説明

スロットアレイアンテナ及びレーダ装置

【課題】船舶などのような動揺する場所で用いられてもサイドローブが抑制される安価なスロットアレイアンテナを提供する。
【解決手段】放射用導波管30は、放射用スロット31がy軸方向及びx軸方向に複数並べて形成されている正面アルミニウム板30aを有している。この正面アルミニウム板30aは、x軸方向に電磁波を導くための導波空間の一側面を構成する。格子40は、金属壁41が正面アルミニウム板30aのy軸方向及びz軸方向に延びるように各々が配置されている。そして、この金属壁41は、放射用スロット31の行に合わせて繰り返し配置される。これら多数の金属壁41は、金属基板42によって連結して固定されている。クリップ50は、金属基板42を放射用導波管30の正面アルミニウム板30aに留めることによって、放射用導波管30に格子40を留める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ、通信機器あるいは放送機器等に用いられるスロットアレイアンテナ及びスロットアレイアンテナを持つレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導波管の側面に、送受信電磁波に共振する複数のスロットを配列したスロットアレイアンテナは、一般に低利得でサイドローブレベルが高い特性を備えている。この特性を改善したスロットアレイアンテナが特許文献1(国際公開第2008/018481号パンフレット)において提案されている。
【0003】
この特許文献1に記載されているスロットアレイアンテナの一例を図18(A)及び図18(B)に示す。図18(A)は特許文献1に係るスロットアレイアンテナの構成例を示す正面図であり、図18(B)は底面図である。図18(A)及び図18(B)のxyz座標の丸の中に黒点を記したものは紙面に対して垂直上方に向かう方向を示し、丸の中に×を記したものは紙面に対して垂直下方に向かう方向を示している。図18(A)及び図18(B)のスロットアレイアンテナ100は、主に、スロット131を2次元状に配列した放射用導波管130と、その放射用導波管130の導波空間に電磁波を導入するスロット121を配列した導入用導波管120とを備えている。
【0004】
放射用導波管130は、方形導波管であり、放射用導波管130の第1の導体平面用金属板130aには、スロット131がy軸方向に複数並んだスロットの並びが、x軸方向に多数形成されている。この第1の導体平面用金属板130aに平行に、第2の導体平面用金属板130bが配置されている。これら第1の導体平面用金属板130aと第2の導体平面用金属板130bとは、ネジ133によって接合され、放射用導波管130を伝搬する電磁波の節及び管壁電流の節に相当する位置に配置された支持部材132により支持されている。これら第1の導体平面用金属板130aと第2の導体平面用金属板130bの間に導波空間が形成される。この放射用導波管130のx軸方向の一方端には電波吸収体134が設けられており、他方端に短絡面が設けられている。また、第1の導体平面用金属板130aと第2の導体平面用金属板130bとを繋ぐ2つの側面も短絡面となる。
【0005】
導入用導波管120は、放射用導波管130の第2の導体平面用金属板130bを一側面として形成されている。導入用導波管120は、第2の導体平面用金属板130bに樋型の金属板を取り付けて形成される。導入用導波管120は、y軸方向が電磁波伝搬方向になるように取り付けられている。導入用導波管120のスロット121は、第2の導体平面用金属板130bに形成され、y軸方向に並ぶように配置されている。
【0006】
スロット121は、導入用導波管120の電磁波伝搬方向に対して導入用導波管120内の電磁波の半波長または半波長の正数倍毎に設けられている。そして、導入用導波管120の電磁波伝搬方向に複数の磁界ループが並ぶ高次モードの電磁波が放射用導波管130に励振される。スロット131は、高次モードの電磁波に結合して放射電界の主要偏波面が同一方向を向き、かつ主要偏波面に直交する偏波成分が互いに打ち消されるように形成されている。
【0007】
以上のように構成されているスロットアレイアンテナ100は、放射用導波管130に形成されたスロット131が高次モードの管壁電流を任意の箇所で遮って第1の導体平面用金属板130aから電磁波を放射することが可能になっている。そのため、スロットアレイアンテナであるにも拘らず、サイドローブ制御が容易である。例えば、放射用導波管130のスロット131の形状または配置を、放射用導波管130の電磁波伝搬方向の中央から両端方向へ離れる程、放射する電磁波の強度が低くなるように定める。そうすると、放射用導波管130から放射される電磁波のサイドローブが効果的に抑圧される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、特許文献1に記載されているスロットアレイアンテナ100は、スロットアレイアンテナであるにも拘らず、サイドローブ制御が容易であるという優れた特性を有している。
【0009】
しかし、特許文献1に示されているスロットアレイアンテナ100においても、例えばそれを船舶用レーダのアンテナとして用いた際には、船舶が動揺してアンテナの垂直方向の角度(y−z平面におけるz軸とのなす角)が変化することにより、サイドローブの抑圧効果が低減する状況が発生する場合がある。
【0010】
この発明の目的は、船舶などのような動揺する場所で用いられてもサイドローブの抑制効果が十分に得られる安価なスロットアレイアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためのスロットアレイアンテナは、複数の放射用スロットが並ぶ放射用スロット列が形成されている導体面を有し、放射用スロット列から放射される電磁波を導く放射用導波管と、導体面に交差する交差方向に向けて面状に延びるように各々が形成されかつ複数の放射用スロットに合わせて繰り返し配置されている複数の導体壁と、複数の導体壁を連結して固定する基板とを有し、基板が放射用導波管の導体面に留められる格子とを備える。
【0012】
このスロットアレイアンテナによれば、複数の導体壁によって、放射用スロット列から放射される電磁波のサイドローブの十分な抑制効果が得られる。また、基板を導体面に留めるだけで簡単に組み立てられ、しかも丈夫である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスロットアレイアンテナによれば、船舶などの動揺する場所で用いられてスロットアレイアンテナの電磁波を放射する導体面の角度が動揺しても、格子の複数の導体壁によってサイドローブの抑制効果が確保される。このサイドローブの抑制に必要な複数の導体壁が格子の基板によって放射用導波管に簡単に留められるのでスロットアレイアンテナを安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係るスロットアレイアンテナの斜視図。
【図2】(A) 図1のスロットアレイアンテナの正面図。 (B) 図1のスロットアレイアンテナの底面図。
【図3】図1のスロットアレイアンテナの放射用スロット及び金属壁の配置を説明するための図。
【図4】図1のスロットアレイアンテナの導入用スロット及び放射用スロットの配置を説明するための図。
【図5】(A) 図1のスロットアレイアンテナのクリップの構成を示す斜視図。 (B) 図1のスロットアレイアンテナの分解斜視図。
【図6】第2実施形態に係るスロットアレイアンテナの斜視図。
【図7】(A) 図6のスロットアレイアンテナの部分破断正面図。 (B) 図7(A)のI−I線断面図。
【図8】(A) 図6のスロットアレイアンテナの導入用スロットの一例を示す図。 (B) 図6のスロットアレイアンテナの導入用スロットの他の例を示す図。
【図9】(A) 図6のスロットアレイアンテナの放射用スロットからの電磁波の放射の一例を説明するための図。(B) 図6のスロットアレイアンテナの放射用スロットからの電磁波の放射の他の例を説明するための図。
【図10】(A) 図6のスロットアレイアンテナの組み立て工程の一工程を示す模式図。(B) 図6のスロットアレイアンテナの組み立て工程の他の工程を示す模式図。(C) 図6のスロットアレイアンテナの組み立て工程の他の工程を示す模式図。
【図11】放射用導波管と格子の間の隙間の影響を説明するための模式図。
【図12】(A) 留め具にネジを用いたスロットアレイアンテナの部分破断正面図。 (B) 図12(A)のII−II線断面図。
【図13】垂直偏波についてのネジの影響を説明するための模式図。
【図14】第3実施形態に係るスロットアレイアンテナの断面図。
【図15】(A) 第4実施形態に係るスロットアレイアンテナの製造工程を示す断面図。(B) 第4実施形態に係るスロットアレイアンテナの断面図。
【図16】スロットアレイアンテナを用いたレーダ装置の構成を示す概念図。
【図17】第2実施形態のスロットアレイアンテナの変形例を示す斜視図。
【図18】(A) 従来のスロットアレイアンテナの正面図。(B) 従来のスロットアレイアンテナの底面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るスロットアレイアンテナは、レーダや通信機器や放送用機器などの電磁波の放射などに用いられるアンテナである。以下の実施形態においては、上述のようなスロットアレイアンテナの例にレーダ用スロットアレイアンテナを挙げて説明を行っているが、本発明はレーダ用スロットアレイアンテナに限定されるものではない。
【0016】
<第1実施形態>
(1)全体構成
本発明の第1実施形態に係るスロットアレイアンテナの全体構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係るスロットアレイアンテナの概観を示す斜視図である。図2(A)は、図1のスロットアレイアンテナの正面図であり、図2(B)は、図1のスロットアレイアンテナの底面図である。図3は、放射用導波管30の一方端と他方端の近傍を拡大した一部破断拡大正面図である。
【0017】
