説明

ステアリング装置

【目的】チルト・テレスコ調整時において、良好なレバー操作性とステアリングコラムの強固な締付固定力を備え且つ、構造を極めて簡単としたステアリング装置とすること。
【構成】コラム支持部材3と、コラム支持部材3を挟持する固定側部11を幅方向両側に有する固定ブラケット1と、コラム支持部材3と共に固定ブラケット1の両固定側部11を貫通するロックボルト4と、主動カム5と、従動カム6と、中間カム7と、操作レバー8とからなること。主動カム5,従動カム6及び中間カム7にはロックボルト4が軸方向に貫通し、主動カム5は操作レバー8によって回動され、従動カム6は固定側部11に回動不能に装着され、中間カム7は主動カム5と従動カム6との間に配置され、中間カム7は、主動カム5の回動により主動カム5と従動カム6に対して軸方向に離間及び近接される構成としてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト・テレスコ調整時において、良好なレバー操作性とステアリングコラムの強固な締付固定力を備え且つ、構造を極めて簡単としたステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チルト・テレスコ調整機能を備えたステアリング装置において、車両に固定された固定ブラケットの側板を貫通する支軸を操作レバーにて回動操作することによって固定ブラケットの側板を押圧してロックを達成させるロック機構を備えたものが提供されている。この種のものとして特許文献1(特開2004-210265号)が存在する。
【0003】
特許文献1の内容を概略すると(特許文献1の説明における符号についてはそのまま使用する)、固定ブラケット31,32に形成されたチルト調整用長孔であるガイドスロット33
と、可動ブラケット40に形成された貫通孔43とに連結棒50が挿通されて連結される。連結棒50の両端には、固定ブラケット31,32と可動ブラケット40とが互いに分離されることを
防止するための第1ストッパー51と、第2ストッパー52が設けられる。さらに、連結棒50に回動可能に設置された回動部材70と、可動ブラケット40を固定ブラケット31,32に対し
て固定又は解除させる移送部材81,82が設けられる。
【0004】
回動部材70を一方向に回動させると、内側移送部材81と外側移送部材82はそれぞれ回動部材70の内側と外側に離隔するように移動するが、前記ストッパー51,52によって連結棒50の外側への移動が制限されるので、移送部材81,82の移動時、固定ユニット60の全体は各移送部材81,82の移動した距離だけ第1固定ブラケット31側に移動して第1固定ブラケット31を押圧することになる。これにより、可動ブラケット40が固定ブラケット31,32に密
着して固定支持される。
【0005】
また、反対の方向に回動部材70を回動させると、押圧部73による傾斜部84の押圧が解除されると共に、第1固定ブラケット31の押圧も解除されるうえ、可動ブラケット40はそれ以上固定ブラケット31,32に固定されなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−210265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、ロック時、回動部材70の両側の対応面に形成された押圧部73は、各移送部材81,82に形成された傾斜部84を同時に乗り越えるため、レバー72の締付が重く感じ
、操作フィール悪化の懸念がある。同様に、ロック解除時には回動部材70の両側の対応面に形成された押圧部73が、各移送部材81,82に形成された傾斜部84を同時に移動するため
、レバー72が勢いよく戻りすぎる恐れがある。
【0008】
また、第1ストッパー51を回動させることで、連結棒50と第1ストッパー51がスクリュー方式で締結される場合、第1ストッパー51には移送部材82が固定されているので、第1ストッパー51と一緒に移送部材82も回動する。連結棒50と第1ストッパー51が締結されたときに、移送部材82の第1カム面85が回転部材70の第2カム面74に対応するように、連結棒50の雄ネジ50aと第1ストッパー51と雌ネジ51aとを形成する必要があり、初期設定が困難である。
【0009】
