説明

スイッチ

【課題】対称な位置関係で設置されるスイッチの共通化を図る。
【解決手段】スイッチベース10と、このスイッチベース10に設けられた第一接点部21および第二接点部22と、接点部の切り替え操作を行う操作ノブ30と、を備え、前記スイッチベース10および前記操作ノブ30のいずれか一方には、前記スイッチベース10上で前記操作ノブ30を回動自在に支持する回動支持軸122が設けられ、前記スイッチベース10の平面方向で見て、前記第一接点部21の中心と前記回動支持軸122の中心の距離は、前記第二接点部22の中心と前記回動支持軸122の中心の距離と等しく設定され、前記操作ノブ30は、前記第一接点部21および前記第二接点部22のいずれか一方が連結される接点連結部32を有するとともに、この接点連結部32により一方の接点部の切り替え操作を行う回動範囲内において他方の接点部と非接触である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対称な位置関係で設置される装置に好適に用いられるスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの背もたれや着座部を任意の角度や位置に調整するパワーシート装置が知られている。この種のパワーシート装置に用いられるスイッチは、通常、右座席ではシートの右側に、左座席ではシートの左側に設けられる。この場合、右座席と左座席のスイッチの操作性を共通化するため、操作ノブなどは左右対称に配置しなければならない。つまり、スイッチ本体の中心軸線からずれて配置される部品などは、右座席用と左座席用の二種類が必要となる。
【0003】
特許文献1には、この種のパワーシート装置に用いられるスイッチであって、左座席(左ハンドル)用スイッチと右座席(右ハンドル)用スイッチの本体ケースの共通化を図った構成が開示されている。かかる構成は、スイッチ素子(接点)が係合可能な小ケースと称される部材を、本体ケースの中心軸線に関し対称となる位置(二箇所)のいずれか一方に、選択的に配置できるよう本体ケースが形成されたものである。これによれば、小ケースを一方の位置に配置した場合には左座席用として用いることができるスイッチが得られ、他方の位置に配置した場合には右座席用として用いることができるスイッチが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−69436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の構成は、左座席用スイッチと右座席用スイッチの本体ケースを共通化することができるだけであって、その他の部材全ての共通化が図れるものではない(その点についての具体的な開示がない)。また、小ケースと称される新たな部材を追加することが必要であり、コストダウンの効果としては不十分である。
【0006】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、対称な位置関係で設置されるスイッチの共通化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明にかかるスイッチは、スイッチベースと、このスイッチベースに設けられた第一接点部および第二接点部と、接点部の切り替え操作を行う操作ノブと、を備え、前記スイッチベースおよび前記操作ノブのいずれか一方には、前記スイッチベース上で前記操作ノブを回動自在に支持する回動支持軸が設けられ、前記スイッチベースの平面方向で見て、前記第一接点部の中心と前記回動支持軸の中心の距離は、前記第二接点部の中心と前記回動支持軸の中心の距離と等しく設定され、前記操作ノブは、前記第一接点部および前記第二接点部のいずれか一方が連結される接点連結部を有するとともに、この接点連結部により一方の接点部の切り替え操作を行う回動範囲内において他方の接点部と非接触であることを要旨とする。
【0008】
本発明にかかるスイッチは、二つの接点部(第一接点部と第二接点部)のいずれか一方を使用する。第一接点部と第二接点部は、操作ノブを回動自在に支持する回動支持軸から等距離にあるから、どちらの接点部を使用することも可能である。また、使用しない接点部(他方の接点部)は、操作ノブの回動範囲内において操作ノブと非接触の状態にあるから、使用する接点部(一方の接点部)の操作の邪魔になることがない。つまり、本発明にかかるスイッチは、車両用シートのパワーシート装置など、対称な位置関係で設置される装置に対し、一方(右側)の装置では第一接点部を使用し、他方(左側)の装置では第二接点部を使用する、といったような使用する接点部の切り替えが可能である。すなわち、対称な位置関係にある両方の装置に適用可能なスイッチである。
