。様々な量のPEGおよびタンパク質について、本発明に従ってpH7.5、5℃で穏やかに撹拌しながら0.5mLの反応容量で試験した。
【図3c】所与のインキュベーション時間(t=30h)におけるPEG量の関数としてのジPEG化G−CSFコンジュゲート混合物の形成を示す図。本発明に従って、pH(7.5)、温度(5℃)として0.5mLの反応容量で穏やかに撹拌した。
【図3d】反応(5.7mg/mlタンパク質、0.5mLの反応容量で表示のモル比にて実施)における生成物(ジPEG化G−CSFコンジュゲート混合物)の形成反応速度に対する温度(22℃と5℃)の影響を示す図。
【図4】PEG化反応混合物からのジPEG化G−CSFの分離用の典型的な分取C−IEX溶出プロファイルを示す図(タンパク質装荷量:6.1mgのPEG化G−CSF;カラム:SP−5PW C−IEXカラム(トーソーハース(Tosohaas)、20μm、カラム体積10.6ml)、バッファーA:15mM NaAc、pH4.2;バッファーB:1M NaCl、15mM NaAc、pH4.2;直線濃度勾配)。E:溶出液、RP:残余物プール、Min:分。
【図5】ジPEG化G−CSF生成物のC−IEX HPLCによる分離を示す図。クロマトグラムは214nmで記録した。アイソフォーム名を記載(Di”:ジ”PEG化、Tri:トリPEG化、Di’:ジ’PEG化、Di:ジPEG化、Mono:モノPEG化)。min:分。
【図6】ジPEG化G−CSF生成物のSECによる分離を示す図。クロマトグラムは214nmで記録した。23分のピークは塩に相当する。
【図7】非修飾型G−CSF(黒色)およびジPEG化G−CSF生成物(赤色)のCDスペクトルを示す図。
【図8】ジPEG化およびジ’PEG化G−CSFコンジュゲート・アイソフォームの混合物(0.76:1)からなるジPEG化G−CSFコンジュゲート生成物(Di−PEG G−CSF)のインビボでの生物活性を、非修飾型rhG−CSF(Neupogen(R))およびモノPEG化rhG−CSF(Neulasta(R))と比較して示す図。単回皮下注射後の平均WBCによって示されている(PBS:リン酸緩衝生理食塩水)。
【図9】ジPEG化およびジ’PEG化G−CSFコンジュゲート・アイソフォームの混合物(0.76:1)からなるジPEG化G−CSFコンジュゲート生成物(Di−PEG G−CSF)のインビボでの生物活性を、非修飾型rhG−CSF(Neupogen(R))およびモノPEG化rhG−CSF(Neulasta(R))と比較して示す図。単回皮下注射後の平均好中球数によって示されている(PBS:リン酸緩衝生理食塩水)。
【図10】ジPEG化G−CSFアイソフォームおよびジ’PEG化G−CSFアイソフォームのインビボでの生物活性を、両アイソフォームの混合物(0.76:1)であるジPEG化G−CSFコンジュゲート生成物と比較して、単回皮下注射後の平均WBCによって示す図(PBS:リン酸緩衝生理食塩水)。
【図11】ジPEG化G−CSFアイソフォームおよびジ’PEG化G−CSFアイソフォームのインビボでの生物活性を、両アイソフォームの混合物(0.76:1)であるジPEG化G−CSFコンジュゲート生成物と比較して、単回皮下注射後の平均好中球数によって示す図(PBS:リン酸緩衝生理食塩水)。
【図12】G−CSF(3.2mg/ml)を、mPEG 12kDa(モル比1:25、上側のクロマトグラム)、およびmPEG 20kDa(モル比1:19、下側のクロマトグラム))を用いて30時間PEG化した後の反応混合物の分析C−IEX溶出プロファイルを示す図。SP−5PWカラムを装備したダイオネックス(Dionex)システムで同一の条件下で分析した(UV 214nm)。ピークのプロファイルが一致していることから、i)ピークの同定、およびii)対応するPEG化G−CSF分子種(モノ、ジ、およびジ’PEG化アイソフォーム)へのピークの割り当てが可能である。(Flow:流量)
【図13】1〜4本の20kDa mPEGアルデヒドを備えた組換えG−CSFコンジュゲートの時間依存的な連続的形成を示す図。18時間インキュベーション以降にジPEG化G−CSFを主とした生産が達成される。反応条件は、3.2mg/mlのG−CSF、G−CSFとPEG20kとのモル比1:19、5℃で穏やかに撹拌、とした。
【図14】ジ’PEG(20k)G−CSFアイソフォームのインビボでの生物活性を、非修飾型rhG−CSF(Neupogen(R))およびモノPEG化rhG−CSF(Neulasta(R))と比較して、単回皮下注射後の平均WBCによって示す図(PBS:リン酸緩衝生理食塩水)。
【図15】ジ’PEG(20kDa)G−CSFアイソフォームのインビボでの生物活性を、非修飾型rhG−CSF(Neupogen(R))およびモノPEG化rhG−CSF(Neulasta(R))と比較して、単回皮下注射後の平均好中球数によって示す図(PBS:リン酸緩衝生理食塩水)。
【図16a】1〜3本の12kDa mPEGアルデヒドを備えた組換えIFNα2aコンジュゲートの時間依存的な連続的形成を示す図。およそ20時間インキュベーション後には既にジPEG化IFNα2aを主とした生産が達成され、調査した50時間の時間枠では全体にわたって継続される。
【図16b】ジPEG化IFNα2aコンジュゲート生成物の形成について、使用したタンパク質およびPEGの量に依存した反応速度を示す図。様々な量のPEGおよびタンパク質について、pH7.5、5℃で穏やかに撹拌しながら0.5mLの反応容量で試験した。
【図17】PEG化反応混合物からジPEG化IFNα2aコンジュゲートを分離するための分取C−IEX溶出プロファイルを示す図(タンパク質装荷量:24時間インキュベーション後のPEG化IFNα2aを6mg;カラム:SP−5PW C−IEXカラム(トーソーハース(Tosohaas)、20μm、カラム体積10.6ml)、バッファーA:40mM NaAc、pH4.2;バッファーB:1M NaCl、40mM NaAc、pH4.2;直線濃度勾配)。P1:モノPEG化;P2:ジPEG化;P3:混合物(トリPEG化/ジPEG化);Min:分。