図1に示されているスロットアレイアンテナ10は、主に、導入用導波管20と放射用導波管30と格子40とクリップ50とを備えている。放射用導波管30に、図2(A)に示すように、放射用スロット31が縦横に並べて配置されている。この放射用スロット31から電磁波が放射されるが、放射用スロット31からの電磁波の放射方向はz軸方向である。放射用導波管30内の電磁波伝搬方向はx軸方向である。また、導入用導波管20内の電磁波伝搬方向はy軸方向である。
【0018】
放射用導波管30は、アルミニウム板のパンチング及び折り曲げ加工により製造される。このように製造された放射用導波管30は、4つの側面が矩形のアルミニウム製平板で構成される方形導波管である。放射用導波管30の正面アルミニウム板30aに、放射用スロット31がy軸方向(縦方向)に複数並んだスロットの行Ln(図3参照)が、x軸方向(横方向)に並べて多数形成される。この正面アルミニウム板30aに平行に、背面アルミニウム板30bが配置されている。この放射用導波管30のx軸方向の一方端には電波吸収体34が設けられており、他方端に短絡面が設けられている。また、正面アルミニウム板30aと背面アルミニウム板30bとを繋いで支持する2つの側面の上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30dも短絡面となる。そして、これら正面アルミニウム板30aと背面アルミニウム板30bの間、つまり正面アルミニウム板30aと背面アルミニウム板30bと上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30dで囲まれた空間が導波空間SSになっている。例えば、使用周波数9.41GHzのスロットアレイアンテナ10の大きさは、放射用導波管30の長さLが895.5mm、幅Aが88.8mmである。
導入用導波管20は、放射用導波管30の背面アルミニウム板30bを一側面として形成されている。導入用導波管20は、アルミニウム板を略矩形の樋型に折り曲げて形成される。導入用導波管20は、y軸方向が電磁波伝搬方向になるように、樋型のアルミニウム板がネジによって取り付けられている。導入用導波管20の導入用スロット21は、背面アルミニウム板30bに形成され、図2(A)に示すとおり、y軸方向に並ぶように配置されている。
【0019】
格子40は、放射用導波管30の正面アルミニウム板30aの正面側(z軸方向)に留め付けられている。格子40は、多数の金属壁41と、その多数の金属壁41を連結して固定する金属基板42とからなる。格子40の構造の詳細については後述する。
【0020】
クリップ50は、側面の上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30dの外側からこの上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30dとを覆うように取り付けられる。このクリップ50は、断面コ字形の形状部分を有しており、金属基板42を正面アルミニウム板30aに押し付けるように、弾性力によって金属基板42と背面アルミニウム板30bとを挟みつける。それにより、金属基板42が正面アルミニウム板30aに隙間なく接する。クリップ50の構造の詳細については後述する。
【0021】
(2)詳細構成
(2−1)導入用スロットの配置
図4には、導入用導波管20内の電磁波伝搬モードの一例が示されている。図中一点鎖線のループMfは、導入用導波管20内において電界強度の高い部分を取り囲むように周回する磁界ループである。図中破線のループMrは、放射用導波管30内において電界強度の高い部分を取り囲むように周回する磁界ループである。また、隣接する磁界ループの間を跨ぐように表されている実線の矢印によって、管壁電流の方向および分布が示されている。図4の導入用導波管20の内部に励振用プローブが設けられており、その励振用プローブには外部から同軸コネクタを介して給電されている。図4の電磁波伝搬モードを得るため、導入用導波管20は、その両端部あるいは片端部を短絡面22で短絡していて、内部に定在波が生じる共振型で用いられている。そのため、短絡面22から最も近い導入用スロット21は、定在波が形成されるように、その中心から短絡面22までの距離が凡そλg/4(λgは導入用導波管20内の電磁波伝搬方向の管内波長)の整数倍のところに配置される。ここでは、導入用スロット21の中心が短絡面22から管内波長λg/4だけ離れたところに配置されている。
【0022】
図4に示す3つの導入用スロット21は、導入用導波管20の電磁波伝搬方向(y軸方向)に沿って管内波長λgの凡そ半波長のピッチで配置されている。この配置ピッチは、y軸方向の磁界ループに対応して導入用スロット21が配置されるように設定されている。また、導入用スロット21は、y軸方向に長く延びるように配置されている。また、導入用スロット21の配置位置には、正面視において導入用導波管20の中心軸CLから放射用導波管30の他方端の方向にオフセットd1が与えられている。そのように配置された導入用スロット21がx軸方向に流れる管壁電流を遮り、各導入用スロット21からは、太線の矢印で示された方向に電界Esが向く電磁波が放射用導波管30の管内に放射される。このように、凡そλg/2毎に繰り返し配置されている導入用スロット21から放射される電磁波の電界の向きが交互に逆方向を向くため、導波空間SSにはTEn0モードの電磁波が伝搬される。ここでnは放射用導波管30の縦方向(導入用導波管20の電磁波伝搬方向(y軸方向))の電界強度分布の山の数である。以下、このモードをTEモードの高次モードという。
【0023】
この例では、導入用導波管20の導入用スロット21は、導入用導波管20の電磁波伝搬方向(y軸方向)に対して管内波長λgの半波長毎に繰り返し設けられているが、凡そ管内波長λgの整数倍毎に繰り返し設けられてもよい。管内波長λgの整数倍のピッチで導入用スロット21が繰り返し設けられるのは、放射用導波管30にTEMモードの電磁波を生じさせるためである。
【0024】
(2−2)放射用スロットの配置
スロットアレイアンテナ10がレーダ用スロットアレイアンテナとして用いられる場合の一例として、x−z平面が水平になるように配置するケースがある。このようなケースでは、上述のような高次モードの電磁波に結合して放射電界の主要偏波面が水平方向を向き、この水平偏波に直交する偏波成分(垂直偏波)が打ち消されるように、放射用スロット31が配置される。
【0025】
放射用スロット31には、2種類の放射用スロット31s,31vが設けられている。図4に示すスロットアレイアンテナ10では、放射用導波管30の他方端の短絡面33に近い側に放射用スロット31sが設けられ、次の行に放射用スロット31vが設けられ、その次の行に放射用スロット31sが設けられるというように、放射用スロット31sの行と放射用スロット31vの行が交互に設けられる。放射用スロット31s、31vは、図4の例では1行当たり3個ずつ設けられており、放射用スロット31s、31vの属する列は、上側面アルミニウム板30cに近い側から順に1列目、2列目、3列目と数え、放射用スロット31s、31vの属する行は、それぞれ短絡面33に近い側から順に1行目、2行目…のように数える。
【0026】
同一の列にある放射用スロット31s、31vは、短絡面である上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30dからほぼ同じ距離に配置される。図4に示すように、1列目の放射用スロット31sの中心が上側面アルミニウム板30cから凡そλg´/2だけ離れた場所に位置するように配置される(λg´は放射用導波管30内の電磁波伝搬方向に直交する方向の管内波長)。同様に、3列目の放射用スロット31sの中心が下側面アルミニウム板30dから凡そλg´/2だけ離れた場所に位置するように配置される。そして、1列目と2列目及び2列目と3列目の放射用スロット31sの中心間の距離も同様に凡そλg´/2である。それにより、y軸方向に複数形成される磁界ループに対応して放射用スロット31s,31vを配置することができる。
【0027】
1行目の放射用スロット31sの中心から短絡面33までのx軸方向の距離が凡そλg″になる(λg″は放射用導波管30内の電磁波伝搬方向の管内波長)。そして、この放射用スロット31sと短絡面33との中間に導入用導波管20が位置する。これにより、放射用導波管30は、電磁波伝搬方向(x軸方向)を進行波形型、放射用導波管30の電磁波伝搬方向に直交する方向(y軸方向)を共振型として用いられる。
【0028】
図4に示すように、放射用スロット31sは、高次モードによって生じてy軸方向に流れる管壁電流を遮る位置に形成されている。そして、電波吸収体34に近い側(導入用導波管20から遠い側)を見ると分かるように、放射用スロット31sは、放射される電界の向きが同方向を向くように放射用スロット31sの傾き方向を交互に傾けている。すなわち、放射用スロット31sの傾きの配列は、導波空間SS内の高次モードの電磁波に結合して放射用スロット31sから放射される放射電界の主要偏波面が水平方向を向き、かつ主要偏波面に直交する偏波成分(垂直偏波)が互いに打ち消されるようになっている。この放射用スロット31sの傾きは、中央から両端方向(導入用導波管20の方向と電波吸収体34の方向)へ向かって離れるに従って小さくなるように構成されている。放射用スロット31sの傾きが大きいほど、放射用スロット31sで遮られる管壁電流の流れの向きとのなす角度が大きくなるため放射効率が高くなり、放射用スロット31sの傾斜角が0のときは管壁電流を殆ど遮らないので電磁波放射量がほぼ0になる。
【0029】
一方、各列の放射用スロット31vは、放射用スロット31sと同様に、短絡面である上側面アルミニウム板30cから凡そλg´/2の整数倍だけ離れた直線を基準に配置されている。しかし、放射用スロット31vの場合、y軸方向のオフセットdが与えられるため、放射用スロット31sとは異なって短絡面である上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30dからのその中心までの距離がちょうどλg´/2の整数倍にはならない。放射用スロット31vは、高次モードによって生じてx軸方向に流れる管壁電流を遮る位置に形成されていればよい。
