説明

スプレー噴射状態監視装置

【課題】透明色又は白色系の流体物を噴射するスプレーの噴射状態の良否を正確に判定することができるスプレー噴射状態監視装置を提供する。
【解決手段】スプレーの噴射状態を撮影する撮影部と、黒色系であって、スプレーを挟んで撮影部と対面するよう設けてある背景板と、スプレーから噴射された流体物を照明するが、背景板の撮影される部分を照明しないように配置されている照明部と、撮影部により撮影された画像データにおいて、スプレーのノズルの先端から所定の距離、範囲にある領域を二値化処理して、流体物と背景に区分けし、得られたデータに予め登録されたデータを照らし合わせる、及び/又は、流体物と背景に区分されたデータにおける流体物の面積を算出することにより、スプレーの噴射状態が正常か否かを判定する画像処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明色又は白色系の流体物を噴射するスプレーの噴射状態を監視するスプレー噴射状態監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗料などの流体物をスプレーにより噴射して物を被覆し、物の表面を装飾、保護することが行われている。本被覆は物の装飾、保護を目的としているので、流体物が適正量供給されなければいけない。しかし、スプレーはノズルから流体物を噴射するのだが、該ノズルは詰まりやすく、該ノズルの詰まりにより、該流体物が適正量供給されないことがある。
【0003】
そこで、流体物が適正量供給されているかを確認するために、流量計を用いることが行われている。流量計は、流体物をスプレーのノズルに供給する配管を流れる流体物の量が適正であるかを判定するものである。しかし、流量計では、ノズルからの噴射状態に変化が生じても検知することは難しい。そこで、スプレーの噴射状態を検知する方法として特許文献1が開示されている。
【0004】
特許文献1には、連続的に流体が噴射されるスプレーの噴射状態を監視するスプレー噴射状態監視システムであって、スプレーの噴射状態を撮影する撮像装置と、スプレー噴射形状を背後から照明する照明装置と、撮像装置により撮影された画像データを画像処理することで、スプレー噴射形状を抽出する形状抽出手段と、抽出されたスプレー噴射形状に基づいて噴射状態が正常か否かを判定する判定手段とを備えたことを特徴とするスプレー噴射状態監視システムが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、照明装置はスプレー噴射形状を背後から照明するので、流体物が透明色又は白色系であると、噴射された流体物と照明部分の区分けが困難となり、形状抽出をすることができない。また、特許文献1では、形状抽出は、フィルター処理により行われるのだが、該フィルター処理は、注目画素よりも噴射先に近い側の画素に対して正の係数、注目画素よりもスプレーノズルに近い側の画素に対して負の係数、注目画素に対して0を与える行列式で行い、スプレーの噴射領域内の画素とスプレーの噴射領域外の画素とを区別して、スプレーの噴射形状の領域を抽出するので、流体物が透明色又は白色系であると、噴射された流体物と照明部分の区分けが困難となり、形状抽出をすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−266718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、透明色又は白色系の流体物を噴射するスプレーの噴射状態の良否を正確に判定することができるスプレー噴射状態監視装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透明色又は白色系の流体物を噴射するスプレーの噴射状態を監視するスプレー噴射状態監視装置を提供するものであり、スプレーの噴射状態を撮影する撮影部と、スプレーの噴射状態を撮影する際に背景となる背景板と、スプレーから噴射された流体物を照明する照明部と、撮影部により撮影された画像データを画像処理する画像処理部とを備える。背景板は、黒色系であって、スプレーを挟んで撮影部と対面するよう設けてある。照明部は、スプレーから噴射された流体物を照明するが、背景板の撮影される部分を照明しないように配置されている。画像処理部は、撮影部により撮影された画像データにおいて、スプレーのノズルの先端から所定の距離、範囲にある領域を二値化処理して、流体物と背景に区分けし、得られたデータに予め登録されたデータを照らし合わせる、及び/又は、流体物と背景に区分されたデータにおける流体物の面積を算出することにより、スプレーの噴射状態が正常か否かを判定する。なお、白色系とは白色、及び白色に類似した、薄黄色、薄青などの薄色を含む色のことである。黒色系とは黒色、及び黒色に類似した、濃赤、濃青などの濃色を含む色のことである。
スプレーは移動式であって、スプレーが所定位置に移動した際に撮影部を稼働させる検出器を備えることもできる。
更に、画像処理部は、二値化処理する領域が、前記スプレーのノズルから正常に噴射された場合の流体物の広がりの内となるように設定されている、又は、二値化処理する領域の広がりが、前記スプレーのノズルから正常に噴射された場合の流体物の広がりよりも小さく設定されている、又は、二値化処理する領域の広がりが、前記スプレーのノズルから正常に噴射された場合の流体物の広がりと一致するように設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、透明色又は白色系の流体物を噴射するスプレーの噴射状態の良否を正確に判定することができるスプレー噴射状態監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係るスプレー噴射状態監視装置の一実施例の概要を示す模式図である。
