説明

スラグの処理方法

【課題】製鋼スラグ等を短時間で効率的に且つ低コストにエージング処理する。
【解決手段】製鋼スラグ等の高温スラグに散水する工程Aと、工程Aでの散水により発生した蒸気を、散水により冷却されたスラグと接触させることにより、スラグをエージング処理する工程Bとを有し、工程Aとこの工程で発生した蒸気を用いる工程Bを異なる場所で行う。高温スラグに散水し、スラグ顕熱を利用して発生させた蒸気により、当該スラグのエージングを行うので、スラグの冷却とエージングを効率的に且つ低コストに行うことができ、また、散水により蒸気を発生させる工程とこの蒸気を用いてエージング処理する工程を異なる場所で行うため、エージング処理の温度管理が容易であり、最適な温度条件で蒸気エージング処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精錬工程で生じた製鋼スラグや鉱石溶融還元スラグを効率的にエージング処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工程では、石灰を使用して精錬を行うため、発生するスラグはCaOを含有している。なかでも塩基度(CaO/SiO)の高い製鋼スラグは、含有しているCaOの一部が遊離CaOとして存在し、スラグを路盤材等に使用した場合に、遊離CaOが水と接触して水和膨張を起こすという問題がある。このような遊離CaOの水和膨張を防ぐために、従来では、精錬工程で生じた製鋼スラグを一旦固化させた後、蒸気エージング等のエージング処理を施している。
遊離CaOの水和膨張を防ぐための蒸気エージングは、通常1〜2m程度の高さに積んだスラグの下層から、常圧で100℃の水蒸気を吹き、スラグの温度を100℃にして処理を行う。しかし、この方式では、塩基度が3以上の製鋼スラグのエージング処理に3日間以上かかり、蒸気原単位も大きい。
【0003】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、耐圧容器内に製鋼スラグを装入し、加圧蒸気を供給して2〜5kgf/cmの圧力下蒸気雰囲気で3時間程度でエージングを行う方法が示されている。
また、特許文献2には、遊離CaOを含む高温の小片スラグを密閉容器内に収納し、この容器内でスラグに対して散水を行なうことにより、水蒸気とともに圧力を得て、この水蒸気・圧力及び高温雰囲気を利用してスラグをエージング処理する方法が示されている。
また、特許文献3には、遊離CaOを含む高温の製鋼スラグに、スラグ温度が550〜100℃の範囲内で散水または水蒸気添加するエージング処理方法が示されている。
【特許文献1】特開平5−238786号公報
【特許文献2】特公昭58−55093号公報
【特許文献3】特開平8−119692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示されるオートクレーブ方式では、短時間で処理できるものの、圧力の高い蒸気を使用するため、その蒸気製造にエネルギーが必要となり、費用がかかる問題がある。
一方、特許文献2の方法は、1つの密閉容器内で散水とエージングを行うものであるため、温度管理が殆どできず、このため発生した蒸気によるエージングを最適温度で行うことができない。また、容器内が高圧になるため耐圧容器を用いる必要があり、このため作業性が悪く、また、設備コストや処理コストも高くなるという問題がある。
また、特許文献3の方法は、製鋼スラグの温度が550℃〜100℃で散水または水蒸気を添加しているが、散水することでスラグの温度が低下し、好適なエージング条件である500℃〜200℃にスラグの温度を維持できる時間が短く、エージング効果が十分発揮できない問題がある。
【0005】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、精錬工程で生じた製鋼スラグや鉱石溶融還元処理で生じた溶融還元スラグを短時間で効率的に且つ低コストにエージング処理することができるスラグ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]製鋼スラグ、鉱石溶融還元スラグの中から選ばれる1種以上のスラグを冷却およびエージング処理する方法であって、
高温のスラグに散水する工程(A)と、工程(A)での散水により発生した蒸気を、散水により冷却されたスラグと接触させることにより、スラグをエージング処理する工程(B)とを有し、工程(A)とこの工程で発生した蒸気を用いる工程(B)を異なる場所で行うことを特徴とするスラグの処理方法。
[2]上記[1]の処理方法において、工程(A)では、表面温度が700℃以上のスラグに散水を行って100℃以上の蒸気を発生させ、工程(B)では、表面温度が200〜500℃のスラグに前記蒸気を接触させてエージング処理を行うことを特徴とするスラグの処理方法。
【0007】
[3]上記[1]または[2]の処理方法において、工程(B)のエージング処理によりスラグを粒状に崩壊させ、粒状スラグとすることを特徴とするスラグの処理方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの処理方法において、処理容器(X1),(X2)を用い、スラグを処理容器(X1)、処理容器(X2)の順に移動させ、処理容器(X1)内で工程(A)、処理容器(X2)内で工程(B)を順次行う処理方法であって、
処理容器(X1)内での後行チャージのスラグに対する工程(A)で発生した蒸気を処理容器(X2)内に導入し、処理容器(X2)内での先行チャージのスラグに対する工程(B)に用いることを特徴とするスラグの処理方法。
[5]上記[1]〜[3]のいずれかの処理方法において、処理容器(Xa),(Xb)を用い、各処理容器(Xa),(Xb)内でそれぞれ工程(A)と工程(B)を順次行うとともに、同時期に一方の処理容器(Xa)または(Xb)において工程(A)を、他方の処理容器(Xb)または(Xa)において工程(B)をそれぞれ行うようにし、
一方の処理容器(Xa)または(Xb)内での工程(A)で発生した蒸気を、他方の処理容器(Xb)または(Xa)に導入することを特徴とするスラグの処理方法。
【0008】
[6]上記[1]〜[3]のいずれかの処理方法において、処理容器内を移送中のスラグに対して工程(A)と工程(B)を順次行い、工程(A)で発生した蒸気を、工程(A)での散水位置よりもスラグ移送方向下流側においてスラグと接触させることにより、工程(B)を行うことを特徴とするスラグの処理方法。
[7]上記[6]の処理方法において、一端側にスラグ装入部、他端側にスラグ排出部を備えるとともに、一端側から他端側に向かって下向きに傾斜し、筒軸を中心に回転する筒状処理容器を用い、該筒状処理容器内の長手方向でスラグを移送しつつ、工程(A)と工程(B)を順次行うことを特徴とするスラグの処理方法。
[8]上記[1]〜[7]のいずれかの処理方法において、工程(B)で使用された蒸気を、熱源用流体として回収することを特徴とするスラグの処理方法。
【0009】
[9]溶融スラグを回転する冷却ドラムに接触させて冷却し、板状、柱状または細片状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融スラグを冷却処理し、該冷却処理後の高温のスラグに対して、上記[1]〜[8]のいずれかの処理を行うことを特徴とするスラグの処理方法。
[10]溶融スラグを回転する1対の冷却ドラムで圧延しつつ冷却し、板状、柱状または細片状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融スラグを冷却処理し、該冷却処理後の高温のスラグに対して、上記[1]〜[8]のいずれかの処理を行うことを特徴とするスラグの処理方法。
