説明

ストラットマウント

【課題】車体とサスペンションのショックアブソーバのピストンロッドとの間に介在するストラットマウントにおいて、走行安定性を維持しながら、乗り心地を向上させる。
【解決手段】ストラットマウント1は、ピストンロッド3に取り付けられる内側部材10と、この内側部材10を取り囲むように設けられた外側部材11と、内側部材10と外側部材11との間に設けられたゴム弾性体12とを備える。このゴム弾性体12を、天然ゴムからなる天然ゴム部13と、シリコーンゴムからなるシリコーンゴム部14とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体とサスペンションのショックアブソーバのピストンロッドとの間に介在するストラットマウントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体とサスペンションのショックアブソーバのピストンロッドとの間に介在するストラットマウントが従来技術として知られている。以下、特許文献1により従来のストラットマウントについて説明する。
【0003】
特許文献1に示すストラットマウントは、内側金具と外側金具との間に介在する環状の弾性部材を備える。内側金具はフランジ部を備え、外側金具は、筒部と、その軸方向両端部において弾性部材を軸方向にて挟圧する上側壁部及び下側壁部とを備える。弾性部材は、フランジ部の上面と上側壁部の下面との間で挟圧保持される上側弾性部と、フランジ部の下面と下側壁部の上面との間で挟圧保持される下側弾性部と、両者を繋ぐ環状の縦壁部とからなる。上側弾性部と下側弾性部は、発泡ウレタンにより別々に成形されていて、内側金具と外側金具との間で一体に組み立てられる。そして、路面からの振動がストラットマウントに入力されると、弾性部が弾性変形することにより、その振動がストラットマウントで吸収され、振動が車体に伝達されるのが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のものの弾性部材を天然ゴムのみからなるゴム弾性体で構成することが考えられる。このように弾性部材を天然ゴムのみからなるゴム弾性体で構成すると、高い走行安定性を実現することができる。
【0006】
しかしながら、天然ゴムのみからなるゴム弾性体で構成すると、優れた乗り心地を実現することができないという課題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車体とサスペンションのショックアブソーバのピストンロッドとの間に介在するストラットマウントにおいて、走行安定性を維持しながら、乗り心地を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、車体とサスペンションのショックアブソーバのピストンロッドとの間に介在するストラットマウントであって、上記ピストンロッドに取り付けられる内側部材と、上記内側部材を取り囲むように設けられた外側部材と、上記内側部材と上記外側部材との間に設けられたゴム弾性体とを備えており、上記ゴム弾性体は、天然ゴムからなる天然ゴム部と、シリコーンゴムからなるシリコーンゴム部とで構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
これによれば、ゴム弾性体を、天然ゴムからなる天然ゴム部と、シリコーンゴムからなるシリコーンゴム部とで構成しているので、振動伝達率を低下させることができ、走行安定性を維持しながら、高周波の微振動時に発生する所謂「ビリビリ感」や「ゴツゴツ感」を抑制することができるなど、乗り心地を向上させることができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記シリコーンゴム部は、上記内側部材及び上記外側部材のいずれか一方にのみ接するように設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、シリコーンゴム部を、内側部材及び外側部材のいずれか一方にのみ接するように設けているので、走行安定性の維持及び乗り心地の向上を確実に図ることができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記内側部材は、上記ピストンロッドが挿通取付される内側筒部と、該内側筒部の上端部に径方向外側に張り出すように形成された内側鍔部とを有しており、上記外側部材は、上記内側筒部を取り囲むように設けられた外側筒部と、該外側筒部の上端部に径方向外側に張り出すように形成された外側鍔部と、上記外側筒部の下端部に径方向内側に延びるように形成された環状の底部と、上記外側鍔部の上面上に重ね合わされ、上記外側鍔部とともに上記車体に取り付けられる環状の環部とを有しており、上記ゴム弾性体は、上記内側鍔部を覆いかつ上記外側筒部、上記底部及び上記環部に包まれるように筒状に設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
