説明

スクランブル装置、スクランブル方法及びプログラム

【課題】スクランブル解除に伴うシステムリソースの消費を抑制するとともに、少なくとも一部の映像データのスクランブルを行う。
【解決手段】暗号化対象選択部13は、映像データのうち基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数のデータ部分を暗号化対象として選択し、暗号化部15は、暗号化対象選択手段が選択した部分に対して暗号化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準フレーム画像を示す基準フレームと、他のフレーム画像との差分によって、当該他のフレーム画像と異なるフレーム画像を示す差分フレームとによって構成される映像データのスクランブルを行うスクランブル装置、スクランブル方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像の加入放送サービスは、加入者以外の受信者が映像を視聴することができないようにスクランブルされた映像データを放送している。加入者は、スクランブル解除装置を用いてスクランブルされた映像データのスクランブルを解除することにより映像を再生することができる。映像データのスクランブルは、例えば、映像データを暗号化することで行われ、スクランブルの解除は、スクランブル解除装置が記憶する鍵を用いて暗号化された映像データを復号化することで行われる。
【0003】
しかしながら、全ての映像データに対して暗号化を行う場合、スクランブルを解除する際、著しい量のシステムリソースを要するという問題があった。
この問題を解決するスクランブル手法として、特許文献1に、複数のデータパケットのうちのn番目のパケット毎にスクランブルを行う方法が開示されている。これにより、暗号化するパケットの数を減少させ、スクランブル解除装置の復号化によるシステムリソースの消費を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−251599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、n番目のパケットに対して暗号化を行うため、暗号化を行うパケットは、映像データの内容とは無関係に選択されてしまう。そのため、暗号化が行われなかったパケットのみで映像の表示が行えてしまう場合があるという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スクランブル解除に伴うシステムリソースの消費を抑制するとともに、少なくとも一部の映像データのスクランブルを行うスクランブル装置、スクランブル方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、基準フレーム画像を示す基準フレームと、他のフレーム画像との差分によって当該他のフレームと異なるフレーム画像を示す差分フレームとによって構成される映像データのスクランブルを行うスクランブル装置であって、前記映像データのうち、前記基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数のデータ部分を暗号化対象として選択する暗号化対象選択手段と、前記暗号化対象選択手段が選択した暗号化対象に対して暗号化を行う暗号化手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、基準フレーム画像を示す基準フレームと、他のフレーム画像との差分によって当該他のフレームと異なるフレーム画像を示す差分フレームとによって構成される映像データのスクランブルを行うスクランブル装置を用いたスクランブル装置であって、暗号化対象選択手段は、前記映像データのうち前記基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数のデータ部分を暗号化対象として選択し、暗号化手段は、前記暗号化対象選択手段が選択した暗号化対象に対して暗号化を行う、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、基準フレーム画像を示す基準フレームと、他のフレーム画像との差分によって当該他のフレームと異なるフレーム画像を示す差分フレームとによって構成される映像データのスクランブルを行うスクランブル装置を、前記映像データのうち、前記基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数のデータ部分を暗号化対象として選択する暗号化対象選択手段、前記暗号化対象選択手段が選択した暗号化対象に対して暗号化を行う暗号化手段、として動作させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、映像データのうち、基準フレームの少なくとも一部を含む部分に対して暗号化を行う。そのため、映像データ全てを暗号化する手法と比較してスクランブル解除に伴うシステムリソースの消費を抑制することができる。また、基準フレームに対して暗号化を行うため、確実に映像データのスクランブルを行うことができる。
【0010】
また、本実施形態によれば、基準フレームの少なくとも一部を含むパケットのうち、暗号化率記憶部14が記憶する暗号化率情報が示す割合のパケットに対して暗号化を行う。これにより、映像全体におけるスクランブルの度合いを調整することができる。これにより、スクランブルの度合いを調整することで、非加入者はある程度崩れていながら内容を推察できる映像を視聴することができるため、非加入者の加入意欲を惹起させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるスクランブル装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】スクランブル装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】スクランブル装置で処理されるパケットの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるスクランブル装置の構成を示す概略ブロック図である。
