説明

ストロンチウムの有機塩を製造するための高収率合成法

新規なストロンチウムの有機塩ならびに高純度、高収率および短い処理時間で、中性条件下および50℃以下の温度のような低反応温度でそのような塩を合成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ストロンチウムの新規な有機塩、ならびに高純度、高収率でそのような塩を、以前に可能であった製造時間より短い時間で合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アルカリ土類金属およびアルカリ金属は、そのような元素の高い反応性のため、金属有機塩の成分として、ほとんどと言っていいほど酸化された状態で見出される。そのような金属イオンの塩は、天然に広く分布している。ストロンチウムは、これらの元素の中で余り一般的でないものの1つであるが、生体系において、ストロンチウムの有益な作用のため、いくつかの塩の重要な成分である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、ストロンチウムの非常に純粋な有機塩の効率的な製造が、商業的に非常に興味がある。
【0004】
一般的に、高い純度を有し、天然には見出されない有機対イオンから構成されるストロンチウム塩の製造は、種々の水性の方法により行われ、多くの場合、反応生成物の均質性と純度を制御することが困難であり、周期系の主II族からの可能性のあるその他の混入物質から、所期のストロンチウム塩を分離するために、再結晶およびその他の精製工程を必要とするか、または製造および/または精製工程の間に得られるアニオンを分解することによりもたらされる。言い換えると、このことは、所期の塩の低収率という結果になりそうである。
【0005】
市販に適切なその他のストロンチウム塩は、温度および/またはpHに不安定であり、それらの塩の効率的な製造を困難にし、多大な時間を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、ストロンチウムの新規な有機塩、ならびにそのような塩の穏和な条件下での効率的な合成および単離方法を開示する。本発明による製造方法において、ストロンチウムの有機塩を、50℃以下のような低い反応温度で、高収率かつ高純度で製造することができ、それにより、例えば、製造されるストロンチウム塩の医薬的使用に適した生物学的に活性な有機分子のような温度感受性の有機アニオンとのストロンチウム塩の製造が可能となる。
【0007】
さらに、ここに開示された製造方法は、その合成が、塩基または酸に不安定なストロンチウム塩の製造に適合した中性条件で行われることを可能にする。実施例は、温度感受性のストロンチウム塩の合成に対する開示された方法の能力を示すため、および得られるストロンチウム塩の合成のための最適反応条件を確立するための手引きを与えるために提供される。本合成は、時間、温度およびpH値が化合物の純度の重要な要因である、いくつかの全く新規な塩の製造を可能にする。本合成法は、ストロンチウムのほとんどの有機塩の製造に適用可能であるが、特に、他の方法で得ることができるよりも本発明により、ストロンチウムのカルボン酸塩を、より高収率かつより高純度で製造することができる。上記のように、本明細書に開示された方法は、低温かつ短い処理時間を維持する間、中性または弱酸性条件に反応pHを制御することができるので、本方法は、温度および/またはpH不安定なアニオンのストロンチウム塩の合成に特に適している。
【0008】
本発明により提供される新規なストロンチウム塩の具体的な例は、11/2結晶水分子を含むマロン酸ストロンチウム(セスキ水和物)、ジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物、フマル酸ストロンチウム、サリチル酸ストロンチウム1水和物、コハク酸ストロンチウムおよびストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物ならびにマレイン酸ストロンチウムである。これらの塩は、本明細書中で初めて記載され、以前に開示されていないこれらの有機酸のストロンチウム塩の高純度な簡便な製造は、温度およびまたはpHに不安定な医薬的に適切な塩の効率的な合成のための開示された製造法の可能性を示している。
【0009】
本発明の詳細な説明
ストロンチウム
ストロンチウムは、非放射性の安定な元素として、天然にもっぱら見られる。ストロンチウムの26の同位元素が記載されているが、ただ1つの安定な非放射性のストロンチウムが地球上で見られる。
【0010】
天然において、ストロンチウムは、実質的に常にジカチオンのような酸化された状態で見出され、カーボネート、サルフェートおよびホスフェートのような無機アニオンと複合化した塩として見出される。比較的限定された数のストロンチウム塩が、構造の完全解析および化学的性質を伴った詳細な化学的な特徴付けに供されている。
【0011】
有機ストロンチウム塩は記載されているが、このタイプの化合物の文献報告は、非常に少数の物質に限定されている。化合物を含む以前に開示された金属有機ストロンチウム(metal organic strontium)は全て、カルボン酸を含むアニオンのストロンチウム塩である。有機ストロンチウム塩の物理化学的性質が、対応するマグネシウム、カルシウムおよびバリウム塩と同じように報告されている(Schmidbaur Hら Chem Ber. (1989) 122: 1433-1438)。カルボン酸のストロンチウム塩は、結晶格子中にイオンを保持する強い静電気力を有する結晶の不揮発性固体である。有機ストロンチウム塩のほとんどの結晶形態は、種々の量の結晶水を含んでおり、それは結晶格子中でストロンチウムイオンと配位するのに役立つ。これらの塩を溶融するのに必要とされる温度は、ほとんどの場合は、非常に高い(一般的に300〜400℃の温度)ので、それに達する前に、有機アニオンの炭素-炭素結合が切れて分子が分解する。
【0012】
ストロンチウムのカルボン酸塩の性質
ストロンチウムのような2価の土類金属のカルボン酸塩、および特にジ-カルボン酸の塩は、溶液中で部分的なキレート効果を有することができるので、いくつかの特異な性質を有する。これらの場合、塩は、1つの複合体において、2価の金属イオンがアニオンのカルボキシリック(carboxylic)基に結合した複合体として溶液中で存在する。そのような複合化は、生体系において重要であり、この場合、アルカリ土類金属、特にカルシウムおよびマグネシウムが生命維持に必要な生理学的役割を果たす。2価の金属イオンの大部分は、フリーおよび非結合のイオンの形態よりもむしろ、生体系の水性環境において、複合体結合した(complex bound)形態で存在し得る。水溶液中でのアルカリ土類金属との複合体形成定数は、ヒドロキシ-カルボン酸および関連の非カルボン酸に対するよりもアミノ酸に対する方が高く、このことは、アミノ基が複合体形成に役割を果たしていることを示唆している。一般的に、金属の半径が増加するにつれて、種々のリガンドに対する結合定数と水和エンタルピーとの差が小さくなる。したがって、ジ-カルボン酸とのストロンチウム複合体の安定性は、カルシウムおよびマグネシウムとの相当する複合体の安定性よりも低い。このことは、水溶液において、キレート化するジ-カルボン酸は、ストロンチウムおよびバリウムのより大きなイオンよりむしろカルシウムおよびマグネシウムと優先的に結合する傾向を有するであろう。
【0013】
有機ストロンチウム塩は商業用途を見出すことはほとんどなかった。したがって、そのような化合物は、大規模な化学製造(>1000 kg バッチサイズ)が利用できない。しかしながら、最近、テトラ-カルボン酸のストロンチウム塩、ラネレート(ranelate)が、骨粗鬆症のような代謝性骨疾患の治療における医薬的用途のための開発が行われている。
【0014】
ストロンチウムのカルボン酸塩の合成
カルボン酸アニオンの有機-ストロンチウム塩は、多くの異なる経路で合成することができる。そのような有機ストロンチウム塩の慣用の製造法は、水溶液中で有機酸と水酸化ストロンチウムとの反応を利用することである。一例として、次の反応スキーム:
式1:
【化1】

は、マロン酸と水酸化ストロンチウム塩とのこの中和反応を示す。
【0015】
固体の溶解が急速に起こる反応後、次に、溶解したマロン酸ストロンチウムの懸濁液は、水の蒸発およびそれに続く、得られる塩の水溶解度以上の塩の濃度により沈殿を生じさせることができる。1.6 g/l以上の濃度で、マロン酸ストロンチウムの結晶が溶液からゆっくりと形成し沈殿するであろう。
【0016】
この方法に関しては、十分に純粋な形態で所期のストロンチウム塩を得るために、再結晶が多分必要とされる。言い換えると、溶液からのストロンチウムの完全な沈殿の欠如のために、再結晶の間の物質の損失の結果、ならびに沈殿し、金属炭酸塩の非常に低い溶解度のために、沈殿したストロンチウムをさらなる反応に利用できなくする炭酸ストロンチウムの形成の結果、収率は低下するであろう。
【0017】
本発明者らは、ストロンチウム塩を製造するためのより適した方法は、適当な酸の炭酸ストロンチウムによる中和反応を用いることであることを見出した(本発明による方法A−以下の式2参照)。以下の式2の反応は、所期の生成物の最も簡単な方法を例示し、その収率は、溶液を20℃〜50℃の温度にわずかに加熱することにより増加させることができる。しかしながら、この合成法は、低い温度、5℃よりも低い温度でさえも行うことができ、したがって、温度感受性のアニオンのストロンチウム塩の製造に特にうまく適している。式2に示される反応は、SrCO3が弱塩基であり、カーボネートが反応の間に連続的に取り去られるので、アルカリ条件を避けるための制御が可能である。
【0018】
式2は、フマル酸ストロンチウム(2a)およびL-アスコルビン酸ストロンチウム(2b)の製造を例示しているが、これは単に、反応を説明するための意味である。したがって、本合成法は、アルカリに不安定なアニオンに適切である。低温ならびに中性条件で行うことができる反応の両方は、L-アスコルビン酸ストロンチウムおよびアセチル-サルチル酸ストロンチウム(これらのアニオンは高温またはアルカリ加水分解により分解し得るので)のような多くの重要な塩のストロンチウム塩の製造に対して、基本的な重要性となり得る。気体の発生(式2)は反応の進行を示し、反応の終了は、発泡の停止により確認される。気体の二酸化炭素の連続的除去は、反応を終了へと導き、所期のストロンチウム塩の高収率を保証する。
【0019】
式2:
【化2】

