説明

スイッチ、車両用レバー・スイッチ

【課題】 車両用のレバー・スイッチ等に用いられるレバー・スイッチと回転スイッチとの二つを備えたスイッチにおいて、二つのスイッチが同時に導通状態になってしまい回路のショートが発生することを防ぐこと。
【解決手段】 本発明実施例のスイッチは、レバーの上下操作によりオン・オフ制御される第1接点可動部とノブの回転操作によりオン・オフ制御される第2接点可動部とを有する。第1接点可動部がオン状態の際には、第1接点可動部からの一対の突起物である第1係止部によって第2接点可動部を挟んで、第2接点可動部をオン状態にする動きを制限し、第2接点可動部がオン状態の際には、第2接点可動部の第2係止部が、前記第1係止部の突起物に当接して第1接点可動部をオン状態にする動きを制限する方法によって課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導通回路のショートを防ぐための互いに動作制限が可能な二つのスイッチを含むスイッチ、車両用レバー・スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車のステアリング・コラムに装着される車両用のレバー・スイッチ装置としては、図11に示すようなものがある。図11は、車両用レバー・スイッチの断面図である。図11の下側が車両の進行方向である。
【0003】
従来例のレバー・スイッチP10は、通常は中立位置で停止しており、レバー部P19を運転者の方向(矢印Qf;運転者から見て手前に引く操作)に引くことによりフロント・ウォッシャーをオン状態とし、レバー部P19を運転者から離れる方向(矢印Qr;運転者から見て遠くに押す操作)に押すことによりリア・ウォッシャーのオン状態となる。このレバー部P19の前後方向(Qf,Qr)の操作(揺動操作)に連動して可動する摺動レバーP50がウォッシャー接点可動部P51を矢印Qf1又はQr1方向に電極基板P31上を摺動させてウォッシャーのスイッチの接点の導通状態を作り出す。
【0004】
図12にこの電極基板P31とウォッシャー接点可動部P51を運転者側から見た側面図を示す。電極基板P31の表面にフロント・ウォッシャー動作のための電極P32a及びリア・ウォッシャー動作のための電極P32bが配置されている。電極基板P31の上部には、ウォッシャー接点可動部P51が配置されている。ウォッシャー接点可動部P51は、前記電極(P32a、P32b)に接して電極間を導通させるための導通接点(ショートバー)P55を有する。
【0005】
本構造において、レバー部P19をQf方向に引くと、電極基板P31上に配されたウォッシャー接点可動部P51がQf1方向に摺動し、ショートバーP55がフロント・ウォッシャー動作のための電極P32aに接して回路を導通させフロント・ウォッシャーを動作させる。又、レバー部P19をQr方向に引くと、ウォッシャー接点可動部P51がQr1方向に摺動してショートバーP55がリア・ウォッシャー動作のための電極P32bに接して回路を導通させリア・ウォッシャーを動作させる。
【0006】
従来の車両用レバー・スイッチP10は、その他に例えばリア・ワイパーのオン・オフの目的のための回転ノブP11と回転ノブP11に連動して動作する揺動レバーP40及びそれにつれて動作する回転接点可動部P41からなる回転スイッチを有する。
【0007】
このフロント・ウォッシャーとリア・ウォッシャーの回路図は、図1に示すものである。ここでレバー部P19をQf方向に引くと、フロント・ウォッシャー接点91のうちのAとBが導通状態、DとCが導通状態となることにより、電流がイグニッション95→A→B→モーター99のX→モーター99→Y→C→D→グランド97の経由を経て流れ、モーターが回転してフロント・ウォッシャーが作動する。
【0008】
また、レバー部P19をQr方向に引くと、リア・ウォッシャー接点93のうちのEとFが導通状態、HとGが導通状態となることにより、電流がイグニッション95→E→F→モーター99のY→モーター99→X→G→H→グランド97の経由を経てモーターに逆方向に流れ、モーターが逆回転してリア・ウォッシャーが作動する。
【0009】
この場合、レバー部P19の動きにつれて可動するウォッシャー接点可動部P51の直線上の動きの各両端で、それぞれのウォッシャーがオン動作となるために、フロント及びリアの両ウォッシャーが同時にオン状態となることはない。
【0010】