[11]上記[9]または[10]の処理方法において、冷却ドラムが水冷式であり、該冷却ドラムを通過した冷却水の一部を工程(A)の散水に用いることを特徴とするスラグの処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスラグ処理方法によれば、高温の製鋼スラグや鉱石溶融還元スラグに散水し、スラグ顕熱を利用して発生させた蒸気により、当該スラグのエージング処理を行うものであるため、スラグの冷却とエージング処理を効率的に且つ低コストに行うことができる。しかも、散水により蒸気を発生させる工程とこの蒸気を用いてエージング処理する工程を異なる場所で行うため、エージング処理の温度管理が容易であり、最適な温度条件で蒸気エージング処理を行うことができる。このため、スラグを特に効率的にエージング処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のスラグ処理方法は、製鋼スラグ、鉱石溶融還元スラグの中から選ばれる1種以上のスラグを冷却およびエージング処理する方法であり、高温のスラグに散水する工程Aと、工程Aでの散水により発生した蒸気を、散水により冷却されたスラグと接触させることにより、スラグをエージング処理する工程Bとを有し、工程Aとこの工程で発生した蒸気を用いる工程Bを異なる場所で行うものである。このような本発明法の形態としては、例えば、以下のようなものがある。
【0012】
(イ)処理容器内を移送中のスラグに対して工程Aと工程Bを順次行い、工程Aで発生した蒸気を、工程Aでの散水位置よりもスラグ移送方向下流側においてスラグと接触させることにより、工程Bを行う処理方法。
(ロ)処理容器X1,X2を用い、スラグを処理容器X1、処理容器X2の順に移動させ、処理容器X1内で工程A、処理容器X2内で工程Bを順次行う処理方法であって、処理容器X1内での後行チャージのスラグに対する工程Aで発生した蒸気を処理容器X2内に導入し、処理容器X2内での先行チャージのスラグに対する工程Bに用いる処理方法。
(ハ)処理容器Xa,Xbを用い、各処理容器Xa,Xb内でそれぞれ工程Aと工程Bを順次行うとともに、同時期に一方の処理容器XaまたはXbにおいて工程Aを、他方の処理容器XbまたはXaにおいて工程Bをそれぞれ行うようにし、一方の処理容器XaまたはXb内での工程Aで発生した蒸気を、他方の処理容器XbまたはXaに導入する処理方法。
なお、上記(イ)の処理方法において、処理容器内のスラグ移送手段としては適宜なものを使用でき、例えば、ロータリーキルン方式で傾斜した円筒を回転させて移送する機構、コンベア機構等を採用できる。
【0013】
処理の対象となる製鋼スラグや鉱石溶融還元スラグとしては、精錬工程や鉱石溶融還元工程で生じた際の顕熱を保有した高温状態のスラグであって、溶融スラグ、半溶融スラグ、部分凝固スラグ、半凝固スラグ、凝固スラグのいずれかである。ここで部分凝固スラグとは、表層のみが凝固し、内部が溶融状態にあるようなスラグである。
製鋼スラグとしては、転炉脱炭スラグ、溶銑予備処理スラグ(例えば、脱燐スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグなど)、電気炉スラグ、鋳造スラグなどが挙げられる。また、そのなかでも特に、スラグ塩基度[質量比:%CaO/%SiO]:3〜5程度の製鋼スラグには遊離CaO相が存在しているので、本発明法の適用が特に有効である。
また、鉱石溶融還元スラグとしては、鉄鉱石、クロム鉱石などの鉱石溶融還元スラグなどが挙げられる。鉱石溶融還元スラグには遊離MgO相が比較的多く含まれる場合があり、この遊離MgO相により、さきに述べたような遊離CaO相による問題と同様の問題を生じるおそれがあるので、本発明法の適用が有効である。
【0014】
以下、本発明の実施形態を、製鋼スラグを処理する場合を例に説明する。
本発明のスラグ処理(工程A,B)は処理容器内などのような閉鎖空間内で行われる。処理容器を使用する場合、容器の形態や構造に特別な制約はないが、蒸気を保持できる程度の気密性を有することが必要である。
本発明において、工程Aでは高温の製鋼スラグに散水が行われ、スラグを冷却するとともに水蒸気を発生させる。散水方法は任意であり、例えば、多孔ノズルからシャワー状やスプレー状に散布したり、ミスト状態で散布する方法などが適用できる。スラグへの散水量は、装入スラグの温度と量、発生させる蒸気量等を考慮し、容器内のスラグ表面温度が500℃程度となるように制御すれば、工程Bでのエージングに好適な条件となる。
次いで、工程Bでは、前記工程Aでの散水により発生した蒸気を、散水により冷却された製鋼スラグと接触させてエージング処理を行うが、本発明では、工程Aとこの工程で発生した蒸気を用いる工程Bを異なる場所で行う。これにより、製鋼スラグを適切に温度管理することができ、最適な温度でエージング処理を行うことができる。また、工程Bは工程Aで発生した蒸気で製鋼スラグを冷却することになり、工程Bの間に製鋼スラグから奪った熱で蒸気の温度が高くなり、過熱蒸気として回収できる。
【0015】
本発明では、(a)精錬工程で生じた際のスラグ顕熱を利用して発生させた蒸気でエージング処理を行う(すなわち、外部からの熱エネルギー源を用いることなく蒸気エージングを行う)こと、(b)散水により蒸気を発生させる工程とこの蒸気を用いてエージング処理する工程を異なる場所で行うため、エージング処理の温度管理が容易であり、最適な温度条件で蒸気エージング処理を行うことができること、により製鋼スラグを短時間で効率的に且つ低コストに冷却およびエージング処理することができる。
また、エージング処理により水和反応する際の膨張でスラグが粒状に崩壊して細粒化するため、エージング処理後の破砕工程を軽減若しくは省略することができる。したがって、処理時間などのエージング処理条件を適宜選択することにより、製鋼スラグを粒状に崩壊させ、破砕工程を経ることなく粒状スラグを得ることができる。
【0016】
本発明では、水和反応(エージング処理)には無効なスラグ高温域において、散水によりなるべく蒸気を大量に発生させ、スラグ温度が降下して水和反応(エージング処理)に最適温度範囲となった時に、その発生させた蒸気をスラグに接触させるように、工程A,Bを次のような温度条件で行うことが好ましい。
すなわち、工程Aでは、表面温度が700℃以上、さらに好ましくは900℃以上の製鋼スラグに散水を行って、100℃以上、さらに好ましくは150℃以上の蒸気を発生させることが好ましい。また、工程Bでは、製鋼スラグが200〜500℃、さらに好ましくは400〜500℃の表面温度を有するうちに蒸気と接触させてエージング処理を行うことが好ましい。以上のような温度条件を採用することにより、特に効率的且つ経済的なスラグ処理が可能となる。
【0017】
表面温度が700℃以上、好ましくは900℃以上の製鋼スラグに散水することで、100℃以上の高温の蒸気を安定して発生させることができる。また、蒸気が接触する際の製鋼スラグの温度がある程度高い方が、効率的なエージング処理を行うことができ、このため製鋼スラグが200〜500℃の表面温度を有するうちに蒸気と接触させてエージング処理を行うことで処理効率を高めることができる。
図1は、常温〜700℃の炉内で水蒸気を流して、スラグにエージングを施した場合のスラグの表面温度と、蒸気エージングによる膨張抑制の効果(水蒸気エージングを0.5時間、2時間、24時間実施した後のスラグの膨張率)との関係を調べたものである。スラグの膨張率は、JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」付属書2に記載の鉄鋼スラグの水浸膨張試験方法で測定した。
【0018】
製鋼スラグに含まれる遊離CaO相は、エージング処理において水(蒸気)と反応してCa(OH)となるが、この反応は、図1に示すようにスラグ表面温度が400℃程度までは温度が高いほど反応速度が速くなり、エージングが進む。しかし、これよりも高温になると今度は逆にCa(OH)が分解して、CaOとHOになるため、400℃以上、特に500℃超ではCaOの水和反応は遅くなり始め、600℃以上になると水和反応は起きなくなる。したがって、蒸気と接触してCaOの水和反応を促進するには、スラグ表面温度が200〜500℃程度が好適となる。
