説明

スイッチング電源装置

【課題】 可変周波数型のスイッチング電源装置において周波数が低くなるとトランスから可聴音が発生することがある。
【解決手段】 可変周波数型のスイッチング電源装置をトランス2の1次巻線にスイッチ3を直列に接続して構成する。トランス2の2次巻線N2 には整流平滑回路4を接続する。スイッチング周波数が可聴周波数か否かを判定するコンパレータ24を設ける。可聴周波数の時にはスイッチ3のオン時間幅を狭める。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スイッチング周波数が可聴周波数範囲に入る又は入るおそれがある可変周波数型のDC−DCコンバータ、インバータ等のスイッチング電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】スイッチング電源装置の1種である典型的なDC−DCコンバータは、直流電源と、この一端と他端との間に接続されたトランスの1次巻線とスイッチとの直列回路と、トランスの2次巻線に接続された整流平滑回路と、出力電圧検出回路と、スイッチ電流検出回路と、出力電圧検出回路及び電流検出回路の出力に基づいてスイッチをオン・オフ制御するための制御回路とから成る。制御回路はコンパレータを有し、このコンパレータは、電流検出回路の出力と電圧検出回路の出力で補正された参照電圧とを比較してスイッチのオン終了時点を決定する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、定格負荷又は通常負荷から軽負荷状態に移行した時に、出力電圧の上昇が生じるので、逆に参照電圧が低下し、また、電流検出回路から得られる三角波状の検出信号のピークレベルの低下が生じ、電流検出値のピークレベルがコンパレータの入力のダイナミックレンジの下限を下回ること又は参照電圧に達しないことが不規則的に発生する。スイッチがこのように不規則にオン・オフ動作する場合には、スイッチング周波数即ちスイッチのオン・オフ繰返し周波数が低くなり、単位時間当りのスイッチング回数が少なくなり、スイッチング電源装置の効率が向上する。しかし、スイッチング周波数が不規則になり、可聴周波数の範囲でスイッチングすると、トランスから可聴音が発生し、使用者に不快感を与える。また、軽負荷時の効率向上のために、スイッチを間欠的にオン・オフさせる場合においても上記と同様な問題が発生する。
【0004】そこで、本発明の第1の目的は、可聴音を阻止又は抑制することができるスイッチング電源装置を提供することにある。本発明の第2の目的は、可聴音を阻止又は抑制することができると共に軽負荷時における損失を大幅に軽減することができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し、上記第1の目的を達成するための本発明は、トランスと、前記トランスの巻線に対して直流電源から供給する直流電圧を断続するための1個又は複数のスイッチと、前記トランスに接続された出力回路とを有し、前記スイッチのスイッチング周波数を変えることができるように形成されたスイッチング電源装置であって、前記スイッチのスイッチング周波数が可聴周波数であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段から可聴周波数であることを示す出力が発生した時に前記スイッチの1回のスイッチング動作によって前記トランスに供給するエネルギー量を所定値以下に制限する手段とを有していることを特徴とするスイッチング電源装置に係わるものである。
【0006】なお、請求項2に示すように、巻線に印加される電圧V1 と時間幅Tonとの積V1 Tonを所定値以下に制御する手段を設けることができる。上記V1 Tonの所定値V1 TonはV1 Ton≦√(2EL)を満足する値とすることが望ましい。ここでEはスイッチの1回のオンによってトランスに供給されるエネルギー量であって、好ましくは70μJ(マイクロジュール)であり、Lはトランスの巻線のインダクタンスである。また、請求項3に示すようにスイッチのオン時間幅を所定値以下に制限する手段を設けることができる。このスイッチのオン時間幅の所定値の好ましい値は2μsである。また、請求項4に示すように、スイッチの電流のピーク値を所定値以下に制限する手段を設けることができる。上記ピーク値の所定値は、√(2E/L)であることが望ましい。また、上記第2の目的を達成するために、定格負荷時には可聴周波数よりも高いスイッチング周波数として、軽い負荷の時にのみ可聴周波数でのスイッチングが生じるように構成することができる。また、請求項6に示すように軽い負荷の時に間欠発振が生じるように構成することができる。
