説明

スチレンバリヤを有する現場硬化ライナー

地下下水道管またはガス管等の損傷した管を補修するためのライナーが開示される。ライナーは、不織布の繊維性マット上のTPUコーティングを含む。TPUコーティングは、損傷した管に対してライナーを押しつけ熱硬化性樹脂を活性化するために用いられる媒体へのライナーからのスチレンの移動を遅延させるための、バリヤ層を含有する。熱硬化性樹脂により、ライナーが管内部で現場硬化されるとともに、ライナーが可撓性状態から剛性状態に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管または他の様々な通路のためのライナーに関する。特に、本発明は、壊れた、穴があいた、または漏れている幹線下水管、横構下水管およびガス管を補修するために用いられる、地下下水道用ライナーに関する。本発明は、スチレンの移動に耐性のあるバリヤ層を有する、現場硬化ライナーに関する。すなわち、ライナーが補修される管内部で硬化される。本発明は、熱の使用により熱硬化性樹脂が硬化される(固められる)スチレンベースのポリエステル熱硬化性樹脂浸漬布を用いた現場硬化ライナーも目的とする。
【背景技術】
【0002】
下水道およびガス管等の損傷した管または壊れた管をライニングするための現場硬化法は、地下管を補修するための非常に効果的な方法となっている。この方法は、地下管を掘り出す必要性、およびその結果生じる舗装道路および建物等の地表のインフラへの損傷を回避する。現場硬化法は、まず、ライナーが可撓性状態にある間に管の内部にライナーを配置するステップと、それからライナーを損傷した管内部に対して押し付けながらライナーを管の中で硬い状態に硬化するステップとを伴う。従来法は空気、蒸気または水を用いてライナーに加圧して、可撓性ライナーを管の内部に適合させ、ライナーを管の内部に対して圧力により保持しながら硬い状態に硬化させる。
【0003】
従来技術のライナーは、ライナーの一方の側面に布を用い、もう一方の側面に単層ポリマーシートを用いて作製されている。布は、スチレンベースのポリエステル樹脂またはエポキシ樹脂等の未硬化熱硬化性材料に浸漬される。ライナーを管内部に設置した後に、硬化、すなわち熱硬化性材料を剛性状態に変換するプロセスが実行される。ライナーは、特許文献1に記載される引込法または特許文献2に記載される反転法により補修する管の内部に設置でき、これらの特許はともに参照により本明細書に組み込まれる。布上に設置するポリマーシートは、使用する熱硬化性材料に耐性でなければならないうえに、熱硬化性材料を硬化させるために用いる熱に耐えられなければならない。布を被覆するために様々な熱可塑性プラスチックおよびエラストマーが用いられており、ポリウレタンが多用されている。熱可塑性ポリウレタンは、その耐摩耗性、耐引き裂き性および弾性により特に望ましい。
【0004】
スチレンベースのポリエステルを熱硬化樹脂として使用する際に生じる一つの問題は、樹脂から樹脂吸収性材料層に被覆された熱可塑性プラスチックポリマー層を通ってのスチレンの移動である。スチレンが現場硬化管の空洞に入り、管ライナーに加圧するために用いられる水または蒸気等の媒体を汚染する。媒体を管から排出する際にはスチレンで汚染されているため、単に地元の都市下水網に流すのではなく特別に処理しなければならない。また、スチレンの匂いにも対処しなければならないことも問題になりうる。
【0005】
管ライナーに加圧するために用いられる媒体へのスチレンの移動を大きく減少させる熱可塑性層を有し、媒体を通常の下水道処理施設で処理できるようにすることが望ましいだろう。このような開発によって据え付け費が減少され、環境も改善されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,009,063号明細書
【特許文献2】米国特許第4,064,211号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ライナーを通ったスチレンの移動を大きく減少させるためのバリヤ層を含む、通路または管用の現場硬化ライナー。ライナーは、樹脂吸収性材料、好ましくは不織樹脂吸収性材料の少なくとも一つの層を有する。ライナーは、樹脂吸収性材料層に含浸された熱硬化性樹脂、好ましくはスチレンポリエステル樹脂も有する。ライナーは、樹脂吸収性材料層に付着した熱可塑性コーティングを有する。コーティングは熱可塑性バリヤ層を含み、これは高硬度熱可塑性ポリウレタンポリマーまたはエチレンビニルアルコールポリマーであるのが好ましい。コーティングは、(a)樹脂吸収性材料層と接触する第一熱可塑性層と、(b)第一熱可塑性層および第三熱可塑性層と接触する第二熱可塑性バリヤ層と、(c)バリヤ層と接触する第三熱可塑性層とを含む三層コーティングであるのが好ましい。コーティングの第一および第三層は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリアミド(COPA)およびコポリエステル(COPE)からなる群より選択される熱可塑性ポリマーから作製されうる。
【0008】
最も好ましい実施形態においては、樹脂吸収性材料層はポリエステル不織布であり、熱硬化性樹脂はスチレンポリエステル樹脂であり、コーティングは、第一および第三層としてポリエステル熱可塑性ポリウレタンポリマー(TPU)を有し、第一層と第三層との間に高硬度TPUまたはエチレンビニルアルコール(EVOH)ポリマーのバリヤ層(第二層)を有する、三層コーティングである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