したがって、水和反応に無効なスラグ表面温度が700℃以上のできるだけ高い温度のうちに散水して蒸気を発生させ、スラグ表面温度が200〜500℃でスラグと蒸気を接触させて水和反応を促進する方法が、最も効率的にスラグの保有する熱を利用していることになる。
また、高温の蒸気を発生させるという点からは、散水によるスラグの冷却は、スラグ表面温度500℃以上で完了させることが好ましい。
以上のような水和反応促進効果は、遊離CaO相のみならず、遊離MgO相に対しても有効である。
【0019】
本発明法では、処理容器内の蒸気を熱源用流体として回収することが好ましく、これによりスラグ顕熱を効率的に回収でき、製鉄所のエネルギー効率を高め且つCOガス発生量を削減することができる。
処理容器から取り出された蒸気は、適宜な熱源用流体として利用することができ、例えば、原料・燃料・副原料・廃棄物等の乾燥・予熱用熱源、給湯機用熱源、蓄熱材への供給熱源、吸着式冷凍機の再生用熱源、炭酸ガスその他の吸着装置の吸着材再生熱源などとして利用することができる。
【0020】
次に、上述した(イ)〜(ハ)として例示した本発明の具体的な形態について説明する。
図2は、上述した(イ)の形態に関するものであり、処理容器として回転式の筒状処理容器(回転ドラム)を用いた本発明法の一実施形態を模式的に示すものである。
この筒状処理容器1は、一端側にスラグ装入部2、他端側にスラグ取出部3と蒸気取出部4を備えるとともに、一端側から他端側に向かって下向きに傾斜し、筒軸を中心に回転可能である。この筒状処理容器1の基本構造は、所謂ローターキルンなどの構造と同様であり、筒状処理容器1内に装入された材料(スラグ)は、長手方向で傾斜した筒状処理容器が回転することにより、容器長手方向で順次移送される。筒状処理容器1内のスラグ移送方向上流部には、散水機構5が設置されている。
【0021】
なお、筒状処理容器1によるスラグの処理は、(a)製鋼スラグをバッチ式に装入・取出する方式、(b)製鋼スラグの装入・取出を適当な時間間隔で行い、処理容器内にスラグを滞留させる方式、(c)製鋼スラグの装入を適当な時間間隔で行うとともに、製鋼スラグの取出を連続的に行う方式、(d)製鋼スラグの装入を連続的に行うとともに、製鋼スラグの取出を適当な時間間隔で行う方式、(e)製鋼スラグの装入・取出を連続的に行う方式、のうちいずれでもよい。これらのうち(a)以外の方式は、後から装入した製鋼スラグに散水して発生した蒸気が、その前に装入した製鋼スラグのエージング処理(遊離CaOの水和反応)に利用される。
【0022】
本実施形態では、回転する筒状処理容器1のスラグ装入部2から容器内に高温の製鋼スラグSaが装入される。この製鋼スラグSaは、精錬工程で生じた際の顕熱を保有した高温状態のスラグであれば、溶融スラグ、部分凝固スラグ、凝固スラグのいずれであってもよい。筒状処理容器1が回転しているので、装入された製鋼スラグSaの容器内壁への付着が防止される。筒状処理容器1の回転速度は任意であり、例えば2〜5回転/分程度でもよい。
【0023】
筒状処理容器1内に装入された高温の製鋼スラグSaには、散水機構5から散水がなされ、この散水により蒸気が発生する。これが本発明の工程Aである。散水で発生した蒸気は、処理容器内をスラグ移送方向下流側に流れ、一方、散水によりある程度の温度まで冷却・降温した製鋼スラグSaも、容器長手方向で順次移動する。この移動中の製鋼スラグに、同じ方向に流れる前記蒸気が接触し、両者の間で熱交換がなされるとともに、蒸気によりスラグ中の遊離CaOが水和反応を生じるエージング処理がなされる。これが本発明の工程Bである。この際、筒状処理容器の回転によりスラグが撹拌されるので、蒸気との接触が促進され、遊離CaOの水和反応が効率的に生じることになる。なお、本実施形態を含む本明細書に記載の実施形態では、工程A(散水冷却の開始前、散水冷却中、散水冷却後を含む)におけるスラグを“スラグSa”、工程B(エージング処理の開始前、エージング処理中、エージング処理後を含む)におけるスラグを“スラグSb”と呼ぶ。
また、水和反応する際の体積膨張(密度の低下による体積膨張)によりスラグが砕け(崩壊する)、新しい遊離CaOがスラグ表面に露出して蒸気と接触し、さらに水和反応が進み、スラグは徐々に砕けて細粒化が進む。このように製鋼スラグSbはエージング処理により徐々に細粒化するため、散水後における製鋼スラグの処理容器内での滞留時間(エージング処理時間)を適宜調整することにより、製鋼スラグSbを十分に細粒化し、エージング処理後の破砕工程を省略することができる。
【0024】
筒状処理容器1内でのエージング処理を終えたスラグSbは、スラグ取出部3から取り出されるとともに、蒸気は蒸気取出部4から取り出され、必要に応じて熱源用流体として利用される。
本実施形態においても、さきに述べたような理由から、表面温度が700℃以上、好ましくは900℃以上の製鋼スラグに散水を行って100℃以上、好ましくは150℃以上の蒸気を発生させ、製鋼スラグが200〜500℃、好ましくは400〜500℃の表面温度を有するうちに蒸気と接触させてエージング処理を行うことが好ましい。
【0025】
図3は、筒状処理容器1(回転ドラム)を用いたより具体的な実施形態を示すものである。この実施形態では、筒状処理容器1のスラグ装入部2の前面に、バッチ装入用のホッパー部6が設けられている。このホッパー部6の入口側には蓋600が、また、前記スラグ装入部2と連通した出口側には開閉ゲート610が、それぞれ設けられている。スラグ取出部3には開閉ゲート300が設けられ、また、蒸気取出部4には、蒸気管400が接続されている。また、スラグ装入部2側の容器端部から容器内に散水用配管500が導かれ、散水機構5に接続されている。
このような実施形態では、ホッパー部6に所定量の製鋼スラグSaを装入後、ホッパー部6の蓋600を閉じ、その後、開閉ゲート610を開き、ホッパー部6内の製鋼スラグSaの全量を、スラグ装入部2から処理容器内に装入する。装入された製鋼スラグSaには散水機構5から散水され、発生した蒸気により、さきに述べたようなエージング処理がなされる。エージング処理が完了した製鋼スラグSbと蒸気が、スラグ取出部3と蒸気取出部4からそれぞれ取り出される。
【0026】
なお、この実施形態では、蒸気取出部4の排気口401が処理容器径方向の軸心近くに設けられ、処理容器内のスラグSbが常に排気口401を覆うようにしてある。これにより、処理容器内の蒸気はスラグSbの中を通って排気口401から排出されるので、スラグとの熱交換により蒸気温度を高めることができ、より高温の蒸気を回収することができる。なお、前記排気口401にはスラグ侵入防止用のネット(図示せず)が設けられる。
以上のような(イ)の形態のスラグ処理方法では、処理容器内で移送中のスラグに対して、散水とこれにより生じた蒸気によるエージング処理を連続的に施すことにより短時間でCaOの水和反応を進行させてエージングを終了することができる。
【0027】
図4は、上述した(ロ)の形態に関するものであり、本発明法の一実施形態を模式的に示すものである。
このスラグ処理の形態では、処理容器X1と処理容器X2を用い、製鋼スラグを処理容器X1、処理容器X2の順に移動させて、処理容器X1内で工程A、処理容器X2内で工程Bを順次行う。そして、処理容器X1内での後行チャージの製鋼スラグに対する工程Aで発生した蒸気を処理容器X2内に導入し、処理容器X2内での先行チャージの製鋼スラグに対する工程Bに用いる。
【0028】
前記処理容器X1は、本実施形態では、図2の筒状処理容器と同様の筒状回転ドラム式の容器で構成されている。この処理容器X1は、一端側にスラグ装入部2f、他端側にスラグ取出部3fと蒸気取出部4fを備えるとともに、一端側から他端側に向かって下向きに傾斜し、筒軸を中心に回転可能である。この処理容器X1の基本構造は、所謂ローターキルンなどの構造と同様であり、処理容器X1内に装入された材料(スラグ)は、長手方向で傾斜した処理容器が回転することにより、容器長手方向で順次移送される。処理容器X1内のスラグ移送方向上流部には、散水機構5fが設置されている。
