スイッチング素子基板
【課題】本発明は、低比誘電率かつ高OD値を達成することが可能な樹脂製遮光部を有し、画素部の面積が大きく、かつ、液晶表示装置に用いた場合に、コンタクトホール内における画素電極の断線を好適に防止することが可能なスイッチング素子基板およびこれを用いた液晶表示装置を提供することを主目的とする。
【解決手段】基材と、上記基材上に形成されたスイッチング素子と、上記基材上に設けられた画素部と、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部と、上記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層とを有し、上記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、上記断線防止層が、上記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されていることを特徴とするスイッチング素子基板を提供することにより、上記目的を達成する。
【解決手段】基材と、上記基材上に形成されたスイッチング素子と、上記基材上に設けられた画素部と、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部と、上記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層とを有し、上記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、上記断線防止層が、上記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されていることを特徴とするスイッチング素子基板を提供することにより、上記目的を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低比誘電率かつ高OD値を有する樹脂製遮光部を備え、画素部の面積が大きく、かつ液晶表示装置に用いた場合に、コンタクトホール内に形成された画素電極の断線等が生じにくい高品質なスイッチング素子基板、およびこれを用いた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄層トランジスタ(以下、TFTと称して説明する。)等のアクティブ素子を用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置は、薄型、軽量、高画質等の特長を有することから、近年、益々その需要が高まっており、開発が奨励されている。
【0003】
アクティブマトリックス型液晶表示装置の構成としては、通常、TFT素子を有するTFT基板と、TFT素子のドレイン電極と接続させて形成される画素電極と、TFT基板と対向するように配置される対向基板と、TFT基板および対向基板の間に配置される液晶層と、上記画素電極との間に電圧を印加して液晶を駆動させるための電界を生じさせる共通電極とを有するものである。なお、共通電極および液晶層の配置については、液晶表示装置に用いられる液晶の駆動方式等によって異なるものであり、例えばTN(Twisted Nematic)方式、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)方式等の縦電界方式で液晶を駆動させる液晶表示装置においては、共通電極は対向基板上に配置され、液晶層は画素電極および共通電極の間に配置される。また、例えば、IPS(In-Plane Switching)方式、FFS(Fringe Field Switching)方式等の横電界方式で液晶を駆動させる液晶表示装置においては、共通電極は、TFT基板上に配置され、液晶層は、共通電極および対向基板の間に配置される。
また、上記アクティブマトリックス型液晶表示装置を用いてカラー表示を行う場合には、従来から、カラーフィルタが上記対向基板側に配置されて用いられている。
【0004】
上記カラーフィルタは、所望のカラー画像を表示するための複数の画素部と上記画素部を区画する遮光部とを有するものである。
ここで、TFT基板はTFT素子による表面段差を有するものであり、上記表面段差によって液晶層の液晶が配向不良を起こすことにより、液晶層から光漏れが生じてしまうという問題がある。そのため、上記カラーフィルタの遮光部は、上述した光漏れを防止およびTFT素子を遮光するため、TFT素子上にも配置されるものである。
【0005】
上述したように、上記カラーフィルタは対向基板側に配置されるものであることから、上記カラーフィルタの遮光部と上記TFT基板のTFT素子との位置ずれを考慮して遮光部の線幅が決定されるため、TFT素子の幅よりも遮光部の線幅が大きくなる場合が多く、画素部の面積、すなわち遮光部の開口部の開口率を十分に高いものとすることが困難であるといった問題があった。
【0006】
上記問題に対して、最近では、TFT基板側にカラーフィルタが形成されたTFT基板が提案されている(例えば特許文献1等)。TFT基板においては、TFT素子上に直接遮光部を形成することが可能であることから、上述した位置ずれを考慮しなくてもよく、対向基板側に配置されるカラーフィルタに比べて、遮光部の線幅を狭く形成することが可能であり、画素部が設けられる遮光部の開口部の開口率を高いものとすることが可能となる。
【0007】
ここで、TFT基板における遮光部は、TFT素子上に形成されるものであることから、遮光部の比誘電率が高い場合は、TFT素子の各電極と画素電極とがショートしてしまう場合や、TFT素子が誤作動を起こす可能性が考えられる。また、液晶分子の配向を均一にするため高電圧を必要とし、消費電力が増加する傾向にある。よって、遮光部は低比誘電率であることが求められる。また、上述した光漏れを防止し、かつTFT素子を遮光するためには、OD値が3.0以上の高い遮光性を有することが求められる。
また、TFT基板における遮光部としては、通常、バインダー樹脂に遮光性材料を分散させた樹脂製遮光部が用いられる。
【0008】
しかしながら、上記樹脂製遮光部においては、通常、高い遮光性を付与するためにカーボン顔料が好適に用いられており、樹脂製遮光部の材料中のカーボン顔料の濃度を高くした場合は、所望のOD値は示すものの、比誘電率が高くなってしまい、樹脂製遮光部の材料中のカーボン顔料の濃度を低くした場合は、所望の低比誘電率は示すものの、OD値が低くなってしまうといった問題があった。そのため、低比誘電率かつ高OD値を示す樹脂製遮光部を達成することが可能となるように樹脂製遮光部の材料の処方を調整することは困難であるといった問題があった。
【0009】
なお、上述の説明においては、カーボン顔料を例に挙げて説明したが、カーボン顔料以外の遮光性材料を用いた場合においても、同様に、低比誘電率かつ高OD値を示す樹脂製遮光部の材料の処方を調整することは困難であるといった問題があった。
【0010】
ところで、TFT基板においては、TFT素子のドレイン電極と画素電極とを接続させるために、コンタクトホールを形成することが必要であり、上記コンタクトホールはTFT基板の任意の位置に形成することが可能であるが、画素部の面積をより大きくする目的から、上記樹脂製遮光部上に形成することが試みられている(特許文献2)。また、上記コンタクトホールにおいては、その縦断面形状が垂直形状、または逆テーパー形状である場合は、コンタクトホールの側面に形成される画素電極の厚みが薄く形成されるため断線してしまったり、またはコンタクトホールの側面に画素電極自体を形成することが困難となるといった問題が生じる場合があるため、コンタクトホールの縦断面形状としては、順テーパー形状であることが好ましい。
また、上述したコンタクトホールの縦断面形状は、通常、樹脂製遮光部をフォトリソグラフィー法を用いて形成する際の露光量、加熱条件等により制御されるものである。
【0011】
なお、上述の説明においては、スイッチング素子としてTFT素子を用いたTFT基板における問題点について述べたが、TFT素子以外のスイッチング素子を用いたスイッチング素子基板においても同様の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−237621号公報
【特許文献2】特開2000−162643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、上記実情に鑑みて、樹脂製遮光部の比誘電率およびOD値を調整する新たな方法として、樹脂製遮光部の比誘電率については、樹脂製遮光部の材料中の遮光性材料の濃度を低くすることで調整し、樹脂製遮光部の遮光性については、樹脂製遮光部の膜厚を厚膜とすることで調整する方法を試みた。しかしながら、この方法においては、樹脂製遮光部が厚膜になることから、樹脂製遮光部をフォトリソグラフィー法を用いて形成する際に、樹脂製遮光部の材料からなる樹脂製遮光部形成用層の内部まで十分に露光光が到達せず、樹脂製遮光部形成用層の表面および内部における露光時の硬化度に差を生じてしまうため、露光後の焼成工程においては、加熱による樹脂製遮光部形成用層の収縮度が樹脂製遮光部形成用層の表面と内部とで異なってしまうことから、焼成工程後に得られる樹脂製遮光部表面にシワが生じてしまうといった問題があった。なお、樹脂製遮光部表面にシワを生じた場合は、樹脂製遮光部上に形成される他の層の表面状態が悪化するため、液晶表示装置にスイッチング素子基板を用いた場合に、例えば液晶層の配向不良の原因となる場合がある。
【0014】
そこで、本発明者らは、シワを生じさせないような樹脂製遮光部の形成について検討し、以下の手順で遮光部の形成を試みた。
すなわち、フォトリソグラフィー法を用いた樹脂製遮光部の形成方法において、一次露光として、樹脂製遮光部形成用層を所望のパターン状に現像可能な程度に露光し、一次露光後に樹脂製遮光部形成用層を現像し、さらに現像した樹脂製遮光部形成用層に二次露光として、上述した一次露光よりも露光量を多くして、樹脂製遮光部形成用層全体が硬化するように露光を行う。次いで二次露光後の樹脂製遮光部形成用層を焼成することにより、樹脂製遮光部を形成する。
【0015】
しかしながら、上述した手順による樹脂製遮光部の形成方法においては、二次露光時に樹脂製遮光部形成用層が現像後の形状を保持した状態で硬化し、焼成時においてはその形状がほぼ変化しないまま樹脂製遮光部が形成される。
また、現像時においては、樹脂製遮光部形成用層の端部が垂直状、または遮光部表面よりも遮光部の内部の方がより現像されて逆テーパー状となることが多い。そのため、樹脂製遮光部にコンタクトホールを形成した場合は、コンタクトホールの縦断面が垂直形状または逆テーパー形状になってしまうといった問題があった。
【0016】
上述した樹脂製遮光部を低比誘電率および高OD値を有するものとするための新たな調整方法における上述の問題点について、本発明者らはさらに鋭意検討を重ねた結果、従来の樹脂製遮光部の形成方法においては樹脂製遮光部の形成工程で同時に行われていたコンタクトホールの縦断面形状の制御を別工程で行うこと、すなわち、樹脂製遮光部を形成した後に断線防止層を設けることでコンタクトホールの縦断面形状を所望の形状に成形することを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0017】
すなわち、本発明は、低比誘電率かつ高OD値を達成することが可能な樹脂製遮光部を有し、画素部の面積が大きく、かつ、液晶表示装置に用いた場合に、コンタクトホール内における画素電極の断線を好適に防止することが可能なスイッチング素子基板、および、これを用いた液晶表示装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、基材と、上記基材上に形成されたスイッチング素子と、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部と、上記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層とを有し、上記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、上記断線防止層が、上記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されていることを特徴とするスイッチング素子基板を提供する。
【0019】
本発明によれば、断線防止層を有することにより、コンタクトホール内の画素電極が形成される部分については、その縦断面形状を順テーパー形状とすることができるため、画素電極の断線を好適に防止することが可能となる。また、上記断線防止層を用いて、コンタクトホールの縦断面形状を制御することが可能となるため、カーボン顔料等の遮光性材料の濃度の低い遮光部の材料を用いて厚膜に形成され、コンタクトホールの縦断面形状が垂直形状または逆テーパー形状の樹脂製遮光部を用いることができる。よって、低比誘電率かつ高OD値を有する樹脂製遮光部を備えたスイッチング素子基板とすることができる。
また、本発明によれば、樹脂製遮光部にコンタクトホールを有することから、コンタクトホールを画素部に設ける場合に比べて、画素部の面積を大きなものとすることが可能であり、優れた画像表示を行うことが可能なスイッチング素子基板とすることができる。
【0020】
本発明においては、上記樹脂製遮光部の比誘電率が7以下であり、かつ上記樹脂製遮光部のOD値が3以上であることが好ましい。上記樹脂製遮光部の比誘電率およびOD値が上記数値とすることにより、本発明のスイッチング素子基板をより高性能なものとすることが可能である。
【0021】
本発明においては、上記スイッチング素子基板が上記基材上に設けられた画素部を有し、上記断線防止層が、上記画素部に形成される着色層と同一材料から形成されていることが好ましい。本発明においては、スイッチング素子基板が画素部を有していることが好ましいところ、上記断線防止層を上記画素部に形成される上記着色層とを同一材料を用いて同時に形成することにより、本発明のスイッチング素子基板を製造する際の工程数を少なくすることができ、かつ、製造コストについても削減することが可能となるため、生産性に優れたスイッチング素子基板とすることができる。
【0022】
本発明は、基材、上記基材上に形成されたスイッチング素子、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部、および上記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層を有し、上記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、上記断線防止層が、上記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されているスイッチング素子基板と、対向基板と、上記スイッチング素子基板および上記対向基板の間に配置された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0023】
本発明によれば、上記スイッチング素子基板を有することから、上記スイッチング素子に用いられる電極と接続させるためにコンタクトホール内に形成される画素電極の断線を好適に防止することが可能である。また、スイッチング素子基板に形成された樹脂製遮光部を低比誘電率かつ高OD値を有するように調整することが可能であるため、スイッチング素子の誤作動等を防止することができ、優れた画像表示を行うことが可能な液晶表示装置とすることができる。さらに、スイッチング素子基板の画素部の面積を大きなものとすることが可能であることから、優れた画像表示を行うことが可能な液晶表示装置とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスイッチング素子基板は、断線防止層を有することにより、上記画素電極が形成されるコンタクトホールの側面については順テーパー形状とすることが可能となるため、コンタクトホール内における画素電極の断線の発生を好適に防止することができるといった作用効果を奏する。
また、断線防止層を有することから、樹脂製遮光部の形成後に、樹脂製遮光部に形成されたコンタクトホールの形状を所望の形状に成形することが可能となるため、樹脂製遮光部の材料及び形成方法を調整して、低比誘電率かつ高OD値の樹脂製遮光部を有するものとすることができるといった作用効果を奏する。
また、樹脂製遮光部上にコンタクトホールを形成することが可能となるため、画素部の面積を大きなものとすることができるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のスイッチング素子基板の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略図である。
【図5】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略図である。
【図8】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のスイッチング素子基板および液晶表示装置について説明する。
【0027】
A.スイッチング素子基板
まず、本発明のスイッチング素子基板について説明する。
