説明

スラリー供給装置及びスラリー供給方法

【課題】ダブルの供給系を設けることなく、ダブルの供給系と同様にスラリーの供給エンジンがダウンしても、処理中のウエハを完全に処理することができ、初期投資のコストを低減したまま、処理中のウエハの損害を出すことなく処理できるスラリー供給装置及び方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも一つのスラリー供給タンクと、スラリーをCMP装置に供給する供給エンジンと、供給タンク内のスラリーをCMP装置に供給し供給タンクに循環する循環ラインと、循環ライン内のスラリーをCMP装置に供給する分岐ラインと、分岐ラインに設けたバルブと、CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な量のスラリーを保持できる容量を有する分岐ラインに接続したバッファー部材と、供給エンジンが停止したときバッファー部材内の残留スラリーを加圧し、CMP装置に供給する加圧部材とよりなるスラリー供給装置及びスラリー供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程のうち、スラリーを使用する化学機械的研磨工程(CMP:Chemical Mechanical Polishing)(以下、CMP工程と称す)にスラリーを供給するスラリー供給装置及びスラリー供給方法に関する。本発明に係るスラリー供給方法及びスラリー供給装置は、スラリーの供給に限定されることなく、CMP工程で使用されるその他の薬液等の供給を包含するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板上にトランジスタ等を形成する製造工程において、半導体デバイスの超微細化や高段差化が進み、これに伴って半導体基板の表面を高度に平坦化することが求められている。かかる要求に対し、研磨粒子として、例えば、比較的分散性のよいヒュームドシリカやコロイダルシリカ等のシリカ系の研磨粒子を用い、これらを薬液及び純水等に分散させてなるスラリーによってCMP工程を行って、半導体基板を平坦にする処理が行われている。
そして、上記したようなCMP工程において望ましい研磨を行うには、一定の濃度及び流量のスラリーを安定して供給することが要求される。この場合に用いられるスラリー供給装置は、通常、原液スラリーを収納したタンクと、この原液スラリーを純水や薬液等で希釈して所定の濃度に調整する調整タンクと、この調整タンクで調整したスラリーを一時的に貯蔵する供給タンクと、供給タンクから研磨装置のスラリー供給ノズルにスラリーを供給するための供給機能と、それらに関わる配管、バルブ、モニタリング機器等を備えて構成されている。
【0003】
更に、上記した供給タンクと研磨装置とをつなぐ従来のスラリー供給配管では、供給タンクから吐出したスラリーを再び供給タンクに戻す循環用の配管と、この循環用の配管から分岐して研磨装置にスラリーを供給する供給用の配管とを具備する循環ヘッダー供給方式を採用しており、研磨装置の研磨運転とアイドル中の何れの状態においても、スラリーの循環運転は、常に継続して行われている。スラリーの供給において常に循環運転が必要となる理由は、スラリーという薬液には「砥粒」が入っているため、静置させておくと、その「砥粒」がタンク底や配管下部に沈降するという特徴があるためである。即ち、この砥粒の沈降が起こった場合、研磨装置に供給されるスラリーは、本来よりも砥粒濃度が薄い状態のスラリーになってしまう可能性があり、研磨性能に重大な影響を与えてしまう。このため、スラリーの供給においては、循環ヘッダー供給方式が一般的に行われ、この砥粒の沈降を抑制することが行われている。
【0004】
ここで、スラリーの移送方法(供給エンジン)としては、下記に述べるように、いくつかの方法がある。第1の方法では、容積型ポンプ、通常は、空気軌道の二重ダイヤフラムタイプ、ベローズタイプのものを使用して、スラリーの一括供給源からの吸込側入口での揚程と、出口での圧力の両方を同時に生じさせる。この方法においては、スラリーは、スラリードラムから引き上げられ、ポンプを通じて推進され、そして、使用箇所へと押し出される(以下、これをポンプ式による供給方法或いは供給方式という)。
【0005】
上記ポンプ式による供給方式では、スラリーの一括供給源からの最小限の揚程を生じさせることができる。しかしながら、このポンプ式による供給方式における系では汚染の問題が満ちている。即ち、ポンプのダイヤフラムやベローズ材料[例えば、テフロン(登録商標)]の急速な伸び縮みは、機械的劣化の原因となり、その際に生じる劣化副生物(劣化副生物の多くは小さ過ぎて、現状の技術のろ過装置ではろ過することができない)は、スラリーのプロセス流に入り込む。又、更にポンプの急速な動作は、ポンプに大きな衝撃を生じさせたり、スラリー凝集を生じさせ、重大な問題となることがある。