【0009】
また、前記スイッチベースの平面方向で見て、前記第一接点部の中心と前記第二接点部の中心は、前記回動支持軸の中心を対称中心として互いに点対称に設定されているとよい。
【0010】
第一接点部の中心と第二接点部の中心が、回動支持軸の中心を対称中心として互いに点対称であると、第一接点部の中心、第二接点部の中心、および回動支持軸の中心が一直線上に位置する。そのため、使用しない他方の接点部を操作ノブで覆い隠すことができる。このようにすれば、見た目もよいし、他方の接点部がスイッチの取付の邪魔になることもない。
【0011】
また、前記第一接点部および前記第二接点部には、それぞれ、前記操作ノブ側に突出した操作軸が設けられ、前記操作ノブの接点連結部には、前記第一接点部の操作軸および前記第二接点部の操作軸のいずれか一方が連結され、前記操作ノブには、前記回動範囲内において他方の操作軸と非接触の状態を保つ空間が形成されているとよい。
【0012】
このように、予め第一接点部および第二接点部に操作軸を設けておけば、使用する接点部に対し操作ノブを組付けしやすい。この場合、操作ノブには、使用しない接点部の操作軸を覆い隠すため、操作ノブの回動範囲内において操作軸を逃がす空間が形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スイッチベースに予め設けられる第一接点部と第二接点部のいずれか一方を選択的に使用することが可能であるため、対称な位置関係で設置されるスイッチの共通化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるスイッチの上面図であって、第一接点部が接点部として使用される態様を示した図である。
【図2】本発明の第一の実施形態にかかるスイッチの上面図であって、第二接点部が接点部として使用される態様を示した図である。
【図3】図1におけるA−A線断面図(ハッチングは省略)である。
【図4】図1におけるB−B線断面図(ハッチングは省略)である。
【図5】図1におけるC−C線断面図(ハッチングは省略)である。
【図6】図1におけるD−D線断面図(ハッチングは省略)である。
【図7】図1に示した構成において、操作ノブを回動操作した場合における操作軸などの動きを説明するための概略図であり、図7(a)は操作ノブが原位置にある状態、図7(b)は操作ノブを左方向に回動させた状態、図7(c)は操作ノブを右方向に回動させた状態を示す。
【図8】本発明の第二の実施形態にかかるスイッチの上面図であって、第一接点部が接点部として使用される態様を示した図である。
【図9】本発明の第二の実施形態にかかるスイッチの上面図であって、第二接点部が接点部として使用される態様を示した図である。
【図10】操作ノブ自体に回動支持軸が設けられた変形例(第一の実施形態の変形例)の断面図(ハッチングは省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態にかかるスイッチについて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、単に軸方向とはスイッチベースの長手方向(図1および図2におけるX軸方向)をいい、単に幅方向とはスイッチベースの短手方向(図1および図2におけるY軸方向)をいい、単に上下方向とは軸方向および幅方向に直交する方向(図3〜図6における上下方向)をいう(操作ノブが配置される側を上とする)。
【0016】
本発明の第一の実施形態にかかるスイッチ1は、車両用シートのパワーシート装置に適用されるスイッチである。スイッチ1は、左座席のパワーシート装置(左座席の左側面に取り付けられる)、および、右座席のパワーシート装置(右座席の右側面に取り付けられる)の両方に適用できるものであり、シートの背もたれの角度調整(リクライニング操作)に用いられるリクライニングスイッチ部2(本発明の実施形態にかかるスイッチ1)と、シートの着座部のスライド操作や角度調整を行うスライドスイッチ部90と、を備える。
【0017】
リクライニングスイッチ部2は、スライドスイッチ部90と共通のスイッチベース10と、このスイッチベース10に設けられた第一接点部21および第二接点部22と、接点部の切り替え操作を行う操作ノブ30と、を備える。
【0018】
スイッチベース10は、内部に所定の大きさの空間が形成された直方体の箱状の部材であり、各断面図に示すように、ベース板11と、このベース板11を覆う本体部12と、を有する。ベース板11上には、基板111が配置されている。この基板111上には、第一接点部21および第二接点部22が配置されている。本体部12の上側には、操作ノブ30が配置されている。
