説明

スフィンゴリピドの新規合成アナログ

本発明は、式(II)の化合物として示される新規セラミドアナログを提供する。これらの新規アナログは、著しい抗癌効果を示し、したがって、細胞増殖性疾患、神経変性疾患、代謝関連病態、感染性疾患、及び免疫関連疾患を治療するための医薬組成物として提供される。本発明は、式(II)の新規セラミドアナログを追加の治療薬と組み合わせた、組み合わされた組成物及びキットもさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性疾患及び変性疾患並びに感染症及び代謝性疾患を治療するための医薬の製造に特に好適な新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間に、シグナル伝達プロセスにおけるスフィンゴリピドの群の要素の関与を示唆する発見によりスフィンゴリピドの研究が大幅に増えた(Levade et al.,Biochim.Biophys.Acta 1438,1−17(1999);Mathias et al.,Biochem.J.335,465−80(1998);Perry et al.,Biochim.Biophys.Acta 1436,233−43(1998);Riboni et al.,Prog.Lipid Res.36,153−95(1997);and Fernandis et al.Curr.Opin.Lipidol.18:121−8(2007)に総説がある)。最も研究された化合物はセラミドであり、より最近ではスフィゴシン−1−リン酸であった(Hait et al.,Biochim.Biophys.Acta,1758:2016−26(2006))。セラミドは、成長阻害、分化、及びアポトーシスなどの主要なプロセスの制御に役割を果たしていることが示された(Hannun et al.,Biochim.Biophys.Acta 1154,223−36;Hannun et al.,Trends Cell Biol.10,73−80(2001);Higgins et al.,Trends Biochem.Sci 17,18−21 (1992);and Yang et al.,Cell Biochem.Biophys.,40:323−50(2004))。
【0003】
スフィンゴミエリン(SPM)は、一般にセラミドの一次代謝源であると考えられており、細胞中の特定の位置でそれが生成するので細胞シグナル伝達プロセスを媒介するのに好適となる。セラミドのデノボ合成増大はシグナル伝達の潜在的な源であるとも記載されてきた(Ohanian et al.,Cell.Mol.Life Sci.,58:2053−68(2001);and Pandey et al.,Exp.Mol.Pathol.,82:298−309(2007))。したがって、大部分は中性膜結合性酵素である、スフィンゴミエリナーゼによる細胞内セラミドの生成の調節に主な努力が注がれてきたが、酸性酵素の関連も示唆されてきた。しかし、セラミドのSPM又はグリコリピドへの転化の低減などの生合成機構の修飾と、それと並行するセラミダーゼによるその加水分解の低減によっても細胞中のその濃度が高まるであろうことは強調されるべきである(Dagan et al.,Biochim.Biophys.Acta.,1633:161−9(2003))。
【0004】
シグナル伝達におけるスフィンゴリピドの役割(Eyster K.M.,Adv.Physiol.Educ.,31:5−16(2007);Zheng et al.,Biochim.Biophys.Acta,1758:1864−84(2006);Riboni et al.,Prog.Lipid Res.36,153−95(1997);and Gomez−Munoz,Biochim.Biophys.Acta 1391,32−109(1998)に総説されている)が精力的に研究されてきており、「スフィンゴミエリンサイクル」により作用すると提案された。この仮説によると、特定の細胞外リガンドがその受容体に結合すると、形質膜結合性スフィンゴミエリナーゼを活性化してセラミドが生じるが、それがリガンドの細胞内作用のメディエーターとして作用する。数多くの刊行物が、アポトーシスによる細胞死滅におけるセラミドの役割並びに増殖、分化、及びストレス条件への反応などの重要な細胞事象への効果を記載及び強調している。短鎖の細胞透過性(例えば、C又はC)セラミドが、細胞死滅に至る生物学的応答を誘発するという報告が特に興味深い(Stover et al.,J.Pharmacol Exp.Ther.,307:468−75(2003))。セラミドの前駆体、スフィンゴシンを利用する他の研究は、細胞成長及び生存能力に対するその影響を示した。さらに、スフィンゴシンは、プロテインキナーゼCを阻害しカルシウムイオンの細胞内濃度を高めることが示された。スフィンゴシンのリン酸化形態、スフィンゴシン−1−リン酸は、ホスホリパーゼDの潜在的な活性剤であることが示された。ジメチル化又はトリメチル化スフィンゴシンは、癌細胞の成長を阻害することが示された(Endo et al.,Cancer Research,51,1613−8(1981))。
【0005】
国際公開第03/027058号は、特にスフィンゴリピド及びセラミドの合成の阻害により、野生型及び薬剤耐性癌細胞を殺傷するための、寄生虫疾患及び癌疾患の治療に好適な1群の化合物に関する。国際公開第03/027058号に開示されている化合物は、それ自体置換されていてよいアルキル又はアルケニル鎖により置換されているアルキル骨格を基本的に有する。
【0006】
国際公開第03/027058号の化合物が、免疫変性疾患、特にGVHD(移植片対宿主病)に対しても効果的であることが意外にも見いだされた。GVHDは、ドナーが持たない抗原を持つ宿主組織に対する移植された細胞の1種の不適合反応である。それは、同種異系骨髄移植によく見られる合併症である。骨髄移植の後、汚染物質として、又は意図的に宿主に導入された移植片中に存在するT細胞は、宿主の組織を抗原的に異質であると認識した後、移植片レシピエントの組織を攻撃する。広範囲の宿主抗原がGVHDを起こすことがあり、その中にHLAがある。しかし、GVHDは、HLA一致同胞がドナーである場合にも起こりうる。HLA一致同胞又はHLA一致非血縁ドナー(メジャーミスマッチを構成するHLA抗原の差異に対してマイナーミスマッチと呼ばれる)でも、MHC上に提示されうる遺伝的に異なるタンパク質を持っていることが多い。
【0007】
臨床的には、GVHDは、急性型と慢性型に分かれる。この疾患の急性又は劇症型は、移植後の最初の100日以内に見られ、慢性型GVHDは、100日より後に起こるものと定義される。この区別は恣意的ではない。急性のGVHDと慢性のGVHDとは、異なる免疫細胞サブセット、異なるサイトカインプロファイル、及び異なる種類の標的臓器損傷を含むようである。
【0008】
標準的には、急性GVHDは、肝臓、皮膚、及び粘膜、並びに胃腸管への選択的な損傷により特徴づけられる。より新しい研究は、他のGVHD標的臓器には、免疫系自体(造血系、例えば骨髄及び胸腺)及び突発性肺炎の形態で肺があることを示している。慢性GVHDは上記の臓器を損傷するが、結合組織(例えば皮膚及び外分泌腺)にも変化を起こす。
【0009】
GVHDは、T細胞除去骨髄移植を実施すれば大部分回避できる。このような種類の移植片は、標的臓器損傷を減らし、一般的にGVHDが少なくなるが、代償としては、移植片対腫瘍効果の減少、生着不全のリスク増大、及び全般的な免疫不全症があり、患者がウイルス、細菌、真菌に感染しやすくなる。GVHD予防に一般的に使用される薬剤は、メトトレキサート及びシクロスポリンである。多施設治験(Lancet 2005 Aug 27−Sep 2;366(9487):733−41)において、3年の無病生存率は、T細胞除去移植とT細胞非除去移植との間で変わらなかった。
【0010】
ドナーT細胞は、GVHDのエフェクター細胞として望ましくないが、レシピエントの残存免疫系による骨髄移植片の拒絶を防止することにより、生着のためには貴重である(宿主対移植片)。さらに、骨髄移植が悪性疾患(最も顕著には白血病)の治癒のために利用されることが多いので、ドナーT細胞は、貴重な移植片対腫瘍効果を有することが証明されている。同種異系骨髄移植に関する最近の数多くの研究は、望ましくないT細胞生理学のGVHDの側面を望ましい移植片対腫瘍効果から分離しようとするものである。
【0011】
免疫系の主要な機能は、自己反応性の制御である。通常の状態では、免疫系は自己抗原には不応である。しかし、免疫バランスが崩れると、自己反応性リンパ球が自己免疫疾患を起こすことがある。自己抗原に反応する感作T細胞及び抗体の標的により、様々な疾患が起こる。例えば、中枢神経系の脳炎誘発性決定基に対して反応するリンパ球は、典型的には、多発性硬化症(MS)を起こすが、膵島に反応するリンパ球は通常1型インスリン依存型糖尿病(IDDM)を起こす。他の自己免疫疾患は、自己免疫溶血性貧血など、主に抗体により媒介されるが、他の自己免疫症候群は、全身エリテマトーデス(SLE)など、多臓器又は全身性疾患を起こすことがある。
【0012】
セラミド及びスフィンゴリピド代謝の癌への関与に関して、2系統の研究がこれに関連する。第1の研究は、種々の化学療法薬剤の投与により誘起されるアポトーシスがセラミドにより媒介されることを示している(Jarvis et al.,Curr.Opin.Oncol.,10:552−9(1998);Kolesnick et al.,Oncogene,22:5897−906(2003);Charles et al.,Cancer Chemother.Pharmacol.,47:444−50(2001);and Hail et al.,Apoptosis,11:1677−94(2006))。アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン)はセラミドの蓄積を誘起し、次にそれが癌細胞の死をもたらすことが示された(Cuvillier et al.,Cell Death Differ.,8:162−71(2001))。第2系統の研究は、薬剤耐性癌細胞が、そのスフィンゴリピド代謝において薬剤感受性癌細胞とは異なることを示した。この点で、セラミドの直接の代謝産物であるグルコシルセラミドが、P−糖タンパク質ポンプ(Pgp)を過剰発現するいくつかの薬剤耐性細胞中で増加することを示すCabotの研究(Liu et al.,FASEB J.,15:719−30(2001)and Gouaze et al.,Mol Cancer Ther.,3:633−9(2004))が特に興味深い。グルコシルセラミドシンセターゼ(GCS)は、前記グリコリピドを合成するが、レトロウイルス発現系によるその過剰発現は、ドキソルビシン感受性細胞を耐性細胞に変える(Liu et al.,J.Biol.Chem.,274:1140−6(1999))。逆に、アンチセンス技術によるGCS発現の阻害は、ドキソルビシンへの感受性を増す。Cabotは、タモキシフェン、ベラパミル、及びシクロスポリンアナログPSC833などの薬剤耐性調節因子が、GCSの阻害によりそれらの効果を発揮し(Cabot et al.,FEBS Lett.394,129−131(1996);Cabot et al.,FEBS Lett.431,185−99(1998);Lavie et al.,J.Biol.Chem.,272,1682−7(1997);and Lucci et al.,Cancer 86,300−311(1999))、細胞内セラミドの増加をもたらすことも示唆している。それに応じて、Nicholson(Nicholson et al.,Br.J.Cancer,81,423−30(1999))は、GCS阻害剤、1−フェニル−2−デカノイルアミノ−3−モルホリノ−1−プロパノールが、多剤耐性細胞を、その薬剤感受性対応物に比べて選択的に殺傷したことを示している。合わせると、上記の研究は、MDR細胞中で、セラミドをグルコシルセラミドに転化することによりセラミド含量を低下させ、一連の化学療法薬剤に対して耐性にする代謝機構を示唆している。アポトーシスのセラミド誘起と乳癌死の間の関係について、2、3の最近の刊行物(Scarlatti et al.,FASEB J.71,2239−2341(2003);Gewirtz et al.,Breast Cancer Res.and Treatment 62,223−235(2000);and Struckhoff et al.,J.Pharm.Exp.Ther.309,523−532(2004))及びReynolds,Mauer及びKolesnickによる総説(Reynolds et al.,Cancer Letters 206,169−180(2004))は、これら3つの要素間の関係をまとめ、腫瘍細胞セラミドを増すスフィンゴリピド代謝の薬理学的操作の潜在的効果を議論している。シグナル伝達プロセスへのセラミドの関与に対する興味は、これに関する数千の記事及び数百の総説の出現により強調されている。しかし、多くの病状におけるスフィンゴリピドの重大な役割を考慮し、治療薬として使用するための新規スフィンゴリピドアナログの必要性が感じられる。
【0013】
自己免疫疾患のいずれにも効果的な治療法が存在せず、上記のいずれの病因も十分理解されていない。しかし、抗自己反応性を下方制御する可能性は、特定の自己免疫疾患それぞれの病因が何であれ、治癒のための選択肢を提供する可能性がある。
【0014】
自己免疫疾患の具体的な治療がないため、活動性疾患を持つ患者の治療は対処療法に基づいている。自己反応性リンパ球は、制御されない炎症反応を起こし、それが二次応答のカスケードにより広がる。現行の医薬は、この炎症を制御するため、又はより重篤な場合には、免疫抑制剤により自己反応性リンパ球を除去又は制御するために使用される。しかし、免疫抑制治療は一般的にあまり効果的でなく、確実に治癒力はない。さらに、免疫抑制剤(例えば、コルチコステロイド;シクロホスファミド;イムラン、又はシクロスポリンA)の長期使用は、重症で、特には致死的なアウトカムを生み出すことが多い。これらは、これらの薬剤の副作用によるか、或いは、感染症及び二次的な悪性腫瘍を含む効果的な免疫抑制の結果によることがある。したがって、利用可能な治療法は、特にMS、IDDM、又はSLEなど進行性でなく命を脅かすものでない疾患などの自己免疫疾患を治療するには満足にほど遠い。
【0015】
したがって、本発明の目的は、特に増殖性疾患の治療に好適である新規化合物の提供である。
【0016】
本発明の他の目的は、感染症、代謝疾患、及び変性疾患の治療に好適な、任意にさらなる治療薬を含む、新規化合物及び化合物の組み合わせの提供である。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0018】
本発明の第1の態様は、以下の化合物(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体に関する:

上式において、
Xは、水素原子又はOHを表し;
Yは、

又は−NHRを表すが、Rは、任意にヒドロキシルにより置換されていてよいC2−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表し;
Wは、水素原子或いは任意にヒドロキシルにより置換されていてよいC1−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表す。
【0019】
特定の実施形態によると、式(II)の化合物は、以下から選択してよい:
本明細書中でAD2750と称される;

本明細書中でADYZ252と称される;

本明細書中でADYZ74と称される;

本明細書中でADYZ243と称される;

本明細書中でADYZ195と称される;

本明細書中でADYZ196と称される;

及び本明細書中でADYZ197と称される。

【0020】
他の態様によると、本発明は、本発明により定義される式(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体を含む医薬組成物に関する。本発明の組成物は、少なくとも1種の薬剤的に許容できるキャリア、希釈剤、賦形剤、及び/又は添加剤を任意にさらに含んでよい。
【0021】
特定の実施形態によると、本発明の組成物は、増殖性疾患、神経変性疾患、代謝関連病態、感染性疾患、及び免疫関連疾患からなる群から選択される病理学的障害の治療に具体的に適応可能である。
【0022】
さらに他の態様において、本発明は、少なくとも1種の式(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体と少なくとも1種の追加の治療薬との組み合わせを含み、少なくとも1種の薬剤的に許容できるキャリア、希釈剤、賦形剤、及び/又は添加剤を任意にさらに含む組成物を提供する。
【0023】
一実施形態によると、前記追加の治療薬は、トポイソメラーゼ阻害剤、核酸代謝拮抗剤、及び有糸分裂阻害剤から選択してよい。
【0024】
さらには、本発明は、治療効果を、その必要のある被験者に提供するためのキットであって、
(a)第1単位剤形中に、少なくとも1種の式(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体又は他の誘導体、或いはそれらの組み合わせ又は混合物、及び任意に薬剤的に許容できるキャリア又は希釈剤;(b)第2単位剤形中に、トポイソメラーゼ阻害剤、核酸代謝拮抗剤、及び有糸分裂阻害剤から選択される少なくとも1種の治療薬及び任意に薬剤的に許容できるキャリア又は希釈剤;(c)前記第1及び第2剤形を収容するための容器手段;及び(d)使用のための説明書
を含むキットを提供する。
【0025】
本発明は、病理学的障害を患っている被験者の治療方法であって、前記被験者に治療上有効な量の式IIの化合物、或いはその組成物、組み合わせた組成物、又はキットを投与する工程を含む方法をさらに提供する。特定の実施形態によると、本発明の方法は、増殖性疾患、免疫関連疾患、神経変性疾患、感染性疾患、及び代謝関連病態のいずれかである障害の治療に具体的に適応可能である。
【0026】
他の態様によると、本発明は、増殖性疾患、神経変性疾患、代謝関連病態、感染性疾患、及び免疫関連病態からなる群から選択される病理学的障害を治療するための医薬の調製における、式(I)の化合物、或いはその塩又は異性体の使用を提供するが、前記式(I)は以下のとおりであり:

上式において、Rは、水素原子或いは任意にニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、−NHC(S)NH−アルキル、スルホニルアミド−アルキル、nが1から20の整数である

−NHアダマンタンにより置換されているフェニルを表し;
Xは水素原子又はOHを表し;
Yは、nが0から6の整数であり、Rが任意にヒドロキシルで置換されていてよいC2−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表す、

−NHR

、R、及びRが、独立にC−Cアルキル又はC−Cアルケニルを表す、

を表し;
Zは、水素原子、−OH、モノ又はジサッカライド、モノサッカライドサルフェート、或いはコリンホスフェートを表し;
Wは、水素原子、又は任意にヒドロキシルで置換されていてもよいC1−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表すが、
Rが水素である場合、Yが

