説明

ストライプ塗工方法、装置、及びそれに用いる薄膜状部材

【課題】 作業者の熟練や複数の作業者を必要とせず、塗工液をウェブまたはシートに安定に供給することができ、所望の塗工/非塗工パターンに迅速かつ容易に対応することが出来るリップコータ型塗工装置を提供すること。
【解決手段】 本発明のリップコータ型塗工装置は、ノズルヘッド14の前後に相対向するように薄膜状部材42の送り出しロール17と巻き取りロール18とを設け、送り出しロール17から引き出された薄膜状部材42をノズルヘッド14の上端部に沿って張設して巻き取りロール18に巻き取らせ、巻き取りロール18をモータ27により回転させて薄膜状部材42をウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための、自動巻き取り機構を備えている。薄膜状部材42は、ウェブまたはシートの塗工部分を規定する所定のパターンで切り取られた少なくとも1つの開口部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートまたはウェブなどに塗工液をストライプ塗工するための方法、装置、及びそれに用いる薄膜状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、不織布、フィルム、ガーゼなどのシート(またはウェブ)を塗工液(例えば、粘着剤、塗料など)で連続的に塗工する場合、シートに非塗工部と塗工部とを交互に設ける、いわゆるストライプ塗工をすることがある。
【0003】
図7は、そのような場合に従来から使用されているリップコータ塗工装置101の斜視図である(但し、バックアップロールは示されていない。特許文献1を参照)。この図において、塗工液の供給部123と被塗工シート(不図示)との間に非塗工部分に対応するように短冊状に塗工阻止テープ122を設けることにより、塗工液が供給部から供給されても塗工阻止テープ122により阻止されて、その部分に対向する非塗工シートには塗工液が付着しない。なお、塗工液の供給部123は、バックアップロール(不図示)の下周面、ドクターエッジ113の前面、ノズルヘッド114の上面、液溜め壁116の後面、およびノズルヘッド114の両側部に配された隔壁115に囲まれて形成された液溜め室である。
【0004】
上記従来の塗工装置101では、塗工阻止テープ122が被塗工シートとの連続的な接触により摩耗することから、塗工阻止テープ122を新しいものと頻繁に交換しなければならないという問題があった。そのため、塗工阻止テープ122の使用寿命を延ばす措置として、上記従来技術では、塗工状態を目視確認しながら、両端をボルト124によって送り出しロール117(支持台119で回転自在に支持されている)および巻き取りロール118(支持台120で回転自在に支持されている)に取り付けられた塗工阻止テープ122を被塗工シートの流れ方向に、上記ロールを手動で回転させることによって移動させ、被塗工シートと接触していなかった新しい部分を被塗工シートに接触させるように適宜調節することを行っていた。
【0005】
しかし、上記塗工阻止テープ122の摩耗状態は装置の塗工速度や被塗工シートの表面性質などの違いによって異なること、および塗工状態を目視により確認していることから、塗工阻止テープ122の位置調節のタイミングを知るには作業者の熟練を要し、さらに手動でロール(117,118)を回転させるには複数の作業者を要するなどの問題があった。さらに、塗工阻止テープ122の位置を手動で調節する際、その前後で塗工液の塗布量が変わってしまい、塗工の安定性に欠けるという問題もあった。
【0006】
一方、塗工のパターン(すなわち、非塗工部分(または塗工部分)間の間隔)を変えたい場合には、図7において、送り出しロール119および巻き取りロール118に取り付けられている塗工阻止テープ122の位置を、各ロールの軸方向に沿って移動させる。このとき、複数のボルト取り付け位置125にボルト124によって塗工阻止テープ122の始端を取り付けることによってテープの位置を移動する仕組みになっていた。
【0007】
しかし、各塗工阻止テープを逐一ずらしてボルトで留めるというのは手間がかかるうえに、ボルトの取り付け位置125が予め定まっているため、塗工パターンの自由度が制限されてしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平7−275773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来技術の問題に鑑み、本発明は、被塗工シートまたはウェブなどにストライプ塗工する際に、作業者の熟練や複数の作業者を必要とせず、塗工液を塗布量を安定にして被塗工シートまたはウェブに供給することができる塗工方法および装置を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、種々の塗工/非塗工のストライプパターンに、迅速かつ容易に対応することが出来る塗工方法、装置、およびそれに用いるための薄膜シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、1つの局面において、バックアップロールの下方にドクターエッジを有するノズルヘッドを配し、上記ノズルヘッドから塗工液を圧力をかけて噴射して、上記バックアップロールの下周面を上記ノズルヘッドの前方から後方へ走行するウェブまたはシートに塗工するリップコータ型塗工装置を提供する。