上記によって明らかなように、このポンプ式による供給方法では、円滑なスラリーの供給を実現するために、絶え間のない保守を行わなくてはならない。
【0006】
ポンプ式によるスラリーの供給方式が有する上記した問題点に鑑み、ポンプを通じてスラリーを推進することなく、真空系と加圧系とを使って、スラリーを入れる容器を交互に減圧及び昇圧することで、スラリーを供給する方法がある(以下、この供給方式をプレッシャーバキューム方式という)。この方式では、容器内を真空にすることによって、スラリーを一括供給源から、供給する容器へと抜き出すことができ、次いで、容器内を加圧することによって、スラリーを、最終使用箇所へ、或いは、昇圧することができる1又は2以上の中間容器とへ送り出すことができる。
【0007】
上記プレッシャーバキューム方式では、複数のスラリーの貯蔵用の容器が使用されるが、複数の貯蔵容器を使用することで、該容器からのスラリーの供給と、供給されてスラリーの量が減少した容器へとスラリーを再充填することを同時に行うことができる。このため、プレッシャーバキューム方式では、本質的に脈動がない状態で、無制限に連続してスラリーの供給を行うことが可能である。更に、プレッシャーバキューム方式によるスラリーの供給方法は、前記した、劣化、汚染及び保守の問題に悩まされがちな、従来のポンプ式による供給方法(インラインポンプ)の代替方法として、以前より注目されている(例えば、特許文献1参照)。又、この方法は、更なる工夫によって、系内の流動を制御することが可能であり、特に、従来のポンプ式による供給方法における保守の問題を解決することを可能とする。
【0008】
しかしながら、ポンプ方式に比べて一般的にプレッシャーバキューム方式は、スラリーにストレスを与え難く優れているが、スラリー種(特に、研磨粒子材料の種類)に依存するものの、下記に述べるように、多かれ少なかれ、スラリーを構成している研磨粒子の凝集の問題がある。スラリーは、流動させたり撹拌させたりする等の物理的な要因によって、その粒子径が大きくなる性質がある。従って、上述したように、循環運転によって常にスラリーを流動させておくと、スラリーの粗大粒子を増加させてしまうという問題がある。この粗大粒子が増加することによる問題としては、研磨性能、例えば、スクラッチや、研磨レートや、均一性に影響を与えてしまい、歩留りの面からみても改良する必要がある。
【0009】
これに対し、上記方法のうちのポンプ式によるスラリー供給方法において、研磨装置がアイドル中はスラリーの循環を停止して、ポンプが一定間隔で交互に運転・停止する間欠運転を行うようにすることで、ポンプの圧力によって研磨剤中の研磨粒子が衝突する等の原因で粗大化することが抑制されるといった提案がある(特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、研磨装置が停止している間はスラリーの供給装置を停止させる必要があるため、研磨装置の運転を再び開始する際に、新たに供給装置を起動させなくてはならず、スラリーの供給が可能となる安定した供給流量や圧力となるまでに時間を要するという欠点がある。
【0010】
また、従来、スラリー供給システムとして、1台のスラリー供給装置から複数台(例えば20台)へ供給ループと分岐バルブにより供給する集中供給方式が実施されており、この集中供給方式の場合は、コスト的にもオペレーション的にも効率的なシステムとなる一方で、スラリー供給装置のスラリーを供給するポンプ、プレッシャー・バキューム・ベッセル(PVV)等の供給エンジンが故障などで停止した場合に全停止となるリスクがあった。即ち、CMP工程にて研磨処理中にスラリーの供給が停止した場合、処理中のウエハは、スクラップ又はリワークなどが必要な状況となり、顧客の生産原価にダメージを与えることになる。
【0011】
この欠点を解消するため、本発明者等は、供給全停止のリスクへの対策として、フルリダンダンシー供給方式を開発した。
この方式の詳細は、後述するが、この方式は、ダブルループを組み、2台の供給装置と2本の供給ループで相互バックアップを行うことで、片方の供給が停止してもCMP工程への供給を停止することなく続行する方式であり、供給停止のないシステムとして大きな効果を有している。
【0012】
しかし、国際的な半導体価格競争の中で、設備投資についてもコストダウンが求められ、このようなダブルループを組むシステムに対してのコスト削減提案が要求されている。この方式は、以下のような特徴を有している。
1)1種類のスラリーについて2本の供給ループを設けた。
2)複数の供給先(CMP装置;最大20台程度)にスラリーを同時に供給する。