【0019】
本体部12の上壁には、二つの貫通穴121が形成されており、詳細を後述する第一接点部21および第二接点部22の操作軸214,224は、各貫通穴121を通じて本体部12の上壁から上方に突出している。かかる貫通穴121は、操作軸214,224の可動範囲に合わせた大きさに形成されている。そのため、スイッチベース10内部に塵などが入り込まないよう、貫通穴121と操作軸214,224の隙間は図示されないカバーで覆われている。このカバーは、操作軸214,224の動きを妨げることのない可撓性材料で形成されている。
【0020】
また、スイッチベース10の本体部12上面からは、回動支持軸122が上方に向かって突出して形成されている。本実施形態では、回動支持軸122は、その中心がスイッチベース10の幅方向に二分する直線L上に位置するように形成されている。
【0021】
第一接点部21および第二接点部22は、その配置位置が異なるだけであって構成は同一である。第一接点部21および第二接点部22は、基板111上に固定された固定接点211,221、および、この固定接点211,221に対して揺動自在に設けられた可動接点212,222を有する。可動接点212,222には、接点操作凸部213,223が当接しており、この接点操作凸部213,223が図3および図4における左側に移動することによって可動接点212,222が左側に傾き、固定接点211,221の左側と可動接点212,222の左側が接触し、当該接点がオン状態となる。また、接点操作凸部213,223が図3および図4における右側に移動することによって可動接点212,222が右側に傾き、固定接点211,221の右側と可動接点212,222の右側が接触し、当該接点がオン状態となる。また、第一接点部21および第二接点部22は、上方に延びる操作軸214,224を有する。この操作軸214,224の下端に接点操作凸部213,223が固定されている。したがって、接点操作凸部213,223は操作軸214,224と共に移動する。すなわち、操作軸214,224を操作することによって、上記接点の切り替え(三つの状態の切り替え;左側の接点がオン状態/右側の接点がオン状態/オフ状態)が可能である。
【0022】
なお、本実施形態にかかるスイッチ1が搭載されたパワーシート装置では、左側の接点および右側の接点の一方がオン状態となることによって背もたれが後方に傾倒し、他方がオン状態となることによって背もたれが前方に起立するように設定される。
【0023】
また、スイッチベース10の平面(XY平面)方向で見て、第一接点部21の中心P1と第二接点部22の中心P2は、回動支持軸122の中心P3(回動支持軸122の軸線とXY平面の交点)を対称中心として互いに点対称に設定されている。なお、「接点部の中心」とは、XY平面における固定接点211,221の左側および固定接点211,221の右側と等距離にある点をいう(以下同じ)。本実施形態では、操作軸214,224の軸線上に中心P1、P2が位置する。第一接点部21の中心P1と第二接点部22の中心P2は、スイッチベース10を幅方向に二分する直線Lを対称軸として線対称でもある。したがって、第一接点部21の中心P1と回動支持軸122の中心P3との距離M1は、第二接点部22の中心P2と回動支持軸122の中心P3との距離M2と等しく、第一接点部21の中心P1、第二接点部22の中心P2、および、回動支持軸122の中心P3は一直線上に位置する。また、本実施形態では、第一接点部21の中心P1、第二接点部22の中心P2、および、回動支持軸122の中心P3を繋ぐ直線は、スイッチベース10を幅方向に二分する直線Lと直交する。
【0024】
操作ノブ30は、その中央に回動支持穴31が形成されている。かかる回動支持穴31に上記スイッチベース10に形成された回動支持軸122が係合されることによって、操作ノブ30は、回動支持軸122の軸線を中心として回動自在に支持される。すなわち、操作ノブ30は、スイッチベース10の幅方向中央位置で回動自在に支持される。
【0025】
また、操作ノブ30には、回動支持穴31の一方側に接点連結部32が形成されている。接点連結部32は、第一接点部21の操作軸214および第二接点部22の操作軸224のいずれか一方に連結されている(図1に示した構成では第一接点部21の操作軸214に連結され、図2に示した構成では第二接点部22の操作軸224に連結されている)。本実施形態における接点連結部32は、操作軸214,224の直径よりやや大きい幅の溝状に形成されている。操作ノブ30を回動させると、溝を構成する側壁に押されて操作軸214,224が移動する。これにより接点が切り替えられる。なお、操作軸214,224は、貫通穴121に挿通されているため、この貫通穴121の大きさの範囲内(操作軸214,224が貫通穴121の内面によって移動が規制される範囲内)で移動可能である。すなわち、操作ノブ30の回動範囲は、貫通穴121の大きさによって規制され、この回動範囲内において接点が切り替え可能に構成されている。