【0030】
放射用スロット31vのオフセットdは、放射用スロット31vから放射される電界の向きが同方向を向くように、上側面アルミニウム板30cの方にオフセットdが与えられる場合と下側面アルミニウム板30dの方にオフセットdが与えられる場合とが放射用スロット31vの列毎に交互に繰り返される。このように配置されることにより、導波空間SS内の高次モードの電磁波に結合して放射用スロット31vから放射される放射電界の主要偏波面が水平方向を向き、かつ主要偏波面に直交する偏波成分(垂直偏波)が互いに打ち消される。
【0031】
図4に示すように、放射用導波管30に形成されている放射用スロット31vのオフセットdは、中央から両端方向(導入用導波管20の方向と電波吸収体34の方向)へ向かって離れるに従って小さくなるように構成されている。放射用スロット31vのオフセットdが大きいほど、放射用スロット31vによって遮られる管壁電流多くなるため放射効率が高くなり、放射用スロット31vのオフセットdが0のときは管壁電流を殆ど遮らないので電磁波放射量がほぼ0になる。
【0032】
上述のように、放射用スロット31sの傾き及び放射用スロット31vのオフセットdを設定しておくことによって、放射用導波管30の長手方向(x軸方向)の中央で放射強度が最大となり、中央から離れるに従って放射強度が次第に低下する放射強度分布となる。これによりサイドローブ発生および強度を抑制することができる。
【0033】
なお、以上に述べた例では放射用導波管30の電磁波伝搬方向(x軸方向)を進行波形型として用いるようにしたが、この電磁波伝搬方向(x軸方向)を共振型として用いることもできる。その場合は、放射用導波管30の、導入用導波管20から離れた側の一方端に電波吸収体34を設けないで短絡面とする。そして、この短絡面から放射用導波管の電磁波伝搬方向で最も近い放射用スロット31sまでの距離を放射用導波管30内の電磁波伝搬方向の管内波長λg″の凡そ1/2になるようにして定在波を形成できればよい。その三方の短絡面(上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30d及び短絡面33)から放射用スロット31sまでの距離については進行波形の場合と同様である。
【0034】
上述のように配置される放射用スロット31s,31vの行の間隔(x軸方向の配置ピッチPs)は、図3及び図4に示すように凡そ管内波長λg″の4分の1であり、使用周波数が9.41GHzの場合の一例として12.5mm程度に設定される場合がある。
【0035】
(2−3)格子の構成
図1及び図3に示すように、格子40の各金属壁41は、放射用スロット31s,31vの行Lnに沿ってy軸方向に延びるように、かつ正面アルミニウム板30aに対する垂直方向(z軸方向)に延びるように形成された長方形の金属板で構成されている。金属壁41の厚みt1は例えば1mmである。また、各金属壁41は、放射用スロット31s,31vの各行の間に形成されている。
【0036】
多数の金属壁41の高さH1(z軸方向の長さ)は、使用周波数の波長の1/2×0.8〜1/2×1.2であることが好ましい。使用周波数が9.41GHzの場合、金属壁41の高さH1は13〜19mm程度である。さらに好ましくは、使用周波数の波長の1/2×0.9〜1/2×1.1であり、その場合には高さH1が14〜18mm程度になる。最も好ましいのは、使用周波数の波長の2分の1であり、9.41GHzの場合には16mm程度になる。金属基板42に厚みがある場合には、金属基板42の厚みを考慮して金属壁41の高さHが決まる。金属壁41の高さHが金属基板42の上面から定義される場合には、金属基板42の厚みと金属壁41の高さHの和が使用周波数の波長の2分の1になるように決定される。金属壁41の高さH1は、要求される性能と製造時の誤差を考慮して適切な値に設定される。
【0037】
金属壁41は、例えば使用周波数が9.41GHzの場合を例に挙げると、放射用導波管30の幅A(y軸方向の長さ)よりそれぞれ寸法ΔAだけはみ出ており、ΔA=3mmである。従って、金属壁41の幅W(y軸方向の長さ)は(A+2ΔA)で与えられ、94.8mmになる。隣接する金属壁41の間の間隔(x軸方向の配置ピッチPp)は、放射用スロット31s,31vの行の間隔(配置ピッチPs)と同様、図3に示すように管内波長λg″の4分の1程度になる。
【0038】
金属基板42には、多数の金属壁41が固定されている。金属壁41と金属基板42とは、例えば一体成形されたアルミダイキャストで構成されてもよく、あるいは別々に成形して溶接などによって接合されて形成されてもよい。それにより、金属壁41の正面アルミニウム板30a側の辺41a(図1参照)は、金属基板42に電気的に接続されている。金属基板42には、放射用スロット31s,31vを露出させるための開口部42aが設けられている。また、金属基板42の長辺に沿ってリブ42bが形成されている。このリブ42bは、クリップ50を取り付けるためのものである。
【0039】
(2−4)クリップの構成とアンテナの組み立て
図5(A)は、クリップの構造を示す斜視図である。図5(B)は、第1実施形態のスロットアレイアンテナの組み立て分解図である。クリップ50は、第1羽根部51と第2羽根部52とが弾性部53によって繋がっている構成を有している。第1羽根部51の断面は、V字形に折れ曲がっている。この第1羽根部51のV字形の先端部51aaから第2羽根部52までの高さH2は、放射用導波管30と金属基板42とを重ねて挟んだ状態で、弾性部53が反って第1羽根部51と第2羽根部52とによって金属基板42が放射用導波管30を押し付ける力が発生するように設計されている。つまり、弾性部53に力が働いていない状態で、クリップ50の高さH2<(放射用導波管30の高さH3+金属基板42の厚みt2)の関係が成り立つ。
【0040】
第1羽根部51及び弾性部53は、櫛型に形成され、第1羽根部51の歯の部分51aが金属基板42の面に当たるように構成されている。そして、クリップ50で格子40を放射用導波管30に留めるときに、これら第1羽根部51の歯の部分51aの間に金属壁41が配置されるように構成されている。
【0041】
図5(B)にクリップ50が一つしか示されていないが、クリップ50がもう1つ格子40の陰に隠れている。これら2つのクリップ50が放射用導波管30の両側からそれぞれ取り付けられる。クリップ50には、互いに隣接する第1羽根部51の歯の部分51aの間に突片54が形成されている。この突片54は、クリップ50が放射用導波管30に格子40を止め付けた状態で、放射用導波管30と格子40とが接触する境界部分を覆って、境界部分の隙間から電磁波が漏れるのを防ぐ。
【0042】
クリップ50は、格子40の金属基板42のリブ42bに先端部51aaを引っ掛けて押し込むことによって放射用導波管30と格子40とを重ねたものに嵌め込まれる。このときのクリップ50の挙動については、第2実施形態と同じであるから、第2実施形態の説明において図を用いて説明する。
【0043】
<第2実施形態>
(1)全体構成
本発明の第2実施形態に係るスロットアレイアンテナの全体構成について図6及び図7を用いて説明する。図6は、第2実施形態に係るスロットアレイアンテナの概観を示す斜視図である。図7(A)は、図6のスロットアレイアンテナの部分破断正面図であり、図7(B)は、図7(A)のI−I線断面図である。
【0044】
図6に示されているスロットアレイアンテナ10Aは、主に、導入用導波管20Aと放射用導波管30Aと格子40Aとクリップ50とを備えている。放射用導波管30Aに、図7(A)に示すように、放射用スロット36が縦横に並べて配置されている。この放射用スロット36から電磁波が放射されるが、放射用スロット36からの電磁波の放射方向はz軸方向であり、放射用導波管30A内の電磁波伝搬方向はx軸方向であり、導入用導波管20A内の電磁波伝搬方向はy軸方向である。
【0045】
放射用導波管30Aは、アルミニウム板のパンチング及び折り曲げ加工により製造される。このように製造された放射用導波管30Aが4つの側面が矩形のアルミニウム製平板で構成される方形導波管である点は、第1実施形態の放射用導波管30と同様である。放射用導波管30Aの正面アルミニウム板30Aaに、放射用スロット36がy軸方向(縦方向)に複数並んだスロットの行が、x軸方向(横方向)に多数形成される。この正面アルミニウム板30Aaに平行に、背面アルミニウム板30Abが配置されている。この放射用導波管30Aのx軸方向の一方端には電波吸収体34が設けられており、他方端に短絡面33が設けられている。また、正面アルミニウム板30Aaと背面アルミニウム板30Abとを繋いで支持する2つの側面の上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30dも短絡面となる。そして、これら正面アルミニウム板30Aaと背面アルミニウム板30Abの間、つまり正面アルミニウム板30Aaと背面アルミニウム板30Abと上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30dで囲まれた空間が導波空間SSになっている。
【0046】
導入用導波管20Aが、放射用導波管30Aの背面アルミニウム板30Abを一側面として形成され、アルミニウム板を略矩形の樋型に折り曲げて形成され、そして、y軸方向が電磁波伝搬方向になるようにネジによって取り付けられている点は、第1実施形態の導入用導波管20と同様である。導入用導波管20Aの導入用スロット26は、背面アルミニウム板30Abに形成され、後述する図9(A)に示すとおり、y軸方向に並ぶように配置されている。
【0047】
格子40Aは、放射用導波管30Aの正面アルミニウム板30Aaの正面側(z軸方向)に留め付けられている。格子40Aは、多数の金属壁46と、その多数の金属壁46を連結して固定する金属基板47とからなる。格子40Aの構造の詳細については後述するが、第2実施形態の格子40Aが第1実施形態の格子40と大きく異なる点は、金属壁46の形状である。
