説明

スピン転移材料

本発明は、少なくとも1種のスピン転移化合物で構成された材料に関する。該材料は、以下の式(I)に示す少なくとも1種の化合物で構成されている:


(上記式において、
− MはFe以外の、3d4、3d5、3d6又は3d7配置の材料;
− 0≦m≦1;
− R−Trzは4位のN上にR置換基を有する1,2,4−トリアゾールリガンド;
− Rはアルキル基又はR12N−基であり、該R1及びR2はそれぞれ互いに独立にH又はアルキルラジカルを示す;
− Xは少なくとも1種の1価又は2価の着色性アニオン;
− Yは着色性の少なくとも1種のアニオン;
− b及びcは化合物(I)の電気的中性が守られるように選択される)。
本発明は、さらに前記材料の製造方法及びそのサーモクロミック顔料、データ記憶のサポート、又は、光リミッタとしての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にスピン転移化合物を含む材料、該材料の製造方法、及び、該材料の種々の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
スピン転移を示す化合物の様々な用途、特に、情報記憶への用途が知られている。このような化合物としては、例えば、特許文献1〜4に記載されているように、特に、3d4、3d6又は3d7配置を有する1又はそれ以上の金属中心、1種又はそれ以上の窒素の配位子及び1種又はそれ以上のアニオンを含む配位錯体を用いることができる。
【0003】
特許文献1には、スピン転移化合物の製造方法及びスピン転移化合物の情報記憶への利用が開示されている。当該製造方法は、一方では配位子を一緒に用いて、他方では酸性溶液中で鉄塩を一緒に用いて、沈殿物を得るように反応が行われ、該沈殿物を粉体状に回収している。情報記憶への利用のために、得られた複合体は、支持体に堆積するように、種々の方法によって、前もって粉体にされる。該化合物は、以下の化学式を有している:FeL3(NO32(ここで、Lは、NO3-アニオンと結合した、1,2,4−トリアゾール又は4−アミノ−1,2,4−トリアゾール型である);Fe(ATP)25Cl2(ここで、ATP配位子はFe(II)及びCl-と結合した4−アミノ−1,2,4−トリアゾールである);Fe(TP)2Cl2(ここで、TP配位子はCl-と結合した1,2,4−トリアゾールである);[Fe(2−アミノメチルピリジン)3]Cl2EtOH(ここで、EtOHはエタノールである);[Fe(1,10−フェナントロリン)2](NCS)2;[Fe(1−プロピルテトラゾール)6](BF42;金属Mと、数種の配位子の混合物(R−Trz、アミンNL2及びトリアゾレートTrz−から選択され、MはFe(II)、Fe(III)又はCo(II)であり、R−TrzはR置換基を有するトリアゾールであり、R及びLはアルキル基又はHである)、及び、BF4-、ClO4-、CO32-、Br-及びCl-から選択されるアニオンとが結合し、さらに所定量の水を含む複合体。
【0004】
[Fe(1,10−フェナントロリン)2(NCS)2]を除いて、全ての化合物が低スピン(LS)転移のピンク色、及び、高スピン転移(HS)の白色のものである。遷移は加熱又は冷却により発生し、−20〜100℃で生じる。これらの化合物は、数℃〜数十℃の幅の履歴現象を示す。
【0005】
特許文献2には、式Fe(II)(H−Trz)3(X)2(ここで、Trzは1,2,4−トリアゾールであり、(X)2はアニオン(BF4-2、(ClO4-2、(Br-2、(Cl-2又は(CO32-)を示す)のスピン転移化合物が開示されている。これらの化合物は、2つの結晶相を示し、それらは、色の変化(白/ピンク)に関連するスピン転移を有し、そのために温度T1/2↓及びT1/2↑は、それぞれ室温未満及び室温超である。製造方法は、特許文献1に記載のものと類似している。
【0006】
特許文献3には、特許文献1で記載された「金属Mと、数種の配位子の混合物との複合体」に類似する式の化合物に対応する化合物が開示されている。ここで、Mはd5、d6又はd7配置の金属イオンであり、配位子はジアルキルアミノトリアゾールであり、アニオンはスルフィトアリル(sulfitoaryl)、スルフィトアルキル(sulfitoalkyl)、スルフィトアリルハライド(sulfitoaryl halide)又はスルフィトアルキルハライド(sulfitoalkyl halide)族を含んでいる。これらの特定の化合物において、履歴現象幅は70℃超であり、双安定中心領域は、正確には室温近傍である。該化合物は、LSにおいてピンク色であり、HSにおいて白色である。該化合物の製造方法は非常に簡潔に記載されており、特許文献1に記載のものと類似している。
【0007】
特許文献4には、スピン転移化合物及びその表示装置における温度閾値を超えた使用が記載されている。該化合物は、それぞれ金属リガンド錯体及びアニオンによって形成された分子で構成された網目状に形成されている。それらは、該リガンドに水素結合した少なくとも1水分子を構成している。該金属は、d4、d5、d6又はd7配置のものから選択される。該リガンドは、OH基を含むR置換基を有する1,2,4−トリアゾールである。該アニオンは、ニトレート及びトシレート誘導体である。該定義に対応する該化合物は、80〜95℃のT1/2↑及び−170℃のT1/2↓を有している。特に、それらは、貯蔵庫や輸送機器において、事故的に高くなった(80℃オーダーの)保存温度を検出する装置で使用することができる。該化合物は、室温で、金属中心の前駆体及びリガンドの前駆体を混合し、沈殿物が得られた後、濾過で溶媒を除去することにより製造される。該化合物は、粉体状で得られる。
【0008】
特許文献5には、鉄、トリアゾールリガンド、及び、少なくとも1種のアニオンの複合体のナノ粒子で構成された材料が記載されている。この材料は、そのナノ特性のために、特に、温度変化顔料又はデータ記憶に使用される。
【0009】
非特許文献1には、式[Fe(NH2trz)3]X2・xH2に対応する化合物が記載されている。前記式において、2つのX基は、NO3-、ClO4-、Br-及びその他の無着色アニオンである。または、2つのX基は、特に、SO3-基を有するナフタレンアニオン等の着色性のアニオンである。これらの化合物の色は、約370Kまで加熱すると、クリムゾンピンクから白へと変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第543465号公報
【特許文献2】欧州特許第666561号公報
【特許文献3】欧州特許第745986号公報
【特許文献4】欧州特許第842988号公報
【特許文献5】国際公開第06/002651号公報
【非特許文献1】Koningsbruggen Van P. et al. [Journal of Material Chemistry, The Royal Society of Chemistry, Cambridge, GB, vol.7, No.10, 2069-2075]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これら従来の材料は全て、それらのスピン状態に依存するため、ピンク、クリムゾン、又は、白等、非常に限られた範囲の色の変化しか示さない。数種の化合物は、温度上昇により「ピンク−白」以外の色の変化を生じることが知られている。例えば、Arslanらの「Dyes and Pigments, Elsevier Applied Science Publishers, Barking, GB, vol.75, No.3, 521-525」には、加熱の間、茶色からクリムゾンへと色が変化する錯体[Zn(Hsal)2(H2O)(abpy)]・H2Oが記載されている。「abpy」は、アゾビス−ピリジンを示す。これらの化合物において、色の変化は、スピン転移によるものではなく、比較的遅い現象である相転移による。一方、スピン転移は、速く、固相において実質的に無尽蔵の現象である。
【0012】
久米しょう子らの「Chemical Communications, No.23, 2006, 2442-2444」には、黄色からオレンジに変化する、以下の式に示すFe(II)トリアゾール錯体[Fe(1)3(BF42]が記載されている。
【化1】