通路または管用の現場硬化ライナーは、(a)少なくとも一つの樹脂吸収性材料層と、(b)樹脂吸収性材料層に吸収された熱硬化可能樹脂と、(c)バリヤ材料を含む熱可塑性コーティングまたはフィルムから構成される。熱可塑性コーティングは、樹脂吸収性材料層と接触する第一熱可塑性層と、第二熱可塑性バリヤ層と、バリヤ層と接触する第三熱可塑性層とを有する三層フィルムであるのが好ましい。第二熱可塑性バリヤ層は、高硬度TPUまたはEVOHポリマーでありうる。コーティングの第一および第三層は同じでも異なってもよく、TPU、COPAまたはCOPEポリマーでありうる。コポリアミド(COPA)ポリマーの例は、ArkemaからPebax(登録商標)として市販されるものである。コポリエステル(COPE)ポリマーの例は、DuPontからHytrel(登録商標)として市販されるものである。最も好ましい実施形態は、コーティングの三つの層全てにTPUポリマーを使用し、第一および第三層が低硬度TPU(98ショアA未満)であり、第二バリヤ層が高硬度(60ショアD以上)を有するTPUであるものである。高硬度TPUのバリヤ層が、低硬度TPUの第一および第三層の間に設けられる。コーティングの三つの層全てにTPUを使用する最も好ましい実施形態に関して本発明を記載する。本明細書におけるコーティングは、フィルムを意味する。
【0010】
(コーティングの第一および第三層のためのTPU)
本発明において第一および第三層に使用する熱可塑性ポリウレタン(TPU)ポリマーは、三つの反応物の反応により作製される。第一反応物はポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートまたはその混合物のヒドロキシル末端中間体等の、ヒドロキシル末端中間体である。第二反応物はグリコールまたはアミン鎖延長剤であり、グリコール鎖延長剤が好ましい。第三反応物はイソシアネート、好ましくはジイソシアネートである。三つの好ましい反応物の各々を、以下に記載する。
【0011】
ヒドロキシル末端ポリエステル中間体は、一般に、約1000〜約10,000、望ましくは約2000〜約5000、好ましくは約2000〜約3000の数平均分子量(Mn)を有する直鎖状ポリエステルである。分子量は、末端官能基のアッセイによって決定され、数平均分子量と関係する。ヒドロキシル末端ポリエステル中間体は、1.5未満、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.8未満等の低酸価を有するのが好ましい。低酸価はTPUポリマーの加水分解安定性を改善するため、ヒドロキシル末端ポリエステル中間体の低酸価は、水分と接触するライナーに好ましい。酸価は、ASTM D−4662に従って決定され、1.0グラムのサンプル中の酸性成分を滴定するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数で表される塩基の量として定義される。TPUポリマー調製の当業者に公知のTPUに加水分解安定剤を加えることによっても、加水分解安定性が改善されうる。ヒドロキシル末端ポリエステル中間体は、(1)一つ以上のジカルボン酸または無水物との一つ以上のグリコールのエステル化反応、または(2)エステル交換反応、すなわちジカルボン酸のエステルとの一つ以上のグリコールの反応によって生成される。末端ヒドロキシル基が優勢な直鎖状鎖を得るために、概して酸に対しグリコールが1モルより大きい、過剰なモル比が好ましい。好適なポリエステル中間体には、ε−ポリカプロラクトンおよびジエチレングリコール等の二官能性開始剤から典型的に作製されるポリカプロラクトン等の様々なラクトンも含まれる。望ましいポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族またはそれらの組み合わせでありうる。単独または混合物において使用できる好適なジカルボン酸は、一般に合計4〜15の炭素原子を有し、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などを含む。無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物などの上記のジカルボン酸の無水物も使用できる。アジピン酸が好ましい酸である。望ましいポリエステル中間体を形成するために反応させるグリコールは、脂肪族、芳香族、またはそれらの組み合わせであり得、合計2〜12の炭素原子を有し、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどを含み、1,4−ブタンジオールが好ましいグリコールである。二つ以上のグリコールのブレンドが用いられうる。ガス管等の耐微生物性が必要な管をライニングするのに用いるライナーには、ジエチレングリコールが好ましいグリコールである。
【0012】