これによれば、上記のような構成のストラットマウントにおいて、走行安定性を維持しながら、乗り心地を向上させることができる。
【0014】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記シリコーンゴム部は、上記環部に接するように上記内側鍔部よりも上側に設けられており、上記天然ゴム部は、上記外側筒部及び上記底部に接するように上記シリコーンゴム部の下側に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
これによれば、シリコーンゴム部を、環部に接するように内側鍔部よりも上側に設けるとともに、天然ゴム部を、外側筒部及び底部に接するようにシリコーンゴム部の下側に設けているので、走行安定性の維持及び乗り心地の向上を確実に図ることができる。
【0016】
第5の発明は、上記第3の発明において、上記シリコーンゴム部は、上記底部に接するように上記内側鍔部よりも下側に設けられており、上記天然ゴム部は、上記外側筒部及び上記環部に接するように上記シリコーンゴム部の上側に設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、シリコーンゴム部を、底部に接するように内側鍔部よりも下側に設けるとともに、天然ゴム部を、外側筒部及び環部に接するようにシリコーンゴム部の上側に設けているので、走行安定性の維持及び乗り心地の向上を確実に図ることができる。
【0018】
第6の発明は、上記第3の発明において、上記シリコーンゴム部は、上記環部に接するように上記内側鍔部よりも上側に設けられた第1シリコーンゴム部と、上記底部に接するように上記内側鍔部よりも下側に設けられた第2シリコーンゴム部とで構成されており、上記天然ゴム部は、上記外側筒部に接するように上記第1シリコーンゴム部の下側にかつ上記第2シリコーンゴム部の上側に設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
これによれば、シリコーンゴム部を、環部に接するように内側鍔部よりも上側に設けられた第1シリコーンゴム部と、底部に接するように内側鍔部よりも下側に設けられた第2シリコーンゴム部とで構成するとともに、天然ゴム部を、外側筒部に接するように第1シリコーンゴム部の下側にかつ第2シリコーンゴム部の上側に設けているので、走行安定性の維持及び乗り心地の向上を確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ゴム弾性体を、天然ゴムからなる天然ゴム部と、シリコーンゴムからなるシリコーンゴム部とで構成しているので、振動伝達率を低下させることができ、走行安定性を維持しながら、乗り心地を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るストラットマウントの断面図である。
【図2】図1に示すストラットマウントの変形例の断面図である。
【図3】図1に示すストラットマウントの別の変形例の断面図である。
【図4】図1に示すストラットマウントのまた別の変形例の断面図である。
【図5】図1に示すストラットマウントのまた別の変形例の断面図である。
【図6】図1に示すストラットマウントとは構成が相違するボルトレスタイプのストラットマウントの断面図である。
【図7】図6に示すストラットマウントの変形例の断面図である。
【図8】図6に示すストラットマウントの別の変形例の断面図である。
【図9】図6に示すストラットマウントのまた別の変形例の断面図である。
【図10】実施例及び比較例のストラットマウントに入力される入力波形を示す図である。
