説明

ステントをコーティングするための方法と装置

本発明は、ステントなどの円筒形の医療器具をコーティングする方法と装置に関する。本発明には、コーティング装置のローラー間のギャップと平行な方向を向いた主軸を有するコーティング溶液供給部材が含まれる。ステントは、そのギャップの上に載せられて回転する。本発明の方法には、直径が小さな医療器具から静電荷を除去する操作が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年10月26日に、PCT国際特許出願として、アメリカ合衆国以外のすべての国を指定した出願人としてアメリカ合衆国の企業であるサーモディックス社の名前で出願され、アメリカ合衆国だけを指定した出願人としてアメリカ合衆国市民であるRalph A. Chappaの名前で出願されたものであり、2004年10月27日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/976,193号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、器具をコーティングするための方法と装置に関する。本発明は、器具(例えば円筒形の形状を有する医療器具)をコーティングしている間に遭遇する問題を減らす方法と装置に関する。
【背景技術】
【0003】
医療器具は機能と形状がますます複雑になっている。医療器具(特に埋め込み可能な小さな医療器具)の表面に1種類以上の化合物をコーティングしてその表面に望ましい特性を付与すると、その医療器具の機能と有効性を増大させうることが認められている。従来のコーティング法(例えば浸漬コーティング)は、このような複雑な形状のコーティングには望ましくないことがしばしばある。というのもコーティング溶液が器具の構造に捕捉される可能性があるからである。この捕捉された溶液は、コーティング溶液の網状化または架橋を起こす可能性があるため、器具が適切に機能しなくなることがある。
【0004】
さまざまな器具(例えば医療器具)にコーティング材料を付着させるのに他の方法(例えばスプレー・コーティング)も利用されてきた。しかしスプレー・コーティングのいくつかの方法にも問題がある可能性がある。特に、器具がコーティング装置の部品に固着する可能性がある。固着により、器具の操作上の問題が起こることがあるため、欠陥率が増大する可能性がある。さらに、コーティングされる器具は、静電気を持っていたり、静電気を帯びたりすることがある。静電気によっても器具の操作上の問題が起こることがあるため、欠陥率が増大する可能性がある。固着と静電気に関する問題は、サイズが小さなステントにおいてより重大になる可能性がある。
【0005】
したがってスプレー・コーティング法に付随する問題を解決するための方法と装置が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、器具(例えば円筒形の形状を有する医療器具)をコーティングしている間に遭遇する問題を減らす方法と装置に関する。本発明の一実施態様には、器具の表面にコーティングするため、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置を有する装置が含まれる。第1のローラーと第2のローラーは、ギャップによって隔てることができる。この装置は、あるパターンになったコーティング材料のスプレーを発生させることができてそのスプレーをギャップに向ける構成にされたスプレー・ノズルと、器具回転装置を制御して一対のローラーを第1の方向に第1の回転角だけ回転させた後、それとは反対の第2の方向に第2の回転角だけ回転させる構成にされた一定角度回転システムも備えることができる。
【0007】
本発明の一実施態様には、回転可能な医療器具または丸い医療器具のコーティング方法であって、一対のローラーを備えていて、その対には、器具よりも広くはないギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれている器具回転装置の上に医療器具を置くステップと、コーティング材料をその医療器具に載せる(例えば、スプレーをギャップに向ける構成にされたノズルからコーティング材料をスプレーする)ステップを含む方法が含まれる。この方法は、第1のローラーと第2のローラーの少なくとも一方を第1の方向に回転させることによって医療器具を第1の回転角だけ回転させ、第1のローラーと第2のローラーの少なくとも一方を第1の方向とは反対の第2の方向に回転させることによってその医療器具を第2の回転角だけ回転させる操作も含むことができる。
【0008】
本発明の一実施態様には、医療器具の表面にコーティングするため、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置と、超音波スプレー・ノズルと、主軸がギャップと平行なコーティング溶液供給部材とを備える装置が含まれる。
【0009】
本発明の一実施態様には、医療器具の表面にコーティングするため、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置と、あるパターンになったコーティング材料のスプレーを発生させることができて、そのスプレーをギャップに向ける構成にされたスプレー・ノズルと、そのスプレー・ノズルに取り付けられたスプレー・ノズル支持部材と、少なくとも一方のローラーから医療器具の直径未満の距離離して配置された器具原位置保持部材とを備える装置が含まれる。
【0010】
本発明の一実施態様には、医療器具の表面にコーティングするため、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置と、あるパターンになったコーティング材料のスプレーを発生させることができて、そのスプレーをギャップに向ける構成にされたスプレー・ノズルと、そのスプレー・ノズルに取り付けられたスプレー・ノズル支持部材と、空気流を第1のローラーと第2のローラーの少なくとも一方に向けるのに適した構成にされた空気ノズルとを備える装置が含まれる。
【0011】
本発明の一実施態様には、直径が小さな医療器具をコーティングする方法であって、直径が小さな医療器具から静電気を除去するステップと、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、その器具よりも広くはないギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置の上に直径が小さな医療器具を配置するステップと、コーティング材料を直径が小さな医療器具の上に載せる(例えば、スプレーをギャップに向ける構成にされたノズルからコーティング材料をスプレーする)ステップを含む方法が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
コーティング材料をさまざまな器具(例えば医療器具)に付着させるのにスプレー・コーティング法が一般に利用されている。しかしスプレー・コーティングの間に器具がコーティング装置の部品に接着したり付着したりする可能性がある。理論に囚われるつもりはないが、固着する原因の一部は、コーティング・スプレーが、コーティング装置の部品とコーティングされる器具の間の接着を引き起こすことにあると考えられている。固着する原因の一部は、コーティングされる器具が静電荷を持っていたり、静電荷を帯びたりする可能性があることによる静電気の引力と反発にあるとも考えられている。
【0013】
固着と静電気に関する問題は、コーティングされる器具のサイズが小さい場合により重大になる可能性がある。理論に囚われるつもりはないが、小さな器具は単位質量がより少ないため、固着と静電気がより大きな問題になる可能性があると考えられる。すなわち、他の因子がすべて同じだとすると、作用を及ぼすのに必要な力は、大きな質量よりも小さな質量のほうが小さくて済む。本発明の一実施態様では、直径が2.0ミリメートル未満の器具をコーティングすることができる。直径が1.5ミリメートル未満の器具もコーティングすることができる。
【0014】
コーティング・スプレーが間違って堆積される場合と静電荷がある場合の両方とも、コーティングに問題が生じる可能性がある。例えば図1を参照して説明すると、一対のローラー201、202を備えるスプレー・コーティング・システム200では、コーティングされる器具203を通常はローラー間のギャップ204に配置する。スプレー・ヘッド215がスプレー流217を発生させ、それが器具203に付着する。器具が連続面を持たない場合には、ある量のスプレー219がローラー間を通過する可能性がある。しかしいくらかの量のスプレー(図示せず)が器具203にぶつかった後に横方向にそれ、一対のローラー201、202の一方または両方の上に堆積される可能性がある。さらに、スプレー・ヘッド215をどのように配置するかにより、過剰なスプレー219のいくらかが、ローラー201、202の間を単に通過するのではなく、ローラー201、202の一方または両方の上に堆積される可能性がある。ローラー201、202の上に堆積されたスプレーは、器具とローラー201、202の間に固着する可能性がある。最後に、すでに述べたように、器具203は静電荷を持ったり、帯びたりする可能性がある。静電荷により、器具203とコーティング装置の他の部品(例えばローラー201、202)の間で、その部品が持つ電荷に応じて引力または反発力を及ぼし合う可能性がある。
【0015】
ローラー201、202が回転し、器具203の異なる面をスプレー流217に曝す。ここで図2を参照すると、固着が起こる場所では、器具203がローラー202に固着し、ローラーが回転するとギャップ204から離れる可能性があることがわかる。特に、器具203が矢印209の方向に移動するか、器具の一端が矢印209の方向に移動する可能性がある。コーティング・スプレーの間違った堆積、または静電荷、またはその両方が、固着を引き起こす可能性がある。
【0016】
ここで図3を参照すると、2つの器具221が、一対のローラー201、202に挟まれたギャップ204内の適切な位置に配置されている状態が示してある。別の2つの器具223、225が、別の一対のローラー231、232に対してずれている状態も示してある。器具223の一端227は、ローラー232の上に乗り上げている。器具225は、両端がローラー232の上に乗り上げている。器具223、225は、コーティング・スプレーと静電荷の一方または両方に関係する固着問題が原因で、所定の位置からずれる可能性がある。本発明の実施態様には、スプレー・コーティングに関する問題を解決するための方法と装置が含まれる。
【0017】
本発明の一実施態様には、器具の表面をコーティングするため、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対に第1のローラーと第2のローラーが含まれている器具回転装置を有する装置が含まれる。第1のローラーと第2のローラーは、ギャップによって隔てることができる。この装置は、あるパターンになったコーティング材料のスプレーを発生させることができて、そのスプレーをギャップに向ける構成にされたスプレー・ノズルと、器具回転装置を制御して一対のローラーを第1の方向に第1の回転角だけ回転させた後、それとは反対の第2の方向に第2の回転角だけ回転させる構成にされた一定角度回転システムも備えることができる。
【0018】
本発明の一実施態様には、回転可能な医療器具のコーティング方法であって、一対のローラーを備えていて、その対には、器具よりも広くはないギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれている器具回転装置の上に医療器具を置くステップと、コーティング材料をその医療器具に載せる(例えば、スプレーをギャップに向ける構成にされたノズルからコーティング材料をスプレーする)ステップを含む方法が含まれる。この方法は、第1のローラーと第2のローラーの少なくとも一方を第1の方向に回転させることによって医療器具を第1の回転角だけ回転させ、第1のローラーと第2のローラーの少なくとも一方を第1の方向とは反対の第2の方向に回転させることによってその医療器具を第2の回転角だけ回転させる操作も含むことができる。
【0019】
本発明の一実施態様には、医療器具の表面にコーティングするため、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置と、超音波スプレー・ノズルと、主軸がギャップと平行であるかギャップと同じ平面内にあるコーティング溶液供給管とを備える装置が含まれる。
【0020】
本発明の一実施態様には、医療器具の表面にコーティングするため、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置と、あるパターンになったコーティング材料のスプレーを発生させることができて、そのスプレーをギャップに向ける構成にされたスプレー・ノズルと、そのスプレー・ノズルに取り付けられたスプレー・ノズル支持部材と、少なくとも一方のローラーから医療器具の直径未満の距離離して配置された器具原位置保持部材とを備える装置が含まれる。
【0021】
本発明の一実施態様には、医療器具の表面にコーティングするため、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置と、あるパターンになったコーティング材料のスプレーを発生させることができてそのスプレーをギャップに向ける構成にされたスプレー・ノズルと、そのスプレー・ノズルに取り付けられたスプレー・ノズル支持部材と、空気流を第1のローラーと第2のローラーの一方または両方に向けるのに適した構成にされた空気供給源(例えばエア・ナイフ)とを備える装置が含まれる。
【0022】
本発明の一実施態様には、直径が小さな医療器具をコーティングする方法であって、直径が小さな医療器具から静電気を除去するステップと、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、その器具よりも広くはないギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置の上に直径が小さな医療器具を配置するステップと、コーティング材料を直径が小さな医療器具の上に載せる(例えば、スプレーをギャップに向ける構成にされたノズルからコーティング材料をスプレーする)ステップを含む方法が含まれる。
【0023】
本発明の1つの特徴は、回転可能な器具をコーティングするため、一対のローラーとスプレー・ノズルを備える装置に関係する。一対のローラーは第1のローラーと第2のローラーを備えていて回転可能になっており、実質的に互いに平行に配置され、ギャップによって隔てられている。一対のローラーは、コーティングされる1つ以上の回転可能な器具を支持して回転させることができる。回転可能な器具は、一般に、ローラー上で、スプレー・ノズルの先端部とローラー間のギャップの間に配置される。この回転可能な器具はギャップの上に配置されているため、ギャップは一般にこの回転可能な器具の直径よりも大きくはない。“回転可能な器具”または“器具”は、スプレー・コーティングを受け取ることができて、一対のローラーによって所定の位置に保持でき、回転して所定の位置に来させることのできるあらゆる物体を意味する。回転可能な器具は、円筒形またはチューブ形にすることができ、一対のローラーの軸線のまわりに回転させることができる。円筒形には、全体として見たときだけ円筒形になっている形も含まれていてよい。例えば円筒形に多角形が含まれる。実質的に平行には、2つの物体が互いに正確に平行ではない配置が含まれる。例えば実質的に平行には、2つの物体の間の角度が10°未満である状態が含まれる。実質的に平行には、2つの物体の間の角度が15°未満である状態も含まれる。
【0024】
スプレー・ノズルは、コーティング材料のスプレーをローラー間のギャップに向けて発生させるように配置されている。スプレー・ノズルを作動させ、器具をローラーの上に位置させると、その器具の少なくとも一部がコーティング材料でコーティングされる。本発明の1つの特徴では、コーティング・ノズルは、狭いスプレー・パターンを持つスプレーを発生させるように配置される。この明細書では、“スプレー・パターン”は、スプレー・ノズルからスプレーされたコーティング材料の形状を意味する。なおスプレー・パターンの形状は、ローラーの存在とは無関係である。“スプレー”または“スプレーされた材料”は、スプレー・ノズルから発生したコーティング材料の液滴を意味する。
【0025】
本発明の一実施態様では、スプレーされたコーティング材料の大部分をギャップを通過させ、器具が一対のローラーの上に位置していないときに通過した材料の量を測定する。別の一実施態様では、スプレー・ノズルは、ギャップにおける幅がギャップの幅の150%を超えないスプレー・パターンを持つコーティング材料のスプレーが発生するように配置される。これらの実施態様によると、ローラーの上に位置する器具は、スプレーされたコーティング材料の一部を受け取り、回転させられ、必要な場合には次に付着されるコーティング材料を受け取ることができる。器具の表面に堆積されないコーティング材料の大半は一般にギャップを通過し、それよりも少量のコーティング材料がローラー上に堆積される可能性がある。例えば孔または開口部を有する器具をコーティングする場合、いくらかのコーティング材料が器具を通過することになろう。器具を通過するスプレーされたコーティング材料の大半は、ローラー間のギャップも通過することになろう。
【0026】
一実施態様では、スプレー・ノズルは、第1の軸または第2の軸に対して角度をなしている。すなわちスプレー・ノズルは傾いているため、スプレーされた材料は、ローラーの軸線に対してある角度で供給される。この角度はローラーの軸線に対して90°未満だが、5°よりも大きい。この構成は、スプレーされるコーティング材料を、器具とギャップを通過するよりも器具の表面に多くの量を堆積させることができるため、開口部を有するコーティング装置において特に有用である。
【0027】
器具(例えば円筒形またはチューブ形の器具)によっては、一般にコーティング・プロセスに、コーティング材料を器具に多数回付着させる操作が含まれる(すなわちコーティング材料の多数回付着)。そのとき1回ごとに器具の異なる部分にコーティング材料を付着させる。器具の同じ部分または重複した部分に多数回コーティングし、望む品質または望む量のコーティング材料を有する器具を製造することがしばしばある。一般に、器具の一部にコーティング材料を1回目に付着させた後、例えば一定角度回転機能によってローラーを回転させ、器具を次にコーティング材料を付着させる位置に来させる。
【0028】
器具に対しては、望むコーティングが実現するまで、コーティングと回転を行なうことができる。コーティング装置は、複雑な表面形状を有する回転可能な器具(例えばステントなどの多数の区画を有する医療器具)、またはウェブ状構造や、スペース、開口部、空孔を有する他の回転可能な器具をコーティングするのに特に適している。
【0029】