この塗工装置は、上記ノズルヘッドの前後に相対向するように塗工阻止テープの送り出しロールと巻き取りロールとを備え、上記送り出しロールから引き出された少なくとも1つの上記塗工阻止テープを上記ノズルヘッドの上端部に沿って張設して上記巻き取りロールに巻き取らせ、上記巻き取りロールをモータにより回転させて上記塗工阻止テープをウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための自動巻き取り機構を備えている。
【0011】
好ましい実施形態では、上記リップコータ型塗工装置はさらに、上記送り出しロールをモータにより回転させて上記塗工阻止テープをウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための、上記自動巻き取り機構と連動する自動送り出し機構を備えている。
【0012】
さらに好ましくは、上記自動巻き取り機構および上記自動送り出し機構は、サーボモータにより駆動される。
【0013】
本発明はまた、別の局面において、バックアップロールの下方にドクターエッジを有するノズルヘッドを配し、上記ノズルヘッドから塗工液を圧力をかけて噴射して、上記バックアップロールの下周面を上記ノズルヘッドの前方から後方へ走行するウェブまたはシートに塗工するリップコータ型塗工装置を提供する。このリップコータ型塗工装置は、上記ノズルヘッドの前後に相対向するように薄膜状部材の送り出しロールと巻き取りロールとを備え、上記送り出しロールから引き出された上記薄膜状部材を上記ノズルヘッドの上端部に沿って張設して上記巻き取りロールに巻き取らせ、上記巻き取りロールをモータにより回転させて上記薄膜状部材をウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための自動巻き取り機構を備えている。上記薄膜状部材は、ウェブまたはシートの塗工部分を規定する所定のパターンで切り取られた少なくとも1つの開口部を有する。
【0014】
好ましい実施形態では、上記リップコータ型塗工装置はさらに、上記送り出しロールをモータにより回転させて上記薄膜状部材をウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための、上記自動巻き取り機構と連動する自動送り出し機構を備えている。
【0015】
好ましくは、上記自動巻き取り機構および上記自動送り出し機構は、サーボモータにより駆動される。
【0016】
好ましくは、上記薄膜状部材は、2つ以上の開口部を有する。
【0017】
好ましくは、上記薄膜状部材は、薄膜シートである。
【0018】
好ましくは、上記薄膜シートは、ポリエステルフィルムシートである。
【0019】
好ましくは、上記薄膜状部材の移動速度は、被塗工ウェブまたはシートの長さに応じて変化する。
【0020】
好ましくは、上記薄膜状部材の移動速度は、約0.1〜約0.25mm/分の範囲である。
【0021】
好ましくは、上記リップコータ型塗工装置はさらに、上記薄膜状部材を、上記装置の作動中にウェブまたはシートの流れ方向へ手動で強制移動するための機構を備えている。
【0022】
好ましくは、上記リップコータ型塗工装置は、宅配タック紙のストライプ塗工に使用される。
【0023】
好ましくは、上記リップコータ型塗工装置は、小ロット製品のストライプ塗工に使用される。
【0024】
本発明はまたさらに別の局面において、上記リップコータ型塗工装置において使用するための薄膜状部材を提供する。
【0025】
本発明はまたさらに別の局面において、ストライプ塗工方法を提供する。この方法は、バックアップロールと、上記バックアップロールの下方にドクターエッジを有するノズルヘッドと、上記ノズルヘッドの前後に相対向するように薄膜状部材の送り出しロールと巻き取りロールと、上記巻き取りロールをモータで回転させる自動巻き取り機構とを備えたリップコータ型塗工装置において、上記薄膜状部材を上記送り出しロールと上記巻き取りロールとの間に上記ノズルヘッドの上端部に沿って張設する工程と、上記巻き取りロールを上記モータで回転させて、上記薄膜状部材を、上記バックアップロールに沿って走行する被塗工ウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させる工程と、上記ノズルヘッドから塗工液を圧力をかけて噴射して、上記非塗工ウェブまたはシートに塗工する工程とを包含し、上記薄膜状部材は、上記ウェブまたはシートの塗工部分を規定する所定のパターンで切り取られた少なくとも1つの開口部を有する。