【図11】実施例1及び比較例のストラットマウントの、入力荷重と振動伝達率との関係を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るストラットマウントの断面図を示しており、このストラットマウント1は、車体パネル2とサスペンションのショックアブゾーバのピストンロッド3の間に介在していて、路面からの振動が車体パネル2に伝達されるのを抑制するようになっている。
【0024】
ストラットマウント1は、ピストンロッド3の上端部に取り付けられる金属製の内側部材10と、この内側部材10を取り囲むように設けられた金属製の外側部材11と、内側部材10と外側部材11との間に設けられて両部材10,11を連結するゴム弾性体12とを備えている。
【0025】
内側部材10は、軸方向が上下方向に略一致するように設けられた円筒状の内側筒部10aと、この内側筒部10aの上端部に径方向外側に張り出すように一体に形成された円環状の内側鍔部10bとを有している。内側筒部10aの中央部には円状の中空部10cが形成されており、この中空部10cにはピストンロッド3が挿通取付される。内側鍔部10bは、その肉厚が内側筒部10aよりも厚くなっている。
【0026】
外側部材11は、内側部材10の内側筒部10aを取り囲むように該内側筒部10aと同軸に設けられた円筒状の外側筒部11aと、この外側筒部11aの上端部に径方向外側に張り出すように一体に形成された円環状の外側鍔部11bと、外側筒部11aの下端部に径方向内側に延びるように一体に形成された円環状の底部11cと、外側鍔部11bの上面上に重ね合わされ、外側鍔部11bとともに車体パネル2に取り付けられる円環状の環部11dとを有している。
【0027】
底部11cの中央部には円状の開口11eが形成されており、この開口11eには内側部材10の内側筒部10aが挿通されている。底部11cの下側には、バウンドストッパ(不図示)を保持する保持部材11fが設けられており、この保持部材11fは有蓋円筒状に形成されている。その蓋部11gの中央部には円状の開口11hが形成されており、この開口11hには内側筒部10aが挿通されている。
【0028】
環部11dは、外側筒部11a、外側鍔部11b及び底部11cとは別体であって、該環部11dの外周側の外周部11iと、この外周部11iの内周側から下側に落ち込んでなる環部11dの内周側の内周部11jとを有している。外周部11iは、外側鍔部11bの上面上に重ね合わされていて、外側鍔部11bとともに車体パネル2にボルト4及びナット(不図示)で締結固定されている。内周部11jは、外側筒部11aの上端開口を覆うように配置されている。内周部11jの中央部には円状の開口11kが形成されており、この開口11kにはピストンロッド3が挿通される。
【0029】
ゴム弾性体12は、内側部材10の内側鍔部10bを覆いかつ外側部材11における外側筒部11a、底部11c及び環部11dの内周部11jに包まれるように略円筒状に設けられていて、底部11cの上面と内周部11jの下面との間に上下方向に挟圧保持され、内側部材10の内側筒部10aとの間に隙間が形成されている。ゴム弾性体12における内側鍔部10bよりも上側部分の内周面は、下側に行くに従って縮径する一方、その外周面は、下側に行くに従って拡径している。ゴム弾性体12における内側鍔部10bよりも下側部分の内周面は、下側に行くに従って拡径している。
【0030】
また、ゴム弾性体12は、天然ゴムからなる天然ゴム部13と、硬度が該天然ゴムよりも低いシリコーンゴムからなるシリコーンゴム部14とで、上下方向に層状に構成されている。その構成の詳細を、以下説明する。シリコーンゴム部14は、外側部材11における環部11dの内周部11jの下面に接するように内側部材10の内側鍔部10bよりも上側に設けられていて、天然ゴム部13とは別体であり、該天然ゴム部13と非接着の状態になっている。つまり、シリコーンゴム部14は、内側部材10及び外側部材11のうち外側部材11にのみ接するように設けられている。一方、天然ゴム部13は、外側部材11における外側筒部11aの内周面及び底部11cの上面に接するようにシリコーンゴム部14の下側に連続して設けられていて、内側部材10の内側鍔部10bに加硫接着されている。天然ゴム部13は、その厚さがシリコーンゴム部14よりも厚くなっている。
【0031】
