説明

ストロボ用昇圧トランス及びストロボ装置

【課題】 簡単な構成で、効率を向上できるとともに、スイッチング電圧を下げることが可能なストロボ用昇圧トランスを提供する。
【解決手段】 ストロボ用昇圧トランス8は、低圧側の一次巻線Pと高圧側の二次巻線Sを備える。一次巻線Pを電気的に並列な第1の一次巻線部P1と第2の一次巻線部P2とで形成する。二次巻線Sを電気的に直列な第1の二次巻線部S1と第2の二次巻線部S2とで形成する。第1の一次巻線部P1と、第2の一次巻線部P2との間に第1の二次巻線部S1を配設するとともに、第1の二次巻線部S1と第2の二次巻線部S2との間に第2の一次巻線部P2を配設して、これら各巻線部P1,P2,S1.S2が四層をなして交互に重ね巻きされていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧を昇圧してストロボ発光部に供給する昇圧トランス、及びこのトランスを備えてデジタルカメラや携帯電話等に搭載されるストロボ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一次コイルと二次コイルを有したフライバックトランスからなるストロボ用の昇圧トランスが、従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この昇圧トランスの一次コイルには、直流電源と、フィードバックコンデンサと、半導体製のスイッチング素子が接続されている。昇圧トランスの二次コイルには、整流用ダイオードを介してメインコンデンサが接続されており、更に、このメインコンデンサの両端間に閃光発光管を有するストロボ発光部が接続されている。
【0004】
スイッチング素子が発振制御部によりオン・オフを高速で繰り返すことにより、電源電圧が昇圧され整流用ダイオードで整流されてメインコンデンサに充電される。即ち、スイッチング素子がオン状態になると、昇圧トランスの一次コイルに電流が流れ、その後に、スイッチング素子がオフされることで、昇圧トランスの二次コイルに逆起電力が出力として発生する。この出力が整流用ダイオードで整流されてメインコンデンサに供給されて、このコンデンサに充電される。こうしてメインコンデンサに充電された電力がストロボ発光部に適時供給されることによって、このストロボ発光部の閃光発光管が閃光を発する。
【0005】
特許文献1に記載の昇圧トランスの巻線構造は明らかではないが、一般的には、三層の巻線構造が採用されている。つまり、一次コイルが第1のコイル部と第2のコイル部とに分けられていて、第1のコイル部の外周に二次コイルが巻かれ、この二次コイルの外周に第2のコイル部が巻かれている。このため、二次コイルは一次コイルの第1、第2のコイル部で挟まれている。こうした三層の巻線構造は、巻線間の結合度が高められる結果、効率の向上とスイッチングノイズの低減に効果があるとされている。
【0006】
第1のコイル部とこれに隣接した二次コイルとの間、及び二次コイルとこれに隣接した第2のコイル部との間には、夫々寄生容量(静電容量又は浮遊容量とも称される。)が発生する。寄生容量は、電位差があるコイル間に発生する電場が電荷を蓄える現象であるので、スイッチング素子のオン・オフに伴って寄生容量に蓄電や放電をするための余分な電流が流れる。
【0007】
ストロボ装置で昇圧トランスの一次側に供給される電源電圧は約3Vであるのに対して、昇圧トランスの二次側のプラス電位は約300Vを超えるので、昇圧トランスは電源電圧に対して約100倍の高電圧を高速でオン・オフするスイッチング動作をする。
【0008】
こうした高速スイッチングの度に、既述のように寄生容量への充放電が行われるので、それに応じた電力損失(スイッチングロス)が発生する。特に、前記構成の昇圧トランスは、二次コイルとこの外側に隣接した一次コイルの第2のコイル部との間の電位差(層間電圧)が大きいので、前記スイッチングロスが大きい。
【0009】
したがって、従来の昇圧トランスはその効率が良くない。これとともに、この昇圧トランスの一次側に接続される電池(直流電源)の消耗が促進される不都合がある。
【0010】
更に、スイッチング素子がオフされるに伴い昇圧トランスの二次コイルに出力が発生した瞬間に、スイッチング素子とグランドとの間にフライバック電圧が発生し、この電圧にはサージ電圧がスイッチングノイズとして重畳する。この場合、二次コイルと第2のコイル部と層間電圧が大きいほど、スイッチングノイズは大きく発生する。このため、従来の昇圧トランスを用いたストロボ装置では、フライバック電圧にノイズ成分を加算した電圧、つまり、スイッチング電圧が高い。
【0011】
