説明

スプリング装置およびアクセルペダル装置

【課題】 長期にわたり2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることのできるアクセルペダル装置を提供する。
【解決手段】 アクセルペダル装置のスプリング装置においてバネ鳴きを抑えるためのダンパ17が、ダンパ17自体のリング部17aによって内側コイルスプリング12に引っ掛かり、ダンパ17が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間で挟持される。このため、2重コイルスプリングが伸縮を繰り返しても、ダンパ17の位置ズレが防がれ、ダンパ17が長期にわたり外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に接触し、長期にわたり2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることができる。また、2重コイルスプリングにより弾かれるダンパ17の端(平板部の端)が存在せず、2重コイルスプリングにダンパ17が弾かれて異音が発生する不具合がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2重コイルスプリングがダンパによって制振される構造を備えたスプリング装置、および該スプリング装置を用いたアクセルペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2重コイルスプリングに限らず、コイルスプリングを用いたスプリング装置では、コイルスプリングに与えられている負荷を急激に開放した時や、外部から与えられる衝撃によってコイルスプリングが振動して異音(以下、バネ鳴きと称す)が発生する。
2重コイルスプリングを用いたスプリング装置では、外側コイルスプリングと内側コイルスプリングとの間に弾性樹脂製のダンパを介在させて、ダンパを外側コイルスプリングと内側コイルスプリングとに常に接触させることで、バネ鳴きを抑える技術が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来技術を図6、図7を参照して説明する(符号は後述する実施例と共通)。
図6(a)に示すように、薄い平板形状のダンパ17を十字形状や短冊形状に設けて、平板部を外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の間に介在させる技術や、図7(a)に示すように、ダンパ17を円筒形状に設けて、ダンパ17の筒部の厚み部分を外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の間に介在させる技術が知られている。
【0004】
しかし、ダンパ17を十字形状や短冊形状に設けて用いる技術は、図6(b)に示すように、2重コイルスプリングの伸縮によりダンパ17に位置ズレが生じて、バネ鳴きを抑える効果が低減する可能性があった。さらには、ダンパ17のズレ量が大きくなり、ダンパ17が2重コイルスプリングの間から外れてしまう可能性もあった。
また、図6(c)の矢印Xに示すように、2重コイルスプリングの作動時に、ダンパ17の端(平板部の端)が外側コイルスプリング11または内側コイルスプリング12に干渉し、ダンパ17が弾かれることでダンパ17が異音を発生する可能性もあった。
【0005】
一方、ダンパ17を円筒形状に設けて用いる技術は、ダンパ17の径寸法や、厚さによって、2重コイルスプリングの一方に対して非接触となり、バネ鳴きを抑制できなくなる可能性がある。具体的には、2重コイルスプリングとダンパ17の熱膨張差や、ダンパ17の経年変化による縮径により、ダンパ17が2重コイルスプリングの一方に対して非接触になる可能性がある。そして、2重コイルスプリングの隙間においてダンパ17が拡径すると、図7(b)に示すように、ダンパ17と内側コイルスプリング12とが非接触になり、内側コイルスプリング12のバネ鳴きを抑えることができなくなる。逆に、2重コイルスプリングの隙間においてダンパ17が縮径すると、図7(c)に示すように、ダンパ17と外側コイルスプリング11とが非接触になり、外側コイルスプリング11のバネ鳴きを抑えることができなくなる。
また、ダンパ17が2重コイルスプリングの一方に対して非接触になると、ダンパ17が2重コイルスプリングによって挟持されなくなるため、図7(b)に示すようにダンパ17が重力で落下してしまう。
【0006】
具体的に、上記の技術(ダンパ17を十字形状や短冊形状に設けたスプリング装置、あるいはダンパ17を円筒形状に設けたスプリング装置)を採用したアクセルペダル装置では、上述した理由によって2重コイルスプリングのバネ鳴きの抑制効果が低減したり、無くなる可能性があった。
【特許文献1】特開2005−231538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期にわたり2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることのできるスプリング装置およびアクセルペダル装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔請求項1の手段〕
請求項1のスプリング装置におけるダンパは、少なくとも1つ以上のリング部を備えており、このリング部の内部に外側コイルスプリングまたは内側コイルスプリングの一方のスプリング線が通されて、リング部が外側コイルスプリングまたは内側コイルスプリングの一方に引っ掛かり、ダンパが外側コイルスプリングと内側コイルスプリングとの間で挟持される。