【0020】
式2に示された反応スキームを用いることにより、温度感受性のアニオンのストロンチウム塩を、より高収率かつより高純度で、ならびにアニオンの損害なしに製造することができる。
【0021】
本発明者らは、ストロンチウムの正電荷とアニオンの負電荷との比が、できるだけ1:1に近くあるべきであることを見出した。ここで、負電荷は、本発明による結晶化反応に用いられる条件で、アニオン上で実際に脱プロトン化した酸基の数を意味する。すなわち、(例えばイブプロフェネートまたはアスコルベートのような)有機酸がモノ-プロトン化されている場合、1:1の電荷比を生じるために、ストロンチウム分子当たり2分子の有機酸が必要とされるであろう。しかしながら、(例えばマロネートおよびサリチレートのような)有機酸がジ-プロトン化されている場合、ストロンチウムと有機酸の電荷の間で1:1の比を生じるために、ストロンチウムの分子当たりただ1分子の有機酸が必要とされるであろう。
【0022】
より具体的には、本発明による方法Aは、水性媒体中、例えば約40℃以下、約30℃以下、約25℃以下、約20℃以下、または約15℃以下のような、約50℃以下の温度で、例えば最大で約240分、最大で約180分または最大で約120分のような、最大で約300分の間、炭酸ストロンチウムと適当な有機酸(アニオン)とを反応させることを含む。
【0023】
反応は、遊離酸として水溶液中に溶かされた有機酸と、激しい撹拌下および/または混合下に固体の形態でゆっくりと加えられる炭酸ストロンチウムとの間で行われ得る。
【0024】
pHの上昇を避けるため、およびpH不安定なアニオンのストロンチウム塩の製造に適応するため、反応は、例えば約pH 9未満、約pH 8.5未満、約pH 8未満、約pH 7.5未満、約pH 7未満、約pH 6.5未満または約pH 6未満のような、約pH 9.5未満に反応容器中のpHを維持するために、反応容器を連続的にモニターしながら行われ得る。
【0025】
さらに、本発明による方法において、上記のpH値の維持は、ストロンチウムの所期の有機塩の形成に有利に、式2の平衡状態を改善し得る。式2に記載された反応の工程は、気体の二酸化炭素としてカーボネートの連続的除去により推進されるその他の要素の中に含まれる。水酸イオンの存在は、二酸化炭素の形成を減少するであろうし、それゆえ、余り好ましくない。
【0026】
方法Aによって製造されるストロンチウム塩の具体例は、11/2分子の水を有するマロン酸ストロンチウム(セスキ水和物)、ストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物、ジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物、フマル酸ストロンチウム、サリチル酸ストロンチウム1水和物およびコハク酸ストロンチウムである。ストロンチウム イブプロフェネート2水和物およびストロンチウム ジ-イブプロフェネートの用語は、ストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物の用語が最も正しいが、本明細書中では交換可能で用いられている。
【0027】
本発明による温度/pH感受性アニオンのその他のストロンチウム塩は、方法Bとして本明細書中に示されている方法により製造され得る。このアプローチにおいて、適当なカルボン酸アニオンのナトリウムまたはカリウム塩が、塩化ストロンチウムと反応される。全ての有機ストロンチウム塩は、非常に溶解性の塩化物の塩より溶解性が低いであろうから、溶液中にNaClと過剰のSrCl2が残っているこれらの条件下で、有機ストロンチウム塩は沈殿するであろう。次の式3は、例として、SrCl2とマロン酸ナトリウムとの間の反応を用いたこの反応のスキームを例示する。ここで、反応物(reaction products)は等モル量で加えられる。
【0028】
式3:
【化3】