クリップ50の構成については、既に第1実施形態で説明したものと同様であるので、説明を省略する。
【0048】
(2)詳細構成
(2−1)導入用スロットの配置
図8(A)と図9(A)及び図8(B)と図9(B)に、導入用導波管20A内の電磁波伝搬モードの2つの例が示されている。図8の導入用導波管20Aの内部に励振用プローブが設けられており、その励振用プローブには外部から同軸コネクタを介して給電されている。図8(A)及び図8(B)の電磁波伝搬モードを得るため、導入用導波管20Aは、その両端部あるいは片端部を短絡面22,27で短絡していて、内部に定在波が生じる共振型で用いられている。
【0049】
図8(A)及び図9(A)に示す例は、導入用スロット21の配置が第1実施形態と同じであるので導入用スロット21の配置についての説明を省略する。
【0050】
図8(B)及び図9(B)に示す例では、短絡面27から最も近い導入用スロット26は、その中心から短絡面27までの距離が凡そλg/2(λgは導入用導波管20A内の電磁波伝搬方向の管内波長)の整数倍のところに配置される。ここでは、導入用スロット26の中心が短絡面27からλg/2だけ離れたところに配置されている。
【0051】
図9(B)に示す3つの導入用スロット26は、導入用導波管20Aの電磁波伝搬方向(y軸方向)に沿って管内波長λgの凡そ半波長のピッチで配置されている。また、導入用スロット26は、正面視において導入用導波管20の中心軸に対して同一方向に特定の角度α1だけ傾けて配置されている。そのように配置された導入用スロット26がy軸方向に流れる管壁電流を遮り、各導入用スロット26からは、各導入用スロット26に垂直な方向に電界Esが向く電磁波が放射用導波管30Aの管内に放射される。
【0052】
このように、導入用スロット26から放射される電磁波の電界の向きが交互に逆方向を向くようにするために凡そλg/2毎に繰り返し配置されればよく、このように配置することで導波空間SSにはTEn0モード(TEモードの高次モード)の電磁波が伝搬される。この例では、導入用導波管20Aの導入用スロット26は、導入用導波管20Aの電磁波伝搬方向(y軸方向)に対して管内波長λgの半波長毎に繰り返し設けられているが、管内波長λgの整数倍毎に繰り返し設けられてもよい。管内波長λgの整数倍程度のピッチで導入用スロット26が繰り返し設ければ、放射用導波管30AにTEMモードの電磁波を生じさせることができる。
【0053】
(2−2)放射用スロットの配置
スロットアレイアンテナ10Aもスロットアレイアンテナ10と同様に、垂直偏波が抑制された水平偏波を放射するように、例えばx−z平面が水平になるように配置されて使用される。そのため、高次モードの電磁波に結合して放射電界の主要偏波面が水平方向を向き、この水平偏波に直交する偏波成分(垂直偏波)が打ち消されるように、放射用スロット36が配置される。以下の説明では、放射用スロット36の配置については、x軸方向の並びを列といい、y軸方向の並びを行といい、導入用導波管20に近い側から順に1行目、2行目…と数え、上側面アルミニウム板30cに近い側から順に1列目、2列目…と数える。
【0054】
1列目の放射用スロット36の中心から上側面アルミニウム板30c(短絡面)までの距離は、放射用導波管30A内の電磁波伝搬方向に直交する方向の管内波長の2分の1(λg´/2)程度である。そして、1列目と2列目の放射用スロット36の中心間の距離や2列目と3列目の放射用スロット36の中心間の距離すなわち放射用スロット36の配置ピッチも、λg´/2程度である。
【0055】
1行目の放射用スロット36から短絡面33までのx軸方向の距離が凡そλg″になる(λg″は放射用導波管30A内の電磁波伝搬方向の管内波長)。そして、この放射用スロット36と短絡面33との中間に導入用導波管20Aが位置する。これにより、放射用導波管30Aは、電磁波伝搬方向(x軸方向)を進行波形型、放射用導波管30Aの電磁波伝搬方向に直交する方向(y軸方向)を共振型として用いられる。
【0056】
図9(A)及び図9(B)に示すように、放射用スロット36は、高次モードによって生じてy軸方向に流れる管壁電流を遮る位置に形成されている。つまり、放射用スロット36は、放射される電界の向きが同方向を向くように放射用スロット36をy軸方向に対して特定の角度α2だけ交互に傾けている。すなわち、放射用スロット36の傾きの配列は、導波空間SS内の高次モードの電磁波に結合して放射用スロット36から放射される放射電界の主要偏波面が水平方向を向き、かつ主要偏波面に直交する偏波成分(垂直偏波)が互いに打ち消されるようになっている。
【0057】
上述のように配置される放射用スロット36の行の間隔(x軸方向の配置ピッチPs)は、図9に示すように、管内波長λg″の2分の1程度である。
【0058】
(2−3)格子の構成
図7に示すように、格子40Aの多数の金属壁46のうち2つの金属壁46a,46bは、互いに隣接する放射用スロット36の行Ln1,Ln2の間に配置されている。同様に、放射用スロット36の行Ln2,Ln3の間に、2つの金属壁46c,46dが配置されている。このように互いに隣接する放射用スロット36の2つの行の間に2つの金属壁46が配置される。
【0059】
このように配置されている多数の金属壁46のうち、放射用スロット36の行Ln2の両側の2つの金属壁46b,46cを見ると、2つの金属壁46b,46cは、上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30dに近いところで連結されて放射用スロット36の行Ln2の電磁波放射側の空間SRを囲むように構成されている。このように空間SRを囲む金属壁46b,46cを含む壁は、放射用スロット36の行の上に立てられた煙突のような形状を呈する。そして、この煙突状の壁は、金属基板47から離れるに従って金属壁46b,46c間の距離が短くなるように、金属壁46c,46dが傾けて立てられて構成されている。金属壁46の断面形状については、第3実施形態において断面図を用いて説明する。
【0060】
多数の金属壁46の好ましい高さ(z軸方向の長さ)は、第1実施形態の金属壁41と同様である。金属基板47に厚みがある場合には、金属基板47の厚みを考慮して金属壁46の高さH4が決まる。金属壁46の高さH4が金属基板47の上面から定義される場合には、例えば金属基板47の厚みと金属壁46の高さH4の和が使用周波数の波長の2分の1程度になるように決定される。
【0061】
金属壁46と金属基板47とは、例えば一体成形されたアルミダイキャストで構成され、あるいは別々に成形して溶接などによって接合される。それにより、金属壁46の正面アルミニウム板30Aa側の辺46y(図7(B)参照)を金属基板47に電気的に接続(金属壁46と金属基板47が一体的に成形)されている。なお、図7(B)の符号72で示された箇所が一部切り欠かれた部分の境界である。また、金属基板47の長辺に沿ってリブ47bが形成されている。このリブ47bは、クリップ50を取り付けるためのものである。
【0062】
(2−4)アンテナの組み立て
図10(A)、図10(B)及び図10(C)は、それぞれスロットアレイアンテナの組み立て工程の一工程を示す模式図である。なお、クリップ50を嵌めたときに弾性部53が撓み、クリップ50の第1羽根部52と第2羽根部52が弾性部53の弾性変形によって生じる力で放射用導波管30Aと金属基板47とを挟み付けるのは、第1実施形態の場合と同様である。
【0063】
クリップ50を嵌めるときには、図10(A)に示すように、先ず放射用導波管30Aに格子40Aの金属基板47を重ねる。図には示されていないが、このとき正面アルミニウム板30Aaの凸部が金属基板47の凹部(又は穴)に嵌まり込んで位置決めされる。つまり、正面アルミニウム板30Aaの凸部と金属基板47の凹部とが係合している状態では、格子40Aは正面アルミニウム板30Aaの面内方向で移動しないように構成されている。そして、図10(A)に示すように、格子40Aのリブ47bにクリップ50の第1羽根部51の先端部51aaを当てる。
【0064】
次に、図10(B)に示すように、リブ47bに先端部51aaが当たっている状態を維持しながら、放射用導波管30Aの背面アルミニウム板30Abの長辺付近に第2羽根部52の面を当てて第2羽根部52と第1羽根部51の間隔を広げながらクリップ50を押し込む。
【0065】
クリップ50が完全に押し込まれた状態では、図10(C)に示すように、クリップ50の第2羽根部52の面の多くの部分が背面アルミニウム板30Abに接触する。この状態では、押し込むときに比べて弾性部53の撓みが少し小さくなる。そのため、押し込まれたクリップ50を外そうとしても、第2羽根部52と背面アルミニウム板30Abとの間の摩擦力や再び弾性部53を撓ませるのに必要な力などの合成力によってクリップ50が外れ難くなっている。また、クリップ50が押し込まれた後には、第1羽根部51の先端部51aaも、リブ47bに引っ掛かるためクリップ50が外れ難くなっている。このとき、突片54(図5(A)参照)が格子40Aと放射用導波管30の境界部分70を覆うので電磁波の漏れが防止される。
【0066】
そしてさらに、クリップ50で留められて組み立てられたスロットアレイアンテナ10Aは、図10(C)に示すように、アンテナケース60に収納される。このアンテナケース60は、スロットアレイアンテナ10Aを収納した状態で、スロットアレイアンテナ10Aが径方向に動かないようにスロットアレイアンテナ10Aに接触する内径を持つように形成されている。そのため、アンテナケース60に収納されたスロットアレイアンテナ10Aのクリップ50は、アンテナケース60に当たって外れることができなくなる。
【0067】
(3)格子と導波管の隙間やネジの影響