そして、車両の走行時に路面からの振動がサスペンションに入力されると、その振動がそこで吸収される。それから、サスペンションで吸収しきれなかった振動がストラットマウント1に入力されると、ゴム弾性体12が弾性変形することにより、その振動がストラットマウント1で吸収され、振動が車体パネル2に伝達されるのが抑制される。
【0032】
ここで、本実施形態によれば、ゴム弾性体12を、天然ゴムからなる天然ゴム部13と、シリコーンゴムからなるシリコーンゴム部14とで構成しているので、振動伝達率を低下させることができ、走行安定性を維持しながら、高周波の微振動時に発生する所謂「ビリビリ感」や「ゴツゴツ感」を抑制することができるなど、乗り心地を向上させることができる。
【0033】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、シリコーンゴム部14を、外側部材11における環部11dの内周部11jの下面に接するように内側部材10の内側鍔部10bよりも上側に設ける一方、天然ゴム部13を、外側部材11における外側筒部11aの内周面及び底部11cの上面に接するようにシリコーンゴム部14の下側に連続して設けているが、これに限らず、例えば、天然ゴム部13及びシリコーンゴム部14を図2〜図5に示すように設けてもよい。
【0034】
図2では、シリコーンゴム部14を、外側部材11における外側筒部11aの下側の内周面及び底部11cの上面に接するように内側部材10の内側鍔部10bよりも下側に設ける一方、天然ゴム部13を、外側部材11における外側筒部11aの上側の内周面及び環部11dの内周部11jの下面に接するようにシリコーンゴム部14の上側に連続して設ける。その他の点に関しては、上記実施形態とほぼ同様の構成である。
【0035】
図3では、シリコーンゴム部14を、外側部材11における環部11dの内周部11jの下面に接するように内側部材10の内側鍔部10bよりも上側に設けられた第1シリコーンゴム部14aと、外側部材11における外側筒部11aの下側の内周面及び底部11cの上面に接するように内側鍔部10bよりも下側に設けられた第2シリコーンゴム部14bとで構成する一方、天然ゴム部13を、外側部材11における外側筒部11aの上側の内周面に接するように第1シリコーンゴム部14aの下側にかつ第2シリコーンゴム部14bの上側に連続して設ける。そして、天然ゴム部13の厚さを第1及び第2シリコーンゴム部14a,14bよりも厚くする。その他の点に関しては、上記実施形態とほぼ同様の構成である。
【0036】
図4では、シリコーンゴム部14を、外側部材11における環部11dの内周部11jの下面、外側筒部11aの内周面及び底部11cの上面に接するように断面略コ字状に設ける一方、天然ゴム部13を、シリコーンゴム部14の内側に連続して設ける。このように、ゴム弾性体12は、天然ゴム部13及びシリコーンゴム部14で径方向に層状に構成されている。その他の点に関しては、上記実施形態とほぼ同様の構成である。
【0037】
図5では、シリコーンゴム部14を、内側部材10の内側鍔部10bの外周側を覆いかつ外側部材11における環部11d内周部11jの外周側の下面、外側筒部11aの内周面及び底部11cの外周側の上面に接するように設ける一方、天然ゴム部13を、内側鍔部10bの内周側を覆いかつ内周部11jの内周側の下面及び底部11cの内周側の上面に接するようにシリコーンゴム部14の内側に連続して設ける。このように、ゴム弾性体12は、天然ゴム部13及びシリコーンゴム部14で径方向に層状に構成されている。その他の点に関しては、上記実施形態とほぼ同様の構成である。
【0038】
図2〜図5のストラットマウントによれば、上記実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
【0039】
また、図1〜図5に示すストラットマウント1のゴム弾性体12のシリコーンゴム部を天然ゴム部と、天然ゴム部をシリコーンゴム部としてもよい。これによれば、上記実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
【0040】
さらに、上記実施形態では、ストラットマウント1を図1等に示すものとしているが、これに限らず、例えば、図6〜図9に示すボルトレスタイプのものとしてもよい。このボルトレスタイプのものの基本構成の詳細を、以下説明する。
【0041】