【0029】
この方法は、水性媒体中、例えば約40℃以下、約30℃以下、約25℃以下、約20℃以下、または約15℃以下のような、最大で50℃以下の温度で、塩化ストロンチウムと適当な有機酸とを反応させることを含む。本出願において、方法Bはストロンチウム ジ-イブプロフェネートおよびマレイン酸ストロンチウムの新規な塩の製造に対して用いられる。
【0030】
上記のように、本発明は、(当該技術分野で知られている方法と比較して)所期のストロンチウム塩をより高収率で得ることができ、かつ同時に、非常に低い限度にカーボネートの形成を保つ、温度および/またはpH感受性アニオンのストロンチウム塩の製造方法を提供する。したがって、方法Aまたは方法Bによって製造されるストロンチウム塩の収率は、例えば約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上または約95%以上のような、約70%以上であり得る。さらに、沈殿するカーボネートの量は、2価の金属塩の量の、例えば約0.5%未満または約0.2%未満のような約1 %未満であり得る。
【0031】
本発明の具体的態様において、アニオンは、50℃を超える温度のような高温および/または9.0を超えるpHのようなアルカリpHの条件で不安定である。本文脈において、アニオンとは、水溶液中で負に荷電された状態で存在することができる分子であると理解され、不安定(unstable)とは、例えば0.1%より多い、0.2%より多いまたは0.5%より多いような該アニオンの定量化され得る量が、転移および/または分解でき、そして/または脱炭酸、脱水、酸化、還元、加水分解、ラセミ化および/もしくは異性化のようなその他の修飾に付され得ることを意味すると理解される。そのような条件下で不安定であり得るアニオンの例は、小さいジカルボン酸(すなわちマロネート、フマレート、スクシネート、グルタレート、オキサレート)、β-ケトカルボン酸(すなわちアセトアセテート、α-ケトブチレート、α-ケトカプロイロレート)、α-ヒドロキシカルボン酸(すなわち特定のα-アミノ酸(ロイシン、グルタメート)ならびに特定の芳香族カルボン酸(ここで、カルボキシ基は芳香環に直接結合している)、特定の複雑な複素環式カルボン酸(例えばイブプロフェネートおよびラネレート)である。低温かつ炭酸ストロンチウムを用いる本明細書中に記載された方法は、脱炭酸を起こし易い有機アニオンの所期のストロンチウムの製造に非常に有用な方法を提供する。
【0032】
アニオンの不安定性の具体的な例として、本発明者らは、例えばアスコルビン酸およびアセチルサリチル酸のストロンチウム塩が、加熱により分解し、それぞれシュウ酸ストロンチウムおよびサリチル酸ストロンチウムを生じることを経験している。これらの反応は、40〜50℃を超える温度で起こる。L-アスコルビン酸ストロンチウムの合成において、アニオンの分解は、反応混合物の黄色の形成が、それでL-アスコルビン酸の分解生成物の形成を示すので、見た目で容易に明らかである。本発明による新規な方法は、そのような温度感受性のストロンチウム塩の効率的な製造法を提供する。
【0033】
上記のように、本発明による方法AおよびBは、不安定または温度感受性の有機酸のストロンチウム塩の合成に特に適している。しかしながら、基本的には、酸(アニオン)は、あらゆる有機酸であってもよい。具体的な態様において、有機酸は、モノ-、ジ-、トリ-またはテトラ-カルボン酸である。本発明による方法での使用に適した有機酸の例は、例えばフマル酸、マレイン酸、マロン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、アスコルビン酸、サリチル酸、アセチル-サルチル酸、フタル酸、グルコン酸、L-およびD-グルタミン酸、ピルビン酸、L-およびD-アスパラギン酸、ラネリック酸(ranelic acid)、2,3,5,6-テトラブロモ安息香酸、2,3,5,6-テトラクロロ安息香酸、2,3,6-トリブロモ安息香酸、2,3,6-トリクロロ安息香酸、2,4-ジクロロ安息香酸、2,4-ジヒドロ安息香酸、2,6-ジニトロ安息香酸、3,4-ジメトキシ安息香酸、アビエチン酸、アセト酢酸、アセトンジカルボン酸、アコニット酸、アジピン酸、α-ケトグルタル酸、アントラニル酸、ベンジル酸、アラキジン酸、アゼライン酸、ベヘン酸、ベンゼンスルホン酸、
【0034】
β-ヒドロキシ酪酸、桂皮酸、シトラコン酸、クロトン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シスタチオニン、デカン酸、エルカ酸、エチレンジアミン4酢酸、フルボ酸、フマル酸、没食子酸、グルコロン酸(glucoronic acid)、グルタコン酸、グルタル酸、グルコン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、フミン酸、ヒドロキシステアリン酸、イソフタル酸、イタコン酸、ランチオニン、ラウリン酸(ドデカン酸)、レブリン酸、リノール酸(cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸)、リンゴ酸、m-クロロ安息香酸、メリシン酸、メサコン酸、モノクロロ酢酸、ミリスチン酸、(テトラデカン酸)、ノナン酸、ノルバリン、オクタン酸、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、オルニチン、オキサロ酢酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、p-アミノ安息香酸、p-クロロ安息香酸、ペトロセリック酸(petroselic acid)、フェニル酢酸、p-ヒドロキシ安息香酸、ピメリン酸、プロピオル酸、プロピオン酸、p-tert-ブチル安息香酸、ピルビン酸、サルコシン、セバシン酸、セリン、ソルビン酸、ステアリン酸(オクタデカン酸)、スベリン酸、コハク酸、テレフタル酸、テトロール酸、スレオニン、L-スレオネート、サイロニン、トリカルバリル酸、トリクロロ酢酸、トリメリット酸、トリメシン酸、チロシン、ウルミン酸およびイブプロフェン酸である。
【0035】
具体的な態様において、有機酸は、例えば天然または合成アミノ酸のようなアミノカルボン酸である。
【0036】
ストロンチウム塩の特別に適切な群は、ストロンチウムと医薬的に活性な成分が、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)、シクロ-オキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、COX-3阻害剤、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)阻害剤、PAR2受容体拮抗剤、神経弛緩剤、オピオイド、シクロオキシゲナーゼ(COX)-阻害一酸化窒素供与剤(CINOD)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、ビホスホネート、N-アセチルコリン受容体アゴニスト、グリシン拮抗剤、バニロイド受容体拮抗剤、スタチン、β遮断薬、ニューロキニン拮抗剤、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗剤、カルシトニン遺伝子関連ペプチド拮抗剤および6-(5-カルボキシ メチル-ヘキシルオキシ)-2,2-ジメチル-ヘキサン酸ならびにそれらの活性代謝物を含むそれらの類縁物質から選択されるような、明確な薬理作用を有するアニオンから構成される。
【0037】
具体的な態様において、本発明によるストロンチウム塩は、ピロキシカム、テノキシカムおよびメロキシカムのようなエノール酸、ジクロフェナック、トルメチン、ケトロラック、ミソプロストールおよびゾメピラックのようなヘテロアリール酢酸;インドメタシン、メフェナム酸、スリンダックおよびエトドラックのようなインドールおよびインデン酢酸;フェナセチンおよびアセトアミノフェンのようなパラ-アミノフェノール誘導体;ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、オキサプロジン、カルプロフェン、ケトプロフェンおよびイブプロフェンを含むプロピオン酸;ニメスリドのようなスルホンアニリド;メフェナム酸、メクロフェナメートおよびフルフェナム酸を含むフェナメート;ナブメトンのようなアルカノン;フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アンチピリン、アミノピリンおよびケブゾンを含むピラゾロン、アセチルサリチレート(アスピリン)、サリチレート、サルサレート、ジフニサール、オルサラジン、フェンドサール、スルファサラジン (1,1-ジメチルヘプチル)-6a,7,10,10a-テトラヒドロ-l-ヒドロキシ-6,6ジメチル-6H-ジベンゾ[b,d]ピランカルボン酸(CT-3)を含むサリチレート;チオサリチレートおよびパラセタモール;またはそれらの医薬的に許容される塩のようなNSAIDとして分類されるアニオンを用いて製造され得る。
【0038】
本発明のもう1つの態様において、アニオンは、イバンドロネート、ゾレドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、クロドロネート、チルドロネート、ミノドロネート、インカドロネート、オルパドロネートおよびパミドロネートのようなビスホスホネートであってもよい。
【0039】
本発明のさらにもう1つの態様において、アニオンは、ドキシサイクリン、コンドロイチンサルフェート、メトトレキセート、レフロウノマイド(ARAVA(登録商標)、Aventis)、ジメチルニトロサミン、アザトリオピン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、ミノサイクリン、サラゾピリン、ペニシラミン、オウロチオマレート(金塩)、シクロホスホアミド、アザチオプリンおよびそれらの医薬的に活性な代謝物からなる群から選択されるDMARDである。
【0040】
本発明のさらにもう1つの態様において、アニオンは、アミノ-グアニジン、NG-ニトロ-L-アルギニン、NG-モノメチル-L-アルギニン、N6-(1-イミノエチル)-L-リジン、NG-ニトロ-L-アルギニン、S-メチル-L-チオシトルリン、NG-モノメチル-L-アルギニンアセテート、S-メチルイソチオウレア、S-エチルイソチオウレア、S-イソプロピルイソチオウレア、およびS-(2-アミノエチル)-イソチオウレアのようなイソチオウレア誘導体、NG-モノメチル-L-アルギニンアセテート、2-イミノピペリジン;2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシ-ピリミジン;5-クロロ-1,3-ジヒドロ-2H-ベンズイミダゾール-2-オン(FR038251)、1,3(2H,4H)-イソキノリン-ジオン(FR038470)および5-クロロ-2,4(1H,3H)-キナゾロンジオン(FR191863)からなる群から選択される誘導性NOS(iNOS)の阻害剤である。
【0041】
これらの化合物の多くは、高い温度および/またはpHで不安定であり、したがって、本発明に記載された合成法は、高収率かつ高純度でのそれらの大規模製造のための簡便な方法を提供する。
【0042】
本発明による方法での使用に適した、酸またはアミン基を有する医薬的に活性な化合物の具体的な例のより詳細なリストは、アセチルサルチル酸のようなサリチレート、ピロキシカム、テノキシカム、アスコルビン酸、ナイスタチン、メサラジン、スルファサラジン、オルサラジン、グルタミン酸、レパグリニド、メトトレキセート、レフロウノマイド、ジメチルニトロサミン、アザトリオピン、ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、ミノサイクリン、サラゾピリン、ペニシラミン、ジクロフェナック、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェンおよびイブプロフェンのようなプロピオン酸、フェニルブタゾンを含むピラゾロン、メフェナム酸のようなフェナメート、インドメタシン、スリンダック、メロキシカム、アパゾン、フェニルブタゾンのようなピラゾロン、ゾレドロン酸、ミノドロン酸、インカドロン酸、イバンドロネート、アレンドロネート、レセドロネート、オルパドロネート、クロドロネート、チルドロネートおよびパミドロネートのようなビスホスフェート、セレコキシブ、バルデコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブおよびデラコキシブのようなCOX-2選択的シクロ-オキシゲナーゼ阻害剤、パントテン酸、エポプロステノール、イロプロスト、チロフィバン、
【0043】
トラネキサム酸、葉酸、フロセミド、ブメタニド、カンレノイック酸(kanrenoic acid)、カポプリル(capopril)、ラサギリン、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、ホシノプリル、トランドラプリル、バルサルタン、テルミサルタン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、スルファジアジン、トレチオニン、アダパレン、アゼライン酸、ジノプロストン、レボチロキシン、リチロニン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、アムピシリン、アモキシシリン、クラブラン酸、タキソバクタム、ナリジクシニック酸(nalidiksinic acid) フシジニック酸(fusidinic acid)およびリコフェロン [2,2-ジメチル-6-(4-クロロフェニル)-7-フェニル-2,3,ジヒドロ-1H-ピロリジン-5-イル]-酢酸;プロプラノロール(インデラール)、アテノロール(テノルミン)、およびピンドロール(ビスケン)、アセブトロール(セクトラール)、ベクスタキソロール(ケルロン)、ビソプロロール(ゼベタ)、カルテオロール(カルトロール)、カルベジロール(コレグ)、エスモロール(ブレビボロック)、ラベトロール(ノルモダイン)、メトプロロール(ロプレッサー)、ナドロール(コルガード)、ペンブトロール(レバトール)、ピンドロール(ビスケン)およびプロプラノロール(インデラール)のようなβ遮断薬、ならびにシンバスタチン、メバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチンおよびフルバスタチンのようなスタチン、さらにそれらの化合物の医薬的に活性なあらゆる誘導体である。
【0044】
上記の反応スキーム(式2および3)は、無機ストロンチウム塩と遊離酸の形態かあるいは塩として入手可能などちらかの所期の有機アニオンとの一般に行われる単純反応を含む、有機ストロンチウム塩の製造に対する最終反応を示している。したがって、これらの反応を行うために、有機酸は市販であることが必要とされる。より複雑でそして/または珍しいアニオンの場合、それらは、ストロンチウム塩の製造の前に合成されなければならないであろうし、そして、次いで、上記で説明した反応スキームによるストロンチウム塩の形成が、最後の合成工程に組み込まれ得る。どちらの場合にも、本特許出願に開示された方法および手順は、所期の反応生成物の収率および純度を改善するのに非常に役立ち得る。