1つの特徴によると、この明細書に記載したコーティング装置とコーティング法により、“湿式コーティング”法が可能になる。湿式コーティングは、コーティング材料を器具の一部の上に配置した後、器具をローラー上で回転させてその器具のコーティングされた部分をローラーと接触させた後、コーティング材料をその器具のコーティングされた部分の上で乾燥させる操作を含んでいる。“乾燥”または“乾燥した”は、器具のコーティングされる部分の状態であり、コーティングされた部分がネバネバしておらず、コーティングされた部分のあらゆる溶媒の大部分が器具の表面から蒸発してしまっていることを意味する。以前のコーティング法では、一般に器具を操作する前にコーティングを乾燥させる必要があったため、この明細書に記載した本発明のコーティング装置とコーティング法によりスプレー・コーティングが顕著に改善される。
【0030】
本発明の一実施態様では、スプレー・ノズルは移動可能である。より詳細には、スプレー・ノズルは、第1のローラーまたは第2のローラーの軸線に平行な方向に移動可能である。スプレー・ノズルは、一対のローラーの上に位置する1つ以上の器具にコーティングを付着させている間に軸に沿って移動させることができる。その結果、1つ以上の器具の一部がコーティングされる。例えばスプレー・ノズルは、ローラーの軸に沿って移動しているときに円筒形の器具の一部にコーティング材料を供給することができる。そのため“ストライプ”になったコーティング材料を器具の長さ方向の一部に沿って堆積させることが可能になる。堆積されたストライプ状のコーティング材料の幅は、一般に器具の周囲長の一部に等しい。器具を望むように回転させる操作と、コーティング材料を堆積させる操作を繰り返すことができる。スプレー・パターンを持つノズルと、ギャップのある一対のローラーとからなる構成では、器具に堆積されないコーティング材料の大半がローラー間のギャップを通過する。
【0031】
特にこの明細書に記載したコーティング装置を用いて器具の位置を決め、コーティングし、回転させる場合には、このような構成によって回転可能な器具のスプレー・コーティングを改善することができる。改善は、例えば付着したコーティングの一様性、付着したコーティング量の一定さ、器具にコーティング材料を付着させることのできる速度に見ることができる。コーティングの顕著な改善は、従来のコーティング装置や他のスプレー・コーティング装置と比較したときに観察される。
【0032】
本発明をより詳細に説明するため、以下の図面を参照する。いかなる意味でも図面が本発明の範囲を制限することは意図しておらず、図面は、コーティング装置とその特徴のさまざまな実施態様のうちのいくつかを示すためのものである。図面に示した実施態様で共通する要素には同じ参照番号を与えてあるため、そのような要素は別に説明する必要はない。
【0033】
一実施態様では、コーティング装置は、少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置と、ギャップに向けてスプレー・パターンを発生させるスプレー・ノズルとを備えている。図4に示してあるように、本発明のコーティング装置1はハウジング2を備えており、その上でコーティング・プロセスが実施される。一対またはそれ以上のローラー4が載ったトレイ3をハウジング2の頂部に配置することができる。トレイ3は、スプレー・ノズル5の近くに来させることができる。ここでトレイ3をより詳細に示している図6を参照する。一対のローラー4は、実質的に互いに平行に配置されていて、ブラケット33によってトレイ3に取り付けられた第1のローラー31と第2のローラー32(“ローラー”または“複数ローラー”とも呼ぶ)を備えている。ここで図10を参照すると、ここにも一対のローラー4がより詳細に示してあり、ギャップ70が、第1のローラー31と第2のローラー32を隔てている。
【0034】
ギャップ70は、一対のローラーの全長にわたって一定の幅に維持されている。ギャップ70は、コーティングされる器具のサイズ(すなわち、一般に円筒形の器具の直径)よりも狭い幅でもある。たいていの構成では、ギャップ70は5cm未満である。好ましいいくつかの実施態様では、ギャップ70の幅は10mm未満であり、2.5mm未満であることが好ましい。特に好ましい一実施態様では、ギャップの幅は0.1mm〜2.5mmの範囲である。
【0035】
図6に戻ると、第1のローラー31と第2のローラー32の一方または両方は、矢印34または34'で示した方向に回転させることができる。一般に、第1のローラー31と第2のローラー32は、同じ方向に回転させることができる。ブラケット33は、そのブラケット33をトレイ3と一体化し、第1のローラー31と第2のローラー32をトレイ3に固定するための締め付け機構(例えばネジ、ピン、クランプ)も備えることができる。ブラケット33の締め付け機構を緩めてブラケット33を外し、ローラーを取り除いたり移動させたりすることができる。トレイ3には、一対のローラー4を任意の数だけ載せることができる。例えばトレイは、図4に示してあるように二対のローラー4を備えることや、図5に示してあるように一対のローラーを備えることができよう。
【0036】
ローラーは、任意の長さまたは周囲長にできるが、長さは1cm〜1000cmの範囲であることが好ましく、5cm〜100cmの範囲であることがより好ましい。ローラーは、周囲長が1mm〜100cmの範囲であることが好ましく、5mm〜100mmの範囲であることがより好ましい。ローラーは、コーティング・プロセスの間にコーティングされる器具のサイズと望ましい数に合ったものを製造することができる。ローラーの直径は、コーティングされる器具の直径よりも大きくすること。または小さくすることができる。
【0037】
ローラーは、耐久性のある適切な任意の材料で製造することができる。材料としては、例えばステンレス鋼、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ガラスがある。場合によってはローラーを非固着性材料でコーティングすることができる。その材料は、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);フッ化エチレンプロピレン(FEP);ペルフルオロアルコキシ(PFA);フルオロシリコーン;他の組成物(例えばシリコーン・ゴム)などである。
【0038】
別の一実施態様では、コーティング装置は、少なくとも一対のローラーが含まれる器具回転装置を備えている。その一対のローラー、すなわち第1のローラーと第2のローラーの一方または両方は、少なくとも1つのリブ状構造を有する。それをこの明細書では“リブ”と呼ぶ。リブとは、ローラーの外周部から突起しているあらゆる部分を意味する。図7に示してあるように、ローラー40は複数のリブ41を有する。ローラー40のリブ41は、一般に、ローラー40の長さ方向に沿って間隔を空けて配置されており、ローラーそのものと一体化した部分にすることができる。例えば好ましい一実施態様では、リブ41は、ローラーの中央部の周囲に成形される。あるいはリブ41は、ローラーの中心部となる棒(例えば金属棒)のまわりにO-リングまたはバンドを配置して形成することもできる。一般に、リブ41は、ローラー40の中心軸42に垂直に配置され、ローラー40の非リブ表面43によって隔てられる。リブ41は、任意の方法で、例えば均等または不均等に互いに離れた状態にすることができる。
【0039】
好ましい一実施態様を示す図8を参照すると、ローラーのリブ41は、ローラー40の中心軸42に近いより広い部分44と、ローラーの中心軸42から遠いより狭い部分45を有する。中心軸から離れるほど徐々に狭くなるリブ41は、さまざまな形状で実現することができる。例えばリブ41は、三角形の形状または先細の形状を持つことができる。リブの他の形状、例えば台形形状や、曲面が含まれていて、ローラーの中心軸42の近くでより広く、中心軸42から遠くでより狭くなっている形状も考えられる。
【0040】
本発明の1つの特徴では、リブ41のより狭い部分45は、器具が一対のローラーの上に位置しているときにその器具と接触させることができる。一般に、リブ41のより狭い部分45は、器具との接触面積が最少であるが、それでも第1のローラーまたは第2のローラーの回転によって器具を回転させることができる。リブ41は、任意の方法でローラー40に沿って間隔を空けた状態にすることができるが、一般に、一対のローラーごとに器具との接点が少なくとも3つあるように配置する。例えば各ローラー上の2つのリブが器具と接触する。あるいは隣り合ったローラー上のリブが互いにずれている場合には、第1のローラーの2つのリブと、第2のローラーの1つのリブが、器具と接触する。本発明によれば、リブの間には、ローラーの長さ方向に沿って0.1mm〜10cmの範囲の間隔を空けることができる。リブ間の間隔は、ローラーの長さ方向に沿って1mm〜20mmであることがより好ましい。
【0041】
図9に示した一実施態様では、一対のローラーが、複数の第1のローラー用リブ41を有する第1のローラー40と、複数の第2のローラー用リブ61を有する第2のローラー60を備えており、第1のローラー40と第2のローラー60は、実質的に互いに平行になっている。1つの特徴によれば、第1のローラー用リブ41と第2のローラー用リブ61は、一般に、それぞれ第1のローラーの軸42および第2のローラーの軸62と垂直であり、互いに揃っている。1つの特徴によれば、第1のローラー用リブ41のより狭い部分45は、第2のローラー用リブ61のより狭い部分65に隣接している。より狭い部分45とより狭い部分65の距離は小さくできるが、離すことで第1のローラー40と第2のローラー60が自由に回転できるようにすることが可能である。この実施態様では、ギャップ66が、第1のローラー40と第2のローラー60の間の主にローラー40の非リブ面43とローラー60の非リブ面63の間に存在している。したがってギャップ66のある領域は、一般に第1のローラー40と第2のローラー60の間に向けてスプレーされるコーティング材料(図示せず)の大半がギャップ66を通過するのに十分な大きさである。そのギャップ66には、より狭い部分45とより狭い部分65に挟まれたあらゆるスペースも含まれる。
【0042】
別の実施態様では、第1のローラー用リブ41と第2のローラー用リブ61は互いにずれている。この実施態様では、第1のローラー40と第2のローラー60の距離は、スプレーされるコーティング材料の大半が通過するのに十分なサイズのギャップができる値に維持されるようにする。
【0043】
複数のリブを有する第1のローラーと複数のリブを有する第2のローラーの間にあるギャップは、スプレーされるコーティング材料の大半がそのギャップを通過する構成となるのに十分な任意の形状または面積にできることが理解されよう。
【0044】
図10に示した一実施態様では、第1のローラー31と第2のローラー32は円形である。しかしローラーは、そのローラー上で器具が回転できる適切な任意の形状にすることができる。例えばローラーの周辺部が平坦な、例えば多角形の形状にすることができる。ローラーが多角形の形状である場合には、ローラー上で器具を回転させるために十分な数の辺が存在していることが好ましい。
【0045】
図10を参照して説明すると、本発明では、器具にスプレー・コーティングを付着させる前に、第1のローラー31と第2のローラー32に挟まれたギャップ70がスプレー・ノズル5の先端部71と揃った位置に来るようにする。ここで、ノズルとローラーの別の図である図12を参照する。スプレー・ノズル5の先端部71は、ギャップ70と揃った位置にある。揃うとは、スプレー・ノズル5が、コーティング材料のスプレー90がギャップ70に向かう位置にあることを意味する。図示してあるように、揃うことにより、コーティング材料のスプレー90の大半がギャップ70を通過できる。コーティング材料のスプレー90は、一般にギャップ70に向かうが、コーティング材料のスプレー90の限られた量が第1のローラー31および第2のローラー32の一部と接触する可能性もある。
【0046】
スプレー・ノズル5の先端部71からギャップ70までの距離は、コーティングする器具のサイズに応じて決めることができる。一実施態様では、スプレー・ノズル5の先端部71からギャップ70までの距離は、1mm〜15mmの範囲である。スプレー・ノズル5の先端部71からギャップ70までの距離は、1mm〜7.5mmの範囲であることがより好ましい。
【0047】
スプレー・ノズルと第1のローラーおよび第2のローラーにはさまざまな構成が考えられる。図12に示した一実施態様では、第1のローラー31と第2のローラー32は同じ周囲長を持ち、同じ水平レベルであり(すなわち第1の軸93上の一点と第2の軸94上の一点をつなぐ線95が水平線と平行である)、ギャップ70によって隔てられている。この実施態様では、スプレーされたコーティング材料90は、スプレー・ノズル5の先端部71からギャップ70へと向かい、一般に線95に対して垂直である。スプレーされたコーティング材料90の大半はギャップ70を通過する(ローラー上に器具がない状態を示してある)。
【0048】
図16に示した本発明の別の一実施態様では、第1のローラー31と第2のローラー32は同じ周囲長を持ち、ギャップ70によって隔てられているが、互いに水平なレベルになってはいない。線130は水平線と平行ではなく、水平線に対して一般に90°未満の角度をなしている。ノズル5はギャップに向かっていて、一般に線130に垂直なスプレー・パターン90を提供する。
【0049】
図17に示した本発明の別の一実施態様では、第1のローラー141と第2のローラー142は異なる周囲長を持ち、ギャップ143によって隔てられていて、互いに水平なレベルにある(すなわち第1の軸上の点145と第2の軸上の点146によって決まる線144に沿っている)。この実施態様では、ノズル5からスプレーされたコーティング材料90はギャップに向かい、一般に線144に垂直である。
【0050】
図13を参照すると、コーティング装置を使用している間、器具100は一対のローラー上に位置し、第1のローラー31および第2のローラー32と接触する。器具100は、スプレー・ノズル5の先端部71とギャップ70の間に位置する。器具のうちで先端部71に近い一部に、スプレーされたコーティング材料90の少なくとも一部を受け取る。ここで図14を参照する。一般に、器具100の一部には、1回目のコーティングが済んだ後に、コーティング材料が付着したストライプ110ができる。
【0051】
図13に戻ると、器具100は、連続面を持たない(すなわち孔またはウェブ状構造を持つ)ことがしばしばある。コーティングを器具100に供給するステップの間、スプレーされた材料の幾分かは器具100の開口部を通過する。器具100を通過する(すなわち器具に付着しない)スプレーの大半は、第1のローラー31と第2のローラー32に挟まれたギャップ70も通過する。
【0052】
すでに述べたように、スプレー・パターンは、ローラーなしの状態でスプレーされた材料の全体的な形状を意味する。本発明の特徴を説明すると、スプレー・パターン(例えば図12に示したスプレー・パターン90)は、線95の位置(ギャップ70の位置)における幅がギャップ70よりも広い。本発明の一実施態様では、ギャップにおけるスプレー・パターンの幅は、ギャップの幅の150%を超えない。別の構成では、スプレー・パターンの幅はより狭く、ギャップの幅の125%を超えない。ギャップにおけるスプレー・パターンの幅は、例えば、a)ノズル5の先端部71から線95までの距離を測定し、b)第1のローラー31と第2のローラー32の両方を取り除き、c)コーティング材料のスプレーを、ステップa)で測定した先端部71からの距離にセットした平坦面(例えば基板上の1枚の紙)に供給した後、スプレーされたコーティング材料を回収し、d)平坦面に付着したスプレーの幅を測定し、e)ステップd)で測定した紙の上のスプレーの幅をギャップ70の幅と比較することによって決められる。
【0053】
本発明の一実施態様では、スプレーの大半がギャップを通過するように器具が構成されている。いくつかの構成では、スプレーの少なくとも75%がギャップを通過する。別の構成では、スプレーの少なくとも90%がギャップを通過する。さらに別の構成では、スプレーの少なくとも95%がギャップを通過する。コーティング装置がこうした条件を満たしているかどうかを判断するため、似たような測定法を採用することができる。例えば平坦面(例えば基板上の1枚の紙)を用い、スプレーされたコーティング材料を回収することができる。紙は、ギャップを通過するスプレーを回収するためにギャップの直下に配置することができる。次に第1のローラーと第2のローラーを取り除き、(全スプレーを回収するため)別の紙を同じ距離に配置し、同じスプレー条件下でスプレー・ノズルからの全スプレーを回収することができる。次に紙を計量してコーティング量を明らかにした後、比較することができる。本発明によれば、ギャップを通過するコーティング材料の量は、スプレーされた全コーティング材料の少なくとも50%である。
【0054】
本発明の一実施態様では、スプレー・ノズルは第1の軸または第2の軸に対して角度をなしている。図15に示してあるように、スプレー・ノズル5は、スプレーされた材料が第1のローラー31と第2のローラー32の軸に対してある角度120で供給されるように傾いている。角度120はローラーの軸に対して90°未満だが、5°よりも大きい。この構成は、スプレーされるコーティング材料を、器具とギャップを通過するよりも器具の表面に多く堆積させることができるため、開口部を有するコーティング装置で特に有用である。
【0055】
図18は比較例である。図18に示してあるように、スプレー・ノズル150はスプレー・パターン153を発生させる。スプレー・パターン153からのスプレーの大半は第1のローラー151と第2のローラー152の上に堆積される(回転可能な器具は図示せず)。この種のスプレー・パターンだと最終的にコーティングの欠陥につながる可能性がある。コーティングの欠陥としては、器具の表面へのコーティング材料の一様でない付着や、器具に付着させる材料の量の予期せぬ変動などがある。
【0056】
スプレー・ノズル
本発明によれば、スプレー・ノズルは、任意のタイプの液滴生成システムにすることができる。このシステムは、A)ローラー間のギャップに向かうコーティング材料のスプレーを発生させて、スプレーされるコーティング材料の大半がギャップを通過する構成にされるか、B)あるスプレー・パターンを有するコーティング材料のスプレーを発生させるが、ギャップでのスプレー・パターンの幅がギャップの幅の150%を超えない構成にされている。一般に、スプレー・ノズルは、狭いスプレー・パターンを持つスプレーを発生させる構成にされている。
【0057】
コーティング装置のスプレー・ノズルはジェット・ノズルにすることができる。適切なジェット・ノズル(例えばインク・ジェット・プリンタに見られるジェット・ノズル)は、リー社(ウエストブルック、コネティカット州)から入手できる。さまざまなタイプのインク・ジェット・ノズルを考慮できる。例えば、熱エネルギーを利用し、溶液の熱膨張によって発生する圧力波を通じてノズルから溶液を放出させるサーマル・インクジェット・ノズル;静電力によってノズルから溶液が放出される静電インクジェット・ノズル;圧電素子などの振動子によって溶液が放出される圧電インクジェット・ノズル;これらのタイプのインクジェット・ノズルの組み合わせがある。
【0058】
