説明

スラブ搬送装置

【課題】熱間圧延スラブをクレーンで搬送するスラブ搬送装置として、熱間圧延スラブの垂れによる他の設備との接触を適切に防止することができるスラブ搬送装置を提供する。
【解決手段】熱間圧延スラブ2をクレーン10で搬送するスラブ搬送装置であって、搬送する熱間圧延スラブ2の垂れを検知する垂れ検知センサー11を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延される高温のスラブ(熱間圧延スラブ)の搬送装置に関するものである。なお、熱間圧延スラブとしては鋼スラブを主とするが、これに限るものではなく、銅スラブ、アルミニウムスラブ等の他の金属スラブであってもよい。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延ラインについて、熱間圧延スラブとして鋼スラブを用いる場合を例にして説明する。
【0003】
図1に示すように、熱間圧延ラインでは、製鋼ラインの連鋳機1にて1000℃程度で鋳造された熱間圧延スラブ2を加熱炉5にて1300℃程度に加熱し、粗圧延機6、仕上圧延機7で圧延して1〜25mm程度まで薄く延ばし、巻取機8にてコイル状に巻き取る。
【0004】
その際に、製鋼ラインの連鋳機1にて鋳造された熱間圧延スラブ2は、スラブヤード3に一旦貯留後または鋳造直後に加熱炉5に装入される。そして、トラブルが発生した場合は、加熱炉5で加熱された場合でも圧延を見送り、スラブヤード3に一旦貯留される。
【0005】
これらの工程では、熱間圧延スラブ2は、図2に示すような、ローラテーブル9で搬送されるテーブル搬送や、図3に示すようなクレーン10で搬送されるクレーン搬送によって搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−309505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱間圧延スラブ2(以下、単にスラブともいう)は1000℃以上の温度を有するため、支持点間の距離を長くして支持した場合には、数分程度で数百mm垂れてしまう場合がある。
【0008】
一般的に、テーブル搬送では、1000mm程度と短い支持点間距離で複数のテーブルローラによって搬送されるため、問題とはならない。
【0009】
これに対して、クレーン搬送では、スラブを掴む際のスラブ長手方向の間隔(支持点間距離)は、最も短い場合でも4000mm程度となり、かつ設備配置やコスト面からスラブを掴むスラブ長手方向位置は2個所(2対)であることが一般的であるため、図4に示すように、クレーン10で搬送途中にスラブ2が垂れて問題となる場合がある。また、その垂れ量は搬送時間とともに変わる。
【0010】
クレーン搬送では、図5に示すように、搬送元のスラブ2を巻き上げ、走行移動後に搬送先にスラブ2を巻き下げする。走行移動する際には、下部に他の設備(下部設備)が配置されているため、スラブ2の垂れ量が大きいと下部設備に接触し、下部設備やクレーンの破損、落下等の重大事故が発生する。また、復旧には長時間必要となるため、生産ロスも甚大である。
【0011】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、熱間圧延スラブをクレーンで搬送するスラブ搬送装置として、熱間圧延スラブの垂れによる他の設備との接触を適切に防止することができるスラブ搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
【0013】
[1]熱間圧延スラブをクレーンで搬送するスラブ搬送装置であって、搬送する熱間圧延スラブの垂れを検知する垂れ検知センサーを備えていることを特徴とするスラブ搬送装置。
【0014】
[2]熱間圧延スラブの巻き上げ時の垂れ量を前記垂れ検知センサーで測定し、測定した垂れ量から走行移動時の垂れ量を予測し、予測した垂れ量から走行移動時に当該熱間圧延スラブが他の設備と接触すると判断される場合には、当該熱間圧延スラブの搬送を停止することを特徴とする前記[1]に記載のスラブ搬送装置。
【0015】
[3]熱間圧延スラブが他の設備と接触すると予測される走行移動時の垂れ量に基づいて、当該熱間圧延スラブの巻き上げ時の垂れ量の上限値を設定しておき、当該熱間圧延スラブの巻き上げ時の垂れ量が前記上限値を超えている場合には、前記垂れ検知センサーがそれを検知して、当該熱間圧延スラブの搬送を停止することを特徴とする前記[1]に記載のスラブ搬送装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、熱間圧延スラブの垂れによる他の設備との接触を適切に防止することができる。その結果、設備破損やその復旧による生産ロスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】熱間圧延ラインの一例を示す図である。
【図2】スラブのテーブル搬送の例を示す図である。
【図3】スラブのクレーン搬送の例を示す図である。
【図4】スラブのクレーン搬送時にスラブが垂れた状態を示す図である。
【図5】スラブのクレーン搬送の際の手順を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明の実施形態におけるスラブ搬送装置は、図3、図5に示したような、熱間圧延スラブをクレーンで搬送するスラブ搬送装置である。そして、搬送する熱間圧延スラブの垂れを検知する垂れ検知センサーを備えている。
【0020】