【0029】
前記スラグ装入部2fには開閉ゲート610fが、スラグ取出部3fには開閉ゲート300fが設けられ、また、蒸気取出部4fには、蒸気配管7の一端が接続されている。また、スラグ装入部2f側の容器端部から容器内に散水用配管500fが導かれ、散水機構5fに接続されている。
前記処理容器X2は、本実施形態ではタンク式の容器で構成され、上蓋20を開放することによりスラグの出し入れを行うことができる。容器の底部に蒸気導入部8が設けられ、この蒸気導入部8に前記蒸気配管7の他端が接続されている。また、処理容器X2の上部には蒸気取出部9が設けられ、この蒸気取出部9に蒸気管90が接続されている。
【0030】
なお、処理容器X1によるスラグの処理は、(a)製鋼スラグをバッチ式に装入・取出する方式、(b)製鋼スラグの装入・取出を適当な時間間隔で行い、処理容器内には常にスラグを滞留させる方式、(c)製鋼スラグの装入を適当な時間間隔で行うとともに、製鋼スラグの取出を連続的に行う方式、(d)製鋼スラグの装入を連続的に行うとともに、製鋼スラグの取出を適当な時間間隔で行う方式、(e)製鋼スラグの装入・取出を連続的に行う方式、のうちいずれでもよい。
【0031】
本実施形態では、回転する処理容器X1のスラグ装入部2fから容器内に高温の製鋼スラグSaが装入される。この製鋼スラグSaは、精錬工程で生じた際の顕熱を保有した高温状態のスラグであれば、溶融スラグ、部分凝固スラグ、凝固スラグのいずれであってもよい。処理容器X1が回転しているので、装入された製鋼スラグSaの容器内壁への付着が防止される。処理容器X1の回転速度は任意であり、例えば2〜5回転/分程度でもよい。
処理容器X1内に装入された高温の製鋼スラグSaには、散水機構5fから散水がなされ、この散水により蒸気が発生する。これが本発明の工程Aである。この散水で発生した蒸気は蒸気取出部4fから取り出され、蒸気配管7により処理容器X2に送られる。
【0032】
処理容器X2には、すでに処理容器X1内で工程Aの散水冷却がなされた先行チャージの製鋼スラグが入れられており、この処理容器X2内に、前記処理容器X1内での後行チャージの製鋼スラグに対する工程Aで発生した蒸気が、上記のように蒸気配管7を通じて導入され、この蒸気によるエージング処理が行われる。これが本発明の工程Bである。
蒸気導入部8から処理容器X2内に導入された蒸気は、製鋼スラグSb内を通って蒸気取出部9から蒸気管90に排出され、必要に応じて熱源用流体として利用される。この実施形態でも、スラグとの熱交換により蒸気温度を高めることができ、より高温の蒸気を回収することができる。
【0033】
処理容器X2内でのエージング処理を終えた製鋼スラグSbは、容器から取り出される。一方、処理容器X1で散水冷却を終えた後行チャージの製鋼スラグSaは、スラグ取出部3fから取り出され、適当な搬送・装入手段により処理容器X2に搬送・装入されるとともに、次のチャージの高温状態の製鋼スラグSaが処理容器X1に装入され、処理容器X1,X2において、上述したような処理(工程A,B)繰り返される。
なお、処理容器X2内でのエージング処理の原理や作用効果、工程A,Bでの好ましい温度条件などは、図2および図3の実施形態で述べたことと同様である。
【0034】
図5は、上述した(ハ)の形態に関するものであり、本発明法の一実施形態を模式的に示すものである。
このスラグ処理の形態では、処理容器Xa,Xbを用い、各処理容器Xa,Xb内でそれぞれ工程Aと工程Bを順次行うとともに、同時期に一方の処理容器XaまたはXbにおいて工程Aを、他方の処理容器XbまたはXaにおいて工程Bをそれぞれ行うようにする。そして、一方の処理容器XaまたはXb内での工程Aで発生した蒸気を、他方の処理容器XbまたはXaに導入する。
【0035】
各処理容器Xa,Xbは、本実施形態ではタンク式の容器で構成され、上蓋20a,20bを開放することによりスラグの出し入れを行うことができる。各処理容器Xa,Xbの上部には、容器内に散水を行うための散水ノズル21a,21bが設けられている。また、各処理容器Xa,Xb底部には蒸気導入部22a,22bが、上部には蒸気取出部23a,23bが、それぞれ設けられている。処理容器Xaの蒸気導入部22aと処理容器Xbの蒸気導入部22bには、蒸気配管24の各端部が接続され、この蒸気配管24で連絡されている。また、蒸気取出部23a,23bには、それぞれ蒸気管27a,27bが接続され、これら蒸気管27a,27bには、それぞれ開閉弁V1,V4が設けられている。
【0036】
蒸気配管25の各端が、前記開閉弁V1から蒸気取出部23aまでの間の蒸気管27aの管部と、前記開閉弁V4から蒸気取出部23bまでの間の蒸気管27bの管部にそれぞれ接続され、両管部を連絡している。さらに、蒸気配管26の各端が、蒸気配管24の途中と蒸気配管25の途中にそれぞれ接続され、両蒸気配管24,25を連絡している。
蒸気配管25において、蒸気配管26の接続部の両側の管部25a,25bにそれぞれ開閉弁V2,V5が設けられ、また、蒸気配管24において、蒸気配管26の接続部の両側の管部24a,24bにそれぞれ開閉弁V3,V6が設けられている。
【0037】
本実施形態では、各処理容器Xa,Xb内にそれぞれ製鋼スラグSaを装入し、それぞれの処理容器Xa,Xb内で工程Aと工程Bを順次行うものであるが、同時期に一方の処理容器XaまたはXbにおいて工程Aを、他方の処理容器XbまたはXaにおいて工程Bをそれぞれ行うようにする。処理容器Xa,Xbに装入される製鋼スラグSaは、精錬工程で生じた際の顕熱を保有した高温状態のスラグであれば、溶融スラグ、部分凝固スラグ、凝固スラグのいずれであってもよい。
【0038】
図5に示す状態では、処理容器Xa内では製鋼スラグSaに散水ノズル21aから散水(工程A)が行われている。一方、処理容器Xb内には、前記処理容器Xa内での工程Aで生じた蒸気が導入され、製鋼スラグSbのエージング処理(工程B)が行われている。この時は、開閉弁V1,V5,V3が閉、開閉弁V2,V6,V4が開となり、処理容器Xa内で発生した蒸気は、蒸気管27a,蒸気配管25の管部25a,蒸気配管26,蒸気配管24の管部24bを経由して蒸気導入部22bから処理容器Xb内に導入される。この蒸気は、スラグ内を通って蒸気取出部23bから蒸気管27bに排出され、必要に応じて熱源用流体として利用される。この実施形態でも、スラグとの熱交換により蒸気温度を高めることができ、より高温の蒸気を回収することができる。
【0039】
処理容器Xa内での工程A,処理容器Xb内ので工程Bが完了した段階で、処理容器Xbの製鋼スラグSbを排出し、同容器に新たな高温の製鋼スラグSaを装入し、今度は、処理容器Xb内で製鋼スラグSaに散水ノズル21bから散水(工程A)が行われ、処理容器Xa内では、前記処理容器Xb内での工程Aで生じた蒸気が導入され、製鋼スラグSbのエージング処理(工程B)が行われる。この時は、開閉弁V4,V2,V6が閉、開閉弁V5,V3,V1が開となり、処理容器Xb内で発生した蒸気は、蒸気管27b,蒸気配管25の管部25b,蒸気配管26,蒸気配管24の管部24aを経由して蒸気導入部22aから処理容器Xa内に導入される。この蒸気は、スラグSb内を通って蒸気取出部23aから蒸気管27aに排出され、必要に応じて熱源用流体として利用される。
以上を繰り返すことにより、製鋼スラグを移動させることなく、本発明の工程A,Bを行うことができる。
なお、各処理容器内でのエージング処理の原理や作用効果、工程A,Bでの好ましい温度条件などは、図2および図3の実施形態で述べた内容と同様である。
【0040】
本発明法により処理されたスラグは適宜な用途に利用することができ、例えば、エージング処理により十分に細粒化したものについては、水和硬化物等の骨材やセメント混和材などに利用できる。