上記の図1の回路構造を維持し、かつ、フロント・ウォッシャーは、従来同様レバー部の前後操作(Qf)のまま、リア・ウォッシャーを回転ノブの操作に変更したいという技術的要求が有る。この場合、リア・ウォッシャースイッチに割当てられる回転ノブP11の回転操作により、揺動レバーP40及び回転接点可動部P41が動いて、リア・ウォッシャースイッチのオン・オフを行うこととなるが、この回転接点可動部P41と、前記したウォッシャー接点可動部P51とは、独立してスイッチ操作が可能なために、前記フロント・ウォッシャー接点91とリア・ウォッシャー接点93が同時に導通してしまうことが考えられる。その場合、例えばイグニッション95→E→F→C→D→H→グランド97経由で電流が流れてしまい結果としてショートしてしまう問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、車両用のレバー・スイッチにおいて、従来用いられていた回路構造を維持したまま、フロント・ウォッシャーを従来同様レバー部の前後方向の操作によってオン・オフし、リア・ウォッシャーを回転ノブの回転操作によってオン・オフする二つのスイッチにより動作させる場合に、二つのスイッチが同時に導通状態になってしまい回路のショートが発生することを防ぐ点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のスイッチは、導通回路のための複数の電極を上面に配した電極基板と、前記電極基板上に配置されて一方向の動作により前記電極との第1導通状態又は非導通状態となる接点を有する第1接点可動部と、前記電極基板上に配置されて前記一方向の交差方向への動作により前記電極との第2導通状態又は非導通状態となる接点を有する第2接点可動部とを有するスイッチであって、前記第1接点可動部は、第1係止部と第1係合部とを有し、前記第2接点可動部は、第2係止部と第2係合部とを有し、前記第1係止部は、前記第1導通状態に有る場合は前記第2係合部と当接して前記第2接点可動部の前記交差方向の動作を制限し、前記第2係止部は、前記第2導通状態に有る場合は前記第1係合部と当接して前記第1接点可動部の前記一方向の動作を制限して、前記第1接点可動部と前記第2接点可動部が同時に導通状態となることを禁止することを特徴とする。
【0013】
本発明のスイッチの前記第1接点可動部の第1係止部は、前記第1接点可動部本体から前記第2接点可動部方向に延びる一対の突起物からなり、前記第1接点可動部は前記一方向の動作により前記第2接点可動部に近づいて前記第1導通状態となり、前記一対の突起物部の間に前記第2接点可動部の第2係合部を挟んで、前記第2接点可動部の交差方向の動作を制限し、前記第2接点可動部は、前記交差方向の動作により導通状態となり、前記第2接点可動部の第2係止部は前記一対の突起物先端の第1係合部と当接して、前記第1接点可動部の一方向の動作を制限することを特徴とする。
【0014】
本発明のスイッチの前記第1接点可動部は、レバー・スイッチのレバーの操作に連動して前記一方向の動作を行い、前記第2接点可動部は、回転ノブの回転操作に連動して前記交差方向の動作を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の車両用のレバー・スイッチは、請求項1から3のいずれかに記載のスイッチを有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車両用のレバー・スイッチの前記第1接点可動部は、フロント・ウォッシャーのオン・オフ制御のための接点可動部であり、前記第2接点可動部は、リア・ウォッシャーのオン・オフ制御のための接点可動部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスイッチは、導通回路のための複数の電極を上面に配した電極基板と、前記電極基板上に配置されて一方向の動作により前記電極との第1導通状態又は非導通状態となる接点を有する第1接点可動部と、前記電極基板上に配置されて前記一方向の交差方向への動作により前記電極との第2導通状態又は非導通状態となる接点を有する第2接点可動部とを有するスイッチであって、前記第1接点可動部は、第1係止部と第1係合部とを有し、前記第2接点可動部は、第2係止部と第2係合部とを有し、前記第1係止部は、前記第1導通状態に有る場合は前記第2係合部と当接して前記第2接点可動部の前記交差方向の動作を制限し、前記第2係止部は、前記第2導通状態に有る場合は前記第1係合部と当接して前記第1接点可動部の前記一方向の動作を制限して、前記第1接点可動部と前記第2接点可動部が同時に導通状態となることを禁止することを特徴とする。
【0018】
このため、第1接点可動部が導通状態のときは、第2接点可動部は導通状態に入ることができず、又第2接点可動部が導通状態のときは、第1接点可動部は導通状態に入ることができず、両接点可動部が同時に導通状態になることはなく回路のショートを防止できる。
【0019】