また、第2ストッパー52を回動させることで、連結棒50と第1ストッパー51がスクリュー方式で締結される場合、回動する第2ストッパー52を固定ブラケット32のガイドスロット33内に固定させることが困難である。このように、どちらの場合においても組付け時の位置決めが難しく、組付け性が悪い。本発明の目的(解決しようとする技術的課題)は、チルト・テレスコ調整時における、ロック及びロック解除の操作感覚を良好にすると共に、装置の組付け性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明
を、ステアリングコラムを支持するコラム支持部材と、該コラム支持部材を挟持する固定側部を幅方向両側に有する固定ブラケットと、前記コラム支持部材と共に前記固定ブラケットの両固定側部を貫通するロックボルトと、主動カムと、従動カムと、中間カムと、操作レバーとからなり、前記主動カム,前記従動カム及び前記中間カムには前記ロックボルトが軸方向に貫通し、前記主動カムは前記操作レバーによって回動され、前記従動カムは前記固定側部に回動不能に装着され、前記中間カムは前記主動カムと前記従動カムとの間に配置され、前記中間カムは、前記主動カムの回動により該主動カムと前記従動カムに対して軸方向に離間及び近接される構成としてなるステアリング装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項2の発明を、請求項1において、前記主動カムと前記中間カムとの離間距離と、
前記従動カムと前記中間カムとの離間距離とは等しくなるステアリング装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1において、前記主動カムと前記
中間カムとの離間距離と、前記従動カムと前記中間カムとの離間距離とは異なるステアリング装置としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、ロック機構を、主動カムと従動カムと中間カムとから構成し、主動カムと従動カムの間に中間カムを設け、主動カムと中間カム同士の軸方向における離間及び近接動作及び中間カムと従動カム同士の離間及び近接動作の異なる2段階の回動動作となる構成とすることができる。この2段階の操作により、離間におけるリフト量をそれぞれ小さく分散することができるので、ロック時、ロック解除時において、操作レバーの操作荷重を低減し、操作レバーの良好な操作感覚を得ることができる。また、ロック解除時には、操作レバーの戻りに勢いが付きすぎてしまうことを防止でき、ロック解除操作を良好に行うことができる。
【0013】
請求項2の発明では、前記主動カムと前記中間カムとの離間距離と、前記従動カムと前記中間カムとの離間距離とを等しく構成することにより、主動カム,従動カムは同一形状にすることができ、且つ中間カムはその軸方向両側面を同一のカム面形状にすることができ、製造コストを低減することができ、且つ組付け性も良好にできる。
【0014】
請求項3の発明では、前記主動カムと前記中間カムとの離間距離と、前記従動カムと前記中間カムとの離間距離とは異なる構成としたことにより、ロック及びロック解除における操作感覚を損なうことなく、リフト量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明のロック状態としたステアリング装置の要部断面図、(B)は(A)の(ア)部拡大図、(C)は(A)の(ア)部においてロック解除状態とした拡大図である。
【図2】(A)は主動カムの斜視図、(B)は主動カムの側面図、(C)は中間カムの斜視図、(D)は中間カムの側面図、(E)は従動カムの斜視図、(F)は従動カムの側面図である。
【図3】本発明においてコラム支持部材をステアリングコラムと一体とした実施形態の要部拡大図である。
【図4】本発明における主動カム,中間カム及び従動カムのロック解除状態からロック状態及びロック状態からロック解除状態への作動を示す行程図である。
【図5】(A)は本発明の第2実施形態を示す要部拡大図、(B)は第2実施形態における主動カムと中間カムとが離間した状態の略示図、(C)は第2実施形態における中間カムと従動カムとが離間した状態の略示図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明におけるステアリング装置は、図1(A)に示すように、主に固定ブラケット1,ステアリングコラム2,コラム支持部材3,ロックボルト4,主動カム5,従動カム6,中間カム7,操作レバー8から構成される。固定ブラケット1は、主に固定側部11,11と,連結部12及び取付部13等により構成されている。両固定側部11,11は、平行に対向する略平板状の部位である。両固定側部11,11には、チルト調整用長孔11a,11aが略上下方向に沿って形成されており、後述するロックボルト4が貫通する部位となっている。
