説明

スイッチング電源装置および可調節電源システム

【課題】
位相制御回路を使用して負荷を可調整にするために特別な回路を付設する必要がなくて回路構造が簡素化したスイッチング電源装置およびこれを備えた可調節電源システムを提供する。
【解決手段】
スイッチング電源装置SRAは、位相制御交流電圧が印加される入力端t1、t2と、位相制御交流電圧を整流して直流入力電圧に変換する整流手段Recと、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1およびスイッチング素子のオフ駆動手段ODを含み、整流手段で整流した直流入力電圧が印加されるとオン状態のスイッチング素子によって入力電流を流して起動するとともに、スイッチング素子に流れる電流が所定値に達したときにオフ駆動手段がスイッチング素子をオフさせ、スイッチング素子がスイッチング動作を繰り返すことにより直流入力電圧を異なる出力電圧に変換するスイッチング動作変換回路SCと、出力端t7、t8とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相制御された交流電圧が入力して作動し、出力によって負荷を付勢して作動させるスイッチング電源装置およびこれを備えた可調節電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2線式位相制御調光器は、トライアックで交流電圧を位相制御するように構成されており、主としてランプ調光などに使用されている。この調光器は、白熱電球を負荷とする想定で設計されていて、トライアックをオンさせるときには負荷の白熱電球のフィラメントと直列接続して動作する位相制御回路によってトライアックのオン位相を決定するように構成されている。しかし、この調光器は、広く普及しているので、白熱電球以外にも代替使用されている電球形LEDランプや電球形蛍光ランプの調光に使用できるようにすることが望ましい。これらのランプは、直流チョッパやインバータといったスイッチング電源を主体とする点灯回路を内蔵している関係で、白熱電球とは異なるインピーダンスを呈する。
【0003】
ところが、上述の調光器は、トライアックのオン位相を入力電圧値に基づいて決定するため、調光器に電球形LEDランプや電球形蛍光ランプが直列接続すると、それらのインピーダンスの影響を受ける。調光器が正常に動作するためには、調光位相角を決定する際、位相制御回路に直列接続される電球形LEDランプや電球形蛍光ランプなどの負荷のインピーダンスが安定して低くなっている必要がある。なお、負荷インピーダンスが低いとは、上記調光器の位相制御回路が動作する際の回路電流は少ないので、負荷インピーダンスがある程度低い(数百Ω程度)のであれば、ほぼ問題はない。これに対して、負荷インピーダンスが変動したりハイインピーダンスであったりすると、調光器の位相制御回路に所要の回路電流を確保できなくなるために、所望の位相で電源をオンできなくなる。その結果、明るさのちらつきや不点などの不具合が生じる。
【0004】
また、上記調光器は、オフ位相期間中、そこに内蔵のトライアックがオフするので、負荷電流が流れない。このとき、負荷に内蔵のスイッチング電源は、通常ハイインピーダンスになっている。しかし、内蔵の点灯回路には、雑音防止回路や平滑コンデンサが接続しているので、そのまま上記調光器に接続すると、インピーダンスが安定しないため不具合が生じる。
【0005】
さらに、上記調光器の位相制御がオンした場合に、これに呼応して負荷に内蔵のスイッチング電源が速やかに起動しないと、トライアックがオン状態を保持できないためにオフし、再びオンしてオフするような、オンオフ動作すなわちチャタリングを繰り返してしまうことがある。
【0006】
上述の問題を回避するために、上記調光器のトライアックがオフしている位相では、負荷のインピーダンスを低下させるなどの切替え回路を加える対策を行って動作を安定にすることができる。また、抵抗からなるダミー負荷を電球形LEDランプや電球形蛍光ランプなどの入力側に並列接続することもできる。さらに、スイッチング電源の起動を速やかに行われるように起動回路を工夫することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4370794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来技術は、そのいずれも2線式制御調光器のような位相制御形調光器を使用して電球形LEDランプや電球形蛍光ランプなどのランプを調光可能にするための回路構造が複雑化してしまう。
【0009】
