説明

ストラット型サスペンション取り付け構造

【課題】取り付けスペースの確保を必要とせず、スプリングハウスの頂部の剛性を向上させ、経時劣化を防ぎ、走行安定性を確保できるストラット型サスペンション取り付け構造を提供する。
【解決手段】ストラット型のサスペンションと対向する車体の壁部材8に基端が溶着され上方に突き出す胴部21と該胴部の上端に外周縁部が溶着された蓋状部材22とから成るスプリングハウスを備え、サスペンションのストラット31の上端に取り付けられた取付用フランジ33を蓋状部材22の下面に重ねてボルト締結するようにしたストラット型サスペンション取り付け構造において、蓋状部材22は取付用フランジ33を下面に重ねた中央重合部35より外周縁223が下位置となるよう形成され、かつ、該中央重合部35と外周縁223とが傾斜壁225で連続形成された、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内側壁に突設されたプリングハウスの上端内部にストラット型サスペンションの上端を締結するようにしたストラット型サスペンション取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両はその車体前部の左右両側に左右車輪からの路面反力を緩衝支持すると共に左右車輪を操舵可能に支持するストラット型のフロントサスペンションを用いるものがある。この種のフロントサスペンションで用いる左右のストラットはその上部に取付用フランジを取り付け、これを左右のスプリングハウスの頂部部材の内側に締結し、ストラットに伝わる路面反力をスプリングハウスを介して車体側に分散し支持している。
例えば、図9(a)、(b)に示すように、ストラット150のピストンロッド151の上端には取付フランジ130が取り付けられ、これがスプリングハウス110の頂部の蓋状部材120の下面に締結される。このスプリングハウス110は蓋状部材120とその下端側の胴部140を備え、この胴部を介して車体側壁面に溶着支持される。
【0003】
この蓋状部材120の中央部121にはピストンロッド151の上端の取付用フランジ130が締結されており、ストラット150のピストンロッド151の上部の取付フランジ130から上下方向の路面反力Tsが中央部121に加わり、その荷重がスプリングハウス110を介して車体に分散支持されている。
この際、蓋状部材120の中央部121で取付フランジ130から上下方向の路面反力Tsを受ける中央重合部123は蓋状部材120の周縁の外周縁部122に対してスプリングハウス110の中心線L1の方向に弾性的に曲げ変位する。
この要因としては、中央重合部123の中央にはピストンロッド151との干渉を避ける中央貫通穴124が形成されており、中央重合部123の剛性が外周縁部より低いという点と、中央部121が中心線L1の方向において外周縁部122とほぼ同位置にあり、外周縁部122に対して曲げ変位し易い点にある。
【0004】
ここで、中央重合部123の剛性は中央重合部123の下面に重なる取付用フランジ130の締結により低減でき、中央貫通穴124の周縁部に環状に屈曲フランジを延出形成することでも低減できるが、外周縁部122に対する中央重合部123の曲げ変位を確実に抑制することはできない。
なお、特許文献1にはエンジンルームの内側壁に突設された砲塔部の上端のスプリングサポートを反転した平皿状に形成し、そのスプリングサポートの車幅方向外側部分を延出して接続部を設け、その端部を内壁上端のエプロンメンバに突き当て溶着し、あるいは、スプリングサポートの後方部分を延出して接続部を設け、その端部をカウルトップ側に突き当て溶着し、それぞれ蓋状のスプリングサポートの剛性強化を図っているが、スプリングサポートの形状が複雑化し、大型化し、コスト増、重量増を招いている。
【0005】
更に、蓋状部材120の中央部121の剛性、特に、中央部121の外周縁部122に対する中心線の方向における曲げ剛性が低いという点を解消するため、例えば、図10(a)に示すように蓋状部材120の中央部121の上面にストラッドタワーバーの端部に形成された肉厚のリング部材140を重ね、下面側の取付用フランジ130と共締めして中央部121の剛性強化を図っている。更に、リング部材170に代えて、図10(b)に示すように、後方側のカウルトップ190の一部より前方に延出するエクステンションカウルトップ180を追加して中央部121の剛性強化を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3592137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10(a)や図10(b)のように、蓋状部材の中央部121をリング部材170やエクステンションカウルトップ180で補強した場合、追加する部品点数が増え、取り付けスペースの追加確保の必要があり、コスト増、重量増を招いてしまう。
