説明

スイッチング電源装置

【課題】突入電流を低く抑えることができるとともに、信頼性の高いスイッチング電源装置を実現する。
【解決手段】本発明に係るスイッチング電源装置1は、突入電流を抑制する突入電流抑制回路5と、スイッチング電源装置1の出力端OUT1・OUT2の少なくとも1つからの出力電圧が規定値以上である場合に、突入電流抑制回路5の抑制動作を停止させる抑制動作制御回路6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関し、特に、突入電流を抑制するための突入電流抑制回路を備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のスイッチング電源装置101を示す回路図である。スイッチング電源装置101は、整流回路102、力率改善回路(PFC)103、DC/DCコンバータ104および突入電流抑制回路105を備えている。
【0003】
整流回路102は、4つのダイオードからなるダイオードブリッジDB1および平滑コンデンサC1を備えている。
【0004】
PFC103は、2つのコンデンサC2・C3、3つの抵抗R1〜R3、2つのダイオードD1・D2、2つのコイルN1・N2からなるトランスT1、トランジスタQ1および制御回路IC1を備えている。
【0005】
DC/DCコンバータ104は、3つのコンデンサC4〜C6、抵抗R4、2つのダイオードD4・D5、2つのコイルN3・N4からなるトランスT2、2つのコイルN5・N6からなるトランスT3、トランジスタQ2および制御回路IC2を備えている。
【0006】
突入電流抑制回路105は、抵抗R5、ダイオードD6、サイリスタSCR1およびコイルN7を備えている。抵抗R5とサイリスタSCR1とは、ダイオードブリッジDB1とPFC103との間で並列接続されている。
【0007】
スイッチング電源装置101の入力端AC(L)・AC(N)に入力された交流電流は、ダイオードブリッジDB1によって全波整流され、コンデンサC1によって平滑される。PFC103は昇圧回路であるため、PFC103の入力電圧は、トランスT1のコイルN1・N2、スイッチング素子であるトランジスタQ1およびダイオードD2によって昇圧され、抵抗R2および抵抗R3によって所望の電圧に制御される。これにより、電解コンデンサC3から直流電圧が出力される。
【0008】
また、入力端AC(L)・AC(N)に交流電流が入力されると、PFC103の平滑コンデンサであるコンデンサC2を充電する突入電流が発生する。突入電流抑制回路105の抵抗R5は、その突入電流を抑制するための抵抗である。突入電流は、抵抗R5および制御回路IC1を駆動する抵抗R1を通ってコンデンサC2を充電する。コンデンサC2の両端の電圧(Vcc電圧)が制御回路IC1の駆動電圧に達すると、制御回路IC1は駆動を開始する。
【0009】
制御回路IC1が動作を開始し、トランスT1に電流が流れると、トランスT1に設けた、サイリスタSCR1のゲート用巻線であるコイルN7に電圧が発生する。この電圧がサイリスタSCR1をONさせ、抵抗R5の両端を短絡状態にする。ダイオードD2とコンデンサC3によって平滑された直流電圧は、DC/DCコンバータ104の制御回路IC2を駆動する抵抗R4を通り、制御回路IC2を駆動させる。
【0010】
DC/DCコンバータ104では、抵抗R4によりコンデンサC4が充電され、コンデンサC4の両端の電圧(Vcc電圧)が制御回路IC2の駆動電圧に達すると制御回路IC2は発振動作を開始し、トランジスタQ2がスイッチングを開始する。これにより、トランスT2の2次側のコイルN4に電圧が発生し、ダイオードD4およびコンデンサC5によって整流平滑された電圧が出力端OUT1に出力される。同様に、ダイオードD5およびコンデンサC6によって整流平滑された電圧が出力端OUT2に出力される。
【0011】
図5に示す構成は、例えば特許文献1〜4に開示されている。
【0012】
図6は、スイッチング電源装置101の各回路素子の電圧の波形を示す図である。
【0013】
図6(a)は、PFC103の制御回路IC1のVcc電圧の波形を示している。期間t1において、PFC103の入力電流が抵抗R1を通ってコンデンサC2を充電し、Vcc電圧が制御回路IC1の駆動電圧に達すると、制御回路IC1は駆動を開始する。制御回路IC1に供給されるVcc電圧は、コンデンサC2の両端の電圧のみであるため、期間t2において、低下を開始する。このとき、制御回路IC1は駆動を開始しているため、トランスT1のコイルN2に発生した電圧は、期間t3において、徐々に上昇し、PFC103の出力電圧×(N2の巻数/N1の巻数)の電圧になる。
【0014】
図6(b)は、抵抗R5の出力電圧を示している。PFC103が動作しない期間t1では、抵抗R5の出力電圧はコンデンサC1により平滑される。一方、PFC103が動作を開始すると、抵抗R5の出力電圧の波形は、全波整流の電圧波形となる。
【0015】
図6(c)は、PFC103の出力電圧であるコンデンサC3の両端の電圧を示している。PFC103が動作していない期間t1では、AC電圧が全波整流され平滑された電圧がコンデンサC3に発生する。一方、PFC103が動作を開始すると、コンデンサC3の両端の電圧は徐々に上昇し、所望の電圧となる。
【0016】
図6(d)は、PFC103のトランジスタQ1のドレイン−ソース間電圧の波形を示している。期間t2において、制御回路IC1がトランジスタQ1に対するスイッチング制御を開始する。
【0017】
図6(e)は、サイリスタSCR1のOFF/ONを示している。期間t2において制御回路IC1が動作を開始して、トランスT1に電流が流れると、コイルN7に電圧が発生し、この電圧がサイリスタSCR1をONさせる。これにより、抵抗R5の両端は短絡状態となる。
【0018】
図6(f)は、DC/DCコンバータ104の制御回路IC2のVcc電圧の波形を示している。AC電源を投入した時点から、抵抗R4によってコンデンサC4への充電が開始され、Vcc電圧が制御回路IC2の起動電圧に達すると、制御回路IC2は起動を開始し、図6(g)に示す出力電圧を発生する。これにより、出力端OUT1および出力端OUT2から図6(h)に示す電流が出力される。
【0019】
また、図7は、スイッチング電源装置101の出力の負荷が小さい場合、または、無負荷状態からスイッチング電源装置101に負荷が接続された場合の、スイッチング電源装置101の各回路素子の電圧波形を示す図である。
【0020】