本発明は、位相制御回路を使用して負荷を可調整にするために特別な回路を付設する必要がなくて回路構造を簡素化したスイッチング電源装置およびこれを備えた可調節電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態によれば、スイッチング電源装置は、入力端、整流手段、スイッチング動作変換回路、オフ駆動手段および出力端を具備している。入力端は、そこに位相制御回路によって位相制御された位相制御交流電圧が印加される。整流手段は、位相制御交流電圧を整流して直流入力電圧に変換する。スイッチング動作変換回路は、ノーマリオン形のスイッチング素子および所定の電流が流れたときにノーマリオン形のスイッチング素子をオフさせるオフ駆動手段を備え、直流入力電圧を変換して出力を発生し、この出力を用いて負荷を付勢して作動させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、スイッチング動作変換回路のスイッチング素子にノーマリオン形のスイッチング素子を用いることにより、位相制御電圧が印加されるとオン状態のスイッチング素子によって入力電流を流してスイッチング動作変換回路が起動するので、位相制御素子の自己保持電流より大きな入力電流が流れて位相制御回路が正常に作動し、位相制御素子が所望の位相で確実にオンするため、位相制御素子をオンさせるための格別な回路を付設する必要がなくて回路構造を簡素化したスイッチング電源装置およびこれを備えた可調節電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のスイッチング電源装置の第1の実施形態および可調節電源システムの一実施形態に係わる回路ブロック図である。
【図2】同じく位相制御回路の回路図である。
【図3】本発明のスイッチング電源装置の第2の実施形態に係わる要部の回路図である。
【図4】本発明のスイッチング電源装置の第3の実施形態に係わる要部の回路図である。
【図5】本発明のスイッチング電源装置の第4の実施形態に係わる要部の回路図である。
【図6】同じくスイッチング素子の電流・電圧特性を示すグラフである。
【図7】本発明のスイッチング電源装置の第5の実施形態に係わる要部の回路図である。
【図8】本発明のスイッチング電源装置の第6の実施形態に係わる要部の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔スイッチング電源装置の第1の実施形態〕
第1の実施形態において、スイッチング電源装置SRAは、図1に示すように、入力端t1、t2、整流手段Rec、スイッチング動作変換回路SCおよび出力端t7、t8を具備し、負荷LSを作動させる。
【0014】
入力端t1、t2は、位相制御回路PCDを介して交流電源ACに接続する。位相制御回路PCDは、図2に示すように、交流電源ACから延在する一対の線路の一方に挿入された2線式である。そして、端子t01、t02、トライアックTRIACおよび移相回路PS具備して構成されている。
【0015】
トライアックTRIACは、端子t01、t02間に接続している。なお、トライアックTRIACは、順逆どちらの方向に流れる電流でも、一つのゲート電極で同じように制御してスイッチを行うことのできる二方向三端子サイリスタである。
【0016】
移相回路PSは、トライアックTRIACを電源電圧の所望位相でオンさせるための回路である。そして、可変時定数回路を主体として構成されている。すなわち、可変抵抗器R11およびコンデンサC11の直列回路が図2に示すように端子t01、t02間に接続している。可変抵抗器R11の抵抗を変化させることにより、可変抵抗器R11およびコンデンサC11の接続点から移相出力を取り出すことができる。移相出力は、トリガ用のダイアックDIACを介してトライアックTRIACのゲートにゲート電流を供給する。所定のゲート電流が供給されると、トライアックTRIACはオンする。そして、オンしたときに自己保持電流が流れれば、交流電圧の半サイクル中オン状態が持続する。
【0017】
なお、所望により雑音防止コンデンサをトライアックTRIACに並列接続することができる。また、雑音防止用のインダクタをトライアックTRIACに直列接続することができる。そうして、上記雑音防止コンデンサおよび、雑音防止用のインダクタは、雑音防止回路NSを構成する。
【0018】
再び図1に戻って説明を続ける。整流手段Recは、スイッチング電源装置SRAの入力端t1、t2間に印加される位相制御交流電圧を直流入力電圧に変換して、後述するスイッチング動作変換回路SCの入力端子t5、t6間に印加する。整流手段Recは、上述のように機能するのであれば、その具体的な構成は特段限定されない。例えば、図示のようにブリッジ形全波整流回路を用いることができる。また、整流手段Recは、所望により平滑化回路を備えていることが許容される。
【0019】
スイッチング動作変換回路SCは、本実施形態において、入力電力から希望の出力電力を得る電力変換装置の電力を変換・調整するためにスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q1のオフ駆動手段ODを用いて構成される変換手段であり、その出力形態は直流および交流のいずれであってもよい。また、スイッチング動作変換回路SCの動作は、自励および他励のいずれであってもよい。