このように、ダンパは、リング部によって外側コイルスプリングまたは内側コイルスプリングの一方に引っ掛かり、ダンパ自体が外側コイルスプリングと内側コイルスプリングとの間で挟持されるため、2重コイルスプリングが伸縮を繰り返しても、ダンパの位置ズレが防がれ、ダンパが長期にわたり外側コイルスプリングと内側コイルスプリングの両方に接触する。
このように、ダンパの位置ズレが防がれ、ダンパが長期にわたり外側コイルスプリングと内側コイルスプリングの両方に接触するため、長期にわたり2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることができる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2のスプリング装置のダンパは、ダンパ自体が1つのリング部である。
これにより、2重コイルスプリングにより弾かれるダンパの端(平板部の端)が存在せず、2重コイルスプリングの作動時に、ダンパが弾かれてダンパが異音を発生しない。
また、ダンパの形状が単純であるため、ダンパの製造コストを低く抑えることができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3のスプリング装置のダンパは、両端にそれぞれリング部を備える。
これにより、上記請求項2の手段と同様、2重コイルスプリングにより弾かれるダンパの端(平板部の端)が存在せず、2重コイルスプリングの作動時に、ダンパが弾かれてダンパが異音を発生しない。
また、両端にリング部が存在するため、各リング部の復元力で2重コイルスプリングのバネ鳴きを抑えることができ、バネ鳴きを抑制する効果を高めることができる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4のスプリング装置は、「ダンパにおけるリング部の輪と直交する方向の幅A」が、「2重コイルスプリングが組付対象物に組み付けられた初期セット状態における外側コイルスプリングと内側コイルスプリングのうちの最大の線間隙間B」より大きい(A>B)。
これにより、外側コイルスプリングおよび内側コイルスプリングの線間の内部にダンパが入り込む不具合を抑制できる。その結果、ダンパが外側コイルスプリングおよび内側コイルスプリングの線間の内部に入り込むことによるダンパと2重コイルスプリングとの接触の低下を防ぐことができ、長期にわたり2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることができる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5のアクセルペダル装置は、上記請求項1〜請求項4のスプリング装置を採用する。
このため、アクセルペダル装置において、長期にわたり2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
最良の形態のスプリング装置は、例えば、アクセルペダル装置においてアクセルペダルを踏込力に抗して戻す方向に付勢するリターンスプリングとして用いられるものであり、外側コイルスプリングおよび内側コイルスプリングよりなる2重コイルスプリングと、弾性変形可能な樹脂製のダンパとを備え、ダンパの少なくとも一部が外側コイルスプリングと内側コイルスプリングの両方に接触する。
ダンパは、少なくとも1つ以上のリング部を備える。
そして、リング部の内部に外側コイルスプリングまたは内側コイルスプリングの一方のスプリング線が通されて、リング部が外側コイルスプリングまたは内側コイルスプリングの一方に引っ掛かり、ダンパが外側コイルスプリングと内側コイルスプリングとの間で挟持される。
【実施例1】
【0014】
以下に、本発明が適用されたスプリング装置を搭載したアクセルペダル装置を、図1〜図3を参照して説明する。
アクセルペダル装置は、運転者によるアクセルペダル1の踏力に応じて車両走行用エンジンの運転状態を制御するものであり、この実施例ではアクセルバイワイヤ方式を採用しており、アクセルペダル1は車両のスロットル装置に機械的に連結されていない。その代わりに、アクセルペダル装置は、アクセルペダル1の回転角を回転角センサ2により検出し、その検出結果を表す信号を車両のエンジンの電子制御装置(以下、ECU:エンジン・コントロール・ユニットの略)に出力する。これによりECUは、回転角センサ2の出力信号から割り出したアクセルペダル1の回転角に基づいてスロットル装置を制御する。
【0015】
アクセルペダル装置の一例を具体的に説明する。
アクセルペダル装置は、車両運転者の足元に設置されて、運転者の足の踏力により操作されるものであり、車両運転者の踏力により操作されるアクセルペダル1、アクセルペダル1の回転角度を検出する回転角センサ2、車両運転者の足元部の車両に固定されてアクセルペダル1を回転可能に支持するハウジング3、およびアクセルペダル1を踏力に抗して戻す方向へ付勢するスプリング装置4等で構成される。
【0016】
アクセルペダル1は、運転者の足によって踏力が与えられるものであり、ハウジング3に対して回転自在に支持されるペダル根元部5、運転者の足に踏まれるペダル6、ペダル根元部5とペダル6を結合するペダルロッド(アーム)7からなる。