しかも、中央部121へのリング部材170やエクステンションカウルトップ180の締結状態が経時的に緩むと、蓋状部材の中央部121の曲げ変形が生じてしまい、経時的には、蓋状部材の中央部121の経時劣化が進むこととなる。
【0008】
本発明は以上のような課題に基づきなされたもので、目的とするところは、取り付けスペースの確保を必要とせず、過度のコスト増を招くことなく、スプリングハウスの頂部の剛性を向上させ、経時劣化を防ぎ、走行安定性を確保できるストラット型サスペンション取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1の発明は、車載のストラット型のサスペンションと対向する車体側の壁部材に基端が溶着され上方に突き出す胴部と該胴部の上端に外周縁部が溶着された蓋状部材とから成るスプリングハウスを備え、前記サスペンションのストラットの上端に取り付けられた取付用フランジを前記蓋状部材の下面に重ねてボルト締結するようにしたストラット型サスペンション取り付け構造において、前記蓋状部材は前記取付用フランジを下面に重ねた中央重合部より前記外周縁が下位置となるよう形成され、かつ、該中央重合部と前記外周縁とが傾斜壁で連続形成された、ことを特徴とする。
【0010】
本願請求項2の発明は、請求項1記載のストラット型サスペンション取り付け構造において、前記ストラット型のサスペンションは車体前部のエンジンルームに配備され、前記スプリングハウスの胴部はエンジンルームの内壁部材より突き出し形成された、ことを特徴とする。
【0011】
本願請求項3の発明は、請求項2記載のストラット型サスペンション取り付け構造において、前記蓋状部材はその車幅方向外側部が延出部として突き出し形成され、車幅方向外側に位置するエンジンルーム内壁部材に一体的に結合される、ことを特徴とする。
【0012】
本願請求項4の発明は、請求項1記載のストラット型サスペンション取り付け構造
において、前記蓋状部材の傾斜部にはビードが傾斜方向に沿って形成された、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、蓋状部材の中央重合部より外周縁が下位置となり、かつ、中央重合部と外周縁とが傾斜壁で連続形成されたので形状剛性が強化される。このため、上下方向のストラット荷重が取付用フランジより中央重合部に伝達され、その周囲の傾斜壁を経て外周縁の上端部に伝達され車体側に分散され、その際、傾斜壁には引っ張りまたは圧縮荷重が繰り返し加わるが中央重合部の外周縁に対する相対的な上下変位は抑制され、中央重合部の経時劣化が抑制され、走行安定性が確保される。
【0014】
請求項2の発明は、エンジンルームに配備されたスプリングハウスの蓋状部材の場合も、その中央重合部より外周縁が下位置となり、中央重合部と外周縁とが傾斜壁で連続形成されることで、中央重合部の形状剛性が強化され、中央重合部の経時劣化が抑制され、走行安定性が確保される。
【0015】
請求項3の発明は、エンジンルームに配備されたスプリングハウスの蓋状部材が、車幅方向外側に位置するエンジンルーム内壁部材に延出部を介して一体的に結合されることで、蓋状部材の形状剛性が強化され、走行安定性が確保される。
【0016】
請求項4の発明は、互いに離れて傾斜方向に沿って形成されたビードが傾斜部及び中央重合部を強化でき、蓋状部材の経時劣化が抑制され、走行安定性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態としてのストラット型サスペンション取り付け構造が適用された車両の前側要部車体の平面図である。
【図2】図1の車両の左右スプリングハウスの正面図である。
【図3】図1の車両のスプリングハウスの蓋状部材の拡大斜視図である。
【図4】図1の車両のスプリングハウスの蓋状部材の平面図である。
【図5】図4のスプリングハウスのA−A線断面図である。
【図6】図4のスプリングハウスのB−B線断面図である。
【図7】図4のスプリングハウスを示し、(a)は車幅方向中央側からの側面図、(b)は前方からの側面図である。
【図8】第2実施形態としてのスプリングハウスを示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図9】従来スプリングハウスの蓋状部材を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図10】従来スプリングハウスの蓋状部材に補強部材を加えた場合の概略断面図を示し、(a)は第1従来例を、(b)は第2従来例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施形態であるストラット型サスペンション取り付け構造が適用された車両の前部車体Mについて説明する。
