説明

ステータおよび回転電機

【課題】この発明は、磁性体薄板材料から打ち抜かれた略円弧形の分割コア片の積層体を環状に配列するようにし、磁性体薄板材料の歩留まりを向上し、低コスト化が図られる放熱フィンを有するステータおよびそのステータを備える回転電機を得る。
【解決手段】分割ステータコア7A,7Bのそれぞれは、電磁鋼板を打ち抜いて作製され、かつ放熱フィン部が外周面の一部から径方向外方に延設された複数枚の略円弧形の分割コア片を、放熱フィン部が積層方向に重なるように積層して構成された分割コア体を周方向に突き合わせて環状に配列して構成される。ステータコア10は、放熱フィン部の積層体である放熱フィン14の位置が互いに周方向にずれた状態で複数の分割ステータコア7A,7Bを積層して構成され、放熱フィン14が積層方向に不連続に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放熱性の高いステータおよびそのステータを備える回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のステータコアは、磁性体薄板材料から打ち抜かれ、かつ外周の少なくとも一部分に凹凸状部が形成された略リング状のコア材料を、所定枚数毎に互いに凹凸状部の位置がずれた状態で積層して作製され、該凹凸状部が積層方向に不連続に配置されて放熱フィンを構成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−046942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のステータコアでは、コア材料が磁性体薄板材料から略リング状に打ち抜かれるので、コア材料を磁性体薄板材料の送り方向に最小の送りピッチで打ち抜いたとしても、コア材料の外周側および内周側の磁性体薄板材料の未使用部分が多くなり、材料歩留まりが低下し、ステータコアの低コスト化が図られない。さらに、放熱フィンを構成する凹凸状部がコア材料の外周に形成されているので、磁性体薄板材料の送りピッチが大きくなり、材料歩留まりがさらに低下し、ステータコアの低コスト化が図られない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、磁性体薄板材料から打ち抜かれた略円弧形の分割コア片の積層体を環状に配列するようにし、磁性体薄板材料の歩留まりを向上し、低コスト化が図られる放熱フィンを有するステータおよびそのステータを備える回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステータは、複数の分割ステータコアを積層して構成されるステータコアと、該ステータコアに巻装されたステータコイルと、を備えている。そして、上記複数の分割ステータコアは、それぞれ、磁性体薄板材料を打ち抜いて作製され、かつ放熱フィン部が外周面の一部から径方向外方に延設された複数枚の略円弧形の分割コア片を、該放熱フィン部が積層方向に重なるように積層して構成された分割コア体を周方向に突き合わせて環状に配列して構成されている。さらに、上記ステータコアは、上記放熱フィン部の積層体の位置が互いに周方向にずれた状態で上記複数の分割ステータコアを積層して構成され、該放熱フィン部の積層体が積層方向に不連続に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ステータコアが略円弧形の分割コア片により構成されているので、環状体を磁性体薄板材料から打ち抜く場合に比べ、材料歩留まりが高くなり、低コスト化が図られる。
また、分割コア片が略円弧形に構成されているので、分割コア片の内外径差を利用して、放熱フィン部を分割コア片の外周部に形成できる。そこで、分割コア片に放熱フィン部を設けることが磁性体薄板材料の順送りピッチの増大をもたらさないので、材料歩留まりをさらに高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態に係るステータコアを構成する分割コア片を示す正面図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係るステータコアを構成する第1分割ステータコアを示す正面図である。
【図3】この発明の一実施の形態に係るステータコアを構成する第2分割ステータコアを示す正面図である。