【0017】
前記両固定側部11,11は、その上部箇所で連結部12により溶接手段等により連結されている。該連結部12は、正面より見て略台形門形状,アーチ状等に形成されている。また、両固定側部11,11の上端箇所より外方に向かって水平状の取付部13,13が形成されている。固定ブラケット1は、前記取付部13,13を介して自動車等の走行車のフロント部の枠材等に固着されている。
【0018】
ステアリングコラム2は、アウターコラム21とインナーコラム22とからなり、インナーコラム22の内部にステアリングシャフトが軸周方向に回動自在に収納されている。アウターコラム21は、コラム支持部材3によって固定又は軸方向に移動可能に支持される。コラム支持部材3は、複数のタイプが存在し、その第1タイプは、可動ブラケットであり、幅方向両側に可動側部31,31を有し、両可動側部31,31は連結部32によって一体的に連結形成されている。前記可動側部31には、テレスコ調整長孔31aが形成されている。また、前記両可動側部31,31の上端縁にはアウターコラム21が固着されている。
【0019】
可動ブラケットの両可動側部31,31が前記固定ブラケット1の両固定側部11,11の間に配置され、チルト調整用長孔11a,11aとテレスコ調整長孔31a,31aにロックボルト4が貫通され、固定ブラケット1に対して可動ブラケットタイプのコラム支持部材3とステアリングコラム2とがチルト・テレスコ調整可能に連結される〔図1(A)参照〕。
【0020】
次に、コラム支持部材3の第2タイプとしては、アウターコラム21と一体に形成され、前記インナーコラム22を抱持しつつ、固定ブラケット1に装着するものであって、主にアルミ合金等の鋳造又は押出成形等によって形成され、主に抱持本体部33と、2つの締付片35,35とから構成されている(図3参照)。さらに、前記抱持本体部33は、略円筒状に形成され、抱持内周面は、略中空円筒状に形成され、前記インナーコラム22が抱持される。抱持本体部33の直径方向下部側には、割溝部34が形成され、該割溝部34の幅方向両側箇所には2つの締付片35,35が形成されている。
【0021】
両締付片35,35は、前記インナーコラム22の軸方向に直交する方向で且つ抱持本体部33の幅方向に沿って対向して形成され、両締付片35,35には、それぞれ締付孔35a,35aが形成されている。両締付孔35a,35aと前記固定ブラケット1の両固定側部11,11のチルト調整用長孔11a,11aにロックボルト4が貫通されて、固定ブラケット1と、アウターコラム21と一体に形成されたコラム支持部材3とがチルト・テレスコ調整可能に連結される。
【0022】
次に、主動カム5,従動カム6及び中間カム7について説明する。これらのカムにおいては、その構成において複数の実施形態が存在する。まず、第1実施形態では、主動カム5は、カムベース部51と複数のカム作動部52,52,…とから形成されている〔図1,図2(A),(B)参照〕。前記カムベース部51は、略円板状に形成され、該カムベース部51の中心には、装着孔51aが形成されている。
【0023】
該装着孔51aは、前記ロックボルト4の圧入領域に圧入されるものであって、主動カム5がロックボルト4の軸周方向と共に回動することができるようになっている。前記カムベース部51の一側面で且つその外周の適宜の領域に周方向に沿って、複数のカム作動部52,52,…が形成されている〔図2(A),(B)参照〕。
【0024】
各カム作動部52には、傾斜面52a,頂面52b及びカム突起部52cが連続形成されている。傾斜面52aはカムベース部71の表面からしだいに離れる傾斜面として形成され、該傾斜面52aの頂部に平坦面状の頂面52bが形成されている。さらに該傾斜面52bの周方向外方にはカム突起部52cが形成されている。カム突起部52cは、その周側面を外方より見た形状が略長方形状に形成される。これらを一つのセットとした複数のカム作動部52,52,…が前記カムベース部51の外周に対して等間隔となるように形成されている。