ではないという条件である。
【0027】
特定の実施形態において、本発明は、式(III)の化合物並びにその薬剤的に許容できる塩及び異性体でもよい、式(I)の特定の化合物の使用を提供するが:

上式において、Rは、水素原子或いは任意にニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、−NHC(S)NH−アルキル、スルホニルアミド−アルキル、nが1から20の整数である

−NHアダマンタン、−NH−t−BOC、−NH−FMOC、又はNH−CBZにより置換されているフェニルを表し;
Xは水素原子又は−OH基を表し;
Yは、Rが任意にヒドロキシルで置換されていてよい直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖である、

−NHR
、R、及びRが、独立にC−Cアルキル又はC−Cアルケニルを表す、

を表し;
Zは、水素原子、−OH、モノ又はジサッカライド、モノサッカライドサルフェート、或いはコリンホスフェートを表し;
前記疾患は、神経変性疾患、代謝関連疾患、及び免疫関連疾患のいずれかである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の上記の特徴及び他の特徴並びに利点は、以下の実施例により、かつ添付される図面を参照して、より容易に明らかになるであろう。
【図1】MDA−MB−435生存実験 図は、AD2750により治療した後の、ヌードマウス中のMDA−MB−435細胞の生存を表すグラフを示す。略語:mic.(マウス)、tum.(腫瘍)、dea.(死亡)、cont.(コントロール)。
【図2】CD1−ヌードマウス中の膵腫瘍(CRL−1687)の成長 図は、AD2750による治療がある場合とない場合のヌードマウス中の膵腫瘍の成長を表すグラフを示す。略語:Tum.(腫瘍)、Vol.(体積)、cont.(コントロール)、D(日)。
【図3A】異なる薬剤組み合わせを24時間利用する膵臓細胞の生存率(MTT試験) 図は、本発明の化合物と公知の化学療法薬剤とを組み合わせた処理の間の、培養中の膵腫瘍細胞の生存率を表す2つのグラフを示す。図3Aは、AD2750単独或いはタキソール又はフルオロウラシルと組み合わせた処理を表す。
【図3B】異なる薬剤組み合わせを24時間利用する膵臓細胞の生存率(MTT試験) 図は、本発明の化合物と公知の化学療法薬剤とを組み合わせた処理の間の、培養中の膵腫瘍細胞の生存率を表す2つのグラフを示す。 図3Bは、ADYZ197単独或いはAD2730(2−(ブチルアミノ)−1−フェニルプロパン−1,3−ジオール)又はフルオロウラシルと組み合わせた処理を表す。略語:cont.(コントロール)、viab.(生存率)。
【図4A】グルコシルセラミドの合成及びGC/SPMシンセターゼに対するAD−2750の影響 図はリンパ芽球中のグルコシルセラミド/スフィンゴミエリン合成に対するAD2750の影響を示す。 図4Aは、グルコシルセラミドの合成に対する影響を示す。
【図4B】グルコシルセラミドの合成及びGC/SPMシンセターゼに対するAD−2750の影響 図はリンパ芽球中のグルコシルセラミド/スフィンゴミエリン合成に対するAD2750の影響を示す。 図4Bは、GC/SPMシンセターゼに対する影響を示す。略語:cont.(コントロール)、norm.(正常)。
【図5】AD2750単独療法治療のインビボ効能試験 図は、ビヒクルコントロール治療に比べ、2種の異なる濃度のAD2750(20及び30mg/kg)による、膵腫瘍(BxPC−3細胞系モデル)を持つヌードマウスの治療(i.p)のインビボ効能試験結果を示す。グラフは、治療の日々の間の平均腫瘍体積を表す。略語:Mea.(平均)、tum.(腫瘍)、vol.(体積)、D(日)、Veh(ビヒクル)、E(終了)、tre.(治療)。
【図6】カンプトサー治療と組み合わせたAD2750のインビボ効能試験 図は、ビヒクルコントロール治療に比べ、カンプトサー(60mg/kg)と組み合わせた2種の異なる濃度のAD2750(20及び30mg/kg)による、膵腫瘍(BxPC−3細胞系モデル)を持つヌードマウスの治療(i.p)のインビボ効能試験結果を示す。グラフは、治療の日々の間の平均腫瘍体積を表す。*19〜54日のビヒクルに対するP値<0.05、□29〜36日のカンプトサーに対するP値<0.05、○19〜54日のカンプトサーに対するP値<0.05。略語:Mea.(平均)、tum.(腫瘍)、vol.(体積)、D(日)、Veh(ビヒクル)、E(終了)、tre.(治療)。
【図7】カンプトサー治療と組み合わせたAD2750のインビボ効能試験 図は、ビヒクルコントロール治療に比べ、カンプトサー(30mg/kg)と組み合わせた2種の異なる濃度のAD2750(20及び30mg/kg)による、膵腫瘍(BxPC−3細胞系)を持つヌードマウスの治療(i.p)のインビボ効能試験結果を示す。グラフは、治療の日々の間の平均腫瘍体積を表す。*19〜54日のビヒクルに対するP値<0.05、□26〜33日のカンプトサーに対するP値<0.05、○26〜54日のカンプトサーに対するP値<0.05。略語:Mea.(平均)、tum.(腫瘍)、vol.(体積)、D(日)、Veh(ビヒクル)、E(終了)、tre.(治療)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
式(I)の新規なセラミドアナログが合成され、数種の癌細胞を阻害するのに強力な効果を示した。前記アナログは、単独又は他の抗癌剤と組み合わされて、薬剤感受性及び薬剤耐性細胞を含む種々の細胞を殺傷する能力がある。そのため、本発明のアナログを含む医薬組成物は、特に細胞増殖性疾患の治療向けである。本発明のセラミドアナログは、嚢胞性線維症、アルツハイマー病、リーシュマニア症、マイコプラズマ感染症、細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症、アレルギー、糖尿病、マラリア、脂肪蓄積症(例えば、ゴーシェ病、ニーマン・ピック病、及びティ・サックス病)の治療にさらに有用である。本発明の医薬組成物は、さらに、免疫変性疾患、特にGVHD(移植片対宿主病)の治療向けである。
【0030】
式(I)のセラミドアナログが提供される:

上式において、Rは、水素原子或いは任意にニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、−NHC(S)NH−アルキル、スルホニルアミド−アルキル、nが1から20の整数である

−NHアダマンタンにより置換されているフェニルを表し;
Xは水素原子又はOHを表し;
Yは、nが0から6の整数であり、Rが任意にヒドロキシルで置換されていてよいC2−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表す、

−NHR

、R、及びRが、独立にC−Cアルキル又はC−Cアルケニルを表す、

を表し;
Zは、水素原子、−OH、モノ又はジサッカライド、モノサッカライドサルフェート、或いはコリンホスフェートを表し;
Wは、水素原子、或いは任意にヒドロキシルで置換されていてもよいC1−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表すが、
Rが水素である場合、Yが

ではないという条件である。
【0031】
セラミドアナログ並びにその異性体及び薬剤的に許容できる塩は、増殖性疾患、神経変性疾患、代謝関連病態、感染性疾患、及び免疫関連病態を治療するための医薬の調製に使用するのに好適である。
【0032】
発明者らは、式IIの化合物である、式Iの化合物の特定な新規の群を発見した。したがって、第1の態様によると、本発明は、以下の式(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体に関する:

上式において、Xは、水素原子又はOHを表し;
Yは、

又は−NHRを表すが、Rは、任意にヒドロキシルにより置換されていてよいC2−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表し;
Wは、水素原子或いは任意にヒドロキシルにより置換されていてよいC1−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表す。
【0033】
一実施形態によると、本発明は、XがOHを表す式(II)の化合物を提供する。
【0034】
他の実施形態において、RがC10−18又はC14−18直鎖又は分岐のアルキルを表す式(II)の化合物。
【0035】
他の実施形態は、Wが水素原子を表す、式(II)の化合物に関する。
【0036】
本発明は、WがCHOHを表す、式(II)の化合物をさらに提供する。
【0037】
特に好ましい実施形態によると、式(II)の化合物は以下から選択してよい:
本明細書中でAD2750とも称される、2−(テトラデシルアミノ)プロパン−1,3−ジオール:

本明細書中でADYZ252とも称される、2−(ヘキサデシルアミノ)プロパン−1,3−ジオール;

本明細書中でADYZ74とも称される、2−(ドデシルアミノ)プロパン−1,3−ジオール;

本明細書中でADYZ243とも称される、2−(ヘキサデシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール;

本明細書中でADYZ195とも称される、2−(デシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール;

本明細書中でADYZ196とも称される、2−(テトラデシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール;

及び本明細書中でADYZ197とも称される、2−(オクタデシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール。

