説明

スイッチモジュール

【課題】長手方向のサイズが小さく、且つ厚さの薄い小型のスイッチモジュールを提供する。
【解決手段】入力操作時に、ベース部材20に対して押圧移動がそれぞれ可能な一対の第1操作部11及び第2操作部12と、両操作部の間に配置される第3操作部13とを有する操作部材10と、操作部材10の下側に設けられ、第1操作部11に押圧される第1接点31と、第2操作部12に押圧される第2接点32と、第3操作部13に押圧されるメタルドーム40を有するメタルドーム接点33と、を含む回路39を備えた単一の配線基板30と、操作部材10と配線基板30との間に設けられ、配線基板30の第1接点31と第2接点32にそれぞれ対向し、これら第1接点31と第2接点32の押圧移動に応じてそれぞれ接触及び離隔が可能な第1導電層62と第2導電層63とを備えたメタルドームシート60と、を有するスイッチモジュール1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のイヤホンやヘッドホンのケーブルに設けられ、複数の指令を受け付けることができる多機能のスイッチモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルに取り付けられ、メタルドームの接点形成用に2枚の基板を積層し、上層側の基板の両端部分に二つのメタルドームスイッチを設け、下層側の別の基板の中心部分に一つのメタルドームスイッチを設けた小型入力装置(In cable micro input devices)が知られている(特許文献1)。この入力装置では、三つのメタルドームを積層された2枚の基板に分散して設けることにより、多機能のスイッチでありながら入力装置の長手方向の小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第US2009/0122510号明細書 Fig.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、2枚の基板を積層し、メタルドームを異なる層に分散して設けるため、入力装置が厚くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、多機能のスイッチでありながら、長手方向のサイズを小さくするとともに、厚さも薄くして、スイッチモジュール全体の小型化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スイッチモジュールの入力操作時に、ベース部材に対して押圧移動がそれぞれ可能な一対の第1操作部及び第2操作部と、前記一対の第1操作部及び第2操作部の間に配置される第3操作部と、を有する操作部材と、前記操作部材の下側に配置されたベース部材に固定され、前記第1操作部に押圧される第1接点と、前記第2操作部に押圧される第2接点と、前記第3操作部に押圧されるメタルドームを有するメタルドーム接点と、を含む回路を備えた単一の配線基板と、前記操作部材と前記配線基板との間に設けられ、前記配線基板の前記第1接点に対向し、当該第1接点の押圧移動に応じて接触及び離隔が可能な第1導電層と、前記第2接点に対向し、当該第2接点の前記押圧移動に応じて接触及び離隔が可能な第2導電層とを備えたシート部材と、を有することを特徴とするスイッチモジュールを提供することにより、上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記第1接点、前記第2接点及びメタルドーム接点は、前記配線基板の同一の主面に形成することができる。
【0008】
上記発明において、前記配線基板は、前記第1接点の周囲の少なくとも一部の領域に設けられ、前記第1導電層側に延在する第1絶縁層と、前記第2接点の周囲の少なくとも一部の領域に設けられ、前記第2導電層側に延在する第2絶縁層とを有するように構成することができる。
【0009】
上記発明において、前記シート部材には、前記メタルドームを前記配線基板に固定する固定部を設けることができる。
【0010】
上記発明において、前記シート部材には、前記メタルドームの頭頂部を押圧する凸部を設けることができる。
【0011】
上記発明において、前記シート部材を、前記操作部材の押圧移動の方向に沿う弾性を有する部材で構成することができる。
【0012】
上記発明において、前記操作部材と前記配線基板との間に設けられ、前記操作部材の押圧移動の方向に沿う弾性を有する弾性部材をさらに設けることができる。
【0013】
上記発明に係るスイッチモジュールから出力された、前記第1接点及び前記メタルドーム接点のオン信号、前記第2接点及び前記メタルドーム接点のオン信号、又は前記第1接点、前記第2接点及び前記メタルドーム接点のオン信号のそれぞれに互いに異なる動作を対応づけ、前記各オン信号を受信したときに当該オン信号に対応づけられた動作を実行させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、入力操作時に押圧移動するシート部材に設けられた第1導電層と接触・離隔が可能な第1接点と、同じくシート部材に設けられた第2導電層と接触・離隔が可能な第2接点と、これら第1接点と第2接点との間に配置されたメタルドーム接点と、を含む回路を単一の配線基板に設けたので、複数の入力指令を受け付け可能な多機能スイッチでありながら、長手方向のサイズが小さく且つ厚さが薄い小型のスイッチモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスイッチモジュールを備えたイヤホン及び、イヤホンが装着される携帯型オーディオ装置を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るスイッチモジュールを示す斜視図である。
【図3】図2に示すスイッチモジュールの入力操作面側から見た分解斜視図である。
【図4A】配線基板の平面図である。
【図4B】絶縁層が形成された配線基板の平面図である。
【図5A】メタルドームシートの平面図である。
【図5B】メタルドームシートの背面図である。
【図5C】図5BのVC-VC線に沿う断面図(概要図)である。
【図6A】図2のVI-VI線に沿う断面図である。