【図18a】1〜3本の12kDa mPEGアルデヒド鎖を備えた組換えEPOコンジュゲートの時間依存的な連続的形成を示す図。驚くべきことに最初の18時間インキュベーション以内にはジPEG化EPOを主とした生産が達成され、残りのインキュベーションの間維持される。
【図18b】ジPEG化エリスロポエチンコンジュゲート生成物の形成について、使用したタンパク質およびPEGの量に依存した反応速度を示す図。様々な量のPEGおよびタンパク質について、pH7.5、5℃で穏やかに撹拌しながら0.5mLの反応容量で試験した。
【図18c】PEG化反応混合物からジPEG化EPOコンジュゲートを分離するための分析C−IEX溶出プロファイルを示す図(タンパク質装荷量:24時間インキュベーション後のPEG化EPO混合物を1mg;カラム:SP−5PW C−IEXカラム(トーソーハース(Tosohaas)、10μm、カラム体積3.3ml)、バッファーA:40mM NaAc、pH3.8、20%イソプロパノール;バッファーB:1M NaCl、40mM NaAc、pH3.8、20%イソプロパノール;直線濃度勾配)。P1:モノPEG化;P2:ジPEG化;P3:トリPEG化;Min:分。
【図19】1〜3本の12kDa mPEGアルデヒド鎖を備えた組換えhGHコンジュゲートの時間依存的な連続的形成を示す図。およそ15時間インキュベーション後にジPEG化hGHを主とした生産が達成され、維持される。
【図20】配列番号1(1位にメチオニンを含むG−CSFのアミノ酸配列)。
【図21】配列番号2(IFNα2aのアミノ酸配列)。
【図22】配列番号3(EPOのアミノ酸配列)。
【図23】配列番号4(hGHのアミノ酸配列)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー・タンパク質コンジュゲートであって、タンパク質のアミノ基の2つの窒素原子が各々アミン結合によってポリマー単位と結合していることを特徴とするコンジュゲート。
【請求項2】
ポリマー単位は、少なくとも1つのポリマー部分とリンカー部分とを含み、該リンカー部分は少なくとも1つのポリマー部分とアミン結合との間に位置する、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
リンカー部分は直線状である、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
リンカー部分は分岐状である、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
ポリマー単位は2以上のポリマー部分を含む、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
リンカー部分は、アミン結合の窒素原子に結合した少なくとも1つのメチレン基を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
リンカー部分は、アミン結合の窒素原子に結合している1〜12個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、最も好ましくは2つのメチレン基を含む、請求項6に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
タンパク質は生物学的に活性なタンパク質である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
タンパク質はグリコシル化タンパク質または非グリコシル化タンパク質である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
タンパク質は、天然型のタンパク質と同じグリコシル化パターンを有する、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
タンパク質は、天然型のタンパク質とは異なったグリコシル化パターンを有する、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
下式:
[(R−L−ポリマー)−L−(CH−)−NH]−P
(式中、Rは、H、低級アルキル、アリールまたは任意の適切な保護基であり;ポリマーは、Pと結合させるのに適したポリマーであり;mはメチレン基の数を表わす整数であり、Pは生物学的に活性なタンパク質またはプロテイノイドであって、該タンパク質またはプロテイノイドのアミノ基の2つの窒素原子は各々ポリマー単位と結合しており、LはO、N、S、および分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分のうち少なくともいずれかであって存在していても存在しなくてもよく;Lは分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分であって存在していても存在しなくてもよく;yは整数であり、ただし、Lが存在しない場合yは1であり、Lが存在する場合yは少なくとも1である)を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
ポリマーは、ポリアルキレン・グリコール、多糖、ピロリドン、セルロース、ポリアミノ酸、ポリアクリルアミド、およびこれらの誘導体から成る群から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
下式:
[(R−L−PEG)−L−(CH−)−NH]−P
