説明

スクリーン印刷版および積層セラミック電子部品の製造方法

【課題】導電性ペーストのスクリーン印刷により内部電極と貫通孔とを電気的に接続する際に、内部電極の形成と貫通孔への充填を同時に行ったとしても、貫通孔に十分な導電材料が充填できるスクリーン印刷版、及び積層セラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】スクリーン印刷版100をセラミックシート41A上に配する。そして、スクリーン印刷版100の一端に導電ペースト90を載置し、スキージ91を矢印の方向へ移動させて導電ペースト90をスクリーン印刷版100の表面に塗布する。このとき、スクリーン印刷版100では周縁部105の厚みが厚くなっているため、スキージ91が周縁部105を通過する際にスキージ91が持ち上がり、導電ペースト90が多量に充填される。この結果、セラミックシート41A表面には内部電極が形成され、セラミックシート41Aの貫通孔にも十分な導電材料が充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品の製造において被印刷物に所定の印刷パターンを形成するために用いるスクリーン印刷版、及びこのスクリーン印刷版を用いた積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品の製造において、積層セラミック電子部品の内部における導電パターン(印刷パターン)の形成は、スクリーン印刷版を用いたスクリーン印刷法で行われることがある(例えば特許文献1)。以下、このスクリーン印刷法により導電パターンを形成する特許文献1の圧電素子10の製造方法について説明する。
【0003】
図1は、特許文献1の圧電素子10の全体を示す外観斜視図であり、図2は、圧電素子10の内部構造を示す分解斜視図である。図3(A)は、従来のスクリーン印刷版200の要部平面図であり、図3(B)は、スクリーン印刷時におけるセラミックグリーンシート12A1の断面図であり、図3(C)は、スクリーン印刷後におけるセラミックグリーンシート12A1の断面図である。
【0004】
圧電素子10の製造方法では、まず、複数枚のセラミックグリーンシート12A1,12A2,12B1,12B2,12C1,12C2を用意する。
次に、セラミックグリーンシート12A1,12A2,12B1,12B2,12C1,12C2のそれぞれの所定の位置に貫通孔16A1,19A1、16B1,19B1、16B2,19B2、16C1,19C1、16C2,19C2、16D1,19D1を、レーザ光照射によりそれぞれ穿孔する。
【0005】
そして、上述のスクリーン印刷法により、セラミックグリーンシート12A1,12A2,12B1,12B2,12C1,12C2のそれぞれの表面と貫通孔に導電パターンを形成する。
【0006】
ここで、この導電パターンの形成は、従来、導電ペースト90が通過して内部電極を形成するためのメッシュ領域202と導電材料を貫通孔に充填するための開口部201とを有するスクリーン印刷版200(図3(A)参照)を用いて行われている。具体的には、例えば図3(B)に示すように、このスクリーン印刷版200をセラミックグリーンシート12A1上に配し、スクリーン印刷版200の一端に導電ペースト90を載置し、スキージ91を矢印の方向へ移動させて導電ペースト90をスクリーン印刷版200の表面に塗布することにより、行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−208226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、セラミックグリーンシートの表面に形成する内部電極の厚みとセラミックグリーンシートの貫通孔の深さ(即ち導電材料の充填深さ)とは異なる。内部電極は、厚みが例えば0.1μm〜2.0μm程度の薄層であり、貫通孔は、例えば10〜100μm程度の深さの孔である。
【0009】
そのため、例えば特許文献1のように、スクリーン印刷版200を用いて導電パターンをセラミックグリーンシートの表面と貫通孔に同時に形成した場合、例えば図3(C)に示すように、セラミックグリーンシート12A1の表面に薄膜の内部電極14Aが印刷されるものの、貫通孔16A1に十分な導電材料が充填されないことがある。
【0010】
そこで、内部電極を形成する内部電極形成工程と導電材料を貫通孔に充填する電極充填工程とを分け、導電ペースト90の濃度を各工程に応じた濃度に調整する等してスクリーン印刷を2回実施することが考えられる。