【0020】
したがって、本実施形態において、スイッチング電源装置SRAは、直流電力を別の直流電力に変換するDC-DCコンバータおよび交流電力を一定の直流電力に変換する整流手段Recによって構成されたスイッチング電源装置だけでなく、DC-ACコンバータであるインバータおよび整流手段Recによって構成されたスイッチング電源装置を含む概念である。また、DC-DCコンバータとしては、スイッチング制御方式およびフライバックコンバータおよびフォワードコンバータなどを含む。スイッチング制御方式は、いわゆる直流チョッパであり、降圧形、昇圧形および昇降圧形などが含まれる。また、本実施形態において、スイッチング電源装置SRAは、整流手段Recおよびスイッチング動作変換回路SCを複合化した回路にした例えば後述する回路構成であってもよい。
【0021】
図1に示す形態は、スイッチング動作変換回路SCがスイッチング制御方式であり、入力端子t5、t6、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1、オフ駆動手段OD、インダクタL1および駆動巻線DWなどを備えている。そして、その出力がスイッチング電源装置SRAの出力端t7、t8間に供給される。
【0022】
入力端子t5、t6は、整流手段Recの直流出力端子t3、t4に接続して、そこに位相制御された交流電圧に相応する直流入力電圧が印加される。
【0023】
ノーマリオン形のスイッチング素子Q1は、常閉のスイッチング素子であり、好ましくはワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子であるワイドバンドギャップ半導体スイッチング素子を用いることができる。ただし、本実施形態において、ワイドバンドギャップ半導体の具体的な物質は特段限定されない。例えば、SiC(炭化珪素)、GaN(窒化ガリウム)およびダイヤモンドのようなワイドバンドギャップを有する半導体(ワイドバンドギャップ半導体)を主体とするスイッチング素子であればよい。図示の実施形態においては、ワイドバンドギャップ半導体スイッチング素子は、GaNを主体として構成されたGaN−HEMTからなるスイッチング素子Q1を採用している。
【0024】
ワイドバンドギャップ半導体スイッチング素子Q1は、これをMHz領域、例えば10MHz以上の周波数でスイッチングすることにより、著しく回路が小形化されるとともにオン抵抗が小さいためにスイッチング損失が著しく低減するという特徴がある。なお、スイッチング素子Q1がノーマリオン形の場合には、その制御端子(ゲート)電位を主端子(ソース)電位に対して負電圧にすることにより、オフさせることができる。
【0025】
オフ駆動手段ODは、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1に流れる電流が所定値に達したときにこれをオフさせる手段である。例えば、定電流手段および電流検出形応答回路などを用いてこれを構成することができる。
【0026】
定電流手段は、定電流特性を有する回路手段であり、例えば定電流ダイオード、接合型FET、三端子レギュレータおよびトランジスタを用いた各種定電流回路などを用いることができる。なお、トランジスタを用いた定電流回路としては、一石または二石のトランジスタを用いた既知の定電流回路であることを許容する。また、接合型FETの一種であるノーマリオン形またはノーマリオフ形のワイドバンドギャップ半導体スイッチング素子、例えばGaN−HEMTを定電流手段として使用することができる。ワイドバンドギャップスイッチング素子は、MHz領域、例えば10MHz以上の高周波のスイッチング特性が優れているので、高速スイッチングを行わせるのに好都合である。
【0027】
また、オフ駆動手段ODが定電流手段からなる場合、例えば後述する第2の実施形態に示すように、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1のオン時にインダクタL1に電流が流れる第1の回路Aにおいて、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1と直列に接続する。また、上記オフ駆動手段ODは、上記スイッチング素子Q1を駆動する駆動巻線DWを含む上記スイッチ素子Q1の駆動回路中にも直列に接続する。これらの構成を具備していることにより、オフ駆動手段ODを流れる増加電流が予め設定した定電流値に到達し、さらに増加しようとすると、オフ駆動手段ODの電圧が急激に上昇するので、そのときオフ駆動手段ODに生じる電圧上昇によって、上記スイッチング素子Q1の駆動回路に組み込まれる主端子(ソース)の電位を制御端子(ゲート)の電位に対して相対的に高くすることができる。その結果、制御端子の電位が上記スイッチング素子Q1の閾値より低くなるために、上記スイッチング素子Q1をオフさせることができる。この回路動作は、上記スイッチング素子Q1がノーマリオン形で、かつ閾値が負であることにより、一層容易かつ確実になる。
