説明

スピンドルモータ及び穿孔加工装置

【課題】従来よりも微細な穴を形成する際に発生する微小な送り負荷を安定して測定することが可能なスピンドルモータを提供する。
【解決手段】筒状筐体110と、モータ120と、穿孔工具把持部150と、筒状筐体110内でモータ120の回転軸と一体になって回転可能で、かつ、モータ210の回転力を穿孔工具把持部150に伝達するための回転体であって、先端側軸受面及び基端側軸受面を有する鍔部134が外周部に形成された回転体130と、筒状筺体110に弾性部材240を介してかつ送り方向に沿って微動可能に固定され、鍔部134における先端側軸受面及び基端側軸受面を挟み込んで穿孔工具把持部150からの送り負荷を受ける空気静圧軸受220と、送り方向に沿った空気静圧軸受220の変位に基づいて送り負荷を測定する送り負荷測定装置140とを有するスピンドルモータ100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルモータ及び穿孔加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図18は、従来のスピンドルモータ900を説明するために示す図である。
従来のスピンドルモータ900は、図18に示すように、筒状筐体910と、筒状筐体910の内側で筒状筺体910に固定されたモータ920(図示せず。)と、モータ920の先端側に配設されモータにより回転駆動される穿孔工具把持部950と、筒状筐体910内でモータ920の回転軸と一体になって回転可能で、かつ、モータ920の回転力を穿孔工具把持部950に伝達するための中空のスピンドル軸930と、スピンドル軸930と一体になって回転する回転体932とを有する。筒状筐体910には、回転方向軸受部912及び送り方向軸受部914,916が形成され、回転体932には、回転方向軸受部934及び送り方向軸受部936,938が形成されている。これらの軸受部には、バルブ912xを介して外部から空気が供給されるとともに開口930x及びスピンドル軸930の内部を介して空気が排出され、空気静圧軸受構造が構成されている。なお、図17中、符号960,962,964は固定部材を示し、符号966はシールド部材を示し、符号968はケース部材を示す。
【0003】
従来のスピンドルモータ900は、筒状筺体910に対するスピンドル軸930の送り方向の変位に基づいて送り負荷を測定する、静電容量測定方式の送り負荷測定装置940をさらに有する。この送り負荷測定装置940は、互いに絶縁されている一対の固定電極942A及び942Bと、スピンドル軸930に固定された検出電極944と、固定電極942Aと検出電極944との間に形成される第1コンデンサ及び固定電極942Bと検出電極944との間に形成される第2コンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定する静電容量測定回路946とを有する。
【0004】
このため、従来のスピンドルモータ900によれば、送り負荷測定装置940が、固定電極942Aと検出電極944との間に形成される第1コンデンサ及び固定電極942Bと検出電極944との間に形成される第2コンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定することにより非接触で送り負荷を測定するため、送り負荷を高精度で検出することが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開2006−35376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、穿孔加工においては、無痛針の針穴形成加工などの種々の用途において従来よりも微細な穴(例えば、内径100μm以下。)を形成することが求められている。しかしながら、このように微細な穴を形成しようとすると、穿孔加工中に所定の送り負荷よりも少し大きい送り負荷がかかっただけでも穿孔工具が破損することがあるため、それを防止するには、極めて小さい送り負荷(微小な送り負荷)を前もって検出することが必要となる。しかしながら、従来のスピンドルモータ900においては、そのような微小な送り負荷を安定して測定することが困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、従来よりも微細な穴を形成する際に発生する微小な送り負荷を安定して測定することが可能なスピンドルモータを提供することを目的とする。また、上記した優れたスピンドルモータを備える穿孔加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の目的を達成するため、「従来のスピンドルモータ900において、従来よりも微細な穴を形成する際に発生する微小な送り負荷を安定して測定することが困難となる」原因を徹底的に調査した。その結果、その原因は、「送り方向に沿った回転体の変位を用いて送り負荷を測定していたこと」にあるという知見を得た。すなわち、従来のスピンドルモータ900を用いて微小な送り負荷を測定しようとすると、空気静圧軸受の剛性を低くして、送り方向に沿って回転体をより動き易くする必要が生じる。しかしながら、空気静圧軸受の剛性を低くすると、送り負荷のない状態であっても空気の圧力変動や空気の流れなどに起因して送り方向に沿って回転体が前後にふらつき易くなるため、微小な送り負荷を安定して測定することが困難となるのである。
【0009】
本発明者は、以上の知見に基づいてさらなる研究を重ねた結果、筒状筺体に弾性部材を介してかつ送り方向に微動可能に固定された空気静圧軸受によって回転体を受けるようにするとともに、送り方向に沿った空気静圧軸受の変位に基づいて送り負荷を測定するようにすれば、従来よりも微細な穴を形成する際に発生する微小な送り負荷を安定して測定することが可能となることに想到し、本発明を完成させるに至った。すなわち、このようにすれば、空気静圧軸受の剛性を低くしなくても、送り方向に沿って回転体をより動き易くすることが可能となる。このため、空気静圧軸受の剛性を低くする必要がなくなるため、空気の圧力変動や空気の流れなどに起因して送り方向に沿って回転体が前後にふらつき易くなるということがなくなるのである。また、仮に送り負荷のない状態で回転体が前後にふらつくことがあったとしても、このことが空気静圧軸受の変位に影響を及ぼすことがなくなるのである。
【0010】
(1)本発明のスピンドルモータは、筒状筐体と、前記筒状筐体の内側で前記筒状筺体に固定されたモータと、前記モータの先端側に配設され、前記モータにより回転駆動される穿孔工具把持部と、前記筒状筐体内で前記モータの回転軸と一体になって回転可能で、かつ、前記モータの回転力を前記穿孔工具把持部に伝達するための回転体であって、先端側軸受面及び基端側軸受面を有する鍔部が外周部に形成された回転体と、前記筒状筺体に弾性部材を介してかつ送り方向に沿って微動可能に固定され、前記鍔部における前記先端側軸受面及び前記基端側軸受面を挟み込んで前記穿孔工具把持部からの送り負荷を受ける空気静圧軸受と、送り方向に沿った前記空気静圧軸受の変位に基づいて送り負荷を測定する送り負荷測定装置とを有することを特徴とする。
【0011】
このため、上記(1)に記載のスピンドルモータによれば、筒状筺体に弾性部材を介してかつ送り方向に沿って微動可能に固定された空気静圧軸受によって回転体を受けるようにするとともに、送り方向に沿った空気静圧軸受の変位に基づいて送り負荷を測定するようにしているため、空気静圧軸受の剛性を低くしなくても、送り方向に沿って回転体をより動き易くすることが可能となる。その結果、空気静圧軸受の剛性を低くする必要がなくなるため、空気の圧力変動や空気の流れなどに起因して送り方向に沿って回転体が前後にふらつき易くなるということがなくなる。また、仮に送り負荷のない状態で回転体が前後にふらつくことがあったとしても、このことが空気静圧軸受の変位に影響を及ぼすことがなくなる。従って、上記(1)に記載のスピンドルモータによれば、従来よりも微細な穴を形成する際に発生する微小な送り負荷を安定して測定することが可能となる。
【0012】
(2)上記(1)に記載のスピンドルモータにおいては、前記弾性部材は、前記筒状筐体に固定された外周側環状部材と、前記空気静圧軸受に固定された内周側環状部材と、前記外周側環状部材と前記内周側環状部材とを径方向に連結する薄板状弾性部材とが一体化された構造を有することが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、薄板状弾性部材により所定の弾性力が付与された弾性部材を、外周側環状部材及び内周側環状部材を用いて、筒状筺体及び空気静圧軸受に容易に取り付けることが可能となる。