3)バルブボックス内バルブにて、各ループからの供給先を切替える(通常は各ループの受持ちが半々になるように制御する。)バルブ切替えの制御は、制御盤から行う。
4)片方の供給装置がダウンした場合は、他方の供給装置からの供給ループに即時自動切換えを行う。(この状態は、ダウン機が復旧後手動で切替え、復旧するまで継続する。)
5)メリットとしては、一方の供給機がダウンしても供給を継続可能となる。即ち、従来は、CMP工程にて研磨処理中に供給が停止すると、ウエハの損害が発生するが、これを防ぐことができるとともに、片方の供給系で供給を継続したまま、他方のメンテナンスをすることが可能となる。
6)デメリットとしては、ダブルで供給系を設けることによる初期投資のコストが大となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表平6−500621号公報
【特許文献2】特開2000−158339公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、ダブルの供給系を設けることなく、供給機がダウンしても処理中のウエハの損害を出すことなく処理を行うことができ、初期投資のコストを低減できるスラリー供給装置及びスラリー供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するため、第1の課題解決手段として、少なくとも一つのスラリー供給タンクと、該スラリー供給タンク内のスラリーを少なくとも一つのCMP装置に供給する供給エンジンと、前記スラリー供給タンク内のスラリーを各CMP装置に供給し前記スラリー供給タンクに循環する循環ラインと、該循環ライン内のスラリーを各CMP装置に供給する分岐ラインと、前記各分岐ラインに設けたバルブと、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有する前記分岐ラインに接続したバッファー部材と、前記供給エンジンが停止したとき前記バッファー部材内に残留するスラリーを加圧し、各CMP装置に供給する加圧部材とよりなることを特徴とするスラリー供給装置を提供することにある。
【0016】
本発明は、第2の課題解決手段として、前記加圧部材として、窒素ガス等の不活性ガス及び/又は純水を用い、前記バッファー部材内に残留するスラリーを各CMP装置に供給すること特徴とするスラリー供給装置を提供することにある。
【0017】
本発明は、第3の課題解決手段として、前記バッファー部材として、前記分岐ラインと前記各CMP装置の中間に設けた、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有するバッファー容器を用いたことを特徴とするスラリー供給装置を提供することにある。
【0018】
本発明は、第4の課題解決手段として、前記バッファー部材として、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有するよう、太いパイプ径の分岐ラインを用いたこと特徴とするスラリー供給装置を提供することにある。
【0019】
本発明は、第5の課題解決手段として、前記バッファー部材として、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有するよう、長さを長くした分岐ラインを用いたこと特徴とするスラリー供給装置を提供することにある。
【0020】
本発明は、第6の課題解決手段として、少なくとも一つのスラリー供給タンクと、該スラリー供給タンク内のスラリーを少なくとも一つのCMP装置に供給する供給エンジンと、前記スラリー供給タンク内のスラリーを各CMP装置に供給し前記スラリー供給タンクに循環する循環ラインと、該循環ライン内のスラリーを各CMP装置に供給する分岐ラインと、前記各分岐ラインに設けたバルブと、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有する前記分岐ラインに接続したバッファー部材と、前記供給エンジンが停止したとき前記バッファー部材に接続した前記バッファー部材内に残留するスラリーを加圧し、各CMP装置に供給する加圧部材とよりなり、
前記バッファー部材は、各CMP装置にて処理中のウエハの処理を完了するのに十分な容量を保存できる容量とし、前記供給エンジンがダウンしたとき前記バルブを切り替え、前記加圧部材を加圧し、前記バッファー部材内に残留するスラリーの残液を各CMP装置に供給し、各CMP装置にて処理中のウエハの処理を完了することを特徴とするスラリー供給方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ダブルの供給系を設けることなく、ダブルの供給系を用いた場合と同様に、スラリーの供給エンジンがダウンしても、処理中のウエハを完全に処理することができるので、初期投資のコストを低減したまま、処理中のウエハの損害を出すことなく処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明者の開発に係る本発明の参考例であるダブルの供給系を用いたフルリダンダンシーシステムを示す模式図