【0026】
上記ストライプ塗工方法の好ましい実施形態では、さらに上記リップコータ型塗工装置が、上記送り出しロールをモータにより回転させて上記薄膜状部材をウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための、上記自動巻き取り機構と連動する自動送り出し機構を備え、上記方法は、上記巻き取りロールと上記送り出しロールとを上記自動巻き取り機構および上記自動送り出し機構とによって連動して回転させて上記薄膜状部材を被塗工ウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させる工程を包含する。
【0027】
好ましくは、上記薄膜状部材は、ポリエステルフィルムシートである。
【発明の効果】
【0028】
本発明のリップコータ型塗工装置または塗工方法によれば、薄膜状部材の位置移動のタイミング、移動量の調節において、作業者の熟練を必要とせず、また安定して塗工領域/非塗工領域を被塗工ウェブまたはシート上に形成し得る。
【0029】
さらに、本発明のリップコータ型塗工装置または塗工方法によれば、塗工速度やシートの表面性などの違いによる薄膜状部材の摩耗状態に応じて、薄膜状部材の移動速度を任意に調節し得る。そのため、薄膜状部材の使用寿命を効率的に延ばすことができ、薄膜状部材の取り替えの労力および材料費の削減に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るリップコータ型塗工装置は、巻き取りロールをモータにより回転させて塗工阻止テープをウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための自動巻き取り機構を備えている。以下、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリップコータ型塗工装置11の側面図である(但し、ロール17および18の回転軸を支持するための支持台19および20は示されていない)。図2は、本発明の第1の実施形態に係るリップコータ型塗工装置11の斜視図である(但し、バックアップロール12は示されていない)。
【0032】
図1および図2に示されるように、本発明の第1の実施形態に係るリップコータ型塗工装置11は、バックアップロール12、ドクターエッジ13、ノズルヘッド14、隔壁15、液溜め壁16、送り出しロール17、巻き取りロール18、支持台19、20、液溜め室23、塗工阻止テープ22、および自動巻き取り機構を備える。自動巻き取り機構は、典型的には、サーボモータ27、ギアヘッド28、コントローラ(不図示)、プーリ24、25、およびタイミングベルト26から構成される。
【0033】
塗工装置11を用いてシートS(またはウェブW)にストライプ塗工する場合、予め塗工阻止テープ22を、図2に示すようにノズルヘッド14の上に張設し、その両端を、支持台19および20によって支持された送り出しロール17および巻き取りロール18のロール面に、それぞれビニールテープのような市販の粘着テープを使用して固定する。塗工阻止テープ22は、目的に応じて、1つのみ使用してもよいし、2つ以上使用してもよい。使用する塗工阻止テープ22の幅ならびに塗工阻止テープ22の位置および間隔等は、目的のストライプパターンに応じて適宜設定する。
【0034】
送り出しロール17および巻き取りロール18は、ロールの回転軸のまわりに回転可能である。巻き取りロール18には、自動巻き取り機構が取り付けられており、サーボモータ27をコントローラ(不図示)を使用して一定の速度で回転させることで、ギアヘッド28を介して取り付けられた、サーボモータ27の回転軸と同軸のプーリ24が回転し、タイミングベルト26を介して巻き取りロール18の回転軸と同軸のプーリ25が回転し、それにより巻き取りロール18が回転する。送り出しロール17は、塗工阻止テープ22が巻き取りロール18に引っ張られるにしたがって回転する。このようにして、自動巻き取り機構により、塗工阻止テープ22の位置をバックアップロール12の前方から後方へ制御された速度で移動させることができる。なお、バックアップロール12の前方とは、バックアップロール12に対してバックアップロール12の下周面に巻き込まれていくシートSがある側をいい、バックアップロール12の後方とは、バックアップロール12に対してバックアップロール12の下周面から送り出された塗工されたシートSがある側のことをいうものとする。
【0035】