【図4】この発明の一実施の形態に係るステータコアの第1および第2分割ステータコアの積層状態を示す正面図である。
【図5】この発明の一実施の形態に係るステータコアを示す正面図である。
【図6】この発明の一実施の形態に係るステータコアの要部を示す斜視図である。
【図7】この発明の一実施の形態に係るステータコアを構成する分割コア片の製造方法を説明する平面図である。
【図8】この発明の一実施の形態に係るステータの構成を説明する要部断面図である。
【図9】この発明の一実施の形態に係るステータを備える回転電機を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係るステータコアを構成する分割コア片を示す正面図、図2はこの発明の一実施の形態に係るステータコアを構成する第1分割ステータコアを示す正面図、図3はこの発明の一実施の形態に係るステータコアを構成する第2分割ステータコアを示す正面図、図4はこの発明の一実施の形態に係るステータコアの第1および第2分割ステータコアの積層状態を示す正面図、図5はこの発明の一実施の形態に係るステータコアを示す正面図、図6はこの発明の一実施の形態に係るステータコアの要部を示す斜視図、図7はこの発明の一実施の形態に係るステータコアを構成する分割コア片の製造方法を説明する平面図、図8はこの発明の一実施の形態に係るステータの構成を説明する要部断面図、図9はこの発明の一実施の形態に係るステータを備える回転電機を模式的に示す側面図である。
【0010】
図1乃至図6において、分割コア片1は、磁性体薄板材料である、0.5mmの板厚の絶縁被覆された電磁鋼板を打ち抜いて作製され、中心角を120度とする円弧形のコアバック部2と、それぞれ、所定の周方向幅を有し、コアバック部2から径方向内方に延在して、周方向に等角ピッチに配列された複数のティース部3と、それぞれ、コアバック部2と隣り合うティース部3とにより画成された複数のスロット部4と、それぞれ、所定の周方向幅を有し、周方向に互いに離間してコアバック部2の外周面から径方向外方に延在する2つの放熱フィン部5と、を有する。この分割コア片1は、周方向の中央を通る直線に対して線対称の形状となっている。また、放熱フィン部5の外周面は、コアバック部2の円弧形の中心を軸心とする円筒面の一部により構成されている。
【0011】
第1分割ステータコア7Aは、図2に示されるように、10枚の分割コア片1を打ち抜き方向を揃えて積層して構成された分割コア体8を、周方向の端面同士を突き合わせて周方向に配列し、突き合わせ部を外周側から溶接して環状に作製されている。第2分割ステータコア7Bは、10枚の分割コア片1を打ち抜き方向を揃えて積層して構成された分割コア体8を、周方向の端面同士を突き合わせて周方向に配列し、突き合わせ部を外周側から溶接して環状に作製されている。第2分割ステータコア7Bは、このように第1分割ステータコア7Aと同一形状に構成されているが、図3に示されるように、第1分割ステータコア7Aに対して周方向に60度ずれるように向きを変えている。
【0012】
そして、ステータコア10は、図4に示されるように、互いに周方向に60度ずれるように向きを変えた第1および第2分割ステータコア7A,7Bを、交互に積層して構成されている。これにより、それぞれ10個の第1および第2分割ステータコア7A,7Bは、10枚の放熱フィン部5の積層体である放熱フィン14の位置が互いに周方向にずれた状態で積層され、放熱フィン14が積層方向に不連続に配置されている。
【0013】
さらに、ステータコア10の軸方向長さと同等の長さを有する断面円弧形の短冊状に作製された金属製のつなぎ板15が、図5および図6に示されるように、分割コア体8間の突き合わせ部を覆うように径方向外方からステータコア10の外周面に宛がわれ、ステータコア10に溶接されている。これにより、溶接部16が各つなぎ板15の周方向両側の位置にそれぞれ1条ずつ、軸方向の一端から他端に至るように延在される。そこで、積層方向に積層された多数枚の分割コア片1が、互いに、或いはつなぎ板15を介して溶接一体化される。
【0014】
