説明

ステージ装置

【課題】装置が大型化する場合であっても、ガイドレールを全長に亘って水平に保ち、移動体を安定的に移動させることができるステージ装置を提供する。
【解決手段】ガイドレール17をアジャストプレート25の取付面25aに固定し、高さ調節機構26によって、アジャストプレート25の高さ位置を調節することを可能とする。ガイドレール17の長手方向において、水平に保たれていない部分があった場合は、その部分の近くに設けられている高さ調節機構26の高さ調節ネジ27の締め込み量を調整することにより、トッププレート10に対するアジャストプレート25の高さ位置を調整し、これによって、ガイドレール17の高さ位置を精密に調整する。このような調整をガイドレール17の全長に亘って行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、大型の液晶ディスプレイ等の製造や検査に利用されるステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこのような分野の発明として、特開2006−49384号公報がある。この公報に記載されたステージ装置は、液晶ディスプレイのガラス基板などの対象物が載置される石定盤と、石定盤の両端で各々延在する一対のガイドベース(支持部材)と、ガイドベース上の直動案内軸受(ガイドレール)に案内されて対象物の上方で移動するガントリ部(移動体)とを備えている。
【特許文献1】特開2006−49384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、近年液晶ディスプレイ等の大型化によって対象物も大きくなる傾向にあるため、それらに伴い装置が大型化し、支持部材とガイドレールが長尺化してしまう。従って、上記ステージ装置にあっては、製造時において、ガイドレールを全長に亘って水平に保つことが困難となり、移動体を一定の高さ位置で安定的に移動させることができないという問題を生じる。また、例えば、ガイドレールをアジャストプレートに固定し、製造後に、アジャストプレートと支持部材との間にスペーサなどを配置することによってガイドレールの高さ位置を調整する場合は、精度良く高さ調整を行うことができず、ガイドレールを全長に亘って水平に保つことができないという問題を生じる。また、一枚一枚スペーサを入れて微調整するのは非常に難しく、手間がかかるという問題を生じる。
【0004】
本発明は、装置が大型化する場合であっても、ガイドレールを全長に亘って水平に保ち、移動体を安定的に移動させることができるステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るステージ装置は、長尺の支持部材の上方で支持部材の長手方向に沿ってガイドレールが延在し、ガイドレールに沿って移動体が案内されるステージ装置において、ガイドレールが固定される取付面を有すると共に、支持部材の上面で、高さ方向に移動可能に支持されるアジャストプレートと、アジャストプレートの高さ位置を調節すると共に、長手方向に沿ってアジャストプレートに複数設けられている高さ調節機構と、を備えることを特徴とする。
【0006】
このステージ装置では、ガイドレールがアジャストプレートの取付面に固定されており、そのアジャストプレートの高さ位置を調節する高さ調節機構が、支持部材の長手方向に沿ってアジャストプレートに複数設けられている。従って、高さ調節機構によるアジャストプレートの高さ位置の調節を、長手方向に沿って複数箇所で行うことができるため、ガイドレールの高さ位置の精密な調整を全長に亘って行うことができる。これによって、装置が大型化する場合であっても、ガイドレールを全長に亘って水平に保ち、移動体を安定的に移動させることができる。
【0007】
また、アジャストプレートの取付面には、移動体に設けられた読取手段によって読み取られる読取対象物が設置されることが好ましい。ガイドレールと共に読取対象物をアジャストプレートの取付面に設置することにより、読取対象物と移動体の読取手段との相対的な位置関係を変化させることなく、ガイドレールの高さ位置の調整を行うことができる。
【0008】
具体的には、読取手段は位置検出センサであり、読取対象物はリニアスケールである。
【0009】
また、高さ調節機構は、アジャストプレートに対して、螺着されると共に貫通する高さ調節ネジと、高さ調節ネジを上下方向に貫通して、支持部材に対して、螺着されると共に頭部で高さ調節ネジの上端に当接する固定ネジと、を有することが好ましい。アジャストプレートに対して貫通する高さ調節ネジの下端が支持部材と当接し、アジャストプレートと支持部材との間にギャップを形成するため、高さ調節ネジの締め込み量を調節することによって、容易にガイドレールの高さ位置の調整を行うことができる。更に、固定ネジが、高さ調節ネジを上下方向に貫通して、支持部材に対して、螺着されると共に頭部で高さ調節ネジの上端に当接することによって、高さ調節ネジを介してアジャストプレートを支持部材に固定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るステージ装置によれば、装置が大型化する場合であっても、ガイドレールを全長に亘って水平に保ち、移動体を安定的に移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるステージ装置の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示すように、ステージ装置1は、水平面内で互いに平行となるように並設された長尺の一対の支持部材2と、支持部材2の延在方向に沿って移動するように両端部がそれぞれ支持部材2で支持される移動体3とを備えている。移動体3には、例えば、加工装置や検査装置などが搭載される。