本発明のスイッチング素子基板は、基材と、上記基材上に形成されたスイッチング素子と、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子に用いられる電極(以下、スイッチング素子電極と称して説明する場合がある。)上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部と、上記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層とを有し、上記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、上記断線防止層が、上記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
なお、本発明において「コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状である」とは、コンタクトホールのスイッチング素子側の開口の大きさが、スイッチング素子側とは反対側の開口の大きさと同等以上であることを指し、基材表面とコンタクトホールの側面とのなす角が90°以下であることを指す。なお、基材表面とコンタクトホールの側面とのなす角とは図1(c)においてθ1で示される角を指す。
また、「断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となる」とは、基材表面とコンタクトホールの側面に形成された断線防止層の表面とのなす角が91°以上、好ましくは、91°〜160°の範囲内、より好ましくは100°〜140°の範囲内となることを指す。なお、基材表面とコンタクトホールの側面に形成された断線防止層の表面とのなす角とは図1(c)においてθ2で示される角を指す。また、図1(c)については後述するため、ここでの説明は省略する。
【0029】
なお、上述した角度(図1(c)におけるθ1、θ2)は、例えば、電子顕微鏡(3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡 VE−9800;キーエンス社製)によって測定可能である。
【0030】
ここで、本発明のスイッチング素子基板について図を用いて説明する。図1(a)は本発明のスイッチング素子基板の概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図であり、図1(c)は図1(b)のコンタクトホール部分の拡大図である。
図1(a)、(b)に示すように、本発明のスイッチング素子基板10は、基材1と、基材1上に形成されたスイッチング素子2と、スイッチング素子2上に形成され、スイッチング素子電極(ドレイン電極25)上にコンタクトホールHを有する樹脂製遮光部4と、コンタクトホールHの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層5とを有するものである。
なお、図1(b)においてはスイッチング素子2がTFT素子2’である例について示しており、TFT素子2’は、ゲート電極21と、ゲート電極21上に形成されたゲート絶縁膜22と、ゲート絶縁膜22上に形成された半導体層23と、半導体層23上に所定の間隔をあけて対向するように形成されたソース電極24およびドレイン電極25とを有するものである。
また、本発明においては、基材1上に設けられた画素部3(図1(a)では赤色画素部3R、緑色画素部3G、および青色画素部3B)を有していてもよい。また、画素部3には、通常、着色層が形成されている。
また、図1に示すスイッチング素子基板10においては、スイッチング素子2と、樹脂製遮光部4および画素部3に形成される着色層の間に第1絶縁層31が設けられていてもよい。
【0031】
また、図1(c)に示すように、本発明においては、コンタクトホールHの縦断面形状が垂直形状または逆テーパー形状(図1(c)では順テーパー形状)、すなわち、基材1表面とコンタクトホールHの側面とのなす角θ1が90°以下であり、かつ、断線防止層5の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状、すなわち、基材1表面とコンタクトホールHの側面に形成された断線防止層5表面とのなす角θ2が上述した角度以上となることを特徴とするものである。
【0032】
図2は、本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。また、図3は、本発明のスイッチング素子基板を用いた液晶表示装置の一例を示す概略断面図であり、液晶表示装置が、MVA方式の液晶表示装置である例について示している。図1に示すスイッチング素子基板10は、通常、図2に示すように、コンタクトホールH内でTFT素子2’のドレイン電極25と接続するように、画素電極40が形成されるものである。また、図3に示すように、MVA方式等の縦電界方式の液晶表示装置100においては、画素電極40が形成されたスイッチング素子基板10が用いられる。
なお、図2において説明していない符号については、図1(b)と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、図3については、後述する「B.液晶表示装置」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
【0033】
またここで、本発明のスイッチング素子基板の他の例について図を用いて説明する。図4(a)は本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略平面図であり、図4(b)は図4(a)のB−B線断面図である。
図4(a)、(b)に示すように、本発明のスイッチング素子基板10は、TFT素子2’のドレイン電極25上に形成されたコンタクトホールHの他にもコンタクトホールH’を有していてもよい。なお、図4(a)、(b)におけるコンタクトホールH’は、基材1上に形成されたコモン電極51上に設けられるものである。
なお、図4(a)、(b)において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0034】
図5は、本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。また、図6は、本発明のスイッチング素子基板を用いた液晶表示装置の一例を示す概略断面図であり、液晶表示装置が、FFS方式の液晶表示装置である例について示している。図4(a)、(b)に示すスイッチング素子基板10は、通常、図5に示すように、コンタクトホールH内でTFT素子2’のドレイン電極25と接続するように画素電極40が形成され、コンタクトホールH’内でコモン電極51と接続するように共通電極50が形成されるものである。また、画素電極40および共通電極50の間には、通常、第2絶縁層32が形成される。また、図6に示すように、FFS方式等の横電界方式の液晶表示装置100においては、画素電極40および共通電極50が形成されたスイッチング素子基板10が用いられる。
なお、図5において説明していない符号については、図1(b)、図2等と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、図6については、後述する「B.液晶表示装置」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
【0035】
本発明は、樹脂製遮光部の比誘電率およびOD値の調整方法として、樹脂製遮光部の材料中の遮光性材料の濃度を低くすることにより比誘電率を所望の値まで下げ、かつ樹脂製遮光部の膜厚を厚膜にすることにより樹脂製遮光部のOD値を所望の値まで上げる方法を見出したこと、また、断線防止層を用いることにより、従来においては樹脂製遮光部の形成時に同時に行われていたコンタクトホールの縦断面形状の制御を、別工程で行うことを見出したことに大きな特徴を有するものである。
【0036】
すなわち、本発明によれば、断線防止層を有することにより、コンタクトホール内の画素電極が形成される部分については、その縦断面形状を順テーパー形状とすることができるため、画素電極の断線を好適に防止することが可能となる。また、上記断線防止層を用いて、コンタクトホール内の形状を制御することが可能となるため、遮光性材料の濃度の低い樹脂製遮光部の材料を用いて厚膜に形成され、コンタクトホールの縦断面形状が垂直形状または逆テーパー形状の樹脂製遮光部を用いることができる。よって、低比誘電率かつ高OD値を有する樹脂製遮光部を備えたスイッチング素子基板とすることができる。
また、本発明によれば、樹脂製遮光部にコンタクトホールを有することから、コンタクトホールを画素部に設ける場合に比べて、画素部の面積を大きなものとすることが可能であり、優れた画像表示を行うことが可能なスイッチング素子基板とすることができる。
【0037】
以下、本発明のスイッチング素子基板の各構成について説明する。
【0038】
1.断線防止層
本発明における断線防止層は、コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成されるものであり、断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されるものである。
また、上記断線防止層は、絶縁性を有するものである。
【0039】
また、本発明においては、通常、コンタクトホールの側面を覆うように形成される断線防止層とコンタクトホールの端部を覆うように形成される断線防止層とは連続的に形成されているものである。
【0040】
(1)断線防止層の構造
本発明における断線防止層の形成位置としては、コンタクトホール内でスイッチング素子電極と画素電極とを接続させることができる位置であれば特に限定されず、本発明のスイッチング素子基板の用途に応じて適宜選択されるものである。
例えば図1(a)、(b)に示すように、コンタクトホールHの側面の全ておよびコンタクトホールHの端部の全てを覆うように形成されていてもよく、また例えば図7(a)、(b)に示すように、コンタクトホールHの側面の一部およびコンタクトホールHの端部の一部を覆うように形成されていてもよい。
なお、図7(a)は、本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略平面図であり、図7(b)は図7(a)のC−C線断面図である。また、図7(a)、(b)において説明していない符号については図1(a)、(b)と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0041】
また、本発明においてスイッチング素子電極上以外にもコンタクトホールが形成される場合は、スイッチング素子電極上のコンタクトホール以外のコンタクトホールにも断線防止層を形成することができる。
【0042】
また、上述した場合において、2つのコンタクトホールが隣接する場合は、図4(a)、(b)に示すように、2つのコンタクトホールH、H’の側面およびその端部を覆うように断線防止層5を連続して形成してもよく、図示はしないが、個々のコンタクトホールに応じて断線防止層を形成してもよいが、連続して形成することがより好ましい。これにより、スイッチング素子基板の製造工程を簡便なものとすることができるからである。
【0043】
また、断線防止層の樹脂製遮光部上の形成位置としては、コンタクトホールの側面に形成された断線防止層と連続して樹脂製遮光部のコンタクトホール側の端部に形成することが可能な位置であれば特に限定されず、断線防止層に用いられる材料等により適宜選択することができる。
【0044】
また、断線防止層の厚みとしては、コンタクトホールの側面および端部に形成される断線防止層の縦断面形状を所望の順テーパー形状とすることでき、かつ、コンタクトホールを塞がない程度の厚みであれば特に限定されない。
【0045】
また、基材表面とコンタクトホールの側面に形成された断線防止層表面とのなす角(図1(c)におけるθ2)の角度としては、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、コンタクトホール内に形成される画素電極に断線を生じさせない程度の角度であれば特に限定されず、上述した角度以上であれば特に限定されない。より具体的には、基材表面とコンタクトホールの側面に形成された断線防止層の表面とのなす角の角度が、91°〜160°の範囲内、なかでも100°〜150°の範囲内、特に110°〜140°の範囲内であることが好ましい。上記角度が上記範囲に満たない場合は、垂直形状に近い形状となることから、断線防止層を形成したとしても、コンタクトホール内の画素電極の断線を十分に防止することが困難となる場合があるからである。また、上記角度が上記範囲を超える場合は、コンタクトホール側面に断線防止層自体を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0046】
(2)断線防止層
本発明における断線防止層は、絶縁性を有するものである。
【0047】
このような断線防止層としては、具体的には、樹脂材料からなるものを用いることができる。なお、樹脂材料については、一般的な液晶表示装置における樹脂製部材に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0048】
ここで、本発明における断線防止層としては、本発明のスイッチング素子基板に用いられる樹脂製部材と同一材料からなるものであることが好ましい。上記樹脂製部材と同時に断線防止層を形成することができることから、本発明のスイッチング素子基板の製造工程を簡便なものとすることができ、製造効率の高いものとすることが可能である。また、別途、断線防止層に用いられる樹脂材料を準備しなくてもよいことから、製造コストについても削減することが可能となり、安価なスイッチング素子基板を提供することが可能となる。
【0049】
このような樹脂製部材としては、例えば、必要に応じて設けられる画素部に用いられる着色層や、柱状スペーサ、およびオーバーコート層等を挙げることができる。
以下、図を用いて説明する。
【0050】
本発明においては、例えば図8に示すように、断線防止層5が、画素部3に用いられる着色層と同一材料を用いて形成されていることが好ましい。本発明においては、スイッチング素子基板10が画素部3を有していることが好ましいところ、断線防止層5を画素部3に用いられる着色層とを同一材料を用いて同時に形成することが可能となることから、スイッチング素子基板10を製造する際の工程数を少なくすることができ、かつ、製造コストについても削減することが可能となるため、生産性に優れたスイッチング素子基板10とすることができる。
樹脂製遮光部4上に有色の断線防止層5を積層することが可能となることから、樹脂製遮光部の遮光性をより高いものとすることができる。
なお、着色層については、後述するため、ここでの説明は省略する。
【0051】
また、本発明においては、例えば、図9に示すように、断線防止層5が、柱状スペーサ6と層一材料を用いて形成されたものであってもよく、また例えば図10に示すように、断線防止層5がオーバーコート層7と同一材料を用いて形成されたものであってもよく、図示はしないが、柱状スペーサ、オーバーコート層、および断線防止層が同一材料を用いて形成されたものであってもよい。
なお、柱状スペーサおよびオーバーコート層については、後述するため、ここでの説明は省略する。
【0052】
2.樹脂製遮光部
本発明における樹脂製遮光部は、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子電極上にコンタクトホールを有するものである。
【0053】
(1)樹脂製遮光部の構造
本発明における樹脂製遮光部の構造について説明する。
【0054】
(i)コンタクトホール
本発明におけるコンタクトホールは、樹脂製遮光部から構成され、その縦断面形状が垂直形状または逆テーパー形状であるものである。
【0055】
コンタクトホールの開口の平面視上の形状としては、上述した断線防止層を形成することが可能であり、かつ画素電極をコンタクトホール内に形成して、スイッチング素子電極と接続させることが可能となるような形状であれば特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、多角形状等を挙げることができる。
【0056】
本発明におけるコンタクトホールのスイッチング素子側の開口の大きさとしては、上述した断線防止層および画素電極を形成して、スイッチング素子電極と接続させることが可能となる形状であれば特に限定されるものではないが、5μm〜40μmの範囲内、なかでも10μm〜30μmの範囲内、特に10μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。上記開口の大きさが上記範囲に満たない場合は、上述した断線防止層を形成した後、画素電極とスイッチング素子電極とを接続させることが困難となる場合があるからであり、上記開口の大きさが上記範囲を超える場合は、樹脂製遮光部にコンタクトホールを形成することが困難となり、さらにスイッチング素子の遮光が困難となる可能性があるからである。
【0057】