【0011】
しかしながら、上記従来の製造方法では、内部電極形成工程および電極充填工程において2回のスクリーン印刷を行っていたため、それぞれの工程においてスクリーン印刷に要する時間が必要となり、電子部品の製造コスト高の一因となる。
【0012】
本発明の目的は、導電性ペーストのスクリーン印刷により内部電極と貫通孔とを電気的に接続する際に、内部電極の形成と貫通孔への充填を同時に行ったとしても、貫通孔に十分な導電材料が充填できるスクリーン印刷版、及びこのスクリーン印刷版を用いた積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のスクリーン印刷版は、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0014】
(1)印刷用の導電ペーストを通過させる複数のメッシュ孔が形成されたメッシュ領域と、前記メッシュ孔より大きい径の開口部を有する複合領域と、を備えたスクリーン印刷版であって、
前記複合領域は、
前記開口部の周縁に位置し、前記メッシュ領域の厚みより厚い周縁部と、
前記導電ペーストが通過して被印刷物に印刷された導電領域が連続するよう、前記開口部と前記メッシュ領域との間に形成された複数のメッシュ孔で構成される接続部と、を有する。
【0015】
この構成では、被印刷物に形成されている貫通孔と開口部の位置が一致するよう上記スクリーン印刷版を被印刷物上に配する。そして、スクリーン印刷版に導電ペーストを載置し、スキージを移動させて導電ペーストをスクリーン印刷版の表面に塗布する。これにより、導電ペーストがスクリーン印刷版を通過して被印刷物に印刷される。
【0016】
このとき、この構成におけるスクリーン印刷版では開口部の周縁部の厚みが厚くなっているため、スキージが周縁部を通過する際にスキージが持ち上がり、スキージが持ち上がることによって増大した空間体積分だけ導電ペーストが多量に充填される。
この結果、1度のスクリーン印刷によって、被印刷物表面には所定厚みの内部電極が形成され、被印刷物の貫通孔(所定厚みより長い深さの孔)にも十分な導電材料が充填される。
【0017】
また、スクリーン印刷版は開口部とメッシュ領域との間に接続部を有している。そのため、導電ペーストが接続部を通過して被印刷物に印刷される接続内部電極を介して、導電ペーストがメッシュ領域を通過して被印刷物に印刷される内部電極と導電ペーストが開口部を通過して被印刷物の貫通孔に充填される導電材料との導電領域も導通する。
【0018】
以上より、この構成のスクリーン印刷版を用いることで、従来の製造方法で行われていた内部電極形成工程および電極充填工程を同時に行うことができる。
即ち、1回のスクリーン印刷により、内部電極の形成と貫通孔への充填を同時に行ったとしても、貫通孔に十分な導電材料が充填できる。また、スクリーン印刷が1回で済むため、スクリーン印刷に要する時間が約半分となり、電子部品の製造コストを削減できる。
【0019】
(2)前記開口部は、前記被印刷物に形成される貫通孔に前記導電ペーストを充填する位置に形成される。
【0020】
(3)前記接続部は、前記メッシュ領域と同じ厚みを有する。
【0021】
この構成では、導電ペーストがメッシュ領域を通過して被印刷物に印刷される内部電極の厚みと導電ペーストが接続部を通過して被印刷物に印刷される内部電極の厚みとが均一になる。このため、両内部電極の接続信頼性が良好となる。
【0022】
(4)前記複合領域は、前記開口部と前記メッシュ領域との間に、前記導電ペーストの通過を阻止する版膜部を有し、
前記接続部は、その幅が前記開口部の直径より小さい。
【0023】
この構成では、スキージがスクリーン印刷版の開口部を通過した直後からスクリーン印刷の終了時までの所定時間において、被印刷物の貫通孔の上方から導電ペーストが周辺へ流れ出す領域が、接続部の幅が開口部の直径より大きい場合に比べて減る。そのため、当該貫通孔の上方から接続内部電極を介して内部電極へ流れる導電ペーストの量を少なくすることができる。
その結果、当該貫通孔の上方の導電材料の厚みが厚くなり、当該貫通孔への導電材料の充填量も増加する。従って、ビアホール電極を介した層間の接続が安定する。
【0024】
また、本発明の積層セラミック電子部品の製造方法は、前記課題を解決するために以下の工程を含んでいる。
【0025】
(5)上記(1)に記載のスクリーン印刷版を用いて印刷し、前記被印刷物であるセラミックシート表面への内部電極の導電パターン形成と、前記セラミックシートに形成されている貫通孔への導電材料の充填と、を同時に行う印刷工程を含む。