【0007】
【発明の効果】各請求項の発明によれば、スイッチング周波数が可聴周波数の範囲に入ると、トランスに供給されるエネルギー量が制限されるために可聴音の発生が阻止又は抑制され、使用者に不快感を与えなくなる。また、請求項5及び6の発明によれば、軽い負荷時にスイッチング周波数を可聴周波数範囲まで下げるので、単位時間当りのスイッチング周波数を大幅に低下することができ、効率向上を図ることができ、且つ可聴音の発生を阻止又は抑制することができる。
【0008】
【実施形態】次に、図1〜図4を参照して本発明の実施形態に従う可変周波数型スイッチング電源装置を説明する。
【0009】このスイッチング電源装置は、フライバック型DC−DCコンバータであって、大別して直流電源1と、トランス2と、電界効果トランジスタ(FET)から成るスイッチ3と、整流平滑回路4と、出力電圧検出回路5と、電流検出器としての電流検出抵抗6と、スイッチ制御信号形成回路7とから成る。
【0010】フライバック型DC−DCコンバータ回路を形成するために、トランス2は漏れインダクタンスを有する1次巻線N1 とこれに電磁結合された2次巻線N2 とを有する。1次巻線N1 とスイッチ3と電流検出用抵抗6との直列回路は電源1の一方の端子1aと他方の端子1bとの間に接続されている。
【0011】整流平滑回路4は整流ダイオードD1 と平滑用コンデンサC1 とから成り、平滑用コンデンサC1 は整流ダイオードD1 を介して2次巻線N2 に並列に接続されている。平滑用コンデンサC1 に接続された対の出力端子8a、8bは負荷9を接続するためのものである。
【0012】出力電圧検出回路5は、電圧検出抵抗10、11と、誤差増幅器12と、基準電圧源13と、発光ダイオード14とから成る。抵抗10、11は出力端子8a、8b間の電圧を検出し、この検出電圧を誤差増幅器12の一方の入力端子に送る。誤差増幅器12は検出電圧と基準電圧源13の基準電圧との差の値を出力する。発光ダイオード14は出力端子8aと誤差増幅器12の出力端子との間に接続されており、出力電圧に比例的に変化する光出力を発生する。
【0013】制御信号形成回路7は、第1のコンパレータ15と、第1の基準電圧Es1を発生する基準電圧源16と、分圧抵抗17と、ホトトランジスタ18と、パルス発生回路19と、RSフリップフロップ20と、NORゲート21と、駆動回路22と、増幅回路23と、第2のコンパレータ24と、第2の基準電圧Es2を発生する第2の基準電圧源25とから成る。
【0014】第1のコンパレータ15の一方の入力端子は電流検出用抵抗6とスイッチ3との接続点に接続されている。従って、コンパレータ15の一方の入力端子には電流検出抵抗6に流れる電流Ia に比例した電圧値Va を有する電流検出信号が供給される。第1の基準電圧源16の一端は電源1のグランド側の端子1bに接続され、第1の基準電圧源16の他方の端子は抵抗17に接続されている。発光ダイオード14に光結合されたホトトランジスタ18は抵抗17とグランド側端子1bとの間に接続されている。従って、抵抗17とホトトランジスタ18との接続点26には、第1の基準電圧Es1を抵抗17とホトトランジスタ18の抵抗とで分圧したものに相当する電圧値Vb を有する電圧帰還制御信号が得られる。接続点26は第1のコンパレータ15の他方の入力端子に接続され、且つ増幅回路23及び第2のコンパレータ24の一方の入力端子に接続されている。第1のコンパレータ15は電流検出信号の電圧値Va と電圧帰還制御信号の電圧値Vb とを図3(B)に示すように比較して図3(C)に示す出力を発生する。