スイッチング電圧はスイッチング動作の都度スイッチング素子に加わるため、このスイッチング電圧でスイッチング素子が破壊されないようにする必要がある。このためには、耐圧性能がより高い仕様のスイッチング素子を用いなければならないので、コスト高となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−261896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、簡単な構成で、効率を向上できるとともに、スイッチング電圧を下げることが可能なストロボ用昇圧トランス及びストロボ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明のストロボ用昇圧トランスは、低圧側一次巻線と高圧側二次巻線を備える。一次巻線を電気的に並列な第1の一次巻線部と第2の一次巻線部とで形成する。二次巻線を電気的に直列な第1の二次巻線部と第2の二次巻線部とで形成する。第1の一次巻線部と第2の一次巻線部との間に第1の二次巻線部を配設するとともに、第1の二次巻線部と第2の二次巻線部との間に第2の一次巻線部を配設して、これら各巻線部が四層をなして交互に重ね巻きされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、巻線構造を四層にするという簡単な構成でありながら、寄生容量が低減されスイッチングロスが抑制されることにより効率を向上できるとともに、寄生容量の低減によりスイッチング電圧を下げることが可能なストロボ用昇圧トランス、及びこれを備えたストロボ装置を提供できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るストロボ装置の回路構成を示す図である。
【図2】図1のストロボ装置が備える昇圧トランスの構成を概略的に示す断面図である。
【図3】図2の昇圧トランスと従来の昇圧トランスとの充電効率を比較して示すグラフである。
【図4】図2の昇圧トランスと従来の昇圧トランスとの充電時間を比較して示すグラフである。
【図5】図1のストロボ装置のスイッチング電圧を示す波形図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るストロボ装置が備える昇圧トランスの構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1中符号1は例えばデジタルカメラに搭載されるストロボ装置を示している。このストロボ装置1は、充電回路部2と、ストロボ発光部3とを備えている。図1中符号4はデジタルカメラに搭載された乾電池や蓄電池等の電池からなる直流電源を示し、直流電源4は例えばカメラの電源を兼ねている。直流電源4の発生電圧は例えば約3Vである。
【0019】
充電回路部2は、充電対象のメインコンデンサ6、昇圧トランス8、スイッチング素子10、発振制御部12、フィードバックコンデンサ14、及び整流用ダイオード16を備えていて、メインコンデンサ6を充電するために用意されている。
【0020】
メインコンデンサ6は、ストロボ発光部3に電力を供給するために用意されていて、大容量の電解コンデンサからなる。
【0021】
昇圧トランス8は、コア9に低圧側の一次巻線Pと、この一次巻線Pに対して高圧側の二次巻線Sを巻いて形成されている。
【0022】
詳しくは、コア9は例えばフェライト製である。このコア9は、図2に示すように磁芯部9aの両端部に夫々円板状の鍔部9bを一体に設けたドラム形に形成されている。
【0023】
一次巻線Pは、電気的に並列な第1の一次巻線部P1と第2の一次巻線部P2とで形成されている。二次巻線Sは、電気的に直列な第1の二次巻線部S1と第2の二次巻線部S2とで形成されている。
【0024】
これら4個の巻線部はコア9の磁芯部9aに図2に示すように巻かれている。第1の一次巻線部P1は磁芯部9aに直に巻き付けられて内側巻線層(最内層)を形成している。この第1の一次巻線部P1の外周に第1の二次巻線部S1が巻き付けられて内側中間巻線層を形成している。この第1の二次巻線部S1の外周に第2の一次巻線部P2が巻き付けられて外側中間巻線層を形成している。この第2の一次巻線部P2の外周に第2の二次巻線部S2が巻き付けられて外側巻線層(最外層)を形成している。
【0025】
このため、第1の一次巻線部P1と第2の一次巻線部P2との間に、第1の二次巻線部S1が配設されるとともに、第1の二次巻線部S1と第2の二次巻線部S2との間に、第2の一次巻線部P2が配設されていて、前記4個の巻線部は4層をなして交互に重ね巻きされている。
【0026】