【0038】
特別な実施形態において、本発明は、本明細書においてAD2750とも称される、以下の式(I)の化合物に関する。

この化合物は、BL4060又はADYZ157とも呼ばれることに留意されたい。
【0039】
以下の実施例により示されるとおり、化合物AD2750は、マウスの腫瘍の治癒に著しい効力を有することが分かった。
【0040】
他の態様によると、本発明は、置換基が先に定義されたとおりである式(II)の化合物を活性成分として含み、薬剤的に許容できるキャリア、アジュバント、又は希釈剤を任意にさらに含む医薬組成物に関する。特別な実施形態において、本発明は、AD2750である式(II)の化合物を活性成分として含む医薬組成物に関する。
【0041】
ある特別な実施形態によると、本発明の医薬組成物は、さらに少なくとも1種の追加の治療薬を含むことがある。
【0042】
さらに他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、増殖性疾患、神経変性疾患、代謝関連病態、感染性疾患、及び免疫関連疾患からなる群から選択される病理学的障害の治療に特に適用可能である。
【0043】
より具体的には、本発明は、治療の必要のある患者の、野生型及び薬剤耐性癌細胞の殺傷を具体的に含む、細胞増殖性疾患、特に癌疾患の治療のための、式IIの化合物を含む組成物に関する。特別な実施形態において、本発明は、治療の必要のある患者の癌疾患の治療のための組成物、特に野生型及び薬剤耐性癌細胞の殺傷のための組成物に関する。この特別な実施形態において、前記組成物は、治療上有効な量の前記化合物AD2750を含む。
【0044】
他の実施形態において、上記式(II)の少なくとも1種の化合物を含む本発明の医薬組成物は、免疫変性疾患、特にGVHDの治療に使用できる。
【0045】
本発明の化合物は、一般的に医薬組成物の形態で提供される。前記組成物は、注入又は経口摂取により使用するためのものである。本発明の医薬組成物は、一般的に、例えば、香味、色、潤滑などを医薬組成物に加える目的で、当分野に知られるとおり、緩衝剤、モル浸透圧濃度を調整する薬剤、任意に、1種以上のキャリア、賦形剤、及び/又は添加剤を含む。
【0046】
各キャリアは、他の成分と適合し治療される被験者に有害でないという意味で、薬剤的及び生理的の両方で許容できなくてはならない。製剤には、直腸、鼻腔内に好適なものがあるが、好ましい製剤は、筋肉内、皮内、皮下、及び特には静脈内投与を含む、経口又は非経口投与向けのものである。製剤は、単位剤形で表すことが便利であり、製薬の分野に公知のどのような方法によって調製してもよい。前記キャリアには、スターチ及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、例えばミクロクリスタリンセルロース、キサンタンガムなどがある。潤滑剤には水添ヒマシ油などがある。
【0047】
本明細書では「薬剤的に許容できるキャリア」には、被験者に有害でない溶媒、分散媒体、及びコーティングのいずれか及び全てが含まれる。抗菌剤及び抗真菌剤が含まれてもよい。薬剤的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は当分野に周知である。
【0048】
本発明の組成物は、種々の方法で投与できる。非限定的な例として、組成物は、静脈内、筋肉内、又は腹膜内へ注入して送達できる。例えば、静脈内投与が有利である。好ましい医薬製剤は、静脈内注入を含む注入による投与用に使用されるのが好ましい。
【0049】
注入に好適な医薬形態には、滅菌水溶液又は分散液及び滅菌注入用溶液又は分散液を即座に調製するための滅菌粉体がある。どの場合でも、前記形態は滅菌されていなくてはならず、容易に注射できる程度に流体でなくてはならない。それは製造及び貯蔵の条件下で安定でなくてはならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなくてはならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、ポリプロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒体でよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合求められる粒径を維持することにより、さらに界面活性剤の使用により、適切な粘稠度が維持できる。
【0050】
注入用滅菌溶液は、適切な溶媒中で、求められる量の活性化合物を、必要な場合先に列挙された種々の他の成分と混合し、次いで濾過滅菌することより調製される。一般的に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基本的な分散媒体及び先に列挙されたものから必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中と混合して調製される。
【0051】
注入用滅菌溶液の調製のための滅菌粉体の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、事前に濾過滅菌された溶液から、活性成分と追加の望ましい任意成分の粉体を生み出す。
【0052】
医薬組成物の調製は当分野に周知であり、多くの記事及び教科書に記載されており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Gennaro A.R.ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,1990及び特にその1521−1712ページを参照されたい。
【0053】
細胞膜を越える活性薬剤の取り込みを増すように、添加剤を設計できる。そのような薬剤は、一般的に、本発明の分子の細胞内取り込みを増す薬剤である。例えば、本発明の化合物をリポソーム内に封入することができる。例えば、特別なトランスフェクション試薬を使用するリポソームの調製及び使用は、当分野に周知である。リポソームを得る他の方法には、センダイウイルス又は他のウイルスの使用がある。
【0054】
活性薬剤の投与量は様々である。投与量は、一般的に、疾患、疾患の状態、患者の年齢、体重、及び性別によるであろうが、担当医により決定されるべきである。
【0055】
以下の実施例に示されるとおり、本発明の化合物は、単独で投与の場合、又は追加の治療薬と組み合わせた場合ですら、抗癌活性を示す。したがって、他の態様によると、本発明は、少なくとも1種の式(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体と、少なくとも1種の追加の治療薬との組み合わせを含む組成物を提供する。本発明の組み合わされた組成物は、少なくとも1種の薬剤的に許容できるキャリア、希釈剤、賦形剤、及び/又は添加剤を任意にさらに含んでよい。
【0056】
少なくとも1種の治療上活性な量の式IIの化合物、好ましくは、本発明により記載されている化合物AD2750、ADYZ197、ADYZ252、ADYZ74、ADYZ243、及びADYZ195、及びADYZ196のいずれか及び少なくとも1種の追加の治療薬を任意に含む治療組み合わせが、本明細書に開示されている。
【0057】
したがって、本発明は、少なくとも1種の式IIの化合物、好ましくは本発明の化合物のいずれか、具体的にはAD2750又はADYZ197を、少なくとも1種の治療薬、例えば、トポイソメラーゼ阻害剤、核酸代謝拮抗剤、又は有糸分裂阻害剤と組み合わせる、安全で、非干渉性の、相乗的な、又は追加の組成物に特に関する。そのような相乗的な組み合わせは、増殖性疾患、神経変性疾患、代謝関連病態、感染性疾患、及び免疫関連疾患などの病理学的障害を患っている被験者の治療に有用である。本発明の相乗的な組成物は、そのような疾患の症状又は兆候を呈する被験者の治療にも利用することができる。
【0058】
そのような組み合わされた組成物の特定の実施形態は、本発明により記載される少なくとも1種の式IIの化合物、好ましくはAD2750化合物を、少なくとも1種の治療薬、例えば、トポイソメラーゼ阻害剤、核酸代謝拮抗剤、及び有糸分裂阻害剤とともに含むことがある。より詳細には、本発明により記載される式IIの化合物のいずれも、イリノテカン、タキソール、又はフルオロウラシルなどの治療薬と組み合わせてよい。
【0059】
実施例11により例示される特定の組み合わせは、AD2750及び塩酸塩形態がカンプトサーとして知られているイリノテカンなどのトポイソメラーゼ1阻害剤でよい。
【0060】
さらに他の実施形態において、本発明の組み合わされた組成物は、少なくとも1種の式IIの化合物、具体的にはAD2750及びタキソールなどの治療薬を含むことがある。
【0061】
さらに、本発明は、式IIの化合物、具体的にはAD2750及びフルオロウラシルなどの治療薬を含む組み合わされた組成物を提供する。
【0062】
さらに他の実施形態において、本発明は、少なくとも2種の式IIの化合物、例えばAD2730とADYZ197との組み合わせを含む組み合わされた組成物を提供する。
【0063】
相乗的な組み合わせとは、治療薬及び本発明の式IIの化合物のいずれかの両方の効果が、単独治療としてこれらの化合物のいずれかを別々に投与する治療効果の和よりも大きいことを意味する。
【0064】
本発明の組み合わされた化合物が、一般的に、本発明の化合物の一方又は両方(本発明により記載される式IIの化合物のいずれか又はそれらの組み合わせ及び治療薬)を、薬剤的に許容できるキャリア又希釈剤とともに含む医薬組成物の形態で投与してよいことを認識されたい。したがって、本発明により使用される化合物は、キット中に個別に、或いは従来の経口又は腹膜内剤形で共に投与できる。
【0065】
より詳細には、本発明は、別々に投与してもよい活性成分の組み合わせによる疾患及び病態の治療に関するので、本発明は、さらなる態様として、別々な医薬組成物をキット形態で組み合わせることにも関する。キットは、2種の別々な医薬組成物を含んでよい。第1の組成物は、任意に第1単位剤形の、少なくとも1種の式IIの化合物、好ましくはそのような化合物は本発明の化合物のいずれかであり、具体的には、AD2750、ADYZ197、ADYZ252、ADYZ74、ADYZ243、及びADYZ195、ADYZ196と称される化合物又はこれらの組み合わせ、混合物、及び誘導体並びに薬剤的に許容できるキャリア又希釈剤でよい。第2組成物は、任意に第2単位剤形の、少なくとも1種の治療薬、好ましくは、トポイソメラーゼ阻害剤、核酸代謝拮抗剤、及び有糸分裂阻害剤のいずれか及び薬剤的に許容できるキャリア又希釈剤でよい。キットは、分割されたボトル又は分割されたホイルパケットなどの、別々な組成物の両方を収容するための容器手段を含む。しかし、別々の組成物を、単一の分割されていない容器内に収容してもよい。典型的には、キットには、別々な成分の投与のための説明書が含まれる。キット形態は、別々な成分が異なる剤形で投与される(例えば、経口と腹腔内)のが好ましいか、異なる投薬間隔で投与される場合、処方する医師が組み合わせの個別成分の用量設定を望む場合に特に有利である。本発明のキットは、異なる活性成分(本発明による式IIの化合物及び治療薬)を投与する手段を任意にさらに含むことがある。
【0066】
一実施形態によると、本発明のキットは、病理学的障害、例えば、増殖性疾患、神経変性疾患、代謝関連病態、感染性疾患、及び免疫関連疾患のいずれかを患っている被験者に治療効果を得るためのものである。治療効果を得るとは、例えば、疾患の症状の進行の減速又は予防を意味する。
【0067】
さらに、本発明は、本発明によるキットに含まれている治療上有効な量の第1及び第2単位剤形を、その必要のある被験者に投与する工程を含む、病理学的障害を治療する方法を提供する。
【0068】
キットの両成分、第1剤形中の式IIの化合物のいずれか、具体的には、化合物AD2750、ADYZ197、ADYZ252、ADYZ74、ADYZ243、及びADYZ195、ADYZ196のいずれか及び第2剤形中の治療薬が同時に投与されてよいことを認識されたい。
【0069】
別法としては、前記第1の化合物又は剤形及び前記第2の化合物又は剤形が、いずれかの順番で連続に投与される。
【0070】
本発明の組成物及びキットに使用される「治療上有効な量」という用語は、研究者、獣医、医師、又は他の臨床医により求められる、組織、系、動物、又はヒトの生物学的応答又は医学的応答を惹起する薬剤又は医薬品の量を意味するものとする。
【0071】
実施例5、6、及び11の結果により例示されるとおり、本発明の好ましい組成物、好ましい組み合わされた組成物又はキット中の活性成分の1日量は、1日あたり、約0.1mg/体重kgから500mg/kg、好ましくは約1から500、5から400、10から300、20から200mg/kgの本発明による式IIの化合物のいずれかを含んでよい。具体的な実施形態によると、有効な量は、単独治療として単独で、又は追加の治療薬と組み合わせて、1日あたり、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、180、200、250、300、350、400、450、及び500mgのいずれかの本発明の化合物のいずれかでよい。組み合わされた組成物の場合、追加の薬剤の好ましい量は、1日あたり、約0.1から200、好ましくは0.5から100mg/kgの治療薬、好ましくはカンプトサーなどのトポイソメラーゼ阻害剤でよい。特別な実施形態において、AD2750化合物が使用される場合、好ましい量は、約1:0.1から1:1000の範囲の定量比で、1日あたり10、20、30、60、又は100mg/kg及び約10から100mg/kgのカンプトサーなどのトポイソメラーゼ阻害剤でよい。本発明の化合物及び治療薬のこれらの有効な量は、任意に投与単位形態(dosage unit form)中に含まれていてよい。さらに、本発明による組み合わされた組成物又はキットの投与は定期的でもよく、例えば、定期的な投与が、少なくとも約1日から3ヶ月間、日に2回、日に3回、又は少なくとも日に1回でよい。低い用量の利点は当業者に明らかである。そのような利点には、とりわけ、特に長期使用時の副作用のリスク低下及び患者の治療に対する感受性低下のリスク低下がある。