自動巻き取り機構のサーボモータ27の回転速度は、コントローラ(不図示)によって一定の速度に制御可能であるため、塗工阻止テープ22の移動速度を一定に保つことが可能である。自動巻き取り機構により制御される巻き取りロール18の回転速度(または塗工阻止テープ22の移動速度)は、被塗工シートSの長さ、塗工スピード、被塗工シートの種類、塗工量等に応じて当業者により適宜決定され得る。典型的には、塗工阻止テープ22の移動速度は、例えば、塗工阻止テープ22として38μm程度の厚さのポリエステルフィルムを使用する場合、約0.1mm/分〜約0.25mm/分の範囲の速度であることが好ましい。
【0036】
塗工液は、バックアップロール12の下周面、ドクターエッジ13、ノズルヘッド14、隔壁15、および液溜め壁16によって規定される液溜め室23に予め充填されている。シートS(またはウェブW)の塗工時には、バックアップロール12を回転させることによってバックアップロール12の前方から後方へシートSを走行させながら、シートSの下面に対して液溜め室23から塗工液を噴射する。その際、塗工量が予め設定した量になるように、定量ポンプ(不図示)を使用して、塗工スピードに合わせて定量ポンプの回転数を制御することによって定量の塗工液を送り出す。このとき、シートSの塗工阻止テープ22に対向する部分は、液溜め室23から噴射される塗工液が塗工阻止テープ22によって阻止されるため、塗工されない。結果として、シートSがストライプ塗工される。なお、シートSの走行速度は、塗工液の乾燥能力に依存して決定され、典型的には、170m/分であり、好ましくは、160m/分〜180m/分の範囲である。
【0037】
このように、本発明の第1の実施形態に係るリップコータ型塗工装置11によれば、自動巻き取り機構によって塗工阻止テープ22が連続的に一定速度でシートSの流れの向きに移動されるので、常にテープ22の新しい部分がシートSとの接触のために供給されることになり、テープ22の摩耗による破損を抑制できるとともに、テープ22の移動のタイミングを知るための作業者の熟練や、ロール17およびロール18を手動で回転させるための複数の作業者を必要としない利益が得られる。
【0038】
さらに、塗工速度やシートSの表面特性などの違いによる塗工阻止テープ22の摩耗状態に応じて、塗工阻止テープ22の移動速度を適宜調節し得るため、効率的に塗工阻止テープ22を使用することができる。それによって、塗工阻止テープ22の使用寿命を従来よりも有意に延ばすことができる。
【0039】
ところで、例えば、塗工阻止テープ22のシートSとの接触部分が部分的に不良であったり、汚れてしまった場合など、何らかの理由で塗工阻止テープ22のシートSとの接触部分を急遽変更させたい場合なども想定し得る。そのような場合に備えて、本実施形態に係るリップコータ型塗工装置11は、装置の作動中であっても、自動巻き取り機構にかかわらず、強制的に塗工阻止テープ22をシートSの流れ方向に手動で強制移動するための機構を備えていてもよい。そうすることで、緊急の場合に対処することができる。このような機構は、ロール18(またはロール17および18)と同軸のハンドル等を設けること等によって実現され得る。その際、シートSの流れ方向にのみ手動で回転できる(流れと逆方向には回転させ得ない)ようにしておくと安全である。
【0040】
本実施形態に係るリップコータ型塗工装置11は、典型的には、宅配タック紙、紙系タック紙、フィルム系タック紙などのストライプ塗工に使用され得るが、これらの用途に限定されない(以下の実施形態についても同様)。
【0041】
本実施形態に係るリップコータ型塗工装置11において使用され得る塗工液には、目的に応じて種々の塗工液が使用され得る。例えば、タック紙などの用途には、粘着剤が使用される。(以下の実施形態においても同様。)
【0042】
サーボモータ27、ギアヘッド28、およびコントローラとしては、当業者に周知の業者(例えば、住友重機械工業株式会社)から市販されているものを使用し得る。本実施形態では、モータとギアヘッドとが別々になっているものを使用したが、モータとギアヘッドとが一体化しているものも同様に使用し得る。ベルト26およびプーリ24、25からなる動力伝達機構も、市販のものを使用し得る。(以下の実施形態においても同様。)
【0043】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態のリップコータ型塗工装置において、さらに送り出しロール17についても自動送り出し機構を設けたリップコータ型塗工装置21を提供する。以下、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0044】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るリップコータ型塗工装置21の斜視図である(但し、バックアップロール12は示されていない)。