【0028】
オフ駆動手段ODが電流検出形応答回路からなる場合、電流検出器、コンパレータおよびスイッチを主構成要素とする回路構成である。電流検出器は、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1の一対の主端子(ソース)に直列接続する抵抗器からなる。コンパレータは、電流検出器の電圧を反転入力端子に入力し、所定電流値を示す基準電位源を非反転入力端子に接続したオペアンプからなる。スイッチは、例えばコレクタがノーマリオン形のスイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)に接続し、エミッタがランプLSを介して上記スイッチング素子Q1の主端子(ソース)に接続し、ベースにコンパレータの出力端子が接続するトランジスタからなる。そうして、電流検出器に流れる増加電流が所定値を超えると、コンパレータが出力を生じ、スイッチがオンする。その結果、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)の電位が上記スイッチング素子Q1の主端子(ソース)の電位より負になるので、上記スイッチング素子Q1がオフする。
【0029】
インダクタL1は、上記スイッチング素子Q1がオンしてそこに増加電流が流れたときに電磁エネルギーを内部に蓄積し、上記スイッチング素子Q1がオフしたときに電磁エネルギーが放出されて減少電流がインダクタL1から流出力する。しかし、インダクタL1に代えて所用のインダクタンスを有するトランスを用いることが許容される。この態様は、フライバックコンバータやフォワードコンバータを構成する場合に適している。
【0030】
駆動巻線DWは、インダクタL1に磁気結合して、その誘起電圧が直接または例えば負荷LSを介して間接的にノーマリオン形のスイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)および主端子(ソース)間に印加される。そのため、上記スイッチング素子Q1は、駆動巻線DWの誘起電圧が主端子(ソース)の電位より低い負電位のときにオフし、主端子(ソース)の電位以上の正電位のときにオンする。
【0031】
出力端t7、t8は、そこにスイッチング電源装置SRAの出力が供給される端部であり、したがってそこに負荷LS、例えばLEDのようなランプを接続する。そして、負荷LSは、スイッチング電源装置SRAの出力により付勢されて作動(点灯)する。
【0032】
次に、以上説明した第1の実施形態における回路動作を説明する。
【0033】
スイッチング電源装置SRAの入力端t1、t2を、位相制御回路PCDを介して交流電源ACに接続すると、整流手段Recに位相制御交流電圧が印加される。位相制御交流電圧は、整流手段Recで整流されて、その出力端子t3、t4から上記交流電圧の実効値に相応する直流入力電圧が出力される。この直流入力電圧は、スイッチング動作変換回路SCの入力端子t5、t6に印加される。一方、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1が常時オンしているので、上記位相制御回路PCDに微弱な電流を流すことができる。その結果、位相制御回路PCDでは、その移相回路PSが立ち上がり、移相動作を開始するので、トライアックTRIACが所定位相でオンする。そして、位相制御交流電圧がスイッチング電源装置SRAの入力端t1、t2間から整流手段Recに印加され、位相制御交流電圧に相当する直流入力電圧をスイッチング動作変換回路SCの入力端子t5、t6間に印加する。直流入力電圧が印加されると、スイッチング素子Q1が常時オンしているので、スイッチング素子Q1によって十分な入力電流を流してスイッチング動作変換回路SCが起動する。その結果、スイッチング動作変換回路SCにより変換された出力が出力端t7、t8間に供給されるので、上記出力端t7、t8間に接続した負荷LSが付勢されて作動を開始する。
【0034】
〔可調節電源システムの一実施形態〕
可調節電源システムは、図1において、位相制御回路PCD、以上説明したスイッチング電源装置SRAおよび負荷LSを具備して構成されている。
【0035】
位相制御回路PCDは、図2に示す構成であり、位相制御素子、例えばトライアックTRIACおよび移相回路PSを主構成要素とするもので、交流電源ACとスイッチング電源装置SRAとの間に介在するように直列接続される。なお、位相制御素子には、トライアックや逆並列接続した一対のサイリスタなどを用いることができる。
【0036】