【0014】
(3)上記(2)に記載のスピンドルモータにおいては、前記薄板状弾性部材は、前記外周側環状部材との結合部位にある外周側結合部と、前記内周側環状部材との結合部位にある内周側結合部と、前記外周側結合部から内周側に突出する外周側連結部と、前記内周側結合部から外周側に突出する内周側連結部と、前記外周側突出部と前記内周側突出部とを周方向に沿って連結する周方向連結部とを有することが好ましい。
【0015】
このように構成することにより、周方向連結部の周方向に沿った長さを長くすることが可能となるため、弾性部材の径方向の大きさを大きくすることなく弾性部材に所定の弾性力を付与することが可能となる。
【0016】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のスピンドルモータにおいては、前記送り負荷測定装置は、前記筒状筺体に配設された固定電極と、前記空気静圧軸受に配設され、前記固定電極に対向配置された測定電極と、前記固定電極と前記測定電極との間の静電容量を測定する静電容量測定回路とを有する静電容量測定方式の送り負荷測定装置であることが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、送り負荷を非接触で測定することが可能となり、送り負荷を高精度で測定することが可能となる。
【0018】
(5)上記(4)のいずれかに記載のスピンドルモータにおいては、前記固定電極は、第1固定電極及び第2固定電極からなり、前記測定電極は、前記第1固定電極及び前記第2固定電極の両方に対向配置されており、前記静電容量測定回路は、前記第1固定電極と前記測定電極との間に形成される第1コンデンサ及び前記第2固定電極と前記測定電極との間に形成される第2コンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定することが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、2つのコンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定することにより送り負荷を測定することで、送り負荷をさらに高精度で測定することが可能となる。
【0020】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のスピンドルモータにおいては、前記送り負荷によって前記回転体が所定量を超えて後退しないように前記回転体又は前記空気静圧軸受を基端側から支持するストッパ部材をさらに有することが好ましい。
【0021】
本発明のスピンドルモータにおいては、回転体を受ける空気静圧軸受が送り方向に沿って微動可動であるため、従来のスピンドルモータに比較すると回転体が送り負荷を受けて後退し易い構成となっている。しかしながら、上記のように構成することにより、過度の送り負荷や事故による衝撃から、スピンドルモータを保護することが可能となる。
【0022】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のスピンドルモータにおいては、前記回転体は、前記筒状筐体内で前記モータの回転軸と一体になって回転可能な基端側回転体と、前記筒状筐体内で前記基端側回転体とともに回転可能で、かつ、前記穿孔工具把持部と一体となって回転可能な先端側回転体と、前記基端側回転体と前記先端側回転体との間の回転力伝達経路中に配設され、回転方向に沿って捩れ変形可能な回転力伝達部材とを有する回転体であり、前記回転力伝達部材の捩れ変形に基づいて前記基端側回転体に対する前記先端側回転体の回転負荷を測定する回転負荷測定装置をさらに有することが好ましい。
【0023】
このように構成することにより、上記(7)に記載のスピンドルモータを用いて穿孔加工装置を構成する場合に、外付けの回転負荷測定装置を別途設ける必要がなくなるため、穿孔加工装置の構成を簡易なものにして穿孔加工装置を小型化することが可能となる。また、穿孔加工装置を使用する際の作業性やメンテナンス性が向上する。
【0024】
(8)上記(7)に記載のスピンドルモータにおいては、前記回転負荷測定装置は、前記基端側回転体の先端側に固定され、外周部に第1外周電極面を有する円筒状の第1回転電極体と、前記第1回転電極体から先端側に向けて突出し、第1対向電極面を有する第1突起部と、前記第1回転電極体の外周側に配置され、前記第1外周電極面に対向する第1内周電極面を有する第1固定電極体と、前記先端側回転体の基端側に固定され、外周部に第2外周電極面を有する円筒状の第2回転電極体と、前記第2回転電極体から基端側に突出し、前記第1対向電極面に対向する第2対向電極面を有する第2突起部と、前記第2電極体の外周側に配置され、前記第2外周電極面に対向する第2内周電極面を有する第2固定電極体と、前記第1内周電極面と前記第1外周電極面との間に形成される第3コンデンサ、前記第1対向電極面と前記第2対向電極面との間に形成される第4コンデンサ及び前記第2外周電極面と前記第2内周電極面との間に形成される第5コンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定する第2静電容量測定装置とを有する静電容量測定方式の回転負荷測定装置であることが好ましい。
【0025】
このため、上記(8)のスピンドルモータによれば、3つのコンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定するだけで回転負荷を測定することが可能となり、また、その際、当該電気回路の合成静電容量を、前記第1回転電極体及び前記第2回転電極体に接触することなく測定することが可能となるため、回転負荷測定装置の構造を単純にして信頼性を高くすることが可能となる。
【0026】
なお、上記(8)に記載のスピンドルモータにおいて、3つのコンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定するだけで回転負荷を測定することが可能となる理由は以下のとおりである。
すなわち、上記(8)に記載のスピンドルモータにおいては、回転負荷が変化すると、基端側回転体と先端側回転体との間の回転方向に沿った位相差が発生するため、第1対向電極面と第2対向電極面との間隔が変化して、第2コンデンサの静電容量が変化する。その結果、3つのコンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量も変化するからである。
【0027】
(9)上記(8)に記載のスピンドルモータにおいては、前記第1内周電極面と前記第1外周電極面とが対向する部分の面積をS1とし、前記第1対向電極面と前記第2対向電極面とが対向する部分の面積をS2とし、前記第2内周電極面と前記第2外周電極面とが対向する部分の面積をS3としたとき、S1はS2の10倍よりも大きく、S3はS2の10倍よりも大きいことが好ましい。
【0028】
このように構成することにより、3つのコンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量は、最も静電容量の小さい第4コンデンサの静電容量が支配的になる。このため、3つのコンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定すれば、実質的には第3コンデンサの静電容量及び第5コンデンサの静電容量の影響を受けずに第4コンデンサの静電容量を測定することとなり、基端側回転体と先端側回転体との間の回転方向に沿った位相差を高精度に測定することが可能となる。その結果、回転負荷を高精度で測定することが可能となり、 従来の穿孔加工装置よりも微細な穴を形成することが可能となる。
【0029】
(10)上記(8)又は(9)に記載のスピンドルモータにおいては、前記第1突起部として、n個(但し、nは2以上の整数。)の第1突起部が前記第1固定電極体から突出し、前記第2突起部として、n個の第2突起部が前記第2固定電極体から突出し、前記n個の第1固定電極体及び前記n個の第2固定電極体は、それぞれ回転方向に沿って(360/n)°おきに配置されていることが好ましい。