【0025】
具体的には、カムベース部51の外周が4等分され、その4等分したそれぞれの領域に一つのカム作動部52が形成され、このような構成によって、一つのカムベース部51には4個のカム作動部52,52,…が形成される〔図2(A),(B)参照〕。また、カム作動部52,52,…は、必ずしも4個に限定されるものではなく、3個以下又は5個以上としても良い。カムベース部51のカム作動部52,52,…が形成されている側に対して、反対側の側面には、カムベース部51の中心を同一中心とする非円形状の膨出部53が形成されている〔図2(B)参照〕。該膨出部53は、長円形状,長方形状又は楕円形或いは一部を平坦面状とした円形状等とした膨出部として形成されている。前記膨出部53は、操作レバー8の揺動中心部81の固定孔81aに挿入するようにして装着され、操作レバー8と主動カム5とが一体的に回動するようになっている。
【0026】
次に、従動カム6は、前記主動カム5と同一形状に形成されている。従動カム6は、カムベース部61と複数のカム作動部62,62,…とから形成されている〔図1,図2(E),(F)参照〕。カム作動部62,62,…には、傾斜面62a,頂面62b及びカム突起部62cが連続形成されている。前記カムベース部61の中心には、装着孔61aが形成されている。該装着孔61aは、前記ロックボルト4のボルト軸部41に対して空転可能に装着される。
【0027】
カムベース部61において、カム作動部62,62,…が形成されている側に対して、その反対側面には、そのカムベース部61の中心を同一中心とする非円形状の膨出部63が形成されている。該膨出部63についても前記主動カム5の膨出部53とほぼ同一形状である。従動カム6の膨出部63は、前記固定ブラケット1に形成されたチルト調整用長孔11aに従動カム6が回動不能となるように設置される。
【0028】
次に、中間カム7は、ロックボルト4の軸方向において前記主動カム5と従動カム6との間に配置される〔図1,図2(C),(D)参照〕。中間カム7は、カムベース部71と、主カム作動部72,72,…と、従カム作動部73,73,…が形成されたものである。前記カムベース部71の直径中心には前記ロックボルト4が貫通する装着孔71aが形成されている。カムベース部71は、軸方向両側面において主ベース面71fと従ベース面71rが存在し、主ベース面71fは主動カム5のカム面に対向し、従ベース面71rは従動カム6のカム面に対向する。
【0029】
そして、主ベース面71fに前記主カム作動部72,72,…が形成され、従ベース面71rに従カム作動部73,73,…が形成される。主カム作動部72は、傾斜面72a,頂面72b及びカム突起部72cとから構成される。同様に、従カム作動部73は、傾斜面73a,頂面73b及びカム突起部73cとから構成される。主カム作動部72と従カム作動部73とは、同一形状に形成される。
【0030】
前記主動カム5,従動カム6,中間カム7は、前記固定ブラケット1の一方側の固定側部11の外方側にロックボルト4を介して配置され、固定側部11から従動カム6,中間カム7,主動カム5の順番に配置される。ロックボルト4の軸方向一端側には操作レバー8が配置され、軸方向他端側には、ナット,座金等の締付具9によってロックボルト4が固定ブラケット1に取り付けられる。
【0031】
また、主動カム5は、操作レバー8と共に回動し、従動カム6は、固定側部11のチルト調整用長孔11aに対して回動不能の状態で装着される。中間カム7は、ロックボルト4に対して空転自在である。本発明では、主動カム5と中間カム7とが相対的な回動により離間及び近接し、また中間カム7と従動カム6とが相対的な回動により離間及び近接する。
【0032】
そして、主動カム5と中間カム7及び該中間カム7と従動カム6とが共に近接のときに、主動カム5,従動カムとの軸方向における間隔は最短となり間隔Lminとなる〔図1(C)参照〕。このとき、チルト・テレスコ調整時におけるロック解除状態である。また、主動カム5と中間カム7及び該中間カム7と従動カム6とが共に離間したときに、主動カム5,従動カム6との軸方向における間隔は間隔Lmaxとなって間隔は最長となる〔図1(B)参照〕。このとき、チルト・テレスコ調整時におけるロック状態である。
【0033】