図7(a)は、PFC103の制御回路IC1のVcc電圧の波形を示している。前述のように、期間t1において、Vcc電圧が制御回路IC1の駆動電圧に達すると、制御回路IC1は駆動を開始し、Vcc電圧は、期間t2において低下を開始し、期間t3において徐々に上昇する。
【0021】
図6(b)は、抵抗R5の出力電圧を示している。出力端OUT1および出力端OUT2に接続される負荷が小さい場合、または、負荷が接続されていない状態の場合、PFC103は間欠発振状態になる。すなわち、PFC103は、期間t4において発振を停止し、期間t5では発振を再開し、その後も発振停止と発振再開とを繰り返す。PFC103が間欠発振状態となっている間に、図7(h)に示すように、出力端OUT1または出力端OUT2に接続されている負荷が増大した場合、PFC103は間欠発振状態から連続発振状態に移行する(期間t7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2008−125316号公報(2008年5月29日公開)
【特許文献2】特開2006−333608号公報(2006年12月7日公開)
【特許文献3】特開2000−134919号公報(2000年5月12日公開)
【特許文献4】特開昭63−262026号公報(1988年10月28日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
例えば、1部屋で多数のLED照明機器を同時に起動させる場合、LED照明機器に内臓のスイッチング電源の突入電流が大きくなるため、入力電圧の低下が起こる。このため、周辺機器への入力電圧が低下することで、周辺機器に誤動作が発生するおそれがある。よって、スイッチング電源では、突入電流を小さくすることが求められる。
【0024】
図5に示す従来のスイッチング電源装置101では、突入電流抑制用の抵抗R5の抵抗値を大きくすることで、突入電流を小さくすることができる。例えば、入力電圧AC200Vの製品において、突入電流を3A以下にしたいときは、
200(V)×√2÷3(A)≒94.28(Ω)
となるので、抵抗R5の抵抗値を95Ω以上にすればよい。
【0025】
しかしながら、従来のスイッチング電源装置101では、抵抗R5の抵抗値を大きくすると、信頼性が低下するという問題がある。
【0026】
図8は、突入電流抑制用の抵抗R5の抵抗値が大きい場合の、スイッチング電源装置101の各回路素子の電圧の波形を示す図である。
【0027】
図8(a)に示すように、PFC103の制御回路IC1のVcc電圧は、期間t1では、抵抗R1およびコンデンサC2によって上昇し、Vcc電圧が制御回路IC1の起動電圧に達すると、制御回路IC1は起動を開始する。また、図8(f)に示すように、制御回路IC2のVcc電圧が上昇して、制御回路IC2の駆動電圧に達すると、図8(g)に示すように、出力端OUT1および出力端OUT2の電圧は上昇を開始する。
【0028】
ここで、出力端OUT1および出力端OUT2に接続される負荷が、シーケンス制御を持たず、電圧が印加されれば動作するものである場合、出力端OUT1および出力端OUT2の負荷電流の波形は、図8(h)に示す波形となる。負荷に電圧が印加された時点では、図8(e)に示すように、抵抗R5の両端を短絡させるためのサイリスタSCR1がON状態でないため、図8(b)に示すように、抵抗R5における電圧降下が大きくなる。
【0029】
さらに、期間t2において、Vcc電圧が制御回路IC1の駆動電圧に達すると、制御回路IC1は動作を開始する。しかしながら、抵抗R5の抵抗値が大きいため、コンデンサC2の放電量が大きくなり、N2巻線からの電圧供給が開始されるまでに、Vcc電圧は制御回路IC1のリセット電圧以下になる。そのため、制御回路IC1は、駆動を停止し、PFC103は発振を停止する。その後、再びコンデンサC2への充電が開始され、Vcc電圧が上昇するが、Vcc電圧が制御回路IC1の駆動電圧に達しても、コンデンサC2の放電量が大きいために、Vcc電圧は制御回路IC1のリセット電圧以下になる。
【0030】
このように、突入電流抑制用の抵抗R5の抵抗値が大きい場合、コンデンサC2の充電、制御回路IC1の駆動および制御回路IC1のリセットが繰り返されるため、サイリスタSCR1のON状態が維持できない。すなわち、突入電流抑制回路105は、抑制動作を一旦停止した後も、抑制動作を間欠的に継続する。そのため、抵抗R5の発熱が大きくなり、抵抗R5は破壊に至る。
【0031】
さらに、従来のスイッチング電源装置101の問題点について、図9を参照して説明する。図9は、スイッチング電源装置101の出力の負荷が小さい場合、または、無負荷状態からスイッチング電源装置101に負荷が接続された場合の、スイッチング電源装置101の各回路素子の電圧波形を示す図である。
【0032】
図9(b)に示すように、期間t4以降、PFC103は間欠発振状態となる。ここで、図9(h)に示すように、PFC103が間欠動作中の期間t6に出力端OUT1および出力端OUT2の負荷が大きくなると、制御回路IC1が停止し、サイリスタSCR1がOFFの状態であるため、抵抗R5による電圧降下が大きくなる。そのため、図9(a)に示すように、Vcc電圧は制御回路IC1の駆動電圧以下になり、その後、制御回路IC1の駆動と停止とが繰り返される。したがって、サイリスタSCR1のON状態は維持できず、抵抗R5の発熱が大きくなり、抵抗R5は破壊に至る。
【0033】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、突入電流を低く抑えることができるとともに、信頼性の高いスイッチング電源装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
前記の課題を解決するために、本発明に係るスイッチング電源装置は、突入電流を抑制する突入電流抑制回路を備えるスイッチング電源装置であって、前記スイッチング電源装置の出力端からの出力電圧が規定値以上である場合に、前記突入電流抑制回路の抑制動作を停止させる抑制動作制御回路を備えることを特徴としている。
【0035】
上記の構成によれば、出力電圧が規定値以上である場合に、抑制動作制御回路が、突入電流抑制回路の抑制動作を停止させる。そのため、例えば、突入電流を抑制するための突入電流防止抵抗の抵抗値を高く設定すること等により、突入電流を小さくした場合であっても、突入電流抑制回路は、抑制動作の停止後、抑制動作を間欠的に継続することはないため、突入電流防止抵抗の破壊を防止することができる。