図11は、放射用導波管と格子との間の隙間の影響を説明するための模式図である。図11は、放射用導波管30Aと格子40Aとの間に1mm程度の隙間を実験的に設けた場合と隙間を全く設けなかった場合のシミュレーション結果をもとに描いた模式図である。符号WH0で示した線が隙間を設けなかった場合の水平偏波の放射強度を示しており、符号WH1で示した線が1mmの隙間を設けた場合の水平偏波の放射強度を示している。1mm程度の隙間がある場合には、ロール角θが±20°や±40°のところでサイドローブの増加が見られる。つまり、スロットアレイアンテナ10Aの放射用スロット36や導入用スロット21,26の配置と格子40Aを設けた効果とによってサイドローブを抑制した効果が減殺されていることが分かる。実際の使用状況においては1mmもの隙間が開くことは極めて稀であるが、図11に示す結果から、小さな隙間でもサイドローブを低減する効果に悪影響を及ぼすことが分かる。そのため、放射用導波管30Aと格子40Aとの間に隙間をあけないようにクリップ50によって格子40Aを放射用導波管30Aに留めることが有効であることが分かる。
【0068】
図12(A)は、放射用導波管に格子をネジ留めしたスロットアレイアンテナの正面図であり、図12(B)は図12(A)のII−II線断面図である。図12(A)及び図12(B)に示すスロットアレイアンテナ200は、第2実施形態のスロットアレイアンテナ10Aと同様に、導入用導波管220と放射用導波管230と格子240とを備えている。このスロットアレイアンテナ200が上述のスロットアレイアンテナ10Aと異なるのは、格子240がネジ250で留められている点である。従って、放射用導波管230や格子240には、ネジ250を通すネジ穴が設けられているが、それ以外の放射用導波管230及び格子240の構成は、第2実施形態の放射用導波管30A及び格子40Aと同じである。
【0069】
このようなネジ250を用いるスロットアレイアンテナ200は、クリップ50を用いるスロットアレイアンテナ10Aに比べて放射用導波管230内の電磁波に乱れが生じるため、スロットアレイアンテナ200の放射用スロット231から放射される電磁波のサイドローブが大きくなる。
【0070】
図13は、スロットアレイアンテナ10Aの水平偏波の放射強度と、スロットアレイアンテナ10A,200の垂直偏波の放射強度を示す模式図である。この模式図は、説明を行い易くするために、シミュレーション結果に基づいて、それぞれの偏波の放射強度を模式的に描き出したものである。図13において、符号WV200で示された線がスロットアレイアンテナ200の垂直偏波の放射強度、符号WH10Aで示された線がスロットアレイアンテナ10Aの水平偏波の放射強度、そして符号WV10Aで示された線がスロットアレイアンテナ10Aの垂直偏波の放射強度を表している。なお、スロットアレイアンテナ200の水平偏波の放射強度は、図を見易くするために図示を省略している。ネジ250で放射用導波管230内の電磁波が乱れることから、符号WV200で示されたネジ留めのスロットアレイアンテナ200の垂直偏波が大きくなっていることが図13から分かる。
【0071】
<第3実施形態>
(1)全体構成
本発明の第3実施形態に係るスロットアレイアンテナの全体構成について図14を用いて説明する。図14は、第3実施形態に係るスロットアレイアンテナの外観を説明するための部分断面図である。図14には、スロットアレイアンテナ10Bのx軸方向の一部分が示されており、図14にはスロットアレイアンテナ10Bの導入用導波管が示されていない。図14のスロットアレイアンテナ10Bの導入用導波管の構成は、第2実施形態のスロットアレイアンテナ10Aの導入用導波管20Aの構成と同じであるので説明及び図示を省略する。
【0072】
第3実施形態に係るスロットアレイアンテナ10Bも、第2実施形態のスロットアレイアンテナ10Aと同様に、放射用導波管30Bと格子40Bとを備えている。そして、スロットアレイアンテナ10Bは、スロットアレイアンテナ10Aのクリップ50に代えて、格子40Bを放射用導波管30Bに留めるための留め具として、ネジ締結部材55を備えている。
【0073】
スロットアレイアンテナ10Bの放射用スロット37は、スロットアレイアンテナ10Aの放射用スロット36と同様に縦横に並べて配置されている。そして、放射用スロット37の配置の位置関係は、放射用スロット36の配置の位置関係と全く同じである。
【0074】
放射用導波管30Bも放射用導波管30Aと同様にアルミニウム板のパンチング及び折り曲げ加工により製造され、正面アルミニウム板30Baに平行に背面アルミニウム板30Bbが配置される。これら正面アルミニウム板30Baと背面アルミニウム板30Bbとの間に挟まれた空間が導波空間SSである。なお、図14には示されていないが、放射用導波管30Bも、正面アルミニウム板30Baと背面アルミニウム板30Bbとを支持する短絡面の上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30d、短絡面33及び電波吸収体34に相当する構成を備えている。
【0075】
正面アルミニウム板30Baは、導波空間SSに面した導波空間側主面30Basと、電磁波放射側の空間SRに面した放射側主面30Barとを持っている。図14の紙面右側の一部を切り欠いたネジ締結部材55の周辺を見ると分かるように、導波空間側主面30Basには、凹部30Bamが形成されている。電磁波の乱れをできる限り小さくするために、凹部30Bamは、電磁波の節及び管壁電流の節に相当する位置に配置されることが好ましい。そして、開孔部30Banが、凹部30Bamの一部から放射側主面30Barに続いている。
【0076】
格子40Bは、放射用導波管30Bの正面アルミニウム板30Baの正面側(z軸方向)に留め付けられている。格子40Bは、多数の金属壁48と、その多数の金属壁48を連結して固定する金属基板49とからなる。格子40Bが、第2実施形態の格子40Aと異なる点は、ネジ締結部材55を取り付けるための取付部49aを備えている点である。この取付部49aは、2つの金属壁48の間(放射用スロット37の2つの行の間)に設けられるとともに、図14には表れていないが、y軸方向に複数設けられる。
ネジ締結部材55は、雄ネジ56と、その雄ネジ56が嵌まるセルスペーサー57とを備えている。このセルスペーサー57は、幅広部57aと、幅広部57aから伸びる幅狭部57bとからなる。そして、幅広部57aとは反対の方向にある幅狭部57bの一面から雌ネジ57cが切られている。
【0077】
スロットアレイアンテナ10Bには、スロットアレイアンテナ10Aには存在していない構成が追加されている。すなわち、スロットアレイアンテナ10Bは、放射用導波管30Bの正面アルミニウム板30Baと格子40Bの金属基板49との間に導電性布などの導電性部材80が配置されている。この導電性部材80は、正面アルミニウム板30Baと金属基板49とに挟まれて押し潰され、正面アルミニウム板30Bや金属基板49の形状に沿って変形する。そのため、導電性部材80は、正面アルミニウム板30Baと金属基板49との間の隙間を塞ぎ、放射用スロット37から出た電磁波が正面アルミニウム板30Baと金属基板49の隙間から漏れるのを防ぐことができる。
【0078】
(2)詳細構成
(2−1)導入用スロットの配置
上述のように、スロットアレイアンテナ10Bの導入用導波管及び導入用スロットの構成は、第2実施形態のスロットアレイアンテナ10Aと同じであることから、スロットアレイアンテナ10Bの導入用導波管及び導入用スロットの詳細についての説明を省略する。
【0079】
(2−2)放射用スロットの配置
上述のように、スロットアレイアンテナ10Bの放射用導波管30Bの構成は、凹部30Bamと開孔部30Banとを除いて、第2実施形態の放射用導波管30Aと同じである。そして、放射用導波管30Bにおける放射用スロット37の配置関係も、放射用導波管30Aにおける放射用スロット36の配置関係と同じであるから、スロットアレイアンテナ10Bの放射用導波管30B及び放射用スロット37の詳細についても説明を省略する。
【0080】
(2−3)格子の構成
図14に示すように、格子40Bの多数の金属壁46のうち2つが、互いに隣接する放射用スロット37の2つの行の間に配置されるのは第2実施形態で説明した通りである。例えば、2つの金属壁48a,48bは、2つの金属壁46b,46cなどと同様に、1行の放射用スロット37の両側に設けられて互いに連結されている。そして、2つの金属壁48a,48bを含む金属壁も、第2実施形態と同様に、電磁波放射側の空間SRを囲むように煙突状の形状に形成されている。
【0081】
図14に示されているように、2つの金属壁48a,48bの距離は、正面アルミニウム板30Baから離れるに従って近づく。このように、格子40Bの金属壁48a,48bが傾いていても垂直偏波を抑制する効果は得られる。金属壁48bを例に挙げると、正面アルミニウム板30Baに交差する方向Dr1に延びるとともにy軸方向に延びて面状に形成されていればよく、必ずしも正面アルミニウム板30Baの導波空間側主面30Basに垂直に立てられている必要はない。なお、金属壁48と金属基板49の接続については第2実施形態の金属壁46と金属基板47と同じに行なえる。
【0082】
金属壁48の高さH5は、導電性部材80が放射用導波管30Bと格子40Bとの間にあることから、導電性部材80の厚みも考慮して決定される。金属壁48の高さH5が金属基板49の上面から定義される場合には、例えば金属基板49の厚みと金属壁48の高さH5と導電性部材80の和が使用周波数の波長の2分の1程度になるように第1実施形態などと同様に決定される。
【0083】
格子40Bの取付部49aは、ネジ締結部材55の雄ネジ56が取り付けられるように開孔部49aaを有している。また、取付部49aは、セルスペーサー57を取り付けるための空間を形成する目的で、正面アルミニウム板30Baの反対側へ膨出している。
【0084】
(2−4)ネジ締結部材の構成
正面視において、幅広部57aの形状は、凹部30Bamの形状にほぼ一致する。断面形状から分かるように、幅広部57aが凹部30Bamに嵌め込まれた状態において、幅広部57aの導波空間SS側の面は、正面アルミニウム板30Baの導波空間側主面30Basと面一になる。それにより、導波空間SSの電磁波の乱れを防止している。