(式中、Rは、H、低級アルキル、アリールまたは任意の適切な保護基であり;PEGはポリエチレングリコール部分であり;mはメチレン基の数を表わす整数であり、Pは生物学的に活性なタンパク質またはプロテイノイドであって、該タンパク質またはプロテイノイドのアミノ基の2つの窒素原子は各々ポリエチレングリコール単位と結合しており、LはO、N、S、および分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分のうち少なくともいずれかであって存在していても存在しなくてもよく;Lは分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分であって存在していても存在しなくてもよく;yは整数であり、ただし、Lが存在しない場合yは1であり、Lが存在する場合yは少なくとも1である)を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
PEGは式−(CH−CH−O)を有し、前記式中、nはポリエチレングリコール単位中のエチレンオキシド残基の数を表す、請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
yは1である、請求項14または15に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
アミノ基は、N末端のアミノ基、ε−アミノ基、グアニジン基およびイミダゾール基から成る群から選択される、請求項1〜16のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
タンパク質またはプロテイノイドは、増殖因子、抗体、ホルモン、特に治療上活性を有するタンパク質、たとえばエリスロポエチン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、コンセンサスインターフェロン、G−CSF、GM−CSF、ヒト成長ホルモン、ヘモグロビン、インターロイキン2およびインターロイキン6のようなインターロイキン、腫瘍壊死因子、サイトカイン、IgG、IgE、IgM、IgA、IgDのような免疫グロブリン、またはそれらの構造的もしくは機能的もしくは構造的かつ機能的なバリアントもしくはフラグメント、のうち少なくともいずれかの生物学的な活性を有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
タンパク質またはプロテイノイドはG−CSFの生物学的な活性を有する、請求項18に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
タンパク質またはプロテイノイドはIFNα2aの生物学的な活性を有する、請求項18に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
タンパク質またはプロテイノイドはエリスロポエチンの生物学的な活性を有する、請求項18に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
タンパク質またはプロテイノイドはヒト成長ホルモンの生物学的な活性を有する、請求項18に記載のコンジュゲート。
【請求項23】
2つのアミノ基は、N末端のアミノ基およびリジン残基のε−アミノ基から成る群から選択される、請求項1〜22のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項24】
タンパク質は、該タンパク質の野生型の配列のアミノ基含有アミノ酸が、欠失、修飾、付加のいずれも為されていないという点で野生型の配列と同じであるアミノ酸配列を有する、請求項1〜23のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項25】
G−CSFは配列番号1に特定されたアミノ酸配列を有する、請求項18、19、23
または24のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項26】
2つのアミノ基は、N末端のアミノ基、リジン17のε−アミノ基およびリジン35のε−アミノ基から成る群から選択される、請求項25に記載のコンジュゲート。
【請求項27】
G−CSFはグリコシル化G−CSFまたは非グリコシル化G−CSFである、請求項25または請求項26に記載のコンジュゲート。
【請求項28】
IFNα2aは配列番号2に特定されたアミノ酸配列を有する、請求項18、20、23または24のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項29】
エリスロポエチンは配列番号3に特定されたアミノ酸配列を有する、請求項18、21、23または24のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項30】
エリスロポエチンはグリコシル化されている、請求項29に記載のコンジュゲート。
【請求項31】
ヒト成長ホルモンは配列番号4に特定されたアミノ酸配列を有する、請求項18、22、23または24のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項32】
Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびベンジルから成る群から選択される、低級アルキルまたはアリールである、請求項12または14に記載のコンジュゲート。
【請求項33】
ポリエチレングリコール部分の分子量は、2〜100kDa、より好ましくは5〜60kDa、最も好ましくは10〜30kDaである、請求項13〜32のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項34】
mは、1〜12、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、最も好ましくは2である、請求項12〜33のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のポリマー・タンパク質コンジュゲートを、少なくとも1つ、好ましくは2つ含んでなる医薬調製物。