【0015】パルス発生回路(OSC)19は、第1及び第2の入力端子19a、19bと出力端子19cとを有し、出力端子19cから図3(A)に示すように定格負荷又は重負荷時及び第1の軽負荷時には幅の狭いパルスを第1の周期T1 で発生し、第1の軽負荷よりも更に軽い第2の軽負荷時には高レベル期間が低レベル期間よりも長い方形波を第1の周期T1 よりも長い第2の周期T2 で発生する。このパルス発生回路19の詳細は追って説明する。
【0016】RSフリップフロップ20のセット端子SはNOT回路26を介してパルス発生回路19の出力端子19cに接続され、リセット端子Rは第1のコンパレータ15に接続されている。NORゲート21の一方の入力端子はパルス発生回路19の出力端子19cに接続され、他方の入力端子はフリップフロップ20の反転出力端子Qに接続され、出力端子は駆動回路22を介してスイッチ3の制御端子即ちゲートに接続されている。フリップフロップ20は図3(D)に示す信号を発生し、NORゲート21は図3(E)に示すスイッチ制御信号を出力する。
【0017】増幅回路23は接続点26に得られる電圧帰還信号を示す電圧値Vb を増幅して周波数制御電圧Vf を発生し、これをパルス発生回路19の第1の入力端子19aに送る。パルス発生回路19の出力周波数は周波数制御信号Vf に比例的に変化する。
【0018】第2のコンパレータ24は第2の基準電圧源25を伴なって可聴周波数検出手段即ち判定手段を構成するものであって、この一方の入力端子は接続点26に接続され、他方の入力端子は第2の基準電圧源25に接続され、出力端子はパルス発生回路19の第2の入力端子19bに接続されている。第2の基準電圧源25は、図3(F)に示す第2の基準電圧Es2を第2のコンパレータ24に供給する。第2の基準電圧Es2は、重負荷及び第1の軽負荷時の電圧帰還制御信号の電圧値Vb よりも低く、第2の軽負荷時の電圧帰還制御信号の電圧値Vb よりも高くなるように設定されている。従って、第2のコンパレータ24の出力電圧Vk は図3(G)に示すように変化し、Vb <Es2の条件を満足している時に可聴周波数を示す低レベル信号を出力する。即ち、負荷9が極めて小さい第2の軽負荷状態となると、出力電圧が上昇し、逆に電圧帰還制御信号の電圧値Vb が低下し、パルス発生回路19の出力周波数及びスイッチ3のスイッチング周波数が可聴周波数範囲に入る値まで低下する。第2のコンパレータ24は、スイッチング周波数に比例する電圧帰還制御信号の電圧値Vb と第2の基準電圧Es2とを比較するので、可聴周波数か否かを判定することができる。パルス発生回路19の出力周波数又はスイッチ3のスイッチング周波数を直接的に検出して可聴周波数を検出することも可能であるが、これに比べて図1の第2のコンパレータ24による可聴周波数検出は回路構成が簡単になるという特長を有する。
【0019】パルス発生回路19は、図2に示すように電圧制御発振器(VCO)31と、鋸波発生回路32と、第1及び第2のパルス形成用コンパレータ33、34と、第1及び第2のパルス形成用基準電圧源35、36と、選択回路37とから成る。第1の入力端子19aに接続された電圧制御発振器31は、増幅回路23から供給される電圧制御信号に比例的に変化する出力周波数を有してクロックパルスを図4(A)に示すように発生し、鋸波発生回路32をトリガする。鋸波発生回路32は、図4(A)のt1 、t3 、t5 、t6 、t8 等で発生する電圧制御発振器31の出力パルスに応答して図4(B)に示す三角波即ち鋸波を発生する。第1のパルス形成用コンパレータ33の正入力端子は鋸波発生回路32に接続され、負入力端子は第1のパルス形成用基準電圧源35に接続されている。第1のパルス形成用基準電圧源35の基準電圧Vr1は図4(B)に示すように鋸波電圧Vt のピーク値よりも少し下のレベルに設定されているので、図4(C)のt2〜t3 区間、t4 〜t5 区間に示すように比較的狭い第1のパルス幅W1 を有する高レベルパルスを発生する。第2のパルス形成用コンパレータ34の正入力端子は鋸波発生回路32に接続され、負入力端子は第2のパルス形成用基準電圧源36に接続されている。第2のパルス形成用基準電圧源36は図4(B)に示すように第1のパルス形成用基準電圧Vr1よりも低い第2のパルス形成用基準電圧Vr2を発生する。この基準電圧Vr2は鋸波電圧Vt の最低レベルよりも少し高いレベルであるので、第2のパルス形成用コンパレータ34は図4(C)に示すようにt7 〜t8 区間、t9 〜t10区間等で高レベルとなる比較的広い第2のパルス幅W2 を有するパルスを発生する。