アクセルペダル1は、アクセルペダル1の踏力が無くなってスプリング装置4により戻る方向の力が加えられても、ストッパ8によって、所定の位置(アクセルペダル1の初期位置)で停止するようになっており、アクセルペダル1が操作されていない状態では、アクセルペダル1は初期位置へ戻されて停止する。
【0017】
回転角センサ2は、固定部材(例えば、ハウジング3)と、回転部材(例えば、ロータ)との相対回転量を電気的に検出する周知のセンサであり、そのセンサ出力はエンジンを制御するECUに与えられる。
【0018】
ハウジング3は、アクセルペダル1のペダル根元部5、回転角センサ2、スプリング装置4等を収容するものであり、例えば合成樹脂(ポリアセタール、ポリアミド等)によって形成されている。このハウジング3には、車体取付部(フランジ等)3aが一体に設けられており、車体取付部3aをネジ等の締結部材を用いて車両に固定することにより、アクセルペダル装置が車両に固定される。なお、ハウジング3は、一部品で構成されるものであっても良いし、ハウジング本体(主要部を覆う部分:図3はこのタイプを示す)と、カバーとを結合するものであっても良い。
【0019】
スプリング装置4は、アクセルペダル1を初期位置へ戻すリターンスプリングであり、表面に樹脂等の皮膜がコーティングされた金属製の外側コイルスプリング11と、その内側に配置される表面に樹脂等の皮膜がコーティングされた金属製の内側コイルスプリング12とからなる2重コイルスプリングを搭載し、万が一、一方のコイルスプリングが破損したとしても、他方のコイルスプリングによりアクセルペダル1を初期位置へ戻すように設けられている。
【0020】
外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12は、ともに軸方向に一定径、一定ピッチの円筒形の圧縮コイルスプリングであり、外側コイルスプリング11は内側コイルスプリング12よりも大径で、且つ内側コイルスプリング12とは逆巻きに形成され、外側コイルスプリング11の内側に内側コイルスプリング12を配置した状態(2重コイルスプリングの状態)でハウジング3内にセットされる。具体的に、外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の間には、アクセルペダル装置の作動に外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12が干渉するのを防ぐために、少量の隙間が形成されている。
【0021】
スプリング装置4における外側コイルスプリング11および内側コイルスプリング12は、アクセルペダル装置に組み付けられた状態で正規の組付け位置から位置ズレしないように設けられている。具体的に、ハウジング3において2重コイルスプリングが着座する部分には、外側コイルスプリング11の外周径に合致する円形凹部形状の外側バネ座と、内側コイルスプリング12の外周径に合致する円形凹部形状の内側バネ座とからなる段付き皿形状の固定バネ座15が設けられている。一方、レバー13において2重コイルスプリングが着座する部分には、外側コイルスプリング11の内周径に合致する円形凸部形状の外側バネ座と、内側コイルスプリング12の内周径に合致する円形凸部形状の内側バネ座とからなる段付突起形状の可動バネ座16が設けられている。なお、固定バネ座15および可動バネ座16の形状は一例であって、他の形状を採用するものであっても良い。
【0022】
ここで、アクセルペダル装置は、アクセルペダル1の踏力を急激に開放した場合や、外部から与えられる衝撃によって、2重コイルスプリングが振動してバネ鳴きが発生する。 このバネ鳴きを抑えるために、スプリング装置4は、上述した2重コイルスプリングの他に、図1に示すように、弾性変形可能な樹脂製のダンパ17を備える。
このダンパ17は、少なくとも一部が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の間に挟持されて外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に接触するものであり、少なくとも1つ以上のリング部17aを備える。リング部17aは切れ目がなく繋がった輪であり、そのリング部17aの内部には、外側コイルスプリング11または内側コイルスプリング12の一方のスプリング線(線材)が通されて、リング部17aが外側コイルスプリング11または内側コイルスプリング12の一方に引っ掛かった状態となっている。そして、ダンパ17が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間で挟持されるものである。
【0023】
具体的なダンパ17の一例を説明する。
この実施例1におけるダンパ17は、図2(b)に示すように、ダンパ17自体が1つのリング部17aである。ダンパ17は、ゴム等の弾性変形可能な樹脂材料(長期にわたり弾性力を失わない耐久性に優れた材料)により軸方向に短い円筒形状に設けられたものであり、無負荷状態では図2(b)に示すように円形を呈する。ダンパ17は、2重コイルスプリングに組み付けられた状態で、ダンパ17の側面(筒形状の側面)が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間に挟まれ、ダンパ17の円形がつぶれるものであり、図2(c)に示すように、ダンパ17の復元力(図中の白抜き矢印参照)によりダンパ17の側面が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に強制接触するものである。
