説明

ステレオカメラ校正器

【課題】この発明は、複数回撮像しなくてもステレオカメラを校正することができ、手前の支柱により奥のマーカが隠れることがなく、個々のマーカを容易に区別することができるステレオカメラ校正器を実現することを目的とする。
【解決手段】この発明は、ステレオカメラの校正に使用されるステレオカメラ校正器において、向かい合わせた2枚の鏡の間に2つ以上の実マーカを配置し、1つの実マーカに対して2枚の鏡に複数の鏡像が映ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はステレオカメラ校正器に係り、特に、三次元画像計測に使用されるステレオカメラの校正を行う際に使用されるステレオカメラ校正器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元画像計測で使用されるステレオカメラは、個々の構成(左右カメラの距離・角度・レンズ歪み・焦点・絞りなど)において、正しく三次元画像計測値が得られるよう、校正を行う必要がある。ステレオカメラの校正は、空間上の座標と、左右カメラ画像上の座標を対応させることであり、空間上で座標が既知の模型を用意し、それを撮像することで、左右カメラ画像を得る。得られた左右カメラ画像上の座標が空間上の既知の座標と対応するように、ステレオカメラの個々の構成(左右カメラの距離・角度・レンズ歪み・焦点・絞りなど)を調整することで、ステレオカメラの校正を行う。
ステレオカメラの校正に使用されるステレオカメラ校正器には、図3に示すものがある。図3に示すステレオカメラ校正器101は、三次元計画像測を行う場所に複数の支柱102を立設し、各支柱102にマーカ103を複数固定したものである。空間上の既知の座標として複数のマーカを用いるステレオカメラ校正器には、板に丸を描いた丸形ターゲットを、棒で組み立てたラックに複数枚固定したものがある。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−271292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステレオカメラの校正においては、空間上の座標を得る点数(マーカ)が多いほど、正しく校正できるものの、その点を支える支柱も多数となり、手前の支柱により奥のマーカが撮像できない問題が発生する(図3参照)。また、それぞれの対応点を区別する手間が増えてしまう問題がある。
一方、現在において、最も一般的なステレオカメラの校正は、平面上に座標が既知の点群を印刷した模型で行うものである。平面上であるため、マーカの隠れが発生せず、各点の対応点は位置関係で区別できる。しかしながら、平面1枚で三次元空間の校正をおこなうことは不可能であり、平面の位置や角度を変えて、複数回撮像することが必須となる。
【0005】
この発明は、複数回撮像しなくてもステレオカメラを校正することができ、手前の支柱により奥のマーカが隠れることがなく、個々のマーカを容易に区別することができるステレオカメラ校正器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ステレオカメラの校正に使用されるステレオカメラ校正器において、向かい合わせた2枚の鏡の間に2つ以上の実マーカを配置し、1つの実マーカに対して2枚の鏡に複数の鏡像が映ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
従来の平面上に座標が既知の点群を印刷したステレオカメラ校正器では、平面の位置や角度を変えて、複数回撮像する必要がある。この発明のステレオカメラ校正器は、マーカを三次元空間に配置しているため、複数回撮像しなくてもステレオカメラを校正することができる。
また、従来の複数の支柱からなるステレオカメラ校正器では、手前の支柱により奥のマーカが隠れることがある。この発明のステレオカメラ校正器は、マーカを三次元空間に配置しているが、マーカが隠れることは無い。
この発明のステレオカメラ校正器は、合わせ鏡の投影回数により画像上のマーカの輝度が異なるため、個々のマーカを容易に区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はステレオカメラ校正器の斜視図である。(実施例)
【図2】図2は2枚の鏡の間にマーカを配置したステレオカメラ校正器の画像である。(実施例)
【図3】図3は複数の支柱にマーカを複数固定したステレオカメラ校正器の画像である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図2は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1はステレオカメラで、2台の右カメラ2・左カメラ3からなる。ステレオカメラ1の校正に使用されるステレオカメラ校正器4は、図1に示すように、2枚の四角形状の鏡5・6の下側の各一辺7・8を当接させて上側の各辺9・10側を開くことで角度θの鋭角で向かい合わせ、上方に開いた姿勢で配置する。