選択回路37は第1及び第2の選択スイッチ37a、37bとNOT回路37cとから成る。第1の選択スイッチ37aは第1のパルス形成用コンパレータ33と出力端子19cとの間に接続され、その制御端子は第2の入力端子19bに接続されている。第2の選択スイッチ37bは第2のパルス形成用コンパレータ34と出力端子19cとの間に接続され、その制御端子はNOT回路37cを介して第2の入力端子19bに接続されている。第2の入力端子19bには図3(G)に示す図1のコンパレータ24の出力Vk が入力する。従って、図3(G)に示すように重負荷又は第1の軽負荷状態のためにVk が高レベルの時に、図2の第1の選択スイッチ37aがオンになり、図4(C)のt5 時点よりも前のパルスが出力端子19cから送出され、第2の軽負荷状態のためにVk が低レベルになった時に第2の選択スイッチ37bがオンになり、図4(C)のt6 時点以後に示すパルスが出力端子19cから送出される。この結果、負荷の変化に応じて変化するパルスが図3(A)に示すように出力端子19cから発生する。
【0020】
【正常モード動作】図3のt6 時点よりも前に示す正常モード時には図3(G)のVk が高レベルであるので、図2の第1の選択スイッチ37aがオンになり。図3(A)に示すようにパルス発生回路19から狭いパルスが発生する。フリップフロップ20のセット入力端子SはNOT回路26を介してパルス発生回路19に接続されているので、図3(A)のパルスの高レベルから低レベルへの転換に同期してトリガされ、図3のt1 、t3 、t4 、t6 等でフリップフロップ20はセット状態となり、この位相反転出力端子Qは図3(D)に示すように低レベルに転換する。図3のt1 〜t2 区間、t4 〜t5 区間等ではNORゲート21の両入力が低レベルになるので、NORゲート21の出力は図3(E)に示すように高レベルになる。このNORゲート21の高レベル出力はスイッチ3のオン制御パルスとなる。図3R>3のt6 よりも前の正常モード時には、パルス発生回路19によってスイッチ3のオン時間幅の制限が行われていない。従って、フリップフロップ20がリセットされるまでスイッチ3のオンが継続する。スイッチ3のオン期間には1次巻線N1 のインダクタンスによって1次巻線N1 及びスイッチ3及び電流検出抵抗6を流れる電流が三角波状に増大し、電流検出抵抗6から図3(B)に示す電流検出信号Va が得られる。t2 、t5 等で電流検出信号Va が電圧帰還制御信号Vb に達すると、第1のコンパレータ15から図3(C)に示すパルスが発生し、これによりフリップフロップ20がリセットされ、フリップフロップ20及びNORゲート21の出力が反転し、スイッチ3のオン期間が終了する。電圧帰還制御信号Vb のレベルは負荷9の大きさに比例的に変化するので、フリップフロップ20のセット時間及びNORゲート21の出力パルスの幅が負荷9の大きさに比例的に変化し、且つスイッチ3のオン・オフ繰返し周波数は負荷9の大きさに反比例的に変化する。
【0021】
【間欠モード動作】図3のt7 以後に示す第2の軽負荷状態では、t1 〜t6 に示す重負荷及び第1の軽負荷よりも負荷9が十分に小さくなるので、図3(F)に示すように電圧帰還制御信号Vb が第2の基準電圧Es2よりも低くなる区間が間欠的に生じる。この様な状態になると図3(G)のt7 〜t11に示すように第2のコンパレータ24の出力Vk が低レベルになり、パルス発生回路19の出力Vosc の高レベルパルスの幅が図3(A)に示すように大幅に広くなり、この出力Vosc の低レベル区間t7 〜t8 、t9 〜t10が大幅に狭くなる。スイッチ3は図3(A)のVosc の低レベル区間でのみオン状態になり得るので、スイッチ3のオン時間幅Tonが図3(B)の電流検出信号Va が電圧帰還制御信号Vb に達する前に終了する。この結果、スイッチ3の1回のオンによってトランス2に供給されるエネルギー量が制限され、トランス2からの可聴音の発生を防止又は抑制することができる。即ち、第2の軽負荷時には電圧帰還制御信号Vb が大幅に低くなるので、スイッチ3のオン・オフ周期T2 が大幅に長くなり、スイッチング周波数が例えば20kHz以下のような可聴音周波数の領域に入るが、トランス2に供給されるエネルギーが小さくなるので、トランス2の振動に基づく可聴音の発生が阻止又は抑制される。