説明

スラッシュ成形用樹脂粉末組成物及び成形品

【課題】シートを成形する場合に、成形シートの金型脱型時に破れ、変形等が起こらないスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末等の熱可塑性樹脂粉末(B)及び無機フィラー(A)を必須成分とし、無機フィラー(A)が熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子中に含有されてなり、熱可塑性樹脂粉末(B)及び無機フィラー(A)の合計重量に対して無機フィラー(A)を5〜50重量%含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品の成形用素材として適する、熱可塑性樹脂粉末を主体とする、スラッシュ成形用の樹脂粉末組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品の成形用素材として、スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末組成物が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、樹脂強度が充分ではなく、スラッシュ成形工程において金型表面に成形されたシートを金型から剥ぎ取る時に、成形シートの破れ、変形等が起こることがあった。
【特許文献1】特開平5−279485号公報
【特許文献2】特開2000−17033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末組成物を使用してシートを成形する場合に、成形シートの金型脱型時に破れ、変形等が起こらないスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、熱可塑性樹脂粉末(B)及び無機フィラー(A)を必須成分とし、無機フィラー(A)が熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子中に含有されてなり、熱可塑性樹脂粉末(B)及び無機フィラー(A)の合計重量に対して無機フィラー(A)を5〜50重量%含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物、及び該樹脂粉末組成物からなる樹脂成形品である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形されたシートは、引張強度、引裂強度に優れるため、金型脱型時に破れ、変形等が起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、熱可塑性樹脂粉末(B)(以下、単に(B)ともいう。)及び無機フィラー(A)(以下、単に(A)ともいう。)を必須成分とし、熱可塑性樹脂粉末(B)及び無機フィラー(A)の合計重量に対して、無機フィラー(A)を5〜50重量%、好ましくは5.5〜30重量%、さらに好ましくは6.5〜20重量%含有する。(B)及び(A)の合計重量に対して(A)を5重量%未満しか含有しない場合は、(A)の補強効果が十分に発揮できず、金型脱型時に成形シートに破れ、変形等が起こる場合がある。(A)を50重量%を超えて含有する場合は、溶融性が悪くなるため、成形シートの強度が低下する。
【0007】
無機フィラー(A)は、熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子中に含有された形態で、本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物に含有される。(A)は(B)の粉末粒子中に含有されることで、(A)の粒子のままであって(B)の粉末粒子中に含有されない場合に比べ、成形樹脂シート中により均一に分散することができる。このような態様をとることにより、本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を成形して得られる成形樹脂シートは、引張強度及び引裂強度に優れるため、金型脱型時に破れ、変形等が起こらない。特に熱可塑性樹脂がポリウレタン樹脂である場合、ポリウレタン樹脂中に均一に分散した(A)が、ポリウレタン樹脂のハードセグメントの結晶化を促進して、引張強度及び引裂強度を向上させることが出来るため好ましい。
【0008】
無機フィラー(A)としては、例えば、タルク、カオリン、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー(グラファイト、炭化ケイ素、金属等の)、金属粉末が挙げられる。これらのなかで、熱可塑性樹脂の結晶化促進の観点から、タルク、カオリン、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウムが好ましく、特にタルク、カオリンがさらに好ましい。
【0009】
無機フィラー(A)の体積平均粒径は、熱可塑性樹脂中への分散性の観点から好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは1〜20μm、特に好ましくは5〜10μmである。
【0010】
無機フィラー(A)を含有する熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子の体積平均粒径は、好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは100〜200μmである。
【0011】
無機フィラー(A)、及び、熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱法で行い、例えばマイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製MKIISRA 7997−10)で測定することができる。
【0012】
熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子中に含有される無機フィラー(A)の含有率は、以下に示す方法で測定することが出来る。すなわち、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物約1g(Xg)を精秤し、300℃のホットプレートで黒煙が出なくなるまで加熱、炭化させた後、450℃の電気炉の中で2時間かけて灰化し、デシケータ中で冷却後、灰の重量(Yg)を秤量する。(B)及び(A)の合計重量に対する(A)の含有率は次式で計算される。
(A)の含有率=100×(Y/X)
【0013】
また、熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子中に含有される無機フィラー(A)の体積平均粒径は以下に示す方法で測定することが出来る。すなわち、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物20gに1000mlのジメチルフォルムアミドを加え、100℃で1時間加熱する。ジメチルフォルムアミド不溶分をろ別、乾燥し、上記の方法で体積平均粒径を測定する。
【0014】
熱可塑性樹脂粉末(B)としては、スラッシュ成形用に使用可能な樹脂粉末であれば特に制限はない。好ましい例としては、(以下、熱可塑性を省略して記載する。)ポリウレタン樹脂粉末(B0)、塩化ビニル樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ビニル芳香族樹脂粉末、アクリレート樹脂粉末、共役ジエン樹脂粉末、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられ、特に好ましいものはポリウレタン樹脂粉末(B0)である。
【0015】
ポリウレタン樹脂粉末(B0)におけるポリウレタン樹脂は、高分子ポリオール、ポリイソシアネート、必要に応じて低分子ジオール、低分子ジアミン等からなる樹脂である。
ポリウレタン樹脂粉末(B0)としては、例えば以下の製造方法で製造されたもの等が挙げられる。
(1)ウレタン結合およびウレア結合を有する樹脂であって、水および分散安定剤存在下で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には例えば特開平8−120041号公報等に記載されたものを使用することができる。
(2)ウレタン結合およびウレア結合を有したウレタンプレポリマーを、該ウレタンプレポリマーが溶解しない有機溶剤および分散安定剤存在下で、鎖伸長剤(例えばジアミンおよび/またはグリコール)と反応させる方法で製造されるもの。具体的には例えば特開平4−202331号公報等に記載されたものを使用することができる。
(3)ジイソシアネート、高分子ポリオール、必要に応じて鎖伸長剤(低分子グリコール、低分子ジアミン)を反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下細孔を通し切断する方法)する方法で製造されるもの。