2枚の鏡5・6は、上側の開いた各辺9・10の長手方向両側に支持部材11・12を掛け渡している。各支持部材11・12には、長手方向中央から2枚の鏡5・6の当接させた各一辺7・8に向かい、ワイヤなどの細い索材13・14を垂下している。索材13・14の下端には、実マーカ15・16をそれぞれ保持させる。
これにより、ステレオカメラ校正器1は、向かい合わせた2枚の鏡5・6の間に2つの実マーカ15・16を配置し、1つの実マーカに対して2枚の鏡5・6に複数の鏡像が映るようにしている。例えば、図2に示すように、実マーカ15に対して2枚の鏡5・6に複数の鏡像17が映るようにしている。実マーカ15・16の位置は、2枚の鏡5・6の間の空間上で座標既知とするために、鏡5・6の角度θと索材13・14の長さ、実マーカ15・16の大きさなどを、事前に計測しておく。
ステレオカメラ1は、ステレオカメラ校正器1の上方で2つの実マーカ15・16を両側から挟むように右カメラ2・左カメラ3を配置し、右カメラ2で実マーカ15及びその複数の鏡像17を撮像するとともに左カメラ3で実マーカ16及びその複数の鏡像(不図示)を撮像することで、左右カメラ画像を得る。得られた左右カメラ画像上のマーカ座標が鏡5・6内の空間上の既知のマーカ座標と対応するように、ステレオカメラ1の個々の構成(右カメラ2・左カメラ3の距離・角度・レンズ歪み・焦点・絞りなど)を調整することで、ステレオカメラ1の校正を行う。
【0011】
このように、このステレオカメラ校正器4は、2枚の鏡5・6を向かい合わせ、その間に実マーカ15・16を配置している。実マーカ15・16は、ワイヤなどの索材13・14で保持するが、持ち上げでなく、吊り下げるため、頑強な強度は必要なく、極細ワイヤで十分である。このため、このステレオカメラ校正器4は、実マーカ15・16が、図3に示す従来の複数の支柱からなるステレオカメラ校正器のように支柱などにより隠れることがない。
ステレオカメラ1からは、合わせ鏡の構造により、実マーカ1つに対して、複数のマーカ(鏡像)が撮像される(図2参照)。ステレオカメラ校正器4は、このような実マーカを複数用意する、この実施例では2つの実マーカ15・16を用意することで、三次元空間的に配置した模型とすることができる。図1では、2つの実マーカ15・16を使用しているため、図2のような実マーカ1つに対する複数のマーカ(鏡像)が、2セット撮像できる。
従来の平面上に座標が既知の点群を印刷したステレオカメラ校正器では、平面の位置や角度を変えて、複数回撮像する必要があるが、このステレオカメラ校正器4は、2以上のマーカを三次元空間に配置しているため、複数回撮像しなくてもステレオカメラ1を校正することができる。
また、このステレオカメラ校正器4は、1つの実マーカに対して、多数撮像されるマーカ(鏡像)が、幾何的に等間隔に配置された特徴的な形状をしており、合わせ鏡の投影回数で画像上の輝度が異なるため、個々のマーカを区別することが容易となる。
【0012】
なお、上述実施例においては、各索材13・14にそれぞれ実マーカ15・16を1つ吊り下げたが、1本の索体に2つ以上の実マーカを下げても良い。また、実マーカ15・16は、索材13・14を用いずに、鏡5・6上に直接固定することもできる。さらに、2枚の鏡5・6は、角度θで合わせたが、任意の角度に変更可能とすることもできる。このように、鏡5・6の角度を変更して、ステレオカメラ1によって複数撮影することで、さらに多数のマーカを撮影することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
この発明は、複数回撮像しなくてもステレオカメラを校正することができ、手前の支柱により奥のマーカが隠れることがなく、個々のマーカを容易に区別することができるステレオカメラ校正器であるが、他の応用として、画像計測における校正の1つではあって、ステレオカメラでない1つのカメラのレンズの歪み補正に応用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 ステレオカメラ
2 右カメラ
3 左カメラ
4 ステレオカメラ校正器
5・6 鏡
7・8 鏡の各一辺
9・10 各一辺7・8に対向する各辺
11・12 支持部材
13・14 索材
15・16 実マーカ
17 鏡像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオカメラの校正に使用されるステレオカメラ校正器において、
向かい合わせた2枚の鏡の間に2つ以上の実マーカを配置し、
1つの実マーカに対して2枚の鏡に複数の鏡像が映ることを特徴とするステレオカメラ校正器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−132702(P2012−132702A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282939(P2010−282939)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】