【0026】
この製造方法における印刷工程は、上記(1)に記載のスクリーン印刷版を用いて、積層セラミック電子部品を製造する工程である。
これにより、上記(1)と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、導電性ペーストのスクリーン印刷により内部電極と貫通孔とを電気的に接続する際に、内部電極の形成と貫通孔への充填を同時に行ったとしても、貫通孔に十分な導電材料が充填できる。また、スクリーン印刷の回数を減らすことができるので、電子部品の製造コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】特許文献1の圧電素子10の全体を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電素子10の内部構造を示す分解斜視図である。
【図3】図3(A)は、従来のスクリーン印刷版200の要部平面図であり、図3(B)は、スクリーン印刷時におけるセラミックグリーンシート12A1の断面図であり、図3(C)は、スクリーン印刷後におけるセラミックグリーンシート12A1の断面図である。
【図4】本願発明の実施形態に係るスクリーン印刷版100を用いて製造された圧電素子40の全体を示す外観斜視図である。
【図5】図4に示す圧電素子40の内部構造を示す分解斜視図である。
【図6】図4に示す圧電素子40の製造方法を示す概略図である。
【図7】本願発明の実施形態に係るスクリーン印刷版100の要部平面図である。
【図8】スクリーン印刷時におけるセラミックグリーンシート41Aの断面図である。
【図9】スクリーン印刷後におけるセラミックグリーンシート41Aの断面図である。
【図10】スクリーン印刷後におけるセラミックグリーンシート41Aの中央部を破断したセラミックグリーンシート41Aの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本願発明の実施形態に係るスクリーン印刷版100について説明する。
図4は、本願発明の実施形態に係るスクリーン印刷版100を用いて製造された圧電素子40の全体を示す外観斜視図であり、図5は、図4に示す圧電素子40の内部構造を示す分解斜視図である。
【0030】
圧電素子40は、2層の圧電セラミックよりなる圧電セラミック層41A,41Bを積層したものである。図5には、圧電セラミック層41Aの上面の導電パターン43と、層間(即ち圧電セラミック層41Bの上面)の導電パターン42と、圧電セラミック層41Bの下面の導電パターン44と、が示されている。
【0031】
圧電セラミック層41Aの上面の導電パターン43は、円形の中心内部電極43Aと、導電材料の印刷されていない環状のギャップ部を介して中心内部電極43Aを取り囲む周辺内部電極43Bと、周辺内部電極43Bと導通するランド43D1と、中心内部電極43Aと導通するランド43D2と、中心内部電極43Aからランド43D2へ引き出すための引出内部電極43Cと、貫通孔Hに充填された導電材料の露出部分であり、ランド43D1、43D2と導通する4つのビアホール電極43Eとを有している。
【0032】
層間の導電パターン42は、円形のダミー内部電極42Aと、その周囲の4つのコーナ部に設けられた内部電極42Bと、ダミー内部電極42Aと導通するランド42Dとを有している。ダミー内部電極42Aは孤立した電極であり、他の電極と接続されていない。
【0033】
圧電セラミック層41Bの下面の導電パターン44は、円形の中心内部電極44Aと、導電材料の印刷されていない環状のギャップ部を介して中心内部電極44Aを取り囲む周辺内部電極44Bと、周辺内部電極44Bと導通するランド44D1と、中心内部電極44Aと導通するランド44D2と、中心内部電極44Aからランド44D2へ引き出すための引出内部電極44Cと、貫通孔Hに充填された導電材料の露出部分であり、ランド44D1、44D2と、を有している。引出内部電極44Cは上面の導電パターン43の引出内部電極43Cとは周方向の同じ位置に形成されている。
【0034】
したがって、圧電素子40は、中心内部電極44Aがビアホール電極43Eを介して中心内部電極43Aと導通し、周辺内部電極44Bがビアホール電極43Eを介して周辺内部電極43Bと導通した構造となっている。
【0035】
次に、圧電素子40の製造方法について説明する。図6は、図4に示す圧電素子40の製造方法を示す概略図である。