【0016】
塩化ビニル樹脂粉末としては、懸濁重合法又は塊状重合法によって製造した塩化ビニル単独重合体の樹脂粉末、塩化ビニルモノマーとエチレン酢酸ビニル等塩化ビニルモノマーを主成分とする共重合体の樹脂粉末が含まれる。
【0017】
ポリオレフィン樹脂粉末としては、一般的にオレフィン系熱可塑性エラストマーに属する物であればいかなるものも使用できる。さらには、エチレン−プロピレン−ジエン−ゴム(EPM、EPDM)とプロピレン系重合体を含むポリオレフィン等とを複合したオレフィン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。また、α−オレフィン共重合体よりなるオレフィン熱可塑性エラストマーの微粉末、α−オレフィン共重合体とプロピレン系樹脂から成るオレフィン熱可塑性エラストマーの微粉末も使用することができる。
【0018】
ビニル芳香族系樹脂粉末としては、芳香族ビニル化合物単独重合体の樹脂粉末、芳香族ビニル化合物とビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末が含まれる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ブロモスチレン、ビニルスチレン、ビニルキシレン、フルオロスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0019】
アクリレート系樹脂粉末としては、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体の樹脂粉末、(メタ)アクリル酸エステルとビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末が含まれる。
【0020】
共役ジエン系樹脂粉末は、共役ジエン系共重合体中の共役ジエン系部分を水素添加または一部水素添加して得られる共重合体樹脂粉末であり、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ランダム共重合体、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物、共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物等の樹脂の樹脂粉末が含まれる。
【0021】
無機フィラー(A)を熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子中に含有させるためには、例えば、(1)(A)を加えて重合反応を行い(B)を製造する方法、(2)熱可塑性樹脂粒子と(A)とを加熱混練した後粉砕して粉末化する方法、等を採用すればよい。具体的には、例えば、(1)の方法について説明すれば、(B)がポリウレタン樹脂粉末の場合は、例えば高分子ポリオールやウレタンプレポリマー中に予め(A)を分散させておき、ポリウレタン樹脂粒子を製造する方法が挙げられる。塩化ビニル系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ビニル芳香族系樹脂粉末、アクリレート系樹脂粉末、共役ジエン系樹脂粉末の場合は、それぞれ、例えば、各モノマー中に予め(A)を分散させておき樹脂粒子を製造する方法が挙げられる。本発明においては、(A)が(B)の粉末粒子中に含有されているとは、例えば、少なくとも、無機フィラー(A)の一部が熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子中に埋まっている状態も含むものとする。
【0022】
また、本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物には、必要に応じて、上記の成分以外に、本発明の目的を阻害しない範囲で、添加助剤(C)を添加することができる。添加助剤(C)としては、公知慣用の顔料、可塑剤、離型剤、有機充填剤、ブロッキング防止剤、分散剤、紫外線吸収剤(光安定剤)、酸化防止剤等が添加出来る。
【0023】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物はスラッシュ成形法で各種樹脂成形品に成形することができる。スラッシュ成形法で成形するには、例えば、本発明の粉末組成物が入ったボックスと200〜280℃に加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを金型内で溶融流動させた後、冷却後、固化させ、表皮を製造する方法で好適に実施することができる。
【0024】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物で成形された表皮厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。該表皮は自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等の表皮に好適に使用される。
【0025】
実施例
以下、製造例、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0026】
製造例1
プレポリマー溶液1の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1000のポリブチレンアジペート(356部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(237部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(87.5部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して均一攪拌後、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.5部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(151部)、テトラヒドロフラン(155部)、安定剤(2.5部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製、イルガノックス1010]を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液1を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.0%であった。
【0027】
製造例2
プレポリマー溶液2の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(356部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(237部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(53.2部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して均一攪拌後、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.5部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(151部)、テトラヒドロフラン(155部)、安定剤(2.5部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製、イルガノックス1010]を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液2を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.1%であった
【0028】
製造例3
プレポリマー溶液3の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(356部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(237部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(439部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して均一攪拌後、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.5部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(151部)、テトラヒドロフラン(155部)、安定剤(2.5部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製、イルガノックス1010]を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液3を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、1.5%であった。