なお、図2の例では、一次巻線Pの電流分割を担う第1の一次巻線部P1と第2の一次巻線部P2との分割比は1対1である。これとともに、二次巻線Sの電圧分割を担う第1の二次巻線部S1と第2の二次巻線部S2との分割比も1対1である。しかし、これらに制約されず、二次巻線Sの分割比は、例えば1対2の分割比でも、1対3の分割比であっても差し支えない。又、図1中符号TPは第1の二次巻線部S1と第2の二次巻線部S2との電気的接続部を示している。
【0027】
スイッチング素子10は、スイッチングトランジスタ等の半導体製であり、昇圧トランス8の入力端をなした一次巻線Pの一端8aとグランドとの間に配設されている。このスイッチング素子10は、発振制御部12から供給されるベース制御信号に応じてオン・オフ動作をなして、それにより、一次巻線Pとグランドとの間の導通・非導通を制御する。発振制御部12は、ストロボ発光動作後にベース制御信号の発振を開始させ、この後、メインコンデンサ6の満充電が検出されたときにベース制御信号の発振を停止させる機能を有している。この発振制御部12での満充電検出は、例えばメインコンデンサ6の端子間電圧の検出情報に基づいて行われるようになっている。
【0028】
フィードバックコンデンサ14は、昇圧トランス8の入力端をなした一次巻線Pの他端8bとグランドとの間に配設されていて、直流電源4に並列に接続されている。
【0029】
昇圧トランス8の出力端をなした二次巻線Sの一端8cと他端8dとの間にメインコンデンサ6が接続されているとともに、二次巻線Sの一端8cとメインコンデンサ6との間に整流用ダイオード16が挿入されている。この整流用ダイオード16が、二次巻線Sからの出力を整流してメインコンデンサ6に供給することにより、メインコンデンサ6への充電が行われる。このメインコンデンサ6の出力電圧(放電電圧)は例えば略310Vである。
【0030】
図1に示すようにストロボ発光部3は、抵抗21、トリガー用コンデンサ22、トリガー用トランス23、閃光発光管例えばキセノン放電管24、及びスイッチ25を有している。
【0031】
抵抗21と、トリガー用コンデンサ22と、トリガー用トランス23の一次巻線23aの直列回路は、メインコンデンサ6の両出力端間に接続されている。キセノン放電管24の陽極はメインコンデンサ6の一方の出力端に接続され、キセノン放電管24の陰極はメインコンデンサ6の他方の出力端に接続されている。キセノン放電管24に対してこの管の外面に沿う外部電極24aが設けられている。この外部電極24aにトリガー用トランス23の二次巻線23bが接続されている。スイッチ25は前記直列回路に並列に接続されている。スイッチ25は半導体等からなりデジタルカメラの操作に連動して開閉される。
【0032】
メインコンデンサ6への充電電流の一部は、抵抗21と、トリガー用コンデンサ22と、トリガー用トランス23の一次巻線23aの直列回路に流れるから、それによって、トリガー用コンデンサ22が充電される。この場合、トリガー用コンデンサ22の容量はメインコンデンサ6の容量に比較してはるかに小さいので、このトリガー用コンデンサ22への充電は短時間で完了する。これとともに、メインコンデンサ6の電圧は、キセノン放電管24の陽極と陰極とに印加されている。
【0033】
この状態で、スイッチ25が閉じられると、トリガー用コンデンサ22に蓄えられていた電荷が、スイッチ25及びトリガー用トランス23の一次巻線23aを介して放電されるので、それに伴い、トリガー用トランス23の二次巻線23bに高圧のトリガー信号が発生し、この信号が外部電極24aに供給される。それにより、キセノン放電管24内のキセノンガスが電離されるので、メインコンデンサ6の電荷が一挙にキセノン放電管24の陽極から陰極に流れて、このキセノン放電管24が閃光を発する。
【0034】
こうした発光動作の終了に引き続いて、発振制御部12が発振動作を開始してスイッチング素子10のオン・オフが高速で繰り返えされる。スイッチング素子10がオンされると、昇圧トランス8の一次巻線Pに電流が流れ、その後に、スイッチング素子10がオフされると、昇圧トランス8の出力として二次巻線Sに逆起電力が発生する。昇圧トランス8の出力は整流用ダイオード16で整流されてメインコンデンサ6に供給されて、このメインコンデンサ6に充電される。
【0035】
メインコンデンサ6に対する充電を本実施形態の昇圧トランス8を用いて行ったことで、充電効率及び充電時間を共に向上できることが確かめられた。
【0036】
この評価の条件は以下の通りである。メインコンデンサ6の出力電圧は310V、同コンデンサの容量は85μFであり、IC(集積回路)を含んだ評価ボードの型番は「TPS65560」である。この条件で、本実施形態の昇圧トランス8を備えたストロボ装置1と、比較例として従来の三層巻線構造の昇圧トランスを備えたストロボ装置の夫々について、入力電圧を1.80V、2.50V、3.70V、5.00Vに変化させて、充電時間、入力電流、及び入力電力を夫々測定するとともに、これらの測定値等を基に充電効率を算出した。