【0030】
このように構成することにより、第1回転電極体や第2回転電極体にごくわずかな軸ぶれが存在していたとしても、この軸ぶれが静電容量に与える影響を少なくすることが可能となる。このため、基端側回転体と先端側回転体との間の回転方向に沿った位相差をさらに高精度に測定することが可能となり、ひいては回転負荷をさらに高精度で測定することが可能となる。
【0031】
(11)上記(7)〜(10)のいずれかに記載のスピンドルモータにおいては、前記筒状筺体における前記基端側回転体との対向面及び前記筒状筺体における前記先端側回転体との対向面には、空気静圧軸受が配設されていることが好ましい。
【0032】
このように構成することにより、筒状筐体に対する基端側回転体の回転抵抗及び筒状筐体に対する先端側回転体の回転抵抗をともに極めて小さなレベルにまで低減することが可能となり、回転負荷が変化するのに応じて基端側回転体と先端側回転体との間の回転位相差が変化し易くなる。このため、回転負荷をさらに高精度で測定することが可能となる。
【0033】
空気静圧軸受としては、多孔質絞り、オリフィス絞り、自成絞り、表面絞りなどからなる空気静圧軸受を用いることができるが、軸受内部に空気を均一に供給することができ剛性が高く負荷容量の高い多孔質絞りからなる空気静圧軸受を特に好適に用いることができる。
【0034】
(12)上記(7)〜(11)のいずれかに記載のスピンドルモータにおいては、前記回転力伝達部材は、前記基端側回転体と前記先端側回転体との間に機械的遊びの無い状態で配設されている回転力伝達棒であることが好ましい。
【0035】
このため、上記(12)に記載のスピンドルモータによれば、基端側回転体の回転力を先端側回転体に伝達するのに回転力伝達棒を用いているため、回転負荷を従来よりも高精度で測定するために回転力伝達棒の太さを比較的細くしたとしても、従来のように帯状片の厚さを薄くする場合(特開2001−341014参照。)と比べれば、回転力伝達棒の剛性の低下を十分に抑制することが可能となる。その結果、上記(12)に記載のスピンドルモータによれば、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲(例えば、30μm〜500μm。)の穴を形成することが可能となる。
【0036】
また、上記(12)に記載のスピンドルモータによれば、上記したように、回転力伝達棒の太さを比較的細くしたとしても、回転力伝達棒の剛性の低下を十分に抑制することが可能となるため、穴を高速かつ高精度で形成することが可能となる。
【0037】
上記(12)に記載のスピンドルモータにおいては、回転力伝達棒の断面形状は、円又は正多角形(正三角形、正方形、正五角形、正六角形、正八角形等)であることが好ましい。回転力伝達棒の断面形状がこれらの形状である場合には、回転力伝達棒の太さを比較的細くしても剛性が低下しにくいからである。
【0038】
(13)本発明の穿孔加工装置は、上記(1)〜(12)のいずれかに記載のスピンドルモータと、所定の送り動作によって前記スピンドルモータを送り方向に沿って移動させる送り駆動装置と、穿孔加工対象物品を把持する穿孔加工対象物品把持部とを有することを特徴とする。
【0039】
このため、上記(13)に記載の穿孔加工装置によれば、上記(1)〜(12)のいずれかに記載のスピンドルモータを有するため、従来よりも微細な穴を形成する際に発生する微小な送り負荷を安定して測定することが可能となる。
【0040】
(14)本発明の穿孔加工装置は、上記(7)〜(12)のいずれかに記載のスピンドルモータと、所定の送り動作によって前記スピンドルモータを送り方向に沿って移動させる送り駆動装置と、穿孔加工対象物品を把持する穿孔加工対象物品把持部とを有し、前記送り負荷測定装置により測定された送り負荷と、前記回転負荷測定装置により測定された回転負荷とによって表される負荷データとが、送り負荷と回転負荷とを変数とする所定の負荷限界値を超えた場合に、前記所定の送り動作を中断するように構成されていることを特徴とする。
【0041】
このため、上記(14)に記載の穿孔加工装置によれば、上記(13)に記載の穿孔加工装置が有する効果に加えて、以下の効果を有する。
すなわち、外付けの回転負荷測定装置を別途設ける必要がなくなるため、穿孔加工装置の構成を簡易なものにして穿孔加工装置を小型化することが可能となる。また、穿孔加工装置を使用する際の作業性やメンテナンス性が向上する。
【0042】
また、送り負荷測定装置の測定結果と回転負荷測定装置の測定結果とに基づいて送り負荷と回転負荷とを精度良く測定することが可能となるため、穿孔工具の破損を的確に予測することにより穿孔工具の折損をより確実に防止することが可能となり、信頼性が高く、かつ、効率的な穿孔加工を実現することが可能となる。
【0043】
上記(14)に記載の穿孔加工装置においては、負荷データが負荷限界値を超えた場合に、所定の送り動作を中断するとともに所定の送り動作についての送り方向とは逆方向に所定量だけスピンドルモータを戻し、その後、所定の送り動作を中断したときの送り位置よりも所定量手前の位置までスピンドルモータを高速で送り、さらにその後、所定の送り動作を行うように構成されていることが好ましい。
【0044】
このように構成することにより、穿孔加工再開までにおける穿孔工具の破損事故を防止しながら、穿孔作業の中断時間を短縮化して穿孔加工の生産性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明のスピンドルモータ及び穿孔加工装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0046】
[実施形態1]
実施形態1は、本発明のスピンドルモータを説明するための実施形態である。
【0047】
図1は、実施形態1に係るスピンドルモータ100を説明するために示す縦断面図である。図2は、弾性部材240を説明するために示す図である。図2(a)は弾性部材240の斜視図であり、図2(b)は弾性部材240の正面図であり、図2(c)は図2(b)のA―A断面図であり、図2(d)は薄板状弾性部材246の正面図である。
【0048】
図3は、送り負荷測定装置140を説明するために示す図である。図3(a)は固定電極260及び測定電極230を図3(c)の左方向から見た拡大断面図であり、図3(b)は固定電極260及び測定電極230を図3(c)の上方向から見た拡大断面図であり、図3(c)は固定電極260及び測定電極230をモータ120側から見た拡大断面図であり、図3(d)は第1コンデンサC及び第2コンデンサCが直列接続されている様子を示す図である。図4は、送り負荷が変化したときに弾性部材240が弾性変形し、固定電極260と測定電極230との間隔が変化する様子を示す図である。
【0049】
図5は、実施形態1に係るスピンドルモータ100における送り負荷と合成静電容量との関係を示す図である。図6は、電気回路50における第1電極E―第2電極E間の合成静電容量の時間変化を示す図である。
【0050】
図7及び図8は、回転負荷測定装置170を説明するために示す図である。図7(a)は回転負荷測定装置170の縦断面図であり、図7(b)は図7(a)の符号Bで示す部分の拡大図であり、図7(c)は図7(a)の符号Bで示す部分の拡大図である。図8(a)は回転負荷測定装置170の横断面図であり、図8(b)は図8(a)の符号Bで示す部分の拡大図であり、図8(c)は図8(a)の符号Bで示す部分の拡大図である。なお、図8(a)は図7(a)のA―A断面を示している。
【0051】
図9は、第3コンデンサC、第4コンデンサC及び第5コンデンサCが直列接続されている様子を示す図である。図10は、回転負荷が変化したときに第1突起部176の第1対向電極面176aと第2突起部177の第2対向電極面177aとの間隔が変化する様子を示す図である。図11は、実施形態1に係るスピンドルモータ100における回転負荷と合成静電容量との関係を示す図である。図12は、電気回路52における第3電極E―第4電極E間の合成静電容量の時間変化を示す図である。
【0052】
なお、以下の説明においては、特に説明のない限り、「基端側」とは図1の右側(モータ120側)のことをいい、「先端側」とは図1の左側(穿孔工具把持部150側)のことをいう。
【0053】
実施形態1に係るスピンドルモータ100は、図1に示すように、穿孔加工装置(後述する実施形態2及び図13参照。)に用いるためのスピンドルモータである。