次に、本発明における締付固定について、図4に基づいて説明する。まず、ロック時、操作レバー8を上方から下方、すなわち時計回りに回動させることにより、前記主動カム5と共にロックボルト4が回動する〔図4(1)参照〕。なお、図4中に記載された黒点は、主動カム5,従動カム6及び中間カム7のそれぞれの任意の位置を示すものであり、黒点の位置の変位は主動カム5及び中間カム7が矢印方向に所定量回動したことを示す。従動カム6は、固定側部11に対して、回動不能とした構成である。これにより、第1段階として、回動不能な従動カム6に対して、主動カム5と中間カム7とが同時に回動し、時計回りに回動する。
【0034】
そして、主動カム5と共に回動する中間カム7の従カム作動部73,73,…が回動不能な従動カム6のカム作動部62,62,…から移動し、中間カム7と従動カム6との間で軸方向に離間し、間隔が生じる。すなわち、図4において(1)から(2−1)に亘る行程となる。そして、回動する前記中間カム7のカム突起部73cと、回動不能な従動カム6のカム突起部62c同士が、カムの軸回動方向(円周方向)に沿って当接する。これにより、中間カム7は、従動カム6によって回動を停止させられた状態となり、中間カム7と従動カム6の離間間隔が最大となる。
【0035】
そして、前述したように、中間カム7の回動は停止するが、操作レバー8をそのまま操作し続けると、第2段階として、主動カム5が回動停止状態の中間カム7に対して時計回りに回動する。すなわち、図4において(2−1)から(3)に亘る行程となる。この行程で回動停止の状態にある中間カム7の主カム作動部72,72,…と、回動する主動カム5のカム作動部52,52,…が相互に移動しあうことになる。すなわち、中間カム7の主カム作動部72,72,…から主動カム5のカム作動部52,52,…が軸方向に移動し、中間カム7と主動カム5との間で軸方向に離間し、間隔が生じる。
【0036】
そして、前記中間カム7のカム突起部72cと、主動カム5のカム突起部52c同士が、カムの軸回動方向(円周方向)に沿って当接する。これにより、主動カム5は、中間カム7に対して回動を停止し、主動カム5と中間カム7との離間間隔が最大となる。以上のようにして主動カム5と中間カム7と従動カム6との軸方向における総合的な間隔は最大となり、チルト・テレスコ調整における固定ブラケット1とステアリングコラム2とがロック状態となる〔図4(3)参照〕。
【0037】
次に、本発明における締付固定の第2パターンを説明する。操作レバー8を上方から下方、すなわち時計回りに回動させることにより、前記主動カム5と共にロックボルト4が回動する。ここで、第1パターンと同様に従動カム6は回動不能状態である。第1段階として、中間カム7と従動カム6に対して主動カム5のみが時計回りに回動する。中間カム7は、回動せず、従動カム6は回動不能である。
【0038】
これによって、まず、最初に回動する主動カム5のカム作動部52,52,…は、回動停止状態の中間カム7の主カム作動部72,72,…から軸方向に移動し、主動カム5と中間カム7とが離間する。すなわち、図4において(1)から(2−2)の状態となる。そして、回動する主動カム5のカム突起部52cと、回動しない中間カム7のカム突起部72c同士が、カムの軸回動方向(又は円周方向)に沿って当接する。これにより、主動カム5と中間カム7の離間間隔が最大となり、主動カム5の回動が、中間カム7を回動させる状態となる。そして、操作レバー8をそのまま回動し続けると、第2段階として、回動不能の従動カム6に対して主動カム5と中間カム7とが同時に、回動を開始する。
【0039】
主動カム5と共に回動する中間カム7の従カム作動部73,73,…が、回動不能の従動カム6のカム作動部62,62,…に対して移動する。そして、回動する前記中間カム7のカム突起部72cと、従動カム6のカム突起部62c同士が、カムの軸回動方向(又は円周方向)に沿って当接する。これにより、主動カム5及び中間カム7は、回動不能の従動カム6によって回動を停止させられることになり、主動カム5,中間カム7,従動カム6のそれぞれの離間間隔が最大となり、ロック状態となる。すなわち、図4において(2−2)から(3)の状態となる。以上のようにして主動カム5と中間カム7と従動カム6との軸方向における総合的な間隔は最大となり、チルト・テレスコ調整における固定ブラケット1とステアリングコラム2とがロック状態となる。
【0040】