【0037】
本実施形態の測定結果と充電効率は次表の通りであった。
【表1】

【0038】
比較例の測定結果と充電効率は次表の通りであった。
【表2】

【0039】
以上の測定結果から本実施形態と比較例との充電効率を比較したグラフを図3に示すとともに、同じく充電時間を比較したグラフを図4に示す。表1と表2での測定結果の対比によれば、比較例に対して本実施形態の昇圧トランスの方が、入力電圧が1.80V〜5.00Vの範囲で、充電時間が短くなったことを確認できた(図4も参照)。更に、比較例に対して本実施形態の昇圧トランスの方が、入力電圧が1.80V〜5.00Vの範囲で、入力電流が増えたことが判った。これとともに、比較例に対して本実施形態の昇圧トランスの方が、入力電圧が1.80V〜5.00Vの範囲で、入力電力が少ないことが判った。
【0040】
更に、これらの結果として図3から判るように、比較例に対して本実施形態の昇圧トランス8の方が、入力電圧が1.80V〜5.00Vの範囲で、充電効率が略5%程度向上したことが確認された。
【0041】
この改善の理由は厳密には明らかではないが、昇圧トランス8の巻線構造に起因していると推測される。
【0042】
つまり、一次巻線Pの第1の一次巻線部P1と第2の一次巻線部P2とが電流分割巻きされていて、二次巻線Sの第1の二次巻線部S1と第2の二次巻線部S2とが電圧分割巻きされているとともに、これら各巻線部が交互に重ね巻きされた四層の巻線構造を、昇圧トランス8は有している。
【0043】
こうした巻線構造により、隣接する巻線層間の電位差が小さくなる。特に、出力側の第2の二次巻線部S2とこれに隣接された第2の一次巻線部P2との間の電位差は、既述のように二次巻線Sが1対1の割合で電圧分割巻きされた実施形態では、前記電位差が出力電圧の半分に低下する。こうした巻線層間の電圧低下に伴い隣接した巻線層間に夫々生じる寄生容量が小さくなる。
【0044】
本実施形態のストロボ装置1でも、スイッチング素子10が直流電源4の電圧に対して約100倍の高電圧を高速でオン・オフするスイッチング動作をする度に、寄生容量への充放電が行われる。しかし、既述のように寄生容量が小さいことで、この寄生容量への充放電に応じた電力損失(スイッチングロス)を減らすことができる。
【0045】
このように昇圧トランス8の効率が向上されたので、この昇圧トランス8の一次側に接続された直流電源4の消耗を抑制することが可能である。
【0046】
更に、本実施形態のストロボ装置1でも、スイッチング素子10がオフされるに伴い昇圧トランス8の二次巻線Sに出力が発生した瞬間に、スイッチング素子10とグランドとの間にフライバック電圧が発生し、かつ、この電圧にサージ電圧がスイッチングノイズとして重畳する。
【0047】
しかし、既述のように二次巻線Sの第2の二次巻線部S2とこれに隣接した一次巻線Pの第2の一次巻線部P2との間の層間電圧が低いことに伴い、スイッチングノイズが小さくなる。このため、既述の四層重ね巻き構造の昇圧トランス8を備えたストロボ装置1のスイッチング電圧を低くすることが可能である。
【0048】
図5は測定されたスイッチング電圧を示す波形図であり、図5中符号FVはフライバック電圧に相当する波形を示し、SNは波形FVに重畳したスイッチングノイズを示している。本実施形態では既述のようにスイッチングノイズSNが小さいことにより、スイッチング電圧SVを37.91Vと低くできることが確かめられた。なお、従来の三層巻線構造の昇圧トランスを備えたストロボ装置について測定したスイッチング電圧は、40.99Vであった。
【0049】
このため、ストロボ装置1のスイッチング素子10がスイッチング電圧で破壊されることが抑制されて、ストロボ装置1の充電回路部2の信頼性を向上することが可能である。これとともに、耐圧性能がより高い仕様のスイッチング素子を用いないで済むので、ストロボ装置1のコストを低減することも可能である。
【0050】
以上のように昇圧トランス8の効率を向上できるとともに、ストロボ装置1のスイッチング電圧SVを下げることを、昇圧トランス8の巻線を四層重ね巻き構造とすることによって実現したから、特別な電気部品や回路構成を追加する必要がなく、ストロボ装置1の構成が簡単である。
【0051】