【請求項36】
請求項14〜34のいずれか1項に記載の少なくとも1つのジPEG化タンパク質コンジュゲートを、多重PEG化タンパク質コンジュゲートとともに混合して含む、PEGタンパク質コンジュゲートの混合医薬調製物であって、該混合医薬調製物における前記ジPEG化タンパク質コンジュゲートの割合が予め指定されていることを特徴とする調製物。
【請求項37】
N末端のアミノ基およびリジン17のε−アミノ基にポリエチレングリコール単位が結合しているG−CSFと、N末端のアミノ基およびリジン35のε−アミノ基にポリエチレングリコール単位が結合しているG−CSFとから成る群から選択される2つのポリエチレングリコール・G−CSFコンジュゲートを含んでなる、請求項35または請求項36に記載の調製物。
【請求項38】
薬学的に許容可能な希釈剤、担体、バッファー、およびアジュバントのうち少なくともいずれか1つをさらに含んでなる、請求項35〜37のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項39】
ポリマー・タンパク質コンジュゲートの調製方法であって、タンパク質をポリマー試薬と反応させてポリマー・タンパク質コンジュゲートを生成させる第1の反応ステップと、第1の反応ステップの望ましくない生成物の一部または全部を用いて反応ステップを繰り返す再利用ステップとを含む方法。
【請求項40】
ポリマー・タンパク質コンジュゲートの調製方法であって、少なくとも2つのアミノ基を有するタンパク質を、単一のアルデヒド基を有するポリマー試薬と還元剤存在下に反応させることを含み、反応時間は、タンパク質のアミノ基の2つの窒素原子がアミン結合によってポリマー単位と結合しているポリマー・タンパク質コンジュゲートが選択的に生成されるように調節されていることを特徴とする方法。
【請求項41】
ポリマー試薬は、ポリアルキレン・グリコール、多糖、ピロリドン、セルロース、ポリアミノ酸部分、ポリアクリルアミド、およびこれらの誘導体のうち少なくともいずれかを含む、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
タンパク質は、増殖因子、抗体、ホルモン、特に治療上活性を有するタンパク質、たとえばエリスロポエチン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、コンセンサスインターフェロン、G−CSF、GM−CSF、ヒト成長ホルモン、ヘモグロビン、インターロイキン2およびインターロイキン6のようなインターロイキン、腫瘍壊死因子、サイトカイン、IgG、IgE、IgM、IgA、IgDのような免疫グロブリン、またはそれらの構造的もしくは機能的もしくは構造的かつ機能的なバリアントもしくはフラグメント、のうち少なくともいずれかの生物学的な活性を有するタンパク質またはプロテイノイドである、請求項39〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
反応時間は、該方法の生成物の少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%が、タンパク質のアミノ基の2つの窒素原子がアミン結合によりポリマー単位と結合しているポリマー・タンパク質コンジュゲートであるように選択される、請求項39〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
反応時間は、6h〜48h、好ましくは12h〜48h、より好ましくは16h〜36h、最も好ましくは18h〜32hである、請求項39〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
ポリマー・タンパク質コンジュゲートは、請求項1〜34のいずれか1項に記載のポリマー・タンパク質コンジュゲートである、請求項39〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
反応は、タンパク質濃度を0.5〜100mg/ml、より好ましくは1〜10mg/ml、最も好ましくは約3.2mg/mlとして行われる、請求項39〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
反応は、タンパク質とポリマーとのモル比を1:1〜1:400、好ましくは1:5〜1:50、より好ましくは1:10〜1:30として行われる、請求項39〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
タンパク質がグリコシル化タンパク質である場合、反応は、タンパク質内のアミノ基とポリマー分子との化学量論比を、10:1〜1:80、好ましくは1:0.3〜1:50、より好ましくは2:1〜1:20として行われる、請求項39〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
タンパク質が非グリコシル化タンパク質である場合、反応は、タンパク質内のアミノ基とポリマー分子との化学量論比を、1:1〜1:80、好ましくは1:1.25〜1:80、より好ましくは1:1.25〜1:50、さらに一層好ましくは1:1.25〜1:
30、最も好ましくは1:2〜1:10として行われる、請求項39〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
還元的アルキル化において使用される還元剤は、NaCNBHまたはNaBHのうち少なくともいずれか一方である、請求項39〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
反応はpH6.9〜7.8で行われる、請求項39〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