【0024】
外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間にダンパ17が挟持され、図1(c)に示すように、ダンパ17の円形がつぶれた状態で、ダンパ17の側面が「外側コイルスプリング11の一箇所以上」と「内側コイルスプリング12の一箇所以上」に確実に接触するように、ダンパ17の径αが設定されている。
具体的な一例を示すと、図1(c)に示すように、外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間にダンパ17が挟持される部分の長さをα’、2重コイルスプリングがアクセルペダル装置(組付対象物)に組み付けられた初期セット状態(アクセルペダル1に対して踏力が加えられていない状態)における外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12のうちの最大の線間隙間(この実施例では、外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12は共に等ピッチコイルであるため、ピッチの大きい側)をBとした場合、α’>Bの関係を満足するように設けられている。
【0025】
また、外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間にダンパ17が挟持された状態において、ダンパ17が「外側コイルスプリング11の線間隙間」あるいは「内側コイルスプリング12の線間隙間」から確実に抜け出ないようにダンパ17の幅Aが設定されている。
具体的に、ダンパ17におけるリング部17aの輪と直交する方向の幅をA、2重コイルスプリングがアクセルペダル装置に組み付けられた初期セット状態における外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12のうちの最大の線間隙間をBとした場合、A>Bの関係を満足するように設けられている。
【0026】
次に、2重コイルスプリングに対するダンパ17の組付けについて説明する。
上述したように、ダンパ17は、リング部17aの内部に、外側コイルスプリング11または内側コイルスプリング12の一方のスプリング線が通されて、リング部17aが外側コイルスプリング11または内側コイルスプリング12の一方に引っ掛かり、ダンパ17が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間で挟持されるものである。
この実施例1では、ダンパ17自体がリング部17aであるため、ダンパ17に外側コイルスプリング11または内側コイルスプリング12の一方のスプリング線が通される。具体的に、この実施例1では、ダンパ17が内側コイルスプリング12のスプリング線に引っ掛けられる例を示す。
【0027】
先ず、図1(a)に示すように、内側コイルスプリング12のコイルピッチを1つまたは複数またがせるようにして、ダンパ17の輪の中に内側コイルスプリング12の自由端を入れる。この作業でダンパ17が内側コイルスプリング12のスプリング線に引っ掛かる。
次に、図1(b)に示すように、内側コイルスプリング12のスプリング線に引っ掛かった状態のダンパ17を内側コイルスプリング12の外側へ引き出した状態にする。
次に、内側コイルスプリング12の上側から外側コイルスプリング11を被せるように装着する。
以上の組付け手順により、ダンパ17の内部に内側コイルスプリング12のスプリング線が通されて、リング部17aが内側コイルスプリング12に引っ掛かり、且つダンパ17が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間で挟持される。そして、その状態を維持したままで、図1(c)に示すように、2重コイルスプリングをアクセルペダル装置のハウジング3内(具体的には、固定バネ座15と可動バネ座16の間)に組み付ける。なお、図1(c)におけるバネ座形状は説明図のためのものであって、実際の形状とは異なるものである。
【0028】
(実施例1の効果)
この実施例1のアクセルペダル装置は、外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間においてダンパ17が挟持されて、ダンパ17の復元力によりダンパ17が常に外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に接触するため、車両運転者がアクセルペダル1の踏力を急激に開放した場合や、外部からアクセルペダル装置に振動(車両振動等)が与えられた場合であっても、2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることができる。特に、ダンパ17の復元力によりダンパ17が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に対して常に圧迫するため、外側コイルスプリング11および内側コイルスプリング12の制振力が高く、バネ鳴きの抑制効果が大きい利点がある。
【0029】
また、ダンパ17は、ダンパ17自体のリング部17aによって内側コイルスプリング12に引っ掛かり、ダンパ17が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間で挟持されるため、2重コイルスプリングが伸縮を繰り返しても、ダンパ17の位置ズレが防がれる。その結果、ダンパ17が長期にわたり外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に接触する。