【0036】
したがって、突入電流を低く抑えることができるとともに、信頼性の高いスイッチング電源装置を実現することができる。
【0037】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記出力端を複数備え、前記抑制動作制御回路は、前記出力端の少なくとも1つからの出力電圧が規定値以上である場合に、前記突入電流抑制回路の抑制動作を停止することが好ましい。
【0038】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記規定値は、前記スイッチング電源装置の定常動作時の出力電圧の50%であることが好ましい。
【0039】
上記の構成によれば、突入電流抑制回路は突入電流を充分に抑制することができる。
【0040】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記突入電流抑制回路は、突入電流抑制抵抗と、当該突入電流抑制抵抗に並列接続されたスイッチング素子とを備え、前記抑制動作制御回路は、前記場合に前記スイッチング素子を導通させることが好ましい。
【0041】
上記の構成によれば、スイッチング素子が導通すると、突入電流抑制抵抗の両端が短絡するため、突入電流抑制回路の抑制動作が停止する。
【0042】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記抑制動作制御回路は、前記スイッチング電源装置の出力電圧が前記規定値以上であるか否かを判定する判定回路と、前記スイッチング電源装置の出力電圧が前記規定値以上であると判定された場合に、前記スイッチング素子を導通させるスイッチング制御回路とを備えることが好ましい。
【0043】
上記の構成によれば、スイッチング電源装置の出力電圧が規定値以上である場合に、突入電流抑制回路の抑制動作が停止する。
【0044】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記判定回路は、前記出力端の正負の電源ライン間に設けられた分圧抵抗回路と、前記分圧抵抗回路によって分圧された電圧と基準電圧とを比較するコンパレータとを備え、前記スイッチング制御回路は、前記コンパレータの出力に応じて、前記スイッチング素子の導通/非導通を制御することが好ましい。
【0045】
上記の構成によれば、コンパレータの出力が、判定回路の判定結果に対応するため、スイッチング電源装置の出力電圧が規定値以上である場合に、突入電流抑制回路の抑制動作が停止する。
【0046】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記スイッチング制御回路は、発光素子と、抵抗素子と、前記コンパレータの出力に応じてON/OFFするコンパレータ用スイッチング素子と、前記突入電流抑制回路の前記スイッチング素子の制御端子に接続され、前記発光素子の発光に応じてON/OFFするフォトトランジスタとを備え、前記発光素子と前記抵抗素子と前記コンパレータ用スイッチング素子とは、前記出力端の正負の電源ライン間に直列接続され、前記発光素子と前記フォトトランジスタとは、フォトカプラを構成していることが好ましい。
【0047】
上記の構成によれば、スイッチング制御回路は、判定回路の判定結果をフォトカプラを介して帰還させる。そのため、スイッチング電源装置の出力端と突入電流抑制回路とが絶縁されている場合であっても、スイッチング電源装置の出力電圧が規定値以上である場合に、突入電流抑制回路の抑制動作を停止させることができる。
【0048】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記判定回路は、ツェナーダイオードを備え、前記スイッチング制御回路は、抵抗素子を備え、前記ツェナーダイオードと前記抵抗素子とは、前記出力端の正の電源ラインと上記スイッチング素子の制御端子との間に直列接続されていることが好ましい。
【0049】
上記の構成によれば、ツェナーダイオードのブレークダウン電圧の値を前記規定値に設定することにより、スイッチング電源装置の出力電圧が規定値以上である場合に、突入電流抑制回路の抑制動作を停止させることができる。
【0050】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記判定回路は、ツェナーダイオードを備え、前記スイッチング制御回路は、発光素子と、抵抗素子と、前記突入電流抑制回路の前記スイッチング素子の制御端子に接続され、前記発光素子の発光に応じてON/OFFするフォトトランジスタとを備え、前記ツェナーダイオードと前記発光素子と前記抵抗素子とは、前記出力端の正負の電源ライン間に直列接続され、前記発光素子と前記フォトトランジスタとは、フォトカプラを構成していることが好ましい。
【0051】
上記の構成によれば、ツェナーダイオードのブレークダウン電圧の値を前記規定値に設定することにより、スイッチング電源装置の出力端と突入電流抑制回路とが絶縁されている場合であっても、スイッチング電源装置の出力電圧が規定値以上である場合に、突入電流抑制回路の抑制動作を停止させることができる。
【0052】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記スイッチング素子は、サイリスタであることが好ましい。
【0053】
上記の構成によれば、出力電圧の高いスイッチング電源装置に本発明を適用することができる。
【0054】
本発明に係るスイッチング電源装置では、交流電源に接続され直流電圧を得る力率改善回路と、前記力率改善回路からの直流電圧を前記出力電圧に変換して出力するDC/DCコンバータとをさらに備えてもよい。
【0055】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記DC/DCコンバータは、複数の出力端を備えてもよい。
【0056】
本発明に係るスイッチング電源装置では、前記DC/DCコンバータを複数備え、前記DC/DCコンバータの各々は、単一の出力端を備えてもよい。
【発明の効果】
【0057】