【0045】
全てのカルボン酸のアルカリ土類金属塩は、水溶液中にかなりの程度で溶解するが、特定の塩の溶解度は、その大きさおよび疎水性ならびに有機アニオンの帯電性に依存してかなり変化する。最も単純な有機カルボン酸の1つのアセテートは、ストロンチウムの明確な結晶塩を作り、それは水に非常に溶解性である(室温で369 g/lの溶解度)。通常、より大きな有機アニオンは、その塩の水和エンタルピーおよび格子エンタルピーに依存して、かなり低い溶解性を有する。しかしながら、種々のストロンチウム塩は、必ずしも同じタイプの結晶構造を形成しないであろうし、それらの結晶格子エネルギーは未知であるので、そのような塩の溶解性を理論的に計算することはできず、それらは実験で決定せざるを得ないであろう。さらに、得られる塩は、結合結晶水の量ような重要な特性が変わる、異なる結晶構造で存在し得るし、したがって、異なる結晶形は、異なる格子および水和エンタルピーを有し、それゆえ異なる溶解度を有するであろう。一般的に、結晶構造中に取り込まれた水分子を有する結晶形は、より少ないかまたは結晶-水分子を有しない同じ金属有機化合物の結晶形よりも大きな水溶解度を有するであろう。
【0046】
この例示として、本発明者らは、初めて、結晶ユニットセル当たり結合した11/2水分子を有するマロン酸ストロンチウム(セスキ水和物、図3参照)の新規な結晶形を、上記のように本明細書に記載する。このマロン酸ストロンチウムの結晶形は、以前に記載された無水マロン酸ストロンチウム(Briggman B & Oskarsson A 1977, Acta Cryst. B33; 1900 - 1906)より大きな水溶解度(2 g/l以上)を有する。より大きな溶解度は、経口的に摂取されたとき、それは塩のより速い溶解と解離をもたらし得るので、ある種の医薬製剤にとって有利となり得る。この新規なマロン酸ストロンチウム塩は、40℃以下に維持される温度で、マロン酸の懸濁液を炭酸ストロンチウムと反応させることによって製造される本発明による方法Aで製造される。結晶ユニット当たり結合した11/2水分子を有する純粋なマロン酸ストロンチウムの高収量が、わずか120分の反応時間と1濾過工程後に得られる。
【0047】
一般的に、本明細書に記載されたような低温合成法の使用は、改善された溶解および溶解度のために、すなわち医薬の使用に有利である、より多く水和した形態のストロンチウム塩の製造に特に適し得る。
【0048】
したがって、本発明の具体的な態様において、ストロンチウム塩のマロン酸ストロンチウムセスキ水和物、ジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物、フマル酸ストロンチウム、サリチル酸ストロンチウム1水和物、コハク酸ストロンチウムおよびストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物ならびにマレイン酸ストロンチウムが、医薬に使用され得る。
【0049】
しかしながら、本方法は、幅広い範囲の異なるストロンチウム塩に適用可能であり、得られるストロンチウム塩は、種々の適用を有し得る。所期のストロンチウム塩が、食品、医薬の使用のための成分、クリーム、ローションおよび練り歯磨きのようなパーソナルケア製品ならびにビタミンおよびその他の栄養補給剤のようなヒトへの使用のための製品に用いられる。そのような場合、製品の高純度でかつ均質で明確な形態が非常に重要であり、本明細書に記載された製造手段は、その他の利用可能な方法と比較して、顕著な有利性を提供する。
【0050】
本ストロンチウム塩は、ストロンチウムが骨格系に立証された有益な効果ならびにその他の有益な生理学的効果を有するので、治療的観点から特に重要性を有する。ストロンチウムが、脊椎動物の骨格系ならびに正常な生理機能において役割を果たすことができること、およびストロンチウムを与えられた動物は、一般的に骨のミネラル化(mineralization)を増加したことが示されている。いくつかのストロンチウム塩を用いた臨床試験も行われており、それは、高用量(すなわち、>300 mg/日)の投与が、骨のミネラル密度(BMD)の上昇をもたらし、それゆえ骨格の強度の上昇をもたらすことを示している。いくつかの動物研究において、ストロンチウムの多い摂取は、ミネラル化におけるいくつかの変化に関係した。長期のストロンチウム処置が行われた動物において、骨の全ミネラル含量の幾分の低下と一緒に、いくつかの骨格部位でヒドロキシアパタイトの結晶がより小さいサイズとなることが示されている。しかしながら、これらの変化は、新しい骨マトリックスの形成の増加をより示すものであり、それは、有機骨マトリックスのより多い相対含量を有することとして特徴付けられる。したがって、これらの微視的観測は、骨の代謝回転におけるストロンチウム処置の潜在的同化効果を示してものと考えることできる。
【0051】
ストロンチウム処置の骨格への有効性の有意な証明が、7000人以上を含む2つの大きな骨折予防のフェーズIII試験が最近終了した、ストロンチウム ラネレートの臨床試験によってもたらされる。ストロンチウム処置群において、プラセボ群の222に対して139の患者が新たな脊椎骨折を起こした(RR = 0.59, 95% CI = 0.48-0.73, P < .001)。骨形成マーカーBSAPは増加し、一方、I型コラーゲンの血清架橋C末端(serum cross-linked C terminal)テロペプチド(CTX、骨吸収の特定マーカー)は減少し、骨形成と吸収の過程を分離するためのストロンチウム ラネレートの介在の可能性が確認された(P.J Meunierら, N Engl J Med, 2004; 350: 459-468)。
【0052】
したがって、本発明は、例えばヒトの女性または男性の大人、若者もしくは子供のような哺乳動物における、例えば骨粗鬆症、変形性関節炎、骨石化症、オステオペニアおよびパジェット病、悪性腫瘍の高カルシウム血症、歯周病、副甲状腺機能亢進症、慢性関節リウマチにおける関節周囲びらん、骨形成異常症、骨化性筋炎、ベヒテレフ病、悪性高カルシウム血症、骨転移により生じる骨溶解病変、骨転移による骨痛、性ステロイドホルモン欠乏による骨粗鬆、ステロイドホルモン処置による骨異常、癌治療によって引き起こされる骨異常、骨軟化症、ベーチェット病、骨化過剰症、転移性骨疾患、不動化で誘発のオステオペニアもしく骨粗鬆症、またはグルココルチコイド誘発のオステオペニアもしくは骨粗鬆症、骨粗鬆症偽神経膠腫症候群、突発性若年性骨粗鬆症のような、軟骨および/または骨の代謝の調節異常を招く軟骨および/または骨の疾患および/または症状の治療および/または予防のため、ならびに外傷性もしくは非外傷性骨折後の骨折治癒の改善のための医薬を製造するための、本明細書に記載された方法により合成されたストロンチウム塩、特にマロン酸ストロンチウムセスキ水和物、ジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物、フマル酸ストロンチウム、サリチル酸ストロンチウム1水和物、コハク酸ストロンチウムおよびストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物ならびにマレイン酸ストロンチウムの塩の使用に関する。
【0053】
図の説明
図1は、サリチル酸ストロンチウム1水和物の新規な結晶形の非対称ユニットの図である。75 %確立の楕円体と割り当てられた原子番号付けが示される。H原子は、任意の大きさの円として示される。アスタリクス(*)で標識された原子は、対称の位置にある(実施例2を参照)。
【0054】
図2は、a軸を見下ろしたサリチル酸ストロンチウム1水和物の結晶パッキングの図である。Srの8配位が多面体として示される。水素の位置は明瞭さのために省略される。
【0055】
図3は、マロン酸ストロンチウム11/2水和物の新規な結晶形の非対称ユニットの図である。75 %確立の楕円体と割り当てられた原子番号付けが示される。H原子は、任意の大きさの円として示される。O5はその構造中の2つのユニットセル間で共有された水分子の酸素原子を意味する。アスタリクス(*)で標識された原子は、対称の位置にある(実施例3を参照)。
【0056】
図4は、b軸を見下ろしたマロン酸ストロンチウム11/2水和物の結晶パッキングの図である。Srの9配位が多面体として示される。水素の位置は明瞭さのために省略される。
【0057】
図5は、ジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物の新規な結晶形の非対称ユニットの図である。75 %確立の楕円体と割り当てられた原子番号付けが示される。H原子は、任意の大きさの円として示される。アスタリクス(*)で標識された原子は、対称の位置にある(実施例4を参照)。
【0058】
図6は、a軸を見下ろしたジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物の結晶パッキングの図を示す。Srの8配位が多面体として示される。C原子はO原子よりわずかに大きくかつ明るい。水素の位置は明瞭さのために省略される。
【0059】
図7は、ストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物の新規な結晶形の非対称ユニットセルの図である。75 %確立の楕円体と割り当てられた原子番号付けが示される。水素の位置は明瞭さのために省略される。アスタリクス(*)で標識された原子は、対称の位置にある(実施例5を参照)。
【0060】
図8は、a軸を見下ろしたストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物の結晶パッキングを示す。Srの8配位が多面体として示される。水素の位置は明瞭さのために省略される。
【0061】
次に、本発明による個々の塩の製造についてのより詳細な説明が示される。個々のストロンチウム塩に対する下記の詳細および細目は、関連する場合はいつでも、必要な変更を加えて、一般的なストロンチウム塩に適用すると同様、ストロンチウム塩に対する上記の詳細および細目は、関連する場合はいつでも、必要な変更を加えて、個々のストロンチウム塩に適用する。本発明は、本発明による方法の一般的な適用の例として単に役割を果たす、上記の好適な塩の具体的な例に限定されない。したがって、前のセクションで記載した、あらゆる分子を含むその他の2価のストロンチウムイオン塩が、本明細書に開示された製造法により製造され得る。
【実施例】
【0062】
実施例1
室温条件下で炭酸ストロンチウムを用いるカルボン酸の中和による結晶塩の一般的製造法
アルカリ土類金属の金属有機塩の合成のための既知の方法における改良の必要性は、以下の比較例8および9から明らかである。温度感受性の有機アニオンを有する金属-有機化合物の純粋な結晶形の容易な合成を可能にする、新規な合成法が本実施例に記載される。
【0063】
一般的に、本合成法は、以下に記載のように実験室規模で行うことができる。
適当な有機酸の少量(0.75〜3 g、以下の表1参照)を、30℃までの温度に加熱して水に溶解した。30℃より低い温度に冷却後、粉末状の炭酸ストロンチウム(Sigma Aldrich, SrCO3, MW 147.6, CAS番号1633-05-02, 約10 g/L)を、磁気撹拌棒による激しい撹拌下、溶液上にゆっくりと振りかけた。炭酸ストロンチウムの添加の初期段階に大量の二酸化炭素が発生し、一方、反応の最終段階にわずかに微量の気体の発生が見られた。塩の大部分は、カルボン酸と炭酸ストロンチウムの等モル量が添加された後、高収率で沈殿し、その沈殿物を室温で濾過(Frisenette 643-111)することにより回収した。濾液の少容量を、1〜4時間以内に塩がより大きな結晶に結晶化するビーカーに移した。等モル(equimolarity)とは、1塩基酸は、ストロンチウムに対して約2:1の関係で、2塩基酸はストロンチウムに対して約1:1の関係で用いられるべきであるような、アニオンの負電荷とストロンチウムの正電荷の量が1:1の関係に近くあるべきであることを意味する。
【0064】
事前の予測に反し、沈殿した形態の再結晶は、沈殿した塩の収率および純度の両方に有意な減少をもたらした。ストロンチウム塩のこの挙動の原因は、結合した結晶水の量の変化または不均一性に関係するのかもしれないが、また、飽和溶液の冷却で、ストロンチウムイオンの二酸化炭素との反応により炭酸ストロンチウムが沈殿することに関係するのかもしれない。それは、従来の先行技術の方法で用いられるような、後に続く再結晶の必要性なしに、純粋な形の塩を製造できるので、この特許に記載された新規な方法の重要性をも示す。
【0065】
次の表1は、熱不安定でかつ/またはpH感受性なカルボン酸アニオンのストロンチウム塩の製造のために本発明による方法を用いたときの反応物(reaction products)と得られて生じる塩の概要を示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1.炭酸ストロンチウムと水に溶解したアニオンとの反応によるストロンチウム塩の合成の条件および結果。結晶構造および回折図形(diffractograms)は、実施例7に記載のようにして得られた。構造は、単一結晶X線結晶学により解析し、その結果を、新規な化合物を明白に識別するケンブリッジ結晶データベース(the Cambridge Crystallographic Database)のデータと比較した。
【0068】
実施例2
ストロンチウム 2-オキシド-ベンゾエート1水和物(サリチル酸ストロンチウム)の合成
ストロンチウム 2-オキシド-ベンゾエート水和物を実施例1に記載の方法により合成した。簡単に記載すると、炭酸ストロンチウムを40℃でサリチル酸の飽和溶液に等モル量で加えた。飽和溶液は、脱気蒸留水(250 ml)にサリチル酸(47 g) (Sigma S5922, MW 138.12)を溶解して調製した。固体のサリチレートが完全に溶解した後、炭酸ストロンチウム(50 g)(Sigma Aldrich, SrCO3, MW 147.6, CAS番号1633-05-02)を、約30分間かけて、一定の混合下に加えた。ストロンチウム 2-オキシド-ベンゾエート水和物が、20℃での沈殿により、理論量の95%以上の収率でかつ高純度で得られた。
【0069】
この新規な塩は、サリチレートのカルボン酸のみが脱プロトン化しているような、ストロンチウム原子当たり2個のサリチレート原子団を有する以前に記載されたストロンチウム ジ-サリチレート2水和物(Debuystら 1979, J. Chim. Phys. Chim. Biol. 76, 1117)とは実質的に異なる。このことは、ユニット重量当たり、非常に低いストロンチウム原子のモル比を与え、それゆえ医薬的適用にそれほど適さない。さらに、Debuystらにより報告された収率と純度は、本明細書に記載された新規な方法を用いて我々が得るものより実質的に低い。
【0070】
本実施例に開示された合成法は、サリチル酸ストロンチウム1水和物の純粋な均質単結晶を製造することができる。その結晶構造が、実施例7に記載のようにしてX-線結晶学により測定された。
【0071】
ストロンチウム 2-オキシド-ベンゾエート水和物(サリチル酸ストロンチウム)の結晶データは次のとおりである:
【0072】
【表2−1】