【0036】
圧電セラミック材料、有機バインダ、及び溶媒を混合してスラリー状にし、該スラリーをPET(Polyethylene Terephthalate)フィルム93上にドクターブレードによりシート成形することによって厚み10〜50μmのセラミックグリーンシート41A,41Bを作製する(S1)。主成分である当該圧電セラミック材料は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる。
【0037】
次に、セラミックグリーンシート41A,41Bの所定の位置に対して、PETフィルム93を貫通しない程度にレーザ光を照射し、当該所定の位置にテーパ状の貫通孔をそれぞれ穿孔する(S2)。
【0038】
そして、本実施形態では、後述の図7に示すスクリーン印刷版100を用いてスクリーン印刷し、セラミックグリーンシート41A表面への内部電極の導電パターン形成と、セラミックグリーンシート41Aに形成されている貫通孔への導電材料の充填と、を同時に行う(S3)。また、セラミックグリーンシート41Bに対しても同様に、スクリーン印刷し、内部電極の導電パターン形成と貫通孔への導電材料の充填と、を同時に行う(S3)。
なお、S3の印刷工程の詳細については、後述する。
【0039】
次に、図6に戻り、導電パターンの形成された複数のセラミックグリーンシート41A,41Bを積層し(S4)、圧着してセラミック積層体39を作製する(S5)。
【0040】
最後に、セラミック積層体39を焼成することにより、積層セラミック電子部品である圧電素子40を得る(S6)。
なお、導体パターン44は、焼成後の圧電素子40に対してスパッタリングによって形成される。
【0041】
以下、上記S3の印刷工程について詳述する。
なお、セラミックグリーンシート41A、41Bに対しては同様のスクリーン印刷を行うため、セラミックグリーンシート41A、41Bを代表してセラミックグリーンシート41Aの印刷工程について詳述する。
【0042】
図7は、本願発明の実施形態に係るスクリーン印刷版100の要部平面図である。図8(A)(B)は、スクリーン印刷時におけるセラミックグリーンシート41Aの断面図である。図8(A)は、スキージ91がスクリーン印刷版100の開口部101を通過する直前におけるセラミックグリーンシート41Aの拡大断面図であり、図8(B)は、スキージ91がスクリーン印刷版100の開口部101を通過した後におけるセラミックグリーンシートの断面図である。図9(A)(B)は、スクリーン印刷後におけるセラミックグリーンシート41Aの断面図である。図9(A)は、スキージ91がスクリーン印刷版100の開口部101を通過した直後におけるセラミックグリーンシート41Aの断面図であり、図9(B)は、スクリーン印刷の終了時におけるセラミックグリーンシート41Aの断面図である。図10は、スクリーン印刷後におけるセラミックグリーンシート41Aの中央部を破断したセラミックグリーンシート41Aの斜視図である。
【0043】
図7に示すように、スクリーン印刷版100は、メッシュ領域Aと、複合領域Bとを備える。メッシュ領域Aは、印刷用の導電ペースト90を通過させる複数のメッシュ孔102が形成された領域である。メッシュ領域Aは、セラミックグリーンシート41Aに形成する内部電極43A、43B、43C、43D1、43D2に対応するスクリーン印刷版100の領域に形成されている。
【0044】
一方、複合領域Bは、メッシュ孔102より大きい径の開口部101と、導電ペースト90の通過を阻止する版膜部103とを有する。さらに、複合領域Bは、開口部101の周縁に位置し、メッシュ領域Aの厚みより厚い周縁部105と、導電ペースト90が通過してセラミックグリーンシート41Aに印刷された導電領域が連続するよう、開口部101とメッシュ領域Aとの間に形成された複数のメッシュ孔で構成される接続部104と、を有する。
【0045】
開口部101は、セラミックグリーンシート41Aの貫通孔(ビアホール電極43E)に対応するスクリーン印刷版100の領域に形成されている。
【0046】
接続部104は、その幅Yが開口部101の直径より小さい(図7参照)。さらに、接続部104は、周縁部105の厚みより薄いメッシュ領域Aと同じ厚みである(図8(A)参照)。
【0047】
上記S3の印刷工程では、まず、以上のようなスクリーン印刷版100を用意し、セラミックグリーンシート41Aの貫通孔Hと開口部101の位置が一致するようスクリーン印刷版100をセラミックグリーンシート41A上に配する。