[実施形態1]
図6は、本発明の実施形態1を示す図である。
【0021】
図6に示すように、この実施形態1においては、クレーン10に垂れ検知センサー(距離センサー)11がスラブ2の長手方向に沿って複数個(ここでは6個)配置されている。
【0022】
そして、この実施形態1では、以下のような手順でスラブ2の搬送を行う。
【0023】
(S1)まず、クレーン10で走行移動時のスラブ2と下部設備との間隔に基づいて、走行移動時のスラブ2の垂れ量の上限値Y2oを設定しておく。
【0024】
(S2)次に、クレーン10がスラブ2の巻き上げを完了したら、スラブ2の長手方向に沿って配置されている複数個の垂れ検知センサー11がそれぞれスラブ2までの距離を測定し、それぞれ測定された距離に基づいて、スラブ2の巻き上げ完了時の垂れ量Y1を算出する。
【0025】
(S3)次に、算出した垂れ量Y1と、巻き上げ所要時間t1と、これからの走行移動時間t2とから、走行移動時間t2が経過した時の垂れ量Y2を下記の(1)式にて予測する。
Y2=(t1+t2)/t1×Y1 ・・・・・(1)
【0026】
(S4)そして、予測された垂れ量Y2が上限値Y2o以下である場合、すなわち、
Y2≦Y2o ・・・・・(2)
の場合には、走行移動中(搬送中)にスラブ2が下部設備と接触しないと判断して、スラブ2の搬送を行う。
【0027】
(S5)一方、予測された垂れ量Y2が上限値Y2oを超えている場合、すなわち、
Y2>Y2o ・・・・・(3)
の場合には、走行移動中(搬送中)にスラブ2が下部設備と接触すると判断して、スラブ2の搬送を停止する。
【0028】
このようにして、この実施形態1においては、スラブ2の垂れによる下部設備との接触を適切に防止することができる。その結果、設備破損やその復旧による生産ロスを防止することができる。
【0029】
[実施形態2]
図7は、本発明の実施形態2を示す図である。
【0030】
図7に示すように、この実施形態2においては、スラブ2の垂れを検知する一対の垂れ検知センサー(光学式通過センサー)11、11が、スラブ2の搬送元の地面側に設置されている。ここで、この垂れ検知センサー11、11は、スラブ2の巻き上げ完了時の垂れ量Y1が予め設定した上限値Y1oを超えている場合に、そのことを検知するようになっている。すなわち、Y1≦Y1oの場合はOFF、Y1>Y1oの場合はONとなるようになっている。
【0031】
そして、この実施形態2では、以下のような手順でスラブ2の搬送を行う。
【0032】
(P1)まず、クレーン10で走行移動時のスラブ2と下部設備との間隔に基づいて、走行移動時のスラブ2の垂れ量の上限値Y2oを設定し、その上限値Y2oと、巻き上げ所要時間t1と、走行移動時間t2とから、巻き上げ完了時の垂れ量Y1の上限値Y1oを下記の(4)式にて設定する。
Y1o=t1/(t1+t2)×Y2o ・・・・・(4)
【0033】
(P2)次に、クレーン10がスラブ2の巻き上げを完了したら、スラブ2の搬送元の地面側に設置されている垂れ検知センサー11がスラブ2の巻き上げ完了時の垂れ量Y1の検知を行う。
【0034】
(P3)そして、垂れ検知センサー11がOFFの場合(すなわち、Y1≦Y1oの場合)は、走行移動中(搬送中)にスラブ2が下部設備と接触しないと判断して、スラブ2の搬送を行う。
【0035】
(P4)一方、垂れ検知センサー11がONの場合(すなわち、Y1>Y1oの場合)は、走行移動中(搬送中)にスラブ2が下部設備と接触すると判断して、スラブ2の搬送を停止する。
【0036】
このようにして、この実施形態2においては、スラブ2の垂れによる下部設備との接触を適切に防止することができる。その結果、設備破損やその復旧による生産ロスを防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 連鋳機
2 スラブ(熱間圧延スラブ)
3 スラブヤード
4 保熱ピット
5 加熱炉
6 粗圧延機
7 仕上圧延機
8 巻取機
9 テーブル(ローラテーブル)
10 クレーン
11 垂れ検知センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延スラブをクレーンで搬送するスラブ搬送装置であって、搬送する熱間圧延スラブの垂れを検知する垂れ検知センサーを備えていることを特徴とするスラブ搬送装置。
【請求項2】
熱間圧延スラブの巻き上げ時の垂れ量を前記垂れ検知センサーで測定し、測定した垂れ量から走行移動時の垂れ量を予測し、予測した垂れ量から走行移動時に当該熱間圧延スラブが他の設備と接触すると判断される場合には、当該熱間圧延スラブの搬送を停止することを特徴とする請求項1に記載のスラブ搬送装置。
【請求項3】
熱間圧延スラブが他の設備と接触すると予測される走行移動時の垂れ量に基づいて、当該熱間圧延スラブの巻き上げ時の垂れ量の上限値を設定しておき、当該熱間圧延スラブの巻き上げ時の垂れ量が前記上限値を超えている場合には、前記垂れ検知センサーがそれを検知して、当該熱間圧延スラブの搬送を停止することを特徴とする請求項1に記載のスラブ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−20795(P2012−20795A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157445(P2010−157445)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】