第一および第三層で使用するTPUポリマーを作製するために用いるための第二反応物として使用する好適なグリコール鎖延長剤は、脂肪族、芳香族またはそれらの組み合わせであり得、2〜約12の炭素原子を有する。グリコール鎖延長剤は、約2〜約10の炭素原子を有する低級脂肪族または短鎖グリコールであるのが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールヒドロキノン、ジ(ヒドロキシエチル)エーテル、ネオペンチルグリコール(neopentyglycol)などを含み、1,4−ブタンジオールが好ましい。芳香族グリコールを鎖延長剤として用いて、ベンゼングリコールおよびキシレングリコールを含むTPUを作製しうる。キシレングリコールは、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンおよび1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンの混合物である。ベンゼングリコールは、ヒドロキノン、すなわち、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても知られるビス(ベータ−ヒドロキシエチル)エーテル;レソルシノール、すなわち、1,3−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンとしても知られるビス(ベータ−ヒドロキシエチル)エーテル;カテコール、すなわち、1,2−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても知られるビス(ベータ−ヒドロキシエチル)エーテル、;およびそれらの組み合わせを特に含む。二つ以上のグリコールの混合物を、本発明のTPUにおいて鎖延長剤として使用できる。1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物が、好ましい混合物である。
【0013】
本発明の第一および第三層のTPUを作製するための第三反応物は、ジイソシアネートである。好適なジイソシアネートには、芳香族ジイソシアネート、例えば、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)(MDI);m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート(TODI)およびトルエンジイソシアネート(TDI);ならびに、脂肪族ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、デカン−1,10−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、およびジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートが含まれる。最も好適なジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、すなわちMDIである。二つ以上のジイソシアネートの混合物も使用できる。また、トリイソシアネート等の少量の2を上回る官能基を有するイソシアネートを、ジイソシアネートとともに使用できる。大量の3以上の官能基を有するイソシアネートはTPUポリマーを架橋させ、そのため溶融処理される能力を妨げるため、避けなければならない。
【0014】
三つの好ましい反応物(ヒドロキシル末端ポリエステル中間体、グリコール鎖延長剤、およびジイソシアネート)を一緒に反応させて、本発明のTPUコーティングの第一および第三層で使用する高分子量TPUを形成する。三つの反応物を反応させるための任意の周知のプロセスを用いてTPUを作製しうる。好ましいプロセスは、三つ全ての反応物を押出反応器に加えて反応させる、いわゆるワンショットプロセスである。ヒドロキシル含有成分すなわちヒドロキシル末端ポリエステル中間体および鎖延長剤グリコールの総当量に対するジイソシアネートの当量は、約0.95〜約1.10、望ましくは約0.96〜約1.02、好ましくは約0.97〜約1.005である。ウレタン触媒を利用した反応温度は、一般に約175℃〜約245℃、好ましくは180℃〜220℃である。
【0015】
一般に、ジイソシアネートをポリエステル中間体または鎖延長剤と反応させるために任意の従来の触媒を用いることができ、これは当技術分野および文献で周知のものである。好適な触媒の例には、アルキル部分が1〜約20の炭素原子を有するビスマスまたはスズの様々なアルキルエーテルまたはアルキルチオールエーテルが含まれ、具体例にはビスマスオクトエート、ビスマスラウレートなどが含まれる。好ましい触媒には、スタンナスオクトエート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレートなどの様々なスズ触媒が含まれる。このような触媒の量は、ポリウレタン形成反応物の総重量に基づいて、約20〜約200ppm等、一般に少量である。
【0016】