【図2】図2は、画像処理する範囲を示す図である。
【図3】図3は、正常状態の画像データパターンの一例を示す図である。
【図4】図4は、異常状態の画像データパターンの一例を示す図である。
【図5】図5は、異常状態の画像データパターンの別の例を示す図である。
【図6】図6は、異常状態の画像データパターンの更に別の例を示す図である。
【図7】図7は、異常状態の画像データパターンの更に別の例を示す図である。
【図8】図8は、異常状態の画像データパターンの更に別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るスプレー噴射状態監視装置の実施形態を図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明に係るスプレー噴射状態監視装置の一実施例の概要を示す模式図である。
図1において、スプレーノズル1から、流体物である透明色又は白色系の塗料Aが下方に向けて噴射され、下方を通過する物品を塗装する。スプレーノズル1の側方には撮影部であるカメラ2が設けられており、スプレーノズル1及び噴射された塗料はカメラ2により撮影される。また、スプレーノズル1を挟んでカメラ2と対面するように背景板として板3が配置されているが、板3において、カメラと対面する表面は黒色に塗装されている。そして、カメラ2で撮影される、スプレーノズル1及び噴射された塗料を照らすよう、照明部であるライト4が配置されている。なお、ライト4は板3を照らさないよう配置されている。
【0013】
スプレーノズル1から下方に向けて塗料が噴射されると、スプレーノズル1及び噴射された塗料はライト4により照らされる。そして、カメラ2は、ライト4により照らされたスプレーノズル1及び噴射される塗料を撮影する。なお、背景には板3が撮影されている。
【0014】
撮影された画像データは、画像処理部5で処理される。画像処理部5は、画像処理手段6と、判定手段7と、異常信号出力手段8とを備えている。
画像処理手段6は、画像データにおいて、スプレーノズルの位置を検出する。スプレーノズルは所定の形状をしているとともに、ライト4に照らされて白く撮影されるので、形状を抽出しやすい。そこで、画像処理手段6に、スプレーノズルの判定条件となる形状情報を登録させておくと、それにより、画像処理手段6が、スプレーノズルを検出することができる。また、固定式スプレーにおいては、スプレーノズルの位置が決まっているので、その位置を画像処理手段6に登録させておいても良い。そして、スプレーノズルの先端から所定の範囲の画像データを二値化処理して、流体物と背景に区分けする。図2は画像処理する範囲を示す図であり、スプレーノズル1の先端の下方にある点線で囲まれた領域Bを画像処理する。なお、領域Bの広がりは、スプレーノズル1から正常に噴射された流体物の広がりよりも若干小さく設けることが好ましいが、該広がりと一致させても良い。また、二値化処理とは、画像データの各画素について明るさを求め、明るさが一定値より大きければ白、小さければ黒に処理することであり、塗料はライト4に照らされて明るいので白となり、背景はライト4に照らされていない板3なので黒となり、流体物と背景に区分けすることができる。
判定手段7には、予め画像データが登録されており、画像処理手段6で得られた画像データに予め登録された画像データを照らし合わせて、スプレーの噴射状態が正常か否かを判定する。具体的には、図3に示すような正常状態の画像パターンを登録しておき、一致した場合には正常であると判断し、一致しない場合には、スプレーの噴射状態が異常であると判断する。又は、図4〜図8に示すような異常状態の画像データパターンを登録しておき、これらの画像データパターンと一致又は類似した場合には、スプレーの噴射状態が異常であると判定し、それ以外の場合には、正常であると判定するようにすることもできる。なお、画像処理部5には、表示部であるモニタ9が繋がっており、画像処理された画像データを表示したり、異常状態の画像を確認することもできる。
異常信号出力手段8は、判定手段7で異常と判断された場合に異常信号を出力する。異常信号が出力された場合には、ラインを停止したり、警報を鳴らせたり、モニタ9に異常状態であることを表示させることができる。
【0015】
別の形態として、画像処理手段6で二値化処理する範囲を、スプレーノズルよりも下方で、スプレーノズルと離れた領域とすることもできる。この場合には、該領域は、スプレーノズルから正常に噴射された流体物の広がりの内となるように設定されている。
【0016】
また、別の形態として、判定手段7の判定方法を変更することもできる。具体的には、判定手段7では、画像処理手段6で得られた画像データにおける流体物の面積を算出し、算出された面積から、スプレーの噴射状態が正常か否かを判定する。この場合には、予め、流体物の下限面積が登録されており、算出された面積が下限値を下回ると異常状態であると判定する。なお、下限値は変更することが可能である。
【0017】
更に、別の形態として、判定手段7の判定方法として、画像処理手段6で得られた画像データに予め登録された画像データを照らし合わせてスプレーの噴射状態が正常か否かを判定するとともに、画像処理手段6で得られた画像データにおける流体物の面積を算出し、算出された面積から、スプレーの噴射状態が正常か否かを判定することもできる。すなわち、2つの方法によりスプレーの噴射状態が正常か否かを判定する。この場合は、どちらの結果も正常な場合は正常であるとし、それ以外の場合には異常であると最終的に判定する。
【0018】