本発明法では、溶融スラグをそのまま処理することも可能であるが、スラグのハンドリング性や水蒸気爆発の防止などの面で、溶融スラグをある程度冷却し、非溶融状態の高温スラグとした上で、上述したようなスラグ処理を行った方が有利な場合がある。
溶融スラグを非溶融状態の高温スラグとするには、一般的に行われている溶融スラグをスラグ処理ヤードに放流して冷却する方法、溶融スラグをパン内に入れて冷却する方法、などの方法を適用でき、これらの場合、スラグ表面がある程度凝固し、未だ高温(好ましくは表面温度が700℃以上)のうちにショベルで崩し、本発明を実施する処理容器に装入すればよい。
【0041】
一方、溶融スラグを非溶融状態の高温スラグとするのに、下記(i)または(ii)の方法を採ることにより、溶融スラグを効率的に冷却処理でき、しかもハンドリングが容易な板状または細片状の高温スラグにすることができるので、特に好ましい。
(i)溶融スラグを回転する冷却ドラムに接触させて冷却し、板状、柱状または細片状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融した製鋼スラグを冷却処理する。
(ii)溶融スラグを回転する1対の冷却ドラムで圧延しつつ冷却し、板状、柱状または細片状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融した製鋼スラグを冷却処理する。
そして、以上のような(i)または(ii)の方法で冷却処理された高温の製鋼スラグに対して、上述したような本発明法によるスラグ処理を施すものである。また、上記(i)、(ii)の方法は、スラグの目的・用途に応じて所定の粒径を得ようとする場合にも有効である。
【0042】
まず、上記(i)のスラグの冷却処理法について説明する。
この冷却処理法では、例えば、図6(装置を模式的に示す正面図)に示すように、水平方向で並列し、対向する外周部分が上向きに回転する回転方向を有する1対の冷却ドラム10a,10bを備えたスラグ冷却処理装置を用いる。
前記冷却ドラム10a,10bは、駆動装置(図示せず)により上記の回転方向に回転駆動する。冷却ドラム10a,10bの内部には、冷媒を通すための流路を有する内部冷却機構(図示せず)が設けられ、この内部冷却機構に対する冷媒供給部と冷媒排出部がドラム軸の各端部に各々設けられている。なお、冷媒には一般に水(冷却水)が用いられるが、他の流体(液体または気体)を用いてもよい。
【0043】
この方式では、1対の冷却ドラム10a,10bの上部外周面間に上方(図中、11はスラグ鍋、12はスラグ樋)から溶融スラグSが供給され、スラグ液溜まりgが形成される。このスラグ液溜まりgから、回転する冷却ドラム10a,10bの表面に付着することで溶融スラグSが持ち出され、この溶融スラグSは冷却ドラム面に付着した状態で適度な凝固状態(例えば、半凝固状態または表層のみ凝固した状態)まで冷却された後、所定のドラム回転位置において自重により冷却ドラム面から剥離し、板状などの高温スラグSxとして回収される。冷却ドラム面から剥離したスラグSxは搬送コンベア13で搬送され、スラグバケット14に収容される。
なお、スラグSxを搬送コンベア13からスラグバケット14などに払い出す際には、必要に応じて、スラグSxを適当な手段で粗破砕してもよい。
【0044】
また、図7(装置を模式的に示す正面図)に示すような冷却ドラム10a,10bの上方に堰を有する冷却処理装置を用いてもよい。この冷却処理装置は、1対の冷却ドラム10a,10bの上方に各々冷却ドラム15a,15bからなる堰16を設け、これら1対の冷却ドラム10a,10bの上部外周面間と1対の冷却ドラム15a,15b(堰16)間にスラグ液溜まり部Gを形成する。前記冷却ドラム15a,15bは、下部外周面が反スラグ液溜まり部G方向に回転する回転方向を有する。各冷却ドラム15a,15bと冷却ドラム10a,10b間には、スラグ液溜まり部G内の溶融スラグSが押し出される開口18を有し、この開口18からスラグが押し出されることにより、非溶融状態の高温スラグSxが得られる。
【0045】
前記冷却ドラム10a,10bおよび冷却ドラム15a,15b(堰16)の幅方向の両端側には、スラグ液溜まり部Gの両端を塞ぐための堰板17が、冷却ドラム10a,10bおよび冷却ドラム15a,15bの端面に接するようにして設けられている。この堰板17は、適当な支持部材を介して装置本体(基体)に支持される。
なお、前記堰体16は、冷却ドラム15a,15bではなく、固定式の壁体で構成してもよい。
【0046】
このような冷却処理装置では、1対の冷却ドラム10a,10bの上部外周面間と1対の冷却ドラム15a,15b(堰16)間にスラグ液溜まり部Gを形成することで、スラグ液溜まり部Gでの溶融スラグの滞留時間を長くできるので、溶融スラグの冷却を効果的に促進させることができ、適切に冷却されたスラグを開口18から押し出すことができる。また、本実施形態のように堰16を、下部外周面が反スラグ液溜まり部G方向に回転する回転方向を有する冷却ドラム15a,15bで構成することにより、溶融スラグの冷却をより効果的に促進することができ、厚肉のスラグ凝固体をより安定的に得ることができる。
【0047】
また、図7に示すような冷却ドラム15a,15b(堰16)を有する冷却処理装置において、冷却ドラム15a,15bの外周面に溝を設け、柱状または細片状(塊状)の高温スラグが得られるようにしてもよい。図8および図9(装置の一部を模式的に示す正面図および側面図)は、そのような冷却処理装置の一例を示すもので、冷却ドラム15a,15bの外周面に複数の環状溝150をドラム長手方向で間隔的に形成するともに、これら環状溝150の底面をドラム周方向で凹凸状(歯車状)に構成し、冷却ドラム15a,15bの外周面を冷却ドラム10a,10bの外周面に当接させることで、環状溝150により孔型状の開口18が形成されるようにしたものである。この実施形態では、環状溝150の底面の凹部により開口18が間欠的に大きくなる。
【0048】
本実施形態では、環状溝150で形成される複数の孔型状の開口18からスラグSxが押し出される。このスラグSxは、環状溝150の底面の凹部により開口18が間欠的に大きくなるので、塊状部bが数珠状に連なるような形状で押し出される。このような形状のスラグSxは、冷却ドラム10a,10bから剥離した後、自重によって塊状に分離するか、或いは小さい外力により簡単に塊状に分離する。
なお、図9では、環状溝150の底面に周方向に形成される凹凸を省略してあるが、底面の凸部位置を仮想線で示してある。
【0049】
また、図10(装置を模式的に示す正面図)に示すように、冷却処理装置は単一の冷却ドラムを備えたものでもよい。この冷却処理装置は、冷却ドラム10と、冷却ドラム径方向の一方の側に配置される樋19を有している。この樋19は、その先端部が冷却ドラム10のドラム面100に接するか若しくは近接するように設けられ、樋19の先端部分とドラム面100とによりスラグ液溜まり部Gを形成し、冷却ドラム10の回転に伴い、スラグ液溜まり部G内の溶融スラグSがドラム面100に付着して持ち出されるようにしてある。スラグ液溜まり部Gを形成するために、樋19の先端部分は上側(水平状)に屈曲ないし湾曲した受け皿状の形態を有するとともに、樋19の先端部が下部ドラム面に接するか若しくは近接している。
【0050】
また、スラグ液溜まり部Aを形成する樋の先端部分の側壁190は、溶融スラグSを保持するために、所定の高さを有している。
前記冷却ドラム10は、駆動装置(図示せず)により、その上部ドラム面が反樋方向に回転するように回転駆動する。冷却ドラム10の内部には、冷媒を通すための流路を有する内部冷却機構(図示せず)が設けられ、この内部冷却機構に対する冷媒供給部と冷媒排出部がドラム軸の各端部に各々設けられている。なお、冷媒には一般に水(冷却水)が用いられるが、他の流体(液体または気体)を用いてもよい。