プレポリマープロセスを利用して熱可塑性ポリウレタンを調製することもできる。プレポリマールートでは、ヒドロキシル末端ポリエステル中間体を、一般に当量過剰の一つ以上のジイソシアネートと反応させて、遊離または未反応ジイソシアネートを有するプレポリマー溶液を形成する。反応は一般に、好適なウレタン触媒の存在下で約80℃〜約220℃、好ましくは約150℃〜約200℃の温度で実施される。その後、上記のような選択的種類の鎖延長剤を、イソシアネート末端基ならびに任意の遊離または未反応ジイソシアネート化合物と概して等しい当量で加える。ヒドロキシル末端ポリエステルおよび鎖延長剤の総当量に対する総ジイソシアネートの当量比は、したがって、約0.95〜約1.10、望ましくは約0.96〜約1.02、好ましくは約0.97〜約1.005である。望ましいショア硬度を得るために、鎖延長剤に対するヒドロキシル末端ポリエステルの当量比が調節される。鎖延長反応温度は一般に約180℃〜約250℃であり、約200℃〜約240℃が好ましい。典型的にプレポリマールートは任意の従来のデバイスで実行でき、押出機が好ましい。したがって、ポリエステル中間体を押出機の第一部分で当量過剰のジイソシアネートと反応させてプレポリマー溶液を形成し、その後下流部分で鎖延長剤を加えてプレポリマー溶液と反応させる。任意の従来の押出機を利用でき、長さ対直径比が少なくとも20、好ましくは少なくとも25のバリヤスクリューを備えた押出機が好ましい。
【0017】
有用な添加剤を適切な量で利用でき、これには不透明顔料、可塑剤、着色剤、鉱物質充填剤、安定剤、潤滑剤、ワックス、紫外線吸収剤、プロセシング助剤、および他の所望の添加剤が含まれる。有用な不透明顔料には、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびチタネートイエローが含まれ、有用な色付け顔料には、カーボンブラック、イエローオキシド、ブラウンオキシド、ローおよびバーントシエナまたはアンバー、酸化クロムグリーン、カドミウム顔料、クロミウム顔料、および他の混合金属酸化物および有機顔料が含まれる。有用な充填材には、珪藻土(スーパーフロス)クレー、シリカ、タルク、雲母、ワロストナイト(wallostonite)、硫酸バリウム、および炭酸カルシウムが含まれる。所望される場合には抗酸化剤等の有用な安定剤を使用でき、これにはフェノール系酸化防止剤が含まれ、一方、有用な光安定剤には有機ホスフェートおよび有機スズチオレート(メルカプチド)が含まれる。有用な潤滑剤には、ステアリン酸金属塩、パラフィン油およびアミドワックスが含まれる。有用な紫外線吸収剤には、2−(2’−ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールおよび2−ヒドロキシベンゾフェノンが含まれる。TPUポリマーの加水分解安定性を改善するためにも添加剤を用いうる。
【0018】
TPUポリマーの重量平均分子量(Mw)は、一般に約60,000〜約500,000、好ましくは約80,000〜約300,000ダルトンである。蒸気を用いて管ライナーを既存の管の壁に対して押し付け熱硬化可能樹脂を硬化させる用途では、TPUポリマーが、約120℃より高い、好ましくは約140℃より高い、より好ましくは約180℃未満のDSC二次熱融解吸熱ピーク温度により示される高温性能特性を有するのが好ましい。この高温性能は、現場硬化取り付けの間にライナーに穴が形成されるのを防ぐのに必要である。温度性能特性は、10℃/分での加熱/冷却/加熱モードで−100℃〜230℃の走査条件を用いた示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を用いて測定される。ASTM D−3418−03標準が、DSC試験を記載する。二次熱融解吸熱ピーク温度を用いて、サンプルの任意の分散が補正される。
【0019】
TPUライナーの第一および第三層で使用される最も好ましいTPUポリマーは、約85A〜約98A、好ましくは85A〜95AのショアA硬度を有し、210℃および3.8Kgの負荷で80g/10分以下、好ましくは65g/10分未満、より好ましくは50g/10分未満のメルトフローインデックスを有する。TPUのカレンダー加工グレードは典型的に約45〜80のメルトフローインデックスを有し、押出グレードは典型的に40以下のメルトフローインデックスを有する。これらの要件を満たす市販のTPUポリマーは、Estane(登録商標)TPU58437、58277、58447、54605、54777、T5630、T5620、58605およびX−1351として公知であり、Lubrizol Advanced Materials,Inc.から市販されている。98ショアAより高い硬度を有するTPUポリマーは、特に反転法によって損傷した管へのライナーの挿入を促進するには、場合によっては硬すぎうる。ショアAおよびショアD硬度は、ASTM D2240に従って決定される。
【0020】
ガス管をライニングするためにTPUを使用する場合は、低酸価ポリエステル中間体から作製され、ポリエステル中間体がアジピン酸をジエチレングリコールと反応させて作製されるTPUを使用するのが好ましい。このタイプのTPUがより耐微生物性であると考えられるためである。ガス管には耐微生物性が望ましい。使用されるTPUのタイプは使用中にさらされる環境および硬化プロセスに必要な温度により変化しうる。
【0021】
TPUは、良好な耐溶媒性も有しなければならない。溶媒は、樹脂吸収性層に熱硬化可能樹脂を入れるのを促進するために作製されるライナーに穿孔された穴の上に、TPUパッチを溶媒溶接するために用いることができる。溶媒は、もともと平坦な長方形シートから閉管を作るためにライナーの長さ方向の継目の上にTPUテープを溶媒溶接するためにも用いることができる。
【0022】
(バリヤ層)