次に、ロック解除について説明する。操作レバー8を下方から上方、すなわち反時計回りに回動させることにより、前記主動カム5と共にロックボルト4が回動し、第1段階として、回動不能の従動カム6に対して、主動カム5と共に中間カム7が同時に、反時計回りに回動する。すなわち、図4において(3)から(2−2)の状態になる。回動する中間カム7の従カム作動部73,73,…は、従動カム6のカム作動部62,62,…に対して移動する。
【0041】
そして、回動する前記中間カム7のカム突起部73cと、回動不能の従動カム6のカム突起部62c同士が、近接しつつ、カムの軸回動方向(又は円周方向)に沿って当接する。これにより、中間カム7は従動カム6によって回動を停止させられる。そして、第2段階として、主動カム5は、回動を停止した中間カム7に対して反時計回りに回動することになる。
【0042】
回動を停止した中間カム7の主カム作動部72,72,…に対して、回動する主動カム5のカム作動部52,52,…が移動し、近接しつつ、前記中間カム7のカム突起部72cと主動カム5のカム突起部52c同士が、カムの軸回動方向(又は円周方向)に沿って当接する。これにより、主動カム5は中間カム7によって回動を停止させられ、主動カム5と中間カム7と従動カム6との軸方向における総合的な間隔が最小となり、ロック解除状態となる。すなわち、図4において(2−2)から(1)の状態となる。
【0043】
次に、ロック解除の第2パターンを説明する。操作レバー8を下方から上方、すなわち反時計回りに回動させることにより、前記主動カム5と共にロックボルト4が回動する。第1段階として、回動不能の従動カム6と中間カム7に対して主動カム5のみが、反時計回りに回動する。中間カム7は、回動せず、従動カム6は回動不能である。すなわち、図4において(3)から(2−1)の状態になる。回動する主動カム5のカム作動部52,52,…が、回動停止状態の中間カム7の主カム作動部72,72,…に対して移動する。そして、回動する主動カム5のカム突起部52cと、回動しない中間カム7のカム突起部72c同士が、カムの軸回動方向(又は円周方向)に沿って当接する。これにより、主動カム5と中間カム7の離間間隔が最小となり、主動カム5の回動が、中間カム7を回動させる状態となる。
【0044】
そして、操作レバー8をそのまま回動し続けると、第2段階として、主動カム5及び中間カム7が同時に、回動不能の従動カム6に対して反時計回りに回動する。中間カム7の従カム作動部73,73,…は、従動カム6のカム作動部62,62,…に対して移動する。そして、前記中間カム7のカム突起部73cと従動カム6のカム突起部62c同士が、カムの軸回動方向(又は円周方向)に沿って当接する。これにより、主動カム5及び中間カム7は回動不能の従動カム6によって回動を停止させられ、主動カム5と中間カム7と従動カム6との軸方向における総合的な間隔が最小となり、ロック解除状態となる。すなわち、図4において(2−1)から(1)の状態になる。
【0045】
以上のように、本発明では、ロック時及びロック解除時には、主動カム5と従動カム6と中間カム7は、2段階の回動が行われる。ロック時には、中間カム7の軸方向両側面における主ベース面71f及び従ベース面71rにそれぞれ形成されたカム突起部72c,73cは、同時に主動カム5の傾斜面51及び従動カム6の傾斜面71を登り移動するのではなく、2段階に分けて移動するため、操作レバー8の操作荷重を低減し、操作レバー8の良好な操作感覚を得ることができる。更にカムを大型化することなく、ステアリングコラム2を強固に締付固定することができる。
【0046】
ロック解除時には、中間カム7の両側面に形成されたカム突起部72c,73cは、同時に主動カム5の傾斜面52a及び従動カム6の傾斜面62aを降り移動するのではなく、2段階に分けて降り移動するため、ロック解除時初動の操作レバー8の操作を重く感じることなく、操作レバー8の良好な操作感覚を得ることができる。さらに、2段階に分けて降り移動することで、操作レバー8が勢いよく戻ることを防止することができる。
【0047】
本発明では、前述した第1実施形態では、主動カム5のカム作動部52と、従動カム6のカム作動部62とは、同一形状とし、且つ中間カム7の主カム作動部72と従カム作動部73との形状もカム作動部52及びカム作動部62と同一形状とされている。すなわち、中間カム7と主動カムとの離間距離と、中間カム7と従動カム6との離間距離とは、同一となる。
【0048】