ボルトレスタイプのストラットマウント101は、車体パネル102とピストンロッド103との間に介在していて、車体パネル102に非締結状態で取り付けられる。具体的には、ストラットマウント101は、車体パネル102に上側に窪むように形成された凹部102aに嵌入取付される。この凹部102aの底部102bの中央部には円状の開口102cが形成されており、この開口102cにはピストンロッド103が挿通される。
【0042】
ストラットマウント101は、ピストンロッド103の上端部に取り付けられる金属製の内側部材110と、この内側部材110を取り囲むように設けられた金属製の外側部材111と、内側部材110と外側部材111との間に設けられて両部材110,111を連結するゴム弾性体112とを備えている。
【0043】
内側部材110は、軸方向が上下方向に略一致するように設けられた円筒状の筒部110aと、この筒部110aの上端部に径方向内側に延びるように一体に形成された円環状の上側環部110bと、筒部110aの下端部に径方向外側に張り出すように一体に形成された鍔部110cとを有している。筒部110aは、下側に行くに従って拡がるテーパ状に形成されている。上側環部110bの中央部には円状の開口110dが形成されており、この開口110dにはピストンロッド103が挿通取付される。上側環部110bの下側には円環状の下側環部110eが設けられている。この下側環部110eの中央部には円状の開口110fが形成されており、この開口110fにはピストンロッド103が挿通される。
【0044】
外側部材111は、内側部材110の筒部110aを取り囲むようにゴム弾性体112に該筒部110aと同軸に埋設されていて、下側に行くに従って拡がるテーパ状に形成されている。
【0045】
ゴム弾性体112は、内側部材110における筒部110aの外周面及び鍔部110cの上面から外方に向かって放射状に拡がり、かつ斜め上方向に延びるように略円錐台状に形成されており、その上側部分は、上方に向かって開口している。ゴム弾性体112の外周面は、ストラットマウント101の車体パネル102への取付状態では、車体パネル102の凹部102aの内面に弾性接触する。
【0046】
また、ゴム弾性体112は、天然ゴムからなる天然ゴム部113と、硬度が該天然ゴムよりも低いシリコーンゴムからなるシリコーンゴム部114とで構成されている。
【0047】
図6〜図9のストラットマウント101の、ゴム弾性体112の構成の詳細を、以下説明する。
【0048】
図6では、ゴム弾性体112を、天然ゴム部113及びシリコーンゴム部114で外方にかつ斜め上方向に層状に構成する。つまり、シリコーンゴム部114を、外側部材111を覆いかつ車体パネル102の凹部102aの内面に接するように設けて、下側に行くに従って拡がるテーパ状に形成する一方、天然ゴム部113を、内側部材110における筒部110aの外周面及び鍔部110cの上面に接するようにシリコーンゴム部114の斜め下側に連続して設けて、下側に行くに従って拡がるテーパ状に形成する。
【0049】
図7では、ゴム弾性体112を、天然ゴム部113及びシリコーンゴム部114で上下方向に層状に構成する。つまり、シリコーンゴム部114を、外側部材111の上側を覆いかつ車体パネル102の凹部102a上側の内面に接するように内側部材110の上側環部110bよりも上側に設ける一方、天然ゴム部113を、外側部材111の下側を覆いかつ内側部材110における筒部110aの外周面及び鍔部110cの上面並びに凹部102aの下側の内面に接するようにシリコーンゴム部114の下側に連続して設ける。
【0050】
図8では、ゴム弾性体112を、天然ゴム部113及びシリコーンゴム部114で上下方向に層状に構成する。つまり、シリコーンゴム部114を、外側部材111を覆いかつ内側部材110における筒部110aの上側の外周面及び車体パネル102の凹部102aの内面に接するように内側部材110の上側環部110bよりも上側からその下側まで設ける一方、天然ゴム部113を、内側部材110における筒部110aの下側の外周面及び鍔部110cの上面に接するようにシリコーンゴム部114の下側に連続して設ける。
【0051】