スチレンの移動に耐性のバリヤ層(第二層)が、上述の第一および第三層の間に使用される。現場硬化ライナーで使用する熱硬化樹脂は通常、樹脂を硬化させるためにスチレンを使用したポリエステル樹脂である。スチレンがライナーの熱可塑性部分を通って移動すれば、ライナーを膨張させるのに用いる水または蒸気がスチレンによって汚染されうる。水または蒸気中にあまりに多量のスチレンが存在すると、水を都市排水システムに排出するのではなく、より高コストの手段により回収および廃棄せねばならない。
【0023】
非常に硬いTPUまたはエチレンビニルアルコール(EVOH)ポリマーからスチレンバリヤ層が形成できることが分かっている。第一および第三層の間にバリヤ層を設置するのが好ましい。バリヤ層は第一および第三層ほど樹脂吸収性材料に対する良好な接着性を有しないため、樹脂吸収性材料上に直接設置するのではなく、第一および第三層の間に設置する。バリヤ層を樹脂吸収性材料上に直接設置することが望まれる場合には、好適な接着剤をバリヤ層および樹脂吸収性材料の間に適用しうる。
【0024】
バリヤ層は、60ショアD以上、好ましくは65ショアD以上、より好ましくは75ショアD以上、最も好ましくは約85ショアD以上の硬度を有する、非常に硬いTPUであるのが好ましい。バリヤ層の非常に硬いTPUの好適な材料につき、以下により詳細に記載する。
【0025】
非常に硬い剛性TPUポリマーは、ポリイソシアネートを短鎖ジオール(すなわち鎖延長剤)、および任意に15重量パーセント未満のポリオール(上記の第一および第三TPU層で使用されるヒドロキシル末端中間体)と反応させることにより作製される。剛性TPUポリマーは5重量パーセント未満のポリオールを含有するのが好ましく、剛性の非常に硬いTPUポリマーにゼロのポリオールが存在するのがより好ましい。剛性の非常に硬いTPUポリマーは、60ショアD以上、好ましくは65ショアD以上、より好ましくは75ショアD以上、最も好ましくは85ショアD以上のジュロメーター硬度を有する。
【0026】
剛性の非常に硬いTPUポリマーを作製するための適切な鎖延長剤は、好ましくは約2〜約12の炭素原子を有する低級脂肪族または短鎖グリコールであり、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールヒドロキノンジ(ヒドロキシエチル)エーテル、ネオペンチルグリコール(neopentyglycol)などならびにその混合物が含まれ、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。芳香族グリコール等の他のグリコールを使用してもよいが、好ましくはない。
【0027】
剛性の非常に硬いTPUポリマーを作製するための好適なポリイソシアネートには、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)(MDI)等の芳香族ジイソシアネート;m−キシレンジイソシアネート(XDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネート(TDI);ならびにイソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、デカン−1,10−ジイソシアネート、およびジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが含まれる。最も好ましいジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、すなわちMDIである。
【0028】
上記のポリイソシアネートを一切のポリオールの非存在下で鎖延長剤と反応させることにより、剛性の非常に硬いTPUポリマーを作製するのが好ましい。ポリオールが使用される場合には、総TPU反応物の最大15重量パーセント未満、より好ましくは5パーセント未満の少量で使用されねばならない。使用される場合には、ヒドロキシル末端中間体としても知られるポリオールが、衝撃強さを増加させるために非常に少ない量で使用される。使用できるポリオールは、TPUポリマーを作製するのに使用される普通のポリオールの任意のものである。これらには、ヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシル末端ポリエーテル、およびヒドロキシル末端ポリカーボネートが含まれる。好ましいヒドロキシル末端中間体は、第一および第三TPUポリマー層の説明で上により詳細に記載されているポリマーである。
【0029】
使用されるポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネートのレベルは、ヒドロキシル含有成分(すなわち、使用する場合にはヒドロキシル末端中間体、および鎖延長剤グリコール)の等重量に対するジイソシアネートの等重量である。ヒドロキシル含有成分に対するポリイソシアネートの等重量比は、約0.95〜約1.10、好ましくは約0.96〜約1.02、より好ましくは約0.97〜約1.005である。
【0030】
剛性の非常に硬いTPUポリマーを作製するための反応物を、当業者に周知のように、好ましくはワンショット重合プロセスで一緒に反応させる。ワンショットプロセスは、加熱した二軸スクリュー押出機に反応物を供給するステップを伴い、反応物が重合してポリマーが押出機を出た際にペレットに形成される。
【0031】
バリヤ層のための好適な剛性の非常に硬いTPUは、Isoplast(登録商標)およびHS85として市販されており、ともにCleveland,Ohio, U.S.AのLubrizol Advanced Materials,Inc.から入手可能である。