【0045】
図3に示されるように、本発明の第2の実施形態に係るリップコータ型塗工装置21は、送り出しロール17をサーボモータ33の駆動力により回転させる自動送り出し機構をさらに備えている点が、第1の実施形態とは異なっている。この自動送り出し機構は、典型的には、サーボモータ33、ギアヘッド34、コントローラ(不図示)、プーリ29、30、およびタイミングベルト32から構成される。第2の実施形態のその他の部分については、基本的に第1の実施形態と同様であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0046】
サーボモータ33をコントローラ(不図示)を使用して一定の速度で回転させることで、ギアヘッド34を介して、サーボモータ33の回転軸と同軸に取り付けられたプーリ30が回転し、タイミングベルト32を介して送り出しロール17の回転軸と同軸のプーリ29が回転し、それにより送り出しロール17が回転し、塗工阻止テープ22が巻き取りロール18側へ送り出される。
【0047】
第1の実施形態では、回転自在の送り出しロール17が、塗工阻止テープ22によって引っ張られることによって回転したが、第2の実施形態では、送り出しロール17は、サーボモータ33の動力によって回転する。したがって、塗工阻止テープ22が巻き取りロール18と送り出しロール17との間にかかる張力のために破損したりする危険性を減少させることができる。
【0048】
自動巻き取り機構および自動送り出し機構は、コントローラによって、それぞれ独立してロール18および17を任意の回転速度に調節し得るが、好ましくは、上記2つの機構は、共通のコントローラ(例えば、図6を参照)を使用すること等により、互いに連動して駆動される。それによって、テープ22の移動速度を一定に保つことができると同時に、送り出しロール17の動作が巻き取りロール18と連動しないことに起因する塗工阻止テープ22の破損などを防止することができる。
【0049】
本発明の第2の実施形態に係るリップコータ型塗工装置21によれば、第1の実施形態と同様、塗工阻止テープ22の位置を移動させるタイミングを計るのに作業者の熟練を必要とせず、また移動する際に作業者を必要としないという利点が得られる。
【0050】
さらに、塗工速度やシートSの表面性などの違いによる塗工阻止テープ22の摩耗状態に応じて、塗工阻止テープ22の移動速度を任意に調節し得るため、効率的に塗工阻止テープ22を使用し得る。その結果、塗工阻止テープ22の使用寿命が延びる。
【0051】
なお、本発明のリップコータ型塗工装置11または21の自動巻き取り機構または自動送り出し機構に使用され得るモータは、上記のようにロールの回転速度を制御しながら回転させることができるサーボモータおよびそれを制御するコントローラに限定されない。他の同様に使用し得る機構としては、インバータモータ、変速機などが含まれる。(以下の実施形態においても同様。)
【0052】
本実施形態のリップコータ型塗工装置21は、装置の作動中でも上記自動機構にかかわらず、強制的に塗工阻止テープ22を被塗工シートまたはウェブの流れ方向に手動で強制移動するための機構を備えていてもよい。それによって、緊急時に対応できるという利点が得られる。このような機構は、ロール17および18と同軸のハンドル等を設けること等によって実現され得る。
【0053】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態では、第1の実施形態に係るリップコータ型塗工装置において、短冊状の塗工阻止テープの代わりに、所定のパターンで切り取られた開口部を有する薄膜状部材を用いたリップコータ型塗工装置31を提供する。以下、図面を参照しながら、詳しく説明する。
【0054】
図4は、本発明の第3の実施形態に係るリップコータ型塗工装置31の斜視図である(但し、バックアップロール12は示されていない)。図5は、本発明の第3の実施形態に係るリップコータ型塗工装置31において使用される薄膜状部材42の一例を示す平面図である。
【0055】
図4に示されるように、本発明の第3の実施形態に係るリップコータ型塗工装置31は、塗工阻止テープ22の代わりに薄膜状部材42を用いる点が、第1の実施形態とは異なっている。
【0056】