樋19の先端部は、ドラム面100に接してもよいし、小さい間隙を形成してドラム面100に近接させてもよい。後者の場合には、熱膨張を考慮して溶融スラグSが漏れない程度の隙間をもって近接させることが好ましいが、溶融スラグSの漏れを確実に防止するため、その間隙部分に対して樋19の下方に設けられたガス噴射手段30からパージガスを噴射することが好ましい。
【0051】
以上のような冷却処理装置を用いた溶融スラグの冷却処理では、樋19に供給された溶融スラグSはスラグ液溜まり部Gに流入し、ここで適当な時間滞留することで冷却された後、冷却ドラム10のドラム面100に付着して持ち出され、ドラム面100に付着した状態で適度な凝固状態(例えば、半凝固状態または片面若しくは両面の表層のみが凝固した状態)まで冷却された後、所定のドラム回転位置において自重により冷却ドラム面から自然に剥離し、冷却ドラム径方向の他方の側に排出される。
【0052】
以上のような単一の冷却ドラム10を有する冷却処理装置では、冷却ドラム10に溶融スラグSによる大きな落下荷重がかからないため、冷却ドラム10を損耗させることなく溶融スラグSを大量処理することができる。また、単一の冷却ドラム10のドラム面100から剥離した冷却処理済みのスラグSxが一方向に排出されるので、冷却処理済みスラグの取り扱い・後処理などが容易である。
なお、単一の冷却ドラム10を有する冷却処理装置は、適当な高さの樋19から冷却ドラム1の上部ドラム面に溶融スラグSを供給する方式、スラグ液溜まり部Gを形成することなく、溶融スラグSが樋19の先端部からドラム面100に直接供給されるようにする方式、などを適用してもよい。
【0053】
次に、上記(ii)のスラグの冷却処理方法について説明すると、この冷却処理法では、例えば、図11(装置を模式的に示す正面図)に示すように、水平方向で間隙68を有して並列し、対向する外周部分が下向きに回転する回転方向を有する1対の冷却ドラム60a,60bを備えた冷却処理装置を用い、1対の冷却ドラム60a,60bの上部外周面間に溶融スラグを供給してスラグ液溜まりgを形成し、このスラグ液溜まりg内の溶融スラグまたは/およびスラグ液溜まりgに流入途中の溶融スラグを冷却手段61で冷却するとともに、スラグ液溜まりgから間隙68内に流入する溶融スラグを1対の冷却ドラム60a,60bで冷却しつつ圧延し、少なくとも表層が凝固したスラグを間隙68から下方に抜き出す。なお、本タイプの冷却処理方法において、1対の冷却ドラム60a,60bでスラグを圧延するとは、冷却ドラム60a,60bの間隙68から少なくとも表面が凝固した状態でスラグを下方に抜き出すことを指す。
【0054】
前記冷却ドラム60a,60bは、駆動装置(図示せず)により上記の回転方向に回転駆動する。前記冷却ドラム60a,60bの内部には、冷媒を通すための流路を有する内部冷却機構(図示せず)が設けられ、この内部冷却機構に対する冷媒供給部と冷媒排出部がドラム軸の各端部に各々設けられている。なお、冷媒には一般に水(冷却水)が用いられるが、他の流体(液体または気体)を用いてもよい。
【0055】
冷却ドラム幅方向の両端側には、冷却ドラム60a,60bの上部外周面間に形成される断面V溝状の凹部(スラグ液溜まりGが形成される凹部)の両端を塞ぐための堰板67が、冷却ドラム60a,60bの端面に接するようにして設けられている。この堰板67は、適当な支持部材を介して装置本体(基体)に支持される。
1対の冷却ドラム60a,60bの下方には、冷却ドラム60a,60bに冷却されつつ圧延されて間隙68から抜き出されたスラグSxを受け取り、搬送するための搬送コンベア64が配置されている。
【0056】
冷却ドラム60a,60bの上側には、スラグ液溜まりA内の溶融スラグSまたは/およびスラグ液溜まりAに流入途中の溶融スラグSを冷却するための冷却手段61が設けられている。この冷却手段61は、例えば、溶融スラグSに流体または/および粉体を供給する手段で構成することができる。
また、必要に応じて、冷却ドラム60a,60bと搬送コンベア64との間に、冷却ドラム60a,60bの間隙68から抜き出されたスラグSxを冷却するための冷却装置65を設けることができる。この冷却装置65は、例えば、スラグSxに水や空気などの冷却用流体を吹き付けるノズルなどにより構成できる。
【0057】
以上のような冷却処理装置を用いた溶融スラグの冷却処理では、対向する外周部分が下向きに回転する冷却ドラム60a,60bの上部外周面間(断面V溝状の凹部)に溶融スラグSが供給され、スラグ液溜まりgが形成される。このスラグ液溜まりg内の溶融スラグSまたは/およびスラグ液溜まりgに流入途中の溶融スラグSが冷却手段61で冷却されるとともに、スラグ液溜まりAから間隙g内に流入する溶融スラグSが1対の冷却ドラム60a,60bで冷却されつつ圧延される。この圧延により、粘性のある溶融スラグSが冷却ドラム幅方向で展伸され、効率的な冷却を行うことができる。
以上のような冷却手段61で冷却され、さらに冷却ドラム60a,60bにより冷却された溶融スラグSは、少なくとも表層が凝固した板状のスラグSxとして間隙68から下方に抜き出される。このスラグSxは、必要に応じて冷却装置65でさらに冷却される。
【0058】
図12は、冷却ドラムを備えた上記冷却処理装置を用いた本発明の一実施形態を示すもので、冷却処理装置として図10に示すような単一の冷却ドラム10を備えたものを利用したものである。この実施形態は、先に述べた(イ)の形態に属するものである。
冷却処理装置Mは、冷却ドラム10のドラム面100に付着した溶融スラグSを圧延してドラム幅方向に展伸させるための展伸ロール40を有するものであり、特に粘度が高い溶融スラグの冷却処理に好適なものである。展伸ロール40は、その外周面が、冷却ドラム10のドラム面100との間で所定の間隔を形成するようにして、支持アーム(図示せず)に回転自在に支持されている。
【0059】
冷却ドラム10のスラグ排出側には、冷却ドラム10から剥離し、搬送コンベア13で搬送中のスラグSa、さらには冷却ドラム10に付着したスラグや展伸ロール40のロール面に水ミストmを噴射して冷却するためのミスト供給手段41が設けられ、ここで散水冷却(工程A)がなされる。
散水冷却されたスラグを充填してエージング処理(工程B)するための充填槽42が設けられるとともに、前記搬送コンベア13から払い出されたスラグSaを充填槽42に搬送・装入するためのバケット式のコンベア43が設けられている。前記充填槽42は、頂部側からスラグおよび蒸気が装入され、底部側からスラグ・蒸気が取り出される。
冷却処理装置Mから充填槽42までが遮蔽体44で覆われ、この遮蔽体44と充填槽42の全体が実質的な処理容器を構成している。
【0060】
本実施形態では、図10に記載したようにして冷却処理装置Mにより溶融スラグSが冷却され、この冷却処理装置Mから排出されたスラグSaに対してミスト供給手段41から散水(水ミストの噴射)され、工程Aが行われる。この
ようにして散水冷却されたスラグSaは、コンベア43により充填槽42内にその頂部から装入されるとともに、前記工程Aで発生した蒸気も、頂部から充填槽42内に流入する。充填槽42内ではスラグ内を蒸気が通過する過程でエージング処理がなされ、工程Bが行われる。
【0061】
本発明法を実施するに当たって、溶融スラグの顕熱を効率的に熱回収することは、省エネルギーや排出COの削減の観点から特に好ましい。
図6〜図11に示すような冷却ドラムでスラグを冷却する場合、冷却ドラムに冷媒を使用することが冷却ドラムの耐久性等の観点から好ましく、その冷媒には一般に水が用いられる。この水は循環使用されるが、冷却ドラムにおいてスラグからの抜熱により水温が上昇する。したがって、水冷式の冷却ドラムを通過した冷却水(熱水)の一部を、本発明法で行う工程Aの散水に用いれば、スラグ顕熱を回収する上で有利になる。
【0062】
図13は、その実施形態を示すもので、45は冷却ドラム10a,10bに冷却水を循環させるための循環管路であり、この循環管路45に散水用配管500が接続され、冷却ドラム10a,10bを通過した冷却水の一部が散水用配管500を通じて、本発明法を行う処理容器Dに導かれ、散水機構5からスラグに散水(本発明の工程A)されるようにしている。