【0085】
ネジ締結部材55は、緩みなく格子40Bを締結できるように、幅広部57aが凹部30Bamに嵌まっている状態における放射側主面30Barから雌ネジ57cの切られている幅狭部57bの一面までの高さが設計されている。つまり、幅狭部57bの一面までの高さは、放射用導波管30Bと導電性部材80と格子40Bとを重ねた状態の取付部49aの放射用導波管30B側の面よりもわずかに低い位置に配置されるように設定されている。それにより、雄ネジ56を雌ネジ57cにねじ込むことで、放射用導波管30Bに格子40Bを強固に締結することができる。
【0086】
<第4実施形態>
(1)全体構成
本発明の第4実施形態に係るスロットアレイアンテナの全体構成について図15(A)と図15(B)を用いて説明する。図15(B)は、第4実施形態に係るスロットアレイアンテナの外観を説明するための部分断面図であり、図15(A)は図15(B)のスロットアレイアンテナを製造するための一工程を示す部分断面図である。図15(A)及び図15(B)には、スロットアレイアンテナ10Cのx軸方向の一部分が示され、スロットアレイアンテナ10Cの導入用導波管が示されていない。このスロットアレイアンテナ10Cの導入用導波管の構成が第2実施形態のスロットアレイアンテナ10Aの導入用導波管20Aの構成と同じであるので、説明及び図示を省略している。
【0087】
第4実施形態に係るスロットアレイアンテナ10Cは、第2実施形態のスロットアレイアンテナ10Aと同様に、放射用導波管30Cと格子40Cとを備えている。そして、スロットアレイアンテナ10Cの放射用スロット36も、スロットアレイアンテナ10Aの放射用スロット36と同様に縦横に並べて配置されている。
【0088】
放射用導波管30Cも放射用導波管30Aと同様にアルミニウム板のパンチング及び折り曲げ加工により製造され、正面アルミニウム板30Caに平行に背面アルミニウム板30Cbが配置される。これら正面アルミニウム板30Caと背面アルミニウム板30Cbとの間に挟まれた放射用導波管30Cの内部空間が導波空間SSである。なお、図15には示されていないが、放射用導波管30Cも、正面アルミニウム板30Caと背面アルミニウム板30Cbとを支持する短絡面の上側面アルミニウム板30cと下側面アルミニウム板30d、短絡面33及び電波吸収体34に相当する構成を備えている。
【0089】
正面アルミニウム板30Caは、導波空間SSに面した導波空間側主面30Casと、電磁波放射側の空間SRに面した放射側主面30Carとを持っている。格子40Cは、放射用導波管30Cの正面アルミニウム板30Caの放射側主面30Carにレーザー溶接によって留め付けられている。この格子40Cは、多数の金属壁46と、その多数の金属壁46を連結して固定する金属基板47とからなる。
【0090】
(2)詳細構成
(2−1)導入用スロットの配置
上述のように、スロットアレイアンテナ10Cの導入用導波管及び導入用スロットの構成は、第2実施形態のスロットアレイアンテナ10Aと同じであることから、スロットアレイアンテナ10Cの導入用導波管及び導入用スロットの詳細についての説明を省略する。
【0091】
(2−2)放射用スロットの配置
上述のように、スロットアレイアンテナ10Cの放射用導波管30Cの構成は、第2実施形態の放射用導波管30Aと同じである。そして、放射用導波管30Cにおける放射用スロット36の配置関係も、放射用導波管30Aにおける放射用スロット36の配置関係と同じであるから、スロットアレイアンテナ10Cの放射用導波管30C及び放射用スロット36の詳細についても説明を省略する。
【0092】
(2−3)格子の構成
図15に示すように、格子40Cの多数の金属壁46のうち2つが、互いに隣接する放射用スロット36の2つの行の間に配置されるのは第2実施形態で説明した通りである。例えば、2つの金属壁46p,46qは、2つの金属壁46b,46cなどと同様に、1行の放射用スロット36の両側に設けられて互いに連結されている。そして、2つの金属壁46p,46qを含む金属壁も、第2実施形態と同様に、電磁波放射側の空間SRを囲むように煙突状の形状に形成されている。また、2つの金属壁46p,46qの距離は、正面アルミニウム板30Caから離れるに従って近づく。このように、格子40Cの金属壁46p,46qが傾いていても垂直偏波を抑制する効果は得られる。金属壁46qを例に挙げると、正面アルミニウム板30Caに交差する方向Dr1に延びるとともにy軸方向に延びて面状に形成されていればよい。
【0093】
なお、金属壁46と金属基板47の接続については第2実施形態の金属壁46と金属基板47と同じに行なえる。また、金属壁46の高さH6は、第2実施形態の高さH4と同様に決定される。
【0094】
(2−4)レーザー溶接
図15(A)にレーザー溶接を行なっている状態を示し、図15(B)にレーザー溶接によって組み立てられたスロットアレイアンテナ10Aの断面を示す。図15(A)に示すように、放射用導波管30Cに格子40Cを重ねて置いた状態で、YAGレーザーのレーザー光線85を照射してレーザー溶接を行なう。このとき、図には示されていないが、第2実施形態と同様に、正面アルミニウム板30Caの凸部が金属基板47の凹部(又は穴)に嵌まり込んで位置決めされる。
【0095】
その結果、図15(B)に示されているように、レーザー光線85の当たった所が融解して、正面アルミニウム板30Caと金属基板47とが溶接されてできた溶接部86が形成される。図15(B)では、溶接部86を分かり易くするために、溶接部86以外の部分が、正面アルミニウム板30Caと金属基板47と接触していないような図になっているが、実際は、正面アルミニウム板30Caと金属基板47とが多くの面積で接触した状態で溶接される。
【0096】
溶接部86は、図15(B)に示す断面だけでなく、y軸方向に2つ以上形成されることが好ましく、例えば放射用スロット36のy軸方向の個数よりも一つ多く形成される。溶接によって、金属の組成が変化したり、変形したりする場合があるので、溶接部86は、電磁波の節及び管壁電流の節に相当する位置に形成されることが好ましい。
【0097】
<スロットアレイアンテナの使用例>
上述のスロットアレイアンテナ10,10A,10B,10Cは、レーダ装置において使用される。上述のスロットアレイアンテナ10,10A,10B,10Cを用いてレーダ装置を作製すると、レーダ装置の軽量化を行うことができる。
【0098】
例えば、図16に示すように、スロットアレイアンテナ10Aは、レーダ装置90のレーダ部91の匡体内に収納される。スロットアレイアンテナ10Aは、レーダ部91と共に回転部92によって、水平面(x−z平面)内で回転部92を中心に回転する。回転部92を駆動するモータなどはハウジング93の中に収納されている。
【0099】
スロットアレイアンテナ10Aの放射用導波管30Aには、電磁波供給源94から電磁波が供給される。また、スロットアレイアンテナ10Aにより受信されたエコー信号は、信号処理部95で信号処理される。
【0100】
<特徴>
(1)
スロットアレイアンテナ10,10A,10B,10Cでは、格子40,40A,40B,40Cが有する各金属壁41,46,48(導体壁)が放射用スロット31,36,37の行に沿ったy軸方向(縦方向)に延びている。また、正面アルミニウム板30a,30Aa,30Ba,30Ca(導体面)と垂直な方向又は交差する方向Dr1などの交差方向に延びるように形成される。また、このように形成される金属壁41,46,48(導体壁)が複数の放射用スロット31,36,37に合わせて繰り返し配置される。そのため、放射用スロット31,36,37から放射される電磁波のサイドローブがさらに抑制される。
【0101】
このような複数の金属壁41,46,48を放射用導波管30,30A,30B,30Cの正面アルミニウム板30a,30Aa,30Ba,30Ca(導体面)に取り付けようとすると、金属壁41,46,48の数が多くなればなるほど取り付けの手間が掛かり、スロットアレイアンテナ10,10A,10B,10Cが高価なものになる。このスロットアレイアンテナ10,10A,10B,10Cでは、格子40,40A,40B,40Cの金属基板42,47,49(基板)に複数の金属壁41,46,48が固定されているので、金属基板42,47,49をクリップ50(留め具)やレーザー溶接などで正面アルミニウム板30a,30Aa,30Ba,30Ca(導体面)に留めるだけで簡単に組み立てられ、安価にスロットアレイアンテナ10,10A,10B,10Cを得ることができる。しかも金属基板42,47,49に金属壁41,46,48が固定されているので丈夫である。
【0102】
例えば、上述のようなスロットアレイアンテナ10と類似の構成において、ロール角θが135°のところに垂直偏波のサイドローブのピーク値が現れる場合、金属壁41を設けない状態のときに放射強度が1dBi程度であったものが、金属壁41を取り付けることで、10dBi程度引き下げて−9dBi程度になったことが測定された。ところが、金属壁41と正面アルミニウム板30aとの間に1mmの隙間を形成すると、折角−9dBi程度まで引き下げられていたサイドローブのピーク値が8dBiほど大きくなる現象が測定された。つまり、サイドローブのピーク値を格子40によって低減した効果を確保しておくためには、金属基板42を正面アルミニウム板30aに確実に押し付けた状態を保つことが重要であることが分かる。
【0103】
また、例えば、上述のようなスロットアレイアンテナ10と類似の構成において、金属壁41を設けない場合に、x−z平面を水平にしたときに、角度φを±10°傾けることによって、ロール角θの45°と135°付近に比較的大きなサイドローブが生じる実験結果が確認されている。それに対して、金属壁41を設けると、ロール角θの45°と135°付近のサイドローブが8〜12dB程度低減されることが確認されている。
【0104】
(2)