【図6B】スイッチモジュールの動作を説明するための第1の断面図(図6Aに対応する図)である。
【図6C】スイッチモジュールの動作を説明するための第2の断面図(図6Aに対応する図)である。
【図7A】図2のVI-VI線に沿う断面図である。
【図7B】スイッチモジュールの他の動作を説明するための第1の断面図(図7Aに対応する図)である。
【図7C】スイッチモジュールの他の動作を説明するための第2の断面図(図7Aに対応する図)である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るスイッチモジュールを示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る配線基板の絶縁層が形成された配線基板の平面図である(第1実施形態の図4Bに相当する平面図)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
第1実施形態のスイッチモジュールは、携帯オーディオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯端末、携帯ゲーム機器、携帯電話などの電子機器のイヤホンやヘッドホンのケーブルに設けられ、メニューの送り・戻し操作、メニューの開始・停止・一時停止操作、ボリュームのアップ・ダウン操作、及びマイク機能のオンオフ操作などの複数の指令を受け付けることができる多機能の入力装置である。
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明に係る本実施形態のスイッチモジュールについて説明する。本実施形態では、携帯オーディオ装置のスイッチに、本発明に係るスイッチモジュールを適用した例を説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るスイッチモジュール1を備えるイヤホン200と、このイヤホン200が装着される携帯型オーディオ装置100を示す図である。図1に示すように、スイッチモジュール1はイヤホン200のコード203に取り付けられ、スイッチモジュール1から引き出されたコード203の一方側コード203aは出力部202bに接続し、他方側コード203bは携帯オーディオ装置100のジャック、出力部203bに接続している。スイッチモジュール1は、入力操作時に入力された信号を、携帯型オーディオ装置100又はイヤホン200の出力部202a,202bに送出することができる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係るスイッチモジュール1を示す斜視図である。
【0020】
図2に示すように、本実施形態のスイッチモジュール1は、ユーザからの入力を受け付ける入力操作面Aが形成された操作部材10と、後述する配線基板を支持するとともに、配線基板等を収容するための空間が形成された箱型のベース部材20とを有する。
【0021】
操作部材10は、ベース部材20の開口部を覆うように配置され、スイッチモジュール1のハウジングが構成される。また、操作部材10は、スイッチモジュール1の入力操作時における押圧操作(指でつまんで押す)及び押圧解除操作(指をはなす)に応じて、ベース部材20に対して接近・離隔する押圧移動が可能である。なお、本実施形態の操作部材10の第1操作部11、第2操作部12、第3操作部13の押圧移動は、上下動及び傾動などの押圧方向の成分を含む移動を含む。
【0022】
また、同図に示すように、本実施形態のスイッチモジュール1の操作部材10の入力操作面Aの両端部には一対の第1操作部11と第2操作部12が設けられ、さらに、これらの間であって、入力操作面Aの中央部には第3操作部13が設けられている。第1操作部11及び第2操作部12に対応する位置には、方向を指示する三角形の操作表示が示され、第3操作部13に対応する位置には、円形の操作表示が示されている。
【0023】
特に限定されないが、操作部材10及びベース部材20は、PC(Poly Carbonate)、ABS (Acrylonitrile Butadiene Styrene)、PBT (Poly Butylene Terephtalate)、PET (Poly Ethylene Terephthalate)などの絶縁性の樹脂材料を用い、一般的な樹脂成形技術により形成することができる。
【0024】
続いて、図3には、図1に示すスイッチモジュール1の入力操作面A側から見た分解斜視図を示す。
【0025】
図3に示すように、スイッチモジュール1の上面を形成する操作部材10と、この操作部材10とともにスイッチモジュール1のハウジングを構成するベース部材20の底面との間には、図3に示すz方向に沿って上面側から、弾性シート80と、メタルドームシート60と、メタルドーム40と、配線基板30と、マイク90とが配置されている。マイク90は必要に応じて配置する。
【0026】
入力操作がされる操作部材10の長辺に沿う縁部にはそれぞれ2対の係止部材10Fが設けられている。これら4つの係止部材10Fは、入力操作面Aの中心に対して点対称となる位置に設けられている。他方、ベース部材20の長辺に沿う内側壁には図示しない被係止部材が形成されている。操作部材10をベース部材20の開口部を覆うように配置し、ベース部材20に対して押しつけると、操作部材10の各係止部材10Fが被係止部材と係合し、操作部材10とベース部材20とを一体にすることができる。係合時において、係止部材10Fが、操作部材10とベース部材20との間に設けられた他の部材と干渉しないように、弾性シート80には係止部材10Fが挿入される位置に四つの孔80Fが型抜きされており、メタルドームシート60には係止部材10Fが挿入される位置に四つの切り欠き70Fが形成されており、同じく配線基板30にも同じ位置に四つの切り欠き30Fが設けられている。また、本実施形態では、操作部材10がベース部材20に対して所定量だけ押圧移動(接近・離隔)できるように、係止部材10Fと被係合部材とは所定の可動域を持たせて係合させている。
【0027】
なお、本例では、操作部材10に設けられた係止部材10Fの係止面が、被係止部材の係合面に当接して係止される例にして説明するが、係合部材及び被係合部材の態様は限定されず、切り欠きと、フックなどの組み合わせなどの通常用いられる機構を採用することができる。