このように、ダンパ17の位置ズレが防がれ、ダンパ17が長期にわたり外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に接触するため、長期にわたり2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることができる。
【0030】
この実施例1のダンパ17は、ダンパ17自体が1つのリング部17aである。これにより、2重コイルスプリングにより弾かれるダンパ17の端(平板部の端)が存在せず、2重コイルスプリングの作動時に、ダンパ17が弾かれてダンパ17が異音を発生しない。また、ダンパ17自体が1つのリング部17aで、ダンパ17の形状が単純であるため、例えばゴムチューブを所定間隔(幅A)で切断することでもダンパ17を製造でき、ダンパ17の製造コストを低く抑えることができる。このため、アクセルペダル装置のコストを抑えることができる。即ち、バネ鳴きを長期に亘って確実に抑えることのできるアクセルペダル装置を安価に提供することができる。
【0031】
さらにこの実施例1では、「ダンパ17におけるリング部17aの輪と直交する方向の幅A」が、「2重コイルスプリングがアクセルペダル装置に組み付けられた初期セット状態における外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12のうちの最大の線間隙間B」より大きく設けられている(A>B)。
これにより、外側コイルスプリング11および内側コイルスプリング12の線間の内部にダンパ17が入り込む不具合を抑制できる。その結果、ダンパ17が外側コイルスプリング11および内側コイルスプリング12の線間の内部に入り込むことによるダンパ17と2重コイルスプリングとの接触の低下を防ぐことができ、長期にわたり2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることができる。
【実施例2】
【0032】
実施例2を図4を参照して説明する。なお、以下の実施例において上記実施例1と同一符号は同一機能物を示すものである。
この実施例2のダンパ17は、図4(a)、(b)に示すように、両端にそれぞれリング部17aを備える。
また、この実施例2のダンパ17は、「ダンパ17におけるリング部17aの輪と直交する方向の幅A」が薄く設けられている。この幅Aは、外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との径方向隙間をCとした場合、外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に確実にダンパ17が接触するように、A≧Cの関係を満足するように設けられている。
【0033】
この実施例2におけるダンパ17の組付けについて説明する。
先ず、図4(c)に示すように、内側コイルスプリング12のコイルピッチを1つまたは複数またがせるようにして、一方のリング部17aの輪の中に内側コイルスプリング12の自由端を入れる。なお、リング部17aの内径が内側コイルスプリング12の外径より小さい場合は、リング部17aを拡張してリング部17aの輪の中に内側コイルスプリング12の自由端を入れる。この作業で一方のリング部17aの内部にスプリング線が通り、ダンパ17が内側コイルスプリング12のスプリング線に引っ掛かる。
次に、内側コイルスプリング12のスプリング線に引っ掛かった状態のダンパ17を内側コイルスプリング12の外側へ引き出した状態にする。
次に、内側コイルスプリング12の上側から外側コイルスプリング11を被せるように装着する。
【0034】
以上の組付け手順により、一方のリング部17aの内部に内側コイルスプリング12のスプリング線が通されて、リング部17aが内側コイルスプリング12に引っ掛かり、且つダンパ17が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間で挟持される。そして、その状態を維持したままで、図4(d)に示すように、2重コイルスプリングをアクセルペダル装置のハウジング3内に組み付ける。
【0035】
この実施例2に示すダンパ17を採用しても、ダンパ17が一方のリング部17aによって内側コイルスプリング12に引っ掛かり、ダンパ17が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間で挟持されるため、2重コイルスプリングが伸縮を繰り返しても、ダンパ17の位置ズレが防がれる。その結果、ダンパ17が長期にわたり外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に接触し、2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることができる。
【実施例3】
【0036】
実施例3を図5を参照して説明する。
この実施例3は、上記実施例2と同様、ダンパ17の両端にそれぞれリング部17aを備えるものであるが、この実施例3のダンパ17は、「ダンパ17におけるリング部17aの輪と直交する方向の幅A」が実施例2より厚く設けられている。この幅Aは、実施例1と同様、「2重コイルスプリングがアクセルペダル装置に組み付けられた初期セット状態における外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12のうちの最大の線間隙間B」より大きく設けられている(A>B)。