本発明におけるコンタクトホールのスイッチング素子側とは反対側の開口の大きさとしては、上述した断線防止層を形成することが可能であり、かつ、上記画素電極をコンタクトホール内に形成してスイッチング素子電極と接続させることが可能であれば特に限定されないが、5μm〜40μmの範囲内、なかでも10μm〜30μmの範囲内、特に10μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。上記開口の大きさが上記範囲に満たない場合は、断線防止層や画素電極の形成時に、上記開口を塞いでしまい、コンタクトホール内に十分に断線防止層や画素電極を形成することが困難となる可能性があるからであり、上記開口の大きさが上記範囲を超える場合は、コンタクトホールが大きくなることから、樹脂製遮光部の形成面積が小さくなるため、遮光性に欠ける場合があるからである。
【0058】
基材表面とコンタクトホールの側面とのなす角(図1(c)におけるθ1)としては、断線防止層を配置することにより順テーパー形状とすることができる程度の角度であれば特に限定されないが、90°以下、なかでも90°〜50°の範囲内、特に80°〜60°の範囲内であることが好ましい。上記角度を上記範囲内とすることにより、断線防止層を形成することによる、画素電極の断線防止効果をより高く発揮することが可能である。
なお、本発明におけるコンタクトホールのテーパー角度の下限値としては、50°程度とすることができる。上記テーパー角度が上記下限値を下回る場合は、遮光層と断線防止層の間に空間を形成しやすくなるため、パネル不良の原因となる可能性があるからである。また、樹脂製遮光部にコンタクトホールを形成することが困難となる場合や、コンタクトホールのテーパー部分に断線防止層を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0059】
上記コンタクトホールの深さとしては、断線防止層を形成することが可能であり、かつ画素電極とスイッチング素子電極とを接続させることが可能な程度の深さであれば特に限定されず、後述する樹脂製遮光部の厚みと同等とすることができる。
【0060】
また、上記コンタクトホールは、スイッチング素子に用いられる電極上に設けられるものである。このようなコンタクトホールの形成位置としては、スイッチング素子に用いられる電極と、画素電極とをコンタクトホールを介して接続させることが可能な位置であれば特に限定されず、スイッチング素子の種類に応じて適宜選択される。コンタクトホールが形成される電極としては、例えば、TFT素子、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)素子、酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)素子等のドレイン電極、またはソース電極を挙げることができる。
【0061】
(ii)樹脂製遮光部の構造
本発明における樹脂製遮光部は、スイッチング素子上に形成され、上述したコンタクトホールを有するものである。また、本発明における樹脂製遮光部は、通常、基材上にも形成され、後述する画素部を区画するために用いられるものである。
また、本発明における樹脂製遮光部は、低比誘電率かつ高OD値を示すことを特徴とするものである。
【0062】
本発明における樹脂製遮光部の比誘電率としては、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、スイッチング素子の各々の電極と画素電極とのショートが生じず、良好な画像表示を行うことが可能な程度とすることが可能であれば特に限定されないが、7以下、なかでも、3〜6の範囲内、特に3〜5の範囲内であることが好ましい。本発明における樹脂製遮光部は、スイッチング素子上に形成されるものであることから、上記比誘電率が上記範囲を超える場合は、スイッチング素子が誤作動を起こしたり、スイッチング素子の各電極と画素電極とが短絡してしまう可能性があるからである。
また、上記樹脂製遮光部の比誘電率の下限値としては、3程度とすることができる。上記比誘電率が上記下限値を下回る場合、樹脂製遮光部が所望の遮光性を示すことが困難となる可能性があるからである。
なお、樹脂製遮光部の比誘電率については、誘電体測定システム(126096W型、東陽テクニカ製)によって測定可能である。
【0063】
また、本発明における樹脂製遮光部の遮光性としては、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、光漏れ等を生じることがない程度であれば特に限定されない。具体的には、樹脂製遮光部のOD値が、3.0以上、なかでも3.0〜6.0の範囲内、特に3.5〜5.0の範囲内であることが好ましい。上記樹脂製遮光部の遮光性が上記範囲に満たない場合は、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、光漏れ等を防止することが困難となる場合があるからである。
また、上記樹脂製遮光部のOD値の上限値としては、特に限定されるものではないが、6.0程度とすることができる。本発明における樹脂製遮光部は、遮光性を付与するために遮光性材料を含有するものであることから、上記OD値が上記範囲を超える場合は、樹脂製遮光部の比誘電率が所望の値よりも大きくなる可能性や、樹脂製遮光部自体の膜厚が大きくなるため、樹脂製遮光部の形成が困難となったり、本発明のスイッチング素子基板を薄膜なものとすることが困難となる場合があるからである。
なお、樹脂製遮光部のOD値は、マクベス反射濃度計(サカタインクス社製「RD−914」)で測定可能である。
【0064】
上記樹脂製遮光部のパターン形状としては、上述したスイッチング素子電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部を形成することが可能であり、かつ後述する画素部を区画することが可能であれば特に限定されず、スイッチング素子の形成位置、および画素部のパターン配列等に応じて適宜選択することができる。
【0065】
本発明の樹脂製遮光部の線幅としては、上記スイッチング素子上に形成することが可能であり、液晶表示装置に用いた場合に、液晶層の液晶の配向乱れにより生じる光漏れを防止することが可能であり、着色層が形成される画素部の開口率を向上させることが可能であれば特に限定されず、本発明のスイッチング素子基板の用途等により適宜選択することができる。
【0066】
上記樹脂製遮光部の厚みとしては、樹脂製遮光部に十分な遮光性を付与することが可能であり、かつ、上述したコンタクトホールを設けることが可能な厚みであれば特に限定されないが、2.0μm〜10.0μmの範囲内、なかでも2.5μm〜8.0μmの範囲内、特に3.0μm〜6.0μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上記範囲に満たない場合は、樹脂製遮光部に十分な遮光性を付与することが困難となる可能性があるからである。さらに電気容量が大きくなるためにスイッチング素子の誤作動を招く可能性がある。また、上記厚みが上記範囲を超える場合は、樹脂製遮光部を形成することが困難となる場合や、コンタクトホールを形成困難となる場合や、本発明のスイッチング素子基板を薄膜に形成することが困難となる場合があるからである。
【0067】
(2)樹脂製遮光部の材料
本発明の樹脂製遮光部は、絶縁性を有するものである。
このような樹脂製遮光部の材料としては、通常、遮光性材料と、バインダー樹脂とを含有するものである。
【0068】
上記バインダー樹脂としては、一般的なカラーフィルタの樹脂製遮光部に用いることが可能な樹脂であれば特に限定されないが、感光性樹脂であることが好ましい。また、感光性樹脂層としては、ポジ型感光性樹脂であってもよく、ネガ型感光性樹脂であってもよい。
【0069】
本発明に用いられる遮光性材料としては、樹脂製遮光部に所望の比誘電率を保持して所望の遮光性を付与することが可能な材料であれば特に限定されない。
このような遮光性材料としては、例えば、カーボン顔料、黒色の無機顔料、黒色の有機顔料等を挙げることができ、より具体的には、チタンブラック(三菱マテリアル電子化成社製)、ペリレンブラック(PBk31、BASF社製)、アニリンブラック等を挙げることができる。なお、上述した遮光材料は、1種類のみで用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本発明においては、なかでもカーボン顔料を用いることが好ましい。樹脂製遮光部に所望の遮光性を付与することが可能となるからである。また、カーボン顔料は樹脂製遮光部に多量に含有されている場合は、比誘電率が高くなることから樹脂製遮光部中の濃度を低くする必要があり、所望のOD値を達成するために、樹脂製遮光部の膜厚を厚膜にする必要がある。したがって、カーボン顔料を用いた樹脂製遮光部は厚膜に形成する必要があることから、コンタクトホールの形状が垂直形状、または逆テーパー形状となりやすいため、本発明における断線防止層による効果を大きく発揮することが可能となるからである。
【0071】
また、上記遮光性材料の含有量としては、樹脂製遮光部材料の色材全量100質量部に対して、20質量部以下、なかでも3質量部〜15質量部の範囲内、特に5質量部〜10質量部の範囲内であることが好ましい。カーボン顔料の含有量が上記範囲に満たない場合は、本発明における樹脂製遮光部に所望の遮光性を付与することが困難となる可能性があるからであり、カーボン顔料の含有量が上記範囲を超える場合は、本発明における樹脂製遮光部の比誘電率が高くなる可能性があるからである。
【0072】
また、本発明における樹脂製遮光部の材料としては、上述したバインダー樹脂、遮光性材料の他にも必要な成分を適宜選択することができる。
【0073】
例えば、本発明における樹脂製遮光部の材料としては、上述した遮光性材料以外にも、無機顔料や有機顔料等を添加することが好ましい。本発明における樹脂製遮光部の遮光性をより高いものとすることが可能となるからである。なお、添加される無機顔料や有機顔料等としては、例えば後述する着色層に用いられる各色の顔料等を挙げることができる。
【0074】
また、本発明においては、上述の樹脂製遮光部の材料に、光重合開始剤、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、および難燃剤等を添加することができる。
【0075】
(4)樹脂製遮光部の形成方法
本発明の樹脂製遮光部の形成方法としては、スイッチング素子基板のスイッチング素子に用いられる電極上に、上述したコンタクトホールを有し、かつ所望の比誘電率およびOD値を有する樹脂製遮光部を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。
例えば、次のような形成方法を用いて形成することができる。
【0076】
まず、形成される樹脂製遮光部の比誘電率および樹脂製遮光部の遮光性を考慮して、樹脂製遮光部の材料の処方を決定し、上述した樹脂製遮光部の材料を含む樹脂製遮光部用組成物を調製する。次に、樹脂製遮光部用組成物をスイッチング素子基板のスイッチング素子側表面に、形成される樹脂製遮光部が所望の遮光性を有することが可能な程度の厚みで塗布し、樹脂製遮光部形成用層を形成する。次に、金属マスク等を用いて樹脂製遮光部形成用層を所望のパターン状にパターニング可能な程度の露光量で一次露光を施し、一次露光後に現像処理を施して樹脂製遮光部形成用層のパターニングを行う。次に、パターニングされた樹脂製遮光部形成用層に上記一次露光における露光量よりも多量の露光量で樹脂製遮光部形成用層を露光して、樹脂製遮光部形成用層全体を光硬化させる。
次に、上述した樹脂製遮光部形成用層に焼成処理を施すことにより樹脂製遮光部を形成する。
【0077】
3.スイッチング素子
本発明におけるスイッチング素子は、基材上に形成されるものである。
【0078】
本発明におけるスイッチング素子としては、所望のスイッチ機能を有するものであれば特に限定されず、本発明のスイッチング素子基板の用途に応じて適宜選択されるものである。具体的には、TFT素子、絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ(IGBT)、酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)等を挙げることができる。本発明においては、なかでもTFT素子であることが好ましい。
【0079】
以下、TFT素子について説明する。
TFT素子は、図1(b)に例示するように、ゲート電極21と、ゲート電極21上に形成されたゲート絶縁膜22と、ゲート絶縁膜22上に形成された半導体層23と、半導体層23上に所定の間隔をあけて対向するように形成されたソース電極24およびドレイン電極25とを有しており、画素電極4はドレイン電極25と接続されている。
【0080】
TFT素子としては、特に限定されるものではなく、用いられる液晶表示装置の種類に応じて適宜選択され、例えば、a−Si TFT構造を有するものであってもよく、p−Si TFT構造を有するものであってもよい。a−Si TFT構造を有するTFT素子の場合、正スタガ型(トップゲート構造)および逆スタガ型(ボトムゲート構造)のいずれであってもよい。また、逆スタガ型の場合、チャネルエッチ型およびチャネルプロテクト型のいずれであってもよい。一方、p−Si TFT構造を有するTFT素子の場合、プレーナ型およびスタガ型のいずれであってもよい。
【0081】
4.基材
本発明における基材は、上述した、断線防止層、樹脂製遮光部、画素部に用いられる着色層、およびスイッチング素子を支持するものである。
【0082】
上記基材としては、一般的なスイッチング素子基板に用いられる基材と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0083】
5.その他の構成
本発明のスイッチング素子基板は、上述した断線防止層、樹脂製遮光部、画素部、スイッチング素子、および基材を有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な構成を適宜選択して追加することができる。
以下、このような構成について説明する。
【0084】
(1)画素部
本発明においては、スイッチング素子基板が画素部を有することが好ましい。
本発明における画素部は、基材上に設けられるものである。また、上記画素部には着色層が形成されているものである。また、上記画素部は、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた際に、画像表示に寄与する領域を指す。
【0085】
本態様に用いられる画素部のパターンとしては、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、画像表示を行うことができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタに用いられる画素部のパターンと同様とすることができ、具体的には、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知の配列とすることができる。また、画素部面積は任意に設定することができる。
【0086】
また、上記画素部に形成される着色層としては、通常、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層が用いられるが、上述した色以外の着色層を用いてもよい。
【0087】
上記着色層の厚みとしては、上記スイッチング素子基板を用いて良好な画像表示を行うことができる程度の厚みであれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタの画素部に用いられる着色層の厚みと同様とすることができる。
【0088】
上記着色層の材料としては、一般的なカラーフィルタの画素部に用いられる着色層の材料と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
(2)第1絶縁層
また、本発明においては、図1(b)に示すように、スイッチング素子2と、着色層3および樹脂製遮光部4との間に第1絶縁層31を形成してもよい。
第1絶縁層31を形成することにより、スイッチング素子2の誤作動をより効果的に防止することができ、かつスイッチング素子2の劣化を防止することが可能である。
【0090】
上記第1絶縁層の材料としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されず、一般的なスイッチング素子基板に用いられる絶縁層の材料と同様とすることができる。具体的には、SiNx、SiOx等を用いることができる。
【0091】
また、第1絶縁層の膜厚、形成方法等については、一般的なスイッチング素子基板に用いられる絶縁層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0092】
(3)画素電極
本発明のスイッチング素子基板は、図2および図5に示すように、液晶表示装置に用いられる際に併用される画素電極40が形成されていてもよい。
【0093】
画素電極の材料としては、一般に液晶表示素子の画素電極として用いられているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム錫(IZO)等が好ましく用いられる。
【0094】