以上のように、本発明に係るスイッチング電源装置は、突入電流を抑制する突入電流抑制回路を備えるスイッチング電源装置であって、前記スイッチング電源装置の出力端からの出力電圧が規定値以上である場合に、前記突入電流抑制回路の抑制動作を停止させる抑制動作制御回路を備える構成である。したがって、突入電流を低く抑えることができるとともに、信頼性の高いスイッチング電源装置を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係るスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図5】従来のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図6】上記従来のスイッチング電源装置の各回路素子の電圧の波形を示す図である。
【図7】上記従来のスイッチング電源装置の出力の負荷が小さい場合、または、無負荷状態から当該スイッチング電源装置に負荷が接続された場合の、当該スイッチング電源装置の各回路素子の電圧波形を示す図である。
【図8】突入電流抑制用の抵抗の抵抗値が大きい場合の、上記従来のスイッチング電源装置の各回路素子の電圧の波形を示す図である。
【図9】上記従来のスイッチング電源装置の出力の負荷が小さい場合、または、無負荷状態から当該スイッチング電源装置に負荷が接続された場合の、当該スイッチング電源装置の各回路素子の電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明に係るスイッチング電源装置は、突入電流を抑制する突入電流抑制回路を備えるスイッチング電源装置であって、上記スイッチング電源装置の出力端からの出力電圧が規定値以上である場合に、上記突入電流抑制回路の抑制動作を停止させる抑制動作制御回路を備えることを特徴とする。そのため、例えば、突入電流を抑制するための突入電流防止抵抗の抵抗値を高く設定すること等により、突入電流を小さくした場合であっても、突入電流抑制回路は、抑制動作の停止後、抑制動作を間欠的に継続することはないため、突入電流防止抵抗の破壊を防止することができる。
【0060】
したがって、本発明に係るスイッチング電源装置は、突入電流を低く抑えることができるとともに、高い信頼性を有している。よって、本発明に係るスイッチング電源装置は、特にLED照明機器など、多数の機器を同時に起動させることがあるために突入電流を低く制御する必要がある機器に好適である。
【0061】
以下、本発明に係るスイッチング電源装置の具体的な実施の形態について、図1〜図4に基づいて説明する。
【0062】
〔実施の形態1〕
本発明の第1の実施の形態について図1に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0063】
(スイッチング電源装置1の構成)
図1は、本実施の形態に係るスイッチング電源装置1を示す回路図である。スイッチング電源装置1は、整流回路2、力率改善回路(PFC)3、DC/DCコンバータ4、突入電流抑制回路5および抑制動作制御回路6を備えている。
【0064】
整流回路2は、4つのダイオードからなるダイオードブリッジDB1および平滑コンデンサC1を備えている。
【0065】
PFC3は、整流回路2を介して交流電源に接続され、直流電圧を出力する回路である。PFC3は、2つのコンデンサC2・C3、3つの抵抗R1〜R3、2つのダイオードD1・D2、2つのコイルN1・N2からなるトランスT1、トランジスタQ1および制御回路IC1を備えている。
【0066】
DC/DCコンバータ4は、PFC3からの直流電圧をスイッチング電源装置1の出力電圧に変換して出力する回路である。DC/DCコンバータ4は、3つのコンデンサC4〜C6、抵抗R4、2つのダイオードD4・D5、2つのコイルN3・N4からなるトランスT2、2つのコイルN5・N6からなるトランスT3、トランジスタQ2および制御回路IC2を備えている。
【0067】
このように、整流回路2、PFC3およびDC/DCコンバータ4の各構成は、図5に示す整流回路102、PFC103およびDC/DCコンバータ104の各構成とそれぞれ同一である。
【0068】
突入電流抑制回路5は、スイッチング電源装置1の突入電流を抑制する回路であり、抵抗R5およびサイリスタSCR1を備えている。抵抗R5とサイリスタSCR1とは、入力端AC(L)の電源ラインの、ダイオードブリッジDB1とPFC3との間で並列接続されている。
【0069】
抑制動作制御回路6は、突入電流抑制回路5のサイリスタSCR1のON/OFF制御することにより、突入電流抑制回路5の抑制動作を制御する回路である。抑制動作制御回路6は、7つの抵抗R6〜R12、2つのトランジスタQ3・Q4、2つのコンパレータCOMP1・COMP2、発光ダイオードLED1とフォトトランジスタPT1とからなるフォトカプラ、および、発光ダイオードLED2とフォトトランジスタPT2とからなるフォトカプラを備えている。なお、トランジスタQ3・Q4としては、バイポーラトランジスタが用いられる。
【0070】
スイッチング電源装置1の入力端AC(L)・AC(N)に入力された交流電流は、ダイオードブリッジDB1によって全波整流され、コンデンサC1によって平滑される。このとき、PFC3のコンデンサC1を充電するために発生する突入電流は、突入電流抑制回路5の抵抗R5によって制限される。
【0071】
例えば、スイッチング電源装置1への入力電圧がAC200Vである場合、抵抗R5の抵抗値は95Ω以上に設定される。これにより、突入電流を3A以下に抑制することができる。
【0072】
PFC3の入力電圧は、トランスT1のコイルN1・N2、スイッチング素子であるトランジスタQ1およびダイオードD2によって昇圧され、抵抗R2および抵抗R3によって所望の電圧に制御される。これにより、電解コンデンサC3から直流電圧が出力される。
【0073】
DC/DCコンバータ4では、抵抗R4によりコンデンサC4が充電され、コンデンサC4の両端の電圧(Vcc電圧)が制御回路IC2の駆動電圧に達すると制御回路IC2は発振動作を開始し、トランジスタQ2がスイッチングを開始する。これにより、トランスT2の2次側のコイルN4に電圧が発生し、ダイオードD4およびコンデンサC5によって整流平滑された電圧が出力端OUT1に供給される。同様に、ダイオードD5およびコンデンサC6によって整流平滑された電圧が出力端OUT2に供給される。
【0074】
(抑制動作制御回路6の構成)
ここで、スイッチング電源装置1は、出力端OUT1および出力端OUT2の少なくとも1つからの出力電圧が規定値以上である場合に、抑制動作制御回路6が突入電流抑制回路5の抑制動作を停止するように構成されている。
【0075】