【0013】
支持部材2は、長手方向の両端部が脚部4,6で支持され、長手方向の略中央位置が脚部7で支持されている。また、支持部材2の下方には、脚部4と脚部7との間にXYステージ装置8が配置されている。このXYステージ装置8は、吸着盤9の上面に載置された対象物11を水平面内で移動させるものである。対象物11としては、液晶ディスプレイのガラス基板などが挙げられ、移動体3に搭載された加工装置や検査装置などによって、この対象物11に対して加工や検査がなされる。また、脚部6と脚部7との間の区間は、移動体3に搭載された装置のメンテナンス用のスペースとして用いられる。支持部材2の全長は6〜10m程度(図1における長さC)、支持部材2の脚部4と脚部7との間は3〜5m程度(図1における長さA)、支持部材2の脚部6と脚部7との間は3〜5m程度(図1における長さB)とされている。なお、請求項1における「高さ」とは、対象物11と移動体3に搭載された装置との相対距離を示す。
【0014】
図2に示すように、支持部材2は、支持部材2の水平方向側の短手方向で中空部材12,13,14を並設してすることによって形成されるガイドベース5と、ガイドベース5の上面5aに固定されるトッププレート10とを備えている。なお、「短手方向」とは、移動体3の移動方向と直交する方向である。ガイドベース5は、断面略長方形状の中空部材12,13,14のそれぞれの長辺側の外周面を接合面として、互いに連結することによって断面略正方形状に形成されている。具体的には、中空部材12,13,14は、中空部材12の側面壁12aと中空部材13の一方の側面壁13aとを面接触させると共に、中空部材13の他方の側面壁13bと中空部材14の側面壁14aとを面接触させた状態で、外周側のそれぞれの角部同士を溶接し、支持部材2の長手方向に沿って延在する溶接部15を形成することによって互いに連結されている。なお、各中空部材12,13,14は、複数本の部材を長手方向に連結させることにより長尺化させたものではなく、一本の長尺な部材であることが好ましい。これによって、支持部材2で支持されるガイドレール17やリニアスケール(読取対象物)16などの部品の長手方向の位置精度を確保することができる。
【0015】
ガイドベース5の上面5aには、ガイドベース5の略全長に亘って延在するトッププレート10が固定されている。トッププレート10は、隣接する中空部材12及び中空部材13に亘って固定されている。トッププレート10の上面10a(図3参照)には、トッププレート10と同形状のアジャストプレート25が、高さ方向へ調節可能に固定されている。このアジャストプレート25の上側の取付面25aには、移動体3の位置を測定するためのリニアスケール16と、移動体3をガイドするためのガイドレール17と、移動体3を移動させるためのリニアモータ18の固定子18aとが、支持部材2の長手方向に沿って延在するように取り付けられている。このアジャストプレート25の取付面25aは、位置精度が必要とされるリニアスケール16とガイドレール17とリニアモータ18の固定子18aとが取り付けられるため、製造時に高精度な平面加工がなされることによって十分な平面度が確保されている。
【0016】
支持部材2の上方を移動する移動体3には、アジャストプレート25の取付面25aと対向する連結板19が両端部に設けられており、この連結板19の下面には、移動可能にガイドレール17に嵌合されるスライダ20と、リニアスケール16と対向配置されて、リニアスケール16の目盛りを読み取ることによって移動体3の位置を検出する位置検出センサ(読取手段)21と、リニアモータ18の可動子18bとが取り付けられている。なお、位置検出センサ21としては、CCDカメラや光学式センサなど、いずれのセンサを適用してもよい。
【0017】
トッププレート10とアジャストプレート25には、アジャストプレート25の高さ位置を無段階で調節する高さ調節機構26が設けられている。この高さ調節機構26は、アジャストプレート25の長手方向に沿ってそれぞれ0.2〜0.3m程度の間隔で、ガイドレール17の両側に一対ずつ設けられている。
【0018】
図3に示すように、高さ調節機構26は、アジャストプレート25に対して、螺着されると共に貫通する高さ調節ネジ27と、高さ調節ネジ27をロックするロックナット28と、アジャストプレート25をトッププレート10に固定する固定ネジ29とを備えている。
【0019】
高さ調節ネジ27は、アジャストプレート25に形成された螺子孔25bを貫通しており、その下端部がトッププレート10の上面10aと当接することによってアジャストプレート25とトッププレート10との間にギャップを形成している。ギャップの大きさは高さ調節ネジ27の締め込み量によって無段階で調節可能であり、このギャップの分だけ、アジャストプレート25とリニアスケール16とガイドレール17とが上方へ移動する。このように、高さ調節ネジ27の締め込み量を調節することによって、容易にリニアスケール16とガイドレール17の高さ位置の調整を行うことができる。
【0020】