スクランブル装置1は、映像データ入力部11、フレーム判定部12、暗号化対象選択部13(暗号化対象選択手段)、暗号化率記憶部14、暗号化部15(暗号化手段)、鍵情報記憶部16、映像データ出力部17を備える。
【0013】
映像データ入力部11は、1つまたは複数のパケットから構成される映像データの入力を受け付ける。例えば、映像データの規格がMPEG−2である場合、TS(Transport Stream)パケットで構成されるトランスポートストリームの入力を受け付ける。
フレーム判定部12は、映像データ入力部11が入力を受け付けた各パケットが記憶する映像データのフレームが、フレーム画像を示す基準フレームであるか、他のフレーム画像との差分によってフレーム画像を示す差分フレームであるかを判定する。例えば、映像データの規格がMPEG−2である場合、基準フレームはIフレーム(Intra-coded Frame)であり、差分フレームはPフレーム(Predicted Frame)またはBフレーム(Bi-directional Predicted Frame)である。
暗号化対象選択部13は、暗号化率記憶部14が記憶する暗号化率情報に基づいて暗号化するパケットを選択する。
暗号化率記憶部14は、暗号化を行うパケットの割合を示す暗号化率情報を記憶する。
暗号化部15は、暗号化対象選択部13が選択したパケットの暗号化を行う。
鍵情報記憶部16は、暗号化に用いる鍵情報を記憶する。
映像データ出力部17は、1つまたは複数のパケットが暗号化された映像データを出力する。
【0014】
そして、スクランブル装置1において、暗号化対象選択部13は、映像データのうち基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数のデータ部分を暗号化対象として選択し、暗号化部15は、暗号化対象選択手段が選択した暗号化対象に対して暗号化を行う。
これにより、スクランブル解除に伴うシステムリソースの消費を抑制し、少なくとも一部の映像データのスクランブルを行う。
【0015】
次に、スクランブル装置1の動作を説明する。
図2は、スクランブル装置の動作を示すフローチャートである。
図3は、スクランブル装置で処理されるパケットの例を示す図である。
まず、映像データサーバ等の外部装置がスクランブル装置1に映像データを入力すると、映像データ入力部11は、外部装置から映像データの入力を受け付ける(ステップS1)。図3(A)に示すように、映像データを構成するパケットP1〜P6の各々は、ヘッダ部とペイロード部とによって構成される。
【0016】
映像データ入力部11が映像データを受け付けると、フレーム判定部12は、映像データを構成するパケットの各々に基準フレームの少なくとも一部が含まれているか否かを判定する(ステップS2)。図3(B)を例にとると、パケットP1、P2、P3、P5が基準フレームの少なくとも一部が含まれていると判定される。
【0017】
フレーム判定部12が、パケットに基準フレームの少なくとも一部が含まれていると判定した場合(ステップS2:YES)、暗号化対象選択部13は、暗号化率記憶部14から暗号化率情報を取得する(ステップS3)。暗号化対象選択部13は、暗号化率情報を取得すると、取得した暗号化率情報に従ってパケットを暗号化対象として選択するか否かを判定する(ステップS4)。暗号化率情報が暗号化率50%を示す場合、図3(C)に示すように、パケットP1、P2、P3、P5のうち半数のパケットP1、P3が暗号化対象として選択される。
【0018】
暗号化率情報に従ってパケットを選択する方法としては、例えば、暗号化率情報が暗号化率50%を示す場合、暗号化対象選択部13は、0乃至1の乱数を発生させ、発生させた乱数が0である場合に暗号化対象として選択し、1である場合に選択しないという方法がある。
また例えば、暗号化対象選択部13は、パケットが入力される毎に内部メモリに記憶するカウンタ値に1を加算し、カウンタ値が偶数の場合に暗号化対象として選択し、奇数の場合に選択しないという方法がある。
【0019】
ステップS4で、暗号化対象選択部13がパケットを暗号化対象として選択した場合(ステップS4:YES)、暗号化部15は、鍵情報記憶部16から暗号化に用いる鍵情報を取得する(ステップS5)。暗号化部15は、鍵情報を取得すると、取得した鍵情報を用いてパケットのペイロード部を暗号化する(ステップS6)。このとき、パケットのヘッダに、当該パケットが暗号化されていることを示すフラグを付与すると良い。また、暗号化には、例えばAES(Advanced Encryption Standard)などの暗号化手法を用いると良い。
【0020】
暗号化部15がパケットを暗号化すると、映像データ出力部17は、暗号化されたパケットを外部装置へ出力する(ステップS7)。
また、ステップS2で、フレーム判定部12が、パケットに基準フレームが含まれていないと判定した場合(ステップS2:NO)、または、ステップS4で、暗号化対象選択部13がパケットを暗号化対象として選択しなかった場合(ステップS4:NO)、パケットの暗号化を行わず、平文のパケットを外部装置へ出力する(ステップS8)。
これにより、スクランブル装置1は、1つまたは複数のパケットが暗号化された映像データを出力する。
【0021】