図9では、ゴム弾性体112を、天然ゴム部113及びシリコーンゴム部114で内方にかつ斜め上方向に層状に構成する。つまり、シリコーンゴム部114を、外側部材111の上側を覆いかつ内側部材110における筒部110aの上側の外周面及び車体パネル102における凹部102aの上側の内面に接するように設けて、上側に行くに従って拡がるテーパ状に形成する一方、天然ゴム部113を、外側部材111の下側を覆いかつ内側部材110における筒部110aの下側の外周面及び鍔部110cの上面並びに凹部102aの下側の内面に接するようにシリコーンゴム部114の斜め下側に連続して設けて、上側に行くに従って拡がるテーパ状に形成する。
【0052】
図6〜図9のストラットマウント101によれば、上記実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
【0053】
また、図6〜図9に示すストラットマウント101のゴム弾性体112のシリコーンゴム部を天然ゴム部と、天然ゴム部をシリコーンゴム部としてもよい。これによれば、上記実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
【0054】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0055】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【実施例】
【0056】
以下、本発明に係るストラットマウントを具体的に説明する。
【0057】
<ストラットマウント>
実施例1〜4のストラットマウントとして、図1に示すものを準備した。
【0058】
実施例1〜4の天然ゴム部の天然ゴムとして、反発弾性が66%、硬さ(JIS−A)が55°、静的ばね定数Ksが66.31N/mm、静動比αが1.57、1.39、損失係数tanδが0.075、0.041のものを用いた。
【0059】
尚、反発弾性は、温度が25℃で測定し、静的ばね定数Ksは、所定のテストピースを用いて、圧縮方向に0.8±0.2mm(3〜5%)間で測定した。静動比αは、前者が加振周波数が30Hz、加振振幅が±0.1mmで測定し、後者が加振周波数が50Hz、加振振幅が±0.1mmで測定した。損失係数tanδは、前者が加振周波数が30Hz、加振振幅が±0.1mmで測定し、後者が加振周波数が50Hz、加振振幅が±0.1mmで測定した。これらの測定条件は、以下に示す反発弾性、静的ばね定数Ks、静動比α及び損失係数tanδについても同様とする。
【0060】
実施例1のシリコーンゴム部のシリコーンゴムとして、反発弾性が64%、硬さ(JIS−A)が45°、静的ばね定数Ksが44.8N/mm、静動比αが1.31、1.21、損失係数tanδが0.078、0.076のものを用いた。
【0061】
実施例2のシリコーンゴム部のシリコーンゴムとして、反発弾性が64%、硬さ(JIS−A)が23°、静的ばね定数Ksが17.2N/mm、静動比αが1.32、1.30、損失係数tanδが0.047、0.104のものを用いた。
【0062】
実施例3のシリコーンゴム部のシリコーンゴムとして、反発弾性が70%、硬さ(JIS−A)が34°、静的ばね定数Ksが29.3N/mm、静動比αが1.26、1.19、損失係数tanδが0.087、0.111のものを用いた。
【0063】
実施例4のシリコーンゴム部のシリコーンゴムとして、反発弾性が70%、硬さ(JIS−A)が39°、静的ばね定数Ksが34.1N/mm、静動比αが1.30、1.24、損失係数tanδが0.084、0.071のものを用いた。
【0064】
以上のように、実施例1〜4のシリコーンゴム部のシリコーンゴムとして、静動比αが比較的低いものを用いた。
【0065】
一方、比較例のストラットマウントとして、ゴム弾性体が天然ゴムのみからなり、これ以外については図1に示すものと同様のものを準備した。
【0066】
比較例のゴム弾性体の天然ゴムとして、実施例1〜4の天然ゴム部の天然ゴムと同様のものを用いた。
【0067】
<評価>
実施例1〜4及び比較例のストラットマウントに対して、以下に示す評価を行った。つまり、所定の試験機を用いて、ストラットマウントの内側部材に、図10に示す三角波を入力波形として入力し、外側部材に伝達された応答荷重を測定した。そして、内側部材に入力した入力変位δiと静的ばね定数とに基づき入力荷重を換算し、応答荷重の入力荷重に対する比を求めて振動伝達率を算出した。さらに、入力変位δiを変更し、振動伝達率を算出した。そして、これを繰り返した。
【0068】
<評価結果>