【0054】
実施形態1に係るスピンドルモータ100は、図1に示すように、筒状筐体110と、筒状筐体110の内側で筒状筺体110に固定されたモータ120と、モータ120の先端側に配設され、モータ120により回転駆動される穿孔工具把持部150と、筒状筐体110内でモータ120の回転軸と一体になって回転可能で、かつ、モータ120の回転力を穿孔工具把持部150に伝達するための回転体であって、先端側軸受面及び基端側軸受面を有する鍔部134が外周部に形成された回転体130(基端側回転体132)と、筒状筺体110に弾性部材240を介してかつ送り方向に沿って微動可能に固定され、鍔部134における先端側軸受面及び基端側軸受面を挟み込んで穿孔工具把持部150からの送り負荷を受ける空気静圧軸受220と、送り方向に沿った空気静圧軸受220の変位に基づいて送り負荷を測定する送り負荷測定装置140と、回転力伝達部材160の捩れ変形に基づいて基端側回転体132に対する先端側回転体136の回転負荷を測定する回転負荷測定装置170と、送り負荷によって回転体130が所定量を超えて後退しないように空気静圧軸受220を基端側から支持するストッパ部材266を有する。
【0055】
空気静圧軸受220は、図1に示すように、鍔部134と対向する面に軸受面(第3空気静圧軸受)224を有する基端側軸受部材222と、鍔部134と対向する面に軸受面228(第4空気静圧軸受)を有する先端側軸受部材226とを有し、基端側軸受部材222と先端側軸受部材226とで弾性部材240の内周部分を挟み込んだ構造を有する。
【0056】
弾性部材240は、図2(a)〜図2(c)に示すように、筒状筐体110に固定される外周側環状部材242と、空気静圧軸受220に固定される内周側環状部材244と、外周側環状部材242と内周側環状部材244とを径方向に連結する薄板状弾性部材246とが一体化された構造を有する。
【0057】
薄板状弾性部材246は、図2(d)に示すように、外周側環状部材242との結合部位にある外周側結合部248と、内周側環状部材244との結合部位にある内周側結合部256と、外周側結合部から内周側に突出する外周側連結部250と、内周側結合部256から外周側に突出する内周側連結部254と、外周側突出部250と内周側突出部254とを周方向に沿って連結する周方向連結部252とを有する。
【0058】
送り負荷測定装置140は、図1及び図3に示すように、筒状筺体110に配設された固定電極260(第1固定電極262及び第2固定電極264)と、空気静圧軸受220に配設され、固定電極260に対向配置された検出電極230と、固定電極260と検出電極230との間の静電容量を測定する静電容量測定回路(図示せず。)とを有する静電容量測定方式の送り負荷測定装置である。
【0059】
静電容量測定回路は、第1固定電極262と測定電極230との間に形成される第1コンデンサC(図3(b)参照。)及び第2固定電極264と測定電極230との間に形成される第2コンデンサC(図3(b)参照。)の直列接続により構成される電気回路50(図3(d)参照。)における第1電極E−第2電極E間の合成静電容量を測定する。
【0060】
第1固定電極262と固定電極230との間隔及び第2固定電極264と固定電極230との間隔はともに、例えば、送り負荷がないときに10μmとなり、送り負荷が大きくなったときに10μmよりも小さくなるように設定する。
【0061】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、図4に示すように、送り負荷が大きくなると電極間隔が小さくなる。その結果、図5に示すように、第1コンデンサC及び第2コンデンサCの合成静電容量が大きくなる。従って、実施形態1に係るスピンドルモータ100を用いて穿孔作業中に「送り負荷1」がかかった場合には、図6に示すように、電気回路50の合成静電容量が大きくなるため、これに対応して即座に穿孔工具を後退させることにより穿孔工具の破損を免れることが可能となる。なお、実施形態1に係るスピンドルモータ100を用いて穿孔作業中に「送り負荷2」がかかった場合にも、電気回路50の合成静電容量が大きくなるが、これに対応して即座に穿孔工具を後退させないと、穿孔工具の破損を招来することとなる。
【0062】
回転体130は、図1に示すように、筒状筐体110内でモータ120の回転軸と一体になって回転可能な基端側回転体132と、筒状筐体110内で基端側回転体132とともに回転可能で、かつ、穿孔工具把持部150と一体となって回転可能な先端側回転体136と、基端側回転体132と先端側回転体136との間の回転力伝達経路中に配設され、回転方向に沿って捩れ変形可能な回転力伝達部材160とを有する。
【0063】
回転負荷測定装置170は、図7〜10に示すように、基端側回転体132の先端側に固定され、外周部に第1外周電極面174a(図7(c)参照。)を有する円筒状の第1回転電極体174と、第1回転電極体174から先端側に向けて突出し、第1対向電極面176a(図8(b)参照。)を有する第1突起部176と、第1回転電極体174の外周側に配置され、第1外周電極面174aに対向する第1内周電極面172a(図7(c)参照。)を有する第1固定電極体172と、先端側回転体136の基端側に固定され、外周部に第2外周電極面175a(図7(b)参照。)を有する円筒状の第2回転電極体175と、第2回転電極体175から基端側に突出し、第1対向電極面176aに対向する第2対向電極面177a(図8(b)参照。)を有する第2突起部177と、第2回転電極体175の外周側に配置され、第2外周電極面175aに対向する第2内周電極面173a(図7(b)参照。)を有する第2固定電極体173と、静電容量測定回路(図示せず。)とを有する静電容量方式の回転負荷測定装置である。
【0064】
静電容量測定回路は、第1内周電極面172aと第1外周電極面174aとの間に形成される第3コンデンサC(図7(c)参照。)、第1対向電極面176aと第2対向電極面177aとの間に形成される第4コンデンサC(図8(b)参照。)及び第2外周電極面175aと第2内周電極面173aとの間に形成される第5コンデンサC(図7(b)及び図8(c)参照。)の直列接続により構成される電気回路52(図9参照。)における電極E−電極E間の合成静電容量を測定する静電容量測定回路(第2静電容量測定回路)である。
【0065】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、第1内周電極面172aと第1外周電極面174aとが対向する部分の面積をS1とし、第1対向電極面176aと第2対向電極面177aとが対向する部分の面積をS2とし、第2内周電極面173aと第2外周電極面175aとが対向する部分の面積をS3としたとき、S1はS2の10倍よりも大きく、S3はS2の10倍よりも大きく形成されている。
【0066】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、図7(a)及び図8(a)に示すように、第1突起部として2個の第1突起部176が第1固定電極体174から突出し、第2突起部として2個の第2突起部177が第2固定電極体175から突出し、2個の第1固定電極体176及び2個の第2固定電極体177は、それぞれ回転方向に沿って180°おきに配置されている。
【0067】
第1外周電極面174a及び第2外周電極面175aは、それぞれ適正な公差管理が行われている加工工程で成形加工がなされており、また、第1内周電極面172a及び第2内周電極面173aも、それぞれ適正な公差管理が行われている加工工程で成形加工がなされている。
【0068】
第1対向電極面176aと第2対向電極面177aとの間隔は、例えば、回転負荷がなくて位相差がないときに10μmとなり、回転負荷が大きくなって位相差が大きくなったときに10μmよりも大きくなるように設定する。
【0069】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、図10に示すように、回転負荷が大きくなると、第1対向電極面176aと第2対向電極面177aとの間隔dが大きくなる。その結果、図11に示すように、第2コンデンサCの静電容量が小さくなるため、電気回路52の合成静電容量も小さくなる。従って、実施形態1に係るスピンドルモータ100を用いて穿孔作業中に「回転負荷1」がかかった場合には、図12に示すように、電気回路52の合成静電容量が小さくなるため、これに対応して即座に穿孔工具を後退させることにより穿孔工具の破損を免れることが可能となる。なお、実施形態1に係るスピンドルモータ100を用いて穿孔作業中に「回転負荷2」がかかった場合にも、電気回路52の合成静電容量が小さくなるが、これに対応して即座に穿孔工具を後退させないと穿孔工具の破損を招来することとなる。