【0026】
さらに、操作ノブ30には、回動支持穴31の他方側(回動支持穴31を挟んだ接点連結部32の反対側)に軸逃がし空間33が形成されている。この軸逃がし空間33の内側に、第一接点部21の操作軸214および第二接点部22の操作軸214の他方(接点連結部32に連結された操作軸ではない操作軸;図1に示した構成では第二接点部22の操作軸224、図2に示した構成では第一接点部21の操作軸214)が入り込んで位置する。図7に示すように、軸逃がし空間33は、上記操作ノブ30の回動範囲内において、操作軸の他方224(214)が操作ノブ30に接触しないような大きさに形成されている。具体的には、操作軸の他方224(214)の中心軸と操作ノブ30内面との距離(図4にFで示す距離)が、操作軸の一方214(224)の中心軸と貫通穴121の内面との距離(図3にEで示す距離)よりも大きく形成されている。また、操作ノブ30は、回動支持軸122を中心として回動するから、軸逃がし空間33も弧状に動く(図7参照)。したがって、軸逃がし空間33は、軸逃がし空間33に面する幅方向に対向する面に操作軸の他方224(214)が接触しないよう、操作軸の他方224(214)の直径よりも所定量大きな幅をもつように形成されている。本実施形態では、軸逃がし空間33を構築する二つの壁部331が、操作ノブ30を補強する補強リブとしても働く。換言すれば、操作ノブ30を補強する補強用リブを設ける場合、この補強用リブが、操作ノブ30の回動範囲内において操作軸の他方224(214)に接触しないように設計すればよい。
【0027】
軸逃がし空間33がこのような大きさに形成されていれば、操作ノブ30の回動範囲内において操作軸の他方224(214)が操作ノブ30の内面に接触することはないから、操作軸の他方224(214)によって操作ノブ30の回動操作が妨げられることはない。また、操作軸の他方224(214)が動作すること、すなわち、使用されない他方の接点部が切り替え動作(オン/オフ動作)することもない。
【0028】
以上のように、スイッチ1では、第一接点部21の中心P1と第二接点部22の中心P2は、回動支持軸122の中心P3を対称中心として互いに点対称に設定され、第一接点部21の中心P1と回動支持軸122の中心P3との距離M1は、第二接点部22の中心P2と回動支持軸122の中心P3との距離M2と等しくなっているため、操作ノブ30の接点連結部32を第一接点部21(の操作軸214)に連結することもできるし、第二接点部22(の操作軸224)に連結することもできる。なお、いずれの場合も操作ノブ30は回動支持軸122に回動自在に支持されるから、回動中心は同一である。このように、予め設けられた二つの接点のうち、操作ノブ30の取付方向を変えることにより、使用する接点部を任意に選択することができる。したがって、本実施形態にかかるスイッチ1は、操作ノブ30の取付方向を変えることにより、対称な位置関係にある左座席用のパワーシート装置および右座席用のパワーシート装置の両方に適用可能である。すなわち、一方のパワーシート装置には第一接点部21を使用した構成のスイッチ1を適用し、一方のパワーシート装置と対称な他方のパワーシート装置には第二接点部22を使用した構成のスイッチ1を適用することができる。そしてこの場合、どちらのパワーシート装置においても、操作ノブ30の上部が可動側端部となるように設定される。つまり、どちらのパワーシート装置においても、接点の切り替え操作を行う際、操作ノブ30の上部を持って操作ノブ30を回動(揺動)させる。このように、本実施形態によれば、操作ノブ30の操作方向(操作性)の共通化も達成される。
【0029】
また、本実施形態では、操作ノブ30に、使用されない操作軸の他方224(214)と非接触の状態を保つための軸逃がし空間33が形成されている。このように操作ノブ30に軸逃がし空間33を形成すれば、使用されない接点部(使用されない接点部側の貫通穴121)を操作ノブ30によって覆うことができるから、意匠性に優れる。また、使用されない操作軸の他方224(214)がスイッチ1取付の邪魔になることもない。
【0030】