【0013】
この化合物は、「ピンク−白」以外の色の変化が確かに可能である。しかしながら、この色の変化は、スピン転移からのものではなく、該化合物の吸収を調整する温度におけるリガンドの光異性化からのものである。該色の変化は、履歴現象無しで生じ、調節することができない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、履歴現象により又はよらず、種々の温度の影響下、迅速にピンク又は白以外に色が変化し、その調節が可能である材料を提供することである。この特性は、リガンドが、着色性を有する少なくとも1種のアニオン及び着色性を有さない少なくとも1種のアニオンと組み合わされた鉄錯体の使用によって得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の主題は、結果として新規な材料、該材料の製造方法及びその使用である。本発明に係る材料は、以下の式(I)に示す少なくとも1種の化合物で構成されている。
【化2】

(上記式において、
− MはFe以外の、3d4、3d5、3d6又は3d7配置の材料;
− 0≦m<1、好ましくはm≦0.8;
− R−Trzは4位のN上にR置換基を有する1,2,4−トリアゾールリガンド;
− Rはアルキル基又はR12N−基であり、該R1及びR2はそれぞれ互いに独立にH又はアルキルラジカルを示す;
− Xは少なくとも1種の1価又は2価の着色性アニオン;
− Yは着色性の少なくとも1種のアニオン;
− b>0、c>0であり、b及びcは化合物(I)の電気的中性が守られるように選択される)。
好ましくは、b及びcは10-5≦c/b≦0.1(モル比)を満たす。
【0016】
前記定義に対応する化合物は、加熱及び冷却の間、スピンの各変化に合わせた色の変化を伴って、スピン状態において可逆的に変化することが可能である。
【0017】
本発明に係る材料は、
− ただ1つの化合物(I)(Yは、着色アニオン又は数種の異なった着色アニオン、例えば、2種の着色アニオンY1及びY2を示す);
− それぞれが前記式(I)に対応する数種の異なった化合物;又は、
− 前記式(I)に対応する化合物及び化合物Fe1-mm(R−Trz)3b、すなわち、着色アニオンが無い化合物;
で構成することができる。
【0018】
Xは、1種又はそれ以上の非着色アニオンであってもよく、好ましくは1種又は2種のアニオンX1及びX2である。一価のアニオンXは、BF4-、PF6-、ClO4-、Br-、Cl-、NO3-、CF3SO3-及びCH3SO3-から選択することができる。2価のアニオンXは、好ましくは、SO42-及びCO32-から選択することができる。例えば、BF4-及びNO3-の組み合わせ、Br-及びNO3-の組み合わせ、又は、Cl-及びNO3-の組み合わせ等のアニオンの組み合わせをしてもよい。
【0019】
リガンドR−Trz及びアニオンXの選択は、スピン転移(特に、突然性、履歴現象の存在及び転移位)の制御を可能にする。
アニオンYは、好ましくは、少なくとも2種の芳香環及び少なくとも1種のSO3-基を有する着色アニオンから選択される。このようなアニオンは、特に、「酸性染料」、「直接染料」、「ブリリアント染料」又は「媒染染料」によって提供される。
これらの染料のアニオンは、
− 例えば、4−{[4−(フェニルアミノ)フェニル]アゾ}ベンゼンスルフォン酸のモノナトリウム塩であるC.I.アシッドオレンジ5、又は、以下の式に対応するタルトラジンであるアシッドイエロー23、
【化3】