正面アルミニウム板30a,30Aa,30Ba,30Ca(導体面)とそれと平行な背面アルミニウム板30b、30Ab,30Bb,30Cb(他の導体面)とが作る放射用導波管30,30A,30B,30Cの導波空間SSに電磁波を導入するため、複数の導入用スロット21,26(導入用スロットアレイ)が放射用導波管30,30A,30B,30Cの導波空間SSに対して開口している。導入用導波管20,20Aは、複数の導入用スロット21,26(導入用スロットアレイ)がy軸方向(縦方向)に複数の磁界ループMrが並ぶ高次モードの電磁波を放射用導波管30,30A,30B,30Cに励振するように形成されている。
放射用導波管30,30A,30B,30Cの放射用スロット31,36,37は、高次モードの電磁波に結合して放射電界の水平偏波面(主要偏波面)が同一方向を向き、かつ水平偏波面(主要偏波面)に直交する垂直偏波(偏波成分)が互いに打ち消されるように形成されている。
【0105】
主要偏波面を水平に設定すると、複数の放射用スロット31,36,37が垂直偏波の打ち消されるような電磁波を放出する。それにさらに複数の金属壁41,46,48(導体壁)によって、水平偏波のサイドローブが抑制されるとともに垂直偏波も抑制された電磁波を放出することができる。
【0106】
また、金属壁41,46,48(導体壁)が放射用スロット31,36,37の各行の電磁波放射側の空間SRを囲むように連結されることで、十分に垂直偏波が抑制できる。また、金属壁46b,46cや金属壁48a,48bや金属壁46p,46qなどのように金属壁同士が連結されることによって丈夫で壊れ難くなる。
【0107】
(3)
金属基板42,47,49(基板)は、各金属壁41,46,48(導体壁)の正面アルミニウム板30a,30Aa,30Ba側(導体面側)の辺41a,46aに電気的に接続される。また、この金属基板42,47,49(導体層)は、放射用導波管30,30A,30Bの正面アルミニウム板30a,30Aa,30Ba(導体面)に接触する。これら多数の金属壁41,46,48(複数の導体壁)は、z軸方向の長さ(垂直方向の高さ)が、使用周波数の波長の1/2×0.8〜1/2×1.2である。この金属壁41,46,48の高さは、正面アルミニウム板30a,30Aa,30Baと金属基板42,47,49との接触面から測られる。クリップ50あるいはネジ締結部材55(留め具)は、放射用導波管30,30A,30Bの内部空間である導波空間SSに突出しないように放射用導波管30,30A,30Bに取り付けられ、金属基板42,47,49(導体層)を放射用導波管30,30A,30Bの正面アルミニウム板30a,30Aa,30Ba(導体面)に押し付けるように正面アルミニウム板30a,30Aa,30Baと金属基板42,47,49を重ねて留める。
【0108】
金属壁41,46,48と格子40,40A,40Bの金属基板42,47,49とが電気的に接続されることで、正面アルミニウム板30a,30Aa,30Baと金属壁41,46,48の正面アルミニウム板30a,30Aa,30Ba側の辺41a,46aとの間からの電磁波の漏れが防止される。また、金属壁41,46,48のz軸方向の長さが使用周波数の波長の1/2×0.8〜1/2×1.2であるため、金属壁41,46,48が持つ垂直偏波の抑制の効果を十分に引き出せる。クリップ50あるいはネジ締結部材55が導波空間SSに突出しないように放射用導波管30,30A,30Bに取り付けられるので、留め具による導波空間内の電磁波の乱れがなくなり、サイドローブの抑制された電磁波の乱れによって垂直偏波の低減効果が減殺されるのを防止することができる。
【0109】
(4)
クリップ50(留め具)は、放射用導波管30,30Aの正面アルミニウム板30a,30Aa(第1金属板)と背面アルミニウム板30b,30Ab(第2金属板)とを挟むようにして放射用導波管30,30Aに取り付けられるので、導波空間SSに突出しないようにしながらも放射用導波管30,30Aにしっかりと取り付けられる。
【0110】
このクリップ50は、第1羽根部51を第2羽根部52に繋ぐ弾性部53を有する。このような構造のクリップ50を用いることで、スロットアレイアンテナ10,10A,の組み立てが容易になる。また、弾性部53の弾性力によって格子40,40Aの金属基板42,47を正面アルミニウム板30a,30Aaに押し付ける状態を維持させることができ、電磁波の漏れの発生を防止することができる。それにより、サイドローブ低減効果が減少するのを防止することができる。
【0111】
また、クリップ50は、第1羽根部51が櫛型に形成されている。そして、格子40,40Aの金属基板42,47と背面アルミニウム板30b,30Abとを挟んだ状態において、複数の金属壁41,46及び複数の放射用スロット31,36が形成されていない領域を、第1羽根部51の歯の部分51aが押すように構成されているので、第1羽根部51の歯の部分51aと金属基板42,47の接触面積が大きくなるとともに接触領域を横方向に延ばすことが容易になる。それにより、図1に示すように、x軸方向に長く延びる放射用導波管30,30Aのx軸方向(横方向)の全体に渡って、格子40,40Aを放射用導波管30,30Aに確実に留めることができる。
【0112】
また、クリップ50では、突片54が金属基板42,47と放射用導波管30,30Aの正面アルミニウム板30a,30Aaとが接触する境界部分を覆うので、この境界部分からの電磁波の漏洩を抑制することができる。
【0113】
(5)
放射用導波管30,30Aを構成する正面アルミニウム板30a,30Aa(第1金属板)及び背面アルミニウム板30b,30Ab(第2金属板)は、図3に示す長さLの長辺を持つ同じ大きさの長方形の形状を呈し、互いに平行に配置されている。また、放射用導波管30,30Aの側面を構成する上側面アルミニウム板30c(第1支持部材)と下側面アルミニウム板30d(第2支持部材)は、正面アルミニウム板30a,30Aaと背面アルミニウム板30b,30Abを支持していると見ることもできる。
【0114】
リブ42b,47bは、金属基板42,47の、この正面アルミニウム板30a,30Aaの長辺に沿う部分に設けられている。第1羽根部51は、第2羽根部52の方向に張り出した先端部51aa(張出部)を持っている。リブ42b,47bに先端部51aaを引っ掛けた状態で押し込むときには背面アルミニウム板30b,30Abの長辺近傍に第2羽根部52が線で接触する。そのため、嵌め込むときには放射用導波管30,30Aの角(背面アルミニウム板30b,30Abの長辺近傍)に当たって滑り、小さな力でクリップ50を嵌め込むことができる。一方、一旦クリップ50が嵌め込まれると第1羽根部51は金属基板のリブ42b,47bに引っ掛かって外れ難く、第2羽根部52は背面アルミニウム板30b,30Abに面で接触しているので滑り難くて外れ難くなる。
【0115】
(6)
多数の金属壁46,48(導体壁)は、互いに隣接する放射用スロット36の行Ln1,Ln2,Ln3…の間あるいは放射用スロット37の行の間に2つずつ配置されている。放射用スロット36,37の行の両側の2つの金属壁46,48が連結されて放射用スロット36,37の行の電磁波放射側の空間SRを囲むように構成される。例えば放射用スロット36の行Ln2の両側の2つの金属壁46c,46dが連結されて放射用スロット36の行Ln2の電磁波放射側の空間SRを囲むように構成されるので、十分に垂直偏波が抑制できる。また、例えば金属壁46c,46d(導体壁同士)が連結されることによって、格子40Aの金属壁46の部分が丈夫で壊れ難くいものになる。
【0116】
(7)
セルスペーサー57(導波管側連結部材)の導電性の幅広部57aは、導波空間側主面30Bas(内側主面)の凹部30Bamに嵌まった状態で導波空間側主面30Basを平らにするので、導波空間側主面30Basの凹凸によって導波空間SSの電磁界が乱れるのを防止することができる。幅狭部57bは、凹部30Bamの一部から放射側主面30Bar(導体面)に続く開孔部30Banを通って電磁波放射側の空間に露出するので、幅広部57aのうち幅狭部57bの形成されていない部分が凹部30Bamの他の部分に引っ掛かってセルスペーサー57が放射用導波管30Bに締結される。そして、金属基板49(基板)の取付部49aに取り付けられた雄ネジ56(格子側連結部材)がセルスペーサー57(導波管側連結部材)に連結されることで、格子40Bの金属基板49と放射用導波管30Bも強固に連結される。
【0117】
(8)
格子40Bの金属基板49(基板)と正面アルミニウム板30Ba(導体面)との間に配置され、金属基板49及び正面アルミニウム板30Baに電気的に接触する導電性部材80をさらに備えるので、導電性部材80が金属基板49と正面アルミニウム板30Baとの間の隙間を埋めて隙間から漏れる電磁波を低減させることができる。
【0118】
(9)
図10(C)に示すように、放射用導波管30Aの放射用スロットが形成されている正面アルミニウム板30Aaが断面が略円形のアンテナケース60(円筒状カバー)の中心軸近傍に配置されることにより、クリップ50などを用いて格子40Aを放射用導波管30Aに留め易くなる。
【0119】
<変形例>
(1)
上記各実施形態では、放射用スロット31,36,37がx軸とy軸に沿って縦横に直交する方向に並べて配置されている。放射用スロット31,36,37の配置は、縦横において直交する方向に並べられるのが好ましいが、直交することが必須の要件ではない。
【0120】
(2)
上記各実施形態では、金属壁41,46,48が放射用スロット31,36,37の行の間に、1つ又は2つずつ配置される場合について説明したが、1つ又は2つに限られるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0121】
(3)
上記各実施形態では、導入用導波管20,20Aや放射用導波管30,30Bは、アルミニウム板を用いた金属製の方形導波管であったが、例えばプラスチックなどの導電性の低い構造部材と薄膜金属とで形成される導波管などの金属製導波管以外の導波管や方形導波管以外の形状の導波管などにも本発明の適用は可能である。
【0122】
(4)