図11は、実施例1及び比較例のストラットマウントの、入力荷重と振動伝達率との関係を示す折れ線グラフである。図11の実線が、実施例1のものの、入力荷重と振動伝達率との関係を示すものであり、破線が、比較例のものの、入力荷重と振動伝達率との関係を示すものである。これらから明らかなように、実施例1のものは、比較例のものよりも、振動伝達率が入力荷重の全域において低下した。
【0069】
尚、図11では、実施例2〜4のストラットマウントの、入力荷重と振動伝達率との関係を示していないが、実施例1のストラットマウントの、入力荷重と振動伝達率との関係と同様の特徴を示した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明にかかるストラットマウントは、走行安定性を維持しながら、乗り心地を向上させることが必要な用途等に適用できる。
【符号の説明】
【0071】
1,101 ストラットマウント
2,102 車体パネル
3,103 ピストンロッド
10,110 内側部材
10a 内側筒部
10b 内側鍔部
11,111 外側部材
11a 外側筒部
11b 外側鍔部
11c 底部
11d 環部
12,112 ゴム弾性体
13,113 天然ゴム部
14,114 シリコーンゴム部
14a 第1シリコーンゴム部
14b 第2シリコーンゴム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体とサスペンションのショックアブソーバのピストンロッドとの間に介在するストラットマウントであって、
上記ピストンロッドに取り付けられる内側部材と、
上記内側部材を取り囲むように設けられた外側部材と、
上記内側部材と上記外側部材との間に設けられたゴム弾性体とを備えており、
上記ゴム弾性体は、天然ゴムからなる天然ゴム部と、シリコーンゴムからなるシリコーンゴム部とで構成されていることを特徴とするストラットマウント。
【請求項2】
請求項1記載のストラットマウントにおいて、
上記シリコーンゴム部は、上記内側部材及び上記外側部材のいずれか一方にのみ接するように設けられていることを特徴とするストラットマウント。
【請求項3】
請求項1又は2記載のストラットマウントにおいて、
上記内側部材は、上記ピストンロッドが挿通取付される内側筒部と、該内側筒部の上端部に径方向外側に張り出すように形成された内側鍔部とを有しており、
上記外側部材は、上記内側筒部を取り囲むように設けられた外側筒部と、該外側筒部の上端部に径方向外側に張り出すように形成された外側鍔部と、上記外側筒部の下端部に径方向内側に延びるように形成された環状の底部と、上記外側鍔部の上面上に重ね合わされ、上記外側鍔部とともに上記車体に取り付けられる環状の環部とを有しており、
上記ゴム弾性体は、上記内側鍔部を覆いかつ上記外側筒部、上記底部及び上記環部に包まれるように筒状に設けられていることを特徴とするストラットマウント。
【請求項4】
請求項3記載のストラットマウントにおいて、
上記シリコーンゴム部は、上記環部に接するように上記内側鍔部よりも上側に設けられており、
上記天然ゴム部は、上記外側筒部及び上記底部に接するように上記シリコーンゴム部の下側に設けられていることを特徴とするストラットマウント。
【請求項5】
請求項3記載のストラットマウントにおいて、
上記シリコーンゴム部は、上記底部に接するように上記内側鍔部よりも下側に設けられており、
上記天然ゴム部は、上記外側筒部及び上記環部に接するように上記シリコーンゴム部の上側に設けられていることを特徴とするストラットマウント。
【請求項6】
請求項3記載のストラットマウントにおいて、
上記シリコーンゴム部は、上記環部に接するように上記内側鍔部よりも上側に設けられた第1シリコーンゴム部と、上記底部に接するように上記内側鍔部よりも下側に設けられた第2シリコーンゴム部とで構成されており、
上記天然ゴム部は、上記外側筒部に接するように上記第1シリコーンゴム部の下側にかつ上記第2シリコーンゴム部の上側に設けられていることを特徴とするストラットマウント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−84175(P2011−84175A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238703(P2009−238703)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】