【0028】
以下、本実施形態のスイッチモジュール1を構成する各部材について、それぞれ説明する。
【0029】
まず、配線基板30について説明する。配線基材30は、ベース部材20に固定されている。図4Aは配線基板30の平面図である。図4Aに示すように、本実施形態のスイッチモジュール1を構成する配線基板30は単一の基板で構成されている。また、本実施形態の配線基板30では、単一の基板の同一の主面に、第1接点31、第2接点32、及びメタルドーム接点33が形成されている。
【0030】
このように、単一の配線基板30の中央部にメタルドーム接点33を設け、その両端部には接触によりオン信号を出力する第1接点31と第2接点32を設けることにより、複数の信号を出力できる多機能スイッチを実現しつつ、スイッチモジュール1の長手方向のサイズを小さくするとともに、厚さも薄くすることができる。
【0031】
特に限定されないが、本実施形態における配線基板30は、柔軟性の無い、ガラスエポキシ基材などの絶縁性基材を準備し、この絶縁性基材の一方主面に、第1接点31、第2接点32及びメタルドーム接点33を含む所望のパターンの回路39を、エッチング技術により、又は銀、銅、カーボンなどの導電材を含む導電性ペーストを用いたスクリーン印刷やインクジェット印刷により形成することにより得ることができる。
【0032】
このように、単一の配線基板30の一方主面に第1接点31を構成する回路、第2接点32を構成する回路及びメタルドーム接点33を構成する回路を形成することにより、スイッチモジュール1を薄くすることができる。また、第1接点31の回路、第2接点32の回路を、メタルドームと接触する接点ではなく、後述する導電層62,63と面接触させるように構成するので、メタルドームが配線基板30同一主面に並ぶことがなく、長手方向の大きさを小さくすることができる。つまり、本実施形態では、配線基板30の一方主面に設けられる複数の接点のうち、メタルドーム40と接触するのは中央のメタルドーム接点33だけであり、他の2つの第1接点31及び第2接点はメタルドーム40と接触しない。
【0033】
本実施形態では、単一の配線基板30の一方主面側にメタルドーム40と導通可能なメタルドーム接点33が一つだけ設けられており、このメタルドーム接点33の両側に、対向する導電層62,63と面接触する第1接点31と第2設定32とが設けられているので、一回の入力操作(押圧移動)に対して一つのメタルドーム40が一回だけ反転させることができる。これにより、利用者が一回の入力操作(押圧移動)をした場合に、利用者にクリック感を一回だけ認識させることができる。この結果、利用者が誤操作や御認識をしにくい小型の多機能スイッチモジュール1を提供することができる。
【0034】
また、同一主面に、同一の処理(エッチング処理、印刷処理)により、第1接点31を構成する回路、第2接点32を構成する回路及びメタルドーム接点33を構成する回路を形成することができるので、作成が容易となり、製造コストを低減させることができる。
【0035】
ガラスエポキシ基板などのリジッド基板を用いるのは、入力操作時において操作部材10に入力された押圧力を分散させずに第1接点31、第2接点32、メタルドーム接点33に伝達し、電気的な動作を安定させるためである。これにより、ユーザは小さな力でスイッチモジュール10を操作でき、入力操作に呼応して得られるクリック感などの応答の感触を正確に知覚することができる。また、リジット基板を用いて配線基板30を構成することにより、他に補強板を設ける必要が無く薄化を図ることができる。
【0036】
さらに、同図に示すようにメタルドーム接点33の上にはメタルドーム40が配置されている。メタルドーム40は、ステンレスや銅系金属などの導電性及び可撓性を持つ材料で構成されている。メタルドーム40の形状は限定されないが、例えば、3〜6mm程度の直径、及び0.1〜0.4mm程度の高さのドーム形状の両端がカットされた小判型の形状である。このメタルドーム40は、頭頂部41自体が可動接点として機能し、頭頂部41が押圧されるとドーム形状が徐々に反転変形する一方で、頭頂部41への押圧が解除されると自己弾性により当初のドーム形状に復元するようになっている。このメタルドーム40は、後述するメタルドームシート60により配線基板30に固定される。メタルドーム40に代えて、タクトスイッチを用いることもできる。
【0037】
また、図4Bに示すように、配線基板30の第1接点31の周囲の少なくとも一部の領域には第1絶縁層51が設けられ、第2接点32の周囲の少なくとも一部の領域には第2絶縁層52が設けられている。また、メタルドーム接点33及びメタルドーム40の周囲の少なくとも一部の領域にも第3絶縁層53が形成することができる。
【0038】
第1絶縁層51、第2絶縁層52は、入力操作時に押圧移動する操作部材10側に延在する。つまり、配線基板30上に形成された第1絶縁層51と第2絶縁層52は入力操作の方向(図3のz方向)に沿って所定の高さを有する。この結果、第1接点31と第1絶縁層51の間、第2接点32と第2絶縁層52との境界には段差が形成され、第1接点31及び第2接点32の上面は、第1絶縁層51及び第2絶縁層52の上面よりも低くなっている。
【0039】
特に限定されないが、絶縁層51〜53はエポキシ樹脂やポリイミド樹脂をベースにしたカバーコートインクを用いて、スクリーン印刷により形成することができる。絶縁層51〜53の厚さは適宜設定することができる。絶縁層51〜53の高さは均一でなくてもよい。このように絶縁層51〜53をスクリーン印刷で形成すると、絶縁層51〜53をそれぞれ異なる厚さに形成することが可能となる。また、絶縁層51〜53は、一枚のポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(polyimide)などの可撓性を有する樹脂製シートから形成することも可能である。この場合は、樹脂製シートから第1接点31、第2接点32及びメタルドーム接点33に対応する領域を予め切り抜いて、配線基板30の上に接着剤を介して貼りつけて、絶縁層51〜53を形成することができる。