このように構成されたステータコア10は、分割コア片1のコアバック部2、ティース部3、スロット部4が積層方向に連なってコアバック11、ティース12、スロット13を構成している。そして、10枚の放熱フィン部5を積層して5mmの軸方向厚みtに構成された放熱フィン14が、軸方向に10mmピッチで1列に配列されて、ステータコア10のコアバック11の外周面に、周方向に12列に配設されている。
【0015】
つぎに、分割コア片1の製造方法について説明する。
分割コア片1は、0.5mmの板厚の絶縁被覆された電磁鋼板の帯状体17を所定のピッチで順送りし、プレス機械にセットされた金型(図示せず)により打ち抜かれる。この時、最小順送りピッチは、図7に示されるように、引き続いて抜かれる分割コア片1の抜き穴1a間のコアバック部2aとティース部3aとの間の最小隙間A(例えば、3mm)により決められる。そして、順送りピッチを最小順送りピッチとすることにより、電磁鋼板の材料歩留まりが最大となる。この最小隙間Aは、電磁鋼板の剛性および厚み、金型形状などにより決められる。つまり、引き続いて抜かれる抜き穴1a間のコアバック部2aとティース部3aとの間の隙間が狭すぎると、プレス時の帯状体17の押えが不十分となり、打ち抜かれた分割コア片1に形状不良が発生する。
【0016】
そこで、放熱面積の大面積化、および電磁鋼板の材料歩留まり向上の観点から、引き続いて抜かれる抜き穴1a間の放熱フィン部5aとティース部3aとの間の隙間Bが最小隙間Aと等しくなるように、放熱フィン部5の形状を設定することが好ましい。即ち、隙間Bを最小隙間Aと等しくすることが、放熱フィン部5の高さhを最大とし、放熱面積の大面積化につながる。この放熱フィン部5の最大高さhは、ステータコア10の分割数および分割コア片1の内外径差(コアバック部2の外径とティース部3の内径との差)などにより決まる。
【0017】
本発明では、ステータコア10が略円弧形の分割コア片1により構成されているので、分割コア片1を周方向に連結した環状体を電磁鋼板の帯状体17から打ち抜く場合に比べ、材料歩留まりが高くなり、ステータコア10の低コスト化が図られる。
また、分割コア片1が略円弧形に構成されているので、分割コア片1の内外径差を利用して、放熱フィン部5をコアバック部2の外周部に形成できる。そこで、分割コア片1に放熱フィン部5を設けることが帯状体17の順送りピッチの増大をもたらさないので、材料歩留まりをさらに高くすることができる。
【0018】
また、金属製のつなぎ板15が、分割コア体8間の突き合わせ部を覆うように径方向外方からステータコア10に宛がわれ、ステータコア10に溶接されているので、積層された分割コア片1がつなぎ板15を介して連結され、ステータコア10の機械的強度が大きくなる。
【0019】
ここで、上述の説明では、10枚の分割コア片1を打ち抜き方向を揃えて積層して分割コア体8を作製するものとしているが、打ち抜き方向を揃えて積層された5枚の分割コア片1の第1の積層体に、打ち抜き方向を揃えて積層された5枚の分割コア片1の第2の積層体の表裏を反転させて積層して分割コア体8を作製してもよい。これにより、電磁鋼板の帯状体17の幅方向における板厚の偏差が平均化され、分割コア体8の周方向の両端部での積層方向の厚みがほぼ等しくなり、分割コア体8の突き合わせ部での段差の発生、第1および第2分割ステータコア7A,7B間での隙間の発生が抑えられる。
【0020】
つぎに、このステータコア10を用いたステータ21およびステータ21を備えた回転電機20の構成について図8および図9を参照しつつ説明する。
ステータ21は、ステータコア10の各ティース12に導体線を所定回巻回して形成されたステータコイル22を装着して、構成されている。そして、ステータ21は、ステータコア10のコアバック11の軸方向両端面が軸方向両側から第1および第2エンドカバー23、24に当接され、ボルト25の締め付けにより、第1および第2エンドカバー23,24の間に支持されている。そして、ロータが、図示していないが、第1および第2エンドカバー23,24に設けられた軸受に支持されて、ステータ21の内周側に回転自在に配設されている。
【0021】
このように構成された回転電機20では、ステータコア10が第1および第2エンドカバー23,24に内包されていないので、小型化が図られる。また、放熱フィン14がステータコア10に一体に構成されているので、ステータコイル22からステータコア10のティース12およびコアバック11を介して放熱フィン14に至る伝熱経路の熱抵抗が小さくなる。そこで、ステータコイル22での発熱は速やかに放熱フィン14に伝達され、放熱フィン14から外気に直接放熱されるので、ステータ21を嵌め込むケースに放熱フィンを構成する場合に比べ、冷却効果が高くなり、ステータ21の過度の温度上昇を確実に抑えることができる。