これに対して、第2実施形態では主動カム5のカム作動部52と。従動カム6のカム作動部62とは、同一形状としないものであり、主動カム5と中間カム7との離間距離と、前記従動カム6と前記中間カム7との離間距離と異なる構成としたものである。この実施形態では、主動カム5のカムベース部51のカム面からカム作動部52の頂面52bまでの高さHaと、従動カム6のカムベース部61のカム面からカム作動部62の頂面62bまでの高さHbとが異なるように構成されたものである。
【0049】
図5に開示された実施形態では、カム面からカム作動部52の頂面52bまでの高さHaは、従動カム6のカムベース部61のカム面からカム作動部62の頂面62bまでの高さHbよりも高く形成され、Ha>Hbとしている。そして、主動カム5と中間カム7との離間距離Laは、中間カム7と従動カム6との離間距離Lbよりも大きくなるように設定される。また、その反対としても構わない。
【0050】
中間カム7の主カム作動部72と、従カム作動部73は、それぞれ主動カム5の主カム作動部72と、従動カム6の従カム作動部73と同一となるように形成される。その一例として、主動カム5と中間カム7との離間距離は、従動カム6と中間カム7中間カムとの離間距離よりも大きく構成されたものである。
【0051】
このように、主動カム5と従動カム6及び中間カム7のそれぞれのカム作動部を同一形状にしなくても、2段階で回動することから、レバー操作性を損なうことがない。よって、主動カム5と従動カム6及び中間カム7のそれぞれのカム作動部を様々なバリエーションで形成することができ、ロック機構を大型化することなく、リフト量を増加させることができる。
【0052】
また、前述した実施形態では、主動カム5と従動カム6と中間カム7は、全て同一径に形成されるものであった。これにより、部品の統一性が得られ、カムの製造が行い易くなる。また、主動カムと従動カム6と中間カム7は、異なる直径としても良い。例えば、従動カム6と主動カム5が同一径で中間カム7のみ異なる直径としたり、或いは主動カム5,従動カム6及び中間カム7をそれぞれ異なる直径としても構わない。本発明は、前述した実施の形態に対して適宜変更、改変を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…固定ブラケット、11…固定側部、2…ステアリングコラム、
21…アウターコラム、22…インナーコラム、3…コラム支持部材、31…可動側部、33…抱持本体部、34…割溝部、35…締付片、4…ロックボルト、5…主動カム、
6…従動カム、7…中間カム、8…操作レバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングコラムを支持するコラム支持部材と、該コラム支持部材を挟持する固定側部を幅方向両側に有する固定ブラケットと、前記コラム支持部材と共に前記固定ブラケットの両固定側部を貫通するロックボルトと、主動カムと、従動カムと、中間カムと、操作レバーとからなり、前記主動カム,前記従動カム及び前記中間カムには前記ロックボルトが軸方向に貫通し、前記主動カムは前記操作レバーによって回動され、前記従動カムは前記固定側部に回動不能に装着され、前記中間カムは前記主動カムと前記従動カムとの間に配置され、前記中間カムは、前記主動カムの回動により該主動カムと前記従動カムに対して軸方向に離間及び近接される構成としてなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、前記主動カムと前記中間カムとの離間距離と、前記従動カムと前記中間カムとの離間距離とは等しくなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1において、前記主動カムと前記中間カムとの離間距離と、前記従動カムと前記中間カムとの離間距離とは異なることを特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−254674(P2012−254674A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127676(P2011−127676)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000144810)株式会社山田製作所 (183)
【Fターム(参考)】