【0070】
筒状筐体110の内周面における基端側回転体132との対向面には、図1に示すように、多孔質絞りからなる第1空気静圧軸受112が配設されており、筒状筐体110の内周面における先端側回転体側136との対向面には、多孔質絞りからなる第2空気静圧軸受114が配設されている。基端側回転体132は鍔部134を有し、空気静圧軸受220における鍔部134との対向面には、多孔質絞りからなる軸受面(第3空気静圧軸受)224及び軸受面(第4空気静圧軸受)228が配設されている。
【0071】
回転力伝達部材160は、図1に示すように、円柱状の細径部162と、細径部162の両端に一体化された基端側太径部164及び先端側太径部166とを有し、基端側回転体132と先端側回転体134との間に機械的遊びの無い状態で配設されている。
【0072】
回転力伝達部材160は、回転方向に沿って捩れ変形可能な部材、例えば、金属(例えば、ステンレス鋼、各種工具鋼その他の比較的剛性が高く、弾性降伏点の高い金属。)製の丸棒(例えば外径1.0mm。)からなる。
【0073】
なお、筒状筐体110、モータ120、回転体130、穿孔工具把持部150、回転力伝達部材160、単一の部材からなっていてもよいし、複数の部材からなってもよい。
【0074】
以上のように構成された実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、筒状筺体110に弾性部材240を介してかつ送り方向に沿って微動可能に固定された空気静圧軸受220によって回転体130を受けるようにするとともに、送り方向に沿った空気静圧軸受220の変位に基づいて送り負荷を測定するようにしているため、空気静圧軸受の剛性を低くしなくても、送り方向に沿って回転体をより動き易くすることが可能となる。その結果、空気静圧軸受の剛性を低くする必要がなくなるため、空気の圧力変動や空気の流れなどに起因して送り方向に沿って回転体が前後にふらつき易くなるということがなくなる。また、仮に送り負荷のない状態で回転体が前後にふらつくことがあったとしても、このことが空気静圧軸受の変位に影響を及ぼすことがなくなる。従って、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、従来よりも微細な穴を形成する際に発生する微小な送り負荷を安定して測定することが可能となる。
【0075】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、弾性部材240が外周側環状部材242と内周側環状部材244と薄板状弾性部材246とが一体化された構造を有するため、薄板状弾性部材246により所定の弾性力が付与された弾性部材240を、外周側環状部材242及び内周側環状部材244を用いて、筒状筺体110及び空気静圧軸受220に容易に取り付けることが可能となる。
【0076】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、薄板状弾性部材246が、周方向連結部252を有するため、周方向連結部252の周方向に沿った長さを長くすることが可能となる。このため、弾性部材240の径方向の大きさを大きくすることなく弾性部材240に所定の弾性力を付与することが可能となる。
【0077】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、送り負荷測定装置140が、固定電極260と測定電極230との間の静電容量を測定する静電容量測定方式の送り負荷測定装置であるため、送り負荷を非接触で測定することが可能となり、送り負荷を高精度で測定することが可能となる。
【0078】
実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、上記したように、2つのコンデンサ(第1コンデンサC及び第2コンデンサC)の直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定するだけで送り負荷を測定することが可能となり、また、その際、当該電気回路50の合成静電容量を非接触で測定することが可能となるため、送り負荷をさらに高精度で測定することが可能となる。
【0079】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、空気静圧軸受220を基端側から支持するストッパ部材266を有するため、過度の送り負荷や事故による衝撃からスピンドルモータを保護することが可能となる。
【0080】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、上記した回転力伝達部材160の捩れ変形に基づいて基端側回転体132に対する先端側回転体134の回転負荷を測定する回転負荷測定装置170を有するため、スピンドルモータ100を用いて穿孔加工装置を構成する場合に外付けの回転負荷測定装置を別途設ける必要がなくなる。このため、穿孔加工装置の構成を簡易なものにして穿孔加工装置を小型化することが可能となる。また、穿孔加工装置を使用する際の作業性やメンテナンス性が向上する。
【0081】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、上記したように、3つのコンデンサ(第3コンデンサC、第4コンデンサC及び第5コンデンサC)の直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定するだけで回転負荷を測定することが可能となり、また、その際、当該電気回路52の合成静電容量を、第1回転電極体174及び第2回転電極体175に接触することなく測定することが可能となるため、回転負荷測定装置の構成を単純にして信頼性を高くするとともに製造コストを低減することが可能となる。
【0082】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、第4コンデンサCの静電容量が第3コンデンサCの静電容量又は第5コンデンサCの静電容量よりも極めて小さいため、3つのコンデンサの直列接続により構成される電気回路52の合成静電容量は、第4コンデンサCの静電容量が支配的になる。このため、電気回路52の合成静電容量を測定すれば、実質的には第3コンデンサCの静電容量及び第5コンデンサCの静電容量の影響を受けずに第4コンデンサCの静電容量を測定することとなり、基端側回転体132と先端側回転体136との間の回転方向に沿った位相差を高精度に測定することが可能となる。その結果、回転負荷を高精度で測定することが可能となり、従来の穿孔加工装置よりも微細な穴(例えば、内径30μm以下。)を形成することが可能となる。
【0083】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、2個の第1突起部176及び2個の第2突起部177は、それぞれ回転方向に沿って180°おきに配置されているため、第1回転電極体174や第2回転電極体175にごくわずかの軸ぶれが存在していたとしても、この軸ぶれが静電容量に与える影響を少なくすることが可能となる。このため、基端側回転体132と先端側回転体136との間の回転方向に沿った位相差をさらに高精度に測定することが可能となり、ひいては回転負荷をさらに高精度で測定することが可能となる。
【0084】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、第1外周電極面174a及び第2外周電極面175はそれぞれ適正な公差管理が行われている加工工程で成形加工がなされており、また、第1内周電極面172a及び第2内周電極面173aもそれぞれ適正な公差管理が行われている加工工程で成形加工がなされているため、電気回路50の合成静電容量を安定して測定することが可能となる。このため、基端側回転体132と先端側回転体136との間の回転方向に沿った位相差をさらに高精度に測定することが可能となり、ひいては回転負荷をさらに高精度で測定することが可能となる。
【0085】