本発明のスイッチの前記第1接点可動部の第1係止部は、前記第1接点可動部本体から前記第2接点可動部方向に延びる一対の突起物からなり、前記第1接点可動部は前記一方向の動作により前記第2接点可動部に近づいて前記第1導通状態となり、前記一対の突起物部の間に前記第2接点可動部の第2係合部を挟んで、前記第2接点可動部の交差方向の動作を制限し、前記第2接点可動部は、前記交差方向の動作により導通状態となり、前記第2接点可動部の第2係止部は前記一対の突起物先端の第1係合部と当接して、前記第1接点可動部の一方向の動作を制限することを特徴とする。
【0020】
このため、上記の両接点可動部が同時に導通状態になることによる回路のショート防止を第1接点可動部に設けた係止部である突起物という簡単な構造により実現できる。
【0021】
本発明のスイッチの前記第1接点可動部は、レバー・スイッチのレバーの操作に連動して前記一方向の動作を行い、前記第2接点可動部は、回転ノブの回転操作に連動して前記交差方向の動作を行うことを特徴とする。
【0022】
このため、レバー操作により動作するスイッチと回転ノブの回転操作により動作するスイッチの二つのスイッチが同時に導通状態になることはなく回路のショートを防止できる。
【0023】
本発明の車両用のレバー・スイッチは、請求項1から3のいずれかに記載のスイッチを有することを特徴とする。
【0024】
このため、車両用のレバー・スイッチにおいて、二つのスイッチの回路がショートしてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0025】
また、本発明の車両用のレバー・スイッチの前記第1接点可動部は、フロント・ウォッシャーのオン・オフ制御のための接点可動部であり、前記第2接点可動部は、リア・ウォッシャーのオン・オフ制御のための接点可動部であることを特徴とする。
【0026】
このため、車両用レバー・スイッチにおいて、フロント・ウォッシャーとリア・ウォッシャーを動作させる際に二つのスイッチが同時に導通状態となることはなく回路のショートを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来例及び本発明実施例に用いられるフロント・ウォッシャー及びリア・ウォッシャーの回路図である(従来例、実施例)。
【図2】本発明実施例の車両用レバー・スイッチの概観図である。
【図3】本発明実施例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の側面図である(両方のウォッシャーがオフ状態)(実施例)。
【図4】本発明実施例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の斜視図である(両方のウォッシャーがオフ状態)(実施例)。
【図5】本発明実施例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の側面図である(フロント・ウォッシャーがオン状態)(実施例)。
【図6】本発明実施例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の斜視図である(フロント・ウォッシャーがオン状態)(実施例)。
【図7】本発明実施例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の側面図である(リア・ウォッシャーがオン状態)(実施例)。
【図8】本発明実施例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の斜視図である(リア・ウォッシャーがオン状態)(実施例)。
【図9】本発明実施例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の斜視図である(図7とは、回転ノブの回転方向が反対でリア・ウォッシャーがオン状態)(実施例)。
【図10】本発明実施例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の側面図である(図8とは、回転ノブの回転方向が反対でリア・ウォッシャーがオン状態)(実施例)。
【図11】従来例の車両用レバー・スイッチの断面図である(従来例)。
【図12】従来例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の側面図である(両方のウォッシャーがオフ状態)(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
車両用のレバー・スイッチ等に用いられるレバー・スイッチと回転スイッチの二つを備えたスイッチにおいて、二つのスイッチが同時に導通状態になってしまい回路のショートが発生することを防ぐ目的をレバー・スイッチの接点可動部と回転スイッチの接点可動部に係合部及び係止部を設けて一方のスイッチがオン状態になっているときは他方のスイッチがオン状態に移行する動作を前記係合部及び係止部により制限する方法により実現した。