【0073】
【表2−2】

【0074】
全てのHパラメータは最初に大まかに精密化(refined)された。最後のサイクルにおいて、CH基のH原子は、C-H = 0.93 Åで計算された位置に置かれ、ライディング(riding)原子として精密化された。水分子に対して、O-Hの距離は0.82 (2) Åに制限された。置換パラメータは、対応するCまたはO原子の1.2 (CH)または1.5 (OH)倍Ueq に設定された。
【0075】
Srは、ほぼ正4角反柱(square antiprisms)の状態で8配位されている。この反柱は、面共有により対で結合されており、これらの対は、ac-平面中の層に稜共有によりさらに結合されている(図1参照)。2-オキシド-ベンゾエートは、その層から突き出ており、ファン・デル・ワールス力でb-方向でそれらと結合している。図2は、8配位した多面体として示されたストロンチウムを用いて、サリチル酸ストロンチウムの結晶パッキング(packing)を示す。
【0076】
比較すると、Srジサリチレート2水和物(Debyustら 1979)は、多面体鎖(polyhedral chains)を形成し、ここでヒドロキシ基は、これらの鎖と結合して、3次元水素結合ネットワークに関与する。Sr-2-オキシド-ベンゾエート水和物において、水Hドナーのただ1つのみ、H8が通常の水素結合に関与する。他のもの、H7は普通の水素結合に関与しないが、中心(A)まで2.83 Åの距離と154°のO4-H7-A角で、隣接するベンゼン環の中心に向いている。
【0077】
【表3】

【0078】
実施例3
マロン酸ストロンチウム11/2水和物の合成ならびに結晶構造および物理化学的性質の測定
マロン酸(41.6 g)(Fluka, MW 104.06 g/mole, CAS番号141-82-2, ロット番号449503/1, ファイリングコード44903076)を、30℃までの温度に加熱することにより水に溶解した。30℃より低い温度に冷却後、粉末状の炭酸ストロンチウム(Sigma Aldrich, SrCO3, MW 147.6, CAS番号1633-05-02)を、磁気撹拌棒による激しい撹拌下、溶液上にゆっくりと振りかけた。全量59.05 gの炭酸ストロンチウムを用いた。反応の間、炭酸ストロンチウムの添加の初期段階に大量の二酸化炭素が発生し、一方、反応の最終段階にわずかに微量の気体の発生が見られた。30℃より低い温度を維持した。反応時間の60分後に、白色の中程度の粗さの結晶として、マロン酸ストロンチウム11/2水和物が沈殿した。その沈殿物を室温で濾過(Frisenette 643-111)することにより回収した。塩の結晶構造は、実施例7に記載のようにして測定され、図3に示された構造を有することを見出した。塩の全収量は68.5 gであり、純度は98%より優れていると評価された。
【0079】
図4は、9配位した多面体として示されたストロンチウムを用いて、マロン酸ストロンチウムセスキ水和物の結晶パッキングを示す。
【0080】
マロン酸ストロンチウムセスキ水和物は、結合した結晶水が除去されるかどうかを見るために加熱された。結晶水は、約70℃を超える温度で、マロネートから不可逆的に引き離された。したがって、無水マロン酸ストロンチウムが、マロン酸ストロンチウムの溶液を沸騰させることにより、高収率でかつ高純度で製造された。おそらく、収率と純度は、例えば130℃の温度および2バールの圧力を達成するオートクレーブ容器を用いることにより、さらに高温および高圧にマロン酸ストロンチウムの結晶を加熱することにより改善され得る(特許出願PCT/DK2005/000307参照)。
【0081】
マロン酸ストロンチウム11/2水和物(マロン酸ストロンチウムセスキ水和物を指す)に対する結晶データは次のとおりである:
【0082】
【表4−1】

【0083】
【表4−2】

【0084】
全てのHパラメータは最初に大まかに精密化された。最後のサイクルにおいて、CH2基のH原子は、C-H = 0.97 Åで計算された位置に置かれ、ライディング原子として精密化された。水分子に対して、O-Hの距離は0.82 (2) Åに制限された。置換パラメータは、対応するCまたはO原子の1.2 (CH2)または1.5 (OH)倍Ueq に設定された。
【0085】
Srは、全ての利用可能なマロネートと水O原子により9配位される。その多面体は、3次元ネットワーク中で稜共有および面共有により結合される。O3およびO6は、多面体間でなお共有されない。このようにして作られるゼオライト様のチャンネル系は、マロネートの炭素主軸で占められる(図4)。全ての水のH原子は、カルボキシリック(carboxylic)O原子との水素結合に関与する。比較すると、Srマロネート無水物(Briggman & Oskarson, 1977)は、同様な3次元多面体ネットワークを形成するが、全てのO原子はSr多面体間で共有される。それは、マロン酸ストロンチウムセスキ水和物においてDx = 2.48 Mgm-3に比較して2.78 Mgm-3の比較的密度の高いパッキングをもたらす。相互結合のより高い度合およびより密度の高いパッキングが、マロン酸ストロンチウムセスキ水和物の不可逆的脱水の最も可能性の高い理由である。
【0086】
【表5】