画素電極のパターン形状等としては、本発明のスイッチング素子基板が用いられる液晶表示装置の用途等に応じて適宜選択して決定することができる。
【0095】
また、画素電極の形成方法としては、一般的な液晶表示装置に用いられる画素電極の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
(4)コモン電極および共通電極
本発明のスイッチング素子基板が、IPS方式、FFS方式等の横電界方式の液晶表示装置に用いられる場合は、図5に示すように、コモン電極51および共通電極50を有していてもよい。
【0097】
上記コモン電極の材料としては、一般的なIPS方式の液晶表示装置やFFS方式の液晶表示装置に用いられるコモン電極の材料と同様とすることができ、例えば、Al、AlNd、Mo、Cu等の金属を用いることができる。
【0098】
上記共通電極の材料としては、一般的なIPS方式の液晶表示装置やFFS方式の液晶表示装置に用いられているものであれば特に限定されず、上述した画素電極と同様の材料からなるものを用いることができる。
【0099】
上記コモン電極および共通電極のパターン形状等としては、本発明のスイッチング素子基板が用いられる液晶表示装置の用途等に応じて適宜選択して決定することができる。
【0100】
また、共通電極の形成方法としては、一般的な液晶表示装置に用いられる共通電極の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0101】
また、本発明のスイッチング素子基板に、上述した画素電極と、コモン電極および共通電極の両方を形成する場合は、通常、図5に示すように、画素電極40と共通電極50との間に第2絶縁層32が形成される。なお、第2絶縁層については、上述した第1絶縁層と同様の構成とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
(5)その他の構成
本発明のスイッチング素子基板は上述した構成以外にも、例えば、スイッチング素子基板上の任意の位置に形成され、液晶表示装置に用いられた際に対向基板とのセルギャップを保持するために用いられる柱状スペーサや、スイッチング素子基板表面を平坦化し、かつ着色層、樹脂製遮光部等を保護するために用いられるオーバーコート層等を有することができる。
なお、柱状スペーサおよびオーバーコート層については、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
6.スイッチング素子基板の製造方法
本発明のスイッチング素子基板の製造方法としては、上述した構成を有するスイッチング素子基板を形成することが可能な製造方法であれば特に限定されず、一般的なスイッチング素子基板を製造する際に用いられる製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0104】
7.用途
本発明のスイッチング素子基板は、種々な液晶駆動方式の液晶表示装置に用いられるものである。なかでも、本発明のスイッチング素子基板は、MVA方式またはFFS方式の液晶表示装置に用いられることが好ましい。
【0105】
B.液晶表示装置
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
本発明の液晶表示装置は、上述した「A.スイッチング素子基板」の項で説明したスイッチング素子基板と、対向基板と、上記スイッチング素子基板および上記対向基板の間に配置された液晶層とを有するものである。
【0106】
ここで、本発明の液晶表示装置について図を用いて説明する。
図3は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。また、図3においては本発明の液晶表示装置がMVA方式の液晶表示装置である例について示している。
図3に示すように、本発明の液晶表示装置100は、スイッチング素子基板10と、対向基板60と、スイッチング素子基板10および対向基板60の間に配置された液晶層70とを有するものである。また、図3に示すように、MVA方式の液晶表示装置においては、通常、共通電極50が対向基板60上に配置される。
なお、図3におけるスイッチング素子基板10における各符号については、図1(b)および図2等において説明した符号と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0107】
また、図6は、本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略断面図である。また、図6においては、本発明の液晶表示装置が、FFS方式の液晶表示装置である例について示している。図6に示すように、FFS方式の液晶表示装置においては、通常、共通電極50がスイッチング素子基板10上に配置される。
なお、図6において説明していない符号については、図1(b)、図2および図3で説明した符号と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
本発明によれば、上記スイッチング素子基板を有することから、上記スイッチング素子電極と接続させるためにコンタクトホール内に形成される画素電極の断線を好適に防止することが可能である。また、スイッチング素子基板に形成された樹脂製遮光部を低比誘電率かつ高OD値を有するように調整することが可能であるため、スイッチング素子の誤作動等を防止することができ、優れた画像表示を行うことが可能な液晶表示装置とすることができる。さらに、スイッチング素子基板の画素部の面積を大きなものとすることが可能であることから、高精細な画像表示を行うことが可能な液晶表示装置とすることができる。
【0109】
以下、本発明の液晶表示装置の各構成について説明する。
【0110】
1.スイッチング素子基板
本発明におけるスイッチング素子基板については、上述した「A.スイッチング素子基板」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
2.対向基板
本発明における対向基板は、スイッチング素子基板と対向するように配置されるものである。また、上記対向基板は、通常、透明基板である。
【0112】
このような透明基板としては、一般的な液晶表示装置に用いられる透明基板と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0113】
なお、本発明の液晶表示装置に用いられる液晶駆動方式が、MVA方式等の縦電界駆動方式である場合は、通常、対向基板側には共通電極が配置される。なお、共通電極については、上述した「A.スイッチング素子基板」の項で説明したものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0114】
3.液晶層
本発明における液晶層は、上述したスイッチング素子基板と、対向基板との間に配置されるものである。
本発明における液晶層は、カラーフィルタおよび対向基板間に設けられるものである。液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、およびこれらの混合物を用いることができる。
【0115】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、予めカラーフィルタおよび対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタおよび対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0116】
4.その他の構成
本発明の液晶表示装置は、上述したスイッチング素子基板、対向基板、および液晶層を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要に応じて、他の構成についても適宜選択して用いることが可能である。このような構成としては、一般的な液晶表示装置に用いられる公知の構成とすることができ、例えば、偏光板、液晶層の封止材、バックライト等を挙げることができる。
【0117】
5.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置においては、一般的な液晶表示装置における液晶の駆動方式を適用することが可能であるが、なかでも、MVA方式、FFS方式であることが好ましい。
本発明におけるスイッチング素子基板は、上述した液晶の駆動方式を適用した場合の液晶表示装置に好適に用いることが可能となるからである。
【0118】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0120】
合成例で用いている化合物の略称はそれぞれ、括弧内に示す通りである。
メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、メタクリル酸グリシジル(GMA)。
【0121】
[合成例1]
重合槽中にMMAを63質量部、AAを12質量部、HEMAを6質量部及びDMDGを88質量部仕込み、攪拌し溶解させた後、AIBNを7質量部加え、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、さらにGMAを7質量部、トリエチルアミンを0.4質量部及びハイドロキノンを0.2質量部加え、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。
【0122】
下記の材料を室温で混合、攪拌してバインダー樹脂としての硬化性樹脂組成物とした。
<硬化性樹脂組成物>
・上記共重合樹脂溶液(固形分50%) 16質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社製の商品名SR399)
24質量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート180S70) 4質量部
・2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア907)
4質量部
・DMDG 52質量部
【0123】
(遮光部用樹脂組成物の調製)
下記の材料を室温で混合、攪拌して遮光部用樹脂組成物を調製した。
【0124】
<遮光部用樹脂組成物1>
・カーボンブラック(MA100R、三菱化学社製) 0.5質量部
・PR254(Hostaperm Red D2G70、クラリアント社製) 2.5質量部
・PB15:6(Fastogen BLUE EP-7、DIC社製) 1.5質量部
・PY139(Fastogen BLUE EP-7、DIC社製) 0.5質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダ) 10.5質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 79.5質量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算2質量部
【0125】
<遮光部用樹脂組成物2>
・カーボンブラック(MA100R、三菱化学社製) 0.5質量部
・PV23(Novotex Violet RL、クラリアント社製) 3質量部
・PB15:6(Fastogen BLUE EP-7、DIC社製) 1.0質量部
・PY139(Fastogen BLUE EP-7、DIC社製) 0.5質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダー樹脂) 10.5質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 79.5質量部
高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算2質量部
【0126】
(着色層用樹脂組成物の調製)
下記の材料を室温で混合、攪拌して着色層用樹脂組成物を調製した。
【0127】
<赤色着色層用樹脂組成物>
・赤色顔料(PR254) 2.5質量部
・赤色顔料(PR177) 1.5質量部
・黄色顔料(PY150) 1.0質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダー樹脂) 10質量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算5質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 80質量部
【0128】
<緑色着色層用樹脂組成物>
・緑色顔料(PG58) 3.5質量部
・黄色顔料(PY150) 1.5質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダー樹脂) 10質量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算5質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 80質量部
【0129】
<青色着色層用樹脂組成物>
・青色顔料(PB15:6) 1.9質量部
・紫顔料(PV23) 0.1質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダー樹脂) 10質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 86質量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算2質量部
【0130】
[実施例1]
厚さ0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、TFT素子を形成した。その後、遮光部用樹脂組成物1をスピンコーターを用いて塗布した。減圧乾燥後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。超高圧水銀灯を用いて所定のパターンが形成されたフォトマスクをTFT基板から200um離して設置し、60mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、アルカリ現像を実施し、230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークしてTFT基板上に20umφのコンタクトホールと膜厚3.0μm、OD値4.0、比誘電率5.0(1MHz)の遮光層を形成した。コンタクトホール部のテーパー角は85°であった。上記TFT基板上に上記赤色着色層用樹脂組成物を用いて開口部に赤色画素とコンタクトホール部にテーパー角120°の断線防止層を形成した。次に上記緑色および青色着色層用樹脂組成物を用いて開口部に緑色画素、青色画素を形成した。着色層の膜厚はそれぞれ3.0μmであった。その後、共通電極、絶縁層、画素電極を形成し、柱状スペーサを形成してTFT基板を得た。TFT基板及び対向基板に配向膜に形成し液晶を滴下して張り合わせ液晶表示装置を得た。
【0131】
[実施例2]
遮光部用樹脂組成物2を用いて膜厚3.5μm、OD値4.0、比誘電率5.2(1MHz)の遮光層を形成した以外は実施例1と同等にして液晶表示装置を得た。
【0132】
[実施例3]
赤色層、緑色層を積層してスペーサを形成し、その後柱状スペーサを形成しなかった以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を得た。
【0133】
[比較例]
断線防止層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を得た。
【0134】
液晶表示装置の通電試験を実施し、実施例1〜3については正常に動作したが、比較例では動作しなかった。
【符号の説明】
【0135】
1 … 基材
2 … スイッチング素子
3 … 画素部
4 … 樹脂製遮光部
5 … 断線防止層
10 … スイッチング素子基板
60 … 対向基板
70 … 液晶層
100 … 液晶表示装置
H、H’ … コンタクトホール
【技術分野】
【0001】
本発明は、低比誘電率かつ高OD値を有する樹脂製遮光部を備え、画素部の面積が大きく、かつ液晶表示装置に用いた場合に、コンタクトホール内に形成された画素電極の断線等が生じにくい高品質なスイッチング素子基板、およびこれを用いた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄層トランジスタ(以下、TFTと称して説明する。)等のアクティブ素子を用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置は、薄型、軽量、高画質等の特長を有することから、近年、益々その需要が高まっており、開発が奨励されている。
【0003】
