説明

スラグ層の界面を決定するための装置

【課題】溶湯の上部のスラグ層を極めて正確に測定することのできる改良された測定装置を提供すること。
【解決手段】測定用ヘッド1が円筒状のシャンク2を有し、シャンク2がキャリヤー管の内部に測定用ヘッド1のカラー3の縁部がキャリヤー管と当接するまで挿通される。測定用ヘッド1の外側のカラー3の直前の位置には誘導コイル4が配置される。装置を降下させると浴接触子13がスラグ層と接触し、即座に短絡が生じ、装置を更に降下させる間、誘導コイル4が溶湯の伝導面に極めて接近すると直ちに回路8の発振器の振動が強く減衰され、装置を溶湯内に更に降下させると振動が停止する。この減衰がトランジスタによって検出され、相当する電圧変動がスラグ−溶湯−界面と相関され得、2つの信号間の差が降下中の装置の相当位置と直接相関され、装置の高さの差からスラグ層の厚さが算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯の上部のスラグ層の少なくとも一つの界面を決定するための装置に関する。本装置はキャリヤー管を有し、キャリヤー管の一端には測定用ヘッドが配置され、測定用ヘッドはキャリヤー管内に固定した好ましくは円筒状の胴部と、キャリヤー管から遠方側を向いた端面とを有している。
【背景技術】
【0002】
同様の装置として既知の、例えば、ドイツ国特許第3641987号に記載されるものは、溶湯上部のスラグ高さを決定するための誘導コイルをキャリヤー管内に配置し、ドイツ国特許第4402463号に記載されるものは、スラグ厚を確認するための第1及び第2の各電磁センサーを使用する。更には、WO98/14755号には、光ファイバを補助的に使用してスラグ厚を測定するセンサーが記載される。ドイツ国特許第3133182号のものは、電圧変更により生じさせた短絡を補助的に用いてメタル浴高さを決定している。日本国特許出願公開第2003049215号には、2つの誘導コイルを使用してスラグ厚を決定する方法が記載される。WO03/060432号に記載される更に別のスラグ厚測定装置では、使い切り型の測定用電子部材をセンサー内で使用し、センサーの発する信号が分析ステーションに無線送信される。マイクロ波を使用してスラグ厚を決定することも知られている(米国特許第5,182,565号)
【0003】
【特許文献1】ドイツ国特許第3641987号
【特許文献2】ドイツ国特許第4402463号
【特許文献3】WO98/14755号
【特許文献4】ドイツ国特許第3133182号
【特許文献5】特許出願公開第2003049215号
【特許文献6】WO03/060432号
【特許文献7】米国特許第5,182,565号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属溶湯の上部のスラグ層を極めて正確に測定することのできる改良された測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、独立請求項に記載した発明の特徴により解決される。従属請求項には本発明の好ましい実施例が記載される。測定用ヘッド内には印刷回路基盤(または回路フレーム、または電機部品を収受するように設計した別の装置)が発振器と共に配置され、発振器に連結した誘導コイルが、測定用ヘッドの外側で且つ測定用ヘッドの端面の前方に配置される。かくして、誘導コイルは、少なくとも、正しく調整され且つ誘導コイルの下流側に連結した好適な電子回路と共に、スラグから導電性の溶湯への移行に伴う変化を極めて正確に検出し、検出した変化に相当する信号の変化が2つの物質間の移動と非常に正確に結び付けられることから、例えばスラグと、スラグの下方の溶湯との間の界面が極めて正確に決定される。界面の高さは、信号が変化した時の誘導コイルの正確な位置が確実に決定され得るよう、測定用ヘッドが移動し始めてから信号が変化するまでの時間を測定するように測定用ヘッドの降下速度と相関されるか、あるいは、キャリヤー管に固定した測定用ヘッドの位置変化と直接相関される(位置測定法)。信号は、ランスを通して分析装置に接続した信号ラインと、接触部材を介して従来様式下に連絡される。ランスは、測定のためのキャリヤー管をその上部に固定し、測定中はこのキャリヤー管によって保持される従来通りのキャリヤーランスである。
【0006】
誘導コイルの信号は、誘導コイルが溶湯から約1cm或いはそれ未満離れただけで変化し始めるので、干渉の如き環境上の影響は最大限可能な限り回避される。発振器の振動は、誘導コイルが溶湯に接近して行くと先ず減衰され、次いで、誘導コイルが溶湯に浸漬すると完全に停止する。好適な信号は、例えばトランジスタを介して閾値として伝送され得る。
誘導コイルはその少なくとも側方を、測定用ヘッドの胴部に固定した保護シースで包囲するのが有益である。これにより誘導コイルはスラグの影響から保護される。保護シースは厚紙、セラミック、あるいは融解石英で作製し得、その外側表面を、一般にスラグ層の真上部分における温度あるいはスラグ層の内部温度下に燃焼する厚紙、紙、あるいはその他の材料の層で包囲され得る。そうした材料層は、それが焼尽されることにより、保護シースへのスラグの付着を最大限可能な限り防止する。