そうして、交流電源ACが投入されると、移相回路PSが負荷であるスイッチング電源装置SRAを経由して交流電源ACに接続し、スイッチング電源装置SRAはそのノーマリオン形のスイッチング素子Q1がオンしているので、移相回路PSが速やかに動作を開始する。上記可変抵抗器R11を操作して移相回路PSの抵抗値を変化させることにより、移相角が変化するので、この移相角に対応して位相制御素子の導通開始位相が変化し、交流電圧が位相制御されて負荷LSに供給される電力が可調節(例えば調光)となる。
【0037】
スイッチング電源装置SRAは、上述の第1の実施形態であるが、もちろん後述する各実施形態であってもよい。
【0038】
負荷LSは、多様であることが許容される。
【0039】
〔スイッチング電源装置の第2の実施形態〕
第2の実施形態は、図3に示すように、スイッチング動作変換回路SCが降圧チョッパからなる。なお、図1と同一部分については同一符号を付している。図において、入力端子t5、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1、オフ駆動手段OD、出力コンデンサC1、インダクタL1および入力端子t6の直列回路が第1の回路Aを形成している。入力端子t5、t6は、図1における整流手段Recの出力端子t3、t4に接続する。ノーマリオン形のスイッチング素子Q1は、GaN−HEMTからなる。オフ駆動手段ODは、スイッチング素子Q1と同様にGaN−HEMTの定電流手段からなる。そして、オフ駆動手段ODすなわち定電流手段の制御端子(ゲート)と出力端t8との間に定電流値を調整する制御電圧E1が接続されている。また、出力コンデンサC1の両端から出力端t7、t8がそれぞれ導出されている。
【0040】
また、インダクタL1、ダイオードD1、出力コンデンサC1およびインダクタL1の閉回路が第2の回路Bを形成している。なお、ダイオードD1は、GaNからなる。また、ダイオードD1は、同期整流器であってもよい。同期整流器を用いる場合、スイッチング素子Q1およびオフ駆動手段ODとともにワイドバンド半導体からなるスイッチング素子を用いることができる。
【0041】
さらに、インダクタL1に磁気結合する駆動巻線DWの図の左端が結合コンデンサC2を介してノーマリオン形のスイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)に接続し、図の右端がインダクタL1と出力コンデンサC1の接続点すなわち出力端t8に接続している。なお、図において、符号D2は、上記スイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)とオフ駆動手段ODを介して主端子(ソース)との間に接続された過電圧保護ダイオードである。また、符号C3は、入力端子t5、t6間に接続された高周波バイパスコンデンサである。
【0042】
次に、第2の実施形態における回路動作について説明する。
【0043】
図示されていない整流手段が直流入力電圧を入力端子t5、t6間に印加すると、スイッチング動作変換回路SCのノーマリオン形のスイッチング素子Q1が常時オンしているので、整流手段から上記スイッチング素子Q1、オフ駆動手段ODの定電流手段および整流手段の入力側に挿入された図示されていない位相制御回路を経由して第1の回路A内を微弱であるが、図2にしたがって説明すれば、位相制御回路PCDの移相回路PSが作動するには十分な電流が流れ出し、移相回路PSに設定された所定移相でトリガ素子であるダイアックDIACがオンし、その結果位相制御素子であるトライアックTRIACがオンする。
【0044】
これにより、位相制御回路PCDは、位相制御交流電圧を出力するので、整流手段が位相制御交流電圧に相応する直流入力電圧をその出力端子から出力する。この直流入力電圧がスイッチング動作変換回路SCの入力端子t5、t6に印加されると、スイッチング素子Q1が入力電流を流してスイッチング動作変換回路SCが起動する。そして、入力端子t5、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1、オフ駆動手段OD、出力コンデンサC1、インダクタL1および入力端子t6からなる第1の回路A内を増加電流が流れ、インダクタL1内に電磁エネルギーが蓄積される。そして、この増加電流がオフ駆動手段ODの予め設定された所定電流値に達すると、電流の増加傾向が停止して定電流に保持される。
【0045】
増加電流がオフ駆動手段ODの定電流値に達したとき、インダクタL1に流れる電流がさらに増加しようとするので、オフ駆動手段ODの電圧がパルス状に大きくなる。そして、これに伴って上記スイッチング素子Q1の主端子(ソース)電位が制御端子(ゲート)の電位より高くなり、その結果制御端子(ゲート)が相対的に明らかに負電位になるため、スイッチング素子Q1はオフする。このため、インダクタL1に流入する増加する電流は、上記スイッチング素子Q1のオフによって遮断される。
【0046】