以下、本実施形態にかかるスイッチ1が有するスライドスイッチ部90について簡単に説明する。図1、図2、および図6に示すように、スライドスイッチ部90は、三つの接点部を有する。最もリクライニングスイッチ部2に近い第一接点部91、および、最も遠い第三接点部93は、操作軸914,934を幅方向に円弧を描くように移動させることで接点が切り替えられる。一方、第一接点部91と第三接点部93の中間に位置する第二接点部92は、操作軸924を軸方向に移動させることで接点が切り替えられる。操作ノブ94は、これら第一〜第三の接点部91,92,93を覆うように取り付けられる。
【0031】
このような構成において、操作ノブ94全体を軸方向にスライドさせると、第二接点部92(操作軸924)が軸方向にスライドし、第二接点部92の接点が切り替えられる。これにより、車両用シートの着座部が前後方向にスライドする。一方、第二接点部92の操作軸924を回動中心として操作ノブ94を回動させると、第一接点部91および第三接点部93が幅方向にスライドし、第一接点部91および第三接点部93の接点が切り替えられる。これにより、車両用シートの着座部の傾斜角度が変化する。
【0032】
スライドスイッチ部90の第一〜第三接点部91,92,93の中心(操作軸914,924,934の中心)は、スイッチベース10を幅方向に二分する直線L上に形成されている。すなわち、リクライニングスイッチ部2の回動支持軸122の中心P3とは、同じ直線L上に位置する。また、操作ノブ94の操作方向(各操作軸914,924,934の移動経路)は、直線Lを対称軸として線対称である。したがって、スライドスイッチ部90は、対称な位置関係にある左座席用のパワーシート装置および右座席用のパワーシート装置の両方にそのまま適用可能である。よって、スイッチ1全体として見れば、リクライニングスイッチ部2の操作ノブ30の方向を切り替えるだけで、対称な位置関係にあるパワーシート装置の両方に適用可能な構成となる。なお、本実施形態では、左座席用のパワーシート装置および右座席用のパワーシート装置のいずれの場合であっても、スライドスイッチ部90がシートの前側に、リクライニングスイッチ部2がシートの後側に位置する。したがって、両スイッチ(スライドスイッチ部90およびリクライニングスイッチ部2)の操作方向(操作性)の共通化が達成できる。
【0033】
以下、本発明の第二の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、上記第一の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0034】
図8および図9に示す本発明の第二の実施形態にかかるスイッチ2は、上記第一の実施形態にかかるスイッチ1とは、第一接点部51および第二接点部52の配置位置が異なる。詳しくは、第一接点部51の中心Q1と第二接点部52の中心Q2とは、回動支持軸422の中心Q3を対称中心とした点対称の関係にない。ただし、本実施形態においても、第一接点部51の中心Q1と回動支持軸422の中心Q3の距離は、第二接点部52の中心Q2と回動支持軸422の中心Q3の距離と同じである。また、第一接点部51の中心Q1と第二接点部52の中心Q2は、スイッチベース40を幅方向に二分する直線Lを対称軸として線対称である。
【0035】
操作ノブ60には、回動支持穴61および接点連結部62が設けられている。回動支持穴61には、上記回動支持軸422が係合されている。これにより、操作ノブ60は、回動支持軸422によって回動自在に支持される。接点連結部62は、第一接点部51の操作軸514および第二接点部52の操作軸524のいずれか一方と連結される。接点連結部62に第一接点部51の操作軸514を連結させた場合、操作ノブ60の可動側端部は図8に示すように斜め上方を向く。一方、接点連結部62に第二接点部52の操作軸524を連結させた場合、操作ノブ60の可動側端部は図9に示すように斜め下方を向く。
【0036】
このように、第二の実施形態にかかるスイッチ2は、上記第一の実施形態にかかるスイッチ1と同様に、予め設けられた二つの接点のうち、操作ノブ60の取付方向を変えることにより、使用する接点部を任意に選択することができる。つまり、上記第一の実施形態にかかるスイッチ1のように、第一接点部51の中心Q1と第二接点部52の中心Q2とが、回動支持軸422の中心Q3を対称中心とした点対称の関係になくとも、第一接点部51の中心Q1と回動支持軸422の中心Q3の距離が、第二接点部52の中心Q2と回動支持軸422の中心Q3の距離と同じであれば、左座席用のパワーシート装置および右座席用のパワーシート装置の両方に適用可能なスイッチが構成できる。
【0037】
また、この第二の実施形態によれば、操作ノブ60の可動側端部を、回動中心から斜め方向を向くように位置させることができるため、設計の幅が広がる。つまり、リクライニング操作の操作性を考慮し、操作ノブ60を斜めに設置することが可能となる。ただし、使用していない接点部(の操作軸)を操作ノブで覆い隠すことができる(意匠性に優れる)といった点や、使用していない接点部がスイッチ取付の邪魔にならないという点では、第一の実施形態の方が有利である。