【図2】本発明の一実施例を示す模式図
【図3】本発明の他の実施例を示す模式図
【図4】本発明の更に他の実施例を示す模式図
【図5】本発明の更に他の実施例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明者の開発に係る本発明の参考例であるダブルの供給ループAと供給ループB及び供給装置A及び供給装置Bを用いたフルリダンダンシーシステムを示す模式図である。
図1において、1〜10は、供給装置Aにおいて、スラリー1及びスラリー2をCMP装置であるCMP−1〜CMP−nに供給するための一方の供給ループAを示したものであり、1は、スラリー1のスラリータンク、2は、スラリー1の供給エンジン、3は、スラリー1の循環ライン、4−1a、4−1b〜4−na、4−nbは、スラリー1の分岐ライン、5−1a、5−1b〜5−na、5−nbは、スラリー1のバルブ、6は、スラリー2のスラリータンク、7は、スラリー2の供給エンジン、8は、スラリー2の循環ライン、9−1a、9−1b〜9−na、9−nbは、スラリー2の分岐ライン、10−1a、10−1b〜10−na、10−nbは、スラリー2のバルブである。
【0024】
11〜20は、供給装置Bにおいて、スラリー1及びスラリー2をCMP装置であるCMP−1〜CMP−nに供給するための他方の供給ループBを示したものであり、11は、スラリー1のスラリータンク、12は、スラリー1の供給エンジン、13は、スラリー1の循環ライン、14−1a、14−1b〜14−na、14−nbは、スラリー1の分岐ライン、15−1a、15−1b〜15−na、15−nbは、スラリー1のバルブ、16は、スラリー2のスラリータンク、17は、スラリー2の供給エンジン、18は、スラリー2の循環ライン、19−1a、19−1b〜19−na、19−nbは、スラリー2の分岐ライン、20−1a、20−1b〜20−na、20−nbは、スラリー2のバルブである。
21は、バルブ5−1a、5−1b〜5−na、5−nb、10−1a、10−1b〜10−na、10−nb、15−1a、15−1b〜15−na、15−nb、20−1a、20−1b〜20−na、20−nbを収納したバルブボックス、22は、本スラリー供給装置の制御盤を示したものである。
【0025】
以下、上記2台の供給装置A及びBと2台の供給ループA及びBを用いたフルリダンダンシーの供給システムを説明する。
このシステムでは、1種類のスラリー1を2本の供給ループA及びBを用いて複数のCMP装置CMP−1〜CMP−nに供給するものであり、先ず、片方の供給ループAについて説明する。スラリータンク1内のスラリー1を供給エンジン2により、循環ライン3に送り出し、バルブボックス21内の分岐ライン4−1a、バルブ5−1aよりCMP−1に供給する。その後、スラリー1は、再び循環ライン3よりスラリータンク1に戻され、循環される。
【0026】
そして、上記片方の供給ループAの供給装置Aがダウンした場合、バルブボックス21内のバルブを切替え、他方の供給ループBの供給装置Bよりスラリータンク11内のスラリー1を供給エンジン12により、循環ライン13に送り出し、バルブボックス21内のバルブ14−1a、分岐ライン15−1aよりCMP−1に供給する。その後、スラリー1は、再び循環ライン13よりスラリータンク11に戻され、循環される。
【0027】
一方、スラリー2は、スラリータンク6内から供給エンジン7により、循環ライン8に送り出し、バルブボックス21内の分岐ライン9−1a、バルブ10−1aよりCMP−1に供給する。その後、スラリー2は、再び循環ライン8よりスラリータンク6に戻され、循環される。
そして、上記片方の供給ループAの供給装置Aがダウンした場合、バルブボックス21内のバルブを切替え、他方の供給ループBの供給装置Bよりスラリータンク16内のスラリー2を供給エンジン17により、循環ライン18に送り出し、バルブボックス21内のバルブ20−1a、分岐ライン19−1aよりCMP−1に供給する。その後、スラリー2は、再び循環ライン18よりスラリータンク16に戻され、循環される。
【0028】
この方式は、ダブルループを組み、2台の供給装置と2本の供給ループで相互バックアップを行うことで、片方の供給が停止してもCMP工程への供給を停止することなく続行する方式であり、供給停止のないシステムとしての実績が確立している。尚、ダブルループの実施例として、2種類のスラリー×ダブルループ=4本ループについて説明したが、その他として1エンジン仕様の例もあり、この場合は、1種類のスラリー×ダブルループ=2本ループとなる場合もある。