実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、筒状筐体110における基端側回転体132との対向面には第1空気静圧軸受112が配設されており、筒状筐体110における先端側回転体136との対向面には第2空気静圧軸受114が配設されているため、筒状筐体110に対する基端側回転体132の回転抵抗及び筒状筐体110に対する先端側回転体136の回転抵抗をともに極めて小さなレベルにまで低減することが可能となり、回転負荷の値が変化するのに応じて基端側回転体132と先端側回転体136との間の回転位相差が変化し易くなる。このため、回転負荷をさらに高精度で測定することが可能となる。
【0086】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転力伝達部材160は、基端側回転体132と先端側回転体136との間に機械的遊びの無い状態で配設されている回転力伝達棒であるため、回転力伝達棒の太さを比較的細くしたとしても、従来のように帯状片の厚さを薄くする場合(特開2001−341014参照。)と比べれば、回転力伝達棒の剛性の低下を十分に抑制することが可能となる。その結果、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、微細な穴から比較的大きな穴までの比較的広い範囲(例えば、30μm〜500μm。)の穴を形成することが可能となる。
【0087】
また、実施形態1に係るスピンドルモータ100によれば、上記したように、回転力伝達部部材160の太さを比較的細くしたとしても、回転力伝達棒の剛性の低下を十分に抑制することが可能となるため、穴を高速かつ高精度で形成することが可能となる。
【0088】
[実施形態2]
実施形態2は、本発明の穿孔加工装置を説明するための実施形態である。
【0089】
図13は、実施形態2に係る穿孔加工装置10を説明するために示す図である。図14は、実施形態2に係る穿孔加工装置10における負荷限界直線Fに基づいて制御された負荷データを示すグラフである。図15は、実施形態2に係る穿孔加工装置10における制御系の構成を示すブロック図である。図16は、実施形態2に係る穿孔加工装置10における送り動作を説明するために示す図である。
【0090】
実施形態2に係る穿孔加工装置10は、図13に示すように、スピンドルモータ100と、所定の送り動作によってスピンドルモータ100を送り方向(図13の左右方向。)に沿って移動させる送り駆動装置20と、穿孔加工対象物品Wを把持する穿孔加工対象物品把持装置40とを有する穿孔加工装置である。
【0091】
スピンドルモータ100は、実施形態1で説明したとおりのスピンドルモータである。
【0092】
送り駆動装置20は、ベース22と、送り駆動モータ24と、送り駆動モータ24によって回転可能な送りねじ26と、送りねじ26と螺合して送り方向に移動可能な移動台28と、移動台28に固定されているスピンドルモータ固定部30とを有する。
【0093】
穿孔加工対象物品把持装置40は、基台部42と、穿孔加工対象物品把持部44とを有し、穿孔加工対象物品把持部44には穿孔加工対象物品Wが取り付けられる。ここで、穿孔加工対象物品把持部44は、基台部42に内蔵された図示しない回転駆動モータによって回転駆動されるように構成されている。なお、穿孔加工対象物品把持部44の位置を上下、左右、前後方向に調整可能に構成してもよい。
【0094】
スピンドルモータ100の穿孔工具把持部150には、穿孔工具Dが取り付けられている。
【0095】
実施形態2に係る穿孔加工装置10は、スピンドルモータ100における送り負荷測定装置140により測定された送り負荷と、スピンドルモータ100における回転負荷測定装置170により測定された回転負荷とによって表される負荷データが、回転負荷と送り負荷とを変数とする負荷限界直線Fを超えた場合に、所定の送り動作を中断するように構成されている(図14参照。)。
【0096】
以上のように構成された実施形態2に係る穿孔加工装置10によれば、実施形態1に係るスピンドルモータ100を有するため、従来よりも微細な穴を形成する際に発生する微小な送り負荷を安定して測定することが可能な穿孔加工装置となる。
【0097】
また、実施形態2に係る穿孔加工装置10によれば、送り負荷測定装置140の測定結果と回転負荷測定装置170の測定結果とに基づいて送り負荷と回転負荷とを精度良く測定することが可能となるため、穿孔工具Dの破損を的確に予測することにより穿孔工具Dの折損をより確実に防止することが可能となり、信頼性が高く、かつ、効率的な穿孔加工を実現することが可能となる。
【0098】
実施形態2に係る穿孔加工装置10においては、図15に示すように、MPU(マイクロプロセッサユニット)などからなる制御装置210が設けられ、制御装置210は、送り負荷測定装置140からの測定信号及び回転負荷測定装置170からの測定信号を受け、これらの測定信号の値に応じて上記の送り負荷(スラスト方向負荷)及び回転負荷(ラジアル方向負荷)を求め、これらの負荷値に応じて送り駆動モータ24を駆動制御するように構成されている。この場合に、負荷値に応じた制御態様として、送り駆動モータ24に加えてスピンドルモータ100におけるモータ120の回転量を制御するようにしてもよい。例えば、送り駆動モータ24による送り動作を中断し、若しくは、逆方向に送る際には、スピンドルモータ100におけるモータ120の回転量を低下させたり、或いは、回転方向を逆転させたりすることができる。
【0099】
実施形態2に係る穿孔加工装置10においては、制御装置210は、穿孔加工対象物品Wに穿孔工具Dが近接するまで図16に示す高速送りモードHで穿孔工具Dを送り、その後、低速送りモードIで穿孔加工対象物品Wに対して接触し穿孔加工を行いながら送り続ける。この低速送りモードIは、図14に示す負荷限界直線Fを越えない負荷データが得られている間は継続される。その後、図14中の負荷限界直線Fを超えた負荷データが得られた時点で、穿孔工具Dの送り動作を中断し、高速戻しモードJで穿孔工具Dを穿孔加工対象物品W内から脱出するまで引き戻す。さらにその後、再び高速送りモードHで穿孔加工対象物品W内に入るように送り、先ほど加工した最先端位置(加工穴の最深部)よりも少し手前で低速送りモードIに移行し、加工を再開する。以後、上記と同様の送り動作の中断、戻り、再加工の繰り返し動作を、負荷限界直線Fを超えた負荷データが発生する都度同様に実施して、断続的な加工を行っていく。
【0100】
最終的に目的の穿孔深さが得られると送り動作は停止され、高速戻しモードJで穿孔工具Dは穿孔加工対象物品Wから離反される。また、目的の穿孔深さが得られない時点でも、異常な状況が生じた場合、すなわち、穿孔工具Dの寿命が尽きたと考えられる場合及び加工状態に異常が発生したと考えられる場合には、加工を終了して、高速戻しモードJで穿孔加工対象物品Wから穿孔工具Dを離反させる。
【0101】
上記の穿孔工具Dの寿命が尽きたと考えられる場合とは、図14に示す負荷限界直線Fを超える負荷データが得られたときになされる送り動作の中断が頻繁になり、加工がほとんど進まなくなった場合である。また、加工状態に異常が発生したと考えられる場合とは、穿孔時に穿孔工具Dに切りくずなどが絡み、切りくずが排出されない状態が何らかの理由で解消されず、良好な穿孔加工ができなくなった場合である。いずれの場合にも、そのまま穿孔加工を継続しても穿孔加工が進まないか、或いは、穿孔工具Dが破損する可能性が極めて高いため、穿孔加工を終了させるのである。
【0102】
以上、本発明のスピンドルモータ及び穿孔加工装置を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0103】
(1)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、送り負荷が大きくなると合成静電容量が大きくなる構成の送り負荷測定装置140を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、送り負荷が大きくなると合成静電容量が小さくなる構成の送り負荷測定装置を有していてもよい。
【0104】