本発明の好ましい一実施態様では、スプレー・ノズルは超音波ノズルである。超音波ノズルの好ましい構成を図11に示してある。超音波ノズルは、少なくとも2つの独立な部材を備えることができる。それは、溶液供給部材80と、空気供給/超音波処理部材81である。空気供給/超音波処理部材81は、その空気供給/超音波処理部材81の本体を貫通するチャネル82を有する。ガスがガス供給ライン(図示せず)から空気供給/超音波処理部材81の入口84に供給され、チャネル82を通って先端部83に行くことができ、その場所でガス流が発生する。コーティング溶液が溶液供給ライン(図示せず)から溶液供給部材80を通ってノズルの先端部83に供給され、空気供給/超音波処理部材81の先端部83で超音波処理されて溶液の液滴が生成する。その液滴は、ノズルの先端部83で発生するガス流の中に引き込まれ、そのガス流によって運ばれる。
【0059】
さまざまなノズルが、いろいろな形状のスプレー・パターンを発生させることができる。図12に、超音波ノズルから発生させることのできる1つのスプレー・パターンを示す。超音波ノズル5は、ノズル5の先端部71からある距離離れた位置に焦点を持つスプレー・パターン90を発生させることができる。このタイプの超音波ノズルによって発生するスプレー・パターンは、伝統的なタイプのスプレー・ノズルから発生する他の多くのスプレー・パターンよりもかなり狭い。適切な超音波ノズルは、ソノテック社(ミルトン、ニューヨーク州)から市販されているマイクロフラックスXLノズルである。このスプレー・ノズルは、最小幅が0.030インチ(0.768mm)のスプレー・パターンを発生させることができる。本発明の範囲に入る他のスプレー・パターン(例えば円錐形のパターン(図示せず))を発生させるノズルも考えられる。
【0060】
スプレーの形態になったコーティング材料の供給は、超音波ノズルの機能に関するさまざまな特徴の影響を付ける可能性がある。その特徴としては、例えば、溶液の供給速度、溶液供給部材のオリフィスのサイズ、空気供給/超音波処理部材の先端部から溶液供給部材までの距離、超音波ノズルの先端部のサイズと構成、超音波ノズルに供給されるエネルギー量、ガス・チャネルの出口におけるオリフィスのサイズ、ガス供給ポートからのガス供給速度(空気圧)、ノズルから供給されるガスのタイプなどがある。
【0061】
図4に戻ると、一対またはそれ以上のローラー4を載せたトレイ3は、装置1のハウジング2の頂部にあるコーティング領域6に位置させることができる。コーティング領域6は、ハウジング2上にあってスプレー・コーティング・プロセスが起こる領域であり、スプレー・ノズル5はその領域内を移動することができる。スプレー・ノズル5は、第1のトラック7と第2のトラック8を通じて移動することができる。これについて以下にさらに詳しく説明する。
【0062】
トレイ3は、アラインメント・システム(図示せず)を作動させることによってコーティング領域6内に位置させることができる。アラインメント・システムを作動させると、一対のローラーをスプレー・ノズル5の下に正確に位置させることができる。そのとき第1のローラーと第2のローラーに挟まれたギャップ70は、スプレー・ノズル5の先端部71と正確に揃った位置にある。本発明のアラインメント・システムは、例えば、ハウジング2から突起した挿入可能かつ引っ込め可能なアラインメント・ピン(図示せず)を備えることができる。一対またはそれ以上のローラー4を載せたトレイ3は、アラインメント・ピンを受け入れる位置決め穴(図示せず)を備えることができる。トレイ3を手動または自動でコーティング領域へと移動させ、アラインメント・システムを作動させてアラインメント・ピンを位置決め穴に挿入することで、スプレー・ノズル5の先端部71をギャップ70と揃えることができる。
【0063】
図5に示した別の一実施態様では、一対のローラー4を載せたトレイ21をトラック22を通じてコーティング領域へと移動させることができる。トラック22は、コンベア機構の一部にすることができる。
【0064】
一対のローラー4がコーティング領域内の適切な位置にあると、ローラーの一部が、ローラーを回転させることのできるローラー駆動機構と噛み合うことができる。図4を参照すると、少なくとも一対のローラー4を載せたトレイ3がコーティング領域6内に位置していて、一対のローラーの少なくとも一部がローラー駆動機構9と接触していることがわかる。図6を参照すると、第1のローラー31または第2のローラー32の遠位端がローラー駆動機構9のシャフト35と噛み合う構成になっていることがわかる。ローラー駆動機構9のシャフト35と噛み合うローラーの遠位部は、噛合部材36(例えばスプロケット、ギア、丸い部材)を備えることができる。第1のローラー31と第2のローラー32の遠位部の一方または両方が、噛合部材36を備えることができる。ローラー駆動機構9を作動させてシャフト35を回転させると、第1のローラー31と第2のローラー32の一方または両方が回転する。一般に、第1のローラー31と第2のローラー32の両方が、ローラー駆動機構9により、矢印34で示した方向、または矢印34'で示した方向に回転する。
【0065】
別の一実施態様では、第1のローラー31と第2のローラー32の遠位部の一方または両方を、ベルトやチェーンなどの連続的駆動部材(図示せず)に接続することができる。2対以上あるローラー4からの一方または両方のローラーを連続的駆動部材に接続することができる。連続的駆動部材に接続された2対以上のローラー4を載せたトレイがコーティング領域内に位置すると、ローラー駆動機構9のシャフト35がローラーの噛合部材36と噛み合うことができ、その結果としてトレイ上のすべてのローラーが連続的駆動部材を通じて回転する。
【0066】
ローラー駆動機構9は、シャフト36を断続的に回転させることのできる一定角度回転機能も備えることができる。シャフト36の断続的な回転は、ローラーの断続的な回転へと変換される。ローラー駆動機構9の一定角度回転機能によってローラーを回転させることで、ローラーの上に位置する器具を十分に回転させることができる。ローラー駆動機構9の一定角度回転機能について以下により詳しく説明する。
【0067】
本発明によれば、コーティング装置は、ローラーの中心軸に平行な方向か、平行な方向と垂直な方向の両方に移動できるスプレー・ノズル5を備えることができる。
【0068】
図4に示した一実施態様では、スプレー・ノズル5は、ローラー4の中心軸に平行な矢印10、10'の方向と、ローラー4の中心軸に垂直な矢印11、11'の方向に移動できる。図4に示してあるように、スプレー・ノズル5はノズル取り付け部12に取り付けられていて、そのノズル取り付け部12は可動アーム13に取り付けられていて、その可動アーム13の第1のトラック7上を矢印10、10'の方向に移動できる。可動アーム13は、パネル14の第2のトラック8に取り付けられていて、矢印11、11'の方向に移動できる。ノズル取り付け部12は、第1のトラック駆動部(図示せず)を操作することによって第1のトラック7上を移動させることができる。第1のトラック用モータ(図示せず)が第1のトラック駆動部を運動させることができる。第1のトラック駆動部としては、ベルト、チェーン、滑車、紐、ギアなどが可能である。第1のトラック用モータを操作することにより、ノズル取り付け部12を矢印10、10'の方向に移動させることができる。可動アーム13は第2のトラック8に接続されていて、矢印11、11'の方向に移動できる。
【0069】
図5に示した別の一実施態様では、スプレー・ノズル5は、矢印10または10'の方向に移動することができ、少なくとも一対のローラー4は、手動または自動で矢印23または23'の方向に移動することができる。一般に、一対のローラーが1つのトレイ21に取り付けられる。スプレー・ノズルは、コーティング材料を基板上に堆積させている間を通じて矢印10または10'の方向に移動することができる。スプレー・ノズル5がコーティング・プロセスを終えると、トレイ21をコーティング領域から移動させ、別のトレイをそのコーティング領域に入れることができる。
【0070】
回転可能な器具にコーティングする方法
この明細書に記載したコーティング装置とコーティング法には、回転可能な器具にコーティングするための多数の利点がある。特に、この装置は、円筒形またはチューブ形の小さな物体(例えば小さな医療器具)をコーティングするのに非常に適している。
【0071】
一般に、コーティング装置の利用法には、まず最初に、ギャップを有する一対のローラーを備える器具回転装置の上に回転可能な器具を配置することによってその回転可能な器具をコーティングする操作が含まれる。回転可能な器具は、一般に一対のローラーに支持されて、ギャップと、スプレー・ノズルの先端部との間に位置する。一実施態様では、ギャップの幅とスプレー・パターンの幅の両方とも、器具のサイズ(すなわち器具の直径)よりも小さい。次にコーティング材料をスプレー・ノズルから堆積させると、コーティング材料の少なくとも一部が器具の上に堆積される。一般に、器具のうちでスプレー・ノズルの先端部に最も近い部分がコーティングされる。器具に付着させるコーティング材料は、スプレー・ノズルからスプレー・パターンとして出ていき、ギャップに向かう。器具に堆積されないスプレーの大半は、ギャップを通過する。例えばステントなどの器具は一般に開口部をその構造中に有するため、スプレーされるコーティング材料がその開口部を通過することができる。コーティング材料を器具に付着させた後、器具を第1のローラーまたは第2のローラーの運動方向に回転させることで、コーティング材料を堆積させるステップを望む回数だけ繰り返すことができる。
【0072】
本発明によれば、コーティング材料を受け取るのに適するとともに、この明細書に記載した装置を用いて回転させるのに適したあらゆる器具を、コーティング・プロセスにおいて器具として使用できる。一般に、この器具は、コーティング・プロセスの間を通じて器具回転装置が器具を回転させることのできる形状を有する。この器具は、例えば円形または多角形の形状にすることができる。
【0073】
コーティング装置は、チューブ形または円筒形の器具(例えばカテーテルやステント)をコーティングするのに特に役立つ。一実施態様では、本発明の方法に、構造中に穴を有する回転可能な器具(例えばステント)や、ウェブ状構造またはスペース、開口部、空孔を有する回転可能な他の器具をコーティングする操作が含まれる。これらの器具をコーティングできるが、一般にはスプレーされる材料がこの器具を通過する。コーティング装置は、直径が5cm未満の回転可能な器具、中でも直径が10mm未満の回転可能な器具をコーティングするのに特に適している。
【0074】
長期にわたって使用するため体内に永久的に埋め込まれる医療器具(すなわち長期器具)または体内で一時的に使用される医療器具(すなわち短期器具)が考えられる。長期器具としては、グラフト、ステント、ステント/グラフトの組み合わせ、弁、回転可能な心臓補助器具、シャント、吻合器具;カテーテル(例えば中心静脈にアクセスするカテーテル);整形外科器具(例えば関節インプラント)などがある。短期器具としては、血管器具(例えば末梢保護デバイス);カテーテル(例えば、急性と慢性の血液透析カテーテル、冷却/加熱カテーテル、経皮経管心臓血管形成(PTCA)カテーテル);緑内障ドレイン器具などがある。
【0075】
コーティング材料を回転可能な器具に付着させるため、回転可能な器具をまず最初に一対のローラー4の上に位置させ、第1のローラー31および第2のローラー32と接触させる。器具は、手でローラーの上に位置させること、またはいくつかの実施態様では、例えばロボット・システムを利用して自動的にローラーの上に位置させることができる。一般に複数の器具をローラーの長さ方向に沿って一対のローラー4の上に位置させる。一対のローラー4の上に位置させる器具の数は、その器具のサイズと、一対のローラー4の長さによって異なる可能性がある。
【0076】
別の一実施態様では、複数の器具を、単一のトレイ(例えば図6のトレイを参照のこと)に取り付けた複数対のローラーの上に位置させることができる。2対以上のローラーを載せたトレイは、複数の器具を受け入れることができる。
【0077】
いくつかの実施態様では、器具を、複数のリブ41を有する一対のローラーに沿って配置する(例えば図7のローラーを参照のこと)。個々の器具は、一般に、リブを有する一対のローラーの少なくとも3つのリブ41と接触することで、ローラーが回転したときに器具が回転することが保証される。
【0078】
スプレー・ノズル5からコーティング材料をスプレーする前に、一対のローラー4の上に位置する器具をコーティング領域に来させる。コーティング領域は、ハウジング2上にあって、一般にスプレー・コーティング・プロセスが起こる領域であり、一般にスプレー・ノズル5が移動できる領域でもある。
【0079】
図4に示した一実施態様では、トレイ3が位置する領域がコーティング領域に含まれる。スプレー・ノズル5はトレイ3上の任意の位置に移動させることができる。より詳細には、スプレー・ノズル5は、一対のローラー4の中心軸に沿った矢印10、10'の方向と、第1と第2の軸がなす平面に垂直な矢印11、11'の方向に移動することができる。複数対のローラー4が載ったトレイ3をコーティング領域6に来させ、アラインメント・システムを通じて揃えることができる。トレイ3は、手動または自動でコーティング領域に移動させることができ、アラインメント・システムを作動させてアラインメント・ピンを穴に挿入することで、スプレー・ノズル5の先端部51を、第1のローラー31と第2のローラー32の間にあるギャップ71と揃えることができる。
【0080】
トレイがコーティング領域に位置すると、トレイはローラー駆動機構9と接触することもできる。ローラー駆動機構9のシャフト35は、噛合部材36を通じて一対のローラー4の1つのローラーの遠位部と噛み合うことができる。ローラー駆動機構9を作動させることによってシャフト35が回転すると、第1のローラー31と第2のローラー32の一方または両方が回転する。第1のローラー31と第2のローラー32の一方または両方の遠位部は、ベルトやチェーンなどの連続駆動部材(図示せず)に接続することもできる。2対以上のローラーの一方または両方のローラーを連続駆動部材に接続することができる。少なくとも一対のローラー4を載せたトレイ3がコーティング領域に位置しているとき、ローラー駆動機構9のシャフト35は連続駆動部材と噛み合うことができる。ローラー駆動機構9を作動させることで、1対またはそれ以上のローラーの一方または両方のローラーを回転させることができる。
【0081】
コーティング材料を回転可能な器具の上に配置するステップの間、コーティング溶液を、スプレー・ノズルから、回転可能な器具の第1のローラーと第2のローラーの間にあるギャップに向けて散布する。コーティング法によっては、器具は、構造中にいくつかの孔がある器具でも、孔がない器具でもよい。別の用途のコーティングでは、器具は、構造中にかなりの空孔または開口部がある器具にすることができる。かなり多くの空孔または開口部があるコーティング装置では、コーティング材料の一部がこれら開口部を通過することになる。本発明によれば、器具の表面に堆積されないコーティング材料の大半がギャップを通過する。この構成では、ローラーの表面にコーティング材料が大量に蓄積することが避けられる。これは多くの点で有利である。例えば、器具が第1のローラーと第2のローラーに接触している点にコーティング材料が蓄積することが避けられる。さらに、コーティング中に浪費されるコーティング材料の量が減るため、よりコスト効率のよいコーティング法となる。
【0082】
コーティング・プロセスの間、回転可能な器具の一部または全体をコーティングすることができる。一般に、少なくとも器具の周囲部全体がコーティング・プロセスの間にコーティングされる。これは、コーティング材料を繰り返して付着させ、コーティング材料の1回の付着と次の付着の間に器具を回転させることによって実現できる。1回付着させている間に、一般に器具の半分以下がコーティング材料でコーティングされる。コーティングを1回付着させている間に、器具の1/4以下がコーティングされることや、器具の1/8がコーティングされることが、より一般的である。一般に、器具の周囲部を完全にコーティングするのにコーティング材料を約10回付着させる必要がある。ステントなどの小さな医療器具をコーティングする場合、器具の表面に有効な量のコーティング材料が供給されるようにするには、コーティング材料を少なくとも10回付着させるのが一般的である。別の方法では、器具の一部だけをコーティングすることが望ましかろう。
【0083】
一実施態様では、コーティング材料を超音波ノズルから付着させる。図11を参照して説明すると、超音波ノズルは、溶液供給部材80と、空気供給/超音波処理部材81を備えることができる。適切な1つの超音波ノズルは、ソノテック社(ミルトン、ニューヨーク州)が市販しているマイクロフラックスXLノズルである。いくつかの実施態様では、コーティング材料を超音波ノズルから堆積されるステップにおいて、空気を0.5〜5psi、さらに特定するならば2〜3psiの範囲でノズルに供給する。コーティング溶液は、0.1〜0.4ml/分の範囲でノズルに供給され、超音波ノズルの先端部の電力は、0.1〜2ワットの範囲にすることができる。ノズルの先端部から器具の最も近い部分までの距離は変えられるが、好ましい範囲は1〜10mmであり、2〜4mmであることが好ましい。付着させるコーティング材料の幅はいろいろな値が可能だが、典型的な幅は、器具の表面上で0.75mm〜10mmの範囲である。
【0084】
コーティング材料を器具の上に置くステップは、使用する化合物と溶媒が何であるかに応じ、スプレーを発生させるのに適した任意の温度で実施することができる。コーティング温度は、例えば器具上でのコーティング材料の乾燥が促進または阻止されるように調節することもできる。いくつかの実施態様では、器具のコーティングは、調節された雰囲気中(例えば水蒸気の含有量が減った雰囲気中)で実施される。
【0085】
スプレー・ノズルからのコーティングが回転可能な器具に堆積されている間、スプレー・ノズルをローラーの軸と平行な方向(すなわち矢印10または10'の方向)に同時に移動させて一対のローラーの上に位置する器具のスプレー・コーティングを行なうことができる。スプレー・ノズル5は、トラック7上を一対のローラー4の軸に沿った方向(すなわち矢印10または10'の方向)に移動できるアーム12に取り付けることができる。器具にコーティングを付着させている間に軸に沿ってスプレー・ノズル5を移動させると、器具の表面にコーティング材料の“ストライプ”ができる。コーティング材料のストライプは、一対のローラー4の長さ方向に沿って配置された複数の器具に付着させることができる。本発明によれば、器具に堆積されないコーティング材料の少なくとも半分以上が、第1のローラーと第2のローラーの間にあるギャップ71を通過する。したがって、スプレーを付着させている間にローラーの上に大量のコーティング材料が蓄積することはない。
【0086】
次に、例えば一定角度回転機能を利用して器具を一対のローラーの上で回転させて器具のコーティングされていない部分にコーティングする準備を整え、スプレーされるコーティング材料を付着させることができる。一実施態様では、器具は、時計回りまたは反時計回りのパターンで進むことのできるローラーを一定角度回転させることによって回転させる。好ましい一実施態様では、器具は、コーティング材料を1回付着させて次に付着させるまでの間にランダムに一定角度回転させる。例えばランダムな一定角度の回転は、時計回りまたは反時計回りが可能である。器具は、コーティング・プロセスの間に多数回(例えば10〜200回)にわたって一定角度ずつ回転させることができる。一定角度回転機能によって器具を回転させた後、コーティング材料を堆積させる別のステップを実施することができる。コーティング材料を付着させるステップと器具を回転させるステップは、器具が十分にコーティングされるまで、例えば器具が所定量のコーティング材料でコーティングされるまで、繰り返すことができる。