【0072】
他の実施形態において、本発明の組み合わされた組成物又はキットを利用する治療は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、14、30、60、90日の治療に次いで実施してよい。
【0073】
病態が異なれば、異なる用量又は異なる期間の利用が指示されることに留意されたいが、これらは熟練した医師には明らかであろう。
【0074】
他の態様によると、本発明は、病理学的障害を患っている被験者を治療する方法であって、前記被験者に、治療上有効な量の式IIの化合物、或いはその組成物、組み合わされた組成物、又はキットを投与する工程を含む方法であって、前記障害が、増殖性疾患、神経変性疾患、代謝関連病態、感染性疾患、及び免疫関連疾患のいずれかである方法に関する。
【0075】
ある具体的な実施形態において、本発明は、治療の必要のある患者の、具体的には野生型及び薬剤耐性癌細胞の殺傷を含む、細胞増殖性疾患、特に癌疾患を治療する方法であって、前記患者に、治療上有効な量の式(II)の化合物又は前記化合物を含む医薬組成物、その組み合わされた組成物及びキットを投与する工程を含む方法に関する。
【0076】
ある特別な実施形態において、本発明は、治療の必要のある患者の、特に野生型及び薬剤耐性癌細胞の殺傷のための癌疾患を治療する方法であって、前記患者に、治療上有効な量の前記化合物AD2750を投与する工程を含む方法に関する。
【0077】
本発明の化合物、組成物、組み合わされた組成物、及びキットのいずれも、本発明の方法に適用できることを認識されたい。
【0078】
一実施形態によると、本発明の方法のいずれかによる投与工程は、経口、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、非経口、経皮、膣内、鼻腔内、粘膜、舌下、局所、直腸、又は皮下の投与、或いはこれらの組み合わせを含んでよい。
【0079】
本発明に提供される治療及び予防の方法では、前記治療上有効な量、又は用量は、治療すべき疾患状態の重症度及び応答性に依存し、治療のクールが数日から数週間続き、或いは治癒がもたらされるか、又は疾患状態の減少が達せられるまでであることにさらに留意されたい。最適な投薬スケジュールは、患者の体内の薬剤蓄積の測定値から計算できる。当業者は、最適な用量、投薬方法、及び反復度(repetition rates)を容易に決めることができる。一般的に、投薬量は体重により計算され、毎日、週あたり、又は月あたり1回以上与えることができる。当業者は、体液又は組織中の本発明の組み合わされた組成物の滞留時間測定値及び濃度に基づき、投薬の反復度を容易に見積もることができる。治療成功後に、任意に患者に維持療法を受けさせて疾患状態の再発を防止するのが最適であろうが、その場合、本発明の組み合わされた組成物が、毎日1回以上維持量で投与される。
【0080】
さらに、少なくとも1種の本発明による式IIの化合物、特にAD2750化合物並びにトポイソメラーゼ阻害剤、核酸代謝拮抗剤、及び有糸分裂阻害剤などの少なくとも1種の治療薬の種々の濃度で比率の異なる種々の組み合わせを、種々の疾患に使用することができる。例えば、1:1000、1:2、1:50、1:200、1:350、1:500、及び任意の可能な組み合わせなど、任意の量的な比率を利用してよいことを認識されたい。
【0081】
実施例11に示すとおり、本発明の組成物、組み合わされた組成物又はキットのいずれによる治療も、治療された被験者の生存率を、治療されない被験者の生存率と比べて、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、さらには少なくとも90%又は100%増加させることがある。
【0082】
一般に、本発明の化合物、組成物、並びに方法は、自己免疫疾患、例えば、GVHD、イ−トンランバート症候群、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギランバレー症候群、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、肝炎、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、神経叢障害、例えば急性腕神経炎、多内分泌腺機能低下症候群、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、強皮症、血小板減少症、甲状腺炎、例えば橋本病、シェーグレン症候群、アレルギー性紫斑病、乾癬、混合性結合組織病、多発性筋炎、皮膚筋炎、血管炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、ウェゲナー肉芽腫症、ライター症候群、ベゲット症候群(Behget’s syndrome)、強直性脊椎炎、天疱瘡、水疱性天疱瘡、ヘルペス性皮膚炎、インスリン依存性糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、及びクローン病があるが、これらに限定されない疾患の治療に利用できる。
【0083】
本発明を説明するために本明細書で使用されるとおり、「悪性増殖性疾患」、「癌」、「腫瘍」、及び「悪性腫瘍」という用語は、全て、組織又は器官の過形成と等しく関連する。組織がリンパ又は免疫系の一部である場合、悪性細胞は循環する細胞の非固形腫瘍を含むことがある。他の組織又は器官の悪性腫瘍は固形癌を生み出すことがある。一般に、本発明の化合物、組成物、キット、並びに方法を、例えば、癌腫、メラノーマ、白血病、及びリンパ腫などの非固形及び固形腫瘍の治療に利用できる。
【0084】
したがって、好ましい実施形態によると、本発明の式IIの化合物或いは前記化合物を含む組成物、組み合わせ、又はキットは、非固形癌、例えば、全種類の白血病などの造血器腫瘍、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群(MDS)、マスト細胞白血病、ヘアリーセル白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、及び多発性骨髄腫などの治療又は阻害並びに固形癌、例えば、口唇及び口腔の腫瘍、咽頭、喉頭、副鼻腔、大唾液腺、甲状腺、食道、胃、小腸、結腸、結直腸、肛門管、肝臓、胆嚢、肝外胆管、ファーター膨大部、膵外分泌部、肺、胸膜中皮腫、骨、軟部腫瘍、皮膚の癌腫及び悪性メラノーマ、乳房、外陰、膣、子宮頸部、子宮体部、卵巣、卵管、妊娠性絨毛腫瘍、陰茎、前立腺、精巣、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、尿道、瞼の癌腫、結膜の癌腫、結膜の悪性メラノーマ、ブドウ膜の悪性メラノーマ、網膜芽細胞腫、涙腺の癌腫、眼窩の肉腫、脳、脊髄、血管系、血管肉腫及びカポジ肉腫の治療及び阻害に使用できる。
【0085】
他の実施形態によると、本発明は、病理学的障害、具体的には病原性物質により起こされる感染性疾患を治療する方法に関する。病原性物質には、原核微生物、下等真核微生物、複雑な真核生物、ウイルス、真菌、プリオン、寄生生物、酵母、毒素、及び毒液がある。
【0086】
原核微生物には、グラム陽性、グラム陰性、及びグラム不定細菌並びに細胞内細菌がある。本明細書中で企図される細菌の例には、トレポネーマ属、ボレリア属、ナイセリア属、レジオネラ属、ボルデテラ属、エシェリキア属、サルモネラ属、シゲラ属、クレブシエラ属、エルシニア属、ビブリオ属、ヘモフィルス属、リケッチア属、クラミジア属、マイコプラズマ属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、バチルス属、クロストリディウム属、コリネバクテリウム属、プロピオニバクテリウム属、マイコバクテリウム属、ウレアプラズマ属、及びリステリア属の種がある。
【0087】
特定の種には、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhea)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ボルデテラ・ペルツシス(Bordetella pertussis)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、サルモネラ・ティフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、シゲラ・ディセンテリエ(Shigella dysenteriae)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、エルシニア・ペスチス(Yersinia pestis)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Hemophilus influenzae)、リケッチア・リケッチ(Rickettsia rickettsii)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、クロストリディウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、クロストリディウム・テタニ(Clostridium tetani)、クロストリディウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae)、プロプリオニバクテリウム・アクネス(Proprionibacterium acnes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)、及びリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)がある。
【0088】
低級真核生物には、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス(Aspergillus)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ブラストミセス・ダルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、トリコフィトン(Trichophyton)、及びミクロスポルム(Microsporum)などがあるが、これらに限定されない酵母又は真菌がある。
【0089】
複雑な真核生物には、蠕虫、昆虫、クモ類、線虫、アメーバ、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、トリコモナス原虫(Trichomonas vaginalis)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)、トリパノソーマクルージ(Trypanosoma cruzi)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、又はリーシュマニア(Leishmania)がある。
【0090】
「ウイルス」という用語は、最も広い意味で使用され、アデノウイルス、パポバウイルス、ヘルペスウイルス;シンプレックスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、エプステイン・バーウイルス、CMV、ポックスウイルス;天然痘ウイルス、ワクシニア、B型肝炎、ライノウイルス、A型肝炎、ポリオウイルス、風疹ウイルス、C型肝炎、アルボウイルス、狂犬病ウイルス、A型及びB型インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、HIV、HTLV−I及びIIのファミリーを含む。
【0091】
「真菌」という用語は、例えば、白癬、ヒストプラズマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクム症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症及びカンジダ症などの疾患を起こす真菌を含む。
【0092】
寄生生物という用語は、体腔条虫(somatic tapeworms)、住血吸虫、組織回虫、アメーバ、マラリア原虫、トリパノソーマ、リーシェマニア、及びトキソプラズマ種により起こされる感染症を含むが、これらに限定されない。
【0093】
本発明は、以下の式(I)の化合物、或いはその塩又は異性体の、増殖性疾患、神経変性疾患、代謝関連病態、感染性疾患、及び免疫関連病態からなる群から選択される病理学的障害を治療するための医薬の調製への使用をさらに提供する:

上式において、Rは、水素原子或いは任意にニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、−NHC(S)NH−アルキル、スルホニルアミド−アルキル、nが1から20の整数である

−NHアダマンタンにより置換されているフェニルを表し;
Xは水素原子又はOHを表し;
Yは、nが0から6の整数であり、Rが任意にヒドロキシルで置換されていてよいC2−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表す、

−NHR

、R、及びRが、独立にC−Cアルキル又はC−Cアルケニルを表す、

を表し;
Zは、水素原子、−OH、モノ又はジサッカライド、モノサッカライドサルフェート、或いはコリンホスフェートを表し;
Wは、水素原子、又は任意にヒドロキシルで置換されていてもよいC1−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表すが、
Rが水素である場合、Yが

ではないという条件である。
【0094】
一実施形態によると、本発明による使用は、式(I)の前記化合物が式(III)の化合物並びにその薬剤的に許容できる塩及び異性体である場合でもよい:

上式において、Rは、水素原子或いは任意にニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、−NHC(S)NH−アルキル、スルホニルアミド−アルキル、nが1から20の整数である

−NHアダマンタン、−NH−t−BOC、−NH−FMOC、又はNH−CBZにより置換されているフェニルを表し;
Xは水素原子又は−OH基を表し;
Yは、Rが任意にヒドロキシルで置換されていてよい直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖である、