【0087】
実施例4
ジ L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物の合成
ジ L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物の単結晶の形成は、アスコルビン酸カルシウムの製造に対する、S.L RuskinおよびA.T. Merrillにより記載された方法(Science, 5月, 1947, 504頁)に従って行われた。RuskinおよびMerrillにより記載された方法は、30℃の温度でのL-アスコルビン酸のカルシウム塩を与えるが、過剰なアセトン中での塩の沈殿を必要とし、アルコール/アセトンでの大量の洗浄を必要とする無晶形の沈殿をもたらし、均質で明確な結晶形を得るために再結晶を必要とする。さらに、Ruskin & Merrillによる方法において、1モル過剰のカルシウムが用いられ、生成物分析は低収率および低純度を示す。我々は、RuskinおよびMerrillによって開示された方法に遜色ない方法により、L-アスコルビン酸ストロンチウムを製造することができた。簡単に言えば、炭酸ストロンチウム(33.6 g、0.22 mol)を、溶解したアスコルビン酸(40 g、0.22 mol)の溶液に1〜2時間でゆっくりと加えた。その溶液を2.5 Lのアセトンを含む大きなビーカー中にデカント(decanted)すると、すぐに白色の化合物の沈殿が生じた。この化合物を濾過し、濾紙中に、粗い粒子のアスコルビン酸ストロンチウムを得た。単結晶分析に適した結晶を、デシケータ中で真空乾燥後に得た。
【0088】
しかしながら、上記の方法で得られるジ L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物の全収率はかなり低く、塩の十分な純度と均質性を得るために再結晶を必要とした。このことは、純粋な形態のL-アスコルビン酸カルシウムを得るために同様な再結晶を必要とする、Ruskin & Merrillにより報告に基づいている。
【0089】
本発明者らは、炭酸ストロンチウムとアスコルビン酸との間で1:2のモル比を用いることにより、ジ L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物を100%に近い収率で得ることができることを見出した。これは、アニンとカチオンの電荷の等モル比に相当する。標記の実験において、16.8 gの炭酸ストロンチウム(0.11 molのストロンチウムを含む)を、全容積200 mL中で、40 gのL-アスコルビン酸(0.22 mol)と反応させた。結晶形成を誘導するために、溶液に少量のアセトンを加え、溶液を濾過し、濾液中に有機ストロンチウム塩の結晶化した沈殿のかなりの量が現われるまで、室温(22〜24℃)に放置した。
【0090】
このストロンチウム塩は、水に非常に溶解性で、ほんの少量の水を含んだ化合物の黄色のシロップを形成する著しい傾向を有する。デシケータ中で真空乾燥することにより、残存する水の微量を蒸発させ、そのようにして、白色の結晶粉末が得られる。塩の結晶構造は、実施例7に記載のようにして測定された。塩の構造を図5に示し、結晶パッキングを図6に示す。
【0091】
ジ L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物の溶解度は、500 g/lを超え、それゆえ、このストロンチウム塩は、既知の最も溶解性の高いストロンチウム塩である可能性が高く、それは、例えばその化合物の医薬的使用のためにいくつかの利点を提供し得る。ジ L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物に対する結晶データは、次のとおりである:
【0092】
【表6−1】

【0093】
【表6−2】

【0094】
全てのHパラメータは最初に大まかに精密化された。最後のサイクルにおいて、CH2およびCH基のH原子は、C-H = 0.97 Å(CH2)および0.98 Å(CH)で計算された位置に置かれ、ライディング原子として精密化された。水分子およびOH基に対して、O-Hの距離は0.82 (2) Åに制限された。置換パラメータは、対応するCまたはO原子の1.2 (CH2およびCH)または1.5 (OH)倍Ueq に設定された。
【0095】
Srは、アスコルベートと水O原子により8配位されている。2つの独立したアスコルベートは異なって配位されている。アスコルベート番号1は、2つのSrイオンに配位するために、O11、O13、O15およびO16を使用し、そのようにして、b-方向のジグザク鎖にSrの多面体を接続する。一方、番号2のアスコルベートは、O25およびO26を介して片側の配位を有する。多面体鎖は、水素結合することにより、ac-平面に接続される。独立したアスコルベートの配座も異なっている。O14−C14−C25−O25およびO24−C24−C25−O25は、それぞれ169.7 (2)°および57.1 (2)°である(図5)。水素ドナー全てが、3次元ネットワークに関与する水素結合に含まれる。
【0096】
前記のように、図6は、8配位した多面体として示されるストロンチウムを用いたL-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物の結晶パッキングを示す。
【0097】
【表7】

【0098】
実施例5
ストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物の合成
イブプロフェンは、シクロ-オキシゲナーゼの阻害によりその生理作用を発揮する非ステロイド系鎮痛剤で、痛み(pain)と疼痛(aches)の軽減のための多くの医薬品に用いられている。我々は、実施例1に従った方法により、イブプロフェンの新規なストロンチウム塩を合成した。簡単に記載すると、固体の炭酸ストロンチウム(Sigma Aldrich, SrCO3, MW 147.6, CAS番号1633-05-02)(7.38 g)を、イブプロフェン(Sigma Aldrich I7905, FW 206.28)(22.83 g)で飽和した全量350 mlの溶液に、約30分かけて44℃で加えた。室温(20℃)に冷却、濾過および40℃で乾燥後、生成物を高収率かつ高純度で得た。
【0099】
ストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物の結晶データは、実施例7に記載した方法により測定した。結晶配位は次のとおりである:
【表8−1】

【0100】
【表8−2】

【0101】
いくつかの末端メチル基は、不規則なサインを示す。しかしながら、C19、C22およびC23をスプリットポジション(split position)を用いて精密化する試みは、全体の適合度を改良しなかった。それゆえ、異方系モデルが、本解析に適すると判断された。全てのHパラメータは最初に大まかに精密化された。最後のサイクルにおいて、CH、CH2およびCH3基のH原子は、C-H = 0.93 Å(芳香族CH)、0.98 Å(脂肪族CH)、0.97 Å(CH2)および0.96 Å(CH3)で計算された位置に置かれ、ライディング原子として精密化された。水分子に対して、O-Hの距離は0.82 (2) Åに制限された。置換パラメータは、対応するCまたはO原子の1.2 (CH、CH2およびCH3)または1.5 (OH)倍Ueq に設定された。
【0102】
Srは、非対称ユニットからの6個のO原子および隣接するイブプロフェネートからの2個のさらなるカルボキシレートO原子(O11およびO31、図7)により歪んだ正4角反柱の状態で8配位されている。そのストロンチウムの多面体は、a-方向の鎖を形成するために稜を共有する(図8)。その鎖は、c-方向に突き出たイブプロフェネートを有して、ab-平面に層状態で積み重ねられる。これらの層は、言い換えると、c-方向に積み重ねられ、いずれにしても、ファン・デル・ワールス相互作用だけにより積み重ねられる。a-方向から見て(図8)、ストロンチウムの多面体は、ab-平面に対して少し回転しているように見える。このことは、2つの独立したイブプロフェネートのパッキングの差異を引き起こす。1つのイブプロフェネートは、次の層に向かってさらに広がり、次いでもう1つのイブプロフェネートが次の層に向かってさらに広がって、鎖間の空間により閉じ込められる。パッキングにおけるこの差異は、前者のイブプロフェネートの末端メチル基のより大きな乱れ(disorder)の観測を説明する。水素結合は、パッキングにおいて、小さな役割しか果たさない。それぞれの水の1つの水素のみが、水素結合に用いられ、水素結合は、イブプロフェネートの嵩高さにより、多面体鎖内で隣接するストロンチウムの多面体中のカルボキシリックO原子に限定される。
【0103】
【表9−1】

【0104】
【表9−2】

【0105】
実施例6
溶解した塩化ストロンチウムおよび溶解した適当なカルボン酸アニオンのナトリウム塩からの室温での沈殿による、ストロンチウムの結晶性塩の一般的製造法
容積200 mLのガラス製ビーカー中で、カルボン酸のナトリウム塩(0.1 mol)を、室温で小容積の水に溶解した。最終容積は50 mLであった。もう1つのビーカー中で、SrCl2(SrCl2 6水和物、Sigma-Aldrich 43,966-5)(0.05 mol)を水(100 mL)に溶解した。この後者の溶液を、溶解したナトリウム塩の最初の溶液中にゆっくりと静かに注ぎ、きめの細かい白色の沈殿が生じた。その溶液を濾過し、濾液中に、有機ストロンチウム塩のかなりの量の結晶化した沈殿が生じるまで、室温(22〜24℃)で数日間静置した。この方法で、表6に示したように、イブプロフェネートおよびマレエートのストロンチウム塩を得た。
【0106】
さらに、上記に沿って、本発明者らは、新規な合成法を発見および開発し、それにより、アセトンの添加の必要性なしに、L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物を合成することができた。L-アスコルビン酸ナトリウムに、最終モル比1:2になるように、次のように(L-アスコルビン酸ナトリウム(Sigma-Aldrich A7631, MW 198.11)(約71 g)を含む飽和水溶液に、塩化ストロンチウム(SrCl2 6水和物、Sigma-Aldrich 43,966-5)(全量約100 g)を加えた)して、塩化ストロンチウム6水和物を加えた。塩化ストロンチウムの添加後、さらにL-アスコルビン酸ナトリウム(全量約77 g)を、透明な黄色のシロップが得られるまで、44℃の温度で、その溶液に加えた。そのシロップを、最初に吸引濾過により乾燥して、次いでデシケーター中で乾燥した。このようにして得られた最終物は、黄色い汚れを有する白色の粉末であり、一方、選択された単結晶は、無色であった。
【0107】
【表10】