【0087】
コーティング装置全体の操作を自動的に制御すること、またはコーティング装置の一部を手動制御することができる。例えばコーティング装置は、全コーティング・プロセスを実施するようにプログラムできる中央処理ユニットを備えることができる。中央処理ユニットは、コーティング装置の機能面を制御することができる。機能面とは、例えば、コーティング溶液の供給速度;超音波スプレー・ノズルに供給されるエネルギーと空気圧;(トラック・モータとトラック駆動装置によって駆動されるときの)スプレー・ノズルの運動、運動速度、位置;ハウジング上のトレイの位置揃え;ローラー駆動機構によるローラーの回転である。コーティング・パラメータを確立し、中央処理ユニットにプログラムしてコーティング・プロセスの間に器具に特定の量が堆積されるようにできることが理解されよう。
【0088】
本発明の方法によれば、器具にコーティングするステップと器具を回転させるステップによってコーティング・プロセスを実施した後、コーティング材料を器具の上で乾燥させることができる。一般に、周囲条件下では、コーティングしてから30分経過するまで大半が乾燥することはない。より一般的には、コーティングしてから1時間経過するまで大半が乾燥することはない。乾燥は、この時間が経過した後も起こり、例えばコーティング材料を付着させてから24時間後まで起こる可能性がある。従来法では、コーティングされた器具を取り扱う少なくとも30分前に乾燥している必要があった。
【0089】
しかし本発明の装置と方法では、器具を回転させ、器具のコーティングされた部分をローラーと接触させた後に、堆積によってコーティングされた材料の乾燥過程のかなりの部分が起こることが見いだされた。例えば器具をコーティングし、数秒以内に回転させ、器具のコーティングされた部分をローラーと接触させたとき、そのコーティングされた部分の完全性または品質が損なわれることはない。この明細書に記載したコーティング・プロセスでは、一般に器具を約5〜15秒間回転させた後、器具の一部にコーティングを付着させる。しかし、コーティング材料が乾燥した後に回転させる必要はないため、器具のコーティングと器具の回転の間をより長時間またはより短時間にすることも考えられる。コーティング材料を乾燥させた後に第1のローラーまたは第2のローラーと接触させることができる。コーティング、回転、コーティングの繰り返しという方法により、器具(例えば小さな医療器具)のスプレー・コーティングを行なう場合の標準的な処理時間が劇的に短くなる。さらに、コーティング・プロセスの間を通じて器具を固定する(すなわちクランプ機構で保持する)必要がない。固定を避けることで、器具に付着させるコーティングに欠陥が導入される可能性が小さくなる。この明細書に記載したコーティング法により、コーティングされた器具ごとのコーティングの付着量の変動が少なくなる(5%未満)。
【0090】
コーティング材料を器具に堆積させるステップと器具を回転させるステップの後、コーティングされた器具は、ローラー対から離して乾燥させること、またはローラー対の上で乾燥させることができる。あるいは回転可能な器具はローラー上で乾燥させることもできる。
【0091】
一実施態様では、バッチ・プロセスで本発明を利用して複数の器具をコーティングすることができる。例えば1つのバッチの一部として複数の器具をすべて同じようにコーティングすることができる。
【0092】
本発明の一実施態様には、二方向一定角度回転運動が含まれる。特に、本発明の一実施態様には、ローラーをまず最初に逆方向に回転させてリード・ローラーとコーティングする器具の間のあらゆる固着物を除去した後、順方向に回転させてコーティングする器具を回転させ、その器具の異なる部分がコーティング溶液で覆われるようにするという一定角度回転ステップが含まれる。一対のローラーの個々のローラーについて言及する場合、両方のローラーが同じ方向に回転するのであれば、一方のローラーをリード・ローラーと呼び、他方のローラーをトレーリング・ローラーと呼ぶことができる。リード・ローラーは、上方に回転してローラー間のギャップから離れる表面を持つローラーであるのに対し、トレーリング・ローラーは、下方に回転してローラー間のギャップに入っていくローラーである。二方向一定角度回転運動が本発明に含まれている場合などには、ローラーをあるときは一方の方向に、別のときには反対方向に回転させることができる。二方向一定角度回転運動が含まれる実施態様では、ローラーは、一方の方向により大きな角度回転させることができる。すなわち、器具が前進して異なる面がスプレー・ノズルに曝されるようにするためには、一方の方向(優勢方向)の回転が、反対方向の回転よりも大きい必要がある。その場合には、リード・ローラーは、ローラーが優勢方向に回転しているときに上方に回転してローラー間のギャップから離れる表面を持つローラーである。
【0093】
ここで図19を参照すると、二方向一定角度回転運動するコーティング・システムの概略断面図が示してある。リード・ローラー801とトレーリング・ローラー802は、ローラー間にギャップ804ができるように配置されている。回転可能な器具803が、ローラー間のギャップ804に配置されている。コーティング・システム800が回転可能な器具803を一定角度回転させて次のコーティング位置に来させるべき時になったとき、リード・ローラー801とトレーリング・ローラー802はまず最初に矢印811の方向に回転し、回転可能な器具803とリード・ローラーの間で起こった可能性のあるあらゆる固着を解消する。この段階で、回転可能な器具803がトレーリング・ローラー802に固着する可能性がある。しかしローラーは次に矢印810の方向に回転するため、回転可能な器具803はギャップ804の中に戻り、たとえ位置がずれていても、リード・ローラー801に押しつけられる。そのため回転可能な器具803とトレーリング・ローラー802の間のあらゆる固着が消える。したがって一実施態様では、ローラーの2回目の回転運動は、1回目の回転運動とは逆方向である。一実施態様では、2回目の回転運動により、回転可能な器具803が1回目の回転運動よりも多く回転する。このようにして、回転可能な器具のうちでスプレー流の方向を向いている表面816は、2回の回転運動が起こる前にスプレー流の方向を向いていた表面とは異なることになる。本発明の一実施態様には、二方向回転部材が含まれる。二方向回転部材は、一対のローラーに対して機能上関連した状態に取り付けられていて、ローラーに二方向一定角度回転運動を与える構成にされている。
【0094】
固着または静的接着を減らすための装置
本発明の一実施態様には、トレーリング・ローラーの方に偏向したスプレー流が含まれる。図20を参照すると、空気供給/超音波処理部材307が、溶液供給部材311とともに示してある。この図では、ローラー301、302は、矢印305の方向(反時計回り)に回転する状態が示してある。この場合、ローラー301がリード・ローラーである。なぜならギャップ304におけるその表面の回転方向は上向きで、2つのローラー間のギャップ304から離れるからである。多くの実施態様ではローラーの回転とコーティング溶液の堆積は同時には起こらないであろうが、図20では説明のために両方を示してある。窒素流が空気供給/超音波処理部材307のチャネル309を通過する。コーティング溶液が溶液供給部材311のチャネルに供給される。コーティング溶液は空気供給/超音波処理部材307と接触した後、分散され、次いで空気供給/超音波処理部材307から出て来る窒素流によって下方に押し出されてスプレー流315を形成する。この実施態様では、空気供給/超音波処理部材307が、ローラー間のギャップ304の直上にあるはずの点から矢印317の方向に(トレーリング・ローラーに向かって)シフトする。するとスプレー流315がトレーリング・ローラー302の方に偏向する。一実施態様では、スプレー流315は、空気供給/超音波処理部材307がトレーリング・ローラーに向けることで、トレーリング・ローラーのほうに偏向させることもできる。
【0095】
スプレー流315はローラー302の方に偏向しているため、ある量のコーティング溶液がトレーリング・ローラー302の上に堆積する可能性がある。いくらかのコーティング溶液がリード・ローラー301の上に堆積する可能性もあるが、トレーリング・ローラー302の上に堆積する量よりも一般に少ない。理論に囚われるつもりはないが、固着はローラーに堆積されるコーティング溶液の影響を受けると考えられているため、リード・ローラー301の上に堆積するコーティング溶液がより少ないと、リード・ローラー301への固着が少なくなる可能性がある。スプレー流がトレーリング・ローラー302の方に偏向していると、トレーリング・ローラー302への固着が起こる可能性がある。しかしトレーリング・ローラー302への固着はコーティング・プロセスにとってより小さな問題である。なぜなら、固着は、回転可能な器具がローラー間のギャップ304の中に押し下げられるときに解消できるからである。
【0096】
本発明の一実施態様には、コーティング装置の上に配置される原位置復帰部材が含まれている。すでに説明して図2にも示してあるように、回転可能な器具203は、点206でリード・ローラー202に固着する可能性があり、リード・ローラー202が時計回りに回転すると、リード・ローラー202の表面上を矢印209の方向に移動する。これは、回転可能な器具203が、コーティング・スプレーが向けられるローラー間のギャップ領域204をもはや占めていないことを意味する。ここで図21を参照すると、リード・ローラー401とトレーリング・ローラー402を備えるコーティング装置400が示してある。どちらのローラーも一般に矢印405の方向に回転する。回転可能な器具407が、2つのローラー間のギャップ領域404に位置する。原位置復帰部材411が、リード・ローラー401の表面415から所定の距離413のところに位置する。この距離413は、回転可能な器具407の直径409に対応する距離よりもわずかに短い。
【0097】
ここで図22を参照すると、コーティング装置400が示してあり、回転可能な器具407がリード・ローラー401に固着し、ローラー間のギャップ領域404から出ていくことがわかる。しかし回転可能な器具407は、リード・ローラー401の表面415から所定の距離413に位置する原位置復帰部材411と接触する。回転可能な器具407が原位置復帰部材と接触すると固着が消え、回転可能な器具407が逆回転して下がり、ギャップ領域404の中に入る。
【0098】
原位置復帰部材はさまざまな形状にすることができ、コーティング・システムのさまざまな要素の上に配置される。例えば図23に、原位置復帰部材411の一実施態様を原位置復帰棒453として示してある。この実施態様には、リード・ローラー401とトレーリング・ローラー402が存在している。さらに、ローラー間にギャップ404が存在している。空気供給/超音波処理部材451と溶液供給部材452が存在している。この実施態様では、原位置復帰棒453は、スプレー・ヘッド支持構造455に取り付けられている。図24には、異なる実施態様が示してある。この実施態様には、リード・ローラー401とトレーリング・ローラー402が存在している。やはりローラー間にギャップ404が存在している。空気供給/超音波処理部材451と溶液供給部材452も存在している。この実施態様では、原位置復帰部材501が、独立した原位置復帰部材支持構造502に取り付けられていることがわかる。
【0099】
ここで図25を参照すると、原位置復帰部材を備えた本発明の一実施態様によるコーティング装置550の側面図が示してある。運動支持構造557が、機能上関連した状態でレール559に取り付けられている。運動支持構造557は、レール559に沿って移動することができる。空気供給/超音波処理部材451が運動支持構造557に取り付けられている。溶液供給部材452が、コーティング溶液を空気供給/超音波処理部材451に供給する構成にされている。この図では、洗浄が必要なとき、洗浄溶液供給部材553が、洗浄溶液を定期的に空気供給/超音波処理部材451に供給する構成にされている。原位置復帰ループ551が運動支持構造557に取り付けられている。原位置復帰ループ551の位置は、運動支持構造が矢印555の方向に移動するとき、適切なコーティング位置から出たりリード・ローラー401の上に載ったりする可能性のあるあらゆる回転可能な器具とその原位置復帰ループ551が接触するように決める。原位置復帰ループ551は、多彩な材料で製造することができる。材料としては、例えば、ポリマー、金属、セルロース、複合材料などがある。図25に示した実施態様では、原位置復帰部材は、矢印555の方向にだけ延びている。しかし他の実施態様では、原位置復帰部材は、矢印555と反対の方向にも延びている。このように、原位置復帰部材551は、運動支持構造557が矢印555の方向に移動しているか反対方向に移動しているかに関係なく、適切なコーティング位置から出たりリード・ローラー401の上に載ったりする可能性のあるあらゆる回転可能な器具と接触する位置に配置することができる。その後、空気供給/超音波処理部材451が、あちこち移動する回転可能な器具の上を通過する。一実施態様では、2つの原位置復帰部材が存在しており、一方は矢印555の方向に延びていて、他方は反対方向に延びている。
【0100】
本発明の一実施態様には、回転可能な器具を適切な位置に押し戻すガス流を吹き付ける構造が含まれる。図26を参照すると、矢印405の方向に回転するリード・ローラー401とトレーリング・ローラー402が示してある。ギャップ404がローラー間に存在している。回転可能な器具407がリード・ローラー401に固着していて、リード・ローラーが矢印405の方向に回転するとギャップ404の外に出ていく。ガス供給構造602が回転可能な器具407と交差するチャネル604を備えていて、回転可能な器具407がローラー間のギャップ404から持ち上がったとき、ガス流606がそのチャネルの中を通って吹き付けられる。ガス流606は回転可能な器具と接触し、その回転可能な器具をギャップ404に戻すのを助ける。ガス流が強すぎる場合には、回転可能な器具を装置から押し出したり、回転可能な器具に損傷を与えたりする可能性がある。ガス流が弱すぎる場合には、回転可能な器具をギャップ404の中に戻すのに役立たないであろう。一実施態様では、回転可能な器具をギャップに押し込むのに有効な量のガス流が供給される。当業者であれば、ガス流には適切な任意のガスが含まれていてよいことがわかるであろう。一実施態様では、ガス流は純粋な窒素を含んでいる。
【0101】
ここで図27を参照すると、ガス式原位置復帰構造またはエア・ナイフを備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の上面図が示してある。空気供給/超音波処理部材659が横方向運動支持構造657に取り付けられている。横方向運動支持構造657は、横方向のレール655に機能上関連した状態に取り付けられている。横方向運動支持構造657は、横方向のレール655に沿って矢印672と674の方向に移動することができる。横方向のレール655は、長手方向運動支持構造651に取り付けられている。長手方向運動支持構造651は、長手方向のレール653に機能上関連した状態に取り付けられている。長手方向運動支持構造651は、長手方向のレール653に沿って矢印676と678の方向に移動することができる。この実施態様では、空気供給/超音波処理部材659は、ローラー・システム666のギャップ661に配置された回転可能な器具(図示せず)にコーティング材料を付着させることができるように配置されている。エア・ナイフ670が長手方向運動支持構造に機能上関連した状態に取り付けられていて、別のローラー・システム667の上に配置されている。しかし一実施態様では、エア・ナイフ670は長手方向運動支持構造に機能上関連した状態に取り付けられていて、同じローラー・システム666の上に配置されている。ガスをエア・ナイフ670の下側から放出させることができて、そのガスが、適切なコーティング位置から出たあらゆる回転可能な器具を押し戻す作用をする。空気供給/超音波処理部材659がローラー・システム666のギャップ661の中に配置された回転可能な器具(図示せず)にコーティング材料を付着させた後、長手方向運動支持構造651が長手方向のレール653に沿って矢印678の方向に移動する。その結果、空気供給/超音波処理部材659が所定の位置に来て、コーティング材料をローラー・システム667の助けを借りて回転可能な器具に付着させる。エア・ナイフ670は長手方向運動支持構造651にも取り付けられているため、エア・ナイフ670は今や、ガスを、ローラー・システム668上の適切なコーティング位置から飛び出したあらゆる回転可能な器具に吹き付ける位置にある。このようにエア・ナイフ670が空気供給/超音波処理部材659の前にあるため、適切なコーティング位置から飛び出したあらゆる回転可能な器具が再び所定の位置に戻された後に、空気供給/超音波処理部材659がコーティング材料をその回転可能な器具に付着させる。
【0102】
ここで図28を参照すると、本発明の一実施態様によるエア・ナイフ670の側方断面図が示してある。ガス供給装置がガス供給ポート680に接続されている。ガス供給ポート680には2つのガス供給チャネル682、684が接続されている。ガス供給チャネル682、684は、横方向ガス散布部材686につながっている。複数の開口部(例えば開口部688)が横方向ガス散布部材686の下側に設けられている。横方向ガス散布部材686の内部のガス圧によって複数の開口部(例えば開口部688)からガスが矢印690の方向に押し出される。当業者であれば、ガスが矢印690の方向に向く状態を維持しつつ、エア・ナイフ670をさまざまな構成にできることが理解できよう。
【0103】
驚くべきことに、超音波ノズルからのスプレー・パターンが、溶液供給部材とは反対側により多くのスプレーを発生させうることが見いだされた。ここで例えば図29を参照すると、コーティング・システム700が示してある。このシステムには、リード・ローラー701とトレーリング・ローラー702が存在している。リード・ローラー701とトレーリング・ローラー702の両方とも矢印703の方向に回転する。空気供給/超音波処理部材705を通過する導管706が存在していて、その中を窒素流または他のガス流が流れることができる。溶液供給部材708がチャネル710を備えていて、その中をコーティング溶液が通過した後、溶液のスプレー流712が発生する。空気供給/超音波処理部材705を通過する窒素流が、スプレー流をギャップ704のほうに押しやる。ある量の過剰なスプレー714が、スプレー流712から、空気供給/超音波処理部材705に対して溶液供給部材708とは反対側に離れる。この過剰なスプレー714は、一方のローラーの上に堆積する可能性がある。この場合、この過剰なスプレー714はリード・ローラー701の上に堆積するため、回転可能な器具に固着の問題を引き起こす可能性がある。
【0104】