又は、メチルオレンジ又は以下の式に対応するアシッドオレンジ52(ヘリアンチン:helianthine)、
【化4】

又は、種々のディレクトスカーレット(Direct Scarlet)生成物、又は、以下の式に対応するC.I.ディレクトブルー1、
【化5】

又は、以下の式に対応するC.I.アシッドレッド27、
【化6】

のようなアゾ基;
− 例えば、以下の式に対応するC.I.リアクティブブルー4等のアントラキノン由来の基;及び、
【化7】

− C.I.アシッドイエロー3及びD&C.イエロー30等のキノリン由来の基;
を含むことができる。
【0020】
例として、以下の生成物の酸性染料に係る染料を用いることもできる;
アシッドブラックATT−M、アシッドブラック10B(アシッドブラック1)、アシッドブラックBG(アシッドブラック31)、アシッドブラックBRN、アシッドブル−ブラックBR(アシッドブラック24)、アシッドブライトイエローG(アシッドイエロー11)、アシッドブライトイエロー2G(アシッドイエロー17)、アシッドブラウン2R(アシッドブラウン14)、アシッドブラウンRL(アシッドブラウン2)、アシッドコリス(Acid Corith)N−5BL(アシッドレッド299)、アシッドクロムグレイBS(モーダントブラック(Mordant Black)13)、アシッドダークブルー5R(アシッドブルー113)、アシッドダークブルーGR(アシッドブルー120)、アシッドグリーンGS(アシッドグリーン25)、アシッドライトレッド2G(アシッドレッド1)、アシッドミリングイエローG(アシッドイエロー117)、アシッドネイビーブルー(アシッドブルー92)、アシッドオレンジGS(アシッドオレンジ33)、アシッドオレンジII(アシッドオレンジ7)、アシッドレッドA(アシッドレッド88)、アシッドレッドB(アシッドレッド14)、アシッドレッドG(アシッドレッド35又は1)、アシッドレッド6B(アシッドバイオレット35)、アシッドスカーレットGR(アシッドレッド73)、アシッドスカーレットMOO(アシッドレッド73)、アシッドスカーレット3R(アシッドレッド18)、アシッドブルー1(パテントブルーVF又はサルファンブルー(Sulfan Blue))、アシッドダーク、アシッドフスチン(Acid Fuschin)、アシッドグリーン、アシッドオレンジ52(メチルオレンジ又はヘリアンチン(helianthine))、アシッドバイオレット又はアシッドイエロー23(タルトラジン)。
【0021】
例として、以下の生成物に係る直接染料を用いてもよい:
ダイレクトブラックTBRN、ダイレクトブラック38、ダイレクトボルドー(Direct Bordeaux)(ダイレクトレッド23)、ダイレクトクリソフェニンG(ダイレクトイエロー12)、ダイレクトカッパーブルー2R又は2B(ダイレクトブルー86)、ダイレクトダークブラウンM(ダイレクトブラウン2)、ダイレクトファストブラックG(ダイレクトブラック19)、ダイレクトファストブラックGF(ダイレクトブラック22)、ダイレクトファストブルー5B(ダイレクトブルー86)、ダイレクトファストグリーンBLL(ダイレクトグリーン26)、ダイレクトグリーンB(ダイレクトグリーン26)、ダイレクトグレイD(ダイレクトブラック17)、ダイレクトピンク12B(ダイレクトレッド31)、ダイレクトスカーレット4BS(ダイレクトレッド23)、ダイレクトスカイブルー5B(ダイレクトブルー15)、ダイレクトターコイズブルー(ダイレクトブルー86)、ダイレクトバイオレット又はトリパンブルー(Trypan Blue)(ダイレクトブルー14)。
アニオンX及びYの比率は、化合物の電気的中性が守られるような値である。
【0022】
本発明に係る材料の各スピン状態の色は、アニオン又はアニオンX及びYを選択し、該材料における各比率を制御することによって適宜調節することができる。
生成した化合物が低スピン状態でピンクを示し、高スピン状態で白を示すのを阻止するためには、着色アニオンYの前記比率は、ある境界値超である必要がある。また、着色アニオンの前記比率は、低スピン状態と高スピン状態とに対応する色の区別が困難である境界値未満である必要がある。当該限界は、特に、アニオンYの色特性の程度による。このように、高着色力を有するアニオンYの低濃度限界及び高濃度限界は、低着色力を有するものに比べて低い。
【0023】
一般に、本発明に係る材料は、好ましくは、c/bモル比率(すなわち、「Yのモル数/Xのモル数」)が0.1以下で、10-5以上である比率でアニオンを含んでいる。
【0024】
色がアニオンYが生じる種々の染料に関係することを知っている当業者は、通常の試験により、低スピン状態及び高スピン状態における該材料の色間の必要な対比を得るために、着色アニオンYの比率が維持されるべき間の上側限界及び下側限界を想定される使用によりどのように決定すべきかを知っている。