図1には車両Mの前部の骨格部を示す。ここで、車両の前部にはエンジンルーム1が配設され、エンジンルーム1の後方にダッシュパネル2(図2参照)を挟んで車室3が形成される。エンジンルーム1の左右端側には前後方向Xに長いサイドメンバー4が互いに並列状に配備され、両サイドメンバー4の後端側は下方に湾曲した段部401(図2参照)を経て後方に所定量延出し、左右のサイドシル6の前端側に連結される。サイドメンバー4の前端側は不図示のフロントエンドクロスメンバで相互に溶着され、エンジンルームの前部剛性を確保している。このサイドメンバー4はハット形断面を成し、車外側面をエンジンルーム1の車幅方向両側に配設される内壁としてのフロントフェンダーエプロン8の下縁部に重ねて溶着され、段部401より後方ではダッシュパネル2の下部の後方湾曲部の下面に溶着される。
【0019】
なお、ダッシュパネル2の下側湾曲部の後端縁にはフロア5の前部が接合され、このフロア5の左右は車室左右端に位置するサイドシル6に溶着され、そのサイドシル6の前端が左右のピラー部材7の下端に溶着され、これらが車室前部の剛性を保持している。
エンジンルーム1の車幅方向Y両側に配設されるフロントフェンダーエプロン8の後部はダッシュパネル2の左右端と溶着され、ダッシュパネル2の左右端は車室前部の左右のピラー部材7側に溶着される。ダッシュパネル2の上部には車幅方向Yに長く形成されたカウルトップ9が溶着され、カウルトップ9の左右端が左右のピラー部材7の上部に溶着される。
カウルトップ9は車幅方向Yに連続して長い換気路の一部として機能する空室11(図1参照)を形成し、断面箱型(上方部材が排除されている)に複数の屈曲板の組み合わせで形成されるため、その曲げ剛性、圧縮剛性を比較的強化される。図1に示すように、カウルトップ9及びダッシュパネル2の左右端前側には、フロントフェンダーエプロン8の後端が溶着される。
【0020】
エンジンルーム1の車幅方向Y両側に配設される内壁は上部が前後方向Xに長いエプロンメンバ20で形成され、下部が前後方向Xに長いサイドメンバー4で形成され、エプロンメンバ20とサイドメンバー4間が前後に長い内壁の要部を成すフロントフェンダーエプロン8で形成される。なお、左右のエプロンメンバ20の後端は左右のピラー部材7側に溶着され、先端側はラジエータサポート10に溶着される。
エンジンルーム1の左右のサイドメンバー4の後部近傍には不図示のストラット型のフロントサスペンションが装着される。この不図示のフロントサスペンションと対向する車体側の内壁部材であるフロントフェンダーエプロン8には、図2に示すように、スプリングハウス19が突設され、この左右のスプリングハウス19によりフロントサスペンションの左右のストラット31が取り付け支持されている。
【0021】
図3に示すように、スプリングハウス19は略筒状でフロントフェンダーエプロン8の傾斜壁801に下方側及び車幅方向外側が溶着された胴部21と、その上部を覆うように一体的に溶着された蓋状部材22とを有している。
ここで胴部21は平断面が略U字形をなし、その傾斜した下端がフロントフェンダーエプロン8の傾斜壁801に重なり、車外側縦向き縁211がフロントフェンダーエプロン8の縦壁802に重なり、それぞれ相互に溶着される。
胴部21の上部を覆う蓋状部材22は中央部221と、その車幅方向外側に膨出する延出部222と、中央部および延出部の周縁部より下向きに屈曲したフランジ状の外周縁223とを有し、これらが一体的に比較的厚い鋼材でプレス成形される。
【0022】
中央部221及びこれに続く延出部222の前後側の外周縁223はその下端側に胴部21の上端が重なり、図5に示すように、相互に溶着される。延出部222の車幅方向Y外側の外周縁223は対向するエプロンメンバ20に沿うように屈曲形成され、両者は複数箇所で相互にスポット溶接される。
蓋状部材22の中央部221は中央貫通穴224が形成され、中央貫通穴224の周囲の下面側にストラット31側のピストンロッド32の先端に取り付けられた略三角形状の取付用フランジ33が重ねられ、両者は複数のボルト34で相互に締結される。
中央部221のうち取付用フランジ33を下面に重ねた略三角形の形状の中央重合部35には、図4、図5に示すように、その周縁に段部229が形成され、これにより取付用フランジ33のずれを防止している。
【0023】
中央部221のうち取付用フランジ33を下面に重ねた中央重合部35には、図5、図4に示すように、その周縁に段部229が形成され、これにより取付用フランジ33のずれを防止している。