【0038】
なお、第二の実施形態にかかるスイッチが有するスライドスイッチ部は、既に説明したスライドスイッチ部90と同一の構成である(図8および図9では省略)。スライドスイッチ部90を構成するの各接点部の中心は、回動支持軸422の中心Q3とともに直線L上に位置する。
【0039】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態にかかるスイッチ1,2は、車両用シートのパワーシート装置に適用されるものであることを説明したが、対称な位置関係で設置されるその他の装置のスイッチにも適用可能である。
【0041】
また、上記実施形態では、操作ノブ30(60)を回動自在に支持する回動支持軸122(422)がスイッチベース10(40)に設けられていることを説明したが、操作ノブに設けられていてもよい。すなわち、例えば図10に示すように、操作ノブ70自体に下方に突出する回動支持軸71を設け、その回動支持軸71をスイッチベース80に形成された回動支持穴81に係合させ、操作ノブ70全体がスイッチベース80に回動自在に支持される構成としてもよい。また、可動接点を動作させる操作軸を操作ノブに形成することも可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、操作ノブ30(60)に設けられた接点連結部32(62)が、操作軸214,224(514,524)の直径よりやや大きい幅の溝状に形成されていることを説明したが、操作ノブの回動によって操作軸を移動させることができる構成であれば、これ以外の構成を採用することも可能である。例えば、接点連結部を筒状とし、この筒状の部分に操作軸が圧入によって連結される構成としてもよい。なお、本発明における「連結」には、操作ノブの回動方向に操作軸が移動するような構成(操作ノブの作用が操作軸に及ぶ構成)の全てを含む。
【0043】
また、上記実施形態にかかるスイッチ1,2が有するスライドスイッチ部90の構成は一例である。操作ノブの操作方向(各操作軸の移動経路)が、直線Lを対称軸として線対称であるスイッチであり、左座席用のパワーシート装置および右座席用のパワーシート装置の両方にそのまま適用可能であれば、その構成は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 スイッチ
10 スイッチベース
122 回動支持軸
21 第一接点部
214 操作軸
224 操作軸
30 操作ノブ
32 接点連結部
33 軸逃がし空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチベースと、このスイッチベースに設けられた第一接点部および第二接点部と、接点部の切り替え操作を行う操作ノブと、を備え、
前記スイッチベースおよび前記操作ノブのいずれか一方には、前記スイッチベース上で前記操作ノブを回動自在に支持する回動支持軸が設けられ、
前記スイッチベースの平面方向で見て、前記第一接点部の中心と前記回動支持軸の中心の距離は、前記第二接点部の中心と前記回動支持軸の中心の距離と等しく設定され、
前記操作ノブは、前記第一接点部および前記第二接点部のいずれか一方が連結される接点連結部を有するとともに、この接点連結部により一方の接点部の切り替え操作を行う回動範囲内において他方の接点部と非接触であることを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記スイッチベースの平面方向で見て、前記第一接点部の中心と前記第二接点部の中心は、前記回動支持軸の中心を対称中心として互いに点対称に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記第一接点部および前記第二接点部には、それぞれ、前記操作ノブ側に突出した操作軸が設けられ、
前記操作ノブの接点連結部には、前記第一接点部の操作軸および前記第二接点部の操作軸のいずれか一方が連結され、
前記操作ノブには、前記回動範囲内において他方の操作軸と非接触の状態を保つ空間が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−123923(P2012−123923A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271318(P2010−271318)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】