【0029】
製造例4
プレポリマー溶液4の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(356部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(237部)、体積平均粒径8.0μmのタルク(87.5部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して均一攪拌後、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.5部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(151部)、メチルエチルケトン(155部)、安定剤(2.5部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製、イルガノックス1010]を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液4を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.0%であった。
【0030】
製造例5
プレポリマー溶液5の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(356部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(237部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して均一攪拌後、60℃まで冷却した。続いて、体積平均粒径9.2μmのカオリン(87.5部)、1−オクタノール(9.5部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(151部)、テトラヒドロフラン(155部)、安定剤(2.5部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製、イルガノックス1010]を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液5を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.0%であった。
【0031】
比較製造例1
プレポリマー溶液6の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(356部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(237部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(28部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して均一攪拌後、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.5部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(151部)、テトラヒドロフラン(155部)、安定剤(2.5部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製、イルガノックス1010]を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液6を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.2%であった。
【0032】
比較製造例2
プレポリマー溶液7の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(356部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(237部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(1481部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して均一攪拌後、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.5部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(151部)、テトラヒドロフラン(155部)、安定剤(2.5部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製、イルガノックス1010]を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液7を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、0.9%であった。
【0033】
比較製造例3
プレポリマー溶液8の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1000のポリブチレンアジペート(356部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(237部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して均一攪拌後、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.5部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(151部)、テトラヒドロフラン(155部)、安定剤(2.5部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製、イルガノックス1010]を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液8を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.2%であった。
【0034】
製造例6
ジアミンのメチルエチルケトン(以下、MEKと記す。)ケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミン(116部)、過剰のMEK(288部、ジアミンに対して4倍モル量)、n−ヘキサン(29部)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEK、n−ヘキサンを除去してMEKケチミン化物を得た。
【0035】
熱可塑性ポリウレタン系樹脂粉末の製造
製造例7
反応容器に、製造例1で得たプレポリマー溶液1(100部)と製造例6で得たMEKケチミン化合物(5.6部)を投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8(25重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−1)を製造した。(P−1)のMnは2.5万、体積平均粒径は151μmであった。
【0036】
製造例8
反応容器に、製造例2で得たプレポリマー溶液2(96.6部)と製造例6で得たMEKケチミン化合物(5.6部)を投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8(25重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−2)を製造した。(P−2)のMnは2.5万、体積平均粒径は150μmであった。
【0037】
製造例9
反応容器に、製造例3で得たプレポリマー溶液3(135.2部)と製造例6で得たMEKケチミン化合物(5.6部)を投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8(25重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−3)を製造した。(P−3)のMnは2.7万、体積平均粒径は147μmであった。
【0038】
製造例10、11
製造例4、5で得たプレポリマー溶液4、5について、製造例7と同様な操作を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−4)、(P−5)を製造した。(P−4)のMnは2.5万、体積平均粒径は151μm、(P−5)のMnは2.5万、体積平均粒径は150μmであった。