【0048】
そして、スクリーン印刷版100の一端に導電ペースト90を載置し、図8(A)(B)に示すように、スキージ91を矢印の方向へ移動させて導電ペースト90をスクリーン印刷版100の表面に塗布する。これにより、導電ペースト90がスクリーン印刷版100を通過してセラミックグリーンシート41Aに印刷される。
【0049】
このとき、本実施形態におけるスクリーン印刷版100では図8(A)に示すように周縁部105の厚みが厚くなっているため、スキージ91が周縁部105を通過する際にスキージ91が持ち上がり、スキージ91が持ち上がることによって増大した空間体積分だけ導電ペースト90が貫通孔へ多量に充填される(図8(B)参照)。
【0050】
この結果、1度のスクリーン印刷で、図9(A)(B)に示すように、セラミックグリーンシート41A表面には0.1μm〜2.0μm程度の内部電極が形成され、セラミックグリーンシート41Aの貫通孔(10〜100μm程度)にも十分な導電材料が充填される。
【0051】
また、スクリーン印刷版100は開口部101とメッシュ領域Aとの間に接続部104を有しているため、ランド43D1、43D2(内部電極)とビアホール電極43Eとの導電領域も接続内部電極43Fを介して連続する(図5、図9(B)、図10(B)参照)。
【0052】
さらに、この接続部104は、メッシュ領域Aと同じ厚みであるため、導電ペースト90がメッシュ領域Aを通過してセラミックグリーンシート41Aに印刷される内部電極43D1、43D2の厚みと、導電ペースト90が接続部104を通過してセラミックグリーンシート41Aに印刷される接続内部電極43Fの厚みとが、均一になる。そのため、両内部電極の接続信頼性も良好となる。
【0053】
ここで、スキージ91がスクリーン印刷版100の開口部101を通過した直後では、セラミックグリーンシート41Aの貫通孔の上方における、塗布された導電ペーストは、図9(A)に示すように略平坦な形状となっている。図9(A)の場面から所定時間経過したスクリーン印刷の終了時には、セラミックグリーンシート41Aの貫通孔の中心部分の上方における導電ペーストは、自重で貫通孔の下方に流れ、図9(B)に示すように窪んだ形状となる。
【0054】
しかし、本実施形態ではスクリーン印刷版100に接続部104を設けている。そのため、上述の積層工程(S4)及び圧着工程(S5)を行う時に、内部電極43D1、43D2のうち厚みが厚く形成されていた領域の導電ペーストが接続内部電極43Fを介してビア側へ押し出されて、ビア上方の当該窪みに入り込み、ビアの上方と内部電極43D1、43D2、43Fとの導電材料の厚みが均一になる。
【0055】
このため、本実施形態のスクリーン印刷版100を用いた場合でも、ビアホール電極43Eと内部電極43D1、43D2、43Fとにおける接続信頼性の低下を防ぐことができる。
【0056】
なお、接続部104の幅Y(図7参照)が開口部101の直径より大きい場合、図9(A)の場面からスクリーン印刷の終了時までの所定時間において、セラミックグリーンシート41Aの貫通孔の上方から接続内部電極43Fを介して内部電極43D1、43D2へ流れる導電ペーストの量が非常に多くなる。
【0057】
その結果、図10(A)に示すように、当該貫通孔の上方の導電材料の厚みが薄くなり、当該貫通孔への導電材料の充填量が少なくなってしまう。このため、層間の接続(具体的には図5に示すビアホール電極43Eを介した中心内部電極43Aと中心内部電極44Aとの接続や、ビアホール電極43Eを介した周辺内部電極43Bと周辺内部電極44Bとの接続)が不安定になってしまう。
【0058】
そこで、図7に示すように、接続部104の幅Yは、開口部101の直径より小さい方が好ましい。この場合、セラミックグリーンシート41Aの貫通孔の上方から導電ペーストが周辺へ流れ出す領域が減るため、当該貫通孔の上方から接続内部電極43Fを介して内部電極43D1、43D2へ流れる導電ペーストの量を減らすことができる。
【0059】
その結果、図10(B)に示すように、当該貫通孔の上方の導電材料の厚みが適正な厚みになり、当該貫通孔への導電材料の充填量も適量となる。従って、ビアホール電極43Eを介した層間の接続が安定する。
【0060】
ただし、接続内部電極43Fが細すぎる場合、上述の焼成(S6)時において接続内部電極43Fが収縮するため接続内部電極43Fがさらに細くなり、ビアホール電極43Eと内部電極43D1、43D2との接続が不安定になる。そのため、接続部104の幅Yは焼成時の接続内部電極43Fの収縮量を考慮して定める必要がある。