このように、本実施形態によれば、スクランブル装置1は、映像データを構成するパケットのうち、基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数のパケットに対して暗号化を行う。これにより、映像データ全てを暗号化する手法と比較してスクランブル解除に伴うシステムリソースの消費を抑制することができる。また、基準フレームの少なくとも一部を含むパケットに対して暗号化を行うため、確実に映像データのスクランブルを行うことができる。
【0022】
また、本実施形態によれば、スクランブル装置1は、基準フレームの少なくとも一部を含むパケットのうち、暗号化率記憶部14が記憶する暗号化率情報が示す割合のパケットに対して暗号化を行う。これにより、映像全体におけるスクランブルの度合いを調整することができる。
【0023】
ここで、映像全体におけるスクランブルの度合いを調整することができる利点を説明する。加入放送サービスは、加入者以外の受信者が映像を視聴することができないようにスクランブルされた映像データを放送している。非加入者は、スクランブル解除装置を有しないため、スクランブルを解除した映像を視聴することはできないが、スクランブルされた映像を視聴することができる。
【0024】
ここで、映像データの全ての基準フレームが暗号化されている場合、非加入者は、映像を全く表示することができず、加入意欲を惹起されない。しかし、スクランブル装置1を用いて暗号化率情報に基づいてスクランブルの度合いを調整することで、非加入者はある程度崩れていながら内容を推察できる映像を視聴することができるため、非加入者の加入意欲を惹起させることができるという利点がある。
【0025】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、フレーム判定部12、暗号化対象選択部13、暗号化部15を備えるスクランブル装置1を用いた例を示したが、これに限られず、各処理部をそれぞれフレーム判定装置、暗号化対象選択装置、暗号化装置に実装し、各々の装置を備えるシステムとして構成しても良い。
【0026】
なお、本実施形態では、複数のパケットから構成されるトランスポートストリーム形式の映像データに対するスクランブルを行う場合を説明したが、これに限られず、例えば単体のファイルで完結するプログラムストリーム形式の映像データに対するスクランブルを行っても良い。この場合、暗号化対象選択部13は、プログラムストリーム形式の映像データの任意の基準フレームを暗号化対象として選択することでスクランブルを行うことができる。
【0027】
上述のスクランブル装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0028】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0029】
1…スクランブル装置 11…映像データ入力部 12…フレーム判定部 13…暗号化対象選択部 14…暗号化率記憶部 15…暗号化部 16…鍵情報記憶部 17…映像データ出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準フレーム画像を示す基準フレームと、他のフレーム画像との差分によって当該他のフレームと異なるフレーム画像を示す差分フレームとによって構成される映像データのスクランブルを行うスクランブル装置であって、
前記映像データのうち、前記基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数のデータ部分を暗号化対象として選択する暗号化対象選択手段と、
前記暗号化対象選択手段が選択した暗号化対象に対して暗号化を行う暗号化手段と、
を備えることを特徴とするスクランブル装置。
【請求項2】
前記暗号化対象選択手段は、前記映像データのうち前記基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数の部分から、暗号化率記憶手段が記憶する暗号化率に基づいて暗号化する部分を選択することを特徴とする請求項1に記載のスクランブル装置。
【請求項3】
前記映像データは、複数のパケットによって構成されており、
前記暗号化対象選択手段は、データ部分として前記パケットを選択する、
ことを特徴とする請求項2に記載のスクランブル装置。
【請求項4】
前記暗号化手段は、前記暗号化対象選択手段が選択したパケットのペイロード部分に対して暗号化を行うことを特徴とする請求項3に記載のスクランブル装置。
【請求項5】
基準フレーム画像を示す基準フレームと、他のフレーム画像との差分によって当該他のフレームと異なるフレーム画像を示す差分フレームとによって構成される映像データのスクランブルを行うスクランブル装置を用いたスクランブル装置であって、
暗号化対象選択手段は、前記映像データのうち前記基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数のデータ部分を暗号化対象として選択し、
暗号化手段は、前記暗号化対象選択手段が選択した暗号化対象に対して暗号化を行う、
を備えることを特徴とするスクランブル方法。
【請求項6】
基準フレーム画像を示す基準フレームと、他のフレーム画像との差分によって当該他のフレームと異なるフレーム画像を示す差分フレームとによって構成される映像データのスクランブルを行うスクランブル装置を、
前記映像データのうち、前記基準フレームの少なくとも一部を含む1つまたは複数のデータ部分を暗号化対象として選択する暗号化対象選択手段、
前記暗号化対象選択手段が選択した暗号化対象に対して暗号化を行う暗号化手段、
として動作させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−252084(P2010−252084A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99908(P2009−99908)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】