図3のt7 〜t11区間に示すようにスイッチ3のオン時間Tonが強制的に狭められると、出力端子8a、8b間の出力電圧V0 の低下が生じる。出力電圧V0 の低下は見掛け上負荷の増大であり、電圧帰還制御信号Vb が図3のt11以後に示すように第2の基準電圧Es2よりも高くなる。この結果、t11以後において図3のt6 以前と同様な動作が生じる。しかし、負荷9の大きさがt1 〜t11区間と同一であれば、再びt7 〜t11区間と同一の動作が生じる。この電圧帰還制御信号Vb に依存したスイッチ3のオン・オフ動作が間欠的に生じる。可聴音防止のためにオン幅が制限された動作の間に電圧帰還制御信号Vb に基づく動作が介在することによって出力電圧V0 をほぼ目的値に保つことができる。
【0022】図3のt7 〜t11に示す第2のモード期間におけるスイッチ3の1回のオン時間Tonにトランス2に供給するエネルギー量Eを70μJ(マイクロジュール)以下にすると、可聴音の発生を効果的に抑制することができることを実験的に確認した。スイッチ3の1回当りのオン期間にトランス2に供給されるエネルギーEと直流電源1の電圧V1 とスイッチ3のオン時間幅Tonの積V1 Tonとの間に次の関係式が成立する。
E=(V1 Ton)/(2L) (1)
ここで、Lは1次巻線N1 のインダクタンスである。上記(1)式に基づいて次の式が成立する。
V1 Ton=√(2EL) (2)
(2)式のEを70μJ以下にするとトランス2の可聴音を抑制することができるので、V1 Tonの値を√{2(70μJ)L}
以下に設定すると可聴音防止が達成される。一般には電源電圧V1 はさほど変化しないので、オン時間Tonを変えることが望ましい。TonとEとの間には次式が成立する。
Ton={√(2EL}/V1 (3)
オン時間Tonの幅は、スイッチング周波数及び間欠発振等を考慮して2μs以下にすることが望ましい。
【0023】電源電圧V1 が一定、1次巻線N1 のインダクタンスLが一定の場合には、電流Ia の傾きが一定となる。電流Ia のピーク値をIp とすれば、スイッチ3の1回当りのオンでトランス2に供給できるエネルギーを次式で示すことができる。
E=(1/2)LIp (4)
この(4)式からIp を次式で示すことができる。
Ip =√(2E/L) (5)
可聴音を抑制するためにはEを70μJ以下にすることが望ましいので、電流Ia のピーク値Ip を√{2(70μJ)/L}
以下の値に制限すると、トランス2の可聴音を抑制することができる。
【0024】本実施形態によれば、軽負荷時にスイッチング周波数を可聴音領域まで下げることができるので、スイッチ3の単位時間当りのスイッチング回数を大幅に低減して効率を向上させることができる。また、スイッチング周波数が可聴音領域まで下げられてもスイッチ3の1回のオンによってトランス2に供給されるエネルギーが制限されているので、トランス2の振動による可聴音の発生を抑制することができ、低騒音化を達成することができる。また、可聴周波数領域が検出されてスイッチ3のオン時間Tonが制限された後に電圧帰還制御信号Vb によるオン時間Tonの制御が再開され、出力電圧V0 が一定値に制御される。この結果、可聴音を抑制するためにスイッチ3のオン時間Tonを強制的に短くする期間を設けたにも拘らず、負荷9に安定化した電圧を供給することができる。また、スイッチング周波数を可聴周波数まで広げたので、負荷9の可変範囲を大幅に広げることができる。
【0025】
【第2の実施形態】次に、図5〜図7を参照して第2の実施形態のスイッチング電源装置を説明する。但し、図5R>5において図1と実質的に同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0026】図5のスイッチング電源装置は、図1の回路から電流検出抵抗6と第1のコンパレータ15とを省き、この代りにオン幅制御回路40を設け、この他は図1R>1と同一に構成したものである。図5の変形された制御信号形成回路7aの中のオン幅制御回路40の出力ライン40aは図1の第1のコンパレータ15と同様にフリップフロップ20のリセット端子に接続されている。また、スイッチ3のオンの開始時点を決めるためにNORゲート21の出力ライン21aがオン幅制御回路40に接続されている。このオン幅制御回路40はスイッチ3のオン期間の終了時点を示す信号を形成して図1の第1のコンパレータ15の出力と同様にフリップフロップ20をリセットする。