上述の規定値は、例えば、スイッチング電源装置1の定常動作時の出力電圧の50%に設定される。具体的には、スイッチング電源装置1の定常動作時の出力電圧が24Vで有る場合、上記の規定値は12Vに設定される。
【0076】
まず、スイッチング電源装置1の2次側に設けられる抑制動作制御回路6の素子について説明する。
【0077】
抑制動作制御回路6の抵抗R6および抵抗R7は、出力端OUT1の正負の電源ライン間に直列接続されており、分圧抵抗回路を構成している。抵抗R6と抵抗R7との間の接続点は、コンパレータCOMP1の非反転入力端に接続されている。
【0078】
また、コンパレータCOMP1の反転入力端は、基準電源E1を介して負の電源ラインに接続されている。ここで、基準電源E1が出力する基準電圧は、抵抗R6およびR7の抵抗値をそれぞれr6およびr7とすると、(規定値)×r7/(r6+r7)に設定される。
【0079】
また、抑制動作制御回路6の発光ダイオードLED1、抵抗R8およびトランジスタQ3は、出力端OUT1の正負の電源ライン間に直列接続されており、トランジスタQ3のベースは、コンパレータCOMP1の出力端子に接続されている。
【0080】
出力端OUT2の電源ライン間においても、出力端OUT1の電源ライン間に設けられる素子と同様の素子が設けられる。
【0081】
すなわち、抑制動作制御回路6の抵抗R9および抵抗R10が、出力端OUT2の正負の電源ライン間に直列接続されており、分圧抵抗回路を構成している。抵抗R9と抵抗R10との間の接続点は、コンパレータCOMP2の非反転入力端に接続されている。
【0082】
また、コンパレータCOMP2の反転入力端は、基準電源E2を介して負の電源ラインに接続されている。ここで、基準電源E2が出力する基準電圧は、抵抗R9およびR10の抵抗値をそれぞれr9およびr10とすると、(規定値)×r10/(r9+r10)に設定される。
【0083】
上記の分圧抵抗回路とコンパレータCOMP1・COMP2とは、特許請求の範囲に記載の判定回路を構成しており、スイッチング電源装置1の出力電圧が規定値以上であるか否かを判定する。
【0084】
また、抑制動作制御回路6の発光ダイオードLED2、抵抗R11およびトランジスタQ4が、出力端OUT1の正負の電源ライン間に直列接続されており、トランジスタQ4のベースは、コンパレータCOMP2の出力端子に接続されている。なお、トランジスタQ3・Q4は、特許請求の範囲に記載のコンパレータ用スイッチング素子に相当する。
【0085】
発光ダイオードLED1、抵抗R8およびトランジスタQ3の接続順序は、特に限定されない。同様に、発光ダイオードLED2、抵抗R11およびトランジスタQ4の接続順序も、特に限定されない。
【0086】
続いて、スイッチング電源装置1の1次側に設けられる抑制動作制御回路6の素子について説明する。
【0087】
抑制動作制御回路6の抵抗R12の一端は、突入電流抑制回路5の抵抗R5の一端とサイリスタSCR1のアノードとの間の接続点に接続される。また、抑制動作制御回路6のフォトトランジスタPT1およびフォトトランジスタPT2が、抵抗R12の他端とサイリスタSCR1のゲート端子(制御端子)との間に並列接続されている。
【0088】
発光ダイオードLED1・LED2、抵抗R8・R11、トランジスタQ3・Q4およびフォトトランジスタPT1・PT2は、特許請求の範囲に記載のスイッチング制御回路を構成しており、スイッチング電源装置1の出力電圧が前記規定値以上であると判定された場合に、サイリスタSCR1を導通させる。
【0089】
(突入電流抑制動作)
以上の構成により、例えば、出力端OUT1からの出力電圧が規定値以上になると、コンパレータCOMP1の非反転入力端の電位がコンパレータCOMP1の反転入力端の電位以上になり、コンパレータCOMP1はトランジスタQ3をONさせる。これにより、発光ダイオードLED1が発光して、フォトトランジスタPT1をONにして、突入電流抑制回路5のサイリスタSCR1のゲート端子に電流が流れ、サイリスタSCR1がON状態となり、抵抗R5の両端が短絡する。これにより、突入電流抑制回路5の抑制動作が停止し、スイッチング電源装置1は、動作を維持する。
【0090】
同様に、出力端OUT2からの出力電圧が規定値以上になると、コンパレータCOMP2の非反転入力端の電位がコンパレータCOMP2の反転入力端の電位以上になり、コンパレータCOMP2はトランジスタQ4をONさせる。これにより、発光ダイオードLED2が発光して、フォトトランジスタPT2をONにして、突入電流抑制回路5のサイリスタSCR1がON状態となり、抵抗R5の両端が短絡する。これにより、突入電流抑制回路5の抑制動作が停止し、スイッチング電源装置1は、動作を維持する。
【0091】
このように、スイッチング電源装置1では、出力端OUT1および出力端OUT2の少なくとも1つからの出力電圧が規定値以上となった場合、抑制動作制御回路6は突入電流抑制回路5の抑制動作を停止する。よって、突入電流を小さくするために、抵抗R5の抵抗値を高く設定した場合であっても、突入電流抑制回路5は、PFC3の動作に関わらず、抑制動作の停止後、抑制動作を間欠的に継続することはないため、抵抗R5の破壊を防止することができる。
【0092】
〔実施の形態2〕
次に、本発明の第2の実施の形態について図2に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0093】
(スイッチング電源装置11の構成)
図2は、本実施の形態に係るスイッチング電源装置11を示す回路図である。スイッチング電源装置11は、整流回路2、PFC3、DC/DCコンバータ4、突入電流抑制回路5および抑制動作制御回路16を備えている。
【0094】
整流回路2、PFC3、DC/DCコンバータ4、突入電流抑制回路5の各構成は、図1に示すスイッチング電源装置1におけるものと同一であるので、その構成および動作の説明を省略する。なお、本実施の形態では、突入電流抑制回路5は、入力端AC(N)の電源ラインに設けられているが、入力端AC(L)の電源ラインに設けてもよい。
【0095】
(抑制動作制御回路16の構成)
抑制動作制御回路16は、2つの抵抗R13・R14および2つのツェナーダイオードZD1・ZD2を備えている。
【0096】
抵抗R13の一端は、出力端OUT1の正の電源ラインに接続され、抵抗R13の他端は、ツェナーダイオードZD1のカソードに接続されている。また、抵抗R14の一端は、出力端OUT2の正の電源ラインに接続され、抵抗R14の他端は、ツェナーダイオードZD2のカソードに接続されている。ツェナーダイオードZD1のアノードおよびツェナーダイオードZD2のアノードは、互いに接続されているとともに、突入電流抑制回路5のサイリスタSCR1のゲート端子に接続されている。