【0025】
R置換基がアルキル基であるとき、好ましくは炭素原子を1〜8個有するアルキル基から選択され、より好ましくは炭素原子を1〜4個有するアルキル基から選択される。R置換基がR12N−基であるとき、R1及びR2は、それぞれ互いに独立に、好ましくは、H、又は、1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0026】
特定の実施形態において、m=0であり、本発明に係る材料は式Fe(R−Trz)3(X)b(Y)cに対応している。
【0027】
別の実施形態において、m=0ではない。そのとき、Mは式Fe1-mm(R−Trz)3(X)b(Y)cの化合物のスピン転移現象のドープ剤として作用する。mの増加は、突然の転移の性質、及び、低スピン状態に係る色の強度を減少させる。金属Mの例としては、亜鉛(II)、マンガン(II)、ニッケル(II)及びコバルト(II)イオンが挙げられる。前記材料の使用において、Feの部分置換としての元素Mの存在により、突然のスピン転移の性質を減少させることが可能となる。
【0028】
本発明に係る材料は、粉体状であってもよい。該粉体を形成する粒子は、ナノサイズ又はマクロサイズであってもよい。ナノサイズの粒子は、500nm未満の平均粒子径を有する粒子を意味する。マクロサイズの粒子は、500nm超且つ500μm未満、好ましくは600nm〜100μmの平均粒子径を有する粒子を意味する。
【0029】
前記材料がナノサイズの粒子の形状で得られるとき、該ナノサイズの粒子は、シリカのフィルムで覆ってもよい。粒子表面のシリカの存在により、表面張力を修正し、スピン転移材料の利用に対応する使用に係る官能基を与えることができる。
【0030】
前記材料は、アニオンXの少なくとも1種のFe(II)塩、随意に金属M及び前記鉄塩のアニオンXと同一又は異なるアニオンXの塩、及び、着色アニオンの前駆体を含む溶液を、リガンドR−Trzの溶液に供給して接触させ、続いて沈殿させ、冷却することによって得られる。
前記接触操作は、有利には、室温で行うことができる。
【0031】
反応媒体へ投入される種々の反応剤の量は、好ましくは、望ましい材料に係る式Fe1-mm(R−Trz)3(X)b(Y)cの化学量論に対応する(すなわち、m、b及びcがそれぞれ選択される)量である。
前記材料は、水性媒体において懸濁状で又は乾燥粉体状で使用することができる。
【0032】
本発明に係る材料は、逆ミセル合成又はマイクロエマルジョン合成によって、ナノサイズの粒子状で得られる。
逆ミセル合成法は、以下の段階を含んでいる:m=0すなわち金属Mが存在しないとき、
a)強撹拌下、オイル含有界面活性剤特性型の組成物の、アニオンXの少なくとも1種の鉄塩、アスコルビン酸及びアニオンYの前駆体を含む水溶液への添加による水−オイル型のエマルジョンの調製;
b)強撹拌下、オイル含有界面活性剤特性型の組成物の、リガンドR−Trzの水溶液への添加による水−オイル型のエマルジョンの調製;
c)強撹拌下、2つのエマルジョンの混合;
d)ナノサイズの粒子の構造を修正せず、エマルジョンを変性させる、例えばエチルエーテル等の溶液の添加によるナノサイズの粒子の沈殿。
【0033】
1〜10分間の撹拌が、一般的にこれら2つのエマルジョンの混合を安定化させるのには十分である。
エマルジョンを変性させ、スピン転移材料の沈殿を生じさせるのに用いられる溶液は、用いる表面活性剤によって選択される。該選択は、当業者が行う範囲内のものである。該沈殿物は数回の「洗浄/遠心分離」サイクルによって水性媒体から抽出され、該洗浄液を蒸発させて得られる。洗浄液は、有利には、ナノサイズの粒子を沈殿させるのに用いられたものである。
【0034】
2種のタイプのアニオンY、すなわち、Y1及びY2を含む材料の調製として、前記段階a)の前記水溶液は、アニオンY1及びY2の前駆体を両方含む。
2種のタイプのアニオンX、すなわち、X1及びX2を含む材料の調製として、前記段階a)の前記水溶液は、X1及びX2の鉄塩を両方含む。
【0035】
前記オイル含有界面活性剤特性型の組成物は、オイルへの界面活性剤の添加によって製造したものであってもよく、界面活性及びオイル特性の両方を有する単一生成物(例えば、登録商標Lauropal、登録商標Tergitol、又は、登録商標Ifralanの名で販売されている製品)であってもよい。
【0036】
前記粒子のサイズは、特に、反応温度及び/又はそれぞれ段階a)及びb)の間に準備された2つのマイクロエマルジョンの接触時間の選択によって制御することができる。その他の全ては同一であれば、接触時間の増加及び/又は温度の上昇は、最終生成物である粒子のサイズの増大に寄与する。マイクロエマルジョン合成による製造は、以下の段階を含んでいる:m=0、すなわち、金属Mが存在しないとき、