(2)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転負荷が大きくなると合成静電容量が小さくなる構成の回転負荷測定装置170を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、回転負荷が大きくなると合成静電容量が大きくなる構成の回転負荷装置を有していてもよい。
【0105】
(3)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、第1固定電極262と固定電極230との間隔及び第2固定電極264と固定電極230との間隔をともに、送り負荷がないときに10μmになるように設定しているが、本発明はこれに限定されるものではない。10μmよりも広く設定してもよいし、10μmよりも狭く設定してもよい。
【0106】
(4)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、第1対向電極面176aと第2対向電極面177aとの間隔を、回転負荷がなくて位相差がないときに10μmになるように設定しているが、本発明はこれに限定されるものではない。10μmよりも広く設定してもよいし、10μmよりも狭く設定してもよい。
【0107】
(5)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、図2(d)に示すように、周方向連結部252が周方向に分断された構造を有する薄板状弾性部材246を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。図17は、変形例に係る薄板状弾性部材246aの正面図である。例えば、図17に示すように、周方向連結部252aが周方向に分断されていない構造を有する薄板状弾性部材246aを用いてもよい。
【0108】
(6)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、第1空気静圧軸受112、第2空気静圧軸受114、軸受面(第3空気静圧軸受)224及び軸受面(第4空気静圧軸受)228として多孔質絞りからなる空気静圧軸受を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、オリフィス絞り、自成絞り、表面絞りなどからなる空気静圧軸受を用いることもできる。
【0109】
(7)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、基端側回転体132が鍔部134を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、先端側回転体136が鍔部を有していてもよい。
【0110】
(8)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、空気静圧軸受220を基端側から支持するストッパ部材266を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、回転体130を基端側から支持するストッパ部材を有していてもよい。
【0111】
(9)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、回転力伝達部材160として、円柱状(断面が円形状)の細径部を有する回転力伝達棒を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、断面が正多角形(正三角形、正方形、正五角形、正六角形、正八角形等)の形状の細径部を有する回転力伝達棒を用いることもできる。
【0112】
(10)実施形態1に係るスピンドルモータ100においては、第1外周電極面174a及び第2外周電極面175aは、それぞれ適正な公差管理が行われている加工工程で成形加工がなされており、また、第1内周電極面172a及び第2内周電極面173aは、それぞれ適正な公差管理が行われている加工工程で成形加工がなされているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1外周電極面174a及び第2外周電極面175aは、同一加工工程で成形加工がなされていてもよい。また、第1内周電極面172a及び第2内周電極面173aも、同一加工工程で成形加工がなされていてもよい。
【0113】
(11)実施形態2に係る穿孔加工装置10においては、回転負荷測定装置170を有するスピンドルモータ100を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、外付けの回転負荷測定装置を用いる場合には、回転負荷測定装置を有しないスピンドルモータを用いることもできる。
【0114】
(12)実施形態2に係る穿孔加工装置10においては、スピンドルモータ100を横置きにした場合を例にとって本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スピンドルモータ100を縦置きにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施形態1に係るスピンドルモータ100を説明するために示す縦断面図である。
【図2】弾性部材240を説明するために示す図である。
【図3】送り負荷測定装置140を説明するために示す図である。
【図4】送り負荷が変化したときに弾性部材240が弾性変形し、固定電極260と測定電極230との間隔が変化する様子を示す図である。
【図5】実施形態1に係るスピンドルモータ100における送り負荷と合成静電容量との関係を示す図である。
【図6】電気回路50における第1電極E―第2電極E間の合成静電容量の時間変化を示す図である。
【図7】回転負荷測定装置170を説明するために示す図である。
【図8】回転負荷測定装置170を説明するために示す図である。
【図9】第3コンデンサC、第4コンデンサC及び第5コンデンサCが直列接続されている様子を示す図である。
【図10】回転負荷が変化したときに第1突起部176の第1対向電極面176aと第2突起部177の第2対向電極面177aとの間隔が変化する様子を示す図である。
【図11】実施形態1に係るスピンドルモータ100における回転負荷と合成静電容量との関係を示す図である。
【図12】電気回路52における第3電極E―第4電極E間の合成静電容量の時間変化を示す図である。
【図13】実施形態2に係る穿孔加工装置10を説明するために示す図である。
【図14】実施形態2に係る穿孔加工装置10における負荷限界直線Fに基づいて制御された負荷データを示すグラフである。
【図15】実施形態2に係る穿孔加工装置10における制御系の構成を示すブロック図である。
【図16】実施形態2に係る穿孔加工装置10における送り動作を説明するために示す図である。
【図17】変形例に係る薄板状弾性部材246aの正面図である。
【図18】従来の穿孔加工装置900を説明するために示す図である。
【符号の説明】
【0116】
10…穿孔加工装置、20…送り駆動装置、22…ベース、24…送り駆動モータ、26…送りねじ、28…移動台、30…スピンドルモータ固定部、40…穿孔加工対象把持装置、42…基台部、44…穿孔加工対象物品把持部、50,52…電気回路、100,900…スピンドルモータ、110,910…筒状筐体、112…第1空気静圧軸受、114…第2空気静圧軸受、120…モータ、122…ステータ、124…ロータ、130,930…回転体、132…基端側回転体、134…鍔部、136…先端側回転体、140…送り負荷測定装置、150,950…穿孔工具把持部、160…回転力伝達部材、162…細径部、164…基端側太径部、166…先端側太径部、170…回転負荷測定装置、171…回転負荷測定装置支持体、172…第1固定電極体、172a…第1内周電極面、173…第2固定電極体、173a…第2内周電極面、174…第1回転電極体、174a…第1外周電極面、175…第2回転電極体、175a…第2外周電極面、176…第1突起部、176a…第1対向電極面、177…第2突起部、177a…第2対向電極面、200…圧縮空気供給装置、202…圧縮空気供給路、210…制御装置、220…空気静圧軸受、222…基端側軸受部材、224…軸受面、226…先端側軸受部材、228…軸受面、230,944…測定電極、240…弾性部材、242…外周側環状部材、244…内周側環状部材、246,246a…薄板状弾性部材、248,248a…外周側結合部、250,250a…外周側連結部、252,252a…周方向連結部、254,254a…内周側連結部、256,256a…内周側結合部、260…固定電極、262,940A…第1固定電極、264,940B…第2固定電極、266…端子部、268…ストッパ部材、912x…バルブ、930…スピンドル軸、930x…開口、960,962,964…、966…シールド部材、968…ケース部材、C…第1コンデンサ、C…第2コンデンサ、C…第3コンデンサ、C…第4コンデンサ、C…第5コンデンサ、D…穿孔工具、E…第1電極、E…第2電極、E…第3電極、E…第4電極、F…負荷限界直線、W…穿孔加工対象物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状筐体と、