本実施形態で用いる薄膜状部材42は、所定のパターンで切り取られた開口部を有する、ポリエステルなどの素材で作られた薄膜シートである。図5には、そのような開口部(図中、陰を付けた部分)を有する薄膜状部材42のバリエーションの一例が示されている。目的の製品によって所定のパターンの開口部を有する薄膜シートは、CAD(Computer aided design)などを利用してパターンを設計し、それに従って薄膜シートをカッティングすることによって作製することができる。そのため、用途に応じたいろいろなパターンのバリエーションに容易に対応することができる。特に、宅配タック紙などの場合、宅配会社ごとに異なるパターンの宅配タック紙の製造依頼があるため、製造業者としてはそのような依頼に迅速に対応できることは有利である。また、小ロット製品の場合は、頻繁に、ロット毎に異なるストライプのパターンの薄膜シートに交換するが、そのような場合にも上記のように薄膜状部材のパターンを容易に加工でき、しかも、薄膜シートのロールへの取り付けが簡単な本発明は、有利である。なお、本明細書中で、小ロット製品とは、通常、被塗工シートの全長が、約100,000m以下の長さのものをいうものとする。
【0057】
本発明で用いる薄膜状部材42は、摩擦抵抗が少なく、寸法安定性を有する素材であることが好ましく、金属、ポリエステルフィルム等であり得る。非塗工領域を被塗工シートまたはウェブの幅方向に複数個設ける場合などは、裁断加工の容易性等を考えて、薄膜状部材42は、ポリエステルフィルムのような合成樹脂であることが好ましい。本発明において使用し得る他の合成樹脂には、ポリイミド、アラミドなどが含まれる。
【0058】
本発明において使用する薄膜状部材42の厚さは、38μm程度であることが好ましいが、これに限定されず、最適な薄膜状部材42の厚さは、目的に応じて当業者が適宜設定し得る。好適な薄膜状部材42の厚さは、例えばポリエステルフィルムの場合、25μm〜75μmの範囲である。また、薄膜状部材42の大きさは、塗工装置および/または被塗工シートの大きさに依存して決定される。
【0059】
第3の実施形態に係るリップコータ型塗工装置は、自動巻き取り機構を備えているため、薄膜状部材42の位置調節のために、作業者を必要とせず、また作業者の熟練も必要としないという利点を有する。また、塗工速度やシートの表面性などの違いによる薄膜状部材42の摩耗状態に応じて、薄膜状部材42の移動速度を任意に調節し得る。それゆえ、効率的に薄膜状部材を使用し得、薄膜状部材の使用寿命の延長につながる。
【0060】
緊急時に対応するため、装置の作動中でも上記自動機構にかかわらず、強制的に薄膜シートを被塗工シートまたはウェブの流れ方向に手動で強制移動するための機構を備えていてもよい(第1の実施形態を参照)。
【0061】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態では、第3の実施形態において、さらに送り出しロール17を回転させるための自動送り出し機構を設けたリップコータ型塗工装置41を提供する。
【0062】
図6は、本発明の第4の実施形態に係るリップコータ型塗工装置41の斜視図である(但し、バックアップロール12は示されていない)。
【0063】
図6に示されるように、本発明の第4の実施形態に係るリップコータ型塗工装置41は、送り出しロール17をサーボモータ33の駆動力により回転させる自動送り出し機構をさらに備えている点が、第3の実施形態とは異なっている。さらに、図6に示す第4の実施形態は、自動巻き取り機構のサーボモータ27および自動送り出し機構のサーボモータ33を連動させ、速度調節するためのコントローラ35を備えている。
【0064】
自動送り出し機構については、第2の実施形態において説明したので、ここではその詳しい説明は省略する。
【0065】
薄膜状部材42については、第3の実施形態において説明したので、ここではその詳しい説明は省略する。
【0066】
第3の実施形態では、回転自在の送り出しロール17が、薄膜状部材42によって引っ張られることによって回転したが、第4の実施形態では、送り出しロール17は、サーボモータ33の動力によって回転するため、薄膜状部材42にかかる張力が抑えられ、薄膜状部材42が破損したりする危険性を減少させることができる。
【0067】
図6に示されるように、本発明の第4の実施形態に係るリップコータ型塗工装置41は、自動巻き取り機構および自動送り出し機構を制御するコントローラ35を備えている。コントローラ35は、スイッチ36、速度調節つまみ37、および速度表示部38を備えており、自動巻き取り機構および自動送り出し機構のそれぞれのサーボモータ27および33に電気的に接続されている。コントローラ35により、巻き取りロール18および送り出しロール17の回転速度はそれぞれ独立して調節できると同時に、ロール18および17は、互いに連動して駆動される。コントローラは、自動巻き取り機構および自動送り出し機構のそれぞれに別々のものを設けてもよいが、使用時にロール18および17が連動するように操作すべきである。
【0068】
このようにして、薄膜状部材42の移動速度を安定に保つことができると同時に、送り出しロール17の動作が巻き取りロール18と連動しないことに起因する薄膜状部材42の破損などを防止することができる。
【0069】