【0027】オン幅制御回路40は、図6に示すように電源端子41とグランドとの間に接続されたホトトランジスタ42とコンデンサ43との直列回路を有する。ホトトランジスタ42は図5のホトトランジスタ18と同様に発光ダイオード14に光結合されている。従って、コンデンサ43は出力電圧V0 に比例した速度で充電される。コンデンサ43を放電させるためにトランジスタから成る放電用スイッチ44がコンデンサ43に並列接続されている。放電用スイッチ44の制御端子はNOT回路45を介してNORゲート21の出力ライン21aに接続されているので、主スイッチ3のオフ期間にオンになり、コンデンサ43の充電を禁止する。コンパレータ46の正入力端子はコンデンサ43に接続され、負入力端子は基準電圧源47に接続されている。従って、図7R>7(A)に示すようにコンデンサ43の鋸波電圧V43が基準電圧源47の電圧Vr1に達すると、コンパレータ46から図7(B)に示すパルスが発生し、図5のフリップフロップ20がリセットされ、スイッチ3のオン期間が終了する。コンデンサ43の充電速度は出力電圧V0 に比例するので、出力電圧V0 の変化によって基準電圧Vr1までに達する時間長が図7で破線で示すように変化し、図5のスイッチ3のオン時間幅が変化する。
【0028】第2の実施形態はスイッチ3のオン終了時点の決定方法を第1の実施形態と変え、この他は第1の実施形態と同一にしたものであるので、第1の実施形態と同一の効果を得ることができる。
【0029】
【変形例】本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、例えば次の変形が可能なものである。
(1) トランスに2つのスイッチによって交互に電力を供給する周知のハーフブリッジ型のDC−DCコンバータ又はインバータ、又は4つのスイッチによってトランスに交互に電力を供給するブリッジ型DC−DCコンバータ又はインバータにも本発明を適用することができる。要するに少なくとも1つのスイッチとトランスとを有する可変周波数型のあらゆるスイッチング電源装置に本発明を適用することができる。
(2) スイッチ3のオン時間幅の制御回路、スイッチ3のオン開始の制御回路を種々変形することができる。
(3) スイッチ3をバイポーラトランジスタ等の半導体スイッチにすることができる。
(4) 発光ダイオード14とホトトランジスタ18、42との光結合の部分を電気的結合回路とすることができる。
(5) 可聴周波数か否かを周波数検出回路又はスイッチ3のオン・オフ制御パルスの計数によって判定することができる。例えばスイッチ3の制御パルスをカウンタで計測し、所定時間当りのパルス数が所定値以下になったら可聴周波数領域であると判定することができる。
(6) 負荷9の大きさの変化によってスイッチング周波数を段階的に変化させることができる。
(7) 実施形態のスイッチング電源装置では出力電圧V0 の検出に基づいて負荷の大きさを判断してスイッチング周波数を変えているが、負荷9の大きさに連動してスイッチング周波数を変える構成にすることができる。
(8) スイッチ3のオン及びオフ時のスイッチング損失を低減するための周知の共振回路を付加することができる。
(9) NOT回路26を省くことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に従うスイッチング電源装置を示す回路図である。
【図2】図1のパルス発生回路を詳しく示すブロック図である。
【図3】図1の各部の状態を示す波形図である。
【図4】図2のパルス発生回路の各部の状態を示す波形図である。
【図5】第2の実施形態のスイッチング電源装置を示す回路図である。
【図6】図5のオン幅制御回路を示す回路図である。
【図7】図6の各部の状態を示す波形図である。
【符号の説明】
1 直流電源
2 トランス
3 スイッチ
4 整流平滑回路
5 出力電圧検出回路