【0007】
測定を可能な限り正確に実施するために、保護シースの直径は誘導コイルの直径の最大で6倍、好ましくは3倍以下、そして最も好ましくは2倍以下とされる。誘導コイルと発振器との間の距離は、環境に起因する外乱が最小化され得るよう、最大で5cm、好ましくは3cm以下とされる。印刷回路基盤上には抵抗器を配置し得、また、キャリヤー管内に位置付けた測定用ヘッドの端部位置には、キャリヤー管を通して案内されるランスに測定用ヘッドを電気的に連結する接触部材を配置し得る。前記抵抗器を接触部材の少なくとも一つの接触端子に接続させると、2つの接触端子間には当業者には良く知られる相互接続、例えば短絡が生じ、かくして測定用ヘッドの、界面を決定するための誘導コイルが、ランスに接続した分析装置によって認識され、好適な様式下にデータが出力される。これにより、標準的なランスを使用し得ること、そしてこのランスにその他の測定値を取得するため既知のその他のセンサー、例えば温度センサーを装着し得ることが保証される。
【0008】
測定用ヘッドの胴部の外側で且つ胴部の端面の前方に浴接触端子を配置するのが有益である。浴接触端子はキャリヤー管と、このキャリア管を貫くランスとによって接地される。浴接触端子は、スラグ(通常はスラグ自体は全体に接地されている)と接触すると直ちに短絡を生じることから、スラグ層と、スラグ層の上部のガス層との間の界面を追加的に決定することが可能となる。これにより、スラグ層の上方のみならず下方の界面を決定することが、そして結局は、スラグ層の厚さを算出することが可能となる。
【0009】
発振器に連結したA/D(アナログ−デジタル)コンバーターを印刷回路基盤上に配置するのが更に有益である。A/Dコンバーターは、便宜上、測定信号を更に伝送するための信号ラインと接続されるが、その際、印刷回路基盤上の、この信号ラインを接続した接触端子の一つと接続され得る。A/Dコンバーターが電源ラインを有することも有益である。
【0010】
仮に、測定用ヘッドが、信号出力及びA/Dコンバーターの電源ラインと電気的に接続した接触部品を有し、この接触部品をキャリヤー管内に挿通したランスに連結し、ランス内には少なくとも一つの信号ラインと、少なくとも一つの電源ラインとを配置し、各ラインの一端を接触部品に接続し、他端を測定装置または分析装置に接続すると、各センサーからの測定値信号をデジタル信号として更に伝送させることが可能となり、環境に起因する電気的外乱が大幅に除去される。このようにアナログ信号の伝送距離が極めて短くなると電源は問題なく機能するようになる。
【0011】
保護シースの、キャリヤー管から遠い側の端面位置に、溶湯温度下に消尽され得る材料、特に紙または厚紙製であることが好ましいカバーを配置して誘導コイルをスラグから保護するのが有益である。このカバーは燃焼して短時間の間ガス空間を創出し、このガス空間が、スラグ層を通して通過する間のキャリヤー管へのスラグ付着を防止する。
【0012】
本発明の装置では、電子測定部品の全ては基本的には使い切り部品として組み立てられ、一度使用されると測定用ヘッドやキャリヤー管と共に廃棄される。測定用ヘッドは、接触部品を介して従来様式下に電子分析回路と接続することのできる追加のセンサー、例えば、酸素センサー、光センサー、あるいは温度センサーを担持することが可能である。
以下に、本発明の実施例を図面を参照して詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示す測定用ヘッド1は円筒状のシャンク2を有している。シャンク2は、キャリヤー管(図示せず)の内部に、測定用ヘッド1のカラー3の縁部がキャリヤー管と当接するまで挿通される。測定用ヘッド1の外側の、カラー3の直前の位置には誘導コイル4が配置される。誘導コイル4は、厚紙製の層(図示せず)をその外側面に有し得る保護シーズ5(厚紙製あるいは融解石英製の)によりその側方が包囲される。保護シースの直径は誘導コイルの直径の略2倍の大きさとされる。
【0014】
保護シースの外側端面には厚紙製のカバー層16が配置される。誘導コイル4は銅線を巻き付けたフェライトコア6から構成され、発振器及びA/Dコンバーターを備えた回路8を実装した印刷回路基盤7に連結される。印刷回路基盤7は抵抗器9を更に有し、抵抗器9は2つの接触端子10、10’に接続され、接触端子10、10’は結局、接触部品11に連結される。これにより抵抗を検出することが可能となり、測定用ヘッドを、一つの(あるいはそれ以上の)界面を検出するための装置として技術的に実測監視することができるようになる。
【0015】
測定用ヘッド1は、従来のキャリヤーチューブの大きさの範囲内である寸法を有する。誘導コイル4と、回路8に一体化した発振器との間の距離は略2cmに過ぎず、環境的な影響は実質的に排除される。測定用ヘッドの内側キャビティ12のみならず保護シース5の内部にはセメントが充填され、全てのセンサー技術部品がセメントで包囲され、安定化され、保護される。誘導コイル4の浸漬端は略2〜4mm厚のセメント層で被覆される。
【0016】