図30には、図25のコーティング装置700の上面図が示してある。この図では、溶液供給部材708(点線で示す)がローラー701、702の主軸に垂直に配置されていることがわかる。すでに説明したように、この構成では、過剰なスプレーが溶液供給部材708とは反対側に存在していて、この場合にはリード・ローラー701の上に堆積する。回転可能な器具710は、ローラー間のギャップ704の中に配置されている。
【0105】
ここで図31と図32を参照すると、溶液供給部材708は、ローラー701、702とギャップ704に一般に平行な平面内に存在する別の配置にされている。このようになっていると、リード・ローラー701の上に堆積されつつあった(図29に示したような)過剰なスプレー714が、今度はローラー間のギャップ704を通過する。図32は、上から見て溶液供給部材708が180°異なる位置にある点が図31と異なっている。しかし図31と図32の両方で、溶液供給部材708は、ローラー701、702とギャップ704にほぼ平行な平面内に配置されている。ここで図33を参照すると、コーティング・ヘッドと溶液供給部材の斜視図が示してある。溶液供給部材708は、点線770の位置から矢印772の方向で示した位置に移動している。このようになっていると、溶液供給部材708は、一対のローラー701、702の間に位置するギャップ704にほぼ平行である。当業者であれば、溶液供給部材708を点線770から矢印772とは反対の方向に移動させ、一対のローラー701、702の間に位置するギャップ704にほぼ平行にできることが理解できよう。
【0106】
静電荷の放電
静電荷は、物体上の動かない電荷である。上述のように、回転可能な器具の固着および/または運動によって適切なコーティング位置から飛び出す原因の少なくとも1つは、回転可能な器具が静電荷を帯びているために静電引力や静電反発力が生じることであると考えられる。本発明の一実施態様には、コーティングする器具の静電荷を放電させる方法が含まれる。本発明の一実施態様には、放電部材を備える装置が含まれる。
【0107】
コーティング・システムによっては、コーティングする器具を手で取り扱う必要がある。例えばコーティングする器具を物理的にコーティング・システムのローラーの上に配置せねばならないことがある。コーティングする多くの器具は埋め込む医療器具であるため、“クリーン・ルーム”手続きに従って取り扱う必要がある。この手続きには、コーティングする器具を物理的に取り扱うときにラテックスまたはニトリルからなる手袋を使用する操作が含まれることがしばしばある。しかしラテックス材料やニトリル材料は一般に絶縁体として機能する。したがってラテックスまたはニトリルからなる手袋を着けているときにコーティングする器具に触っても静電荷が散逸しない可能性がある。
【0108】
一実施態様では、コーティングする器具を手で取り扱い、その器具が帯びている可能性のあるあらゆる静電荷を除去する。一実施態様では、導電性手袋を着け、コーティングする器具に存在している静電荷が散逸できるようにする。導電性手袋は、例えばQRPグラブ社(ツーソン、アリゾナ州)から入手できる。一実施態様では、コーティングする器具を取り扱う人は、アースの付いたストラップを手首に着ける。
【0109】
当業者であれば、静電荷をさまざまな方法で放電できることがわかるであろう。いくつかの実施態様では、静電荷を減らすかなくすため、コーティングする器具を、アースするかほぼアース状態にした物体と接触させる操作が放電に含まれる。例えばコーティングする器具は、アースした導電体と接触させることができる。一実施態様では、導電体をコーティング装置の一部にすることができる。一実施態様では、導電体はコーティング装置とは別である。
【0110】
本発明の一実施態様には、イオン化装置が含まれる。イオン化装置は、正イオンと負イオンを例えばガス状態で発生させ、それをコーティングする器具に向けることができる。コーティングする器具に存在しているのと反対符号のイオンは、そのコーティングする器具に引き付けられて静電荷を中和する。本発明の一実施態様には、イオン化ブロワーが含まれる。例えばイオン化ブロワーとして、クリティカル・エンバイアロンメント・イオン化装置のモデル5810をイオン・テクノロジー社(バークレー、カリフォルニア州)から入手できる。
【0111】
マスキング部材
本発明の一実施態様には、コーティングする器具またはローラーの上に配置されるマスキング部材が含まれる。例えばマスキング部材を用い、スプレー・ノズルから発生するスプレー・パターンをさらに制御することができる。一実施態様では、マスキング部材を用いてスプレー溶液がコーティングする器具の所定の部分に堆積するのを防ぐことができる。例えばマスキング部材がコーティングする器具の中心部を覆うことで、スプレー・ノズルが器具の上を通過するときにスプレー・パターンが器具の両端部だけに堆積されるようにできる。さらに別の例として、マスキング部材を改変し、ローラーは覆うがローラー間のギャップは覆わない構成にすることができる。一実施態様では、マスキング部材は、スプレー溶液がローラーの上に堆積されるのを防ぐことができる。
【0112】
ここで図34を参照すると、マスキング部材を含む本発明による一実施態様の概略上面図が示してある。第1のローラー801と第2のローラー802がギャップ804によって隔てられている。点線で示したコーティングする器具806が、一対のローラーの間のギャップ804の中に配置されている。マスキング部材810が一対のローラーとギャップ804の上に配置されている。マスキング部材810は開口部808を備えており、その中をスプレー・パターンが通過できるため、スプレーは器具806のうちでマスキング部材810によって覆われていない部分だけに堆積される。一実施態様では、マスキング部材は複数の開口部を備えることができる。
【0113】
コーティング材料
均質なコーティング材料にできる任意の化合物を使用することができる。多彩な化合物と溶媒を器具の表面にスプレーすることができる。例えば、器具の機能(例えば生体内に埋め込み可能な医療器具の機能)を改善することのできる化合物や薬剤がある。こうした改善は、例えば、生体適合性の向上や、コーティングされた器具の潤滑性に現われる可能性がある。そのような化合物および溶媒としては、生物学的に活性な薬剤(例えば医薬)や、ポリマーなどの他の化合物(例えば親水性ポリマー、疎水性ポリマー)がある。一般に、こうした化合物や薬剤は、溶媒に懸濁または溶解させた後、スプレー・ノズルから器具の表面に堆積させる。極性溶媒から非極性溶媒までの多彩な溶媒を使用することができる。溶媒としては、アルコール(例えばメタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール)、アルカン(例えばハロゲン化アルカン、ハロゲン化していないアルカンであり、具体例としてヘキサンやシクロヘキサンがある)、アミド(例えばジメチルホルムアミド)、エーテル(例えばTHFやジオキソラン)、ケトン(例えばメチルエチルケトン)、芳香族化合物(例えばトルエンやキシレン)、ニトリル(例えばアセトニトリル)、エステル(例えば酢酸エチル)などが可能である。一実施態様では、溶媒は、ポリマー成分が真の溶液を形成する溶媒である。一実施態様では、溶媒はTHFである。
【0114】
一実施態様では、コーティング材料は、活性剤に加えて少なくとも1種類のポリマーを含んでいる。一実施態様では、コーティング材料は、活性剤に加えて複数のポリマー(例えば第1のポリマーと第2のポリマー)を含んでいる。コーティング材料が1種類のポリマーだけを含んでいる場合、それは、この明細書に記載してあるように、第1のポリマーと第2のポリマーのいずれかにすることができる。この明細書では、ポリマーの説明に用いる“(メタ)アクリレート”という用語は、メチル基を含む形態(メタクリレート)、またはメチル基を含まない形態(アクリレート)を意味する。
【0115】
適切な第1のポリマーの具体例として、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)、中でもアルキル鎖の長さが炭素原子2〜8個であり、分子量が50キロダルトン〜900キロダルトンであるポリマーがある。第1のポリマーの一例は、ポリ(n-ブチルメタクリレート)(pBMA)である。このようなポリマーは、分子量が約200,000ダルトン〜約320,000ダルトンの範囲であり、固有粘性率、溶解度、形態(例えば結晶または粉末)がさまざまなものを市場で(例えばオールドリッチ社から)入手することができる。
【0116】
適切な第1のポリマーの具体例としては、ポリ(アリール(メタ)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)、ポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)からなるグループの中から選択したものも挙げられる。このような用語は、本発明の組成物を提供するために少なくとも1つの炭素鎖と少なくとも1つの芳香族環がアクリル基(一般にエステル)と合わさったポリマー構造を記述するのに用いられる。好ましいポリマー構造を特に挙げるならば、6〜16個の炭素原子を持つアリール基とからなり、平均分子量が約50〜約900キロダルトンの構造である。適切なポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)、ポリ(アリールアルキル(メタ)アクリレート)、ポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)は、芳香族部分を含むアルコールに由来する芳香族エステルから製造することができる。ポリ(アリール(メタ)アクリレート)の具体例としては、ポリ(9-アントラセニルメタクリレート)、ポリ(クロロフェニルアクリレート)、ポリ(メタクリルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン)、ポリ(メタクリルオキシベンゾトリアゾール)、ポリ(ナフチルアクリレート)、ポリ(ナフチルメタクリレート)、ポリ(4-ニトロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロ(ブロモ, フルオロ)アクリレート)、ポリ(ペンタクロロ(ブロモ, フルオロ)メタクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)などがある。ポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)の具体例としては、ポリ(ベンジルアクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(2-フェネチルアクリレート)、ポリ(2-フェネチルメタクリレート)、ポリ(1-ピレニルメチルメタクリレート)などがある。ポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)の具体例としては、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)、ポリ(フェノキシエチルメタクリレート)や、ポリエチレングリコールの分子量がさまざまなポリ(ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)とポリ(ポリエチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート)などがある。
【0117】
適切な第2のポリマーの具体例は市販されており、酢酸ビニルの濃度が約10%〜約50%(12%、14%、18%、25%、33%という種類が市販されている)であるポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)(pEVA)がビーズ、ペレット、顆粒などの形態になったものがある。酢酸ビニルの割合がより少ないpEVAコ-ポリマーは、典型的な溶媒にますます溶けにくくなるのに対し、酢酸ビニルの割合がより多いpEVAコ-ポリマーは、耐久性が低下する。
【0118】
本発明で用いるポリマー混合物の一例は、pBMAとpEVAの混合物である。このポリマー混合物は、絶対ポリマー濃度(すなわちコーティング材料中の両方のポリマーを合計した濃度)が約0.25〜約70重量%で有用であることがわかっている。さらに、コーティング溶液中の個々のポリマーの濃度が約0.05〜約70重量%だと有効であることもわかっている。好ましい一実施態様では、ポリマー混合物は、分子量が100キロダルトン〜900キロダルトンのpBMAと、酢酸ビニルの含有量が24〜36重量%であるpEVAコポリマーを含んでいる。特に好ましい一実施態様では、ポリマー混合物は、分子量が200キロダルトン〜400キロダルトンのpBMAと、酢酸ビニルの含有量が30〜34重量%であるpEVAコポリマーを含んでいる。コーティング混合物に溶けるか懸濁している活性剤の濃度は、最終コーティング材料の重量を基準にして0.01〜90重量%の範囲が可能である。
【0119】
本発明の第2のポリマーは、(i)ポリ(アルキレン-コ-アルキル(メタ)アクリレート)、(ii)エチレンと他のアルキレンのコポリマー、(iii)ポリブテン、(iv)ジオレフィンに由来する非芳香族のポリマーとコポリマー、(v)芳香族基含有コポリマー、(vi)エピクロロヒドリン含有ポリマーからなるグループの中から選択した1種類以上のポリマーも含むことができる。本発明の第1のポリマーは、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)とポリ(芳香族(メタ)アクリレート)からなるグループの中から選択したポリマーも含むことができる。ただし当業者には、“(メタ)”に、アクリルおよび/またはメタアクリルの形態の分子(それぞれアクリレートおよび/またはメタアクリレートに対応する)が含まれることが理解されよう。
【0120】
ポリ(アルキレン-コ-アルキル(メタ)アクリレート)には、アルキル基が直鎖または分岐鎖であって、非干渉性の基または原子で置換されるか置換されていないコポリマーが含まれる。このようなアルキル基は、1〜8個の炭素原子を含んでいることが好ましく、1〜4個の炭素原子を含んでいることがより好ましい。一実施態様では、アルキル基はメチルである。いくつかの実施態様では、このようなアルキル基を含むコポリマーは、約15〜約80重量%のアクリル酸アルキルを含むことができる。アルキル基がメチルである場合には、ポリマーは、いくつかの実施態様では約20%〜約40%のアクリル酸メチルを含んでおり、特別な一実施態様では、約25%〜約30%のアクリル酸メチルを含んでいる。アルキル基がエチルである場合には、ポリマーは、一実施態様では約15%〜約40%のアクリル酸エチルを含んでおり、アルキル基がブチルである場合には、ポリマーは、一実施態様では約20%〜約40%のアクリル酸ブチルを含んでいる。
【0121】
あるいは本発明で使用する第2のポリマーは、他のアルキレンとのエチレン・コポリマーを含むことができる。そのアルキレンは、直鎖または分岐鎖のアルキレンや、置換されるか置換されていないアルキレンを含むことができる。具体例として、3〜8個の直鎖または分岐鎖の炭素原子からなるアルキレンから調製したコポリマーがある。一実施態様では、コポリマーは、3〜4個の直鎖または分岐鎖の炭素原子からなるアルキレン基から調製される。特別な一実施態様では、コポリマーは3個の炭素原子を含むアルキレン基(例えばプロペン)から調製される。例えば上記の他のアルキレンは、直鎖のアルキレン(例えば1-アルキレン)である。このタイプのコポリマーは、約20%〜約90%(モル)のエチレンを含むことができる。一実施態様では、このタイプのコポリマーは、約35%〜約80%(モル)のエチレンを含んでいる。このようなコポリマーは、分子量が約30キロダルトン〜約500キロダルトンになろう。具体的なコポリマーは、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(エチレン-コ-1-ブテン)、ポリエチレン-コ-1-ブテン-コ-1-ヘキセン、ポリ(エチレン-コ-1-オクテン)からなるグループの中から選択される。
【0122】
本発明で用いるのに適した“ポリブテン”には、単独重合またはランダムな共重合で得られたイソブチレン、1-ブテン、2-ブテンに由来するポリマーが含まれる。このポリブテンは、これら異性体のうちの任意のもののホモポリマーでもよいし、これらモノマーのうちの任意のものが任意の比になったコポリマーまたはターポリマーでもよい。一実施態様では、ポリブテンは、少なくとも約90重量%のイソブチレンまたは1-ブテンを含んでいる。特別な一実施態様では、ポリブテンは、少なくとも約90重量%のイソブチレンを含んでいる。ポリブテンは、干渉しない量の他の成分または添加剤を含むことができる。例えば1000ppmまでの抗酸化剤(例えば2,6-ジ-t-ブチル-メチルフェノール)を含むことができる。例えばポリブテンは、分子量を約150キロダルトン〜約1,000キロダルトンにすることが可能である。一実施態様では、ポリブテンは、約200キロダルトン〜約600キロダルトンのものが可能である。特別な一実施態様では、ポリブテンは、約350キロダルトン〜約500キロダルトンのものが可能である。分子量が約600キロダルトンよりも大きい(1,000キロダルトンよりも大きいものも含む)ポリブテンを入手できるが、それを用いると作業がより難しくなることが予想される。
【0123】
別の第2のポリマーとしては、ジオレフィン由来の非芳香族のポリマーとコポリマーがある。その中には、そのポリマーまたはコポリマーを調製するのに用いるジオレフィン・モノマーが、ブタジエン(CH2=CH-CH=CH2)および/またはイソプレン(CH2=CH-C(CH3)=CH2)の中から選択されたポリマーまたはコポリマーが含まれる。一実施態様では、このポリマーは、ジオレフィン由来のホモポリマー、またはジオレフィン・モノマーと非芳香族モノ-オレフィン・モノマーのコポリマーであり、場合によっては、このホモポリマーまたはコポリマーは一部が水素化されていてもよい。このようなポリマーは、シス-モノマー単位、および/またはトランス-モノマー単位、および/または1,2-モノマー単位の重合によって調製したポリブタジエンと、これら3種類すべてのモノマーの混合物からしたポリブタジエンと、シス-1,4-モノマー単位および/またはトランス-1,4-モノマー単位の重合によって調製したポリイソプレンとからなるグループの中から選択することができる。あるいはこのポリマーは、コポリマーである。その中には、非芳香族モノ-オレフィン・モノマー(例えばアクリロニトリル)とアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはイソブチレンとをベースとしたグラフト・コポリマーやランダム・コポリマーが含まれる。一実施態様では、モノ-オレフィン・モノマーがアクリロニトリルである場合には、共重合したアクリロニトリルが約50重量%まで存在する。モノ-オレフィン・モノマーがイソブチレンである場合には、ジオレフィンは(例えば市場で“ブチルゴム”として知られているものを形成するための)イソプレンである。具体的なポリマーおよびコポリマーは、Mwが約150キロダルトン〜約1,000キロダルトンである。一実施態様では、ポリマーおよびコポリマーは、Mwが約200キロダルトン〜約600キロダルトンである。