【0040】
ちなみに、絶縁層51〜53をカバーコートインクで構成すると、絶縁層51〜53を樹脂製シートで構成した場合のように、貼り付け時に必要な接着層の形成が不要となり、スイッチモジュール1の厚さをより薄くすることができる。また、絶縁層51〜53をカバーコートインクで構成すると、絶縁層51〜53を樹脂製シートで構成した場合のように、貼り付け時に精密な位置合わせが不要となり、製造コストを低減させることができる。また、樹脂製シートで構成した絶縁層51〜53を配線基板30に貼り合わせるときに生じる位置ずれによる不具合を防止することができる。
【0041】
先述したメタルドーム40は、メタルドームシート60により配線基板30に固定される。図5Aはメタルドームシート60の平面図であり、操作部材10側の第1面60Aを示す。図5Bはメタルドームシートの背面図であり、ベース部材20側の第2面60Bを示す。
【0042】
図5Aに示すように、メタルドームシート60の略中央部であって、メタルドーム40の頭頂部41に対向する位置には、操作部材10側に凸状となる凸部70が設けられている。入力操作時において、操作部材10がベース部材20に対して押しつけられると、凸部70がメタルドーム40の頭頂部41を押圧し、メタルドーム40のドーム形状を徐々に反転変形させる。凸部70の形状は限定されないが、力を受ける面が特定されない略球形などの曲面を有する形状にすることが好ましい。また、凸部70は、メタルドームシート60の表裏何れの面に形成してもよいが、メタルドーム60と接しない面に形成することが好ましい。略球体の凸部70をメタルドーム60と接しない面に設けることにより、操作部材10が押圧移動したときに押圧力を効率的にメタルドーム40に伝達することができる。これにより、利用者が良好なクリック感を感じさせることができ、電気的動作を安定させることができる。
【0043】
なお、凸部70は、操作部材10の配線基板30側の面に設けることも可能であるが、この場合には、入力操作時の操作部材10の動きによっては、凸部70がメタルドーム40の頭頂部41からずれてしまう場合があるが、メタルドーム40を固定するメタルドームシート60に形成しておけば、凸部70がメタルドーム40の頭頂部41からずれてしまうことがなく、凸部70は必ずメタルドーム40の頭頂部41を押圧することができる。
【0044】
また、図5Bに示すように、メタルドームシート60の略中央領域には、固定部61が設けられている。固定部61にはアクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤等の粘着層が形成されている。固定部61の粘着層がメタルドーム40を保持しつつ、このメタルドーム40が貼り付けられていない部分の粘着層が配線基板30に付着してメタルドーム40を配線基板30に固定する。
【0045】
また、図5Bに示すように、メタルドームシート60の第2面60Bの右端部及び左端部には、第1導電層62と第2導電層63とが設けられている。第1導電層62と第2導電層63とが設けられた本実施形態のメタルドームシート60は、本発明のシート部材に相当する。なお、特に限定されないが、第1導電層62と第2導電層63は、銀ペーストやカーボンペーストをスクリーン印刷などで形成することができる。
【0046】
このように、一方側の第1主面60Aにはメタルドーム40を押圧する凸部70が形成され、第2主面60にはメタルドームを固定する固定部61と第1導電層62と第2導電層63が形成されているので、別途第1導電層62及び第2導電層63用の基板を準備する必要がない。この結果、スイッチモジュール1をさらに薄くすることができる。このように、メタルドーム40を固定するためには必須の部材であるメタルドームシート60に、メタルドーム40の押し子、第1導電層62及び第2導電層63を形成するので、スイッチモジュール1の製造に必要な部材品数を減らすことができ、製造コストを低減することができる。
【0047】
このメタルドームシート60は、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)などの合成樹脂材料から構成されるシート材料を母材とすることができる。また、メタルドームシート60を、弾性を有する樹脂材料とすることができる。こうすることで、メタルドームシート60に後述する弾性シート80の機能を兼ね備えさせることができる。
【0048】
また、特に限定されないが、凸部70は、紫外線硬化樹脂を印刷し、その後硬化させることにより形成することができる。凸部70を、第1導電層及び第2導電層63と同様にスクリーン印刷工程で形成することにより、製造設備のコストも低減させることができる。
【0049】
図5A及び図5Bで説明したメタルドームシート60を、図4Bに示す絶縁層50が形成された配線基板30のメタルドーム40の上から貼りつけることにより、メタルドーム40を配線基板30に固定することができる。メタルドーム40の固定時には、凸部70がメタルドーム40の頭頂部41の中心と重なるようにメタルドームシート60をメタルドーム40及び配線基板30の第3絶縁層53に貼りつけることが好ましい。これにより、メタルドーム40の頭頂部41と操作部材10の間に凸部70を配置することができ、入力操作時において操作部材10に与えられた押圧力を、凸部70を介してメタルドーム40の頭頂部41に効率的に伝達することができる。
【0050】
図5Cは、図4Bの配線基板30に設けられたメタルドーム40の上にメタルドームシート60をセットした場合の、VC-VC線に沿う断面図である。固定されたメタルドームシート60は、配線基板30の主面よりも高い位置にある絶縁層50の上面と接しており、メタルドームの第2面60Bに設けられた第1導電層62、第2導電層63は、第1接点31、第2接点32と対向しつつも、所定の距離(絶縁層50の高さ分)だけ離隔した状態となっている。図5Cに示すように、第1導電層62は、配線基板30の第1接点31に対向し、入力操作時における押圧移動に応じて第1接点31と接触及び離隔が可能である。
【0051】