又、既述の昇圧トランス8の四層重ね巻き構造では、その最外層に二次巻線Sの電位が最も高い第2の二次巻線部S2が配置されている。これにより、コア9の外部に引出される第2の二次巻線部S2の引出し線が、2の二次巻線部S2よりも低圧の他の巻線部と交差することがない。このため、第2の二次巻線部S2の引出し線とその他の巻線部との間を電気絶縁して耐圧を確保する措置を講じる必要がないので、製造し易い点で有利である。
【0052】
図6は本発明の他の実施形態に係るストロボ装置の昇圧トランスを示している。このトランス及びこれを備えるストロボ装置は、以下説明する構成を除いて一実施形態の昇圧トランスと同じ構成であるので、一実施形態と同じ構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
他の実施形態の昇圧トランス8の巻線の四層重ね巻き構造では、最外層が一次巻線Pの第1の一次巻線部P1で形成されるとともに、最内層が二次巻線Sの電位が最も高い第2の二次巻線部S2で形成された構成としてある。
【0054】
つまり、第2の二次巻線部S2は磁芯部9aに直に巻き付けられて内側巻線層を形成している。この第2の二次巻線部S2の外周に第2の一次巻線部P2が巻き付けられて内側中間巻線層を形成している。この第2の一次巻線部P2の外周に第1の二次巻線部S1が巻き付けられて外側中間巻線層を形成している。この第1の二次巻線部S1の外周に第1の一次巻線部P1が巻き付けられて外側巻線層を形成している。
【0055】
このため、第1の一次巻線部P1と第2の一次巻線部P2との間に、第1の二次巻線部S1が配設されるとともに、第1の二次巻線部S1と第2の二次巻線部S2との間に、第2の一次巻線部P2が配設されて、前記4個の巻線部が4層をなして交互に重ね巻きされている。又、第2の二次巻線部S2の引出し線は、その他の巻線部との間の耐圧を確保する電気絶縁してコア9の外部に引出されている。
【0056】
以上説明した以外の構成は図示されない構成を含めて一実施形態と同じである。そのため、昇圧トランス8の巻線が四層重ね巻き構造となっていることにより、一実施形態で既に説明した理由によって、簡単な構成でありながら、効率を向上できるとともに、スイッチング電圧を下げることが可能なストロボ用昇圧トランス8、及びこれを備えたストロボ装置を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…ストロボ装置、2…充電回路部、3…ストロボ発光部、4…直流電源、6…メインコンデンサ、8…昇圧トランス、9…コア、P…一次巻線、P1…第1の一次巻線部、P2…第2の一次巻線部、S…二次巻線、S1…第1の二次巻線部、S2…第2の二次巻線部、10…スイッチング素子、12…発振制御部、16…整流用ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧側一次巻線と高圧側二次巻線を備え、
前記一次巻線を電気的に並列な第1の一次巻線部と第2の一次巻線部とで形成するとともに、前記二次巻線を電気的に直列な第1の二次巻線部と第2の二次巻線部とで形成し、
前記第1、第2の一次巻線部間に前記第1の二次巻線部を配設するとともに、前記第1、第2の二次巻線部間に前記第2の一次巻線部を配設して、
第1の一次巻線部と第1の二次巻線部と第2の一次巻線部と第2の二次巻線部とが、四層をなして交互に重ね巻きされていることを特徴とするストロボ用昇圧トランス。
【請求項2】
前記第1の一次巻線部が最も内側の巻線層をなしていて、この第1の一次巻線部の外周に前記第1の二次巻線部が巻かれており、この第1の二次巻線部の外周に前記第2の一次巻線部が巻かれており、この第2の一次巻線部の外周に前記第2の二次巻線部が最も外側の巻線層をなして巻かれていることを特徴とする請求項1に記載のストロボ用昇圧トランス。
【請求項3】
ストロボ発光部と、
この発光部に供給する電力を蓄積するメインコンデンサと、
直流電源の電力が供給される請求項1又は2に記載の昇圧トランスと、
この昇圧トランスが有した一次巻線に供給する電流をオン・オフする半導体製のスイッチング素子と、
このスイッチング素子のスイッチング動作を行わせる発振制御部と、
前記昇圧トランスが有した二次巻線から放出された出力を整流して前記メインコンデンサに供給する整流用ダイオードと、
を具備することを特徴とするストロボ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46034(P2013−46034A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185091(P2011−185091)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(592074441)東京コイルエンジニアリング株式会社 (62)
【Fターム(参考)】