このように冷却ドラム10a,10bの冷却水の一部を取り出して、本発明の工程Aの散水に利用することにより、循環管路45の冷却水には常に補給水が入り(図中、46は冷却水の補給タンク、47は冷却水の冷却塔である)、水温が低下するため、冷却設備能力を小さくすることができる。
【0063】
本発明法を適用するスラグは、発生ままのスラグ組成であってもよいし、改質によりスラグ組成を調整したものでもよい。
スラグを溶融段階で改質する方法については、例えば、スラグ中のf-CaO量の低減を目的とする場合には、空気、酸素富化空気、酸素ガスなどの酸素または酸素含有ガスを用いることができる。このようなガスを溶融スラグに供給するとスラグ中のFeOが酸化され、これがf-CaOと結びついて2CaO・Feを形成するので、スラグ中のf-CaO量が低下する。
また、例えば、珪砂やフライアッシュなどのSiO源、アルミナレンガ屑などのAl源、酸化鉄粉や鉄鉱石粉などの酸化鉄源を溶融スラグに添加することにより、スラグ中のf-CaO量が低下する。
【実施例】
【0064】
○実施例1
[本発明例]
(i)冷却処理工程
(a)本発明例1
転炉脱炭精錬(転炉出鋼温度:1640〜1660℃)で発生した塩基度[質量比:%CaO/%SiO]が3.8の溶融スラグ(15t)をスラグ鍋でスラグ処理ヤードに移送し、このヤードに放流した。数時間後、放冷により表面が凝固したスラグの全量をショベルで搬送し、図3に示すような筒状処理容器Dに装入した。このときのスラグ表面温度は1000〜700℃であった。
【0065】
(b)本発明例2
図6に示すような冷却処理装置に対して図12に示すような展伸ロール40を付設した冷却処理装置Mを用い、転炉脱炭精錬(転炉出鋼温度:1640〜1660℃)で発生した塩基度[質量比:%CaO/%SiO]が3.8の溶融スラグ(15t)をスラグ鍋で前記冷却処理装置Mに搬送し、この装置で冷却処理した。この冷却処理装置Mの仕様および運転条件は以下のとおりである。
冷却ドラム10a,10b:外径1.6m×長さ(ドラム幅方向での長さ)3m、水冷式
展伸ロール40:外径0.3m
冷却ドラム10a,10b−展伸ロール40間のギャップ:5mm
冷却ドラム10a,10bの回転速度:3rpm
【0066】
この冷却処理では、スラグ鍋11内の溶融スラグを、スラグ樋12を介して約1t/minの供給速度で冷却ドラム10a,10bの上部外周面間の幅方向中央付近に約12分間に亘り供給した。なお、スラグ鍋11に混入した溶銑が冷却処理装置Mに供給されないようにするため、スラグ鍋11中に溶融スラグSが1/5程度残る段階で、冷却処理装置Mへの溶融スラグSの供給を停止した。
冷却ドラム面に供給される溶融スラグSは、粘性が高いために流動性に乏しく、しかも冷却ドラム10a,10bとの接触で急冷されるため、その供給位置ではドラム幅方向で1〜2m程度しか広がらないが、展伸ロール40により厚さが約10mmから5mmに圧延された結果、冷却ドラム幅方向のほぼ全長に亘り展伸され、高い冷却効率で溶融スラグSを冷却処理することができた。
冷却ドラム10a,10bから剥離し、搬送コンベア13上に移る際のスラグSxの表面温度を放射温度計で測定したところ、スラグ表面温度は700〜900℃であった。スラグSxは搬送コンベア13および他の搬送手段により、図3に示すような筒状処理容器Dに搬送・装入した。
【0067】
(ii)本発明法による処理工程
上記本発明例1,2において、図3に示す筒状処理容器Dへのスラグの装入は、所定の時間間隔毎に行い、処理容器内に滞留するスラグの総量を2バッチ分の約24〜30tとして、この滞留量を維持して連続的に処理した。
筒状処理容器D内では、さきに図2,図3について説明したように、高温スラグに対する散水(工程A)と発生した過熱蒸気によるエージング処理(工程B)を行った。筒状処理容器Dの仕様および処理条件は以下のとおりである。
・筒状処理容器のサイズ:内径3m×長さ10m
・処理容器回転速度:1rpm
・散水量:0.2m/t
処理が完了して細粒化したスラグをスラグ取出部3から取り出すともに、過熱蒸気を蒸気取出部4から取り出し、熱源用流体として回収した。このときの過熱蒸気の温度は200〜280℃であった。
本発明例1,2は、それぞれスラグの処理時間(処理容器内でのスラグの滞留時間)を変えて実施し、処理時間の影響を調査した。
【0068】
(iii)処理済みスラグの特性
取り出された処理済みスラグをJIS法の水浸膨張試験に供し、膨張特性を評価した。本発明例1,2におけるスラグの処理時間(処理容器内でのスラグ滞留時間)とスラグ膨張率との関係を図14に示す。未エージングの転炉脱炭精錬スラグの膨張率は5〜7%であったのに対して、本発明法を適用することにより、スラグ膨張率が効果的に低減したことが判る。スラグ処理時間が長いほどスラグ膨張率は低下し、スラグ処理時間が30分で0.5%以下となり、50分では0.1%以下まで低下する。
【0069】
[比較例]
転炉脱炭精錬(転炉出鋼温度:1640〜1660℃)で発生した塩基度[質量比:%CaO/%SiO]が3.8の溶融スラグ(15t)をスラグ鍋でスラグ処理ヤードに移送し、このヤードに放流した。その後、散水して冷却した後、ジョークラッシャーで粒径40mm以下に破砕した。
この冷却・破砕後のスラグに対して、現在一般的に行われている蒸気エージング処理を実施した。破砕後のスラグを図15に示すような蒸気エージング装置に約1000t積み付け、底部に埋め込まれた配管から蒸気を流して、蒸気エージングを行った。この蒸気エージングでは、スラグを100℃まで昇温させるのに6〜10時間かかり、スラグ温度が100℃に達した後、24〜96時間蒸気を流してスラグ温度100℃を維持した。この蒸気エージング処理に必要な蒸気は、製鉄所内の設備(CDQ等)で製造した蒸気を利用した。
この比較例は、エージング処理時間を変えて実施し、処理時間の影響も調査した。蒸気エージング後のスラグをJIS法の水浸膨張試験に供し、膨張特性を評価した。スラグ温度が100℃になってからの蒸気エージング日数とスラグ膨張率との関係を図16に示す。これによれば、蒸気エージング日数が長くなるほどスラグ膨張率は低下するが、スラグ膨張率は蒸気エージング日数:3日でようやく0.5%以下となり、エージングに長い時間がかかることが判る。
【0070】
○実施例2(本発明例3)
本発明例2で処理したのと同じ溶融スラグを、図13に示すような設備で処理した。溶融スラグを、まず、冷却ドラム10a,10bを備えた冷却処理装置Mで冷却処理し、板厚5mm程度の板状に凝固させた後、筒状円筒容器Dに装入し、本発明法(工程A,B)を実施した。その際、冷却ドラム10a,10bを通過した冷却水の一部を筒状円筒容器D内での散水に用いた。
蒸気を発生させるため、筒状処理容器D内でのスラグへの散水量は30℃程度の水で200kg/t-slag(=蒸気発生量)程度となるが、本実施例では、冷却処理装置Mの冷却ドラム10a,10bを通過した70℃の冷却水を散水に利用したため、蒸気の発生量が210kg/t-slagと5%増加した。
一方、冷却ドラム10a,10bの冷却水の一部を散水に利用するため、減少する水量を常温の水で補給するが、補給水の分だけ水温が低下するため、冷却塔での冷却能力に余裕ができ、このため冷却水量を150t/Hから130t/Hに低減することができた。
【0071】
○実施例3(本発明例4)
図5に示すような2つの処理容器Xa,Xb(容積15m)を備えた処理設備を用いて本発明法を実施した。各処理容器Xa,Xbは傾動可能な容器本体と蓋とから構成されている。
本発明例1の冷却処理工程で発生したスラグ表面温度が1000℃程度のスラグ(15t)を処理容器Xa,Xbに装入し、図5に関して説明した手順で本発明を実施した。各処理容器Xa,Xb内で行われた工程Aでの散水量は、スラグ1t当たり0.2mとし、スラグ表面温度が約500℃となった時点で散水を停止した。また、各処理容器Xa,Xb内で行われた工程Bでの回収蒸気温度は280〜180℃であった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】蒸気エージングを施したスラグの表面温度と、蒸気エージングによる膨張抑制の効果との関係を示すグラフ