a)アニオンXの少なくとも1種の鉄塩を含む水溶液及び着色アニオンYの前駆体を、界面活性剤のオイル(例えばn−ヘプタン)溶液へ添加し、透明溶液が得られるまで分散させることによる水−オイル型のマイクロエマルジョンの調製;
b)リガンド(R−Trz)の水溶液を界面活性剤のオイル溶液へ添加し、透明溶液が得られるまで分散させることによる水−オイル型のマイクロエマルジョンの調製;
c)2つのマイクロエマルジョンを混合し、透明溶液が得られるまでの該混合物の超音波処理;及び、
d)ナノサイズの粒子の構造を修正せず、エマルジョンを変性させる、例えばエタノール等の溶液の添加によるナノサイズの粒子の沈殿。
分散は、有利には、超音波処理により行う。
【0037】
この実施形態においても、得られる沈殿物は、数回の「洗浄/遠心分離」サイクルによって水性媒体から抽出され、該洗浄液を蒸発させて得られる。
【0038】
数種の異なったアニオンYを含む材料の調製として、段階a)の水溶液は前述の染料から選択される各アニオンYの前駆体を含む。
数種の異なったアニオンXを含む材料の調製として、段階a)の水溶液は各アニオンXの鉄塩を含む。
【0039】
マイクロエマルジョンを得るために必要な界面活性剤及びオイルの溶媒の比率は、三成分混合物の相平衡状態図から決定される。多数の溶媒/オイル/界面活性剤の組み合わせとして、文字通り三元状態図が利用される。特定の三角図の決定は、当業者の考える範囲のものである。
【0040】
ナノサイズの粒子状の本発明に係る材料の両製造方法において、mが0でない、すなわち、金属Mが存在するとき:
− 前記材料中にただ1種のアニオンXのみを所望するとき、Mの塩の水溶液が準備され、「界面活性剤+オイル」混合物に接触される前にXのFe塩の水溶液へ添加され;
− 前記材料中に数種の異なった非着色アニオンXを所望するとき、1種のアニオンXの少なくとも1種の鉄塩及びX以外の1種のアニオンX1の少なくとも1種のMの塩を含む溶液が準備される。
【0041】
上述の2つの製造方法において、シリカで覆われたナノサイズの粒子のスピン転移化合物の形状の本発明に係る材料の調製として、ミセル又はマイクロエマルジョンの変性の前に(すなわち、上述の2つの実施形態における段階d)の前に)、シリル誘導体が反応媒体に添加される。シリル誘導体の例として、テトラエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン及び(n−オクチル)トリエトキシシランを挙げることができる。
【0042】
本発明に係る材料は、マクロサイズの粒子状であってもよい。該材料の形状は、Xの鉄塩、及び、随意にXの金属Mの塩の水溶液であって、制御された量の着色アニオンYの前駆体を含む水溶液を、リガンドR−Trzの水溶液へ添加し、沈殿物を抽出することから成る製造工程で得られる。本実施形態によれば、マクロサイズの粒子状の材料の製造が可能となる。得られる色は、着色アニオン又は反応媒体に投入されたアニオンYによって直接付与されたものである。
【0043】
数種の異なったアニオンYを含む材料の調製として、段階a)の水溶液は、各アニオンYの前駆体を含む。これらの前駆体は、前述の染料から選択される。
数種の異なったアニオンXを含む材料の調製として、段階a)の水溶液は、各アニオンXの鉄塩を含む。
【0044】
種々の広範囲に渡る色を得ることを可能にする、本発明の定義によるマクロサイズの粒子状の材料の調製の数種の特定の実施形態を以下に記載する。
【0045】
本発明に係る材料は、同一のリガンド及び異なったアニオンYを有する2つの化合物(I)で構成することができる。特定の実施形態において、本発明に係る材料は、以下の数段階で調製される:
− 式Fe1-mm(R−Trz)3b1c1の化合物及び式Fe1-mm(R−Trz)3b'2c2の化合物の、前記工程の1つによる調製(ここで、Xはそれらの化合物においてそれぞれ1種又はそれ以上のアニオンを示し、Y1及びY2は互いに異なり、それぞれただ1種のアニオンを示し、b、b’、c1及びc2は化合物の電気的中立性を守るために選ばれる);
− 各化合物のそれぞれへの「洗浄/遠心分離」サイクルによる抽出;及び、
− 固体状で得られた2つの化合物の混合。
【0046】
このように、例えば、高スピン状態で青色を示す第一の材料、及び、高スピン状態で黄色を示す第二の材料を調製し、高スピン状態で緑色を示す材料を得るために、得られた2つの粉末を混合することが可能である。
【0047】
本発明に係る材料は、式(I)Fe1-mm(R−Trz)3bcの化合物、及び、式Fe1-mm(R’−Trz)3X’b'の化合物(着色アニオン無し)で構成される。当該特定の実施形態において、
本発明に係る材料は、以下の数段階で調製される:
− 式Fe1-mm(R−Trz)3bcの化合物の調製(ここで、Yは、上述の工程の1つによる1種又はそれ以上の着色アニオンを示す);