アクティブマトリックス型液晶表示装置の構成としては、通常、TFT素子を有するTFT基板と、TFT素子のドレイン電極と接続させて形成される画素電極と、TFT基板と対向するように配置される対向基板と、TFT基板および対向基板の間に配置される液晶層と、上記画素電極との間に電圧を印加して液晶を駆動させるための電界を生じさせる共通電極とを有するものである。なお、共通電極および液晶層の配置については、液晶表示装置に用いられる液晶の駆動方式等によって異なるものであり、例えばTN(Twisted Nematic)方式、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)方式等の縦電界方式で液晶を駆動させる液晶表示装置においては、共通電極は対向基板上に配置され、液晶層は画素電極および共通電極の間に配置される。また、例えば、IPS(In-Plane Switching)方式、FFS(Fringe Field Switching)方式等の横電界方式で液晶を駆動させる液晶表示装置においては、共通電極は、TFT基板上に配置され、液晶層は、共通電極および対向基板の間に配置される。
また、上記アクティブマトリックス型液晶表示装置を用いてカラー表示を行う場合には、従来から、カラーフィルタが上記対向基板側に配置されて用いられている。
【0004】
上記カラーフィルタは、所望のカラー画像を表示するための複数の画素部と上記画素部を区画する遮光部とを有するものである。
ここで、TFT基板はTFT素子による表面段差を有するものであり、上記表面段差によって液晶層の液晶が配向不良を起こすことにより、液晶層から光漏れが生じてしまうという問題がある。そのため、上記カラーフィルタの遮光部は、上述した光漏れを防止およびTFT素子を遮光するため、TFT素子上にも配置されるものである。
【0005】
上述したように、上記カラーフィルタは対向基板側に配置されるものであることから、上記カラーフィルタの遮光部と上記TFT基板のTFT素子との位置ずれを考慮して遮光部の線幅が決定されるため、TFT素子の幅よりも遮光部の線幅が大きくなる場合が多く、画素部の面積、すなわち遮光部の開口部の開口率を十分に高いものとすることが困難であるといった問題があった。
【0006】
上記問題に対して、最近では、TFT基板側にカラーフィルタが形成されたTFT基板が提案されている(例えば特許文献1等)。TFT基板においては、TFT素子上に直接遮光部を形成することが可能であることから、上述した位置ずれを考慮しなくてもよく、対向基板側に配置されるカラーフィルタに比べて、遮光部の線幅を狭く形成することが可能であり、画素部が設けられる遮光部の開口部の開口率を高いものとすることが可能となる。
【0007】
ここで、TFT基板における遮光部は、TFT素子上に形成されるものであることから、遮光部の比誘電率が高い場合は、TFT素子の各電極と画素電極とがショートしてしまう場合や、TFT素子が誤作動を起こす可能性が考えられる。また、液晶分子の配向を均一にするため高電圧を必要とし、消費電力が増加する傾向にある。よって、遮光部は低比誘電率であることが求められる。また、上述した光漏れを防止し、かつTFT素子を遮光するためには、OD値が3.0以上の高い遮光性を有することが求められる。
また、TFT基板における遮光部としては、通常、バインダー樹脂に遮光性材料を分散させた樹脂製遮光部が用いられる。
【0008】
しかしながら、上記樹脂製遮光部においては、通常、高い遮光性を付与するためにカーボン顔料が好適に用いられており、樹脂製遮光部の材料中のカーボン顔料の濃度を高くした場合は、所望のOD値は示すものの、比誘電率が高くなってしまい、樹脂製遮光部の材料中のカーボン顔料の濃度を低くした場合は、所望の低比誘電率は示すものの、OD値が低くなってしまうといった問題があった。そのため、低比誘電率かつ高OD値を示す樹脂製遮光部を達成することが可能となるように樹脂製遮光部の材料の処方を調整することは困難であるといった問題があった。
【0009】
なお、上述の説明においては、カーボン顔料を例に挙げて説明したが、カーボン顔料以外の遮光性材料を用いた場合においても、同様に、低比誘電率かつ高OD値を示す樹脂製遮光部の材料の処方を調整することは困難であるといった問題があった。
【0010】
ところで、TFT基板においては、TFT素子のドレイン電極と画素電極とを接続させるために、コンタクトホールを形成することが必要であり、上記コンタクトホールはTFT基板の任意の位置に形成することが可能であるが、画素部の面積をより大きくする目的から、上記樹脂製遮光部上に形成することが試みられている(特許文献2)。また、上記コンタクトホールにおいては、その縦断面形状が垂直形状、または逆テーパー形状である場合は、コンタクトホールの側面に形成される画素電極の厚みが薄く形成されるため断線してしまったり、またはコンタクトホールの側面に画素電極自体を形成することが困難となるといった問題が生じる場合があるため、コンタクトホールの縦断面形状としては、順テーパー形状であることが好ましい。
また、上述したコンタクトホールの縦断面形状は、通常、樹脂製遮光部をフォトリソグラフィー法を用いて形成する際の露光量、加熱条件等により制御されるものである。
【0011】
なお、上述の説明においては、スイッチング素子としてTFT素子を用いたTFT基板における問題点について述べたが、TFT素子以外のスイッチング素子を用いたスイッチング素子基板においても同様の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平11−237621号公報
【特許文献2】特開2000−162643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、上記実情に鑑みて、樹脂製遮光部の比誘電率およびOD値を調整する新たな方法として、樹脂製遮光部の比誘電率については、樹脂製遮光部の材料中の遮光性材料の濃度を低くすることで調整し、樹脂製遮光部の遮光性については、樹脂製遮光部の膜厚を厚膜とすることで調整する方法を試みた。しかしながら、この方法においては、樹脂製遮光部が厚膜になることから、樹脂製遮光部をフォトリソグラフィー法を用いて形成する際に、樹脂製遮光部の材料からなる樹脂製遮光部形成用層の内部まで十分に露光光が到達せず、樹脂製遮光部形成用層の表面および内部における露光時の硬化度に差を生じてしまうため、露光後の焼成工程においては、加熱による樹脂製遮光部形成用層の収縮度が樹脂製遮光部形成用層の表面と内部とで異なってしまうことから、焼成工程後に得られる樹脂製遮光部表面にシワが生じてしまうといった問題があった。なお、樹脂製遮光部表面にシワを生じた場合は、樹脂製遮光部上に形成される他の層の表面状態が悪化するため、液晶表示装置にスイッチング素子基板を用いた場合に、例えば液晶層の配向不良の原因となる場合がある。
【0014】
そこで、本発明者らは、シワを生じさせないような樹脂製遮光部の形成について検討し、以下の手順で遮光部の形成を試みた。
すなわち、フォトリソグラフィー法を用いた樹脂製遮光部の形成方法において、一次露光として、樹脂製遮光部形成用層を所望のパターン状に現像可能な程度に露光し、一次露光後に樹脂製遮光部形成用層を現像し、さらに現像した樹脂製遮光部形成用層に二次露光として、上述した一次露光よりも露光量を多くして、樹脂製遮光部形成用層全体が硬化するように露光を行う。次いで二次露光後の樹脂製遮光部形成用層を焼成することにより、樹脂製遮光部を形成する。
【0015】
しかしながら、上述した手順による樹脂製遮光部の形成方法においては、二次露光時に樹脂製遮光部形成用層が現像後の形状を保持した状態で硬化し、焼成時においてはその形状がほぼ変化しないまま樹脂製遮光部が形成される。
また、現像時においては、樹脂製遮光部形成用層の端部が垂直状、または遮光部表面よりも遮光部の内部の方がより現像されて逆テーパー状となることが多い。そのため、樹脂製遮光部にコンタクトホールを形成した場合は、コンタクトホールの縦断面が垂直形状または逆テーパー形状になってしまうといった問題があった。
【0016】
上述した樹脂製遮光部を低比誘電率および高OD値を有するものとするための新たな調整方法における上述の問題点について、本発明者らはさらに鋭意検討を重ねた結果、従来の樹脂製遮光部の形成方法においては樹脂製遮光部の形成工程で同時に行われていたコンタクトホールの縦断面形状の制御を別工程で行うこと、すなわち、樹脂製遮光部を形成した後に断線防止層を設けることでコンタクトホールの縦断面形状を所望の形状に成形することを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0017】
すなわち、本発明は、低比誘電率かつ高OD値を達成することが可能な樹脂製遮光部を有し、画素部の面積が大きく、かつ、液晶表示装置に用いた場合に、コンタクトホール内における画素電極の断線を好適に防止することが可能なスイッチング素子基板、および、これを用いた液晶表示装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するために、基材と、上記基材上に形成されたスイッチング素子と、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部と、上記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層とを有し、上記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、上記断線防止層が、上記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されていることを特徴とするスイッチング素子基板を提供する。
【0019】
本発明によれば、断線防止層を有することにより、コンタクトホール内の画素電極が形成される部分については、その縦断面形状を順テーパー形状とすることができるため、画素電極の断線を好適に防止することが可能となる。また、上記断線防止層を用いて、コンタクトホールの縦断面形状を制御することが可能となるため、カーボン顔料等の遮光性材料の濃度の低い遮光部の材料を用いて厚膜に形成され、コンタクトホールの縦断面形状が垂直形状または逆テーパー形状の樹脂製遮光部を用いることができる。よって、低比誘電率かつ高OD値を有する樹脂製遮光部を備えたスイッチング素子基板とすることができる。
また、本発明によれば、樹脂製遮光部にコンタクトホールを有することから、コンタクトホールを画素部に設ける場合に比べて、画素部の面積を大きなものとすることが可能であり、優れた画像表示を行うことが可能なスイッチング素子基板とすることができる。
【0020】
本発明においては、上記樹脂製遮光部の比誘電率が7以下であり、かつ上記樹脂製遮光部のOD値が3以上であることが好ましい。上記樹脂製遮光部の比誘電率およびOD値が上記数値とすることにより、本発明のスイッチング素子基板をより高性能なものとすることが可能である。
【0021】
本発明においては、上記スイッチング素子基板が上記基材上に設けられた画素部を有し、上記断線防止層が、上記画素部に形成される着色層と同一材料から形成されていることが好ましい。本発明においては、スイッチング素子基板が画素部を有していることが好ましいところ、上記断線防止層を上記画素部に形成される上記着色層とを同一材料を用いて同時に形成することにより、本発明のスイッチング素子基板を製造する際の工程数を少なくすることができ、かつ、製造コストについても削減することが可能となるため、生産性に優れたスイッチング素子基板とすることができる。
【0022】
本発明は、基材、上記基材上に形成されたスイッチング素子、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部、および上記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層を有し、上記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、上記断線防止層が、上記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されているスイッチング素子基板と、対向基板と、上記スイッチング素子基板および上記対向基板の間に配置された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0023】
本発明によれば、上記スイッチング素子基板を有することから、上記スイッチング素子に用いられる電極と接続させるためにコンタクトホール内に形成される画素電極の断線を好適に防止することが可能である。また、スイッチング素子基板に形成された樹脂製遮光部を低比誘電率かつ高OD値を有するように調整することが可能であるため、スイッチング素子の誤作動等を防止することができ、優れた画像表示を行うことが可能な液晶表示装置とすることができる。さらに、スイッチング素子基板の画素部の面積を大きなものとすることが可能であることから、優れた画像表示を行うことが可能な液晶表示装置とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスイッチング素子基板は、断線防止層を有することにより、上記画素電極が形成されるコンタクトホールの側面については順テーパー形状とすることが可能となるため、コンタクトホール内における画素電極の断線の発生を好適に防止することができるといった作用効果を奏する。
また、断線防止層を有することから、樹脂製遮光部の形成後に、樹脂製遮光部に形成されたコンタクトホールの形状を所望の形状に成形することが可能となるため、樹脂製遮光部の材料及び形成方法を調整して、低比誘電率かつ高OD値の樹脂製遮光部を有するものとすることができるといった作用効果を奏する。
また、樹脂製遮光部上にコンタクトホールを形成することが可能となるため、画素部の面積を大きなものとすることができるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のスイッチング素子基板の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略図である。
【図5】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略図である。
【図8】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のスイッチング素子基板および液晶表示装置について説明する。
【0027】
A.スイッチング素子基板
まず、本発明のスイッチング素子基板について説明する。
本発明のスイッチング素子基板は、基材と、上記基材上に形成されたスイッチング素子と、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子に用いられる電極(以下、スイッチング素子電極と称して説明する場合がある。)上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部と、上記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層とを有し、上記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、上記断線防止層が、上記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
なお、本発明において「コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状である」とは、コンタクトホールのスイッチング素子側の開口の大きさが、スイッチング素子側とは反対側の開口の大きさと同等以上であることを指し、基材表面とコンタクトホールの側面とのなす角が90°以下であることを指す。なお、基材表面とコンタクトホールの側面とのなす角とは図1(c)においてθ1で示される角を指す。
また、「断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となる」とは、基材表面とコンタクトホールの側面に形成された断線防止層の表面とのなす角が91°以上、好ましくは、91°〜160°の範囲内、より好ましくは100°〜140°の範囲内となることを指す。なお、基材表面とコンタクトホールの側面に形成された断線防止層の表面とのなす角とは図1(c)においてθ2で示される角を指す。また、図1(c)については後述するため、ここでの説明は省略する。
【0029】
なお、上述した角度(図1(c)におけるθ1、θ2)は、例えば、電子顕微鏡(3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡 VE−9800;キーエンス社製)によって測定可能である。
【0030】
ここで、本発明のスイッチング素子基板について図を用いて説明する。図1(a)は本発明のスイッチング素子基板の概略平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図であり、図1(c)は図1(b)のコンタクトホール部分の拡大図である。
図1(a)、(b)に示すように、本発明のスイッチング素子基板10は、基材1と、基材1上に形成されたスイッチング素子2と、スイッチング素子2上に形成され、スイッチング素子電極(ドレイン電極25)上にコンタクトホールHを有する樹脂製遮光部4と、コンタクトホールHの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層5とを有するものである。