更に、別の形態として、移動式のスプレーに適用することもできる。具体的には、撮影部、背景板、照明部は固定されており、移動式スプレーのノズルが撮影部の撮影範囲に入ったらスプレーの噴射状態を撮影する。そのために、この場合には、スプレーのノズル位置を検出する検出器が設置されており、移動式スプレーのノズルが撮影部の撮影範囲に入る位置に来たら撮影部が撮影を行うよう設定されている。
【0019】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲において種々の変形態を取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、透明色又は白色系の流体物を噴射するスプレーの噴射状態の良否を正確に判定することができるスプレー噴射状態監視装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 スプレーノズル
2 カメラ
3 板
4 ライト
5 画像処理部
6 画像処理手段
7 判定手段
8 異常信号出力手段
9 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明色又は白色系の流体物を噴射するスプレーの噴射状態を監視するスプレー噴射状態監視装置であって、
スプレーの噴射状態を撮影する撮影部と、
スプレーの噴射状態を撮影する際に背景となる背景板と、
スプレーから噴射された流体物を照明する照明部と、
前記撮影部により撮影された画像データにおいて、スプレーのノズルの先端から所定の距離、範囲にある領域を二値化処理して流体物と背景に区分けし、得られたデータに予め登録されたデータを照らし合わせ、スプレーの噴射状態が正常か否かを判定する画像処理部とを備え、
前記背景板は、黒色系であって、スプレーを挟んで前記撮影部と対面するよう設けてあり、
前記照明部は、スプレーから噴射された流体物を照明するが、前記背景板の撮影される部分を照明しないように配置されている
ことを特徴とするスプレー噴射状態監視装置。
【請求項2】
透明色又は白色系の流体物を噴射するスプレーの噴射状態を監視するスプレー噴射状態監視装置であって、
スプレーの噴射状態を撮影する撮影部と、
スプレーの噴射状態を撮影する際に背景となる背景板と、
スプレーから噴射された流体物を照明する照明部と、
前記撮影部により撮影された画像データにおいて、スプレーのノズルの先端から所定の距離、範囲にある領域を二値化処理して、流体物と背景に区分けし、得られたデータにおける流体物の面積を算出し、算出された面積から、スプレーの噴射状態が正常か否かを判定する画像処理部とを備え、
前記背景板は、黒色系であって、スプレーを挟んで前記撮影部と対面するよう設けてあり、
前記照明部は、スプレーから噴射された流体物を照明するが、前記背景板の撮影される部分を照明しないように配置されている
ことを特徴とするスプレー噴射状態監視装置。
【請求項3】
透明色又は白色系の流体物を噴射するスプレーの噴射状態を監視するスプレー噴射状態監視装置であって、
スプレーの噴射状態を撮影する撮影部と、
スプレーの噴射状態を撮影する際に背景となる背景板と、
スプレーから噴射された流体物を照明する照明部と、
前記撮影部により撮影された画像データにおいて、スプレーのノズルの先端から所定の距離、範囲にある領域を二値化処理して、流体物と背景に区分けし、得られたデータに予め登録されたデータを照らし合わせるとともに、該データにおける流体物の面積を算出して、照らし合わせた結果と算出された面積から、スプレーの噴射状態が正常か否かを判定する画像処理部とを備え、
前記背景板は、黒色系であって、スプレーを挟んで前記撮影部と対面するよう設けてあり、
前記照明部は、スプレーから噴射された流体物を照明するが、前記背景板の撮影される部分を照明しないように配置されている
ことを特徴とするスプレー噴射状態監視装置。
【請求項4】
前記スプレーは移動式であって、
前記スプレーが所定位置に移動した際に前記撮影部を稼働させる検出器を備える
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスプレー噴射状態監視装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、二値化処理する領域が、前記スプレーのノズルから正常に噴射された場合の流体物の広がりの内となるように設定されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスプレー噴射状態監視装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、二値化処理する領域の広がりが、前記スプレーのノズルから正常に噴射された場合の流体物の広がりよりも小さく設定されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスプレー噴射状態監視装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、二値化処理する領域の広がりが、前記スプレーのノズルから正常に噴射された場合の流体物の広がりと一致するように設定されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスプレー噴射状態監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−252743(P2011−252743A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125607(P2010−125607)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】