【0037】
組付け手順は、上記実施例2と同様である。
しかし、上記実施例2では内側コイルスプリング12の上側から外側コイルスプリング11を被せた際に、ダンパ17の幅Aが薄く設けられていたため、2重コイルスプリングを側面から見た場合に、図4(d)に示すように、リング部17aの輪が2重コイルスプリングの径方向(2重コイルスプリングの側面方向)に向くものであった。
これに対し、この実施例3は、幅Aが厚いため、内側コイルスプリング12の上側から外側コイルスプリング11を被せた際に、実施例1と同様、リング部17aの輪が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間でつぶされ、図5(b)に示すように、リング部17aの側面(帯び部)が2重コイルスプリングの径方向に向くものである。
【0038】
この実施例3に示すダンパ17を採用しても、ダンパ17が一方のリング部17aによって内側コイルスプリング12に引っ掛かり、ダンパ17が外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12との間で挟持されるため、2重コイルスプリングが伸縮を繰り返しても、ダンパ17の位置ズレが防がれる。その結果、ダンパ17が長期にわたり外側コイルスプリング11と内側コイルスプリング12の両方に接触し、2重コイルスプリングのバネ鳴きを確実に抑えることができる。
【0039】
〔変形例〕
上記の実施例で示したアクセルペダル装置は、実施例説明のための一例であって、他の構成を採用するアクセルペダル装置であっても良い。
上記の実施例では、車両用のアクセルペダル装置に本発明を適用する例を示したが、本発明は踏力によって操作される他のアクセルペダル装置に適用可能なものである。
上記の実施例では、スプリング装置4をアクセルペダル装置に適用する例を示したが、アクセルペダル装置への適用に限定されるものではなく、2重コイルスプリングを用いた他のスプリング装置に本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】スプリング装置の説明図である(実施例1)。
【図2】ダンパの説明図である(実施例1)。
【図3】アクセルペダル装置の内部構造を示す説明図である(実施例1)。
【図4】スプリング装置の説明図である(実施例2)。
【図5】スプリング装置の説明図である(実施例3)。
【図6】スプリング装置の説明図である(従来技術1)。
【図7】スプリング装置の説明図である(従来技術2)。
【符号の説明】
【0041】
1 アクセルペダル
4 スプリング装置
11 外側コイルスプリング
12 内側コイルスプリング
17 ダンパ
17a リング部
A ダンパの幅
B 初期セット状態における線間隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側コイルスプリングおよび内側コイルスプリングよりなる2重コイルスプリングと、 弾性変形可能な樹脂製のダンパとを備え、
前記ダンパの少なくとも一部が前記外側コイルスプリングと前記内側コイルスプリングの両方に接触するスプリング装置において、
前記ダンパは、少なくとも1つ以上のリング部を備え、
前記リング部の内部に前記外側コイルスプリングまたは前記内側コイルスプリングの一方のスプリング線が通されて、前記リング部が前記外側コイルスプリングまたは前記内側コイルスプリングの一方に引っ掛かり、前記ダンパが前記外側コイルスプリングと前記内側コイルスプリングとの間で挟持されることを特徴とするスプリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスプリング装置において、
前記ダンパは、当該ダンパ自体が1つのリング部であることを特徴とするスプリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスプリング装置において、
前記ダンパは、両端にそれぞれリング部を備えることを特徴とするスプリング装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスプリング装置において、
前記2重コイルスプリングは、圧縮された状態で組付対象物に組み付けられるものであり、
前記ダンパにおける前記リング部の輪と直交する方向の幅をA、
前記2重コイルスプリングが前記組付対象物に組み付けられた初期セット状態における前記外側コイルスプリングと前記内側コイルスプリングのうちの最大の線間隙間をBとした場合、
A>Bの関係を満足することを特徴とするスプリング装置。
【請求項5】
回転可能に支持されるアクセルペダルと、
このアクセルペダルを踏込力に抗して戻す方向へ付勢する請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスプリング装置と、
を具備するアクセルペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−68644(P2009−68644A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239547(P2007−239547)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】