しかし、国際的な半導体価格競争の中で、設備投資についてもコストダウンが求められ、このようなダブルループを組むシステムに対してのコスト削減提案が要求されている。
【0029】
本発明は、上記のような本発明者の開発に係る本発明の参考例であるダブルループを組むシステムの利点をそのまま生かしたまま、初期投資のコストを削減するために開発したシステムである。以下その詳細を説明する。
【0030】
図2及び図3は、本発明の一実施例を示す模式図である。
図2は、図1におけるダブルループA、B及びダブル供給装置A、Bの片方の供給ループA、供給装置Aを示したものであり、同一の部品には同一の符号を付してあり、スラリー1の循環ライン3の分岐ライン4−1a、4−1b、・・・・・4−na、4−nbに設けられた各バルブ5−1a、5−1b、・・・・・5−na、5−nbと各CMP装置のCMP−1、CMP−2、・・・・・CMP−nとの間にバッファー容器23−1a、23−1b、・・・・・23−na、23−nbが設けられている。
24−1a、24−1b、・・・・・24−na、24−nbは、スラリー2の循環ライン8の分岐ライン9−1a、9−1b、・・・・・9−na、9−nbに設けられた各バルブ10−1a、10−1b、・・・・・10−na、10−nbと各CMP装置のCMP−1、CMP−2、・・・・・CMP−nとの間に設けられたバッファー容器である。25は、分岐ラインを窒素ガスまたは純水で加圧するための切替えバルブによる加圧部材、22は、本スラリー供給装置の制御盤を示したものである。
【0031】
スラリー1は、図1に示したダブルループと同様にして、スラリータンク1内のスラリー1を供給エンジン2により、循環ライン3に送り出し、バルブボックス21内のバルブ5−1a、分岐ライン4−1aよりCMP−1に供給する。その後、スラリー1は、再び循環ライン3よりスラリータンク1に戻され、循環される。循環流量は、4リットル/分、供給圧力は、150kPaとした。この条件は一例であり、スラリーの種類などによって最適化する。
尚、スラリー2は、同様にして、スラリータンク6より循環ライン8によって循環使用される。
【0032】
本発明においては、1種類のスラリー(スラリー1)には、1本の供給ループAを使用し、複数のCMP装置(CMP−1、〜CMP−n)にスラリーを供給する。
各分岐ライン4−1a、4−1b・・・・・〜4−na、4−nbには、バッファー容器23−1a、23−1b、・・・・・23−na、23−nbが設けられている。このバッファー容器23−1a、23−1b、・・・・・23−na、23−nbの詳細は、図3に示す通りであり、CMP装置(CMP−1、〜CMP−n)にて研磨中のウエハの処理が完了するのに十分な容量を有するよう設計される。
【0033】
そして、供給装置Aの供給エンジン2がダウンしたとき、バルブボックス21内の各バルブ5−1a、5−1b、・・・・・5−na、5−nbを切り替えて、分岐ライン4−1a、4−1b・・・・・〜4−na、4−nbを加圧部材25内の窒素ガスで加圧し、ユースポイントで所望の供給圧、例えば130kPaが得られるよう調節し、バッファー容器23−1a、23−1b、・・・・・23−na、23−nb内のスラリー残液を窒素ガスによりCMP装置(CMP−1、〜CMP−n)に加圧供給し、CMP装置(CMP−1、〜CMP−n)において処理中のウエハの処理を完了させる。
供給装置Aの供給エンジン2がダウンして、バッファー容器23−1a、23−1b、・・・・・23−na、23−nbでの加圧供給に切り替わったことは、制御盤22により、電気信号等によりCMP装置(CMP−1、〜CMP−n)に伝達される。CMP装置(CMP−1、〜CMP−n)は、処理中のウエハの研磨が完了次第、安全に停止され、手動での復旧処理がなされるまで停止状態が継続される。
【0034】
加圧部材25としては、窒素ガス等の不活性ガス、若しくはDIWのような純水、又は両者を併用することができる。加圧部材による加圧としては、ユースポイントで所望の供給圧力が130kPaとすることが好ましい。
バッファー容器23−1a、23−1b、・・・・・23−na、23−nbとしては、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有するよう設計する必要があり、500ml以上とすることが必要である。
【0035】