【0032】
樹脂吸収性材料
ライナーの一つの層として、樹脂吸収性材料を使用する。樹脂吸収性材料は、熱硬化可能樹脂を吸収または保持する任意の材料である。樹脂吸収性層は、厚さ0.1〜20cm、好ましくは厚さ0.2〜15cm、より好ましくは厚さ0.3〜10cmでありうる。好適な樹脂吸収性材料には、織繊維または不織繊維でありうる有機または無機繊維の繊維性材料が含まれる。(幹線または横構)下水道をライニングする場合には、樹脂吸収性材料はポリエステル不織布マット等、針穿孔された不織布材料であるのが好ましい。ガス管のライニングには、ガラス繊維材料が典型的に好ましい。
【0033】
上記の第一層のTPUポリマーを、樹脂吸収性材料の一方の側面上に被覆する。溶融処理装置を用いてTPUを樹脂吸収性材料上へ被覆する。好適な溶融処理装置は、カレンダーおよび押出プロセスを含む。ライナー上のTPUコーティング層(第一層)の好ましい厚さは、約50〜約1000マイクロメートル、好ましくは約100〜約800マイクロメートル、より好ましくは約100〜約500マイクロメートルの厚さである。TPUコーティング層(第一層)は、接着剤を用いずにポリエステル不織布マットに非常によく固着するため、本発明のTPUコーティングではポリエステル不織布マットが好ましい。
【0034】
現場硬化ライナーが補修の必要なより大きな直径(例えば25cmより大きい直径)の管用に設計される場合には、二層の樹脂吸収性材料が使用されることが多い。横構等のより小さい管用には、単層の樹脂吸収性材料を使用するのが慣行である。
【0035】
TPUコーティングは、三つの別々の層からなる。TPUの第一層が、樹脂吸収性層上へ被覆される。第二層であるバリヤ層が第一層に塗布され、TPUの第三層が第二層(バリヤ層)に塗布される。バリヤ層は、約12マイクロメートル(0.5mil)〜約75(3mil)マイクロメートル、好ましくは約20〜約30マイクロメートルの厚さを有しなければならない。高硬度TPUを使用する場合にはバリヤ層が非常に固く、したがってこの層が厚いほど、管内部にライナーを据え付けるのがより困難となろう。約1mil(25マイクロメートル)のバリヤ層を使用する場合には、反転法により補修が必要な管内にライナーを据え付けられることが分かっている。バリヤ層は上に特定されるものより薄くなりなおかつバリヤとして機能しうるが、厚さ12マイクロメートル未満のフィルムを押出またはカレンダー加工することは困難である。押出またはカレンダー加工がバリヤ層のフィルムを生成するための好ましい方法であるため、約1mil(25マイクロメートル)の厚さを使用することが推奨される。第三TPU層は、バリヤ層の上に設置される。第三TPU層は、(樹脂吸収性層と接触している)第一TPU層につき上述した厚さを有することになる。最も好ましいTPUコーティングは、第一および第三層がそれぞれ厚さ約100マイクロメートルであり、第二層(バリヤ)が厚さ約25マイクロメートルである三層TPUコーティングである。
【0036】
コーティングの第一および第三層のより軟性のTPUは、樹脂吸収性層に対する良好な接着を達成するために樹脂吸収性層と接触している必要がある。バリヤ層の非常に硬いTPUは、第一および第三層に使用されるより軟性のTPUほど樹脂吸収性層に対する良好な接着を有しない。また、第一および第三層のより軟性のTPUは、ライナーの外側の層にある必要があるが、これは、熱硬化性樹脂を加える目的でライナーに切り込まれた穴にパッチし、ライナー上に継目テープを糊付けしてライナーが作られた元の平坦な長方形からライナーの円筒形をつくることがより容易になるためである。非常に硬いTPUバリヤ層は、硬TPUにパッチまたはテープを溶媒糊付けすることが容易でないため、非常に硬いTPUバリヤ層をより軟性の2つのTPU層の間に挟まなければならない。
【0037】
(ライナー)
本発明のライナーを作製するために、TPUを樹脂吸収性材料上へ溶融被覆または押出被覆する。より軟性のTPUの第一層は、樹脂吸収性材料上へ溶融被覆または押出被覆されうる。別のステップで、より軟性のTPUの第三層を非常に硬いTPUバリヤ層と同時押出すればよく、組み合わせた第三層およびバリヤ層を第一TPU層に溶融塗布しながら、樹脂吸収性材料上へ溶融被覆しうる。三つのTPUコーティング層を樹脂吸収性材料に塗布する際に三つ全てのTPU層を同時押出またはカレンダー加工することにより、ワンステップでライナーを作製してもよい。熱硬化性樹脂に作製可能な樹脂、例えばビニルエステル樹脂またはポリエステル樹脂は、スチレンを含有し、これが樹脂吸収性材料に加えられる。この段階(硬化前)ではライナーは可撓性であり、下水管等の空洞の通路内部に設置されうる。可撓性ライナーを引込法または反転法により挿入でき、これは公知技術である。空洞内部に入ったら、蒸気および/または温水を注入することにより熱および圧力を加えてライナーを管の内部に対して押し付け、熱硬化性樹脂を現場硬化させる。圧力下温水を用いてライナーを空洞に挿入することもできる。樹脂が硬化されると熱硬化性になり、ライナーが剛性になり管内に剛性管が形成される。
【0038】