【0022】
なお、上記実施の形態では、電磁鋼板を打ち抜いて分割コア片を作製するものとしているが、分割コア片の材料は、電磁鋼板に限定されるものではなく、磁性体薄板材料であればよい。
また、上記実施の形態では、厚み0.5mmの電磁鋼板を用いるものとしているが、電磁鋼板の厚みは0.5mmに限定されるものではなく、例えば0.35mmでもよい。
【0023】
また、上記実施の形態では、分割コア片がステータコアを周方向に3分割した形状としているが、ステータコアの分割数は3分割に限定されるものではなく、分割コア片の積層作業や分割コア体の一体化作業の作業性を考慮して設定すればよく、例えば4分割や6分割でもよい。また、ステータコアの分割は、打ち抜き型が1種類で済み、部品点数が削減されることから、等分割することが好ましい。
【0024】
また、上記実施の形態では、ステータコアが、同一形状に構成された第1および第2分割ステータコアを互いに周方向に60度ずらして交互に積層して構成されているものとしているが、例えば、3つの分割ステータコアを互いに周方向に所定の角度ずらして交互に積層してもよい。
【0025】
また、上記実施の形態では、分割コア体が10枚の分割コア片を積層して構成されているものとしているが、分割コア片の積層枚数は10枚に限定されない。また、第1および第2分割ステータコアの分割コア体を構成する分割コア片の積層枚数がそれぞれ10枚となっているが、第1および第2分割ステータコアの分割コア体を構成する分割コア片の積層枚数を互いに異なるようにしてもよい。これらにより、放熱フィンの軸方向厚みtやピッチを任意に設定でき、放熱フィンによる冷却性能を変えることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 分割コア片、5 放熱フィン部、7A 第1分割ステータコア、7B 第2分割ステータコア、8 分割コア体、10 ステータコア、14 放熱フィン、15 つなぎ板、17 帯状体(磁性体薄板材料)、20 回転電機、21 ステータ、22 ステータコイル、23 第1エンドカバー、24 第2エンドカバー、25 ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割ステータコアを積層して構成されるステータコアと、該ステータコアに巻装されたステータコイルと、を備えるステータであって、
上記複数の分割ステータコアは、それぞれ、磁性体薄板材料を打ち抜いて作製され、かつ放熱フィン部が外周面の一部から径方向外方に延設された複数枚の略円弧形の分割コア片を、該放熱フィン部が積層方向に重なるように積層して構成された分割コア体を周方向に突き合わせて環状に配列して構成され、
上記ステータコアは、上記放熱フィン部の積層体の位置が互いに周方向にずれた状態で上記複数の分割ステータコアを積層して構成され、該放熱フィン部の積層体が積層方向に不連続に配置されていることを特徴とするステータ。
【請求項2】
つなぎ板が、上記分割コア体の周方向の突き合わせ部を覆うように上記ステータコアの外周面上に配設され、該ステータコアの外周面に溶接されて、積層された上記分割コア片を一体化していることを特徴とする請求項1記載のステータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のステータと、上記ステータを支持する第1および第2エンドカバーと、を備えた回転電機であって、
上記ステータは、上記ステータコアの軸方向両端面が軸方向両側から上記第1および第2エンドカバーに当接され、ボルトの締め付けにより、該第1および第2エンドカバーの間に支持されていることを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−66991(P2011−66991A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214445(P2009−214445)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】