反応は、リン酸塩、酢酸塩、HEPES、MESおよびその他の適切なバッファーから選択されたバッファーの存在下で行われる、請求項39〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
反応は、2℃〜50℃、好ましくは2℃〜8℃の温度で行われる、請求項39〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
ポリマー試薬は、次式:
[R−L−(CH−CH−O)−L−(CH−)m−1−CHO(式中、Rは、H、低級アルキル、アリールまたは任意の適切な保護基であり;nは、ポリエチレングリコール部分の中のエチレンオキシド残基の数を表す整数であり;mはメチレン基の数を表わす整数であり;Lは、O、N、Sおよび分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分のうち少なくともいずれかであって存在していても存在しなくてもよく;Lは、分岐状もしくは非分岐状のリンカー部分であって存在していても存在しなくてもよく;yは整数であって、ただしLが存在しない場合にはyは1であり、Lが存在する場合にはyは少なくとも1である)を有する試薬である、請求項39〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
ポリマー試薬は、PEGアルデヒド、好ましくはメトキシポリエチレングリコール・アセトアルデヒドである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
メトキシポリエチレングリコール・アセトアルデヒドは、窒素下で−20℃以下の温度で固体物質として保存される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ポリエチレングリコール・アセトアルデヒドは、対応するポリエチレングリコールジエチルアセタールを活性化して得られる、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
精製ステップをさらに含み、該ステップは、タンパク質の2つの所定のアミノ基が各々1つのポリマー単位と結合しているジポリマー・タンパク質コンジュゲートの生成物プールをもたらし、かつ、未反応タンパク質、未反応ポリマー試薬、生成物プールのジポリマー・タンパク質コンジュゲート・アイソフォーム以外のジポリマー・タンパク質コンジュゲート・アイソフォーム、およびタンパク質の2未満もしくは3以上のアミノ基がポリマー単位と結合しているポリマー・タンパク質コンジュゲート、のうち少なくともいずれか1つを含有する残余物プールを生じさせる、請求項39〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
精製ステップはイオン交換クロマトグラフィーによって行われる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項39〜57のいずれか1項に記載の方法が残余物プールを用いて繰り返され、得られた生成物プールが好ましくは前記生成物プールと混合される、請求項58または59
に記載の方法。
【請求項61】
第1の反応ステップは、請求項39〜57のいずれか1項に記載の方法に相当する、請求項39に記載の方法。
【請求項62】
再利用ステップは、請求項60に記載の方法を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項63】
請求項39〜62のいずれか1項に記載の方法に従って調製されたポリマー・タンパク質コンジュゲート。
【請求項64】
請求項1〜34または63のいずれか1項に記載のポリマー・タンパク質コンジュゲート、または請求項35〜38のいずれか1項に記載の医薬調製物の、疾患治療用の薬剤の製造のための使用。
【請求項65】
ポリマー・タンパク質コンジュゲートはポリマー・G−CSFコンジュゲートである、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
疾患は、化学療法、放射線療法および感染のうち少なくともいずれかによって引き起こされる好中球減少症および白血病のうち少なくともいずれか一方である、請求項65に記載の使用。
【請求項67】
ポリマー・タンパク質コンジュゲートはポリマー・IFNα2aコンジュゲートである、請求項64に記載の使用。
【請求項68】
疾患は、感染症、特に肝炎である、請求項67に記載の使用。
【請求項69】
ポリマー・タンパク質コンジュゲートはポリマー・エリスロポエチンコンジュゲートである、請求項64に記載の使用。
【請求項70】
疾患は貧血症である、請求項69に記載の使用。
【請求項71】
ポリマー・タンパク質コンジュゲートはポリマー・成長ホルモンコンジュゲートである、請求項64に記載の使用。
【請求項72】
疾患は成長ホルモン欠損症である、請求項71に記載の使用。
【請求項73】
タンパク質の免疫原性を低減するための、請求項1〜34または63のいずれか1項に記載のポリマー・タンパク質コンジュゲートの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図18c】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2008−535793(P2008−535793A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500216(P2008−500216)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060671
【国際公開番号】WO2006/095029
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(302020953)ジークフリード・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】