同図に示すように、無負荷時においては、第1導電層62は第1接点31と接していない。他方、入力操作によって操作部材10に押圧力が付与された場合には、第1導電層62を備えるメタルドームシート60が第1接点31側に押しつけられ、図5Cに破線で示すように、第1導電層62の下側面が第1接点31に接する。なお、第2導電層63については図示をしないが、第1導電層62と同様に、配線基板30の第2接点32に対向し、入力操作時における押圧移動に応じて第2接点32と接触及び離隔が可能である。
【0052】
また、メタルドームシート60の上層側(図2のz方向に沿う上側)には、操作部材10の押圧移動の方向(図2のz方向)に沿う弾性(復元性)を有する所定厚さの弾性シート80が設けられている。本実施形態の弾性シート80には、メタルドーム40の頭頂部41を含む領域と、係止部材10Fを貫通させるための領域とが除去されている。他方、本実施形態の弾性シート80は、第1導電層62及び第2導電層63を押圧するために、これらと対向する領域、及び操作部材10の縁部に沿う領域を有している。
【0053】
特に限定されないが、本実施形態の弾性シート80としては、絶縁性又は導電性の弾性を備えたシート材料を用いることができる。
【0054】
このように弾性シート80を操作部材10と第1導電層62、第2導電層63との間に配置することによって、入力操作時に操作部材10の第1操作部11を指でつまんで押圧すると、弾性シート80が圧縮しつつ第1導電層62を第1接点31に押しつけ、オン信号を得ることができる。そして、指を離して押圧を止めると、弾性シート80が復元しつつ、第1導電層62を第1接点31から離隔させてオフ信号を得ることができる。このように、入力操作時に操作部材10の押圧移動に伴って、弾性シート80が圧縮又は復元するので、接点に対する電気的動作を安定させることができる。第1導電層62及び第2導電層63が設けられたメタルドームシート60の上に、このメタルドームシート60とは別に配置される弾性シートは、本願発明の弾性部材に対応する。
【0055】
弾性シート80を操作部材10の縁部とベース部材20の縁部に沿って配置することによって、操作部材10とベース部材20との間の隙間を埋めて、外部からスイッチ内部が見えないようにして美観を向上させるとともに、隙間から塵や埃が進入することを防ぐことができる。
【0056】
また、本実施形態では、係止部材10Fが操作部材10の可動領域を確保した状態でベース部材20の被係止部と係合させるので、操作部材10とベース部材20との間に隙間ができるが、弾性シート80が操作部材10を押し上げるので、操作部材10がベース部材20に対してガタつくことを防止することができる。
【0057】
本実施形態の弾性シート80は所定厚さのシートに抜き加工をするだけで得ることができ、この弾性シート80を操作部材10とベース部材20との間に挟みこむことにより、上記の効果を得つつ操作部材10の押圧移動を補助することができるので、スイッチモジュール1の部品点数を少なくすることができ、組み立て時の工数を削減することができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0058】
ちなみに、本実施形態では、第1導電層62と第2導電層63をメタルドームシート60に形成する例を説明したが、第1導電層62と第2導電層63を弾性シート80のメタルドーム40側に向いた面に形成することも可能である。このように、第1導電層62と第2導電層63とが設けられた実施形態における弾性シート80は、本発明のシート部材に相当する。この場合も、先述の例と同様に、銀ペーストやカーボンペーストをスクリーン印刷などで形成することができる。この場合は、図5Bに示すメタルドームシート60の第1導電層62と第2導電層63を除去し、弾性シート80に形成した第1導電層62と第2導電層63が配線基板30の第1接点31と第2接点32にそれぞれ対向するようにする。
【0059】
また、弾性シート80の材料としては、導電性のシリコンスポンジや導電性ウレタンスポンジなどを用いることができる。弾性シート80が導電性を備える場合には、メタルドームシート60に第1導電層62と第3導電層63を形成しなくても、弾性シート80が第1導電層62と第2導電層63を備えることができる。このように、第1導電層62と第2導電層63の機能を備えた導電性の弾性シート80は、本発明のシート部材に対応する。
【0060】
以上の各構成を用いて、以下の方法によって、本発明の実施形態に係るスイッチモジュール1を得る。
【0061】
まず、操作部材10及びベース部材20を、ABS (Acrylonitrile Butadiene Styrene)などの樹脂材料を一般的な樹脂成型技術により成形する。
【0062】
並行して、ガラスエポキシ樹脂などの剛性のある基板を準備する。そして、基板の主面に金属箔を形成し、一般的なエッチング技術により所定領域を除去し、第1接点31、第2接点32、メタルドーム接点33を含む回路を形成する。または基板導電性ペーストを用いて第1接点31、第2接点32、メタルドーム接点33を含む回路をスクリーン印刷で形成する。さらに、第1接点31を取り囲む第1絶縁層51、第2接点32を取り囲む第2絶縁層52、メタルドーム接点33及びメタルドーム40を取り囲む第3絶縁層53を、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂をベースにしたカバーコートインクを用いてスクリーン印刷により形成する。配線基板30は箱型のベース部材20の収容部に収容する。なお、必要に応じてマイク90を先に配線基板30に実装しておく。
【0063】
そして、準備した小判型のメタルドーム40を、その頭頂部41がメタルドーム接点33と対向する位置に配置する。
【0064】
並行して、メタルドームシート60を作製しておく。ポリエチレンテレフタレート(PET)などの絶縁シートをメタルドーム40と、第1接点31及び第2接点32とを覆う形状に型抜きする。そして、メタルドームシート60の一方主面の略中央にメタルドーム40の頭頂部領域に相当する円形領域に紫外線硬化樹脂を印刷し、紫外線を照射して略球形の凸部70を形成する。また、メタルドームシート60の他方主面のメタルドーム40と対向する部分にはシリコーン系粘着剤等の粘着層を有する固定部61を形成するとともに、第1接点31及び第2接点32を覆う第1導電層62と第2導電層63を、カーボンペーストを用いてスクリーン印刷により形成する。