上記のように、本発明の第4の実施形態に係るリップコータ型塗工装置41によれば、薄膜状部材42は、自動巻き取り機構および自動送り出し機構によって制御された速度で連続的に送り出されるので、薄膜状部材42の移動のタイミングを計るのに作業者の熟練を必要とせず、また移動させるための作業者を必要としないという利点が得られる。
【0070】
さらに、塗工速度やシートSの表面性などの違いによる薄膜状部材42の摩耗状態に応じて、薄膜状部材42の移動速度を任意に調節し得るため、効率的に薄膜状部材42を使用し得る。その結果、薄膜状部材42の使用寿命が延びる。
【0071】
本実施形態のリップコータ型塗工装置41は、装置の作動中でも自動機構にかかわらず、強制的に薄膜状部材42を被塗工シートまたはウェブの流れ方向に手動で強制移動するための機構を備えていてもよい(第2の実施形態を参照)。それによって、緊急時に対応できるという利点が得られる。
【0072】
また、薄膜状部材42として、ポリエステルフィルムなどの薄膜シートを使用することにより、CADを利用してパターンを設計し、それに従ってカッティングできるため、用途に応じたいろいろなパターンのバリエーションに容易に対応できる。特に、宅配タック紙などにおいては、宅配会社ごとに異なるパターンの宅配タック紙の製造依頼があるため、製造業者としてはそのような依頼に迅速に対応できることは有利である。また、小ロット製品の場合は、通常、ロット毎に異なるストライプのパターンの薄膜シートに頻度に交換する必要が生じるが、そのような場合にも上記のように薄膜状部材のパターンを容易に加工でき、しかも、薄膜シートのロールへの取り付けが簡単な本発明は、有利である。
【実施例】
【0073】
本発明の第4の実施形態に従うリップコータ型塗工装置41において、図5に示すものと同様に設計された開口部を切り抜いた薄膜状部材を用いて、宅配タック紙用のストライプ塗工を行った。
【0074】
被塗工シートとしては、1,550mm幅で、3,000m長の小ロット宅配タック紙用剥離紙を用いた。被塗工シートの走行速度を、170m/分に設定した。塗工液には、市販品として入手可能なエマルジョン粘着剤を使用した。
【0075】
薄膜状部材として、片面マットのポリエステルフィルムシート(幅1,800mm×長さ510mm;厚さ38μm)を使用した。開口部のパターンをCADで作成し、それに従って、フィルムを切り取りとることによって準備した。
【0076】
巻き取りロールを回転させるために、インダクションモータ(製品番号:A9U90AH)およびギアヘッド(製品番号:G9BXH10H)(いずれも、住友重機械工業社製)を、プーリ/タイミングベルト機構と組み合わせて使用した。送り出しロールについても同様の機構を使用した。コントローラを両方のインダクションモータに接続してそれらの動作を同時に制御することによって、巻き取りロールおよび送り出しロールの動作を連動させると同時に、それらの回転速度を制御した。ポリエステルフィルムシートの移動速度が0.25mm/分となるように自動巻き取り/送り出し機構を設定した。
【0077】
結果は、被塗工シート上に安定な塗工/非塗工面を保持しながら、計130,000mの被塗工シートの連続塗工が可能であった。これは、図7に示すような従来技術のリップコータ型塗工装置で塗工阻止テープ(ポリエステルフィルム製、38μm厚)を使用した場合に、被塗工シート3,000m程度の連続塗工しかできなかったのに比較すると、格段にポリエステルフィルムシートの使用寿命が改善されたことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の塗工装置は、紙、不織布、フィルム、ガーゼなどの被塗工シートまたはウェブのストライプ塗工等に有用であり、特に、小ロットの宅配タック紙などのストライプ塗工に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリップコータ型塗工装置の側面図
【図2】本発明の第1の実施形態に係るリップコータ型塗工装置の斜視図
【図3】本発明の第2の実施形態に係るリップコータ型塗工装置の斜視図
【図4】平面図本発明の第3の実施形態に係るリップコータ型塗工装置の斜視図
【図5】本発明の第3および第4の実施形態に係るリップコータ型塗工装置において使用する薄膜状部材の一例を示す平面図
【図6】本発明の第4の実施形態に係るリップコータ型塗工装置の斜視図
【図7】従来技術によるリップコータ型塗工装置の斜視図
【符号の説明】
【0080】
11 本発明の第1の実施形態に係るリップコータ型塗工装置
12 バックアップロール
13 ドクターエッジ
14 ノズルヘッド
15 隔壁
16 液溜め壁
17 送り出しロール
18 巻き取りロール
19,20 支持台
21 本発明の第2の実施形態に係るリップコータ型塗工装置
22 塗工阻止テープ
23 液溜め室
24,25,29,30 プーリ
26,32 タイミングベルト