なお、図1(b)においてはスイッチング素子2がTFT素子2’である例について示しており、TFT素子2’は、ゲート電極21と、ゲート電極21上に形成されたゲート絶縁膜22と、ゲート絶縁膜22上に形成された半導体層23と、半導体層23上に所定の間隔をあけて対向するように形成されたソース電極24およびドレイン電極25とを有するものである。
また、本発明においては、基材1上に設けられた画素部3(図1(a)では赤色画素部3R、緑色画素部3G、および青色画素部3B)を有していてもよい。また、画素部3には、通常、着色層が形成されている。
また、図1に示すスイッチング素子基板10においては、スイッチング素子2と、樹脂製遮光部4および画素部3に形成される着色層の間に第1絶縁層31が設けられていてもよい。
【0031】
また、図1(c)に示すように、本発明においては、コンタクトホールHの縦断面形状が垂直形状または逆テーパー形状(図1(c)では順テーパー形状)、すなわち、基材1表面とコンタクトホールHの側面とのなす角θ1が90°以下であり、かつ、断線防止層5の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状、すなわち、基材1表面とコンタクトホールHの側面に形成された断線防止層5表面とのなす角θ2が上述した角度以上となることを特徴とするものである。
【0032】
図2は、本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。また、図3は、本発明のスイッチング素子基板を用いた液晶表示装置の一例を示す概略断面図であり、液晶表示装置が、MVA方式の液晶表示装置である例について示している。図1に示すスイッチング素子基板10は、通常、図2に示すように、コンタクトホールH内でTFT素子2’のドレイン電極25と接続するように、画素電極40が形成されるものである。また、図3に示すように、MVA方式等の縦電界方式の液晶表示装置100においては、画素電極40が形成されたスイッチング素子基板10が用いられる。
なお、図2において説明していない符号については、図1(b)と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、図3については、後述する「B.液晶表示装置」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
【0033】
またここで、本発明のスイッチング素子基板の他の例について図を用いて説明する。図4(a)は本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略平面図であり、図4(b)は図4(a)のB−B線断面図である。
図4(a)、(b)に示すように、本発明のスイッチング素子基板10は、TFT素子2’のドレイン電極25上に形成されたコンタクトホールHの他にもコンタクトホールH’を有していてもよい。なお、図4(a)、(b)におけるコンタクトホールH’は、基材1上に形成されたコモン電極51上に設けられるものである。
なお、図4(a)、(b)において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0034】
図5は、本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略断面図である。また、図6は、本発明のスイッチング素子基板を用いた液晶表示装置の一例を示す概略断面図であり、液晶表示装置が、FFS方式の液晶表示装置である例について示している。図4(a)、(b)に示すスイッチング素子基板10は、通常、図5に示すように、コンタクトホールH内でTFT素子2’のドレイン電極25と接続するように画素電極40が形成され、コンタクトホールH’内でコモン電極51と接続するように共通電極50が形成されるものである。また、画素電極40および共通電極50の間には、通常、第2絶縁層32が形成される。また、図6に示すように、FFS方式等の横電界方式の液晶表示装置100においては、画素電極40および共通電極50が形成されたスイッチング素子基板10が用いられる。
なお、図5において説明していない符号については、図1(b)、図2等と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。また、図6については、後述する「B.液晶表示装置」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
【0035】
本発明は、樹脂製遮光部の比誘電率およびOD値の調整方法として、樹脂製遮光部の材料中の遮光性材料の濃度を低くすることにより比誘電率を所望の値まで下げ、かつ樹脂製遮光部の膜厚を厚膜にすることにより樹脂製遮光部のOD値を所望の値まで上げる方法を見出したこと、また、断線防止層を用いることにより、従来においては樹脂製遮光部の形成時に同時に行われていたコンタクトホールの縦断面形状の制御を、別工程で行うことを見出したことに大きな特徴を有するものである。
【0036】
すなわち、本発明によれば、断線防止層を有することにより、コンタクトホール内の画素電極が形成される部分については、その縦断面形状を順テーパー形状とすることができるため、画素電極の断線を好適に防止することが可能となる。また、上記断線防止層を用いて、コンタクトホール内の形状を制御することが可能となるため、遮光性材料の濃度の低い樹脂製遮光部の材料を用いて厚膜に形成され、コンタクトホールの縦断面形状が垂直形状または逆テーパー形状の樹脂製遮光部を用いることができる。よって、低比誘電率かつ高OD値を有する樹脂製遮光部を備えたスイッチング素子基板とすることができる。
また、本発明によれば、樹脂製遮光部にコンタクトホールを有することから、コンタクトホールを画素部に設ける場合に比べて、画素部の面積を大きなものとすることが可能であり、優れた画像表示を行うことが可能なスイッチング素子基板とすることができる。
【0037】
以下、本発明のスイッチング素子基板の各構成について説明する。
【0038】
1.断線防止層
本発明における断線防止層は、コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成されるものであり、断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されるものである。
また、上記断線防止層は、絶縁性を有するものである。
【0039】
また、本発明においては、通常、コンタクトホールの側面を覆うように形成される断線防止層とコンタクトホールの端部を覆うように形成される断線防止層とは連続的に形成されているものである。
【0040】
(1)断線防止層の構造
本発明における断線防止層の形成位置としては、コンタクトホール内でスイッチング素子電極と画素電極とを接続させることができる位置であれば特に限定されず、本発明のスイッチング素子基板の用途に応じて適宜選択されるものである。
例えば図1(a)、(b)に示すように、コンタクトホールHの側面の全ておよびコンタクトホールHの端部の全てを覆うように形成されていてもよく、また例えば図7(a)、(b)に示すように、コンタクトホールHの側面の一部およびコンタクトホールHの端部の一部を覆うように形成されていてもよい。
なお、図7(a)は、本発明のスイッチング素子基板の他の例を示す概略平面図であり、図7(b)は図7(a)のC−C線断面図である。また、図7(a)、(b)において説明していない符号については図1(a)、(b)と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0041】
また、本発明においてスイッチング素子電極上以外にもコンタクトホールが形成される場合は、スイッチング素子電極上のコンタクトホール以外のコンタクトホールにも断線防止層を形成することができる。
【0042】
また、上述した場合において、2つのコンタクトホールが隣接する場合は、図4(a)、(b)に示すように、2つのコンタクトホールH、H’の側面およびその端部を覆うように断線防止層5を連続して形成してもよく、図示はしないが、個々のコンタクトホールに応じて断線防止層を形成してもよいが、連続して形成することがより好ましい。これにより、スイッチング素子基板の製造工程を簡便なものとすることができるからである。
【0043】
また、断線防止層の樹脂製遮光部上の形成位置としては、コンタクトホールの側面に形成された断線防止層と連続して樹脂製遮光部のコンタクトホール側の端部に形成することが可能な位置であれば特に限定されず、断線防止層に用いられる材料等により適宜選択することができる。
【0044】
また、断線防止層の厚みとしては、コンタクトホールの側面および端部に形成される断線防止層の縦断面形状を所望の順テーパー形状とすることでき、かつ、コンタクトホールを塞がない程度の厚みであれば特に限定されない。
【0045】
また、基材表面とコンタクトホールの側面に形成された断線防止層表面とのなす角(図1(c)におけるθ2)の角度としては、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、コンタクトホール内に形成される画素電極に断線を生じさせない程度の角度であれば特に限定されず、上述した角度以上であれば特に限定されない。より具体的には、基材表面とコンタクトホールの側面に形成された断線防止層の表面とのなす角の角度が、91°〜160°の範囲内、なかでも100°〜150°の範囲内、特に110°〜140°の範囲内であることが好ましい。上記角度が上記範囲に満たない場合は、垂直形状に近い形状となることから、断線防止層を形成したとしても、コンタクトホール内の画素電極の断線を十分に防止することが困難となる場合があるからである。また、上記角度が上記範囲を超える場合は、コンタクトホール側面に断線防止層自体を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0046】
(2)断線防止層
本発明における断線防止層は、絶縁性を有するものである。
【0047】
このような断線防止層としては、具体的には、樹脂材料からなるものを用いることができる。なお、樹脂材料については、一般的な液晶表示装置における樹脂製部材に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0048】
ここで、本発明における断線防止層としては、本発明のスイッチング素子基板に用いられる樹脂製部材と同一材料からなるものであることが好ましい。上記樹脂製部材と同時に断線防止層を形成することができることから、本発明のスイッチング素子基板の製造工程を簡便なものとすることができ、製造効率の高いものとすることが可能である。また、別途、断線防止層に用いられる樹脂材料を準備しなくてもよいことから、製造コストについても削減することが可能となり、安価なスイッチング素子基板を提供することが可能となる。
【0049】
このような樹脂製部材としては、例えば、必要に応じて設けられる画素部に用いられる着色層や、柱状スペーサ、およびオーバーコート層等を挙げることができる。
以下、図を用いて説明する。
【0050】
本発明においては、例えば図8に示すように、断線防止層5が、画素部3に用いられる着色層と同一材料を用いて形成されていることが好ましい。本発明においては、スイッチング素子基板10が画素部3を有していることが好ましいところ、断線防止層5を画素部3に用いられる着色層とを同一材料を用いて同時に形成することが可能となることから、スイッチング素子基板10を製造する際の工程数を少なくすることができ、かつ、製造コストについても削減することが可能となるため、生産性に優れたスイッチング素子基板10とすることができる。
樹脂製遮光部4上に有色の断線防止層5を積層することが可能となることから、樹脂製遮光部の遮光性をより高いものとすることができる。
なお、着色層については、後述するため、ここでの説明は省略する。
【0051】
また、本発明においては、例えば、図9に示すように、断線防止層5が、柱状スペーサ6と層一材料を用いて形成されたものであってもよく、また例えば図10に示すように、断線防止層5がオーバーコート層7と同一材料を用いて形成されたものであってもよく、図示はしないが、柱状スペーサ、オーバーコート層、および断線防止層が同一材料を用いて形成されたものであってもよい。
なお、柱状スペーサおよびオーバーコート層については、後述するため、ここでの説明は省略する。
【0052】
2.樹脂製遮光部
本発明における樹脂製遮光部は、上記スイッチング素子上に形成され、上記スイッチング素子電極上にコンタクトホールを有するものである。
【0053】
(1)樹脂製遮光部の構造
本発明における樹脂製遮光部の構造について説明する。
【0054】
(i)コンタクトホール
本発明におけるコンタクトホールは、樹脂製遮光部から構成され、その縦断面形状が垂直形状または逆テーパー形状であるものである。
【0055】
コンタクトホールの開口の平面視上の形状としては、上述した断線防止層を形成することが可能であり、かつ画素電極をコンタクトホール内に形成して、スイッチング素子電極と接続させることが可能となるような形状であれば特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、多角形状等を挙げることができる。
【0056】
本発明におけるコンタクトホールのスイッチング素子側の開口の大きさとしては、上述した断線防止層および画素電極を形成して、スイッチング素子電極と接続させることが可能となる形状であれば特に限定されるものではないが、5μm〜40μmの範囲内、なかでも10μm〜30μmの範囲内、特に10μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。上記開口の大きさが上記範囲に満たない場合は、上述した断線防止層を形成した後、画素電極とスイッチング素子電極とを接続させることが困難となる場合があるからであり、上記開口の大きさが上記範囲を超える場合は、樹脂製遮光部にコンタクトホールを形成することが困難となり、さらにスイッチング素子の遮光が困難となる可能性があるからである。
【0057】
本発明におけるコンタクトホールのスイッチング素子側とは反対側の開口の大きさとしては、上述した断線防止層を形成することが可能であり、かつ、上記画素電極をコンタクトホール内に形成してスイッチング素子電極と接続させることが可能であれば特に限定されないが、5μm〜40μmの範囲内、なかでも10μm〜30μmの範囲内、特に10μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。上記開口の大きさが上記範囲に満たない場合は、断線防止層や画素電極の形成時に、上記開口を塞いでしまい、コンタクトホール内に十分に断線防止層や画素電極を形成することが困難となる可能性があるからであり、上記開口の大きさが上記範囲を超える場合は、コンタクトホールが大きくなることから、樹脂製遮光部の形成面積が小さくなるため、遮光性に欠ける場合があるからである。
【0058】
基材表面とコンタクトホールの側面とのなす角(図1(c)におけるθ1)としては、断線防止層を配置することにより順テーパー形状とすることができる程度の角度であれば特に限定されないが、90°以下、なかでも90°〜50°の範囲内、特に80°〜60°の範囲内であることが好ましい。上記角度を上記範囲内とすることにより、断線防止層を形成することによる、画素電極の断線防止効果をより高く発揮することが可能である。
なお、本発明におけるコンタクトホールのテーパー角度の下限値としては、50°程度とすることができる。上記テーパー角度が上記下限値を下回る場合は、遮光層と断線防止層の間に空間を形成しやすくなるため、パネル不良の原因となる可能性があるからである。また、樹脂製遮光部にコンタクトホールを形成することが困難となる場合や、コンタクトホールのテーパー部分に断線防止層を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0059】
上記コンタクトホールの深さとしては、断線防止層を形成することが可能であり、かつ画素電極とスイッチング素子電極とを接続させることが可能な程度の深さであれば特に限定されず、後述する樹脂製遮光部の厚みと同等とすることができる。
【0060】
また、上記コンタクトホールは、スイッチング素子に用いられる電極上に設けられるものである。このようなコンタクトホールの形成位置としては、スイッチング素子に用いられる電極と、画素電極とをコンタクトホールを介して接続させることが可能な位置であれば特に限定されず、スイッチング素子の種類に応じて適宜選択される。コンタクトホールが形成される電極としては、例えば、TFT素子、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)素子、酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)素子等のドレイン電極、またはソース電極を挙げることができる。
【0061】
(ii)樹脂製遮光部の構造
本発明における樹脂製遮光部は、スイッチング素子上に形成され、上述したコンタクトホールを有するものである。また、本発明における樹脂製遮光部は、通常、基材上にも形成され、後述する画素部を区画するために用いられるものである。
また、本発明における樹脂製遮光部は、低比誘電率かつ高OD値を示すことを特徴とするものである。
【0062】