上記スイッチング素子Q1がオフすると同時にインダクタL1に蓄積されていた電磁エネルギーの放出が開始されて、第2の回路Bに減少電流が流れ出す。なお、この減少電流が流れている間、インダクタL1の電圧極性が反転して負極性になり、駆動巻線DWには上記スイッチング素子Q1の制御端子が負電位になる電圧が誘起され、負電圧がオフ駆動手段ODを経由して上記スイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)・主端子(ソース)間に印加するので、上記スイッチング素子Q1はオフ状態に維持される。
【0047】
第2の回路Bに流れる減少電流が0になると、上記スイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)に印加されていた負電圧が誘起されなくなると同時に、逆起電力により制御端子(ゲート)が正極性になる電圧が駆動巻線DWに誘起されるので、上記スイッチング素子Q1は再びオンし、以後上述したのと同様な回路動作が繰り返される。
【0048】
以上の回路動作から明らかなように、スイッチング動作変換回路SCは、降圧チョッパ動作を行い、スイッチング電源装置SRAの出力端t7、t8間に接続する負荷LSに増加電流と減少電流とが交互に流れる出力電流が流れ、それらの直流成分で負荷LSが作動し、出力コンデンサC1は出力中の高周波成分をバイパスする。
【0049】
〔スイッチング電源装置の第3の実施形態〕
第3の実施形態は、図4に示すように、スイッチング動作変換回路SCが昇圧チョッパからなる。なお、図3と同一部分については同一符号を付している。本実施形態は、図3に示す第2の実施形態との対比において、第1および第2の回路A、Bの構成が異なる。すなわち、第1の回路Aは、入力端子t5、インダクタL1、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1、オフ駆動手段ODおよび入力端子t6の直列回路により構成されている。第2の回路Bは、インダクタL1、ダイオードD1、出力コンデンサC1および入力端子t6の直列回路により構成されている。その他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0050】
次に、第3の実施形態の回路動作について簡単に説明する。
【0051】
入力端子t6、t7間に図示されていない整流手段からを直流入力電圧を印加すると、ノーマリオン形のスイッチング素子Q1が常時オンしているので、最初に第1および第2の実施形態において説明したのとほぼ同様に、位相制御回路PCDが動作を開始する。そして、位相制御交流電圧が整流手段で直流入力電圧に変換されて印加されるので、スイッチング動作変換回路SCの第1の回路A内を増加電流が流れる。上記スイッチング素子Q1のオン状態は、駆動巻線DWの誘起電圧が上記スイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)に順バイアスを印加するので維持される。そして、増加電流がオフ駆動手段ODの定電流値に到達すると、オフ駆動手段ODの電圧降下が急激に増大するので、上記スイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)の電位が他方の主端子(ソース)の電位に対して負になり、上記スイッチング素子Q1はオフする。
【0052】
上記スイッチング素子Q1がオフすると、インダクタL1に蓄積されていた電磁エネルギーが放出されて減少電流が第2の回路B1内を流れる。減少電流が流れると、負荷LSが付勢されて点灯する。減少電流が流れている間、駆動巻線DWに上述に対して逆極性の電圧を誘起するので、上記スイッチング素子Q1がオフ状態に維持される。減少電流が0になると、上記スイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)の逆バイアスがなくなるので、上記スイッチング素子Q1が再びオンして以上の動作を繰り返する。
【0053】
以上説明した第3の実施形態においては、昇圧により入力電圧より高い出力電圧が得られる。
【0054】
〔スイッチング電源装置の第4の実施形態〕
第4の実施形態は、図5に示す回路構成であって、スイッチング動作変換回路SCが第2の実施形態におけるのと同様に降圧チョッパからなるが、出力電流が予定の最大電流を超えようとすると、動作を停止するように保護回路を構成している。また、位相制御回路を経由してスイッチング電源装置SRAが交流電源に接続する場合、交流電源の投入と同時に位相制御回路の位相制御素子の自己保持電流以上の入力電流を流すように構成されている。なお、図3と同一部分については同一符号を付している。
【0055】