− 式Fe1-mm(R’−Trz)3X’b'の化合物の調製(ここで、R及びR’は、同一又は異なっており、X及びX’は、同一又は異なっており、上述の工程によるものであるが、着色アニオンYの前駆体を除く);
− 各化合物のそれぞれへの「洗浄/遠心分離」サイクルによる抽出;及び、
− 固体状で得られた2つの化合物の混合。
【0048】
式Fe1-mm(R’−Trz)3X’b'の化合物は、低スピン状態でピンク色を、高スピン状態で白色を示すことが知られている。それを本発明に係る式Fe1-mm(R−Trz)3bcの有色の化合物に混ぜれば、式Fe1-mm(R−Trz)3bcの化合物の初期の色を修正することができ、種々の色の変化が得られる。
【0049】
本発明に係る材料は、X及びYにおけるリガンドが異なる式(I)の化合物の混合物で構成される。この特定の実施形態では、本発明に係る化合物は以下の数段階で調製される:
− 上述の製造工程の1つによる、式Fe1-mm(R−Trz)3bcの化合物の準備(ここで、Yは1種又はそれ以上の着色アニオンを示す);
− 上述の製造工程の1つによる、式Fe1-mm(R’−Trz)3X’b'Y’b'の化合物の準備(ここで、R及びR’は互いに異なり、X及びX’は互いに異なり、Y及びY’は互いに異なる);
− 各化合物のそれぞれへの「洗浄/遠心分離」サイクルによる抽出;
− 固体状で得られた2つの化合物の混合。
【0050】
本発明に係る固体状の材料は、2つの異なる基Y及び2つの異なる基Fe1-mm(R−Trz)を含むとき、3つの切り替わり色を示す。これは、以下によって得られる:
− 式Fe1-mm(R−Trz)3bcの化合物(ここで、Xは2つの異なる非着色アニオンを示し、Yは2つの異なる着色アニオンを示す);又は、
− 式Fe1-m'M’m'(R’−Trz)3X’bY’c及び式Fe1-mm(R−Trz)3bcの2つの化合物(ここで、Y及びY’は互いに異なり、M−M’、X−X’、R−R’の少なくとも1つのペアは、互いに2つの異なる要素で構成されている)。
【0051】
粉体状の前記2つの化合物の混合物を構成する前記材料は、3つの切り替わり色を示す、温度の変化によって色が変わる(サーモクロミック)材料である。この種の材料は、特に温度限界が超えたことを示すようなインジケーターの分野に有効である。Fe1-mm(R−Trz)3X及びFe1-m'M’m'(R’−Trz)3X’のそれぞれの基は、それに特有の性質により転移する(配置に関しては、突然の性質及び履歴現象)。前記材料における各化合物の量の選択により、転移及び中間色の幅の調節が可能となる。
【0052】
本発明に係る材料は、特に、絵画、塗装、プラスチック技術、標識、装飾及びデータ保護の分野における、サーモクロミック顔料として用いることができる。例としては、プラスチック技術の分野において、数ミクロン厚の層状にした塗装がしばしば行われる。前記粒子は、マイクロメートル又はナノメートルオーダーの層状の基質に利用されるポリマーマトリクス内に直接取り込まれる。
【0053】
本発明に係るナノサイズの粒子状の材料は、さらにデータ記憶に利用される。ナノサイズの粒子は、スピン転移を利用する純粋な「分子記憶」を構成する。少量の情報がこのように各ナノサイズの粒子で記憶される。これらの双安定なナノサイズの粒子がドープされたポリマーマトリクスで構成されたディスクの完全な透明性により、大量データ記憶(ホログラフィ)の分野への利用が予想される。本発明は、切り替え波長の調節が可能な粒子が幅広く提供することができるという利点を有する。
【0054】
スピン転移現象に関連する色の(すなわち、吸収スペクトルの)顕著な修正は、低スピン状態と高スピン状態との間の材料の屈折率の変化によって反映される。この2つの状態の各屈折率は、分子が高スピン転移(HS)状態にあるとき中程度の透明を提供するために調節される。可視光線が高エネルギーのとき、光作用感応効果は、HS状態からLS状態への切り替えを引き起こし、幅広い屈折率を実現させる。初期に透明な媒体は、その後、不透明となる。この現象のため、ナノサイズの粒子を光リミッタの分野で用いることができる。
【0055】
外力の効果の元、より少量である低スピン状態が好ましいことに注目すべきである。この理由のため、本発明に係る材料のナノサイズの粒子の圧電性(ポリマー)マトリクスへの挿入によって、光学フィルター及び「知能」光沢(“intelligent” glazing)の分野で利用することができる色の修正を制御することが可能となる。
【0056】
本発明は、以下の実施例によって、より詳細に説明される。以下の実施例は、例として示されるものであり、もちろん発明を限定するものではない。
【0057】
(実施例1)
YがパテントブルーVF(アシッドブルー1)であるマクロサイズの粒子の調製
590mgの4−アミノ−1,2,4−トリアゾールを含む水溶液5mlと、500mgのFeBr2を含む水溶液5mlと、以下の式で示されるパテントブルーVF溶液1mlとを室温で混合する。
【化8】