図4は、本発明の他の実施例を示す模式図である。図4は、バッファー部材として、バッファー容器23−1a、23−1b、・・・・・23−na、23−nbを設ける代わり、分岐ライン4−1a、4−1b・・・・・〜4−na、4−nbのライン径を太くし、26−1a、26−1b・・・・・〜26−na、26−nbとしたものであり、その太さは、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有するよう設計する必要があり、容量を500ml以上、外径25.4mm、内径22.3mm、長さ1.55m以上とすることが好ましい。
【0036】
図5は、本発明の他の実施例を示す模式図である。図5は、バッファー部材として、バッファー容器23−1a、23−1b、・・・・・23−na、23−nbを設ける代わり、分岐ライン4−1a、4−1b・・・・・〜4−na、4−nbをコイル状のパイプとし、その長さを長くし、27としたものであり、その長さは、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有するよう設計する必要があり、容量を500ml以上、外径9.53mm、内径6.38mm、長さ18.77m以上とすることが好ましい。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の実施例を説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
図2及び図3に示す工程に従って実施した。その設定値は、以下の通りとした。
スラリー1:Cu層研磨用スラリー
スラリー2:バリアメタル膜研磨用スラリー
供給エンジン2、7:プレッシャーバキュームベッセル
CMP装置:20台 CMP−1、CMP−2、・・・CMP−20
循環流量:4リットル/分
供給ループ圧力:150KPa
バッファー容器の容量:500ml
2加圧:150KPa
その結果、供給エンジンが停止後も、130KPaのユースポイント供給圧でCMP装置への供給を継続し、処理中のウエハの研磨を完了させることができた。
【0039】
<実施例2>
図2及び図4に示す工程に従って実施した。その設定値は、以下の通りとした。
スラリー1、スラリー2、供給エンジン2、7として、実施例1と同じものを使用した。
CMP装置:20台 CMP−1、CMP−2、・・・CMP−20
循環流量:4リットル/分
供給ループ圧力:150KPa
分岐ラインの径:3/8インチ、6.5m
バッファー容量:600ml
2加圧:150KPa
その結果、供給エンジンが停止後も、130KPaのユースポイント供給圧でCMP装置への供給を継続し、処理中のウエハの研磨を完了させることができた。
【0040】
<実施例3>
図2及び図5に示す工程に従って実施した。その設定値は、以下の通りとした。
スラリー1、スラリー2、供給エンジン2、7として、実施例1と同じものを使用した。
CMP装置:20台 CMP−1、CMP−2、・・・CMP−20
循環流量:4リットル/分
供給圧力:150KPa
2加圧:150KPa
実施例1に記載の通常の分岐ラインと同径のPFAチューブの長さを長くするため、図5に示すように分岐ラインをコイル状にした。また、分岐ラインとしては、循環ラインと同径(外形9.52mm、内径6.38mm)のPFAチューブを採用した。なお、本実施例において、1枚のウエハ研磨に必要なスラリー残液は、200ml/分×3分=600mlであるため、必要なチューブ長として、18.77m、直径70mmのコイル状とし、コイル全長は、880mmとした。
その結果、N2加圧時に気泡が混入することなく、バッファー内のスラリー残液を押し出すことができ、供給エンジンが停止した後もCMP装置への供給を継続し、処理中のウエハの研磨を完了させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ダブルの供給系を設けることなく、ダブルの供給系を用いた場合と同様に、スラリーの供給エンジンがダウンしても、処理中のウエハを完全に処理することができるので、初期投資のコストを低減したまま、処理中のウエハの損害を出すことなく処理を行うことができるスラリー供給装置及びスラリー供給方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:スラリー1のスラリータンク
2:スラリー1の供給エンジン
3:スラリー1の循環ライン
4−1a、4−1b〜4−na、4−nb:スラリー1の分岐ライン
5−1a、5−1b〜5−na、5−nb:スラリー1のバルブ
6:スラリー2のスラリータンク
7:スラリー2の供給エンジン
8:スラリー2の循環ライン
9−1a、9−1b〜9−na、9−nb:スラリー2の分岐ライン
10−1a、10−1b〜10−na、10−nb:スラリー2のバルブ
11:スラリー1のスラリータンク
12:スラリー1の供給エンジン
13:スラリー1の循環ライン
14−1a、14−1b〜14−na、14−nb:スラリー1の分岐ライン