【0061】
以上より、本実施形態では、スクリーン印刷版100を用いて上記製造方法で製造することで、従来の製造方法で行われていた内部電極形成工程および電極充填工程を同時に行うことができる。
即ち、1回のスクリーン印刷により、内部電極の形成と貫通孔への充填を同時に行ったとしても、貫通孔に十分な導電材料が充填できる。また、スクリーン印刷が1回で済むため、スクリーン印刷に要する時間が約半分となり、圧電素子40の製造コストを削減できる。
【0062】
《その他の実施形態》
以上の実施形態では、図7に示すように接続部104を開口部101から4方向へ十字状に伸びるよう4箇所に形成しているが、実施の際は、少なくとも1箇所に形成すればよい。
【0063】
また、以上の実施形態では、開口部を円状に形成しているが、実施の際は、四角形、楕円形等、その他の形状に形成しても構わない。同様に、周縁部105の形状を環状に形成しているが、実施の際は、開口部の形状に併せて、周縁部の形状を四角形、楕円形等、その他の形状に形成しても構わない。
【0064】
なお、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
10…圧電素子
12A1,12A2,12B1,12B2,12C1,12C2…セラミックグリーンシート
14A,17A、15A,18A、14B,17B、15B,18B、14C,17C、15C,18C、14D,17D…内部電極
16A1,19A1、16B1,19B1、16B2,19B2、16C1,19C1、16C2,19C2、16D1,19D1…貫通孔
39…セラミック積層体
40…圧電素子
41A…セラミックグリーンシート
41B…セラミックグリーンシート
42…層間の導電パターン
42A…ダミー内部電極
42B…内部電極
42D…ランド
43…上面の導電パターン
43A…中心内部電極
43B…周辺内部電極
43C…引出内部電極
43D1…ランド
43D2…ランド
43E…ビアホール電極
43F…内部電極
44…下面の導電パターン
44A…中心内部電極
44B…周辺内部電極
44C…引出内部電極
44D1…ランド
44D2…ランド
90…導電ペースト
91…スキージ
93…PETフィルム
100…スクリーン印刷版
101…開口部
102…メッシュ孔
103…版膜部
104…接続部
105…周縁部
200…従来のスクリーン印刷版
201…開口部
202…メッシュ領域
A…メッシュ領域
B…複合領域
H…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用の導電ペーストを通過させる複数のメッシュ孔が形成されたメッシュ領域と、前記メッシュ孔より大きい径の開口部を有する複合領域と、を備えたスクリーン印刷版であって、
前記複合領域は、
前記開口部の周縁に位置し、前記メッシュ領域の厚みより厚い周縁部と、
前記導電ペーストが通過して被印刷物に印刷された導電領域が連続するよう、前記開口部と前記メッシュ領域との間に形成された複数のメッシュ孔で構成される接続部と、を有するスクリーン印刷版。
【請求項2】
前記開口部は、前記被印刷物に形成される貫通孔に前記導電ペーストを充填する位置に形成された、請求項1に記載のスクリーン印刷版。
【請求項3】
前記接続部は、前記メッシュ領域と同じ厚みを有する、請求項1又は2に記載のスクリーン印刷版。
【請求項4】
前記複合領域は、前記開口部と前記メッシュ領域との間に、前記導電ペーストの通過を阻止する版膜部を有し、
前記接続部は、その幅が前記開口部の直径より小さい、請求項1から3のいずれかに記載のスクリーン印刷版。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のスクリーン印刷版を用いて印刷し、前記被印刷物であるセラミックシート表面への内部電極の導電パターン形成と、前記セラミックシートに形成されている貫通孔への導電材料の充填と、を同時に行う印刷工程を含む、積層セラミック電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−212895(P2011−212895A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81499(P2010−81499)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】