【0065】
配線基板30の上に配置されたメタルドーム40の頭頂部41と凸部70とが対向するようにメタルドームシート60を、メタルドーム40の上から被せ、固定部61によりメタルドーム40を配線基板30に固定する。
【0066】
そして、シリコーン樹脂シート等を所定形状に型抜きした弾性シート80を、メタルドームシート60の上に積層する。
【0067】
最後に、操作部材10をベース部材20の開口部を覆うようにセットし、押圧方向(図3のz方向)に沿って押圧する。すると、操作部材10に設けられた係止部材10Fがベース部材20に設けられた被係止部材と係合する。
【0068】
続いて、図6A〜図6Cに基づいて、本発明に係る実施形態のスイッチモジュール1の作用を説明する。
【0069】
図6Aは図2のVI-VI線に沿う断面図、図6Bはスイッチモジュールの作用を説明するための第1の断面図(図6Aに対応する図)、図6Cはスイッチモジュールの作用を説明するための第2の断面図(図6Aに対応する図)である。
【0070】
図6Aに示すように、操作部材10に対して負荷が与えられていない(入力操作がされていない)場合には、メタルドーム40は元々の形状を保ち、メタルドーム40とメタルドーム接点33とは非接触の状態である。また、この状態においては、図5Cに示すように、第1接点31と第1導電層62は離隔しており、第2接点32と第2導電層63も離隔している。
【0071】
図6Bは、第1操作部11の近傍に、比較的弱い押圧力X1を印加した場合の状態を示す。図6Bに示すように、メタルドーム40は元々の形状を保ち、メタルドーム40とメタルドーム接点33とは非接触の状態である。また同図に示すように、第1操作部11の近傍(端部)を押圧すると、反対側の第2操作部12の近傍(端部)がベース部材20から離隔する。この状態においては、第1接点31と第1導電層62が接触し、第2接点32と第2導電層63は離隔している。
【0072】
なお、第1接点31と第1導電層62が接触する状態は独立の図面で示さないが、操作部材10の押圧移動に伴い、弾性シート80が圧縮され、圧縮された弾性シート80を介してメタルドームシート60が押下されると、メタルドームシート60の裏面側である第2面60Bに形成された第1導電層62が配線基板30に押しつけられ、第1導電層62の下面(第1接点31と接触する面)は図5Cに破線で示した位置に移動する。この状態において、第1接点31と第1導電層62が接触し、オン信号が出力される。第2接点32と第2導電層63との接触も同様である。
【0073】
図6Cは、第1操作部11の近傍に、比較的強い押圧力Y1(X1<Y1)を印加した場合の状態を示す。図6Cに示すように、メタルドーム40は頭頂部41が潰れて変形し、メタルドーム40とメタルドーム接点33とは接触した状態である。また同図に示すように、第1操作部11の近傍(端部)を強く押圧すると、反対側の第2操作部12の近傍(端部)がベース部材20からさらに離隔する。この状態においては、図5Cに示す第1接点31と第1導電層62が接触し、第2接点32と第2導電層63は離隔している。
【0074】
図6B、図6Cに示すように、第1操作部11(又は第2操作部12)を押圧すると、メタルドーム40の頭頂部41に設けられた凸部70が支点として機能し、操作部材10がシーソーのように動くので、他端側の第2操作部12(又は第1操作部11)がベース部材20内の配線基板30から離隔する方向に移動する。これにより、入力操作時においては、第1接点31と第2接点32の何れか一方のみが第1導電層62又は第2導電層63と導通し、一つのオン信号を出力するので、利用者の誤操作を防止することができる。
【0075】
なお、本実施形態のスイッチモジュール1は、第2操作部12に押圧力X1を印加した場合は図6Bと同様に動作し、第2操作部12に押圧力Y1を印加した場合は図6Cと同様に動作する。
【0076】
本実施形態のスイッチモジュール1から出力された信号は、イヤホン200のコネクタ201を介して携帯オーディオ装置100へ出力される。
【0077】
本実施形態の携帯オーディオ装置100は、特に限定されないが、第1接点31及びメタルドーム接点33のオン信号、第2接点32及びメタルドーム接点33のオン信号、又は第1接点31、第2接点32及びメタルドーム接点33のオン信号のそれぞれに互いに異なる動作を対応づけて記憶し、各オン信号を受信したときにこのオン信号に対応づけられた動作を実行する。
【0078】
つまり、本実施形態の携帯オーディオ装置100は、第1接点31のオン信号だけでは動作を実行せず、加えてメタルドーム接点33のオン信号が取得された場合に対応する動作を実行する。具体的には、図6Bの比較的弱い押圧力X1が印加された状態では動作を実行せず、さらに比較的強い押圧力Y1が印加された状態で動作を実行する。携帯オーディオ装置100の利用者が、スイッチモジュール1の端(第1操作部11、第2操作部12)を指でつまんで押圧を開始しても、すぐには動作が実行されない。利用者がさらに押圧する力を強めると、このときに対応づけられた動作が実行される。動作が実行されるような入力操作をした場合には、利用者はメタルドーム40が反転するクリック感を得ることができる。つまり、利用者はクリック感によって、自己の入力操作が有効(実行される)か否かを認識することができる。
【0079】
本実施形態のスイッチモジュール1においては、第1接点31を第1導電層62に接触させる(又は第2接点32を第2導電層63に接触させる)ための荷重を、メタルドーム接点33とメタルドーム40とを導通させるための荷重よりも低く設定している。本実施形態のスイッチモジュール1では、第1接点31と第2接点32をメタルドームスイッチではなく、接点接触型のスイッチで構成したので、弱い押圧力でも導通してしまう場合がある。このため、利用者が操作の意思なく接点を押してしまった場合にも、音楽再生などの動作を開始してしまう場合がある。このため、本実施形態では、第1接点31と第1導電層62の接触(又は第2接点32と第2導電層63の接触)のみでは機能を実行させずに、さらに、メタルドーム接点33とメタルドーム40とを導通させるための荷重を、第1接点31と第1導電層62とを導通させるための荷重よりも高く設定したので、利用者が操作の意思を持たずに接点を(弱く)押してしまった場合を識別し、そのような場合には動作を開始させないようにした。