15−1a、15−1b〜15−na、15−nb:スラリー1のバルブ
16:スラリー2のスラリータンク
17:スラリー2の供給エンジン
18:スラリー2の循環ライン
19−1a、19−1b〜19−na、19−nb:スラリー2の分岐ライン
20−1a、20−1b〜20−na、20−nb:スラリー2のバルブ
21:バルブ5−1a、5−1b〜5−na、5−nb、10−1a、10−1b〜10−na、10−nb、15−1a、15−1b〜15−na、15−nb、20−1a、20−1b〜20−na、20−nbを収納したバルブボックス
22:本スラリー供給装置の制御盤
23−1a、23−1b、・・・・・23−na、23−nb:バッファー容器
24−1a、24−1b、・・・・・24−na、24−nb:バッファー容器
25:加圧部材
26−1a、26−1b・・・・・〜26−na、26−nb:バッファー容器
27:バッファー容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのスラリー供給タンクと、該スラリー供給タンク内のスラリーを少なくとも一つのCMP装置に供給する供給エンジンと、前記スラリー供給タンク内のスラリーを各CMP装置に供給し前記スラリー供給タンクに循環する循環ラインと、該循環ライン内のスラリーを各CMP装置に供給する分岐ラインと、前記各分岐ラインに設けたバルブと、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有する前記分岐ラインに接続したバッファー部材と、前記供給エンジンが停止したとき前記バッファー部材内に残留するスラリーを加圧し、各CMP装置に供給する加圧部材とよりなることを特徴とするスラリー供給装置。
【請求項2】
前記加圧部材として、窒素ガス等の不活性ガス及び/又は純水を用い、前記バッファー部材内に残留するスラリーを各CMP装置に供給すること特徴とする請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項3】
前記バッファー部材として、前記分岐ラインと前記各CMP装置の中間に設けた各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有するバッファー容器を用いたこと特徴とする請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項4】
前記バッファー部材として、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有するよう、太いパイプ径の分岐ラインを用いたこと特徴とする請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項5】
前記バッファー部材として、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有するよう、長さを長くした分岐ラインを用いたこと特徴とする請求項1に記載のスラリー供給装置。
【請求項6】
少なくとも一つのスラリー供給タンクと、該スラリー供給タンク内のスラリーを少なくとも一つのCMP装置に供給する供給エンジンと、前記スラリー供給タンク内のスラリーを各CMP装置に供給し前記スラリー供給タンクに循環する循環ラインと、該循環ライン内のスラリーを各CMP装置に供給する分岐ラインと、前記各分岐ラインに設けたバルブと、各CMP装置内にセットされているウエハを処理するのに充分な容量のスラリーを保持できる容量を有する前記分岐ラインに接続したバッファー部材と、前記供給エンジンが停止したとき前記バッファー部材に接続した前記バッファー部材内に残留するスラリーを加圧し、各CMP装置に供給する加圧部材とよりなり、
前記バッファー部材は、各CMP装置にて処理中のウエハの処理を完了するのに十分な容量を保存できる容量とし、前記供給エンジンがダウンしたとき前記バルブを切り替え、前記加圧部材を加圧し、前記バッファー部材内に残留するスラリーの残液を各CMP装置に供給し、各CMP装置にて処理中のウエハの処理を完了することを特徴とするスラリー供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40642(P2012−40642A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183801(P2010−183801)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(597140523)アプリシアテクノロジー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】