【実施例】
【0029】
本発明実施例としての車両用レバー・スイッチ10について以下に説明する。
【0030】
[レバー・スイッチの全体構造]
本発明実施例の自動車のステアリング・コラムに取り付けられる車両レバー・スイッチ10を運転者方向から見た概観図を図2に示す。
【0031】
車両用レバー・スイッチ10は基部14から図2での左方向に延びるようにレバー部19が取り付けられている。レバー部19は、作動中心13を中心にQf方向、又はPの両方向に動作可能となっている。
【0032】
レバー部19を矢印Qf方向に操作(手前に引く操作)をすることによりフロント・ウォッシャーがオン状態となる。
【0033】
車両用レバー・スイッチ10の端部には、ノブの回転動作によりスイッチとして動作する第1回転ノブ11が取り付けられている。この第1回転ノブ11をレバー部19のエンド側から見て時計回り方向(矢印Rcw方向)に回転させるとリア・ウォッシャーがオン状態となる。又、その反対方向、すなわちレバー部19のエンド側から見て反時計回り方向(矢印Rccw方向)に回転させると、リア・ワイパー間欠動作、リア・ワイパー連続動作、リア・ウォッシャーの順にそれぞれがオン状態となる。
【0034】
さらにレバー部19は、作動中心13を中心にP方向にレバーが上下して、例えばフロント・ワイパーの動作を制御する機能が付加されている。これらのフロント・ワイパー機能に関しては本発明の本質ではないので以降その説明を省略する。また、第1回転ノブ11の内側に配置された第2回転ノブ12によりリア・ワイパーの間欠間隔を調整する機能が付加されている。このリア・ワイパーの間欠間隔調整についても、同じく本発明の本質ではないので以降その説明を省略する。
【0035】
[電極基板及び接点可動部の構造]
図3に車両用レバー・スイッチ10の基部14(図2参照)に配置される電極基板31の側面図を示す。
【0036】
電極基板31は、車両用レバー・スイッチ10の基部14に固定されて、基板表面にフロント・ウォッシャーの回路導通のための電極32,33,34,35,36,37を有し、リア・ウォッシャーの回路導通のための電極71a、71b、74a、74bを有する。また、リア・ワイパーの間欠動作回路導通のための電極72a,72bと、リア・ワイパーの連続動作回路導通のための電極73a,73bとを有する。
【0037】
同電極基板31上には、フロント・ウォッシャー接点可動部(第1接点可動部)51(外形を点線で表記)と、リア・ウォッシャー接点可動部(第2接点可動部)41(外形を点線で表記)とが配置されている。
【0038】
フロント・ウォッシャー接点可動部(第1接点可動部)51は、レバー部19のQf方向への操作に連動して図3での左方向(一方向)に移動する。フロント・ウォッシャー接点可動部51の下面には回路導通のための第1ショートバー55、第2ショートバー56、第3ショートバー57が配置されており、これらショートバー55,56,57がフロント・ウォッシャー接点可動部51の左方向への移動に伴って、フロント・ウォッシャーの回路導通のための電極である電極32と33とに、又34と35とに、又36と37とに接してそれぞれを導通状態(第1導通状態)にさせる。図3においては、フロント・ウォッシャー接点可動部51は右端に移動しており、前記ショートバー55,56,57が前記各電極32、33、34、35、36、37と図示のとおり接しフロント・ウォッシャーはオフ状態となっている。
【0039】
リア・ウォッシャー接点可動部(第2接点可動部)41は、第1回転ノブ11のRcw又はRccw方向の回転操作に連動して図3での縦方向(一方向の交差方向)に動作する。リア・ウォッシャー接点可動部41の下面には回路導通のためのショートバー45が配置されている。第1回転ノブ11をRcw方向に回転操作することにより、リア・ウォッシャー接点可動部41が縦方向の上方に移動し、同じくショートバー45が上方に移動して、電極71aと71bとに接して回路を導通させて、リア・ウォッシャーをオン状態にする。
【0040】
又、第1回転ノブ11をRccw方向に回転することにより、リア・ウォッシャー接点可動部41が縦方向の下方に移動し、同じくショートバー45が下方に移動して、電極72aと72bに接して回路を導通させることにより、リア・ワイパーを間欠動作のオン状態にする。さらに第1回転ノブ11をRccw方向に回転してショートバー45を下方に移動して電極73aと73bとを導通させることによりリア・ワイパーを連続動作のオン状態にする。また、さらに第1回転ノブ11をRccw方向に回転してショートバー45を下方に移動して電極74aと74bとを導通させることにより、リア・ウォッシャーをオン状態にする。