ライナーは、管の補修に必要な所望の長さに作製でき、連続した管状ライナーであるのが好ましい。ライナーは、より短いピースを継ぎ合わせる必要のない一つの連続的長さで管を補修するのに十分な長さを有しなければならない。ライナーは典型的には長さが少なくとも50メートルとなり、最大5000メートルの長さとなりうる。より典型的にはライナーは長さ200〜1000メートルの長さである。
【0039】
閉管に作製されたライナーの直径は、補修の必要な管の直径に応じて変動する。典型的直径は約5cm〜約250cmであるが、より一般的には直径は20cm〜約150cmである。
【0040】
ライナーは、補修の必要な管の内部の形状に適合しうる。管の形状は完全に円形である必要はなく、卵形または楕円形等の非円形でありうる。ライナーは、管の湾曲にも対応しうる。
【0041】
樹脂吸収性布が熱硬化可能樹脂で含浸されライナーが作製されたら、典型的には氷浴または冷凍トラックにおいて冷温で保管される。この冷蔵は熱硬化性樹脂の据え付け前の早すぎる硬化を防ぐのに必要である。ライナーは、樹脂の早すぎる硬化を防ぐために、冷凍トラックで仕事現場に運ばれうる。
【0042】
損傷した管にライナーが挿入されたあと、ライナーを通常は約80℃〜100℃の高温に3〜12時間さらすことによって樹脂が硬化される。蒸気硬化は、より少ない時間で足り、通常8〜12時間かかる温水と比較して、通常3〜5時間である。
【0043】
以下の実施例を参照することで本発明がよりよく理解される。
【実施例】
【0044】
本発明のコーティング材料のスチレン透過性に対する耐性の改善を示すために、実施例を示す。実施例1および2は、現場硬化管ライナーで通常使用されるTPUフィルムを評価した比較実施例である。実施例3、4および5は、本発明の実施例である。
【0045】
ASTM D814逆カップ透過性(Inverted Cup Permeability)試験によりフィルムのスチレン透過性を評価した。スチレン透過性についての結果を、グラム/平方メートル/日で表す。
【0046】
実施例1(比較)は、ポリエステルポリオール(アジピン酸+1,4−ブタンジオール)、1,4−ブタンジオール鎖延長剤、およびMDIから作製された93Aショア硬度TPUの厚さ5mil(127マイクロメートル)のフィルムを使用する。実施例2(比較)は、ポリエステルポリオール(アジピン酸+ジエチレングリコール)、1,4−ブタンジオール鎖延長剤およびMDIから作製された95Aショア硬度のTPUの厚さ5mil(127マイクロメートル)のフィルムを使用する。実施例3は、ポリエステルポリオール(アジピン酸+ジエチレングリコール)、1,4−ブタンジオール鎖延長剤およびMDIから作製された62Dショア硬度のTPUの厚さ5mil(127マイクロメートル)のフィルムを使用する。実施例4は、鎖延長剤およびMDI(ポリオールなし)から作製された厚さ1mil(25.4マイクロメートル)の85ショアD硬度のTPUと実施例1で使用した93Aショア硬度のTPUの厚さ4mil(101.6マイクロメートル)のフィルムとから作製される、同時押出された厚さ5mil(127マイクロメートル)のフィルムを使用する。実施例5は、EVOHの厚さ1mil(25.4マイクロメートル)のフィルムと実施例1で使用したTPUの厚さ4mil(101.6マイクロメートル)のフィルムとから成る、同時押出された厚さ5mil(127マイクロメートル)フィルムを使用する。
【0047】
実施例1〜5の五つのフィルムのスチレン透過性についての結果、および、フィルムが反転据え付け法を用いて現場硬化管ライナーで使用するのに充分な可撓性を有するかを、下表1に示す。
【0048】
【表1】

結果から分かるように、1milの厚さの非常に硬い(85ショアD)TPUを4milの厚さの軟性(93ショアA)TPUと一緒に使用した場合に、スチレン透過性が大きく減少する。また、EVOHを1milのバリヤ層として用いた同時押出フィルム(実施例5)は、スチレン透過性の大きな減少が見られる。
【0049】
特許法規にもとづいて、最良の様式および好ましい実施形態を記載しているが、本発明の範囲はこれにより制限されず、添付の特許請求の範囲により制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー材料の層を含み、該熱可塑性材料がスチレンの移動に対するバリヤである、通路または管用の現場硬化ライナー。
【請求項2】
前記ライナーが、樹脂吸収性層を含む、請求項1に記載のライナー。
【請求項3】
前記樹脂吸収性層が、不織布材料である、請求項2に記載のライナー。
【請求項4】
前記不織材料が、針穿孔されたポリエステル不織布である、請求項3に記載のライナー。
【請求項5】
前記バリヤ層が、エチレンビニルアルコールポリマーおよび熱可塑性ポリウレタンからなる群より選択され、該熱可塑性ポリウレタンが、ASTM D2240に従って決定されるところの60ショアDより高い硬度を有する、請求項1に記載のライナー。
【請求項6】
前記バリヤ層が、ASTM D2240に従って決定されるところの80ショアDより高い硬度を有する熱可塑性ポリウレタンである、請求項5に記載のライナー。
【請求項7】
前記バリヤ層が、約0.5mil(12マイクロメートル)〜約3.0mil(75マイクロメートル)の厚さを有する、請求項1に記載のライナー。
【請求項8】
通路または管用の現場硬化ライナーであり、
(a)少なくとも一つの樹脂吸収性材料層と;
(b)該樹脂吸収性材料層に吸収された熱硬化性樹脂と;
(c)該樹脂吸収性材料層の少なくとも一方の側面上の三層コーティングと