【0097】
すなわち、ツェナーダイオードZD1と抵抗R13とは、出力端OUT1の正の電源ラインとサイリスタSCR1のゲート端子との間に直列接続されている。同様に、ツェナーダイオードZD2と抵抗R14とは、出力端OUT2の正の電源ラインとサイリスタSCR1のゲート端子との間に直列接続されている。
【0098】
なお、ツェナーダイオードZD1・ZD2は、特許請求の範囲に記載の判定回路を構成し、抵抗R13・R14は、特許請求の範囲に記載のスイッチング制御回路を構成している。
【0099】
また、ツェナーダイオードZD1・ZD2のブレークダウン電圧の値は、上述の規定値に設定されている。
【0100】
(突入電流抑制動作)
以上の構成により、ツェナーダイオードZD1が、出力端OUT1からの出力電圧が規定値以上であるか否かを判定し、当該出力電圧が規定値以上であると判定された場合に、抵抗R13が、サイリスタSCR1を導通させる。同様に、ツェナーダイオードZD2が、出力端OUT2からの出力電圧が規定値以上であるか否かを判定し、当該出力電圧が規定値以上であると判定された場合に、抵抗R14が、サイリスタSCR1を導通させる。
【0101】
例えば、出力端OUT1からの出力電圧が規定値以上になると、ツェナーダイオードZD1に電流が流れ、サイリスタSCR1がON状態となり、抵抗R5の両端が短絡する。同様に、出力端OUT2からの出力電圧が規定値以上になると、ツェナーダイオードZD2に電流が流れ、サイリスタSCR1がON状態となり、抵抗R5の両端が短絡する。
【0102】
このように、スイッチング電源装置11では、出力端OUT1および出力端OUT2の少なくとも1つからの出力電圧が規定値以上となった場合、抑制動作制御回路16は突入電流抑制回路5の抑制動作を停止する。よって、突入電流を小さくするために、抵抗R5の抵抗値を高く設定した場合であっても、突入電流抑制回路5は、PFC3の動作に関わらず、抑制動作の停止後、抑制動作を間欠的に継続することはないため、抵抗R5の破壊を防止することができる。
【0103】
〔実施の形態3〕
次に、本発明の第3の実施の形態について図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態2において説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0104】
(スイッチング電源装置21の構成)
図3は、本実施の形態に係るスイッチング電源装置21を示す回路図である。スイッチング電源装置21は、整流回路2、PFC3、DC/DCコンバータ4、突入電流抑制回路5および抑制動作制御回路26を備えている。すなわち、スイッチング電源装置21は、図2に示すスイッチング電源装置11において、抑制動作制御回路16を抑制動作制御回路26に置き換えた構成である。なお、本実施の形態においても、突入電流抑制回路5は、入力端AC(N)の電源ラインに設けられているが、入力端AC(L)の電源ラインに設けてもよい。
【0105】
(抑制動作制御回路26の構成)
抑制動作制御回路26は、3つの抵抗R15〜R17、2つのツェナーダイオードZD3・ZD4、発光ダイオードLED3とフォトトランジスタPT3とからなるフォトカプラ、および、発光ダイオードLED4とフォトトランジスタPT4とからなるフォトカプラを備えている。抵抗R15・R16、ツェナーダイオードZD3・ZD4および発光ダイオードLED3・LED4は、スイッチング電源装置21の2次側に設けられ、抵抗R17およびフォトトランジスタPT3・PT4は、スイッチング電源装置21の1次側に設けられる。
【0106】
抵抗R15、ツェナーダイオードZD3および発光ダイオードLED3は、出力端OUT1の正負の電源ライン間に直列接続されている。より具体的には、抵抗R15の一端は、出力端OUT1の正の電源ラインに接続され、抵抗R15の他端は、ツェナーダイオードZD3のカソードに接続され、ツェナーダイオードZD3のアノードは、発光ダイオードLED3アノードに接続され、発光ダイオードLED3のカソードは、出力端OUT1の負の電源ラインに接続されている。
【0107】
同様に、抵抗R16、ツェナーダイオードZD4および発光ダイオードLED4は、出力端OUT2の正負の電源ライン間に直列接続されている。より具体的には、抵抗R16の一端は、出力端OUT2の正の電源ラインに接続され、抵抗R16の他端は、ツェナーダイオードZD4のカソードに接続され、ツェナーダイオードZD4のアノードは、発光ダイオードLED4アノードに接続され、発光ダイオードLED4のカソードは、出力端OUT2の負の電源ラインに接続されている。
【0108】
抑制動作制御回路26の抵抗R17の一端は、突入電流抑制回路5の抵抗R5の一端とサイリスタSCR1のアノードとの間の接続点に接続される。また、抑制動作制御回路26のフォトトランジスタPT3およびフォトトランジスタPT4が、抵抗R17の他端とサイリスタSCR1のゲート端子との間に並列接続されている。
【0109】
なお、ツェナーダイオードZD3・ZD4は、特許請求の範囲に記載の判定回路を構成し、抵抗R15・R16、発光ダイオードLED3・LED4およびフォトトランジスタPT3・PT4は、特許請求の範囲に記載のスイッチング制御回路を構成している。
【0110】
抵抗R15、ツェナーダイオードZD3および発光ダイオードLED3の接続順序は、特に限定されない。同様に、抵抗R16、ツェナーダイオードZD4および発光ダイオードLED4の接続順序も、特に限定されない。
【0111】
ツェナーダイオードZD3・ZD4のブレークダウン電圧の値は、上述の規定値に設定される。
【0112】
(突入電流抑制動作)
以上の構成により、ツェナーダイオードZD3が、出力端OUT1からの出力電圧が規定値以上であるか否かを判定し、当該出力電圧が規定値以上であると判定された場合に、抵抗R15、発光ダイオードLED3およびフォトトランジスタPT3が、サイリスタSCR1を導通させる。同様に、ツェナーダイオードZD4が、出力端OUT2からの出力電圧が規定値以上であるか否かを判定し、当該出力電圧が規定値以上であると判定された場合に、抵抗R16、発光ダイオードLED4およびフォトトランジスタPT4が、サイリスタSCR1を導通させる。
【0113】