【0058】
1時間混合した後、反応媒体を冷却し、形成した沈殿物を水で洗浄する。
種々のサンプルを、異なるパテントブルーVF染料濃度を有する染料液を用いて上述の工程によって準備した。
【0059】
染料液の濃度C(mol/L)の作用で得られる低スピン及び高スピン状態の色を表1に示す。この色は、特に、CIE XYZ 1931システム及びL*** CIE 1976クロマティックスペースの3色のスペクトル成分によって示される。着色アニオンの比率が材料において増加したときの、低スピン色及び高スピン色における変化がこの表で示されている。
【0060】
【表1】

【0061】
(実施例2)
Yがタルトラジン(アシッドイエロー23)であるマクロサイズの粒子の調製
実施例1におけるパテントブルーをタルトラジンとして、実施例1と同様の処理を行った。
【化9】

【0062】
染料液の濃度の作用で得られる低スピン及び高スピン状態の色を表2に示す。この色は、特に、CIE XYZ 1931システム及びL*** CIE 1976クロマティックスペースの3色のスペクトル成分によって示される。着色アニオンの比率が材料において増加したときの、低スピン色及び高スピン色における変化がこの表で示されている。
【0063】
【表2】

【0064】
(実施例3)
1がパテントブルーであり、Y2がタルトラジンであるマクロサイズの粒子の調製
染料としてパテントブルー及びタルトラジンの混合物を用いて、実施例1と同様の処理を行った。
染料液の濃度の作用で得られる低スピン及び高スピン状態の色を表3に示す。この色は、特に、CIE XYZ 1931システム及びL*** CIE 1976クロマティックスペースの3色のスペクトル成分によって示される。表3において、濃度の欄の「a」は染料液中のタルトラジンの濃度(mol/L)を示し、「b」は染料液中のパテントブルーの濃度(mol/L)を示す。着色アニオンの比率が材料において増加したときの、低スピン色及び高スピン色における変化がこの表で示されている。
【0065】
【表3】

【0066】
上述の実施例により、非着色アニオンの鉄錯体型のスピン転移材料は、低スピン状態で全てピンクであり、高スピン状態で全て白であることが確認される。これらの色は、非着色アニオンが部分的に着色アニオンに代えられているとき、着色アニオンの量が所定の限界を超えたときに修正される。着色アニオンの比率が高いとき、主要な色は、アニオン由来の染料の固有の色である。媒体比率が低スピン状態及び高スピン状態における色の変化を可能にしている。
【0067】
本発明に係る材料は、このように、着色アニオン及び非着色アニオンの相対的比率の修正によって調製可能な幅広い種類の色に変化するスピン転移化合物を提供する。転移温度、突然性、及び、履歴現象は、大体、リガンド及び非着色アニオンで形成された組み合わせに支配される。本発明は、このように、転移温度、色及び粒子サイズの観点からスピン転移材料の幅広い選択肢を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)に示す少なくとも1種の化合物で構成された材料:
【化1】