【0124】
別の第2のポリマーとして、芳香族基含有コポリマーがある。その中にはランダム・コポリマー、ブロック・コポリマー、グラフト・コポリマーが含まれる。一実施態様では、芳香族基は、スチレンの重合を通じてコポリマーに組み込まれる。特別な一実施態様では、ランダム・コポリマーは、スチレン・モノマーと、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、C1〜C4アルキル(メタ)アクリレート(例えばメチルメタクリレート)の中から選択した1種類以上のモノマーとの共重合から得られるコポリマーである。有用なブロック・コポリマーとしては、(a)ポリスチレンのブロック、(b)ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブテン(例えばイソブテン)の中から選択したポリオレフィンのブロック、(c)場合によっては第3のモノマー(例えばエチレン)が共重合したポリオレフィン・ブロックを含むコポリマーがある。芳香族基含有コポリマーは、重合した芳香族モノマーを約10〜約50重量%を含んでおり、このコポリマーの分子量は、約300キロダルトン〜約500キロダルトンである。一実施態様では、このコポリマーの分子量は、約100キロダルトン〜約300キロダルトンである。
【0125】
別の第2のポリマーとしては、エピクロロヒドリン・ホモポリマーと、ポリ(エピクロロヒドリン-コ-アルキレンオキシド)コポリマーがある。一実施態様では、コポリマーの場合、共重合したアルキレンオキシドはエチレンオキシドである。例えばエピクロロヒドリン含有ポリマーのエピクロロヒドリンの含有量は、約30〜100重量%である。一実施態様では、エピクロロヒドリンの含有量は、約50〜100重量%である。一実施態様では、エピクロロヒドリン含有ポリマーは、Mwが約100キロダルトン〜約300キロダルトンである。
【0126】
ポリマーには、ポリ(エチレングリコール)(PEG)とポリ(テレフタル酸ブチレン)をベースとしたポリ(エーテルエステル)マルチブロック・コポリマーも含まれる。このコポリマーは、以下の一般式:
[-(OCH2CH2)n-O-C(O)-C6H4-C(O)-]x[-O-(CH2)4-O-C(O)-C6H4-C(O)-]y
で表わされる。ただし-C6H4-は、テレフタル酸をエステル化した各分子からの二価の芳香族環残基を表わし、nは、それぞれの親水性PEGブロックに含まれるエチレンオキシド単位の数を表わし、xは、コポリマーに含まれる親水性ブロックの数を表わし、yは、コポリマーに含まれる疎水性ブロックの数を表わす。nは、PEGブロックの分子量が約300〜約4000となるように選択することが好ましい。xとyは、マルチブロック・コポリマーが約55重量%〜約80重量%のPEGを含むように選択することが好ましい。
【0127】
ブロック・コポリマーは、コポリマー構造のn、x、yを変えることにより、さまざまな物理的特性(例えば親水性、接着力、強度、可鍛性、分解性、耐久性、可撓性)と(例えばポリマーの分解、膨張を制御することによる)さまざまな活性剤放出特性を持つものを製造することができる。コポリマーの分解によって毒性分解生成物または酸性環境が生じることはなく、コポリマーの親水性によって不安定な活性剤(リゾチームなどのタンパク質)の安定性が保持される。
【0128】
一実施態様では、本発明のポリマー系は、エステル結合を通じて架橋したデキストラン・マイクロスフェアをベースとしたマイクロスフェアを含んでいる。マイクロスフェアは、無溶媒法を利用して製造されるため、組み込まれたタンパク質分子の変性が回避される。15重量%までのタンパク質装填レベルと、大きな封止効率(一般に90%超)を実現することができる。マイクロスフェアはサイズを50μm未満にすることができるため、皮下注射が可能である。マイクロスフェア粒子は、表面の浸食ではなくバルク浸食を通じて分解する。分解する際に酸性化は起こらないため、タンパク質分子の構造の完全性が保持される。
【0129】
本発明のポリマーには、生物分解性ポリマーも含まれる。適切な生物分解性ポリマー材料は、(a)非ペプチドポリアミノポリマー;(b)ポリイミノカーボネート;(c)アミノ酸由来ポリカーボネート;(d)ポリ(アルキレン)オキシド・ポリマーの中から選択される。この生物分解性ポリマー材料は、分解して毒性のない分解生成物を形成することができるため、生体に顕著な有害反応を引き起こすことはない。
【0130】
一実施態様では、生物分解性ポリマー材料は、非ペプチド・ポリアミノ酸ポリマーからなる。適切な非ペプチド・ポリアミノ酸ポリマーは、例えばアメリカ合衆国特許第4,638,045号(「非ペプチド・ポリアミノ酸生物分解性ポリマー」、1987年1月20日)に記載されている。一般に、このポリマー材料はモノマーに由来し、以下に示す2つの構造:
【化1】

のうちの一方を有する2個または3個のアミノ酸単位を含んでいる。ただしこのモノマー単位は、側鎖基R1、R2、R3のうちの1つ以上の位置で加水分解する不安定な結合を通じて結合していて、R1、R2、R3は天然のアミノ酸の側鎖であり;Zは望ましい任意のアミン保護基または水素であり;Yは望ましい任意のカルボキシル保護基またはヒドロキシルである。各モノマー単位は天然のアミノ酸を含んでおり、それが今度はモノマー単位として、アミド結合または“ペプチド”結合以外の結合を通じて重合される。このモノマー単位は、ペプチド結合を通じて結合した2個または3個のアミノ酸で構成することができるため、ジペプチドまたはトリペプチドを含んでいる。モノマー単位の正確な組成とは関係なく、すべて、ポリペプチド鎖に典型的なアミド結合を形成するアミノ基とカルボキシル基を通じてではなく、それぞれの側鎖を通じ、加水分解に対して不安定な結合によって重合する。このようなポリマー組成物は毒性がなく、生物分解性であり、さまざまな治療の用途で活性剤を送達するためのゼロ次の放出動態を提供することができる。このような特徴を考慮すると、アミノ酸の選択は、天然に存在するL-αアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リシン、ヒドロキシリシン、アルギニン、ヒドロキシプロリン、メチオニン、システイン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、シトルリン、オルニチン、ランチオニン、ヒポグリシンA、β-アラニン、γ-アミノブチル酸、αアミノアジピン酸、カナバニン、ベンコール酸、チオールヒスチジン、エルゴチオニン、ジヒドロキシフェニルアラニン)や、タンパク質化学でよく知られていて性質がわかっている他のアミノ酸の中からなされる。
【0131】
一実施態様では、生物分解性ポリマー材料は、ポリイミノカーボネートで構成することができる。ポリイミノカーボネートは、構造的にポリカーボネートと関係していて、ポリカーボネートにおいて通常はカルボニル酸素によって占められている場所にイミノ基(>C=NH)が存在している。したがって生物分解成分は、結合:
【化2】

を有するポリイミノカーボネートで形成することができる。例えば有用な1つのポリイミノカーボネートは、ポリマー構造の一般式が
【化3】

である。ただしRは、非縮合芳香族有機環を含む二価の有機基であり、nは1よりも大きい。上記の一般式に含まれるR基の好ましい実施態様は、例えば以下のものである。すなわちR基は、
【化4】

(ただしR'は低級アルケンC1〜C6である)
(ただしnは1よりも大きい整数であり、Xは、ヘテロ原子(-O-、-S-など)、または架橋基(-NH-、-S(=O)-、-SO2-、-C(=O)-、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH2-CH(CH3)-など)である)、(d)
【化5】

である。
【0132】
また、一般式:
【化6】

の化合物も使用できる。ただしXは、O、NH、NR'"であり、R'"は低級アルキル基であり;R"は炭化水素の二価の残基であり、例えばポリマー(ポリオレフィン、オリゴグリコールなど)、ポリグリコール(ポリアルキレングリコールエーテル、ポリエステル、ポリ尿素、ポリアミン、ポリウレタン、ポリアミドなど)などが挙げられる。これらの実施態様で使用する出発材料としては、一般式:
【化7】

を持つジフェノール化合物や、一般式:
【化8】

を持つジシアナート化合物がある。ただしR1とR2は同じでも異なっていてもよく、アルキレン、アリーレン、アルキルアリーレンのいずれか、またはヘテロ原子を含む官能基である。Z1とZ2は、それぞれ、水素、ハロゲン、低級アルキル、カルボキシル、アミノ、ニトロ、チオエーテル、スルホキシド、スルホニルからなるグループの中から選択した1個以上の同じ基または異なる基を表わす。Z1とZ2は、それぞれ水素であることが好ましい。
【0133】
一実施態様では、生物分解性ポリマー材料は、アミノ酸由来のさまざまなタイプのポリカーボネートとポリアリーレートで構成することができる。アミノ酸由来のこれらポリカーボネートとポリアリーレートは、ある種のアミノ酸由来ジフェノールを出発物質としてそれぞれホスゲンまたはジカルボン酸と反応させることによって調製できる。この実施態様のアミノ酸から誘導されたポリカーボネートおよび/またはポリアリーレートを調製するためのアミノ酸誘導ジフェノール出発物質の具体例は、熱処理が可能であるくらいにガラス転移温度(“Tg”)が十分に低いポリイミドカーボネートを重合によって形成できるモノマーである。この実施態様のモノマーはジフェノール化合物であり、それは、以下に示す一般式:
【化9】

を持つアミノ酸エステル誘導体である。ただしR1は、炭素原子を18個まで含むアルキル基である。
【0134】
さらに別の一実施態様では、生物分解性ポリマー材料は、親水性ポリ(アルキレンオキシド)(PAO)と生物分解性配列の両方を含むコポリマーで構成することができる。ただし各PAOユニットの炭化水素部分は、1〜4個の炭素原子、または2個の炭素原子(すなわちPAOがポリ(エチレンオキシドである))を含んでいる。例えば有用な生物分解性ポリマー材料は、PAOとアミノ酸配列またはペプチド配列とを含むブロック・コポリマーで構成することができ、-L-R1-L-R2-という構造で表わされる1つ以上の繰り返し構造単位を含んでいる。ただしR1はポリ(アルキレンオキシド)であり、Lは-O-または-NH-であり、R2は2個のカルボン酸基とぶら下がった少なくとも1個のアミノ基とを含むアミノ酸配列またはペプチド配列である。他の有用な生物分解性ポリマー材料は、チロシン誘導ジフェノール・モノマーとポリ(アルキレンオキシド)を含む、ポリアリーレートまたはポリカーボネートのランダム・ブロック・コポリマーで構成されている。それは例えば以下に示すポリカーボネートである。
【化10】

ただし、R1は-CH=CH-または(-CH2-)jであり、jは0〜8であり;R2は、18個までの炭素原子と、場合によっては少なくとも1つのエーテル結合と、コポリマーに共有結合した生物学的、薬理学的に活性な化合物の誘導体を含む直鎖または分岐鎖のアルキル基およびアルキルアリール基の中から選択され;それぞれのR3は、独立に、1〜4個の炭素原子を含むアルキレン基の中から選択され;yは5〜約3000であり;fは、コポリマーに含まれるアルキレンオキシドの%モル分率であり、約0.01〜約0.99の範囲である。
【0135】
いくつかの実施態様では、ぶら下がっているカルボン酸基を、ポリカーボネート、および/またはポリアリーレート、および/またはこれらのポリ(アルキレンオキシド)ブロック・コポリマーのためのポリマーの塊の中に組み込み、ポリマー骨格の分解と吸収の速度をさらに制御することができる。
【0136】
コーティング材料は、天然のポリマーを含んでいてもよい。それは例えば、多糖類(ポリデキストランなど)、グリコサミノグリカン(ヒアルロン酸など)、ポリペプチドや可溶性タンパク質(アルブミン、アビジンなど)や、これらの組み合わせである。天然ポリマーと合成ポリマーの組み合わせも使用できる。説明した合成および天然のポリマーとコポリマーは、反応性のある基(例えば熱または光によって反応する基)との誘導体にすることもできる。
【0137】
光活性化が可能なアリールケトンが好ましい。それは例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、アントロン様複素環(すなわち10位にN、O、Sを有するアントロンの複素環アナログ)、またはこれらの置換された(例えば環が置換された)誘導体である。好ましいアリールケトンの具体例としては、アントロンの複素環誘導体(たとえばアクリドン、キサントン、チオキサントン)や、これらの環置換誘導体などがある。特に好ましいのは、励起エネルギーが約360nmよりも大きいチオキサントンとその誘導体である。
【0138】
コーティング材料は、1種類以上の生物学的に活性な薬剤も含むことができる。所定量の生物学的に活性な薬剤を器具に付着させ、コーティングされた器具を埋め込まれる患者にとって治療に有効な量の薬剤が供給されるようにできる。特に有用な薬剤としては、心臓血管機能に影響を与える薬剤、心臓血管関連疾患を治療するのに使用できる薬剤などがある。
【0139】
本発明で有用な活性剤としては、多くのタイプの治療薬がある。例えば、トロンビン阻害剤、抗トロンボゲン形成剤、トロンボゲン溶解剤、フィブリン溶解剤、抗凝固剤、抗血小板剤、血管痙攣阻害剤、カルシウム・チャネル・ブロッカー、ステロイド、血管拡張剤、抗高血圧剤、抗微生物剤、抗生剤、抗菌剤、抗寄生虫溶質および/または抗原生動物溶質、防腐剤、抗真菌剤、血管新生剤、抗血管新生剤、表面糖タンパク質受容体の阻害剤、抗有糸分裂剤、微小管阻害剤、抗分泌剤、アクチン阻害剤、リモデリング阻害剤、アンチセンス・ヌクレオチド、抗代謝剤、有糸分裂剤、抗増殖剤、抗がん化学療法剤、抗腫瘍剤、抗ポリメラーゼ物質、抗ウイルス物質、抗エイズ物質、抗炎症ステロイド、非ステロイド系抗炎症剤、鎮痛剤、解熱剤、免疫抑制剤、免疫調節剤、成長ホルモン・アンタゴニスト、増殖因子、放射線療法剤、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外マトリックス成分、ACE阻害剤、フルーラジカル・スカベンジャー、キレータ、抗酸化剤、光力学療法剤、遺伝子治療剤、麻酔薬、免疫毒素、神経毒素、オピオイド、ドーパミン・アゴニスト、催眠剤、抗ヒスタミン、精神安定剤、抗痙攣剤、筋肉弛緩剤、抗パーキンソン物質、抗痙攣剤、筋肉収縮剤、抗コリン作用剤、抗結膜炎剤、抗緑内障溶質、プロスタグランジン、抗鬱剤、抗精神病物質、神経伝達物質、制吐剤、造影剤、特定標的剤、細胞応答調節剤がある。
【0140】
より詳細には、活性剤が含むことができるのは、ヘパリン、共有結合ヘパリン、合成ヘパリン塩、または他のトロンビン阻害剤;ヒルジン、ヒルログ、アルガトロバン、D-フェニルアラニル-L-ポリ-L-アルギニルクロロメチルケトン、または他の抗トロンビン剤;ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベータ、または他トロンビン溶解剤;フィブリン溶解剤;血管痙攣阻害剤;カルシウム・チャネル・ブロッカー、硝酸塩、一酸化窒素、一酸化窒素プロモータ、一酸化窒素ドナー、ジピリダモール、または他の血管拡張剤;ハイトリン(登録商標)、または他の抗高血圧剤;糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤(アブシキシマブ)、または他の表面糖タンパク質受容体の阻害剤;アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、または他の抗血小板剤;コルヒチン、または他の抗有糸分裂剤、または他の微小管阻害剤;ジメチルスルホキシド(DMSO)、レチノイド、または他の抗分泌剤;サイトカラシン、または他のアクチン阻害剤;細胞周期阻害剤;リモデリング阻害剤;デオキシリボ核酸、アンチセンス・ヌクレオチド、または分子レベルで遺伝子に介入するための他の薬剤;メトトレキセート、または他の抗代謝剤、抗増殖剤;クエン酸タモキシフェン、タキソール(登録商標)、パクリタキセルまたはその誘導体、ラパマイシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、エトポシド、テノピシド、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、ミトマイシン、メクロレタミン、シクロホスファミドとそのアナログ、クロラムブシル、エチレンイミン、メチルメラミン、スルホン酸アルキル(例えばブスルファン)、ニトロソウレア(カルムスチンなど)、ストレプトゾシン、(多くの症状で使用される)メトトレキセート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、2-クロロデオキシアデノシン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、モルホリノホスホロジアミデートオリゴマー、または他の抗がん化学療法剤;シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、mTOR阻害剤、または他の免疫抑制剤;コルチゾール、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾン誘導体、ベータメタゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6U-メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン(例えばトリアムシノロンアセトニド)、または他のステロイド剤;トラピジル(PDGFアンタゴニスト)、アンギオペプチン(成長ホルモン・アンタゴニスト)、アンギオゲニン、増殖因子(血管内皮増殖因子(VEGF)など)、または抗増殖因子抗体、または増殖因子の別のアンタゴニストやアゴニスト;ドーパミン、ブロモクリプチンメシル酸塩、メシル酸ペルゴリド、または他のドーパミン・アゴニスト;60Co(半減期5.3年)、192Ir(73.8日)。32P(14.3日)、111In(68時間)、90Y(64時間)、99Tc(6時間)、または他の放射線療法剤;ヨウ素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、白金、タングステン、または放射線不透過剤として機能する他の重金属;ペプチド、タンパク質、細胞外マトリックス成分、細胞成分、または他の生物剤;カプトプリル、エナラプリル、または他のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;アンギオテンシン受容体ブロッカー;酵素阻害剤(増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤を含む);アスコルビン酸、αトコフェロール、スーパーオキシド・ディスムターゼ、デフェロキサミン、21-アミノステロイド(ラサロイド)、または他のフリーラジカル・スカベンジャー、鉄キレータ、抗酸化剤;14C-、3H-、131I-、32P、36S-放射性標識形態、またはこれら以外のものによる放射性標識形態;エストロゲン(エストラジオール、エストリオール、エストロンなど)、または他の性ホルモン;AZT、または他の抗ポリメラーゼ;アシクロビル、ファムシクロビル、塩酸リマンタジン、ガンシクロビルナトリウム、ノービア、クリキシバン、または他の抗ウイルス剤;5-アミノレブリン酸、メタテトラヒドロキシフェニルクロリン、ヘキサデカフルオロ亜鉛フタロシアニン、テトラメチルヘマトポルフィリン、ローダミン123、または他の光力学療法剤;緑膿菌外毒素Aに対するもので、A431類表皮癌細胞と反応するIgG2カッパ抗体、サポリンと共役するノルアドレナリン作動性酵素ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼに対するモノクローナル抗体、または抗体を標的とする他の治療薬;遺伝子治療剤;エナラプリルとそれ以外のプロドラッグ;プロスカー(登録商標)、ハイトリン(登録商標)、または良性前立腺過形成(BHP)を治療するための他の薬;ミトタン、アミノグルテチミド、ブレベルジン、アセトアミノフェン、エトダラク、トルメチン、ケトロラク、イブプロフェンとその誘導体、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、ナブメトン、オーラノフィン、金チオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム、これらの混合物、またはこれらの誘導体などである。