27,33 サーボモータ
28,34 ギアヘッド
31 本発明の第3の実施形態に係るリップコータ型塗工装置
35 コントローラ
36 スイッチ
37 速度調節つまみ
38 速度表示部
41 本発明の第4の実施形態に係るリップコータ型塗工装置
42 薄膜状部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックアップロールの下方にドクターエッジを有するノズルヘッドを配し、前記ノズルヘッドから塗工液を圧力をかけて噴射して、前記バックアップロールの下周面を前記ノズルヘッドの前方から後方へ走行するウェブまたはシートに塗工するリップコータ型塗工装置において、
前記ノズルヘッドの前後に相対向するように塗工阻止テープの送り出しロールと巻き取りロールとを設け、前記送り出しロールから引き出された少なくとも1つの前記塗工阻止テープを前記ノズルヘッドの上端部に沿って張設して前記巻き取りロールに巻き取らせ、
前記巻き取りロールをモータにより回転させて前記塗工阻止テープをウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための、自動巻き取り機構を備える、リップコータ型塗工装置。
【請求項2】
バックアップロールの下方にドクターエッジを有するノズルヘッドを配し、前記ノズルヘッドから塗工液を圧力をかけて噴射して、前記バックアップロールの下周面を前記ノズルヘッドの前方から後方へ走行するウェブまたはシートに塗工するリップコータ型塗工装置において、
前記ノズルヘッドの前後に相対向するように薄膜状部材の送り出しロールと巻き取りロールとを設け、前記送り出しロールから引き出された前記薄膜状部材を前記ノズルヘッドの上端部に沿って張設して前記巻き取りロールに巻き取らせ、
前記巻き取りロールをモータにより回転させて前記薄膜状部材をウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための、自動巻き取り機構を備え、
前記薄膜状部材は、前記ウェブまたはシートの塗工部分を規定する所定のパターンで切り取られた少なくとも1つの開口部を有する、リップコータ型塗工装置。
【請求項3】
前記薄膜状部材の移動速度は、被塗工ウェブまたはシートの長さに応じて変化する、請求項2に記載のリップコータ型塗工装置。
【請求項4】
前記薄膜状部材の移動速度は、約0.1〜約0.25mm/分の範囲である、請求項2または3に記載のリップコータ型塗工装置。
【請求項5】
さらに、前記薄膜状部材を、前記装置の作動中にウェブまたはシートの流れ方向へ手動で強制移動するための機構を備えている、請求項2〜4のいずれかに記載のリップコータ型塗工装置。
【請求項6】
バックアップロールと、
前記バックアップロールの下方にドクターエッジを有するノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドの前後に相対向するように薄膜状部材の送り出しロールおよび巻き取りロールと、
前記巻き取りロールをモータで回転させる自動巻き取り機構とを備えたリップコータ型塗工装置において、
前記薄膜状部材を前記送り出しロールと前記巻き取りロールとの間に前記ノズルヘッドの上端部に沿って張設する工程と、
前記巻き取りロールを前記モータで回転させて、前記薄膜状部材を、前記バックアップロールに沿って走行する被塗工ウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させる工程と、
前記ノズルヘッドから塗工液を圧力をかけて噴射して、前記非塗工ウェブまたはシートに塗工する工程とを包含し、
前記薄膜状部材は、前記ウェブまたはシートの塗工部分を規定する所定のパターンで切り取られた少なくとも1つの開口部を有する、ストライプ塗工方法。
【請求項7】
さらに前記リップコータ型塗工装置が、前記送り出しロールをモータにより回転させて前記薄膜状部材をウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させるための、前記自動巻き取り機構と連動する自動送り出し機構を備え、
前記方法は、前記巻き取りロールと前記送り出しロールとを前記自動巻き取り機構および前記自動送り出し機構とによって連動して回転させて前記薄膜状部材を被塗工ウェブまたはシートの走行方向に連続して微速で移動させる工程を包含する、請求項6に記載のストライプ塗工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−26558(P2006−26558A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210556(P2004−210556)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】