例えば、出力端OUT1からの出力電圧が規定値以上になると、ツェナーダイオードZD3に電流が流れ、発光ダイオードLED3が発光して、フォトトランジスタPT3をONさせる。これにより、サイリスタSCR1がON状態となり、抵抗R5の両端が短絡する。同様に、出力端OUT2からの出力電圧が規定値以上になると、ツェナーダイオードZD4に電流が流れ、発光ダイオードLED4が発光して、フォトトランジスタPT4をONさせる。これにより、サイリスタSCR1がON状態となり、抵抗R5の両端が短絡する。
【0114】
このように、スイッチング電源装置21では、出力端OUT1および出力端OUT2の少なくとも1つからの出力電圧が規定値以上となった場合、抑制動作制御回路26は突入電流抑制回路5の抑制動作を停止する。よって、突入電流を小さくするために、抵抗R5の抵抗値を高く設定した場合であっても、突入電流抑制回路5は、PFC3の動作に関わらず、抑制動作の停止後、抑制動作を間欠的に継続することはないため、抵抗R5の破壊を防止することができる。
【0115】
〔実施の形態4〕
次に、本発明の第4の実施の形態について図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施の形態2および3において説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0116】
(スイッチング電源装置31の構成)
図4は、本実施の形態に係るスイッチング電源装置31を示す回路図である。スイッチング電源装置31は、整流回路2、PFC3、2つのDC/DCコンバータ34a・34b、突入電流抑制回路5および抑制動作制御回路26を備えている。すなわち、スイッチング電源装置31は、図3に示すスイッチング電源装置21において、2つの出力を有するDC/DCコンバータ4の代わりに、1つの出力を有するDC/DCコンバータ34a・34bを設けた構成である。
【0117】
DC/DCコンバータ34a・34bの構成は、互いに同一であり、DC/DCコンバータ4において、コイルN6、ダイオードD5およびコンデンサC6を省略した構成である。DC/DCコンバータ34a・34bは、PFC3に並列接続されている。
【0118】
DC/DCコンバータ34aでは、抵抗R4によりコンデンサC4が充電され、コンデンサC4の両端の電圧(Vcc電圧)が制御回路IC2の駆動電圧に達すると制御回路IC2は発振動作を開始し、トランジスタQ2がスイッチングを開始する。これにより、トランスT2の2次側のコイルN4に電圧が発生し、ダイオードD4およびコンデンサC5によって整流平滑された電圧が出力端OUT1に供給される。DC/DCコンバータ34aにおいても同様に、ダイオードD4およびコンデンサC5によって整流平滑された電圧が出力端OUT2に供給される。
【0119】
また、スイッチング電源装置31は、LED照明装置といった高電圧の出力電圧を供給する装置であるため、DC/DCコンバータ34aの出力端OUT1とDC/DCコンバータ34bの出力端OUT2とは、互いに絶縁されている。
【0120】
(突入電流抑制動作)
本実施の形態では、突入電流抑制回路5および抑制動作制御回路26の構成および動作は、前記実施の形態3におけるものと同様である。すなわち、出力端OUT1からの出力電圧が規定値以上になると、ツェナーダイオードZD3に電流が流れ、発光ダイオードLED3が発光して、フォトトランジスタPT3をONさせる。これにより、サイリスタSCR1がON状態となり、抵抗R5の両端が短絡する。同様に、出力端OUT2からの出力電圧が規定値以上になると、ツェナーダイオードZD4に電流が流れ、発光ダイオードLED4が発光して、フォトトランジスタPT4をONさせる。これにより、サイリスタSCR1がON状態となり、抵抗R5の両端が短絡する。
【0121】
このように、スイッチング電源装置31では、出力端OUT1および出力端OUT2の少なくとも1つからの出力電圧が規定値以上となった場合、抑制動作制御回路26は突入電流抑制回路5の抑制動作を停止する。よって、突入電流を小さくするために、抵抗R5の抵抗値を高く設定した場合であっても、突入電流抑制回路5は、PFC3の動作に関わらず、抑制動作の停止後、抑制動作を間欠的に継続することはないため、抵抗R5の破壊を防止することができる。
【0122】
〔付記事項〕
上述した各実施の形態では、2つの出力端を備えるスイッチング電源装置について説明したが、これに限定されない。スイッチング電源装置は、3つ以上の出力端を備えてもよいし、単一の出力端を備えてもよい。
【0123】
また、上述した各実施の形態では、スイッチング電源装置は、整流回路、PFCおよびDC/DCコンバータを備えていたが、整流回路、PFCおよびDC/DCコンバータはスイッチング電源装置に必須の構成ではない。
【0124】
また、実施の形態1、3、4では、抑制動作制御回路が、スイッチング電源装置の出力電圧が規定値以上であるかの判定結果を、フォトカプラによって帰還させる構成であったが、これに限定されない。例えば、直流電圧をトランスによって変換しないスイッチング電源装置であれば、図1に示す構成において、コンパレータCOMP1・COMP2の出力をサイリスタSCR1のゲート端子に入力してもよい。
【0125】
また、上述した各実施の形態では、突入電流抑制用の素子として抵抗を用いたが、抵抗の代わりに、例えばサーミスタを用いてもよい。
【0126】
また、上述した各実施の形態では、突入電流抑制抵抗と並列接続されるスイッチング素子としてサイリスタを用いたが、サイリスタの代わりに、MOSトランジスタやバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【0127】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係るスイッチング電源装置は、特にLED照明機器など、多数の機器を同時に起動させることがあるために突入電流を低く制御する必要がある機器に好適である。
【符号の説明】
【0129】
1 スイッチング電源装置
2 整流回路
3 PFC(力率改善回路)
4 DC/DCコンバータ
5 突入電流抑制回路
6 抑制動作制御回路
11 スイッチング電源装置
16 抑制動作制御回路
21 スイッチング電源装置
26 抑制動作制御回路
31 スイッチング電源装置
34a DC/DCコンバータ
34b DC/DCコンバータ
AC(L) 入力端
AC(N) 入力端