保護シース5の浸漬方向の前方部分には浴接触子13が配置される。浴接触子13は測定用ヘッド1の外側に沿って配置され、測定用ヘッド1の接触部品11上に押し付けたランスを介して接地される。装置を降下させることにより浴接触子13がスラグ層と接触すると即座に短絡が生じ、コンピューターあるいは分析装置14(図2)がこれを検出する。装置を更に降下させる間、誘導コイル4が金属溶湯の伝導面に極めて接近(略1cm)すると直ちに回路8の発振器の振動が強く減衰され、装置を溶湯内に更に降下させると振動は停止する。この減衰がトランジスタによって検出され、相当する電圧変動がスラグ−溶湯−界面と相関され得る。これにより、2つの信号(浴接触端子の短絡及び発振器の振動の減衰)間の差が降下中の装置の相当位置と直接相関され、装置の高さの差からスラグ層の厚さが算出される。
【0017】
図2に略示される信号ライン15、15’が、回路8からの信号をコンピューターまたは分析装置14に伝送する。信号ライン15、15’は従来通りのランス内に配置され、接触部品11を介して測定用ヘッド1と接触される。これらの信号ライン15、15’は同じランス内で別の測定装置と、従って、例えば熱電対を有する別の測定用ヘッドと、その接触部品を介して連結され得る。測定用ヘッド1に追加配置した更に他のセンサー、例えば熱電対、電子−化学センサーまたは光センサーをコンピューターまたは分析装置14と接続して更に別の測定を同時に実施し得るようにするための更に別のラインを、このランスを通して案内させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】測定用ヘッドの概略断面図である。
【図2】測定用ヘッドと回路配列との概念図である。
【符号の説明】
【0019】
1 測定用ヘッド
2 シャンク
3 カラー
4 誘導コイル
5 保護シース
6 フェライトコア
7 印刷回路基盤
8 回路
9 抵抗器
10、10’ 接触端子
11 接触部品
12 内側キャビティ
13 浴接触子
16 カバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯の上部のスラグ層の少なくとも一つの界面を決定するための装置であって、
胴部を有する測定用ヘッドをその一端に取り付けたキャリヤー管にして、前記胴部が、その端面をキャリヤー管から遠方側に向けてキャリヤー管に固定したキャリヤー管を含み、
測定用ヘッドの内側に発振器を配置し、該発振器と連結した誘導コイルを前記胴部の外側で且つ前記端面の前方に配置した装置。
【請求項2】
誘導コイルの少なくともその側方部分が、測定用ヘッドの胴部に固定した保護シースによって包囲される請求項1の装置。
【請求項3】
保護シースが厚紙、セラミック、または融解石英製のものである請求項2の装置。
【請求項4】
保護シースの外側の側部が、厚紙、紙、またはその他の燃焼性材料からなる層によって包囲される請求項2または3の装置。
【請求項5】
保護シースの直径が、誘導コイルの直径の最大で6倍、好ましくは3倍以下の大きさである請求項1〜4の何れかの装置。
【請求項6】
誘導コイルと発振器との間の距離が最大で5cm、好ましくは3cm以下である請求項1〜5の何れかの装置。
【請求項7】
発信器を取り付け得る印刷回路基盤を測定用ヘッドの内側に配置し、印刷回路基盤に抵抗器を取付け、キャリヤー管内に配置される接触部材を測定用ヘッドの端部に配置し、該接触部材が、キャリヤー管を通して案内されるランスに測定用ヘッドを電気的に接続するための接触端子を有し、抵抗器が該接触端子の少なくとも一つに接続される請求項1〜6の何れかの装置。
【請求項8】
測定用ヘッドの胴部の外側で且つ端面の前方に浴接点を配置した請求項1〜7の何れかの装置。
【請求項9】
測定用ヘッドの内部の、好ましくは印刷回路基盤上に、発信器と連結したAD/コンバーターを連結した請求項1〜8の何れかの装置。
【請求項10】
AD/コンバーターを、測定信号を伝送するための信号ラインに接続した請求項9の装置。
【請求項11】
AD/コンバーターを、印刷回路基盤上の、信号ラインを連結する接点に接続した請求項9の装置。
【請求項12】
AD/コンバーターが電源ラインを有する請求項9〜11の何れかの装置。
【請求項13】
保護シースの、キャリヤー管から遠方側を向いた端面にカバーを配置し、該カバーを、溶湯の温度下に焼尽され得る材料、特に紙または厚紙製である材料から好ましく作製した請求項2〜12の何れかの装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−199067(P2007−199067A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15085(P2007−15085)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(598083577)ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ (37)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B−3530 Houthalen,Belgium
【Fターム(参考)】