本発明における樹脂製遮光部の比誘電率としては、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、スイッチング素子の各々の電極と画素電極とのショートが生じず、良好な画像表示を行うことが可能な程度とすることが可能であれば特に限定されないが、7以下、なかでも、3〜6の範囲内、特に3〜5の範囲内であることが好ましい。本発明における樹脂製遮光部は、スイッチング素子上に形成されるものであることから、上記比誘電率が上記範囲を超える場合は、スイッチング素子が誤作動を起こしたり、スイッチング素子の各電極と画素電極とが短絡してしまう可能性があるからである。
また、上記樹脂製遮光部の比誘電率の下限値としては、3程度とすることができる。上記比誘電率が上記下限値を下回る場合、樹脂製遮光部が所望の遮光性を示すことが困難となる可能性があるからである。
なお、樹脂製遮光部の比誘電率については、誘電体測定システム(126096W型、東陽テクニカ製)によって測定可能である。
【0063】
また、本発明における樹脂製遮光部の遮光性としては、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、光漏れ等を生じることがない程度であれば特に限定されない。具体的には、樹脂製遮光部のOD値が、3.0以上、なかでも3.0〜6.0の範囲内、特に3.5〜5.0の範囲内であることが好ましい。上記樹脂製遮光部の遮光性が上記範囲に満たない場合は、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、光漏れ等を防止することが困難となる場合があるからである。
また、上記樹脂製遮光部のOD値の上限値としては、特に限定されるものではないが、6.0程度とすることができる。本発明における樹脂製遮光部は、遮光性を付与するために遮光性材料を含有するものであることから、上記OD値が上記範囲を超える場合は、樹脂製遮光部の比誘電率が所望の値よりも大きくなる可能性や、樹脂製遮光部自体の膜厚が大きくなるため、樹脂製遮光部の形成が困難となったり、本発明のスイッチング素子基板を薄膜なものとすることが困難となる場合があるからである。
なお、樹脂製遮光部のOD値は、マクベス反射濃度計(サカタインクス社製「RD−914」)で測定可能である。
【0064】
上記樹脂製遮光部のパターン形状としては、上述したスイッチング素子電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部を形成することが可能であり、かつ後述する画素部を区画することが可能であれば特に限定されず、スイッチング素子の形成位置、および画素部のパターン配列等に応じて適宜選択することができる。
【0065】
本発明の樹脂製遮光部の線幅としては、上記スイッチング素子上に形成することが可能であり、液晶表示装置に用いた場合に、液晶層の液晶の配向乱れにより生じる光漏れを防止することが可能であり、着色層が形成される画素部の開口率を向上させることが可能であれば特に限定されず、本発明のスイッチング素子基板の用途等により適宜選択することができる。
【0066】
上記樹脂製遮光部の厚みとしては、樹脂製遮光部に十分な遮光性を付与することが可能であり、かつ、上述したコンタクトホールを設けることが可能な厚みであれば特に限定されないが、2.0μm〜10.0μmの範囲内、なかでも2.5μm〜8.0μmの範囲内、特に3.0μm〜6.0μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上記範囲に満たない場合は、樹脂製遮光部に十分な遮光性を付与することが困難となる可能性があるからである。さらに電気容量が大きくなるためにスイッチング素子の誤作動を招く可能性がある。また、上記厚みが上記範囲を超える場合は、樹脂製遮光部を形成することが困難となる場合や、コンタクトホールを形成困難となる場合や、本発明のスイッチング素子基板を薄膜に形成することが困難となる場合があるからである。
【0067】
(2)樹脂製遮光部の材料
本発明の樹脂製遮光部は、絶縁性を有するものである。
このような樹脂製遮光部の材料としては、通常、遮光性材料と、バインダー樹脂とを含有するものである。
【0068】
上記バインダー樹脂としては、一般的なカラーフィルタの樹脂製遮光部に用いることが可能な樹脂であれば特に限定されないが、感光性樹脂であることが好ましい。また、感光性樹脂層としては、ポジ型感光性樹脂であってもよく、ネガ型感光性樹脂であってもよい。
【0069】
本発明に用いられる遮光性材料としては、樹脂製遮光部に所望の比誘電率を保持して所望の遮光性を付与することが可能な材料であれば特に限定されない。
このような遮光性材料としては、例えば、カーボン顔料、黒色の無機顔料、黒色の有機顔料等を挙げることができ、より具体的には、チタンブラック(三菱マテリアル電子化成社製)、ペリレンブラック(PBk31、BASF社製)、アニリンブラック等を挙げることができる。なお、上述した遮光材料は、1種類のみで用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本発明においては、なかでもカーボン顔料を用いることが好ましい。樹脂製遮光部に所望の遮光性を付与することが可能となるからである。また、カーボン顔料は樹脂製遮光部に多量に含有されている場合は、比誘電率が高くなることから樹脂製遮光部中の濃度を低くする必要があり、所望のOD値を達成するために、樹脂製遮光部の膜厚を厚膜にする必要がある。したがって、カーボン顔料を用いた樹脂製遮光部は厚膜に形成する必要があることから、コンタクトホールの形状が垂直形状、または逆テーパー形状となりやすいため、本発明における断線防止層による効果を大きく発揮することが可能となるからである。
【0071】
また、上記遮光性材料の含有量としては、樹脂製遮光部材料の色材全量100質量部に対して、20質量部以下、なかでも3質量部〜15質量部の範囲内、特に5質量部〜10質量部の範囲内であることが好ましい。カーボン顔料の含有量が上記範囲に満たない場合は、本発明における樹脂製遮光部に所望の遮光性を付与することが困難となる可能性があるからであり、カーボン顔料の含有量が上記範囲を超える場合は、本発明における樹脂製遮光部の比誘電率が高くなる可能性があるからである。
【0072】
また、本発明における樹脂製遮光部の材料としては、上述したバインダー樹脂、遮光性材料の他にも必要な成分を適宜選択することができる。
【0073】
例えば、本発明における樹脂製遮光部の材料としては、上述した遮光性材料以外にも、無機顔料や有機顔料等を添加することが好ましい。本発明における樹脂製遮光部の遮光性をより高いものとすることが可能となるからである。なお、添加される無機顔料や有機顔料等としては、例えば後述する着色層に用いられる各色の顔料等を挙げることができる。
【0074】
また、本発明においては、上述の樹脂製遮光部の材料に、光重合開始剤、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、および難燃剤等を添加することができる。
【0075】
(4)樹脂製遮光部の形成方法
本発明の樹脂製遮光部の形成方法としては、スイッチング素子基板のスイッチング素子に用いられる電極上に、上述したコンタクトホールを有し、かつ所望の比誘電率およびOD値を有する樹脂製遮光部を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。
例えば、次のような形成方法を用いて形成することができる。
【0076】
まず、形成される樹脂製遮光部の比誘電率および樹脂製遮光部の遮光性を考慮して、樹脂製遮光部の材料の処方を決定し、上述した樹脂製遮光部の材料を含む樹脂製遮光部用組成物を調製する。次に、樹脂製遮光部用組成物をスイッチング素子基板のスイッチング素子側表面に、形成される樹脂製遮光部が所望の遮光性を有することが可能な程度の厚みで塗布し、樹脂製遮光部形成用層を形成する。次に、金属マスク等を用いて樹脂製遮光部形成用層を所望のパターン状にパターニング可能な程度の露光量で一次露光を施し、一次露光後に現像処理を施して樹脂製遮光部形成用層のパターニングを行う。次に、パターニングされた樹脂製遮光部形成用層に上記一次露光における露光量よりも多量の露光量で樹脂製遮光部形成用層を露光して、樹脂製遮光部形成用層全体を光硬化させる。
次に、上述した樹脂製遮光部形成用層に焼成処理を施すことにより樹脂製遮光部を形成する。
【0077】
3.スイッチング素子
本発明におけるスイッチング素子は、基材上に形成されるものである。
【0078】
本発明におけるスイッチング素子としては、所望のスイッチ機能を有するものであれば特に限定されず、本発明のスイッチング素子基板の用途に応じて適宜選択されるものである。具体的には、TFT素子、絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ(IGBT)、酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)等を挙げることができる。本発明においては、なかでもTFT素子であることが好ましい。
【0079】
以下、TFT素子について説明する。
TFT素子は、図1(b)に例示するように、ゲート電極21と、ゲート電極21上に形成されたゲート絶縁膜22と、ゲート絶縁膜22上に形成された半導体層23と、半導体層23上に所定の間隔をあけて対向するように形成されたソース電極24およびドレイン電極25とを有しており、画素電極4はドレイン電極25と接続されている。
【0080】
TFT素子としては、特に限定されるものではなく、用いられる液晶表示装置の種類に応じて適宜選択され、例えば、a−Si TFT構造を有するものであってもよく、p−Si TFT構造を有するものであってもよい。a−Si TFT構造を有するTFT素子の場合、正スタガ型(トップゲート構造)および逆スタガ型(ボトムゲート構造)のいずれであってもよい。また、逆スタガ型の場合、チャネルエッチ型およびチャネルプロテクト型のいずれであってもよい。一方、p−Si TFT構造を有するTFT素子の場合、プレーナ型およびスタガ型のいずれであってもよい。
【0081】
4.基材
本発明における基材は、上述した、断線防止層、樹脂製遮光部、画素部に用いられる着色層、およびスイッチング素子を支持するものである。
【0082】
上記基材としては、一般的なスイッチング素子基板に用いられる基材と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0083】
5.その他の構成
本発明のスイッチング素子基板は、上述した断線防止層、樹脂製遮光部、画素部、スイッチング素子、および基材を有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な構成を適宜選択して追加することができる。
以下、このような構成について説明する。
【0084】
(1)画素部
本発明においては、スイッチング素子基板が画素部を有することが好ましい。
本発明における画素部は、基材上に設けられるものである。また、上記画素部には着色層が形成されているものである。また、上記画素部は、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた際に、画像表示に寄与する領域を指す。
【0085】
本態様に用いられる画素部のパターンとしては、本発明のスイッチング素子基板を液晶表示装置に用いた場合に、画像表示を行うことができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタに用いられる画素部のパターンと同様とすることができ、具体的には、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知の配列とすることができる。また、画素部面積は任意に設定することができる。
【0086】
また、上記画素部に形成される着色層としては、通常、赤色着色層、緑色着色層、および青色着色層が用いられるが、上述した色以外の着色層を用いてもよい。
【0087】
上記着色層の厚みとしては、上記スイッチング素子基板を用いて良好な画像表示を行うことができる程度の厚みであれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタの画素部に用いられる着色層の厚みと同様とすることができる。
【0088】
上記着色層の材料としては、一般的なカラーフィルタの画素部に用いられる着色層の材料と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
(2)第1絶縁層
また、本発明においては、図1(b)に示すように、スイッチング素子2と、着色層3および樹脂製遮光部4との間に第1絶縁層31を形成してもよい。
第1絶縁層31を形成することにより、スイッチング素子2の誤作動をより効果的に防止することができ、かつスイッチング素子2の劣化を防止することが可能である。
【0090】
上記第1絶縁層の材料としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されず、一般的なスイッチング素子基板に用いられる絶縁層の材料と同様とすることができる。具体的には、SiNx、SiOx等を用いることができる。
【0091】
また、第1絶縁層の膜厚、形成方法等については、一般的なスイッチング素子基板に用いられる絶縁層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0092】
(3)画素電極
本発明のスイッチング素子基板は、図2および図5に示すように、液晶表示装置に用いられる際に併用される画素電極40が形成されていてもよい。
【0093】
画素電極の材料としては、一般に液晶表示素子の画素電極として用いられているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム錫(IZO)等が好ましく用いられる。
【0094】
画素電極のパターン形状等としては、本発明のスイッチング素子基板が用いられる液晶表示装置の用途等に応じて適宜選択して決定することができる。
【0095】
また、画素電極の形成方法としては、一般的な液晶表示装置に用いられる画素電極の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
(4)コモン電極および共通電極
本発明のスイッチング素子基板が、IPS方式、FFS方式等の横電界方式の液晶表示装置に用いられる場合は、図5に示すように、コモン電極51および共通電極50を有していてもよい。
【0097】
上記コモン電極の材料としては、一般的なIPS方式の液晶表示装置やFFS方式の液晶表示装置に用いられるコモン電極の材料と同様とすることができ、例えば、Al、AlNd、Mo、Cu等の金属を用いることができる。
【0098】
上記共通電極の材料としては、一般的なIPS方式の液晶表示装置やFFS方式の液晶表示装置に用いられているものであれば特に限定されず、上述した画素電極と同様の材料からなるものを用いることができる。
【0099】
上記コモン電極および共通電極のパターン形状等としては、本発明のスイッチング素子基板が用いられる液晶表示装置の用途等に応じて適宜選択して決定することができる。
【0100】
また、共通電極の形成方法としては、一般的な液晶表示装置に用いられる共通電極の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0101】
また、本発明のスイッチング素子基板に、上述した画素電極と、コモン電極および共通電極の両方を形成する場合は、通常、図5に示すように、画素電極40と共通電極50との間に第2絶縁層32が形成される。なお、第2絶縁層については、上述した第1絶縁層と同様の構成とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
(5)その他の構成
本発明のスイッチング素子基板は上述した構成以外にも、例えば、スイッチング素子基板上の任意の位置に形成され、液晶表示装置に用いられた際に対向基板とのセルギャップを保持するために用いられる柱状スペーサや、スイッチング素子基板表面を平坦化し、かつ着色層、樹脂製遮光部等を保護するために用いられるオーバーコート層等を有することができる。
なお、柱状スペーサおよびオーバーコート層については、一般的なカラーフィルタに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
6.スイッチング素子基板の製造方法
本発明のスイッチング素子基板の製造方法としては、上述した構成を有するスイッチング素子基板を形成することが可能な製造方法であれば特に限定されず、一般的なスイッチング素子基板を製造する際に用いられる製造方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0104】
7.用途
本発明のスイッチング素子基板は、種々な液晶駆動方式の液晶表示装置に用いられるものである。なかでも、本発明のスイッチング素子基板は、MVA方式またはFFS方式の液晶表示装置に用いられることが好ましい。
【0105】
B.液晶表示装置
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