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
C3 コンデンサ
C4 コンデンサ
C5 コンデンサ
C6 コンデンサ
COMP1 コンパレータ
COMP2 コンパレータ
D1 ダイオード
D2 ダイオード
D3 ダイオード
D4 ダイオード
D5 ダイオード
D6 ダイオード
DB1 ダイオードブリッジ
E1 基準電源
E2 基準電源
IC1 制御回路
IC2 制御回路
LED1 発光ダイオード(発光素子)
LED2 発光ダイオード(発光素子)
LED3 発光ダイオード(発光素子)
LED4 発光ダイオード(発光素子)
N1 コイル
N2 コイル
N3 コイル
N4 コイル
N5 コイル
N6 コイル
N7 コイル
OUT1 出力端
OUT2 出力端
PT1 フォトトランジスタ
PT2 フォトトランジスタ
PT3 フォトトランジスタ
PT4 フォトトランジスタ
Q1 トランジスタ
Q2 トランジスタ
Q3 トランジスタ
Q4 トランジスタ
R1 抵抗
R2 抵抗
R3 抵抗
R4 抵抗
R5 抵抗(突入電流抑制抵抗)
R6 抵抗
R7 抵抗
R8 抵抗(抵抗素子)
R9 抵抗
R10 抵抗
R11 抵抗(抵抗素子)
R12 抵抗
R13 抵抗(抵抗素子)
R14 抵抗(抵抗素子)
R15 抵抗(抵抗素子)
R16 抵抗(抵抗素子)
R17 抵抗
SCR1 サイリスタ
T1 トランス
T2 トランス
T3 トランス
ZD1 ツェナーダイオード
ZD2 ツェナーダイオード
ZD3 ツェナーダイオード
ZD4 ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突入電流を抑制する突入電流抑制回路を備えるスイッチング電源装置であって、
前記スイッチング電源装置の出力端からの出力電圧が規定値以上である場合に、前記突入電流抑制回路の抑制動作を停止させる抑制動作制御回路を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記出力端を複数備え、
前記抑制動作制御回路は、前記出力端の少なくとも1つからの出力電圧が規定値以上である場合に、前記突入電流抑制回路の抑制動作を停止することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記規定値は、前記スイッチング電源装置の定常動作時の出力電圧の50%であることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記突入電流抑制回路は、
突入電流抑制抵抗と、
当該突入電流抑制抵抗に並列接続されたスイッチング素子とを備え、
前記抑制動作制御回路は、前記場合に前記スイッチング素子を導通させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記抑制動作制御回路は、
前記スイッチング電源装置の出力電圧が前記規定値以上であるか否かを判定する判定回路と、
前記スイッチング電源装置の出力電圧が前記規定値以上であると判定された場合に、前記スイッチング素子を導通させるスイッチング制御回路とを備えることを特徴とする請求項4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記判定回路は、
前記出力端の正負の電源ライン間に設けられた分圧抵抗回路と、
前記分圧抵抗回路によって分圧された電圧と基準電圧とを比較するコンパレータとを備え、
前記スイッチング制御回路は、前記コンパレータの出力に応じて、前記スイッチング素子の導通/非導通を制御することを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記スイッチング制御回路は、
発光素子と、
抵抗素子と、
前記コンパレータの出力に応じてON/OFFするコンパレータ用スイッチング素子と、
前記突入電流抑制回路の前記スイッチング素子の制御端子に接続され、前記発光素子の発光に応じてON/OFFするフォトトランジスタとを備え、
前記発光素子と前記抵抗素子と前記コンパレータ用スイッチング素子とは、前記出力端の正負の電源ライン間に直列接続され、
前記発光素子と前記フォトトランジスタとは、フォトカプラを構成していることを特徴とする請求項6に記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記判定回路は、ツェナーダイオードを備え、
前記スイッチング制御回路は、抵抗素子を備え、
前記ツェナーダイオードと前記抵抗素子とは、前記出力端の正の電源ラインと上記スイッチング素子の制御端子との間に直列接続されていることを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記判定回路は、ツェナーダイオードを備え、
前記スイッチング制御回路は、
発光素子と、
抵抗素子と、
前記突入電流抑制回路の前記スイッチング素子の制御端子に接続され、前記発光素子の発光に応じてON/OFFするフォトトランジスタとを備え、
前記ツェナーダイオードと前記発光素子と前記抵抗素子とは、前記出力端の正負の電源ライン間に直列接続され、
前記発光素子と前記フォトトランジスタとは、フォトカプラを構成していることを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
前記スイッチング素子は、サイリスタであることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
交流電源に接続され直流電圧を得る力率改善回路と、
前記力率改善回路からの直流電圧を前記出力電圧に変換して出力するDC/DCコンバータとをさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項12】
前記DC/DCコンバータは、複数の出力端を備えることを特徴とする請求項11に記載のスイッチング電源装置。
【請求項13】
前記DC/DCコンバータを複数備え、
前記DC/DCコンバータの各々は、単一の出力端を備えることを特徴とする請求項11に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−55770(P2013−55770A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191754(P2011−191754)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】