図5に示すように、取付用フランジ33は比較的厚い鋼板によりプレス成形され、中央穴331が形成され、そこにピストンロッド32の先端がその段部まで貫通され、その突き出し側のネジ部には取付用フランジ33を締め付けるナット36が螺着される。ピストンロッド32の先端及びナット36側は中央貫通穴224により中央重合部35と干渉することが防止されている。
【0024】
ところで、蓋状部材22の中央部221は取付用フランジ33を下面に重ねた略三角形の中央重合中央重合部35を形成され、中央重合部35の周りのうち、車幅方向外側の延出部222と対向する部分以外には傾斜壁225が連続形成される。
傾斜壁225の外周端が外周縁223として連続形成される。図5に示すように、ここでは中央重合部35より外周縁223がストラットの中心線Lo方向において所定量eだけ下位置となるよう形成される。
なお、傾斜壁225には互いに離れた位置にそれぞれビードVが傾斜方向に沿って形成される。特に車幅方向Y内側、左右のスプリングハウスが対向する方向のビードVは傾斜壁225から傾斜するに伴い、幅が細くなっていっていく(図3、図4参照)。このように、中央部221の中心側ほどビードVのは幅大きく形成され、比較適合性の低い中心側ほど剛性強化を図ることができ、傾斜壁225及び中央重合部の形状剛性を全域で適正に強化でき、蓋状部材22の経時劣化がより確実に抑制される。
【0025】
このため、中央重合部35にピストンロッド32と一体の取付用フランジ33側より中心線Lo方向の上下荷重Fr,Fdが繰り返して加わった場合、中央重合部35より傾斜壁225に引っ張り力f1、圧縮力f2が繰り返して加わることとなるが、傾斜壁225に対する曲げ応力の発生は抑制される。
なお、中央重合部35の周りのうち車幅方向Y外側の延出部222側は段部229を介して、車幅方向外側に延びる平坦部226と、その平坦部226の両側に形成された前後傾斜壁227、228とを形成され、それらの外端部にも中央部221と連続する外周縁223が形成され、エプロンメンバ20と対向する外周縁223が相互にスポット溶接される。
【0026】
このため、延出部222側は図5に示すように、断面台形状を成し、エプロンメンバ20と溶接される点も加わり、十分な剛性を確保する。このような剛性強化部を成す延出部222が中央部221と連続形成されるので、この点でも中央部221の剛性は強化され、蓋状部材22は十分な剛性強化部材をなし、車幅方向のスプリングハウス19の変位を確実に抑制できる。
なお、蓋状部材22の後側部分とカウルトップ9の前向き壁との間を連結ブラケット40により相互に接合し(図4参照)、この連結ブラケット40により蓋状部材22側であるスプリングハウス19の前後方向の変位を抑制するようにしても良い。
このようなスプリングハウス19は左右対称に形成されて配備される。
【0027】
このような図1のストラット型サスペンション取り付け構造が適用された車両が走行し、左右のストラッドの取付用フランジ33より中央重合部35に中心線Lo方向の上下荷重Fr,Fdが繰り返して加わる。
この場合、中央重合部35より中央部221や延出部222に中心線Lo方向の上下荷重Fr,Fdが繰り返して加わる。
この場合、中央部221の傾斜壁225には傾斜方向に沿って引っ張り力f1、圧縮力f2が繰り返し加わり、これらは中央部221の外周縁23より下方の胴部21を経て車体側に分散支持され、中央部221の傾斜壁225に曲げ応力が生じることは抑制され、中央部221の経時劣化を防ぎ、耐久性を確保できる。
【0028】
更に、延出部222は段部229や比較的狭い幅bの平坦部226を介して両側の前後傾斜壁227、228側にも荷重が分散され、これが引っ張り力f1、圧縮力f2として繰り返し加わり、これらの略上下方向の荷重は胴部21を経て車体側に分散支持される。 ここで、延出部222の断面は、図7(b)に示すように、台形状断面を成すため上下荷重Fr,Fdに伴う曲げ応力の発生は十分に抑制され、しかも、エプロンメンバ20に蓋状部材22の延出部222の外周縁23が溶接され、この点でも延出部222の剛性強化を図れる。
【0029】
このように、ストラット31のピストンロッド32の先端の取付用フランジ33から中央重合部35より蓋状部材22側の中央部221や延出部222に中心線Lo方向の上下荷重Fr,Fdが繰り返して加わるとしても、中央部221や延出部222に曲げ応力が発生することを抑制でき、曲げ変位による経時劣化を防ぎ、耐久性の低下を確実に防止できる。しかも、延出部222の剛性強化を図れるので、この点でも蓋状部材22側の耐久性の低下を確実に防止でき、走行安定性を向上できる。
上述のところでは、スプリングハウス19の胴部21は略U字形の断面を成し、フロントフェンダーエプロン8の縦壁802に重なり、相互に溶着され、これに伴い、蓋状部材22は中央部221と車幅方向外側に膨出する延出部222とを有するものとして説明した。