また、高さ調節ネジ27は、その中心位置に上端から下端へ延在する貫通孔27aを有しており、この貫通孔27aには固定ネジ29が挿通されている。固定ネジ29は、その下端側がトッププレート10に締め込まれると共に、その頭部の下面を高さ調節ネジ27の頭部の上面に当接させて支持することにより、高さ調節ネジ27を介してアジャストプレート25とトッププレート10とを固定している。
【0021】
なお、図2及び図3においては、一方の支持部材2及び移動体3の一端側のみが示されているが、他方の支持部材2及び移動体3の他端側も同様の構成である。
【0022】
以上によって、ステージ装置1では、ガイドレール17の長手方向において、水平に保たれていない部分があった場合は、その部分の近くに設けられている高さ調節機構26の高さ調節ネジ27の締め込み量を調整することにより、トッププレート10に対するアジャストプレート25の高さ位置を無段階で調整し、これによって、ガイドレール17の高さ位置を精度良く調整することができる。このような調整をガイドレール17の全長に亘って行う。これによって、装置が大型化する場合であっても、ガイドレール17を全長に亘って水平に保ち、移動体3を安定的に移動させることができる。
【0023】
特に、下方にXYステージ装置8などが配置されるタイプのステージ装置1においては、少なくとも脚部4と脚部7との間の区間で、XYステージ装置8を配置するためのスペースを支持部材2の下方に確保しなくてはならず、ガイドレール17の撓みや歪を抑制するための補強用の脚部やトラス構造などを、支持部材2の下方に設けることができない。従って、ガイドレール17の高さ位置を全長に亘って無段階で調整できる本発明は、ステージ装置1のようなタイプのステージ装置に特に有効である。
【0024】
また、アジャストプレート25の取付面25aに、ガイドレール17と共にリニアスケール16を設置することにより、リニアスケール16と移動体3の位置検出センサ21との相対的な位置関係を変化させることなく、ガイドレール17の高さ位置の調整を行うことができる。
【0025】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0026】
例えば、本実施形態においては、読取手段は位置検出センサ21であり、読取対象物はリニアスケール16であるが、これに代えて、読取対象物を検査用カメラとし、読取対象物を検査の対象となるガラス基板などの対象物としてもよい。また、読取対象物を検査用紙などとして、検査用紙に付着したインクの状態を検査用カメラで読み取る構成としてもよい。なお、読取対象物をガラス基板や検査用紙などとする場合は、アジャストプレートをステージ装置の内側へ延ばして対象物を載置できるような構成とする。
【0027】
また、支持部材2のガイドベース5は、中空部材12,13,14を用いて複数の部材から構成されているが、これに代えて、一本の中空の角材を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るステージ装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示すステージ装置の要部拡大斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…ステージ装置、2…支持部材、3…移動体、10a…上面、16…リニアスケール(読取対象物)、17…ガイドレール、21…位置検出センサ(読取手段)、25…アジャストプレート、25a…取付面、26…高さ調節機構、27…高さ調節ネジ、29…固定ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の支持部材の上方で当該支持部材の長手方向に沿ってガイドレールが延在し、前記ガイドレールに沿って移動体が案内されるステージ装置において、
前記ガイドレールが固定される取付面を有すると共に、前記支持部材の上面で、高さ方向に移動可能に支持されるアジャストプレートと、
前記アジャストプレートの高さ位置を調節すると共に、前記長手方向に沿って前記アジャストプレートに複数設けられている高さ調節機構と、を備えることを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記アジャストプレートの前記取付面には、前記移動体に設けられた読取手段によって読み取られる読取対象物が設置されることを特徴とする請求項1記載のステージ装置。
【請求項3】
前記読取手段は位置検出センサであり、前記読取対象物はリニアスケールであることを特徴とする請求項2記載のステージ装置。
【請求項4】
前記高さ調節機構は、
前記アジャストプレートに対して、螺着されると共に貫通する高さ調節ネジと、
前記高さ調節ネジを上下方向に貫通して、前記支持部材に対して、螺着されると共に頭部で前記高さ調節ネジの上端に当接する固定ネジと、を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載のステージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−241194(P2009−241194A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90090(P2008−90090)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】