【0141】
コーティング材料にやはり含まれていてもよい他の生物学的に有用な化合物としては、ホルモン、β-ブロッカー、抗狭心症剤、心臓変力剤、コルチコステロイド、鎮痛剤、抗炎症剤、抗不整脈剤、免疫抑制剤、抗菌剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、抗腫瘍剤、抗原生動物剤、抗甲状腺剤、鎮静剤、催眠剤、抗精神病薬、利尿剤、抗パーキンソン剤、胃腸薬、抗ウイルス剤、抗糖尿病剤、抗癲癇剤、抗真菌剤、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト、脂質調節剤、筋肉弛緩剤、栄養剤(ビタミン、ミネラルなど)、刺激剤、核酸、ポリペプチド、ワクチンなどがある。
【0142】
抗生剤は、微生物の増殖を抑制したり、微生物を殺したりする物質である。抗生剤は、合成すること、または微生物に産生させることができる。抗生剤の具体例としては、ペニシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、バンコマイシン、バシトラシン、カナマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、セファロスポリンなどがある。セファロスポリンの具体例としては、セファロチン、セファピリン、セファゾリン、セファレキシン、セファラジン、セファドロキシル、セファマンドール、セフォキシチン、セファクロール、セフロキシム、セフォニシド、セフォラニド、セフォタキシム、モキサラクタム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾンなどがある。
【0143】
防腐剤は、微生物の成長または作用を、例えばその微生物の活性を抑制したり、その微生物を破壊したりすることにより、一般に非特異的に阻止または停止させる物質であると認識されている。防腐剤の具体例として、銀スルファジアジン、クロルヘキシジン、グルタルアルデヒド、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム、フェノール、フェノール化合物、ヨードフォア化合物、第四級アンモニウム化合物、塩素化合物などがある。
【0144】
抗ウイルス剤は、ウイルスの複製を破壊または抑制することのできる物質である。抗ウイルス剤の具体例として、α-メチル-1-アダマンタンメチルアミン、ヒドロキシ-エトキシメチルグアニン、アダマンタンアミン、5-ヨード-2'-デオキシウリジン、トリフルオロチミジン、インターフェロン、アデニンアラビノシドなどがある。
【0145】
酵素阻害剤は、酵素の反応を抑制する物質である。酵素阻害剤の具体例として、塩化エドロフォニウム、N-メチルフィゾスチグミン、臭化ネオスチグミン、硫酸フィゾスチグミン、タクリンHCl、タクリン、マレイン酸1-ヒドロキシ、ヨードツベルシジン、p-ブロモテトラミゾール、10-(α-ジエチルアミノプロピオニル)-フェノチアジン塩酸塩、塩化カルミダゾリウム、ヘミコリニウム-3,3,5-ジニトロカテコ-1、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤I、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤II、3-フェニルプロパルギルアミン、N-モノメチル-l-アルギニンアセテート、カルビドーパ、3-ヒドロキシベンジルヒドラジンHCl、ヒドラジンHCl、クロルギリンHCl、デプレニルHCl L(-)、デプレニルHCl D(+)、ヒドロキシルアミンHCl、リン酸イプロニアジド、6-MeO-テトラヒドロ-9H-ピリド-インドール、ニアラミド、パルギリンHCl、キナクリンHCl、セミカルバジドHCl、トラニルシプロミンHCl、N,N-ジエチルアミノエチル-2,2-ジ-フェニルバレレート塩酸塩、3-イソブチル-1-メチルキサンテン、パパベリンHCl、インドメタシン、2-シクロオクチル-2-ヒドロキシエチルアミン塩酸塩、2,3-ジクロロ-α-メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9-ジクロロ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-2-ベンズアゼピン塩酸塩、p-アミノグルテチミド、p-アミノグルテチミド酒石酸塩R(+)、p-アミノグルテチミド酒石酸塩S(-)、3-ヨードチロシン、α-メチルチロシンL(-)、α-メチルチロシンD(-)、セタゾラミド、ジクロルフェナミド、6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド、アロプリノールなどがある。
【0146】
解熱剤は、熱を緩和したり、熱を下げたりすることのできる物質である。抗炎症剤は、炎症に対抗したり、炎症を抑制したりすることのできる物質である。このような薬剤の具体例としては、アスピリン(サリチル酸)、インドメタシン、インドメタシンナトリウム三水和物、サリチルアミド、ナプロキセン、コルヒチン、フェノプロフェン、スリンダク、ジフルニサル、ジクロフェナク、インドプロフェン、ナトリウムサリチルアミドなどがある。
【0147】
局所麻酔薬は、局所的な領域に対して麻酔効果を有する物質である。このような麻酔薬の具体例としては、プロカイン、リドカイン、テトラカイン、ジブカインなどがある。
【0148】
造影剤は、望む部位(例えば生体内の腫瘍)を画像化することのできる物質である。造影剤の具体例としては、生体内で検出可能な標識を持つ物質(例えば蛍光標識を付けた抗体)などがある。抗体という用語には、抗体全体とそのフラグメントが含まれる。
【0149】
細胞応答調節剤は、血小板由来増殖因子(PDGF)などの走化性因子である。他の走化性因子としては、好中球活性化タンパク質、単球化学誘因タンパク質、マクロファージ-炎症タンパク質、SIS(分泌された小さな誘導性タンパク質)、血小板因子、血小板塩基性タンパク質、メラノーマ増殖刺激活性、上皮増殖因子、トランスフォーミング増殖因子α、線維芽細胞増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子、インスリン様増殖因子、神経増殖因子、骨増殖/軟骨誘導因子(αとβ)、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤などがある。他の細胞応答調節剤は、インターロイキン、インターロイキン受容体、インターロイキン阻害剤、インターフェロン(α、β、γ);造血因子(エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子など);腫瘍壊死因子(αとβ);トランスフォーミング増殖因子(β)(β-1、β-2、β-3、インヒビン、アクチビンと、これらのタンパク質のどれかを産生をコードしているDNAが含まれる)、アンチセンス分子、アンドロゲン受容体ブロッカー、スタチン剤である。
【0150】
一実施態様では、活性剤を微粒子にすることができる。一実施態様では、微粒子を基質の表面に分散させることができる。
【0151】
活性剤に寄与するコーティングの重量は、所定の用途において所定の活性剤にとって望ましい任意の範囲にすることができる。いくつかの実施態様では、活性剤に寄与するコーティングの重量は、器具の有効表面積1cm2につき活性剤が約1μg〜約10mgの範囲である。“有効”表面積とは、組成物そのものでコーティングできる表面を意味する。例えば平坦で孔のない表面に関しては、有効表面積れは一般にマクロな表面積そのものであるのに対し、かなり多くの孔がある表面や複雑な(例えば波状、ひだ状、繊維状の)表面に関しては、有効表面積は、対応するマクロな表面積よりも著しく大きくなる可能性がある。一実施態様では、活性剤に寄与するコーティングの重量は、器具の全表面積1cm2につき活性剤が約0.01mg〜約0.5mgである。一実施態様では、活性剤に寄与するコーティングの重量は、約0.01mgを超える。
【0152】
いくつかの実施態様では、2種類以上の活性剤をコーティング材料の一部として使用することができる。特に、補助剤または補助薬を使用できる。補助剤または補助薬は、第1の薬剤または薬と異なる作用を及ぼすことができる。補助剤または補助薬は、第1の薬剤または薬と異なる溶離プロファイルを持つことができる。
【0153】
いくつかの実施態様では、活性剤を親水性にすることができる。一実施態様では、活性剤は、分子量を5キロダルトン未満にし、25℃での水への溶解度を10mg/mlよりも大きくすることができる。いくつかの実施態様では、活性剤を疎水性にすることができる。一実施態様では、活性剤は、25℃での水への溶解度を10mg/ml未満にすることができる。
【0154】
本発明の範囲と精神を逸脱することなく、請求項に記載した本発明に対していろいろな変更や修正を施しうることが理解されよう。以下の実施例を参照してこれから本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0155】
コーティング装置
ロボット・アームに取り付けた超音波スプレー・ノズル(ソノテック社;ミルトン、ニューヨーク州)を有する自動化コーティング装置を使用し、ステンレス鋼製ステントにコーティングした。シリンジ・ポンプ(kdサイエンティフィック社、ニュー・ホープ、ペンシルヴェニア州)を用いてコーティング溶液をスプレー・ノズルに供給した。対をなすローラーに挟まれたギャップの上方で、ローラー対の上にある溝の中にステントを配置した。合計で6対のローラーをトレイに取り付け、コーティング領域に入れた。スプレー・ノズルが各ローラーの上を通過し、コーティング溶液をステント表面の狭いバンドに散布する。スプレー・ノズルがローラー#6の一端に到着すると、ローラー#1〜3が一定の角度回転し、ステントを回転させる。スプレー・ノズルがローラー#3の一端に到着すると、ローラー#4〜6が一定の角度回転する。コーティング装置の収容能力は約50ステントである。各ステントは長さが18mmである。
【実施例2】
【0156】
ベースコート材料
実施例1に記載したコーティング装置を用い、長さが18mmで直径が1.5mmのサイズのステントにベースコートを供給した。ステントの表面積に基づき、このベースコートの重量を、ステント1つにつき600〜660μgの範囲に選択した。コーティングを実施する前にステントを個別に計量した。ステントをローラー対の上に置き、ベースコート材料をステントの表面に堆積させた。
【0157】
濃度が1.67g/lのpBMA(ポリ(ブチルメタクリレート))と、濃度が1.67g/lのpEVA(ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル))と、濃度が1.67g/lの免疫抑制抗生剤とがテトラヒドロフランに溶けたコーティング溶液を調製した。ノズルからの溶液供給速度は0.15ml/分であり、ノズルの空気圧は2.5psiに維持し、超音波ノズルの電力は0.6ワットに設定した。ノズルの先端部からステントの表面までの距離は2〜3mmの範囲に調節し、ノズルがローラーの軸に沿って移動する速度は18cm/秒であった。
【0158】
一定角度回転機能が実施されている間のローラーの運動はランダムにし、1サイクルで周囲長3.7に対して1の割合で回転するパターンに設定した。要するに、ストライプ状のコーティング材料をステントの一部にスプレーした後、ステントをランダムに一定角度回転させてステントの別の部分を準備し、別のストライプ状のコーティング材料を付着させた。コーティング溶液を1回付着させてから次に付着させるまでは約15秒間である。1つのストライプごとに付着するコーティングの大まかな幅は1mmであった。135サイクルの一定角度回転とコーティングをステントに対して実施した。次に、最終コーティングを付着させた後、ステントを周囲条件下で少なくとも30分間にわたって乾燥させた。
【0159】
ステント上のコーティングが乾燥した後、コーティングされた各ステントを計量し、付着させたベースコートの量を明らかにする。図35に、このコーティング・プロセスの結果を示してある。図35から、付着させたベースコートの平均重量は635μg±19μgであり、ステントの92.0%が、ステント1つに付着させるコーティング材料が600〜660μgという目標とする範囲に入ったことがわかる。
【0160】
ステントごとに初期重量が異なるため、付着させるコーティングの量の精度も、ステントの初期重量をもとにして各ステントについて明らかにした。図36に結果が示してある。この結果から、図35に示した付着したコーティングの量の変動は主としてステントの初期重量の変動によるものであり、コーティング・プロセスの変動によるものではないことがわかる。図36から、(ステント上のコーティング可能な表面積の増大と相関する)ステントの初期重量が大きくなると、各ステントに付着されるコーティング材料の量も多くなることがわかる。このグラフによると、線に沿った点は、ステントの初期重量に基づいた目標とするコーティング重量を表わしている。データから、付着したコーティングの実際の重量が、平均として、個々のステントの初期重量に基づいた目標とする重量からのずれが0.31%を超えはしなかったことがわかる。
【0161】
図36に詳細に示した本発明のコーティング装置からの結果を従来の手動式コーティング装置から得られたコーティング結果と比較することにより、コーティングの精度の改善を評価した。図37に、初期重量と、各ステントにその初期重量に従って付着させたコーティング量の関係を示してある。データから、従来の手動式コーティング装置を用いると、付着したコーティングの実際の重量が、平均として、個々のステントの初期重量に基づいた目標とする重量から約1.55%ずれていたことがわかる。
【0162】
このデータは、本発明のコーティング装置を用いると、従来のコーティング装置と比較してコーティングの精度が約5倍向上することを示している。
【0163】
18mm×1.5mmのステントに関する他の製造ロットを、上記のパラメータを用いてベースコート材料でコーティングした。これら製造ロットからのステントの86.5〜95.4%が、ステント1つに付着させるコーティング材料が600〜660μgという目標とする範囲に入り、平均のベースコート重量は628〜630μg、標準偏差は20〜29μgであった。このデータは、本発明のコーティングの精度が、さまざまなコーティング装置を用いて再現できることを示している。
【0164】
コーティングされたステントを微視的に調べ、従来式のコーティングをされたステントよりも外観が一貫して優れていることが見いだされた。
【0165】
50個のステントに対する上記のコーティング手続きに要する作業時間を計算し、従来の手動式コーティング法と比較した。このコーティング・プロセスが終了するまでに必要な時間は、従来の手動式コーティング法と比べて約80%短くなった。
【0166】
この明細書と添付の請求項では、単数形の“1つの”や“その”には、内容から明確に違うことがわかる場合を除き、複数形も含まれることに注意されたい。したがって、例えば“1つの化合物”を含む組成物には、2種類以上の化合物の混合物が含まれる。“または”という用語は、一般に、内容から明確に違うことがわかる場合を除き、“および/または”が含まれることにも注意されたい。
【0167】
この明細書と添付の請求項では、“適した構成にされている”という表現は、特定の作業を実行するように構成されているか、特定の構成を採用したシステム、装置、または他の構造を指すことにも注意されたい。“適した構成にされている”という表現は、配置・構成されている、構成・配置されている、適した状態にされている、構成されている、製造・配置されているなどの他の似た表現と同じ意味で用いることができる。
【0168】
この明細書で取り上げたあらゆる刊行物と特許出願は、本発明が関係する当業者のレベルを示している。あらゆる刊行物と特許出願は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参考として説明されているかのように、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0169】
本発明をさまざまな特別な実施態様および好ましい実施態様を参照して説明してきた。しかし本発明の精神と範囲の中に留まりつつ、多くの変形や変更が可能であることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略断面図である。
【図2】コーティング装置の概略断面図であり、回転可能な器具が2つのローラー間のギャップから出ていく様子を示している。
【図3】2つのローラー間のギャップに位置している回転可能な器具と、2つのローラー間のギャップから出ていく回転可能な器具の上面図である。
【図4】コーティング装置の一実施態様の図である。
【図5】コーティング装置の別の一実施態様の図である。
【図6】トレーに取り付けられた2対のローラーの図である。
【図7】リブ構造を有するローラーの図である。
【図8】リブ構造を有するローラーのリブ部の図である。
【図9】リブ構造を有する一対のローラーの図である。
【図10】一対のローラーとスプレー・ノズルの一部の図である。
【図11】超音波ノズルの図である。
【図12】あるスプレー・パターンを有するスプレー・ノズルと、一対のローラーの一実施態様の図である。
【図13】あるスプレー・パターンを有するスプレー・ノズルと、一対のローラーと、回転可能な器具の一実施態様の図である。
【図14】コーティング溶液でコーティングされた回転可能な器具の一部の図である。
【図15】一対のローラーと、そのローラーの軸線に対して傾いたスプレー・ノズルの一部の図である。
【図16】あるスプレー・パターンを有するスプレー・ノズルと、一対のローラーの別の一実施態様の図である。
【図17】あるスプレー・パターンを有するスプレー・ノズルと、一対のローラーの別の一実施態様の図である。