を含み、該コーティングが、
(i)該樹脂吸収性材料層と接触する第一熱可塑性層と;
(ii)該第一および第三熱可塑性層の間に設けられた、第二熱可塑性バリヤ層と;
(iii)第三熱可塑性層と
を含む、現場硬化ライナー。
【請求項9】
前記第一および前記第三層が、同じでありまたは異なり、熱可塑性ポリウレタンポリマー、コポリアミド(COPA)ポリマーおよびコポリエステルポリマー(COPE)からなる群より選択される、請求項8に記載のライナー。
【請求項10】
前記第一および前記第三層が、ASTM D2240に従って決定されるところの、約85A〜約98AのショアA硬度を有するポリエステル熱可塑性ポリウレタンである、請求項9に記載のライナー。
【請求項11】
前記第二熱可塑性バリヤ層が、エチレン、ビニルアルコール(EVOH)ポリマーおよび熱可塑性ポリウレタンからなる群より選択され、該熱可塑性ポリウレタンが、ASTM D2240に従って決定されるところの60ショアDより高い硬度を有する、請求項8に記載のライナー。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリウレタンが、ASTM D2240に従って決定されるところの約80ショアDより高い硬度を有する、請求項11に記載のライナー。
【請求項13】
前記バリヤ層が、約0.5mil(12マイクロメートル)〜約3.0mil(75マイクロメートル)の厚さを有する、請求項8に記載のライナー。
【請求項14】
前記三層コーティングの前記第一および前記第三層の各々が、約50マイクロメートル〜約1000マイクロメートルの厚さを有する、請求項8に記載のライナー。
【請求項15】
前記三層コーティングの前記第一および前記第三層の各々が、約100マイクロメートル〜約500マイクロメートルの厚さを有する、請求項14に記載のライナー。
【請求項16】
前記熱可塑性ポリウレタンバリヤ層が、ポリオールの非存在下で鎖延長剤をジイソシアネートと反応させることにより作製される、請求項12に記載のライナー。
【請求項17】
通路または管の空洞をライニングする方法であり、該空洞にライナーを導入するステップであり、該ライナーが、
(a)少なくとも一つの樹脂吸収性材料層と;
(b)該樹脂吸収性材料層に浸漬された、スチレンを含有する熱硬化可能樹脂と;
(c)該樹脂吸収性材料層の少なくとも一方の側面上の三層コーティング
を含み、該コーティングが、
(i)該樹脂吸収性材料層と接触する第一熱可塑性層と;
(ii)該第一および第三熱可塑性層の間に設けられる第二熱可塑性バリヤ層と;
(iii)該バリヤ層と接触する第三熱可塑性層と;
を含む、ステップと、
蒸気または水を該ライナーの内側開口部に導入して、該ライナーを該通路または該管の該内側表面に対して押し付け、該熱硬化可能樹脂の硬化を活性化するステップとを含む、方法。
【請求項18】
前記樹脂吸収性材料層が、針穿孔されたポリエステル不織布である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記三層コーティングが、約100〜約1000マイクロメートルの厚さを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記三層コーティングが、約300〜約500マイクロメートルの厚さを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記熱硬化可能樹脂が、ビニルエステル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記管が、幹線下水管、横構下水管、およびガス管からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
二層の樹脂吸収性材料層がある、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記管が、直径少なくとも10インチ(25.4cm)である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第二バリヤ層が、約12マイクロメートル〜約75マイクロメートルの厚さを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記第二バリヤ層が、ASTM D2240に従って決定されるところの60ショアDより高い硬度を有する熱可塑性ポリウレタンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第二バリヤ層が、ASTM D2240に従って決定されるところの80ショアDより高い硬度を有する熱可塑性ポリウレタンである、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2012−521318(P2012−521318A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502086(P2012−502086)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/026580
【国際公開番号】WO2010/111025
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】