【0108】
表6.塩化ストロンチウムと適当なアニオンのナトリウム塩との反応によるストロンチウム塩の合成の条件および結果。結晶構造および回折図形は、実施例7に記載のようにして得られた。ストロンチウム ジ-イブプロフェン塩の粉末X-線結晶学解析は、図7および8に示したストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物塩と一致したので、得られた塩の結晶構造の識別を可能にした。L-アスコルベートとの合成反応で得られた塩は、図5および6に示したように、ジL-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物と確認された。
【0109】
実施例7
X-線回折による結晶構造の測定
概要
結晶性物質は、3次元繰り返し、すなわち1番小さい同一ユニット、ユニットセルを有する構造であるとして定義され、それが、3次元で解釈されることにより、結晶のあらゆる部分に当てはまるであろう。典型的には、無機および有機の物質に対するユニットセルの寸法は、3〜25Åである。そのようなユニットセルの3次元配列は、ユニットセルの全ての角に接続する格子面のセットも含むであろう。そのようなセット中の格子面間の距離は、0〜ユニットセル自身の最大寸法までであろう。したがって、面の距離は、回折に用いられるX-線の波長、0.5〜2.4Åと同じ次数の大きさである。そのような結晶が、X-線ビーム中に置かれると、それは特有の干渉および回折パターンを引き起こす格子として行動するであろう。記録される回折された照射の位置は、格子面の距離、すなわちユニットセルのサイズにより決定されるであろうが、一方、記録される回折された強度は、ユニットセル中の原子の位置および対称性により決定されるだろう。実用的な目的のために、このことは、独特な結晶構造が、識別のためまたは結晶構造を決定するために用いることができる独特な回折パターンを生じるであろうことを意味している。通常、構造解析に用いられる2つの一般的な方法:単結晶法および粉末回折法がある。
【0110】
単結晶法
この方法は、主に、未知の物質の結晶構造を決定するために用いられる。名前が暗示するように、ちょうど1つの結晶、典型的には大きさが0.3 mm未満の結晶が用いられる。結晶が、独立方向に回転することができる単結晶回折計にのせられ、約10時間で完全な3次元の回折パターンが収集され得る。回折点の位置から、ユニットセルの寸法を計算することができ、そのスポットの強度から、ユニットセル内の原子の配置を解明することができる。解明される構造は、精度内、典型的には0.01 Åよりもよい原子間の距離で固有(unique)であり、本方法は、分子の構造における絶対的な確認にも敏感である。近代的な回折計およびソフトウエアにより、本方法は、有機および金属有機化合物で99%まで成功している。
【0111】
粉末回折
粉末試料は、観念的には、ランダムに配向したマイクロメータの大きさの結晶の無限量を含むであろう。X-線で照射すると、それぞれの結晶は、独立して回折し、回折パターンにその寄与を追加するであろう。結果として、粉末回折パターンは、3次元の単結晶パターンの1次元投影になるであろう。粉末回折パターンの解釈は、単結晶パターンよりましてやなおさら簡単ではない。ユニットセルの大きさおよび対称性により、粉末回折パターンは、種々の度合の反射の重なりを示す。それにもかかわらず、ピークの位置は、なおユニットセルの大きさの関数であり、その強度はユニットセルの量の関数である。粉末回折パターンは、多かれ少なかれ調べられている構造のフィンガープリント(fingerprint)であり、粉末回折データベースおよび効率的な検索-適合(search-match)プログラムを用いて、10分間のデータ収集と数分間の解析で、間違いなく公知の構造を確認することができる。粉末回折は、一般的に、物質の構造的な特徴付けのために大いに役立つ手段となっている。相の同定を除き、一般に、本方法は、構造解明、構造リファインメントのため、および結晶化度、結晶サイズおよびサイズ分布、応力/歪み等の研究のために用いられる。本方法は、主に、固体の結晶性物質を対象としているが、非晶質および繊維質の物質ならびに薄膜からの情報も容易に得られる。
【0112】
粉末回折装置
回折計:Guinier(送波)形態で操作し、一次石英集光単色光分光器および積算レーザー/光電子増倍読出しシステムを有するイメージ検出板を備えたHuber G670粉末回折計
X-線発生器:40 kVおよび30 mA
照射:CuKα1 1.54059 Å
計測器較正:強度および2θ-スケールは、フルパターン(full pattern)Rietveld精密化(refinement)により適合させた、Si-標準(NBS)でチェックした。おおよそ1週間に1回および回折計のあらゆる調整後に較正した。
【0113】
試料ホルダー:平板スコッチテープ、スコッチテープ中の有効な領域10×10 mm
測定:範囲:2θで2から100°。検出器は2θで0.05°のステップ(steps)で読み取られる。曝露時間は散乱粉末により15〜120分の間である。
測定手順:試料をめのう乳鉢および乳棒ですりつぶし、スコッチテープ上の試料ホルダーに置く。その試料ホルダーを粉末回折計マウント(mount)に取り付け、ロッキングモータを起動する。データ収集プログラムに、ファイル名(典型的には試料名)を与え、あらゆるその他のコメントまたは測定値を入れる。測定時間を入れ、データ収集を開始する。ファイル名、測定時間および操作者をノートに記入する。測定終了後、粉末回折パターンをプリントし、操作者がサインする。検索-適合プログラムを用いてサンプルを同定する試みが、通常なされるであろう。
【0114】
比較例8
溶解した塩化ストロンチウムおよび溶解した適当なカルボン酸アニオンのナトリウム塩からの沈殿による、ストロンチウムの結晶性塩の製造のための公知方法の使用
この比較例において、ストロンチウム塩を製造するために、当該技術分野で公知の方法を用いた結果を示す。この方法により製造された塩の収率は、一般に、60%未満で、十分な純度で結晶性塩を得るために、しばしば、1以上の再結晶を必要とする。本方法の例として、次の手順が与えられ、それは、アニオンに関するあらゆる予備的知識なしに行うことができる、有機アニオンを有するストロンチウム塩の合成のための一般的手順を記載する。
【0115】
100 mL容積のガラス製ビーカー中で、カルボン酸のナトリウム塩(5 g)を、30〜50℃を超えない温度で少し加熱して、少容量の水に溶解した。この例による標記の実験において、フマル酸ナトリウム(5 g = 0.0312 mol)を用いたが、その他のアニオンを用いてもよい。最終容積は、25〜50 mLに調整された。もう1つのビーカー中で、SrCl2 (SrCl2 6水和物、Sigma-Aldrich 43,966-5)(10 g、0.0375 mol)を水(100 mL)に溶解した。この後者の溶液を、溶解したナトリウム塩の最初の溶液にゆっくりと静かに注いだ。初期の曇りが観察されるまで、移入を続け、それは全容量50〜100 mLとなった。その溶液を、有機ストロンチウム塩のかなりの量の結晶化した沈殿が現われるまで、数日間、室温(22〜24℃)で静置した。
【0116】
進行する反応を、ストロンチウムイオンとフマル酸ナトリウムとの反応により例示する(反応スキーム(a)および(b))。
【化4】

【0117】
沈殿後、溶液を、吸引フラスコを用いるBuchnerロートで濾過し、結晶を少容量のエタノールでさっと流した。いくつかの塩の結晶は非常に溶解性であり、結晶の収率を改善するために、その溶液を少なくとも30〜60分のような、より長い時間静置した。繰り返しの結晶化は、約50%の収率を招いた。L-アスパルテートのストロンチウム塩およびラクテートのストロンチウム塩は、室温で水に25 g/lを超える溶解度を有し、非常に溶解性であった。
ストロンチウムのラクテートおよびL-グルタメート塩は、過剰の塩化ストロンチウムを用いた溶液から沈殿し、ラクテート塩の大きな結晶は、溶媒をゆっくり蒸発することにより達成された。
【0118】
比較例9
水酸化ストロンチウムでカルボン酸を中和することによる、結晶性塩の一般的製造法
この比較例は、合成の出発点として、ストロンチウムの水酸化物塩を用いて、カルボン酸アニオンのアルカリ金属塩を製造するための、当該技術分野で公知のもう1つの方法を提供する。適当な有機酸の適切な少量(0.75〜3 g、以下の表を参照)を、30℃〜50℃の間の温度に加熱することにより、水に溶解した。次いで、水酸化ストロンチウム(Sigma Aldrich, Sr(OH)2*8H2O, MW 265.71, CAS番号1311-10-0, 約10 g/L)をゆっくり加えた。次に、磁気撹拌棒を加え、懸濁液の撹拌および穏和な加熱(すなわち30〜50℃)を始めた。しばらくの後、溶液が透明になり、全ての固体物質が溶解した。加熱を維持し、3時間のインキュベーション後、Buchnerロートで熱時濾過した。非常に少量の不純物が濾紙に残った。
【0119】
続いて、濾液を一晩室温で冷却し、それは、所期のストロンチウム塩の微細粉末結晶の成長をもたらした。塩のさらなる精製は、再結晶を繰り返すことにより行うことができる(表7)。
【0120】
【表11】