【0041】
図3においては、第1回転ノブ11が中立状態であり、ショートバー45はいずれの電極71a、71b、72a、72b、73a、73b、74a、74bにも接しておらずリア・ウォッシャー及びリア・ワイパーの両方ともオフ状態となっている。
【0042】
図4に図3のスイッチ状態(フロント及びリア・ウォッシャーの両方ともオフ状態)と同じ状態の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の立体構造を描いた斜視図を示す。
【0043】
フロント・ウォッシャー接点可動部51は、リア・ウォッシャー接点可動部41方向(一方向)に延びる一対の突起物からなるフロント・ウォッシャー係止係合部52、53を有する。フロント・ウォッシャー係止・係合部52の突起の先端にはフロント・ウォッシャー係合面52bを有し、その突起の側面には、フロント・ウォッシャー係止面52aを有する。同じく、フロント・ウォッシャー係止・係合部53の突起の先端にはフロント・ウォッシャー係合面53bを有し、その突起の側面には、フロント・ウォッシャー係止面53aを有する。
【0044】
また、フロント・ウォッシャー接点可動部51はレバー部19のQf方向への操作に連動する不図示の摺動レバー(図11の摺動レバーP50に相当)が係合する長穴59を有する。
【0045】
リア・ウォッシャー接点可動部41は、一方向と交差する縦方向の両側面に延びるリア・ウォッシャー係合部42、43を有し、フロント・ウォッシャー接点可動部51に面する側にリア・ウォッシャー係合部44、46を有する。リア・ウォッシャー係合部44と46の間には係合リブ49を有する。
【0046】
また、リア・ウォッシャー接点可動部41は第1回転ノブ11の回転に連動する不図示の揺動レバー(図11の揺動レバーP40に相当)が係合する係合片48を有する。
【0047】
図3及び図4の状態では、リア・ウォッシャー接点可動部41は、フロント・ウォッシャー係止面52a、53aにその動きを妨げられることは無い。又、フロント・ウォッシャー接点可動部51は、その突起先端のフロント・ウォッシャー係合面52bは、リア・ウォッシャー係止部44に突き当たってその動きを妨げられることは無く、同じくフロント・ウォッシャー係合面53bは、リア・ウォッシャー係止部46に突き当たってその動きを妨げられることは無い。よって、図3及び4に示される両方のウォッシャーのスイッチがオフ状態からは、レバー部19をQf方向に操作してフロント・ウォッシャーをオン状態にすること、又は第1回転ノブ11をRcw又はRccw方向に回転操作してリア・ウォッシャーをオン状態にすることの両方が可能である。
【0048】
[フロント・ウォッシャーオン状態でのリア・ウォッシャー動作の制限]
次に、図5にフロント・ウォッシャーがオン状態、リア・ウォッシャーがオフ状態の本発明実施例の車両用レバー・スイッチの電極基板と接点可動部の側面図を示す。又、図6に同じスイッチ状態の電極基板31とフロント・ウォッシャー接点可動部51とリア・ウォッシャー接点可動部41との立体構造を描いた斜視図を示す。
【0049】
図3及び図4に示すスイッチの状態からレバー部19をQf方向に操作すると、レバー部19に連動し長穴59に係合する不図示の摺動レバーが摺動することにより、図5の如くフロント・ウォッシャー接点可動部51が左方向に移動して、前記した様にショートバー55,56,57が電極32と電極33、電極34と電極35、電極36と電極37とに接して、フロント・ウォッシャー動作の回路の導通状態(第1導通状態)となる。このため、フロント・ウォッシャーはオンとなって動作する。
【0050】
この図5に示すスイッチの状態において、第1回転ノブ11をRcw方向に回転操作してリア・ウォッシャーをオン状態にしようとすると、第1回転ノブ11の回転に連動し係合片48に係合する不図示の揺動レバーが動作することにより、リア・ウォッシャー接点可動部41は、上方向に移動しようとするが、リア・ウォッシャー係合部42の先端がフロント・ウォッシャー係止係合部52の係止面52aに当接して、それ以上の上方向の移動を制限する。そのため、ショートバー45は、電極71aと電極71b上に到達できずこれらの電極を導通状態にすることができないのでリア・ウォッシャーはオン状態とならない。
【0051】
又、同状態において、第1回転ノブ11をRccw方向に回転操作すると、リア・ウォッシャー接点可動部41は、下方向に移動してショートバー45が電極72aと72bに接して導通状態にすることにより、リア・ワイパーの間欠動作を可能とさせる。さらに第1回転ノブ11をRccw方向に回転操作すると、リア・ウォッシャー接点可動部41は、さらに下方向に移動してショートバー45が電極73aと73bに接して導通状態にすることにより、リア・ワイパーの連続動作を可能とさせる。