【0080】
さらに、入力操作時に操作部材10の第3操作部13を押圧した場合の動作を図7A〜図7Cに基づいて説明する。図7Aは図2のVI-VI線に沿う断面図、図7Bはスイッチモジュールの他の作用を説明するための第1の断面図(図7Aに対応する図)、図7Cはスイッチモジュールの他の作用を説明するための第2の断面図(図7Aに対応する図)である。
【0081】
図7Aは図6Aと同じように、操作部材10に対して負荷が与えられていない(入力操作がされていない)場合を示す図である。メタルドーム40は元々の形状を保ち、メタルドーム40とメタルドーム接点33とは非接触の状態である。
【0082】
図7Bは、第3操作部11の近傍に、比較的弱い押圧力X2を印加した場合の状態を示す。図7Bに示すように、メタルドーム40は元々の形状を保ち、メタルドーム40とメタルドーム接点33とは非接触の状態である。この状態においては、第1接点31と第1導電層62が接触するとともに、第2接点32と第2導電層63も接触している。
【0083】
図7Cは、第3操作部13の近傍に、比較的強い押圧力Y2(X2<Y2)を印加した場合の状態を示す。図7Cに示すように、メタルドーム40は頭頂部41が潰れて変形し、メタルドーム40とメタルドーム接点33とは接触した状態である。この状態においては、第1接点31と第1導電層62が接触するとともに、第2接点32と第2導電層63も接触している。
【0084】
図7B、図7Cに示すように、第3操作部13を押圧すると、操作部材10がベース部材3側に平行移動するので、第1操作部11及び第2操作部12が配線基板30から接近する方向に移動する。これにより、入力操作時においては、第1接点31と第2接点32が第1導電層62又は第2導電層63と導通するとともに、メタルドーム接点33がメタルドームと40と導通した信号を出力する。
【0085】
先述した例と同様に、本実施形態のスイッチモジュール1から出力された信号は、イヤホン200のコネクタ201を介して携帯オーディオ装置100へ出力される。
【0086】
第1接点31、第2接点32及びメタルドーム接点33のオン信号には、第1接点31及びメタルドーム接点33のオン信号、第2接点32及びメタルドーム接点33のオン信号とは異なる動作が対応づけられているので、利用者は操作部材10の中心部分を強く押すことにより、特定の指令を入力することができる。
【0087】
各信号は、携帯オーディオ装置100において互いに異なる所定機能を実現する実行命令と予め対応づけられており、取得された各信号に応じて携帯オーディオ装置100の所定の機能が実行される。例えば、利用者は、操作部材10の第1操作部11、第2操作部12、又は第3操作部13を押圧し、プログラムリストの表示、スクロール、選択されたプログラムの実行(再生)、停止、一時停止、送り、戻し、又はボリュームの調節などの異なる機能を実行させることができる。
【0088】
本実施形態の携帯オーディオ装置100は、第1接点31及び第2接点32のオン信号だけでは動作を実行せず、加えてメタルドーム接点33のオン信号が取得された場合に対応する動作を実行する。具体的には、図7Bの比較的弱い押圧力X2が印加された状態では動作を実行せず、さらに比較的強い押圧力Y2が印加された状態で動作を実行する。つまり、携帯オーディオ装置100の利用者が、スイッチモジュール1の中心を指でつまんで押圧を開始してもすぐには動作が実行されない。利用者がさらに押圧する力を強め、利用者がメタルドーム40の反転したときのクリック感を得たら、対応づけられた動作が実行される。このため、利用者は自身の入力操作が認識しやすく、それが携帯オーディオ装置100側に認識されたか否かを確認することができる。
【0089】
ところで、従来の多機能のスイッチのように、一度の入力操作により押圧力が付与されるメタルドームが複数あると、利用者が特定の一つのメタルドームを押圧しようとしたにもかかわらず、複数のメタルドームがオン状態になってしまい、誤動作が生じる場合がある。特に小型のスイッチモジュールでは利用者が特定のメタルドームとともに他のメタルドームを押してしまうといった誤操作も起こり易い。これに対して、本実施形態のスイッチモジュール1は、一対の導電層62、63と、その間に一つのメタルドームとを配置したので、多機能のスイッチを実現するための複数の接点を備えながらも、誤動作及び誤操作を防ぐことができる。
【0090】
また、利用者が特定の一つのメタルドームを押圧しようとしたにもかかわらず、複数のメタルドームが反転してしまうと、利用者は複数回のクリック感を感知することになり、自分の入力操作とクリック感が一致せずに、違和感を覚える場合がある。これに対して、本実施形態のスイッチモジュール1では、一対の導電層62、63の間に一つだけメタルドーム40を設けたので、第1操作部11を押圧しても、第2操作部12を操作しても、また第3操作部13を操作しても、単一のクリック感が得られるので、安定した応答(クリック感)に基づいて、入力操作を行うことができる。
【0091】
<第2実施形態>
図8は本発明の第2実施形態に係るスイッチモジュール1を示す斜視図、図9は、本発明の第2実施形態に係る配線基板の絶縁層が形成された配線基板の平面図である(第1実施形態の図4Bに相当する平面図)。
【0092】
図8に示すように、本実施形態のスイッチモジュール1の操作部材10及びベース部材20の平面形状が、4つの角部を有するひし形状である。第2実施形態のスイッチモジュール1は、第1実施形態のものと接点の数及び配置が異なるが、基本的な構成及び作用は共通する。ここでは、異なる点を中心に説明する。
【0093】
同図に示すように、操作部材10の各角部には、第1操作部11、第2操作部12、第4操作部14、第5操作部15が配置されている。また、第1操作部11と第2操作部12の中心位置であり、かつ第4操作部14と第5操作部15の中心位置には、第3操作部13が設けられている。
【0094】