−NHR
、R、及びRが、独立にC−Cアルキル又はC−Cアルケニルを表す、

を表し;
Zは、水素原子、−OH、モノ又はジサッカライド、モノサッカライドサルフェート、或いはコリンホスフェートを表し;
前記疾患は、神経変性疾患、代謝関連疾患、及び免疫関連疾患のいずれかである。
【0095】
ある特定の実施形態によると、本発明の使用は、アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療用でもよい。
【0096】
他の実施形態によると、式I又はIIIの化合物の使用は、糖尿病又は嚢胞性線維症などの代謝関連病態の治療用でもよい。
【0097】
さらに他の実施形態において、本発明による式I又はIIIの化合物の使用は、GVHD又はアレルギーなどの免疫関連疾患の治療用でもよい。
【0098】
本発明が、活性成分としての式I又はIIIの化合物のいずれかを追加の治療薬とともに含む、組み合わされた組成物及びキットをさらに包含することをさらに認識されたい。
【0099】
開示及び説明されたので、本発明に開示される特定の例、方法工程、及び組成物は幾分変動しうるため、本発明が、そのような特定の例、方法工程、及び組成物に限定されないことが理解できよう。本明細書中で使用される術語が、特定の実施形態を説明する目的のみに使用され、かつ、添付される請求項及びその等価物によってのみ本発明の範囲が限定されるため、限定的でないものとすることが理解できよう。
【0100】
本明細書及び添付される請求項で使用されるとおり、単数形「a」、「an」及び「the」には、内容が明らかにそうでないと示されない限り複数の指示物を含むことに留意されたい。
【0101】
本明細書並びに後述の実施例及び請求項全体で、文脈から反対の意味が要求されない限り、「comprise(含む)」という言葉並びに「comprises(含む)」及び「comprising(含んでいる)」などのその変形物は、述べられた整数又は工程或いは整数又は工程の群の包含を意味するが、他の整数又は工程或いは整数又は工程の群の排除を意味しないと理解されるだろう。
【0102】
以下の例は、本発明の態様を実施する際に発明者らが利用した技術を表す。これらの技術は本発明の実施のために好ましい実施形態を例示するが、本開示を考慮すれば、当業者らが、本発明の精神及び意図される範囲から逸脱せずに多くの修正が可能であると認識するであろうことを理解されたい。
【実施例】
【0103】
実験手順
*カンプトサー(Southern Researchから入手)
*ビヒクルコントロールには5%クレモフォアEL/5%エタノール/90%WFIが含まれていた。
【0104】
BxPC−3ヒト膵腫瘍モデル
インビボ継代から得たBxPC−3腫瘍の30〜40mgの腫瘍断片を、12ゲージ外套針を利用し、無胸腺NCr−nu/nuマウスに皮下(sc)移植した。
【0105】
NCI認可動物施設から動物を購入し(4〜5週齢)、実験の前に1週間研究室中で順応させた。動物を、12時間の明暗周期のマイクロアイソレーターケージ中に収容した。動物には、濾過滅菌した水及び滅菌済み齧歯動物用餌を制約なしに与えた。最低週に2回ケージを変えた。動物の体重を週に2回量り、臨床兆候がないか毎日(約60日間の実験の間)観察した。
【0106】
腫瘍測定及び体重:腫瘍測定値及び動物の体重を週に2回記録する。腫瘍体積は、キャリパー測定値(mm)により、楕円球用の式を利用して測定した:
長さ×幅/2=体積(mm
単位密度(1mm=1mg)を仮定して、この通常利用される式を用いて腫瘍重量も計算する。
【0107】
評価されるパラメーター:sc腫瘍試験には、特定の試験の必要に応じて、1、2、3、又は4の腫瘍体積倍加時間(日)に基づくT−C値を作成した。この評価は、治療期間の最後でのコントロール動物の腫瘍の大きさに基づく。T/C(%)又はT/C(%)値を決定した。ステューデントt検定又はマンホイットニー順位和検定などの統計的方法を利用して、種々の群の間の有意な差異を調べた。
【実施例1】
【0108】
2−(テトラデシルアミノ)プロパン−1,3−ジオール(AD2750)の調製
3gの2−アミノ−1,3−プロパンジオールを、100mlのエタノールに溶解させ、4mlのテトラデシルブロマイドを加え、次いで5mlのジイソプロピルエチルアミンを加えた。還流冷却器を備えた250ml丸底フラスコ中で混合物を24時間加熱して還流させ、マグネティックスターラーで攪拌した。溶液を蒸発乾固し、200mlの2:1のジクロロメタン:メタノールに溶解させ、500ml分液漏斗に移し、75mlの0.2NのHClで洗浄した。相が分かれ、有機相を75mlの0.1NのHCl及び15mlのメタノールで再度洗浄した。有機相を分離し、5gの硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。得られた油を、エタノール:HOから結晶化した。収量:1.2g。
【実施例2】
【0109】
2−(テトラデシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール(ADYZ196)の調製
2gの2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール塩酸塩を、丸底フラスコ中で50mlのHO及び50mlのエタノールに溶解させた。マグネティックスターラーで攪拌されている溶液に、4mlのテトラデシルアルデヒド(テトラデカナール)を加えた。混合物を30分間攪拌し、その後3時間で1.8gのNaBHを数回に分けて加えた。混合物を終夜攪拌し、溶液を分液漏斗に移し、50mlのHO及び100mlのジクロロメタンを加え、溶媒混合物を振盪した。下相を回収し、水性メタノール相を50mlの3:1ジクロロメタン:メタノールで2回抽出し、3回分の下相を合わせ、75mlのHOとともに振盪した。有機相をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。残渣をエタノール:HOから結晶化した。収量:1.1g。
【実施例3】
【0110】
2−(オクタデシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール(ADYZ197)の調製
2gの2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールを、50mlの2:1のジクロロメタン:メタノール中で、1gのEDACの添加により、2gのオクタデカン酸(ステアリン酸)と反応させた。反応混合物を終夜攪拌し、次いで蒸発乾固した。残渣を、4mlの1:1ジクロロメタン:メタノールに溶解させ、ジクロロメタン中で調製した50cm×1.5cmのシリカゲルカラムに充填した。化合物は、ジクロロメタンと増えた量のメタノールとの混合物とともに溶出した。全体収量:2.1g。
【0111】
滴下漏斗、冷却浴、及びマグネティックスターラーを備えた三口丸底フラスコに、2gの得られたN−[2−ヒドロキシル−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]オクタデシル−アミドを移した。化合物を50mlの乾燥THFに溶解させ、溶液を0℃に冷却した。THFにBを溶かした(ボランテトラヒドロフラン錯体)1.0M溶液40mlを、滴下漏斗により2時間滴下して加え、次いで混合物をさらに2時間0℃で反応させた。冷却浴を外し、反応を終夜攪拌した。翌日、10mlのHOをゆっくりと加え、溶液を蒸発乾固し、分液漏斗に移し、100mlの水、100mlのジクロロメタン、及び50mlのエタノールを加えた。振盪後、下相を回収し、上の水性メタノール相を、50mlの3:1のCHCl:MeOHで2回抽出した。合わせた有機相を100mlのHOで洗浄し、MgSOで2時間乾燥し、濾過し、溶液を蒸発乾固した。得られた生成物を、エタノール:HOから結晶化した。収量:0.9g。
【実施例4】
【0112】
2−(ヘキサデシルアミノ)プロパン−1,3−ジオール(ADYZ252)の調製
2gの2−アミノ−1,3−プロパンジオールを、100mlの2:1のジクロロメタン:メタノール中で、1.5gのEDACの添加により、2gのヘキサデカン酸(パルミチン酸)と反応させた。反応混合物を終夜攪拌し、その後蒸発乾固した。残渣を、6mlの1:1のジクロロメタン−メタノールに溶解させ、ジクロロメタン中で調製した50cm×1.5cmシリカゲルカラムに充填した。化合物は、ジクロロメタンと増えた量のメタノールとの混合物とともに溶出した。全体収量:1.8g。
【0113】
滴下漏斗、冷却浴、及びマグネティックスターラーを備えた三口丸底フラスコに、気流下で、1.0gの得られた2−(ヘキサデカノイルアミノ)プロパン−1,3−ジオールを移した。化合物を200mlの乾燥THFに溶解させ、溶液を0℃に冷却した。強力に攪拌しながら、1.2gのLiAlHを1時間の間に少しずつ加え、混合物を0℃でさらに2時間反応させた。冷却浴を外し、反応を終夜攪拌した。翌日、2mlの酢酸エチル、次いで10mlのメタノール、及び10mlの1NのHClを非常にゆっくりと加え、溶液をおよそ20mlまで蒸発させた。混合物を分液漏斗に移し、100mlの水、100mlのジクロロメタン、及び50mlのメタノールを加えた。振盪後、下相を回収し、上の酸性水性メタノール相を、50mlの3:1のCHCl:MeOHで2回抽出した。合わせた有機相を、100mlの0.1NのHCl、次いで100mlのHOで洗浄し、MgSOで2時間乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。得られた生成物を、エタノール:HOから結晶化した。収量:0.5g。
【実施例5】
【0114】
AD2750による治療後の、ヌードマウス中のMDA−MB−435細胞の生存
CD1−ヌードマウスに、3×10のMDA−MB−435細胞を静脈注射した。これは通常ヒトの転移性乳癌と考えられているが、最近はメラノーマのモデル細胞とも考えられている。第1日から、飲用水中の20mg/kgのAD2750によりマウスを治療した。第100日に、残っているマウスを屠殺し、病理を決定した。図1に明らかに示されているとおり、AD2750の経口投与は、腫瘍の発生を著しく低減し、治療された動物の生存率を上昇させた。したがって、これらの結果は、特に乳癌及びメラノーマ用途で、本発明の化合物を経口抗癌剤として使用する可能性を示している。
【実施例6】
【0115】
AD2750による治療後の、ヌードマウス中の膵腫瘍細胞成長
抗癌剤としての本発明の化合物の適用性を検討するため、発明者らは、次に、膵腫瘍に対するAD2750の腹腔内投与の効果を検討した。したがって、CD1−ヌードマウスに、5×10の膵腫瘍細胞(CRL−1687)を皮内注射した。第1日から、0.2mlの10%CE中の30mg/kgのAD2750をマウスに腹腔内投与して、最長35日治療した。第8日から、5〜7日おきに、腫瘍の大きさを測定し計算した。図2に示されているとおり、AD2750の腹腔内投与は、腫瘍体積を約5分の1にした。
【実施例7】
【0116】
AD2750と公知の細胞傷害性薬剤とを組み合わせた処理後の膵腫瘍細胞生存率
発明者らは、次に、本発明の化合物を公知の化学療法薬剤と組み合わせる効果を検討した。膵腫瘍細胞を、1μMのタキソール及び2μMのAD2750とともに(別々又は組み合わせて)インキュベーションした。結果を、図3Aのグラフの左の部分に、生存可能な細胞のパーセントとして(MTTによりチェックされている)示す。20μMのフルオロウラシルと8μMのAD2750との組み合わせを、図3Aのグラフの右の部分に示す。図に示されているとおり、AD2750とタキソール又はフルオロウラシルなどの公知の薬剤との組み合わせは、腫瘍細胞の生存率を著しく低下させ、そのような組み合わせの治療可能性を表している。
【実施例8】
【0117】
ADYZ197とフルオロウラシル及びADYZ197とAD2730(2−(ブチルアミノ)−1−フェニルプロパン−1,3−ジオール)とを組み合わせた処理後の膵腫瘍細胞の生存率
発明者らは、次に、式IIの他の化合物の潜在的な抗癌効果を検討した。したがって、膵腫瘍細胞を、2μMのAD2730及び10μMのADYZ197と、別々又は組み合わせてインキュベーションした。結果を、図3Bのグラフの左の部分に、生存可能な細胞のパーセントとして(MTTによりチェックされている)示す。式IIの両化合物の組み合わせは、細胞生存率の低減に対する著しい相乗効果を生み出した。20μmのフルオロウラシルと10μMのADYZ197の組み合わせも、図3Bのグラフ右側に示されるとおり、腫瘍細胞の生存率を著しく低下させた。
【実施例9】
【0118】
リンパ芽球中のグルコシルセラミド合成に対するAD2750の影響
発明者らは、次に、代謝異常に対する式IIの化合物の潜在的な影響を調査した。したがって、正常なリンパ芽球及びゴーシェ病患者から得たリンパ芽球を、5分間AD2750の濃度を増やしながらインキュベーションした。次いで、ボディファイ(Bodify)−C3−セラミドを加え、さらに3時間インキュベーションを続けた。次いで細胞を抽出し、グルコシルセラミド及びスフィンゴミエリンスポットの蛍光をHPLCにより定量した。結果を図4Aにまとめる。
【実施例10】
【0119】
HL−60細胞(急性前骨髄球性白血病のモデル)におけるグルコシルセラミド/スフィンゴミエリン合成に対するAD2750の影響
AD2750の濃度を増やしながら、HL60を1時間インキュベーションした。次いで、ボディファイ−C3−セラミドを加え、さらに23時間インキュベーションを続けた。次いで細胞を抽出し、グルコシルセラミド及びスフィンゴミエリンスポットの蛍光をHPLCにより定量した。結果を図4Bにまとめる。
【0120】