【0039】
比較製造例4
反応容器に、比較製造例1で得たプレポリマー溶液6(94部)と製造例6で得たMEKケチミン化合物(5.6部)を投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8(25重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−6’)を製造した。(P−6’)のMnは2.6万、体積平均粒径は152μmであった。
【0040】
比較製造例5
反応容器に、比較製造例2で得たプレポリマー溶液7(239.6部)と製造例6で得たMEKケチミン化合物(5.6部)を投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8(25重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−7’)を製造した。(P−7’)のMnは2.4万、体積平均粒径は152μmであった。
【0041】
比較製造例6
反応容器に、比較製造例3で得たプレポリマー溶液8(91.2部)と製造例6で得たMEKケチミン化合物(5.6部)を投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8(25重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−8’)を製造した。(P−8’)のMnは2.6万、体積平均粒径は151μmであった。
【0042】
実施例1
100Lのナウタミキサー内に熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−1)100部、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル[三洋化成工業(株)社製;サンフィックスEB300]20部を投入し70℃で3時間混合した。次いで離型剤として変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部を投入し1時間混合した後室温まで冷却した。次いで、ブロッキング防止剤としてシリカ微粉末サイロブロックS200(グレースデヴィソン化学製)を0.3部投入混合しスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)を得た。カオリンの(S−1)の重量に対する含有率は8.3%であった。(S−1)の粉末粒子の体積平均粒径は152μmであった。
【0043】
実施例2〜5
実施例1において、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−1)の代わりに(P−2)〜(P−5)を使用し、他は同様にして、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−2)〜(S−5)を得た。カオリンの(S−2)、(S−3)、(S−5)の重量に対する含有率は各5.3%、30%、8.3%であった。また、タルクの(S−4)の重量に対する含有率は8.3%であった。(S−2)〜(S−5)の粉末粒子の体積平均粒径は各151μm、148μm、152μm、151μmであった。
【0044】
比較例1、2
実施例1において、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−1)の代わりに(P−6’)、(P−7’)を使用し、他は同様にして、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−6’)、(S−7’)を得た。カオリンの(S−6’)、(S−7’)の重量に対する含有率は各、2.9%、54%であった。(S−6’)、(S−7’)の粉末粒子の体積平均粒径は各153μm、153μmであった。
【0045】
比較例3
100Lのナウタミキサー内に熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(P−8’)90.2部、ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル[三洋化成工業(株)社製;サンフィックスEB300]19部を投入し70℃で3時間混合した。次いで変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部、体積平均粒径9.2μmのカオリン(9.8部)を投入し1時間混合した後室温まで冷却した。次いで、シリカ微粉末サイロブロックS200(グレースデヴィソン化学製)を0.3部投入混合しスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−8’)を得た。カオリンの(S−8’)の重量に対する含有率は8.2%であった。(S−8’)の粉末粒子の体積平均粒径は152μmであった。
【0046】
実施例1〜5のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−5)、及び比較例1〜3のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−6’)〜(S−8’)を使用して、下記に示す方法でシートを作成した。該シートの引張強度、引裂強度を測定し、結果を表1に示した。
【0047】
<成形シートの作成方法>
270℃に加熱した金型にスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を10秒間接触させ、熱溶融後未溶融の粉末を除去し、室温中で1分間放置した後、水冷して成形シートを作成した。
【0048】
<評価方法>
上記の方法で作成した成形シートは、作成後、30分以内に下記の方法で引張強度及び引裂強度を測定した。
・引張強度はJIS K6251−2004に準拠して測定した。
・引裂強度はJIS K6252−2004に準拠して測定した。
ただし、試験片の状態調節については、JIS K6250−2004に準拠せずに、成形シート作成後、30分以内に測定を行った。
成形シート作成後、30分以内に測定した引張強度及び引裂強度は、成形シートの金型脱型時に起こる破れ、変形等と相関が認められるものである。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1〜5から判るように、本発明の構成を有する樹脂粉末は引張強度、引裂強度ともに、優れており、無機フィラーの含有量が過少(比較例1)であるか過大(比較例2)である場合と比較すると、その性能の顕著性は明白である。また、無機フィラーが樹脂粉末に含有されていない構成の比較例3は、たとえ無機フィラーの含量が本発明の樹脂粉末の範囲内であっても、引張強度、引裂強度ともに、本願発明の樹脂粉末に比べて高々半分以下の性能しかなく、この点でも本願発明の樹脂粉末の性能の顕著性は明白である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形される表皮は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂粉末(B)及び無機フィラー(A)を必須成分とし、無機フィラー(A)が熱可塑性樹脂粉末(B)の粉末粒子中に含有されてなり、熱可塑性樹脂粉末(B)及び無機フィラー(A)の合計重量に対して無機フィラー(A)を5〜50重量%含有することを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【請求項2】
無機フィラー(A)が、タルク、カオリン、シリカ、酸化チタン及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機フィラーである請求項1に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項3】
無機フィラー(A)の体積平均粒径が0.1〜30μmである請求項1又は2に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂粉末(B)が熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B0)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物からなる樹脂成形品。
【請求項6】
自動車内装材である請求項5に記載の樹脂成形品。


【公開番号】特開2007−106811(P2007−106811A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297134(P2005−297134)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】