【0121】
表7:アニオンの遊離酸の形態と水酸化ストロンチウムを用いた一般的な反応経路に従った、8つの具体的な有機ストロンチウム塩の合成における、有機ストロンチウム塩の合成に用いた出発試薬の量および回収率
【0122】

*) 回収率はSr(OH)2*8H2Oにおけるストロンチウム量および対応する酸の最少量に相当する化学量論(例えばタートレートにおいて1:1の比)からの%で計算した。表7(上記)のストロンチウム塩は、粉末X-線結晶学により特徴付けられ、対応する回折図形(非表示)は、生成物が比較的不純で質が悪い(すなわち、不均質な結晶形である)ことを示した。したがって、室温合成での最大収量は30%であると評価され、それは、X-線回折図形の特徴的ピークの強度から計算された。したがって、推定回収率を得るために、重量は0.3の係数が掛けられ、ストロンチウム塩の分子量は、結合した結晶水の該当量と一緒に用いられた。不正確だけれども、本方法は、表7の白色粉末は、所期の生成物の高収量を含まなかったことを示す。生成物の残りのフラクションは、主に、未反応試薬(すなわち水酸化ストロンチウム)および炭酸ストロンチウムから構成された。もし、表7のストロンチウム塩がその結晶構造中に6個の水分子を含んでいたら、その収率は、現在の値と比較して、およそ10〜50%さらに減少するであろう。これらの推定と決定における困難性は、塩が再結晶により単離されたときの炭酸ストロンチウムの実質的な生成量に起因し得るのであろう。
【0123】
1) フマル酸は水に不溶性であり、完全な可溶化が達成されるまで、エタノールが懸濁液に加えられる。合成はこの原料を用いて続けられる。
2) 水酸化ストロンチウムおよびL-アスコルベートの示された量に加えて、水に溶解したさらなるSrCl2*6H2O(4.087 g)がその反応混合物に加えられた。
【0124】
結論として、ストロンチウム塩の製造のための実施例8および9で例示したように、先行技術の文献で公知の方法は、比較的不満足な収率(多くても40〜50%未満)をもたらす。さらに、この実施例のデータは、先行技術の文献に開示された方法によりストロンチウム塩を合成するとき、反応生成物中に炭酸ストロンチウムの形成、不均質な結晶の形成および未反応の出発物の存在が一般的な現象であることを示している。実施例1〜6において、温度および/またはpH感受性のアニオンと共存できる穏和な条件下、より高収率でかつより高純度でストロンチウム塩を製造するための方法の手引きが与えられる。本実施例は、本発明の説明を目的とするものであって、決して本発明を限定することを構成しない。さらに、当業者は、本発明に従って、興味あるその他のアルカリ土類金属塩または金属-有機化合物の製造のための手引きを見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】サリチル酸ストロンチウム1水和物の新規な結晶形の非対称ユニットの図である。
【図2】a軸を見下ろしたサリチル酸ストロンチウム1水和物の結晶パッキングの図である。
【図3】マロン酸ストロンチウム11/2水和物の新規な結晶形の非対称ユニットの図である。
【図4】b軸を見下ろしたマロン酸ストロンチウム11/2水和物の結晶パッキングの図である。
【図5】ジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物の新規な結晶形の非対称ユニットの図である。
【図6】a軸を見下ろしたジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物の結晶パッキングの図である。
【図7】ストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物の新規な結晶形の非対称ユニットセルの図である。
【図8】a軸を見下ろしたストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物の結晶パッキングの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中、例えば40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、または15℃以下のような、約50℃以下の温度で、例えば最大で240分、最大で180分または最大で120分のような、最大で約300分の間、炭酸ストロンチウムと適当な有機酸(アニオン)とを反応させることを含む、ストロンチウム塩の製造方法。
【請求項2】
ストロンチウム塩のアニオンが温度感受性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ストロンチウム塩が、マロン酸ストロンチウム、ジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム、フマル酸ストロンチウム、サリチル酸ストロンチウム、コハク酸ストロンチウム、ストロンチウム ジ-イブプロフェネートおよびマレイン酸ストロンチウムからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
反応が、溶液状態の有機酸と、激しい撹拌下および/または混合下に、固体の形態で加えられる炭酸ストロンチウムとの間で行われる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
pHの上昇を避けるために反応容器を連続的にモニターしながら反応が行われる、すなわち、反応容器中のpHが、例えばpH 9未満、pH 8.5未満、pH 8未満またはpH 7.5未満のような、pH 9.5未満に維持される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水性媒体中、例えば40℃以下、30℃以下、25℃以下、20℃以下、または15℃以下のような、最大で50℃以下の温度で、塩化ストロンチウムと適当な有機酸とを反応させることを含む、ストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物またはマレイン酸ストロンチウムの製造方法。
【請求項7】
ストロンチウムの正電荷とアニオンの負電荷との比が1:1にできるだけ近い、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ストロンチウム塩の収率が、例えば75%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上のような、70%以上である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
ストロンチウム塩が、続く再結晶を伴わない1工程法で製造され、所期のストロンチウム塩が、例えば90%以上、例えば95%以上または97%以上のような、80%以上の純度で得られる、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
沈殿する炭酸塩の量が、2価の金属塩の量の、例えば0.5%未満または0.2%未満のような、約1%未満である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
反応混合物からのストロンチウム塩の沈殿が、反応混合物に対して、例えば5〜40容量%のアルコールまたは10〜25容量%のアルコールのような、約5〜60容量%のアルコールの添加によりもたらされる、請求項1〜10のいずれか1つ記載の方法。
【請求項12】
アルコールがエタノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アルコールがメタノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
反応混合物からのストロンチウム塩の沈殿が、反応混合物に対して、例えば5〜40容量%のアセトンまたは10〜25容量%のアセトンのような、約5〜60容量%のアセトンの添加によりもたらされる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
図1および/または2に示されるユニットセル結晶構造を有するサリチル酸ストロンチウム1水和物であるストロンチウム塩。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1つに記載された方法で得ることができる、請求項15に記載のサリチル酸ストロンチウム1水和物。
【請求項17】
図3および/または4に示されるユニットセル結晶構造を有する結晶ユニットセル当たり11/2水分子を含む結晶形態にあるマロン酸ストロンチウムであるストロンチウム塩。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか1つに記載された方法で得ることができる、請求項17に記載のマロン酸ストロンチウムセスキ水和物。
【請求項19】
図5および/または6に示されるユニットセル結晶構造を有するジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物であるストロンチウム塩。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれか1つに記載された方法で得ることができる、請求項19に記載のジ-L-アスコルビン酸ストロンチウム2水和物。
【請求項21】
図7および/または8に示されるユニットセル結晶構造を有するストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物であるストロンチウム塩。
【請求項22】
請求項1〜14のいずれか1つに記載された方法で得ることができる、請求項21に記載のストロンチウム ジ-イブプロフェネート2水和物。
【請求項23】
マレイン酸ストロンチウムであるストロンチウム塩。
【請求項24】
請求項1〜14のいずれか1つに記載された方法で得ることができる、請求項23に記載のマレイン酸ストロンチウム。
【請求項25】
フマル酸ストロンチウムであるストロンチウム塩。
【請求項26】
請求項1〜14のいずれか1つに記載された方法で得ることができる、請求項25に記載のフマル酸ストロンチウム。
【請求項27】
コハク酸ストロンチウムであるストロンチウム塩。
【請求項28】
請求項1〜14のいずれか1つに記載された方法で得ることができる、請求項27に記載のコハク酸ストロンチウム。
【請求項29】
医薬として使用される、請求項15〜28のいずれか1つに記載のストロンチウム塩。
【請求項30】
例えばヒトの女性または男性の大人、若者もしくは子供のような哺乳動物における、例えば骨粗鬆症、変形性関節炎、骨石化症、オステオペニアおよびパジェット病、悪性腫瘍の高カルシウム血症、歯周病、副甲状腺機能亢進症、慢性関節リウマチにおける関節周囲びらん、骨形成異常症、骨化性筋炎、ベヒテレフ病、悪性高カルシウム血症、骨転移により生じる骨溶解病変、骨転移による骨痛、性ステロイドホルモン欠乏による骨粗鬆、ステロイドホルモン処置による骨異常、癌治療によって引き起こされる骨異常、骨軟化症、ベーチェット病、骨化過剰症、転移性骨疾患、不動化で誘発のオステオペニアもしく骨粗鬆症、またはグルココルチコイド誘発のオステオペニアもしくは骨粗鬆症、骨粗鬆症偽神経膠腫症候群、突発性若年性骨粗鬆症のような、軟骨および/または骨の代謝の調節異常を招く軟骨および/または骨の疾患および/または症状の治療および/または予防のため、ならびに外傷性もしくは非外傷性骨折後の骨折治癒の改善のための医薬を製造するための、請求項15〜28のいずれか1つに記載のストロンチウム塩の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−500358(P2009−500358A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519796(P2008−519796)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000396
【国際公開番号】WO2007/003200
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(505403979)
【氏名又は名称原語表記】OSTEOLOGIX A/S
【住所又は居所原語表記】c/o Symbion Science Park,Fruebjergvej 3,DK−2100 Copenhagen O,DENMARK
【Fターム(参考)】