6 電流検出抵抗
7 スイッチ制御信号形成回路
15 第1のコンパレータ
19 パルス発生回路
20 フリップフロップ
24 第2のコンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トランスと、前記トランスの巻線に対して直流電源から供給する直流電圧を断続するための1個又は複数のスイッチと、前記トランスに接続された出力回路とを有し、前記スイッチのスイッチング周波数を変えることができるように形成されたスイッチング電源装置であって、前記スイッチのスイッチング周波数が可聴周波数であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段から可聴周波数であることを示す出力が発生した時に前記スイッチの1回のスイッチング動作によって前記トランスに供給するエネルギー量を所定値以下に制限する手段とを有していることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】 トランスと、前記トランスの巻線に対して直流電源から供給する直流電圧を断続するための1個又は複数のスイッチと、前記トランスに接続された出力回路とを有し、前記スイッチのスイッチング周波数を変えることができるように形成されたスイッチング電源装置であって、前記スイッチのスイッチング周波数が可聴周波数であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段から可聴周波数であることを示す出力が発生した時に前記スイッチのスイッチング動作で前記トランスの巻線に印加される電圧と時間幅との積の値を所定値以下に制限する手段とを有していることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】 トランスと、前記トランスの巻線に対して直流電源から供給する直流電圧を断続するための1個又は複数のスイッチと、前記トランスに接続された出力回路とを有し、前記スイッチのスイッチング周波数を変えることができるように形成されたスイッチング電源装置であって、前記スイッチのスイッチング周波数が可聴周波数であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段から可聴周波数であることを示す出力が発生した時に前記スイッチのオン時間幅を所定値以下に制限する手段とを有していることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】 トランスと、前記トランスの巻線に対して直流電源から供給する直流電圧を断続するための1個又は複数のスイッチと、前記トランスに接続された出力回路とを有し、前記スイッチのスイッチング周波数を変えることができるように形成されたスイッチング電源装置であって、前記スイッチのスイッチング周波数が可聴周波数であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段から可聴周波数であることを示す出力が発生した時に前記スイッチの電流のピーク値を所定値以下に制限する手段とを有していることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項5】 前記スイッチは、定格負荷時に可聴周波数よりも高いスイッチング周波数でオン・オフされ、前記定格負荷よりも軽い負荷時に可聴周波数に相当するスイッチング周波数でオン・オフされるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】 前記軽い負荷時に間欠発振することを特徴とする請求項5記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−153055(P2002−153055A)
【公開日】平成14年5月24日(2002.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−343164(P2000−343164)
【出願日】平成12年11月10日(2000.11.10)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】