【実施例11】
【0121】
AD2750及びカントプサーの組み合わせ治療−インビボ効能試験
細胞培養においてインビトロで、及びCRL−1687膵腫瘍モデルを利用してインビボで示された、単独療法として、又は公知の化学療法薬剤と組み合わせた本発明の化合物の抗腫瘍形成効果により勇気づけられ、発明者らは、次に、BxPC−3ヒト膵腫瘍異種移植モデルを利用するインビボ効能試験をさらに実施した。したがって、インビボ継代から得たBxPC−3腫瘍の断片を皮下(s.c.)移植された9群の無胸腺NCr−nu/nuマウスを、AD2750(20又は30mg/kg)単独で、又はカンプトサー(60又は30mg/kg)と組み合わせて、表2に示されるとおり、28日間毎日(i.p.)治療した。実験手順に示されるとおり、55日間の実験の間、平均腫瘍体積を測定し、計算した。図5に明らかに示されるとおり、AD2750による治療は、用量依存的に明らかに腫瘍体積を低減した。図6及び7に示されるとおり、AD2750とカンプトサーの組み合わせは腫瘍体積を大幅に低減したので、AD2750を、単独で、又はカンプトサーと組み合わせて抗癌剤として使用する可能性を示している。
【0122】

【0123】
いくつかの特定の実施例に関して本発明を説明してきたが、多くの修正及び変形が可能である。したがって、添付される請求項の範囲内で、具体的に説明されたのとは別の方法で本発明を実現できることが理解される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体:

上式において、Xは、水素原子又はOHを表し;
Yは、

又は−NHRを表すが、Rは、任意にヒドロキシルにより置換されていてよいC2−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表し;
Wは、水素原子或いは任意にヒドロキシルにより置換されていてよいC1−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表す。
【請求項2】
XがOHを表す、請求項1に記載の式(II)の化合物。
【請求項3】
がC10−18直鎖又は分岐のアルキルを表す、請求項1に記載の式(II)の化合物。
【請求項4】
Wが水素原子を表す、請求項1に記載の式(II)の化合物。
【請求項5】
WがCHOHを表す、請求項1に記載の式(II)の化合物。
【請求項6】
以下から選択される、請求項1に記載の式(II)の化合物:
本明細書中でAD2750とも称される、2−(テトラデシルアミノ)プロパン−1,3−ジオール;

本明細書中でADYZ252とも称される、2−(ヘキサデシルアミノ)プロパン−1,3−ジオール;

本明細書中でADYZ74とも称される、2−(ドデシルアミノ)プロパン−1,3−ジオール;

本明細書中でADYZ243とも称される、2−(ヘキサデシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール;

本明細書中でADYZ195とも称される、2−(デシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール;

本明細書中でADYZ196とも称される、2−(テトラデシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール;

及び本明細書中でADYZ197とも称される、2−(オクタデシルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール。

【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の式(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体を含み、少なくとも1種の薬剤的に許容できるキャリア、希釈剤、賦形剤、及び/又は添加剤を任意にさらに含む医薬組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の追加の治療薬をさらに含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
増殖性疾患、免疫関連疾患、神経変性疾患、感染性疾患、及び代謝関連病態からなる群から選択される病理学的障害を治療するための、請求項7又は8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の式(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体と、少なくとも1種の追加の治療薬との組み合わせを含み、少なくとも1種の薬剤的に許容できるキャリア、希釈剤、賦形剤、及び/又は添加剤を任意にさらに含む組成物。
【請求項11】
前記追加の治療薬が、トポイソメラーゼ阻害剤、核酸代謝拮抗剤、及び有糸分裂阻害剤から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記追加の治療薬が、フルオロウラシル、タキソール、及びイリノテカンから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
治療効果を、その必要のある被験者に提供するキットであって、
a.第1単位剤形中に、少なくとも1種の式(II)の化合物或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体又は他の誘導体、或いはそれらの組み合わせ又は混合物、及び任意に薬剤的に許容できるキャリア又は希釈剤;
b.第2単位剤形中に、トポイソメラーゼ阻害剤、核酸代謝拮抗剤、及び有糸分裂阻害剤から選択される少なくとも1種の治療薬及び任意に薬剤的に許容できるキャリア又希釈剤;
c.前記第1及び第2剤形を収容するための容器手段;及び
d.使用のための説明書
を含むキット。
【請求項14】
前記被験者が、増殖性疾患、免疫関連疾患、神経変性疾患、感染性疾患、及び代謝関連病態のいずれかを患っている、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
病理学的障害を患っている被験者を治療する方法であって、前記被験者に、治療上有効な量の式IIの化合物、或いはその組成物、組み合わされた組成物、又はキットを投与する工程を含み、前記障害が、増殖性疾患、免疫関連疾患、神経変性疾患、感染性疾患、及び代謝関連病態のいずれかである方法。
【請求項16】
増殖性疾患、免疫関連疾患、神経変性疾患、感染性疾患、及び代謝関連病態からなる群から選択される病理学的障害を治療するための医薬の調製への、式(I)の化合物、或いはその薬剤的に許容できる塩又は異性体の使用:

上式において、Rは、水素原子或いは任意にニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、−NHC(S)NH−アルキル、スルホニルアミド−アルキル、nが1から20の整数である

−NHアダマンタンにより置換されているフェニルを表し;
Xは水素原子又はOHを表し;
Yは、nが0から6の整数であり、Rが任意にヒドロキシルで置換されていてよいC2−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表す、

−NHR

、R、及びRが、独立にC−Cアルキル又はC−Cアルケニルを表す、

を表し;
Zは、水素原子、−OH、モノ又はジサッカライド、モノサッカライドサルフェート、或いはコリンホスフェートを表し;
Wは、水素原子、又は任意にヒドロキシルで置換されていてもよいC1−20直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖を表すが、
Rが水素である場合、Yが

ではないという条件である。
【請求項17】
式(I)の前記化合物が式(III)の化合物並びにその薬剤的に許容できる塩及び異性体である、請求項16による使用:

上式において、Rは、水素原子或いは任意にニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、−NHC(S)NH−アルキル、スルホニルアミド−アルキル、nが1から20の整数である

−NHアダマンタン、−NH−t−BOC、−NH−FMOC、又はNH−CBZにより置換されているフェニルを表し;
Xは水素原子又は−OH基を表し;
Yは、Rが任意にヒドロキシルで置換されていてよい直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル鎖である、

−NHR
、R、及びRが、独立にC−Cアルキル又はC−Cアルケニルを表す、

を表し;
Zは、水素、−OH、モノ又はジサッカライド、モノサッカライドサルフェート、或いはコリンホスフェートを表し;
前記疾患は、神経変性疾患、代謝関連疾患、及び免疫関連疾患のいずれかである。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−503050(P2011−503050A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532710(P2010−532710)
【出願日】平成20年11月9日(2008.11.9)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001472
【国際公開番号】WO2009/060457
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510126427)イッサム リサーチ ディべロップメント カンパニー オブ ザ ヘブライ ユニバーシティー オブ エルサレム,リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】YISSUM RESEARCH DEVELOPMENT COMPANY OF THE HEBREW UNIVERSITY OF JERUSALEM,LTD.
【出願人】(508133411)ハダシット メディカルリサーチサービセス アンド ディベロップメント リミテッド (3)
【Fターム(参考)】