前記筒状筐体の内側で前記筒状筺体に固定されたモータと、
前記モータの先端側に配設され、前記モータにより回転駆動される穿孔工具把持部と、
前記筒状筐体内で前記モータの回転軸と一体になって回転可能で、かつ、前記モータの回転力を前記穿孔工具把持部に伝達するための回転体であって、先端側軸受面及び基端側軸受面を有する鍔部が外周部に形成された回転体と、
前記筒状筺体に弾性部材を介してかつ送り方向に沿って微動可能に固定され、前記鍔部における前記先端側軸受面及び前記基端側軸受面を挟み込んで前記穿孔工具把持部からの送り負荷を受ける空気静圧軸受と、
送り方向に沿った前記空気静圧軸受の変位に基づいて送り負荷を測定する送り負荷測定装置とを有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のスピンドルモータにおいて、
前記弾性部材は、
前記筒状筐体に固定される外周側環状部材と、
前記空気静圧軸受に固定される内周側環状部材と、
前記外周側環状部材と前記内周側環状部材とを径方向に連結する薄板状弾性部材とが一体化された構造を有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のスピンドルモータにおいて、
前記薄板状弾性部材は、
前記外周側環状部材との結合部位にある外周側結合部と、
前記内周側環状部材との結合部位にある内周側結合部と、
前記外周側結合部から内周側に突出する外周側連結部と、
前記内周側結合部から外周側に突出する内周側連結部と、
前記外周側突出部と前記内周側突出部とを周方向に沿って連結する周方向連結部とを有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記送り負荷測定装置は、
前記筒状筺体に配設された固定電極と、
前記空気静圧軸受に配設され、前記固定電極に対向配置された測定電極と、
前記固定電極と前記測定電極との間の静電容量を測定する静電容量測定回路とを有する静電容量測定方式の送り負荷測定装置であることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のスピンドルモータにおいて、
前記固定電極は、第1固定電極及び第2固定電極からなり、
前記測定電極は、前記第1固定電極及び前記第2固定電極の両方に対向配置されており、
前記静電容量測定回路は、前記第1固定電極と前記測定電極との間に形成される第1コンデンサ及び前記第2固定電極と前記測定電極との間に形成される第2コンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記送り負荷によって前記回転体が所定量を超えて後退しないように前記回転体又は前記空気静圧軸受を基端側から支持するストッパ部材をさらに有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記回転体は、
前記筒状筐体内で前記モータの回転軸と一体になって回転可能な基端側回転体と、
前記筒状筐体内で前記基端側回転体とともに回転可能で、かつ、前記穿孔工具把持部と一体となって回転可能な先端側回転体と、
前記基端側回転体と前記先端側回転体との間の回転力伝達経路中に配設され、回転方向に沿って捩れ変形可能な回転力伝達部材とを有する回転体であり、
前記回転力伝達部材の捩れ変形に基づいて前記基端側回転体に対する前記先端側回転体の回転負荷を測定する回転負荷測定装置をさらに有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項8】
請求項7に記載のスピンドルモータにおいて、
前記回転負荷測定装置は、
前記基端側回転体の先端側に固定され、外周部に第1外周電極面を有する円筒状の第1回転電極体と、
前記第1回転電極体から先端側に向けて突出し、第1対向電極面を有する第1突起部と、
前記第1回転電極体の外周側に配置され、前記第1外周電極面に対向する第1内周電極面を有する第1固定電極体と、
前記先端側回転体の基端側に固定され、外周部に第2外周電極面を有する円筒状の第2回転電極体と、
前記第2回転電極体から基端側に突出し、前記第1対向電極面に対向する第2対向電極面を有する第2突起部と、
前記第2電極体の外周側に配置され、前記第2外周電極面に対向する第2内周電極面を有する第2固定電極体と、
前記第1内周電極面と前記第1外周電極面との間に形成される第3コンデンサ、前記第1対向電極面と前記第2対向電極面との間に形成される第4コンデンサ及び前記第2外周電極面と前記第2内周電極面との間に形成される第5コンデンサの直列接続により構成される電気回路の合成静電容量を測定する第2静電容量測定装置とを有する静電容量測定方式の回転負荷測定装置であることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項9】
請求項8に記載のスピンドルモータにおいて、
前記第1内周電極面と前記第1外周電極面とが対向する部分の面積をS1とし、
前記第1対向電極面と前記第2対向電極面とが対向する部分の面積をS2とし、
前記第2内周電極面と前記第2外周電極面とが対向する部分の面積をS3としたとき、
S1はS2の10倍よりも大きく、S3はS2の10倍よりも大きいことを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のスピンドルモータにおいて、
前記第1突起部として、n個(但し、nは2以上の整数。)の第1突起部が前記第1固定電極体から突出し、前記第2突起部として、n個の第2突起部が前記第2固定電極体から突出し、前記n個の第1固定電極体及び前記n個の第2固定電極体は、それぞれ回転方向に沿って(360/n)°おきに配置されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記筒状筺体における前記基端側回転体との対向面及び前記筒状筺体における前記基端側回転体との対向面には、空気静圧軸受が配設されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載のスピンドルモータにおいて、
前記回転力伝達部材は、前記基端側回転体と前記先端側回転体との間に機械的遊びの無い状態で配設されている回転力伝達棒であることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のスピンドルモータと、
所定の送り動作によって前記スピンドルモータを送り方向に沿って移動させる送り駆動装置と、
穿孔加工対象物品を把持する穿孔加工対象物品把持部とを有することを特徴とする穿孔加工装置。
【請求項14】
請求項7〜12のいずれかに記載のスピンドルモータと、
所定の送り動作によって前記スピンドルモータを送り方向に沿って移動させる送り駆動装置と、
穿孔加工対象物品を把持する穿孔加工対象物品把持部とを有し、
前記送り負荷測定装置により測定された送り負荷と、前記回転負荷測定装置により測定された回転負荷とによって表される負荷データとが、送り負荷と回転負荷とを変数とする所定の負荷限界値を超えた場合に、前記所定の送り動作を中断するように構成されていることを特徴とする穿孔加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−291876(P2009−291876A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147314(P2008−147314)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(596070168)株式会社ダイヤ精機製作所 (9)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【Fターム(参考)】