(上記式において、
− MはFe以外の、3d4、3d5、3d6又は3d7配置の材料;
− 0≦m<1;
− R−Trzは4位のN上にR置換基を有する1,2,4−トリアゾールリガンド;
− Rはアルキル基又はR12N−基であり、該R1及びR2はそれぞれ互いに独立にH又はアルキルラジカルを示す;
− Xは少なくとも1種の1価又は2価の着色性アニオン;
− Yは着色性の少なくとも1種のアニオン;
− b>0、c>0であり、b及びcは化合物(I)の電気的中性が守られるように選択される)。
【請求項2】
b及びcは10-5≦c/b≦0.1(モル比)である請求項1に記載の材料。
【請求項3】
− ただ1つの化合物(I)(Yは、着色アニオン又は数種の異なった着色アニオンを示す);
− それぞれが前記式(I)に対応する数種の異なった化合物;又は、
− 前記式(I)に対応する化合物及び着色アニオンが無い化合物Fe1-mm(R−Trz)3b
で構成された請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
Xは、BF4-、PF6-、ClO4-、Br-、Cl-、NO3-、CF3SO3-、CH3SO3-、SO42-及びCO32-からなる群から選択された1種またはそれ以上のアニオンである請求項1〜3のいずれかに記載の材料。
【請求項5】
Yは、少なくとも2種の芳香環及び少なくとも1種のSO3-基を有する1種またはそれ以上の着色アニオンである請求項1〜4のいずれかに記載の材料。
【請求項6】
Rは、炭素原子を1〜8個有するアルキル基又はR12N−基(ここで、R1及びR2は、それぞれ互いに独立に、H、又は、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基である)である請求項1に記載の材料。
【請求項7】
化合物(I)が式Fe(R−Trz)3(X)b(Y)cで示される請求項1に記載の材料。
【請求項8】
化合物(I)が式Fe1-mm(R−Trz)3(X)b(Y)c(ここで、m>0であり、Mは亜鉛(II)、マンガン(II)、ニッケル(II)及びコバルト(II)から選択される)で示される請求項1に記載の材料。
【請求項9】
500nm未満の粒子径を有するナノサイズの粒子状である請求項1〜8のいずれかに記載の材料。
【請求項10】
500nm超且つ500μm未満の平均粒子径を有するマクロサイズの粒子状である請求項1〜8のいずれかに記載の材料。
【請求項11】
ナノサイズの粒子がシリカのフィルムで覆われている請求項9に記載の材料。
【請求項12】
水性媒体において懸濁状である請求項1〜11のいずれかに記載の材料。
【請求項13】
粉体状である請求項1〜11のいずれかに記載の材料。
【請求項14】
− 式Fe1-mm(R−Trz)3bcの化合物(ここで、Xは2つの異なる非着色アニオンを示し、Yは2つの異なる着色アニオンを示す);又は、
− 式Fe1-m'M’m'(R’−Trz)3X’bY’c及び式Fe1-mm(R−Trz)3bcの2つの化合物の混合物(ここで、Y及びY’は互いに異なり、M−M’、X−X’、R−R’の少なくとも1つのペアは、互いに2つの異なる要素で構成されている);
で構成された3つの切り替わり色を示す請求項13に記載の材料。
【請求項15】
アニオンXの少なくとも1種のFe(II)塩、随意に金属M及び前記Fe塩のアニオンXと同一又は異なるアニオンXの塩、及び、着色アニオンの前駆体を含む溶液を、リガンドR−Trzの溶液に供給して接触させ、続いて沈殿させ、冷却して請求項1に記載の材料を得ることからなる製造方法。
【請求項16】
種々の反応物が、式Fe1-mm(R−Trz)3(X)b(Y)cの化学量論量で反応媒体へ導入される請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
粉体を得るために、数回の洗浄/遠心分離サイクルを行い、続いて乾燥を行う段階を含む請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
式Fe1-mm(R−Trz)3(X)b(Y)cの化合物のナノサイズの粒子の調製において、
a)強撹拌下、オイル含有界面活性剤特性型の組成物の、非着色アニオンXの少なくとも1種の鉄塩、アスコルビン酸、少なくとも1種のアニオンYの前駆体、随意の金属Mの塩及びXと同一又は異なるアニオンX1の塩を含む水溶液への添加による水−オイル型のエマルジョンの調製;
b)強撹拌下、オイル含有界面活性剤特性型の組成物の、リガンドR−Trzの水溶液への添加による水−オイル型のエマルジョンの調製;
c)強撹拌下、2つのエマルジョンの混合;
d)ナノサイズの粒子の構造を修正せず、エマルジョンを変性させる溶液の添加によるナノサイズの粒子の沈殿;及び、
e)随意に、形成した沈殿物の抽出;
の段階を含む逆ミセル合成を含む請求項13に記載の製造方法。
【請求項19】
式Fe1-mm(R−Trz)3(X)b(Y)cの化合物のナノサイズの粒子の調製において、
a)少なくとも1種のアニオンXの少なくとも1種の鉄塩を含む水溶液及び着色アニオンYの少なくとも1種の前駆体を、界面活性剤のオイル(例えばn−ヘプタン)溶液へ添加し、透明溶液が得られるまで分散させることによる油中水滴型のマイクロエマルジョンの調製;
b)リガンド(R−Trz)の水溶液を界面活性剤のオイル溶液へ添加し、透明溶液が得られるまで分散させることによる油中水滴型のマイクロエマルジョンの調製;
c)2つのマイクロエマルジョンを混合し、透明溶液が得られるまでの該混合物の分散;
d)ナノサイズの粒子の構造を修正せず、エマルジョンを変性させる溶液の添加によるナノサイズの粒子の沈殿;及び、
e)随意の、沈殿物の抽出;
の段階を含むマイクロエマルジョン合成を含む請求項15に記載の製造方法。
【請求項20】
前記段階b)及びc)において、分散を超音波処理により行う請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
シリカで覆われたスピン転移化合物のナノサイズの粒子状の材料の調製において、段階d)でシリル誘導体が反応媒体に添加される請求項16又は15に記載の製造方法。
【請求項22】
式Fe1-mm(R−Trz)3(X)b(Y)cの化合物のマクロサイズの粒子の調製において、
非着色アニオンX1及び随意のX1と同一又は異なる非着色アニオンX2の鉄塩の水溶液であって、制御された量の少なくとも1種の着色アニオンYの少なくとも1種の前駆体を含む水溶液を、リガンドR−Trzの水溶液へ添加し、沈殿物を抽出する請求項14に記載の製造方法。
【請求項23】
− 式Fe1-mm(R−Trz)3b1c1の化合物及び式Fe1-mm(R−Trz)3b'2c2の化合物の調製(ここで、Xはそれらの化合物においてそれぞれ1種又はそれ以上の非着色アニオンを示し、Y1及びY2は互いに異なり、それぞれただ1種のアニオンを示し、b、b’、c1及びc2は化合物の電気的中立性を守るために選ばれる);
− 各化合物のそれぞれへの洗浄/遠心分離サイクルによる抽出;及び、
− 固体状で得られた2つの化合物の混合;
の段階を含む請求項15に記載の製造方法。
【請求項24】
− 式Fe1-mm(R−Trz)3bcの化合物の調製(ここで、Yは1種又はそれ以上の着色アニオンを示す);
− 式Fe1-mm(R’−Trz)3X’b'の化合物の調製(ここで、R及びR’は、同一又は異なっており、X及びX’は、同一又は異なっており、着色アニオンYの前駆体を除く);
− 各化合物のそれぞれへの洗浄/遠心分離サイクルによる抽出;及び、
− 固体状で得られた2つの化合物の混合;
の段階を含む請求項15に記載の製造方法。
【請求項25】
− 上述の製造工程の1つによる、式Fe1-mm(R−Trz)3bcの化合物の準備(ここで、Yは1種又はそれ以上の着色アニオンを示す);
− 上述の製造工程の1つによる、式Fe1-mm(R’−Trz)3X’b'Y’b'の化合物の準備(ここで、R及びR’は互いに異なり、X及びX’は互いに異なり、Y及びY’は互いに異なる);及び、
− 固体状で得られた2つの化合物の混合;
の段階を含む請求項15に記載の製造方法。
【請求項26】
請求項1に記載の材料の、サーモクロミック顔料、データ記憶のサポート、又は、光リミッタとしての使用。

【公表番号】特表2010−531368(P2010−531368A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511679(P2010−511679)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000792
【国際公開番号】WO2009/007534
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【Fターム(参考)】