【0052】
しかし、それ以上第1回転ノブ11をRccw方向に回転操作しようとしても、リア・ウォッシャー係合部43の先端が、フロント・ウォッシャー係止係合部53の係止面53aに当接して、それ以上の下方向の移動を制限する。そのため、ショートバー45は、電極74aと電極74b上に到達できずこれらの電極を導通状態にすることができないのでリア・ウォッシャーはオン状態とならない。
【0053】
従って、フロント・ウォッシャーがオン状態では、リア・ウォッシャーを同時にオン状態とすることができないため、回路のショートが発生しない。
【0054】
[リア・ウォッシャーオン状態でのフロント・ウォッシャーの動作の制限]
次に、図3及び図4に示す両ウォッシャーともオフの状態から、第1回転ノブ11をRcw方向に回転すると、リア・ウォッシャーがオン状態となる。このときの車両用レバー・スイッチの電極基板31と接点可動部41、51の側面図を図7に示す。又、図8に同じスイッチ状態の電極基板31とフロント・ウォッシャー接点可動部51とリア・ウォッシャー接点可動部41との立体構造を描いた斜視図を示す。
【0055】
図7及び図8では、フロント・ウォッシャー接点可動部51が図7での右方向に位置して、フロント・ウォッシャーがオフ状態となっている。
【0056】
リア・ウォッシャー接点可動部41は、フロント・ウォッシャー係止係合部52によって動作を制限されることなく、第1回転ノブ11のRcw方向の回転により図7での上方向に移動してショートバー45がリア・ウォッシャー動作のための電極71aと71bに接して回路を導通状態にして、リア・ウォッシャーをオン状態(第2導通状態)とする。
【0057】
このリア・ウォッシャーオン状態で、レバー部19をQf方向に操作してフロント・ウォッシャーをオン状態にしようとしてもフロント・ウォッシャー接点可動部51のフロント・ウォッシャー係止係合部52の先端の係合面52bがリア・ウォッシャー接点可動部41のリア・ウォッシャー係止部44に当接して、これ以上左側への動作を抑制しているために、第1ショートバー55は、電極32と電極33を、第2ショートバー56は、電極34と電極35を、第3ショートバー57は、電極36と電極37をそれぞれ導通させることができない。このため、フロント・ウォッシャーはオン状態(第1導通状態)となりえない。従って、フロント・ウォッシャーとリア・ウォッシャーが同時にオン状態になることがないためショートが発生しない。
【0058】
次に、図3及び図4に示す両ウォッシャーともオフの状態から、第1回転ノブ11をRccw方向に回転可能な最大位置まで回転操作すると、同じくリア・ウォッシャーがオン状態となる。このときの車両用レバー・スイッチの電極基板31と接点可動部41、51の側面図を図9に示す。又、図10に同じスイッチ状態の電極基板31とフロント・ウォッシャー接点可動部51とリア・ウォッシャー接点可動部41との立体構造を描いた斜視図を示す。
【0059】
図9及び図10では、フロント・ウォッシャー接点可動部51が右方向に位置して、フロント・ウォッシャーがオフ状態となっている。
【0060】
リア・ウォッシャー接点可動部41は、フロント・ウォッシャー係止係合部53によって動作を制限されることなく、第1回転ノブ11のRccw方向の回転により図9での下方向に移動してショートバー45がリア・ウォッシャー動作のための電極74aと74bに接して回路を導通状態にして、リア・ウォッシャーをオン状態(第2導通状態)とする。
【0061】
このリア・ウォッシャーオン状態で、レバー部19をQf方向に操作してフロント・ウォッシャーをオン状態にしようとしてもフロント・ウォッシャー接点可動部51のフロント・ウォッシャー係止係合部53の先端の係合面53bがリア・ウォッシャー接点可動部41のリア・ウォッシャー係止部46に当接して、これ以上図9での左側への動作を抑制しているために、第1ショートバー55は、電極32と電極33を、第2ショートバー56は、電極34と電極35を、第3ショートバー57は、電極36と電極37をそれぞれ導通させることができない。このため、フロント・ウォッシャーはオン状態(第1導通状態)となりえない。従って、フロント・ウォッシャーとリア・ウォッシャーが同時にオン状態になることがないためショートが発生しない。
【0062】
[実施例の効果]
本発明実施例の車両用レバー・スイッチ10の上記構成により、図1に示すフロント及びリア・ウォッシャーの回路構成において、フロント・ウォッシャーの動作をレバーの前後(Qf方向)操作、リア・ウォッシャーの動作を回転ノブの回転(Rcw方向又はRccw方向)操作にそれぞれ独立させても、フロント・ウォッシャースイッチ及びリア・ウォッシャースイッチが同時にオン状態になることを機械的に簡単に防ぐことが可能となり、ショートの発生を防止できる。