【図2】筒状処理容器を用いた本発明法の一実施形態を模式的に示す説明図
【図3】筒状処理容器を用いた本発明法のより具体的な実施形態を示す説明図
【図4】処理容器X1,X2を用いた本発明法の一実施形態を示す説明図
【図5】処理容器Xa,Xbを用いた本発明法の一実施形態を示す説明図
【図6】本発明法を適用する非溶融状態の高温スラグを得るために好適な溶融スラグの冷却処理装置および冷却処理方法の一実施形態を模式的に示す正面図
【図7】本発明法を適用する非溶融状態の高温スラグを得るために好適な溶融スラグの冷却処理装置および冷却処理方法の他の実施形態を模式的に示す正面図
【図8】本発明法を適用する非溶融状態の高温スラグを得るために好適な溶融スラグの冷却処理装置の他の実施形態の一部を模式的に示す正面図
【図9】図8に示す実施形態の一部を模式的に示す側面図
【図10】本発明法を適用する非溶融状態の高温スラグを得るために好適な溶融スラグの冷却処理装置および冷却処理方法の他の実施形態を模式的に示す正面図
【図11】本発明法を適用する非溶融状態の高温スラグを得るために好適な溶融スラグの冷却処理装置および冷却処理方法の他の実施形態を模式的に示す正面図
【図12】冷却ドラムによるスラグの冷却処理を組み込んだ本発明の他の実施形態を示す説明図
【図13】冷却ドラムによるスラグの冷却処理を組み込んだ本発明の他の実施形態を示す説明図
【図14】実施例において、本発明例1,2でのスラグ処理時間(処理容器内でのスラグ滞留時間)とJIS法の水浸膨張試験によるスラグ膨張率との関係を示すグラフ
【図15】実施例において、比較例の蒸気エージング処理方法を示す説明図
【図16】実施例において、比較例での蒸気エージング日数とJIS法の水浸膨張試験によるスラグ膨張率との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0073】
X1,X2,Xa,Xb 処理容器
1 筒状処理容器
2,2f スラグ装入部
3,3f スラグ取出部
4,4f 蒸気取出部
5,5f 散水機構
6 ホッパー部
7 蒸気配管
8 蒸気導入部
9 蒸気取出部
10,10a,10b 冷却ドラム
11 スラグ鍋
12 スラグ樋
13 搬送コンベア
14 スラグバケット
15a,15b 冷却ドラム
16 堰
17 堰板
18 開口
19 樋
20 上蓋
20a,20b 上蓋
21a,21b 散水ノズル
22a,22b 蒸気導入部
23a,23b 蒸気取出部
24 蒸気配管
25 蒸気配管
26 蒸気配管
27a,27b 蒸気管
30 ガス噴射手段
40 展伸ロール
41 ミスト供給手段
42 充填槽
43 コンベア
44 遮蔽体
45 循環管路
46 補給タンク
47 冷却塔
60a,60b 冷却ドラム
61 冷却手段
64 搬送コンベア
65 冷却装置
66 スラグバケット
67 堰板
68 間隙
90 蒸気管
100 ドラム面
150 環状溝
190 側壁
300,300f 開閉ゲート
400 蒸気管
401 排気口
500,500f 散水用配管
600 蓋
610,610f 開閉ゲート
V1,V2,V3,V4,V5,V6 開閉弁
S 溶融スラグ
Sa,Sb,Sx スラグ
g スラグ液溜まり
G スラグ液溜まり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼スラグ、鉱石溶融還元スラグの中から選ばれる1種以上のスラグを冷却およびエージング処理する方法であって、
高温のスラグに散水する工程(A)と、工程(A)での散水により発生した蒸気を、散水により冷却されたスラグと接触させることにより、スラグをエージング処理する工程(B)とを有し、工程(A)とこの工程で発生した蒸気を用いる工程(B)を異なる場所で行うことを特徴とするスラグの処理方法。
【請求項2】
工程(A)では、表面温度が700℃以上のスラグに散水を行って100℃以上の蒸気を発生させ、工程(B)では、表面温度が200〜500℃のスラグに前記蒸気を接触させてエージング処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のスラグの処理方法。
【請求項3】
工程(B)のエージング処理によりスラグを粒状に崩壊させ、粒状スラグとすることを特徴とする請求項1または2に記載のスラグの処理方法。
【請求項4】
処理容器(X1),(X2)を用い、スラグを処理容器(X1)、処理容器(X2)の順に移動させ、処理容器(X1)内で工程(A)、処理容器(X2)内で工程(B)を順次行う処理方法であって、
処理容器(X1)内での後行チャージのスラグに対する工程(A)で発生した蒸気を処理容器(X2)内に導入し、処理容器(X2)内での先行チャージのスラグに対する工程(B)に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスラグの処理方法。
【請求項5】
処理容器(Xa),(Xb)を用い、各処理容器(Xa),(Xb)内でそれぞれ工程(A)と工程(B)を順次行うとともに、同時期に一方の処理容器(Xa)または(Xb)において工程(A)を、他方の処理容器(Xb)または(Xa)において工程(B)をそれぞれ行うようにし、
一方の処理容器(Xa)または(Xb)内での工程(A)で発生した蒸気を、他方の処理容器(Xb)または(Xa)に導入することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスラグの処理方法。
【請求項6】
処理容器内を移送中のスラグに対して工程(A)と工程(B)を順次行い、工程(A)で発生した蒸気を、工程(A)での散水位置よりもスラグ移送方向下流側においてスラグと接触させることにより、工程(B)を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスラグの処理方法。
【請求項7】
一端側にスラグ装入部、他端側にスラグ排出部を備えるとともに、一端側から他端側に向かって下向きに傾斜し、筒軸を中心に回転する筒状処理容器を用い、該筒状処理容器内の長手方向でスラグを移送しつつ、工程(A)と工程(B)を順次行うことを特徴とする請求項6に記載のスラグの処理方法。
【請求項8】
工程(B)で使用された蒸気を、熱源用流体として回収することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスラグの処理方法。
【請求項9】
溶融スラグを回転する冷却ドラムに接触させて冷却し、板状、柱状または細片状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融スラグを冷却処理し、該冷却処理後の高温のスラグに対して、請求項1〜8のいずれかに記載の処理を行うことを特徴とするスラグの処理方法。
【請求項10】
溶融スラグを回転する1対の冷却ドラムで圧延しつつ冷却し、板状、柱状または細片状の高温スラグとして排出するスラグ冷却処理装置を用い、溶融スラグを冷却処理し、該冷却処理後の高温のスラグに対して、請求項1〜8のいずれかに記載の処理を行うことを特徴とするスラグの処理方法。
【請求項11】
冷却ドラムが水冷式であり、該冷却ドラムを通過した冷却水の一部を工程(A)の散水に用いることを特徴とする請求項9または10に記載のスラグの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−227490(P2009−227490A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72624(P2008−72624)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】