【図18】比較例の図であり、あるスプレー・パターンを有するスプレー・ノズルと、一対のローラーが示してある。
【図19】二方向に一定角度回転運動をするローラーを備えるコーティング装置の概略断面図である。
【図20】本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略断面図である。
【図21】器具原位置保持部材を備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略断面図である。
【図22】本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略断面図であり、回転可能な器具が器具原位置保持部材と接触している状態を示している。
【図23】器具原位置保持部材を備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略上面図である。
【図24】器具原位置保持部材を備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略上面図である。
【図25】器具原位置保持部材を備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の側面図である。
【図26】回転可能な器具に空気流を向ける空気ノズルを備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略断面図である。
【図27】エア・ナイフを備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の上面図である。
【図28】本発明の一実施態様によるエア・ナイフの側方断面図である。
【図29】第1の立体配置にされた溶液供給部材を備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略断面図である。
【図30】図25のコーティング装置の概略上面図である。
【図31】第2の立体配置にされた溶液供給部材を備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略断面図である。
【図32】第3の立体配置にされた溶液供給部材を備える本発明の一実施態様によるコーティング装置の概略断面図である。
【図33】コーティング・ヘッドと溶液供給部材の斜視図である。
【図34】マスキング部材を備える本発明の一実施態様によるコーティング装置を上方から見た斜視図である。
【図35】付着させたコーティング材料の重量(Y軸)と、本発明のコーティング法で得られたステントの数(X軸)の関係を示すグラフである。
【図36】付着させたコーティング材料の重量(Y軸)と、本発明のコーティング装置を用いたコーティング法で得られたステントの初期重量(X軸)の関係を示すグラフである。
【図37】付着させたコーティング材料の重量(Y軸)と、従来のコーティング装置を用いたコーティング法で得られたステントの初期重量(X軸)の関係を示す比較例のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な医療器具の表面にコーティングするための装置であって、
少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれている器具回転装置と;
超音波スプレー・ノズルと;
上記ギャップと実質的に平行な平面の方向を向いた主軸を持つコーティング溶液供給部材とを備える装置。
【請求項2】
上記第1のローラーと上記第2のローラーの一方または両方が複数のリブを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
上記リブの形状が、上記ローラーの軸の近くでより広く、遠くでより狭い、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
上記スプレー・ノズルが移動可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
上記スプレー・ノズルが、上記第1のローラーまたは上記第2のローラーと平行な方向に移動可能である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
上記スプレー・ノズルが超音波処理部材を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
上記超音波処理部材が、ガス流のためのチャネルを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
上記ギャップが0.1mm〜10mmの範囲である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
上記ギャップが0.1mm〜1.5mmの範囲である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
上記医療器具の外径が1.5mm未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
上記スプレー・ノズルが先端部を備えており、その先端部が、そのスプレー・ノズルのうちで上記ギャップに最も近い部分であり、その先端部からそのギャップまでの距離が1〜10mmの範囲である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
上記コーティング溶液供給部材が、コーティング溶液供給源に通じるチューブを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
複数の医療器具をバッチ処理するのに適した構成にされている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
回転可能な医療器具の表面にコーティングするための装置であって、
少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれている器具回転装置と;
超音波スプレー・ノズルと;
コーティング溶液を上記ギャップと実質的に平行な流れにして供給するのに適した構成にされたコーティング溶液供給部材とを備える装置。
【請求項15】
回転可能な医療器具の表面にコーティングするための装置であって、
少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれている器具回転装置と;
コーティング材料のスプレーを発生させることができて、そのスプレーを上記ギャップに向ける構成にされたスプレー・ノズルと;
上記スプレー・ノズルに取り付けられたスプレー・ノズル支持部材と;
上記ローラーの少なくとも1つから回転可能な上記医療器具の直径よりも小さな距離離れた位置に配置された器具原位置保持部材とを備える装置。
【請求項16】
上記器具原位置保持部材が、上記ローラーの少なくとも1つと実質的に平行な平面内に配置されたワイヤを備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
上記スプレー・ノズルに取り付けられたスプレー・ノズル支持部材をさらに備えていて、上記器具原位置保持部材が、そのスプレー・ノズル支持部材に機能上関連した状態で接続されている、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
上記第1のローラーと上記第2のローラーの一方または両方が複数のリブを備える、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
上記リブの形状が、上記ローラーの軸の近くでより広く、遠くでより狭い、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
上記スプレー・ノズルが移動可能である、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
上記スプレー・ノズルが、上記第1のローラーまたは上記第2のローラーと平行な方向に移動可能である、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
上記スプレー・ノズルが超音波処理部材を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項23】
上記超音波処理部材が、ガス流のためのチャネルを備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
上記ギャップが0.1mm〜10mmの範囲である、請求項15に記載の装置。
【請求項25】
上記ギャップが0.1mm〜1.5mmの範囲である、請求項15に記載の装置。
【請求項26】
上記医療器具の外径が1.5mm未満である、請求項15に記載の装置。
【請求項27】
上記スプレー・ノズルが先端部を備えており、その先端部が、そのスプレー・ノズルのうちで上記ギャップに最も近い部分であり、その先端部からそのギャップまでの距離が1〜10mmの範囲である、請求項15に記載の装置。
【請求項28】
複数の医療器具をバッチ処理するのに適した構成にされている、請求項15に記載の装置。
【請求項29】
回転可能な医療器具の表面にコーティングするための装置であって、
少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられたリード・ローラーとトレーリング・ローラーが含まれている器具回転装置と;
あるスプレー・パターンになったコーティング材料のスプレーを発生させることのできるスプレー・ノズルとを備えており、そのスプレー・ノズルが、上記スプレー・パターンを上記ギャップに向ける構成にされていて、そのスプレー・パターンが、上記トレーリング・ローラーの方に偏向している装置。
【請求項30】
上記スプレー・ノズルが、上記リード・ローラーよりも上記トレーリング・ローラーに近くなるように配置されている、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
上記リード・ローラーと上記トレーリング・ローラーの一方または両方が複数のリブを備える、請求項29に記載の装置。
【請求項32】
上記リブの形状が、上記ローラーの軸の近くでより広く、遠くでより狭い、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
上記スプレー・ノズルが移動可能である、請求項29に記載の装置。
【請求項34】
上記スプレー・ノズルが、上記リード・ローラーまたは上記トレーリング・ローラーと平行な方向に移動可能である、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
上記スプレー・ノズルが超音波処理部材を備える、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
上記超音波処理部材が、ガス流のためのチャネルを備える、請求項33に記載の装置。
【請求項37】
上記ギャップが0.1mm〜10mmの範囲である、請求項29に記載の装置。
【請求項38】
上記ギャップが0.1mm〜1.5mmの範囲である、請求項29に記載の装置。
【請求項39】
上記医療器具の外径が1.5mm未満である、請求項29に記載の装置。
【請求項40】
上記スプレー・ノズルが先端部を備えており、その先端部が、そのスプレー・ノズルのうちで上記ギャップに最も近い部分であり、その先端部からそのギャップまでの距離が1〜10mmの範囲である、請求項29に記載の装置。
【請求項41】
複数の医療器具をバッチ処理するのに適した構成にされている、請求項29に記載の装置。
【請求項42】
回転可能な医療器具の表面にコーティングするための装置であって、
少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、ギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれている器具回転装置と;
あるスプレー・パターンになったコーティング材料のスプレーを発生させることができて、そのスプレーを上記ギャップに向ける構成にされたスプレー・ノズルと;
上記スプレー・ノズルに取り付けられたスプレー・ノズル支持部材と;
回転可能な上記医療器具を上記ギャップの方に押すのに有効な量の空気流を、上記第1のローラーと上記第2のローラーの一方または両方に向けるのに適した構成にされた空気源とを備える装置。
【請求項43】
上記第1のローラーがリード・ローラーを備え、上記第2のローラーがトレーリング・ローラーを備え、上記空気流が上記リード・ローラーに向けられている、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
上記空気源が、複数の穴が設けられた導管を備える、請求項42に記載の装置。
【請求項45】
上記導管が、上記一対のローラーと実質的に平行な部分を有する、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
上記空気源がエア・ナイフを備える、請求項42に記載の装置。
【請求項47】
上記空気源が空気ノズルを備える、請求項42に記載の装置。
【請求項48】
上記空気ノズルが、上記一対のローラーと平行な平面内を移動できる、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
上記第1のローラーと上記第2のローラーの一方または両方が複数のリブを備える、請求項42に記載の装置。
【請求項50】
上記リブの形状が、上記ローラーの軸の近くでより広く、遠くでより狭い、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
上記スプレー・ノズルが移動可能である、請求項42に記載の装置。
【請求項52】
上記スプレー・ノズルが、上記第1のローラーまたは上記第2のローラーと平行な方向に移動可能である、請求項51に記載の装置。
【請求項53】
上記スプレー・ノズルが超音波処理部材を備える、請求項42に記載の装置。
【請求項54】
上記超音波処理部材が、ガス流のためのチャネルを備える、請求項53に記載の装置。
【請求項55】
上記ギャップが0.1mm〜10mmの範囲である、請求項42に記載の装置。
【請求項56】
上記ギャップが0.1mm〜1.5mmの範囲である、請求項42に記載の装置。
【請求項57】
上記医療器具の外径が1.5mm未満である、請求項42に記載の装置。
【請求項58】
上記スプレー・ノズルが先端部を備えており、その先端部が、そのスプレー・ノズルのうちで上記ギャップに最も近い部分であり、その先端部からそのギャップまでの距離が1〜10mmの範囲である、請求項42に記載の装置。
【請求項59】
複数の医療器具をバッチ処理するのに適した構成にされている、請求項42に記載の装置。
【請求項60】
上記一対のローラーの上に配置されたマスキング部材をさらに備える、請求項42に記載の装置。
【請求項61】
小さな直径の医療器具をコーティングする方法であって、
a)小さな直径の医療器具から静電荷を除去するステップと;
b)少なくとも一対のローラーを備えていて、各対には、小さな直径の上記医療器具よりも広くはないギャップによって隔てられた第1のローラーと第2のローラーが含まれる器具回転装置の上にその医療器具を配置するステップと;
c)上記ギャップの方を向いたノズルからコーティング材料をスプレーすることにより、コーティング材料を直径が小さな上記医療器具の上に載せるステップを含む方法。
【請求項62】
上記除去ステップa)を、医療器具を配置する上記ステップb)の後に実施する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
上記除去ステップa)を、医療器具を配置する上記ステップb)の前に実施する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
小さな直径の医療器具から静電荷から除去する上記ステップa)が、小さな直径のその医療器具を、アースした導電体と接触させる操作を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
小さな直径の医療器具から静電荷を除去する上記ステップa)が、小さな直径のその医療器具に向けてイオン化装置から空気流を流す操作を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
小さな直径の医療器具から静電荷を除去する上記ステップa)が、導電性手袋を着けた状態で小さな直径のその医療器具を取り扱う操作を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
小さな直径の医療器具から静電荷を除去する上記ステップa)が、絶縁性手袋を着けない状態で小さな直径のその医療器具を取り扱う操作を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
上記ノズルを上記第1のローラーと平行な方向に移動させるステップをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項69】
コーティング材料を直径が小さな上記医療器具の上に載せる上記ステップc)と上記移動ステップを同時に実施する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
上記ノズルが超音波処理部材を備える、請求項61に記載の方法。
【請求項71】
上記超音波処理部材が、ガス流のためのチャネルを備える、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
上記コーティング材料に、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)とポリ(n-ブチルメタクリレート)からなるグループの中から選択した材料が含まれる、請求項61に記載の方法。
【請求項73】
上記コーティング材料に活性剤が含まれる、請求項61に記載の方法。
【請求項74】
回転可能な上記医療器具の周囲の湿度と温度の一方または両方を制御するステップをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項75】
小さな直径の上記医療器具が、外径が1.5mmを超えない円筒形である、請求項61に記載の方法。
【請求項76】
小さな直径の上記医療器具がステントである、請求項61に記載の方法。
【請求項77】
上記複数のステップをバッチ処理の一部として実施して複数の医療器具をコーティングする、請求項61に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公表番号】特表2008−517725(P2008−517725A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539079(P2007−539079)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/038628
【国際公開番号】WO2006/047617
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】