【0030】
これに代えて、図8(a),(b)に示すように、第2実施形態として、スプリングハウス19aはその胴部21aが筒状断面に形成され、その下端がフロントフェンダーエプロン8の下部に重なり、相互に溶着され、これに伴い、筒状の胴部21aの上端には上述の中央部に相当する部位のみを有する円形の蓋状部材22aが一体的に相互に溶着される構成としてもよい。
この場合、蓋状部材22aは中央部221aに中央貫通穴224aが形成され、その回りの下面側にストラット31側のピストンロッド32の取付用フランジ33が重ねられ、両者は複数のボルト34で相互に締結される。
中央部221aの取付用フランジ33を下面に重ねた中央重合部35aには、図8(b)に示すように、その周縁に段部229aが形成され、これにより取付用フランジ33のずれを防止している。
【0031】
蓋状部材22aの中央重合部35a周り全域に傾斜壁225aが連続形成される。この傾斜壁225aの外周端は外周縁223aとして環状に形成され、中央重合部35aより外周縁223aがストラットの中心線Lo方向において下位置となるよう形成される。
ここでも傾斜壁225aはビードVが傾斜方向に沿って複数形成される。このビードVにより傾斜壁225a及び中央重合部35aの形状剛性を強化でき、蓋状部材22aの経時劣化がより確実に抑制される。
この場合、中央重合部35aに取付用フランジ33より中心線Lo方向の上下荷重Fr,Fdが加わると、中央重合部35aより円錐台状を成す傾斜壁225aに引っ張り力f1、圧縮力f2が繰り返して加わり、傾斜壁225aに対する曲げ応力の発生は確実に抑制され、曲げ変位による経時劣化を防ぎ、耐久性の低下を確実に防止でき、走行安定性を向上できる。
【0032】
なお、この場合、スプリングハウス19aの車幅方向外側とその方向のエプロンメンバ20の間や、スプリングハウス19aの後方側とその方向のカウルトップ9との間を連結ブラケット41,42で相互に一体的に接合して、スプリングハウス19aの左右方向や前後方向のずれ変位を抑制して、これにより、走行安定性を確保しても良い。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 エンジンルーム
2 ダッシュパネル
8 フロントフェンダーエプロン(壁部材)
19,19a スプリングハウス
21,21a 胴部
22,22a 蓋状部材
221,221a 中央部
222 延出部
223,223a 外周縁
225,225a 傾斜壁
229 段部
31 ストラット
32 ピストンロッド
33 取付用フランジ
35,35a 中央重合部
f1 引っ張り力
f2 圧縮力
Fr,Fd 上下荷重
M 車体
X 前後方向
Y 車幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載のストラット型のサスペンションと対向する車体側の壁部材に基端が溶着され上方に突き出す胴部と該胴部の上端に外周縁部が溶着された蓋状部材とから成るスプリングハウスを備え、前記サスペンションのストラットの上端に取り付けられた取付用フランジを前記蓋状部材の下面に重ねてボルト締結するようにしたストラット型サスペンション取り付け構造において、前記蓋状部材は前記取付用フランジを下面に重ねた中央重合部より前記外周縁が下位置となるよう形成され、かつ、該中央重合部と前記外周縁とが傾斜壁で連続形成された、ことを特徴とするストラット型サスペンション取り付け構造。
【請求項2】
請求項1記載のストラット型サスペンション取り付け構造において、
前記ストラット型のサスペンションは車体前部のエンジンルームに配備され、
前記スプリングハウスの胴部はエンジンルームの内壁部材より突き出し形成された、ことを特徴とするストラット型サスペンション取り付け構造。
【請求項3】
請求項2記載のストラット型サスペンション取り付け構造において、
前記蓋状部材はその車幅方向外側部が延出部として突き出し形成され、車幅方向外側に位置するエンジンルーム内壁部材に一体的に結合される、ことを特徴とするストラット型サスペンション取り付け構造。
【請求項4】
請求項1記載のストラット型サスペンション取り付け構造において、
前記蓋状部材の傾斜部にはビードが傾斜方向に沿って形成された、ことを特徴とするストラット型サスペンション取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−82387(P2013−82387A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224939(P2011−224939)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】