[その他]
本発明実施例においては、リア・ウォッシャーのスイッチが第1回転ノブ11の回転操作によりリア・ウォッシャー接点可動部41を動作させる構造について示したが、リア・ウォッシャーのスイッチは、例えば、図2でのP方向への揺動動作によりリア・ウォッシャー接点可動部41を動作させる構造であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 レバー・スイッチ
11 第1回転ノブ
12 第2回転ノブ
13 作動中心
14 基部
19 レバー部
31 電極基板
32,33,34,35,36,37 フロント・ウォッシャー電極
41 リア・ウォッシャー接点可動部(第2接点可動部)
42 リア・ウォッシャー係合部(第2係合部)
43 リア・ウォッシャー係合部(第2係合部)
44 リア・ウォッシャー係止部(第2係止部)
45 ショートバー
46 リア・ウォッシャー係止部(第2係止部)
48 係合片
49 係合リブ
51 フロント・ウォッシャー接点可動部(第1接点可動部)
52 フロント・ウォッシャー係止・係合部(第1係止部、第1係合部)
53 フロント・ウォッシャー係止・係合部(第1係止部、第1係合部)
55 第1ショートバー
56 第2ショートバー
57 第3ショートバー
59 長穴
71a,71b リア・ウォッシャー電極
72a,72b 間欠リア・ワイパー電極
73a,73b リア・ワイパー電極
74a,74b リア・ウォッシャー電極
91 フロント・ウォッシャー接点
93 リア・ウォッシャー接点
99 モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通回路のための複数の電極を上面に配した電極基板と、
前記電極基板上に配置されて一方向の動作により前記電極との第1導通状態又は非導通状態となる接点を有する第1接点可動部と、
前記電極基板上に配置されて前記一方向の交差方向への動作により前記電極との第2導通状態又は非導通状態となる接点を有する第2接点可動部とを有するスイッチであって、
前記第1接点可動部は、第1係止部と第1係合部とを有し、
前記第2接点可動部は、第2係止部と第2係合部とを有し、
前記第1係止部は、前記第1導通状態に有る場合は前記第2係合部と当接して前記第2接点可動部の前記交差方向の動作を制限し、
前記第2係止部は、前記第2導通状態に有る場合は前記第1係合部と当接して前記第1接点可動部の前記一方向の動作を制限して、前記第1接点可動部と前記第2接点可動部が同時に導通状態となることを禁止する
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチであって、
前記第1接点可動部の第1係止部は、前記第1接点可動部本体から前記第2接点可動部方向に延びる一対の突起物からなり、前記第1接点可動部は前記一方向の動作により前記第2接点可動部に近づいて前記第1導通状態となり、前記一対の突起物部の間に前記第2接点可動部の第2係合部を挟んで、前記第2接点可動部の交差方向の動作を制限し、
前記第2接点可動部は、前記交差方向の動作により導通状態となり、前記第2接点可動部の第2係止部は前記一対の突起物先端の第1係合部と当接して、前記第1接点可動部の一方向の動作を制限する
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスイッチであって、
前記第1接点可動部は、レバー・スイッチのレバーの操作に連動して前記一方向の動作を行い、
前記第2接点可動部は、回転ノブの回転操作に連動して前記交差方向の動作を行う
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のスイッチを有する、
ことを特徴とする車両用のレバー・スイッチ。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用のレバー・スイッチであって、
前記第1接点可動部は、フロント・ウォッシャーのオン・オフ制御のための接点可動部であり、
前記第2接点可動部は、リア・ウォッシャーのオン・オフ制御のための接点可動部である
ことを特徴とする車両用のレバー・スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−9120(P2011−9120A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152888(P2009−152888)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【Fターム(参考)】