第4の実施形態において、オフ駆動手段ODは、スイッチング素子Q1と同様なスイッチング素子の定電流特性を制御端子(ゲート)に印加する電圧を変化させて所望に設定する点が第2および第3の実施形態と同様であるが、図5に示すように、オフ手段ODのゲート回路GDが分圧回路VDとコンデンサC4により構成されている。分圧回路VDは、抵抗器R1、R2の直列回路をダイオードD1に並列接続される。また、コンデンサC4は、抵抗器R2に並列接続している。この構成のゲート回路では、抵抗器R2の電圧がコンデンサC4により平滑化されてオフ駆動手段ODの制御端子(ゲート)・主端子(ソース)間に印加される。分圧電圧の設定を適切化することで上述の動作要件を満足する。
【0056】
交流電源の投入と同時に位相制御素子の自己保持電流以上の入力電流を流すが、予定の最大電流を超えようとする際にスイッチング動作変換回路SCの動作を停止する保護回路が構成されている。この保護回路は、分圧回路VDの分圧出力を予め調整することにより、オフ駆動手段ODのゲートに印加される電圧を自己保持電流以上の電流に対してオン状態とする値にするとともに、スイッチング素子Q1のオン、オフの閾値を予定の最大電流に合わせるように予め調整しておくことにより構成されている。
【0057】
すなわち、不等式:Vth(Q1)>VGS(Q1)−VQ2を満足するようにオフ駆動手段ODの電圧を設定すればよい。ここで、Vth(Q1)はスイッチング素子Q1の閾値、VGS(Q1)はスイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧、VQ2はオフ手段ODのオン電圧である。なお、VQ2は、図6に示すように、オフ手段ODの電圧・電流特性のオン領域におけるオン抵抗RONと最大電流IMAXの積すなわちオン電圧である。オン領域では電圧と電流が比例関係であり、オン抵抗RONは、電圧・電流特性曲線におけるオン領域の勾配である。上記オン電圧VQ2は、ゲート回路GDにおける電圧分割回路VDの分圧出力を調整することにより、所望に選択することができる。
【0058】
次に、回路動作について説明する。本実施形態においては、図示を省略している交流電源が投入されて直流入力電圧が入力端子t5、t6間に印加されると、スイッチング素子Q1に図示を省略している位相制御回路の位相制御素子の自己保持電流以上の電流が流れ出してスイッチング電源装置SRAが起動する。スイッチング電源装置SRAの動作中に何らかの理由によってスイッチング素子Q1に流れる電流が増大しだすと、それに伴ってオフ手段ODのオン電圧VQ2が増加するので、最大電流に達すると、スイッチング素子Q1のゲート・ソース間電圧が閾値を下回り、上記不等式が成立することになる。その結果、スイッチング素子Q1がオフする。そのため、スイッチング動作変換回路SCが動作を停止するので、安全が図られる。
【0059】
〔スイッチング電源装置の第5の実施形態〕
第5の実施形態は、図7に示す回路構成であって、スイッチング動作変換回路SCが第3の実施形態におけるのと同様に昇圧チョッパからなるが、オフ駆動手段ODがノーマリオフ形のスイッチング素子により構成されている点で異なる。なお、図4と同一部分については同一符号を付している。オフ駆動手段ODのゲート回路GDは、ゲートとソースの間に抵抗器R3およびR4を直列接続し、かつその直列回路にコンデンサC5が並列接続して構成されている。
【0060】
本実施形態においては、ゲート回路GDに平滑コンデンサC5が接続しているので、たとえオフ駆動手段ODを構成しているノーマリオフ形のスイッチング素子のゲート・ソース間に電圧休止区間が生じたとしてもコンデンサC5による平滑作用によってゲート電圧を保持するので、オフ駆動手段ODがオフするのを阻止することができる。
【0061】
また、オフ駆動手段ODは、直流電流を制御するので、比較的大きな静電容量のコンデンサを駆動回路に用いることができる。そのため、オフ駆動手段ODを低インピーダンスに維持することができる。したがって、オフ駆動手段ODにはノーマリオフ形のスイッチング素子を採用することが可能になる。これに対して、スイッチング素子Q1は、高速スイッチングを行うので、比較的大きな容量のコンデンサを用いることができない。
【0062】
〔スイッチング電源装置の第6の実施形態〕
第6の実施形態は、図8に示す回路構成であって、スイッチング動作変換回路SCの一対のダイオードD11およびD12が整流手段の作用を兼ねる。なお、図1と同一部分については同一符号を付して説明省略する。すなわち、一対のダイオードD11、D12およびスイッチング素子とオフ駆動手段の一対の直列回路がブリッジ回路を形成し、スイッチング素子Q11およびダイオードD11の接続点と、ダイオードD12およびスイッチング素子Q12の接続点との間に交流電源AC、位相制御回路PCDおよびインダクタL1の直列回路が図示のように接続している。また、ダイオードD11およびD12の接続点と、オフ駆動手段OD11およびOD12の接続点との間に出力コンデンサC1および負荷LSが並列接続している。
【0063】