また、図9に示すように、配線基板30には、第1操作部11に押圧される第1接点31、第2操作部12に押圧される第2接点32、第3操作部13に押圧されるメタルドーム接点33、第4操作部14に押圧される第4接点34、第5操作部15に押圧される第5接点35が設けられている。図示はしないが、配線基板30の上に積層されるメタルドームシート60には、第1接点31に対向する第1導電層、第2接点32に対向する第2導電層、メタルドーム接点33に対向する第3導電層、第4接点34に対向する第4導電層、第5接点35に対向する第5導電層が形成されている。
【0095】
第2実施形態の第1接点31、第2接点32及びメタルドーム接点33に関する動作は、第1実施形態の対応する構成のものと共通する。また、第2実施形態の第4接点34、第5接点35及びメタルドーム接点33は、第1実施形態の第1接点31、第2接点32及びメタルドーム接点にそれぞれ対応し、これらの動作は共通する。
【0096】
例えば、第4操作部14(又は第5操作部15)を押圧すると、図6A〜図6Cに示すように、メタルドーム40の頭頂部41に設けられた凸部70を支点として操作部材10がシーソーのように動くので、他端側の第5操作部15(又は第4操作部14)がベース部材20内の配線基板30から離隔する方向に移動する。これにより、入力操作時においては、第4接点34と第5接点35の何れか一方のみが第4導電層又は第5導電層と導通し、一つのオン信号を出力する。この結果、スイッチモジュール1側の誤動作、及び利用者の誤操作を防止することができる。
【0097】
その他の点においても、第2実施形態のスイッチモジュール1は、第1実施形態のスイッチモジュール1と共通の作用を奏し、共通の効果を奏する。
【0098】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0099】
100…携帯オーディオ装置、電子機器
200…イヤホン
201…コネクタ
202a,202b…イヤホン
203a,203b…コード
1…スイッチモジュール
10…操作部材
11…第1操作部、12…第2操作部、13…第3操作部、14…第4操作部、15…第5操作部
10F…係止部材
20…ベース部材
30…配線基板
31…第1接点、32…第2接点、33…メタルドーム接点、34…第4接点、35…第5接点
39…回路(31〜35の接点を含む)
40…メタルドーム
41…頭頂部
50…絶縁層
51…第1絶縁層、52…第2絶縁層
60…メタルドームシート、シート部材
61…固定部
62…第1導電層(導電層)
63…第2導電層(導電層)
70…凸部
80…弾性シート、シート部材
90…マイク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチモジュールの入力操作時に、ベース部材に対して押圧移動がそれぞれ可能な一対の第1操作部及び第2操作部と、前記一対の第1操作部及び第2操作部の間に配置される第3操作部と、を有する操作部材と、
前記操作部材の下側に配置されたベース部材に固定され、前記第1操作部に押圧される第1接点と、前記第2操作部に押圧される第2接点と、前記第3操作部に押圧されるメタルドームを有するメタルドーム接点と、を含む回路を備えた単一の配線基板と、
前記操作部材と前記配線基板との間に設けられ、前記配線基板の前記第1接点に対向し、前記押圧移動に応じて前記第1接点と接触及び離隔が可能な第1導電層と、前記第2接点に対向し、前記押圧移動に応じて第2接点との接触及び離隔が可能な第2導電層とを備えたシート部材と、を有することを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチモジュールであって、
前記第1接点、前記第2接点及びメタルドーム接点は、前記配線基板の同一の主面に形成されたことを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチモジュールであって、
前記配線基板は、前記第1接点の周囲の少なくとも一部の領域に設けられ、前記第1導電層側に延在する第1絶縁層と、前記第2接点の周囲の少なくとも一部の領域に設けられ、前記第2導電層側に延在する第2絶縁層とを有することを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項4】
請求項1に記載のスイッチモジュールであって、
前記シート部材は、前記メタルドームを前記配線基板に固定する固定部を有すること特徴とするスイッチモジュール。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチモジュールであって、
前記シート部材は、前記メタルドームの頭頂部を押圧する凸部を有することを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項6】
請求項1に記載のスイッチモジュールであって、
前記シート部材は、前記操作部材の押圧移動の方向に沿う弾性を有する部材であることを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項7】
請求項1に記載のスイッチモジュールであって、
前記操作部材と前記配線基板との間に設けられ、前記操作部材の押圧移動の方向に沿う弾性を有する弾性部材をさらに有することを特徴とするスイッチモジュール。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のスイッチモジュールから出力された、前記第1接点及び前記メタルドーム接点のオン信号、前記第2接点及び前記メタルドーム接点のオン信号、又は前記第1接点、前記第2接点及び前記メタルドーム接点のオン信号のそれぞれに互いに異なる動作を対応づけ、前記各オン信号を受信したときに当該オン信号に対応づけられた動作を実行することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−54068(P2012−54068A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194936(P2010−194936)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】