本発明の液晶表示装置は、上述した「A.スイッチング素子基板」の項で説明したスイッチング素子基板と、対向基板と、上記スイッチング素子基板および上記対向基板の間に配置された液晶層とを有するものである。
【0106】
ここで、本発明の液晶表示装置について図を用いて説明する。
図3は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。また、図3においては本発明の液晶表示装置がMVA方式の液晶表示装置である例について示している。
図3に示すように、本発明の液晶表示装置100は、スイッチング素子基板10と、対向基板60と、スイッチング素子基板10および対向基板60の間に配置された液晶層70とを有するものである。また、図3に示すように、MVA方式の液晶表示装置においては、通常、共通電極50が対向基板60上に配置される。
なお、図3におけるスイッチング素子基板10における各符号については、図1(b)および図2等において説明した符号と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0107】
また、図6は、本発明の液晶表示装置の他の例を示す概略断面図である。また、図6においては、本発明の液晶表示装置が、FFS方式の液晶表示装置である例について示している。図6に示すように、FFS方式の液晶表示装置においては、通常、共通電極50がスイッチング素子基板10上に配置される。
なお、図6において説明していない符号については、図1(b)、図2および図3で説明した符号と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
本発明によれば、上記スイッチング素子基板を有することから、上記スイッチング素子電極と接続させるためにコンタクトホール内に形成される画素電極の断線を好適に防止することが可能である。また、スイッチング素子基板に形成された樹脂製遮光部を低比誘電率かつ高OD値を有するように調整することが可能であるため、スイッチング素子の誤作動等を防止することができ、優れた画像表示を行うことが可能な液晶表示装置とすることができる。さらに、スイッチング素子基板の画素部の面積を大きなものとすることが可能であることから、高精細な画像表示を行うことが可能な液晶表示装置とすることができる。
【0109】
以下、本発明の液晶表示装置の各構成について説明する。
【0110】
1.スイッチング素子基板
本発明におけるスイッチング素子基板については、上述した「A.スイッチング素子基板」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
2.対向基板
本発明における対向基板は、スイッチング素子基板と対向するように配置されるものである。また、上記対向基板は、通常、透明基板である。
【0112】
このような透明基板としては、一般的な液晶表示装置に用いられる透明基板と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0113】
なお、本発明の液晶表示装置に用いられる液晶駆動方式が、MVA方式等の縦電界駆動方式である場合は、通常、対向基板側には共通電極が配置される。なお、共通電極については、上述した「A.スイッチング素子基板」の項で説明したものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0114】
3.液晶層
本発明における液晶層は、上述したスイッチング素子基板と、対向基板との間に配置されるものである。
本発明における液晶層は、カラーフィルタおよび対向基板間に設けられるものである。液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、およびこれらの混合物を用いることができる。
【0115】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、予めカラーフィルタおよび対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタおよび対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0116】
4.その他の構成
本発明の液晶表示装置は、上述したスイッチング素子基板、対向基板、および液晶層を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要に応じて、他の構成についても適宜選択して用いることが可能である。このような構成としては、一般的な液晶表示装置に用いられる公知の構成とすることができ、例えば、偏光板、液晶層の封止材、バックライト等を挙げることができる。
【0117】
5.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置においては、一般的な液晶表示装置における液晶の駆動方式を適用することが可能であるが、なかでも、MVA方式、FFS方式であることが好ましい。
本発明におけるスイッチング素子基板は、上述した液晶の駆動方式を適用した場合の液晶表示装置に好適に用いることが可能となるからである。
【0118】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0120】
合成例で用いている化合物の略称はそれぞれ、括弧内に示す通りである。
メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、メタクリル酸グリシジル(GMA)。
【0121】
[合成例1]
重合槽中にMMAを63質量部、AAを12質量部、HEMAを6質量部及びDMDGを88質量部仕込み、攪拌し溶解させた後、AIBNを7質量部加え、均一に溶解させた。その後、窒素気流下、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、さらにGMAを7質量部、トリエチルアミンを0.4質量部及びハイドロキノンを0.2質量部加え、100℃で5時間攪拌し、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。
【0122】
下記の材料を室温で混合、攪拌してバインダー樹脂としての硬化性樹脂組成物とした。
<硬化性樹脂組成物>
・上記共重合樹脂溶液(固形分50%) 16質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社製の商品名SR399)
24質量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート180S70) 4質量部
・2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア907)
4質量部
・DMDG 52質量部
【0123】
(遮光部用樹脂組成物の調製)
下記の材料を室温で混合、攪拌して遮光部用樹脂組成物を調製した。
【0124】
<遮光部用樹脂組成物1>
・カーボンブラック(MA100R、三菱化学社製) 0.5質量部
・PR254(Hostaperm Red D2G70、クラリアント社製) 2.5質量部
・PB15:6(Fastogen BLUE EP-7、DIC社製) 1.5質量部
・PY139(Fastogen BLUE EP-7、DIC社製) 0.5質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダ) 10.5質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 79.5質量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算2質量部
【0125】
<遮光部用樹脂組成物2>
・カーボンブラック(MA100R、三菱化学社製) 0.5質量部
・PV23(Novotex Violet RL、クラリアント社製) 3質量部
・PB15:6(Fastogen BLUE EP-7、DIC社製) 1.0質量部
・PY139(Fastogen BLUE EP-7、DIC社製) 0.5質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダー樹脂) 10.5質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 79.5質量部
高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算2質量部
【0126】
(着色層用樹脂組成物の調製)
下記の材料を室温で混合、攪拌して着色層用樹脂組成物を調製した。
【0127】
<赤色着色層用樹脂組成物>
・赤色顔料(PR254) 2.5質量部
・赤色顔料(PR177) 1.5質量部
・黄色顔料(PY150) 1.0質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダー樹脂) 10質量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算5質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 80質量部
【0128】
<緑色着色層用樹脂組成物>
・緑色顔料(PG58) 3.5質量部
・黄色顔料(PY150) 1.5質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダー樹脂) 10質量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算5質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 80質量部
【0129】
<青色着色層用樹脂組成物>
・青色顔料(PB15:6) 1.9質量部
・紫顔料(PV23) 0.1質量部
・上記硬化性樹脂組成物(バインダー樹脂) 10質量部
・酢酸3−メトキシブチル(溶剤) 86質量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製の商品名DISPERBYK2000、固形分40%) 固形分換算2質量部
【0130】
[実施例1]
厚さ0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、TFT素子を形成した。その後、遮光部用樹脂組成物1をスピンコーターを用いて塗布した。減圧乾燥後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。超高圧水銀灯を用いて所定のパターンが形成されたフォトマスクをTFT基板から200um離して設置し、60mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、アルカリ現像を実施し、230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークしてTFT基板上に20umφのコンタクトホールと膜厚3.0μm、OD値4.0、比誘電率5.0(1MHz)の遮光層を形成した。コンタクトホール部のテーパー角は85°であった。上記TFT基板上に上記赤色着色層用樹脂組成物を用いて開口部に赤色画素とコンタクトホール部にテーパー角120°の断線防止層を形成した。次に上記緑色および青色着色層用樹脂組成物を用いて開口部に緑色画素、青色画素を形成した。着色層の膜厚はそれぞれ3.0μmであった。その後、共通電極、絶縁層、画素電極を形成し、柱状スペーサを形成してTFT基板を得た。TFT基板及び対向基板に配向膜に形成し液晶を滴下して張り合わせ液晶表示装置を得た。
【0131】
[実施例2]
遮光部用樹脂組成物2を用いて膜厚3.5μm、OD値4.0、比誘電率5.2(1MHz)の遮光層を形成した以外は実施例1と同等にして液晶表示装置を得た。
【0132】
[実施例3]
赤色層、緑色層を積層してスペーサを形成し、その後柱状スペーサを形成しなかった以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を得た。
【0133】
[比較例]
断線防止層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を得た。
【0134】
液晶表示装置の通電試験を実施し、実施例1〜3については正常に動作したが、比較例では動作しなかった。
【符号の説明】
【0135】
1 … 基材
2 … スイッチング素子
3 … 画素部
4 … 樹脂製遮光部
5 … 断線防止層
10 … スイッチング素子基板
60 … 対向基板
70 … 液晶層
100 … 液晶表示装置
H、H’ … コンタクトホール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子上に形成され、前記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部と、
前記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層とを有し、
前記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、
前記断線防止層が、前記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されていることを特徴とするスイッチング素子基板。
【請求項2】
前記樹脂製遮光部の比誘電率が7以下であり、かつ前記樹脂製遮光部のOD値が3以上であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング素子基板。
【請求項3】
前記スイッチング素子基板が前記基材上に設けられた画素部を有し、前記断線防止層が、前記画素部に形成される着色層と同一材料から形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチング素子基板。
【請求項4】
基材、前記基材上に形成されたスイッチング素子、前記スイッチング素子上に形成され、前記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部、および前記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層を有し、前記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、前記断線防止層が、前記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されているスイッチング素子基板と、
対向基板と、
前記スイッチング素子基板および前記対向基板の間に配置された液晶層と
を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子上に形成され、前記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部と、
前記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層とを有し、
前記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、
前記断線防止層が、前記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されていることを特徴とするスイッチング素子基板。
【請求項2】
前記樹脂製遮光部の比誘電率が7以下であり、かつ前記樹脂製遮光部のOD値が3以上であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング素子基板。
【請求項3】
前記スイッチング素子基板が前記基材上に設けられた画素部を有し、前記断線防止層が、前記画素部に形成される着色層と同一材料から形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチング素子基板。
【請求項4】
基材、前記基材上に形成されたスイッチング素子、前記スイッチング素子上に形成され、前記スイッチング素子に用いられる電極上にコンタクトホールを有する樹脂製遮光部、および前記コンタクトホールの側面および端部を覆うように形成され、絶縁性を有する断線防止層を有し、前記コンタクトホールの縦断面形状が、垂直形状または逆テーパー形状であり、前記断線防止層が、前記断線防止層の形成部分の縦断面形状が順テーパー形状となるように形成されているスイッチング素子基板と、
対向基板と、
前記スイッチング素子基板および前記対向基板の間に配置された液晶層と
を有することを特徴とする液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−255825(P2012−255825A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127354(P2011−127354)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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