そうして、本実施形態においては、交流電圧の入力端t1側が正極となる半サイクルでは、インダクタL1、スイッチング素子Q12、オフ駆動手段OD12およびダイオードD11が昇圧動作を行い、負となる半サイクルでは、インダクタL1、スイッチング素子Q11、オフ駆動手段OD11およびダイオードD12が昇圧動作を行い、出力端t7、t8間に接続した負荷LSをスイッチング動作変換回路SCで変換した直流電流で付勢して作動させる。その他の動作は、第1の実施形態におけるのと同様である。
【0064】
したがって、本発明の以上説明した各実施形態におけるスイッチング電源装置SRAの整流手段Recおよびスイッチング動作変換回路を複合回路にしても、所期の効果を奏することができる。したがって、整流手段Recおよびスイッチング動作変換回路をそれぞれ別設した回路をもって構成する必要がないし、また格別技術的意味を有さないことが理解できる。
【0065】
〔スイッチング電源装置の第7の実施形態〕
第7の実施形態は、図示を省略しているが、以上説明した各実施形態において、スイッチング電源装置SRAは、無負荷または負荷異常を検出する負荷状態検出手段および負荷状態検出手段が無負荷または負荷異常を検出した場合、スイッチング電源装置SRAの動作を停止または出力低減をさせる制御手段を具備している。そして、制御手段は、スイッチング電源装置SRAの動作停止後、所定時間保護動作を保持し、その後停止状態をリセットして最初の状態に復帰するように構成されている。保護動作開始からリセットまでの時間は、交流電源電圧の少なくとも半周期以上とするのが好ましい。しかし、所望により交流電源投入中は保護状態を保持するように構成してもよい。
【0066】
そうして、本実施形態においては、負荷の状態が異常時に安全を図ることができる。また、異常状態が解消すれば、自動的に再起動するようにすることができるし、またいったん交流電源を開放して再投入したときにリセットされるようすることもできる。
【符号の説明】
【0067】
AC…交流電源、DW…駆動巻線、L1…インダクタ、LS…負荷、OD…オフ駆動手段、PCD…位相制御回路、Q1…ノーマリオン形のスイッチング素子、Rec…整流手段、SC…スイッチング動作変換回路、SRA…スイッチング電源装置、t1、t2…入力端、t5、t6…入力端子、t3、t4…出力端子、t7、t8…出力端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相制御回路によって位相制御された位相制御交流電圧が印加される入力端と;
入力端に印加された位相制御交流電圧を整流して直流入力電圧に変換する整流手段と;
ノーマリオン形のスイッチング素子およびスイッチング素子のオフ駆動手段を含み、整流手段で整流した直流入力電圧が印加されるとオン状態のスイッチング素子によって入力電流を流して起動するとともに、スイッチング素子に流れる電流が所定値に達したときにオフ駆動手段がスイッチング素子をオフさせ、スイッチング素子がスイッチング動作を繰り返すことにより直流入力電圧を異なる出力電圧に変換するスイッチング動作変換回路と;
スイッチング動作変換回路の出力を負荷に供給する出力端と;
を具備していることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
起動時にスイッチング素子に流れる入力電流は、位相制御回路中の位相制御素子の自己保持電流より大きくて、かつ予定の最大電流を超えないように設定されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
オフ駆動手段は、スイッチング素子のソースと直列接続した定電流半導体素子であり;
スイッチング素子に流れる入力電流が予定の最大電流を超えるときに定電流半導体素子の端子電圧がスイッチング素子のゲート・ソース間電圧を閾値以下にすることによってスイッチング半導体素子をオフさせる保護回路を具備している;
ことを特徴とする請求項2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
オフ駆動手段は、ノーマリオフ形の定電流素子であり、そのゲート制御回路に平滑作用を呈するコンデンサを接続していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
交流電圧を位相制御する位相制御回路と;
入力端が位相制御回路を経由して交流電源に接続する請求項1ないし4のいずれか一記載のスイッチング電源装置と;
スイッチング電源装置の出力で動作する負荷と;
を具備していることを特徴とするか調節電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−85507(P2012−85507A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89621(P2011−89621)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】