上記各実施形態では、格子40,40A,40Bは、全体が金属製であったが、プラスチックなどの導電性の低い構造部材と薄膜金属とで形成されるものであってもよい。基板も、金属基板42,47,49のように全体が金属製である必要はなく、金属層とプラスチック板を組み合わせて構成するなどで得ることもできる。また、導体壁も、金属壁41,46,48のように全体が金属製である必要はなく、金属層とプラスチック板を組み合わせて構成するなどによって得ることもできる。
【0123】
(5)
上記各実施形態では、留め具としてクリップ50やネジ締結部材55について説明したが、クリップ50やネジ締結部材55以外の留め具の使用も可能である。留め具としては、クリップ50のように、格子40,40Aを放射用導波管30,30Aに対して押し付ける力が持続するものが好ましい。また、留め具としては、クリップ50やネジ締結部材55のように、取り付けられた状態で導波空間SSに突出しないものが好ましい。金属バンドや掛け金のようなものを留め具として用いることもできる。また、留め具を用いて止める留め方以外にレーザー溶接による留め方を説明したが、導電性布などの導電性部材80を格子の金属基板と放射用導波管との間に挟んで嵌合したり導電性接着剤で直接接着したりするなどの方法により格子を放射用導波管に留めることもできる。
【0124】
(6)
上記各実施形態では、放射用導波管30,30A,30B,30Cの一方端から導入用導波管20,20Aによって電磁波を与えるエンドフィードタイプのスロットアレイアンテナ10,10A,10B,10Cを用いて説明した。これは本発明の適用できるスロットアレイアンテナがエンドフィードタイプのものに限られることを示すものではなく、例えば図17に示すようなセンターフィードタイプのスロットアレイアンテナ10Dにも適用することができる。図17に示すスロットアレイアンテナ10Dは、格子40Dが放射用導波管30Dにクリップ50Dによって留められて組み立てられている。例えば、図17のセンターフィードタイプのスロットアレイアンテナ10Dは、導入用導波管20Dの導入用スロットが、スロットアレイアンテナ10の一つの例のように同方向に向けられている。そして、放射用導波管30Dには、TEモードの高次モードが生じる。
【0125】
放射用導波管30Dの正面導体面に形成された複数の放射用スロット38L,38Rの配置は、基本的には第2実施形態のエンドフィードタイプのスロットアレイアンテナ10Dと同じであるが、アンテナのVSWR(電圧定在波比)を改善するために、導入用導波管20Dの右側の放射用スロット38Rと左側の放射用スロット38Lとでy軸方向の配列ピッチが異なっている。放射用導波管30Dの放射用スロット38Rの配置ピッチは、基本的な配列ピッチである管内波長λg´(λg´は放射用導波管30D内の電磁波伝搬方向に直交する方向の管内波長)の半波長に対して10%短くなっている。また、放射用スロット38Lは、管内波長λg´の半波長に対して10%長い配置ピッチで配置されている。これにより放射用導波管30Dのz方向に対して左側から放射される電磁波のビームの向きが右方向に約3°傾き、右側のビームの向きが左方向に約3°傾く。このように放射用スロット38R,38Lの配置ピッチをずらすことによって、各スロットで生じる反射波の位相がそれぞれずれることになり、アンテナのVSWRが改善される。このようなスロットアレイアンテナ10Dにおいても、格子40Dを適用することで、船舶などのような動揺する場所で用いられてもサイドローブが抑制される。
【0126】
(7)
上記各実施形態では、クリップ50の第1羽根部51が櫛型になっていて複数の歯の部分51aが形成されているものを用いた。しかし、クリップ50の形状は、このようなものに限られず、例えば図17に示すように単に断面コ字形の樋状の形状であってもよく、格子の形状に合わせて適宜選択される。
【符号の説明】
【0127】
10,10A,10B,10C,10D,100,200 スロットアレイアンテナ
20,20A,120 導入用導波管
21,26,121 導入用スロット
30,30A,30B,30C,30D 放射用導波管
30a,30Aa,30Ba,30Ca 正面アルミニウム板
30b,30Ab,30Bb,30Cb 背面アルミニウム板
31,31s,31v,36,38R,38L,131 放射用スロット
40,40A,40B,40C,40D 格子
41,46,48 金属壁
42,47,49 金属基板
50,50B クリップ
60 アンテナケース
90 レーダ装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0128】
【特許文献1】国際公開第2008/018481号パンフレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射用スロットが並ぶ放射用スロット列が形成されている導体面を有し、前記放射用スロット列から放射される電磁波を導く放射用導波管と、
前記導体面に交差する交差方向に向けて面状に延びるように各々が形成されかつ複数の前記放射用スロットに合わせて繰り返し配置されている複数の導体壁と、複数の前記導体壁を連結して固定する基板とを有し、前記基板が前記放射用導波管の前記導体面に留められる格子と、
を備える、スロットアレイアンテナ。
【請求項2】
前記放射用導波管は、電磁波を前記導体面に沿う横方向に導き、前記放射用スロット列が複数の前記放射用スロットを前記横方向に並べて形成され、
複数の前記導体壁は、前記導体面に沿う縦方向と前記交差方向とに向けて面状に延びるように各々が形成されかつ複数の前記放射用スロットに合わせて前記横方向に繰り返し配置されている、
請求項1に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項3】
前記放射用スロット列は、前記放射用導波管の前記導体面に前記縦方向に複数列形成されている、
請求項2に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項4】
複数の前記導体壁は、互いに隣接する前記放射用スロットの間に2つずつ配置され、複数の前記放射用スロットの各々の両側の2つの導体壁が連結されて前記放射用スロットの電磁波放射側の空間を囲むように構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項5】
前記放射用導波管に電磁波を導入するため前記放射用導波管に開口している導入用スロットアレイを有し、前記導入用スロットアレイが前記縦方向に複数の磁界ループが並ぶ高次モードの電磁波を前記放射用導波管に励振するように形成されている導入用導波管をさらに備え、
前記放射用導波管は、前記導体面に並行に配置されて前記導体面に対向する他の導体面をさらに持ち、
前記放射用導波管の複数の前記放射用スロットは、前記高次モードの電磁波に結合して放射電界の主要偏波面が同一方向を向き、かつ前記主要偏波面に直交する偏波成分が互いに打ち消されるように形成されている、
請求項4に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項6】
前記基板は、複数の前記導体壁の前記導体面側の辺に電気的に接続されるとともに前記放射用導波管の前記導体面に接触する導体層を有し、
複数の前記導体壁は、前記導体面を基準とする高さが使用周波数の波長の1/2×0.8から1/2×1.2の間に設定され、
前記放射用導波管の内部空間に突出しないように前記放射用導波管に取り付けられ、前記導体層を前記放射用導波管の前記導体面に押し付けるように前記放射用導波管の前記導体面に前記基板を重ねて留める留め具をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項7】
前記放射用導波管の前記導体面は、第1金属板で形成され、
前記放射用導波管は、前記第1金属板に対向して並行に配置されている第2金属板を有し、
前記留め具は、前記第1金属板と前記第2金属板とを挟むようにして前記放射用導波管に取り付けられる、
請求項6に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項8】
前記留め具は、前記基板を押す第1羽根部と、前記第2金属板を押す第2羽根部と、前記第1羽根部を前記第2羽根部に繋ぐ弾性部とを有するクリップである、請求項7に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項9】
前記クリップは、前記第1羽根部が櫛型に形成され、前記基板と前記第2金属板とを挟んだ状態において、複数の前記導体壁及び複数の前記放射用スロットが形成されていない領域を前記第1羽根部の歯の部分で押すように構成されている、
請求項8に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項10】
前記クリップは、前記基板と前記放射用導波管の前記導体面とが接触する境界部分を覆う突片をさらに有する、
請求項8又は請求項9に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項11】
前記第1金属板及び前記第2金属板は、同じ大きさで長辺が互いに平行に配置される長方形の形状を有し、
前記放射用導波管は、前記第1金属板の長辺と前記第2金属板の長辺とを支持する第1支持部材及び第2支持部材をさらに有し、
前記基板は、前記放射用導波管の前記第1金属板の前記長辺に沿うように設けられているリブを有し、
前記第1羽根部は、前記第2羽根部の方向に張り出した張出部を持ち、前記リブに前記第1羽根部の前記張出部を引っ掛けた状態で押し込むときには前記第2金属板の前記長辺近傍に前記第2羽根部が線接触し、前記第2金属板と前記基板とを挟んだ状態で前記第2金属板の面に第2羽根部が面で接触するように取り付けられるよう構成されている、
請求項7から10のいずれか1項に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項12】
互いに連結される格子側連結部材と導電性の導波管側連結部材とを含み、前記格子の前記基板を前記放射用導波管の前記導体面に留めるための留め具をさらに備え、
前記放射用導波管は、内部空間に面する内側主面に形成されている凹部と、前記凹部の一部から前記導体面に続く開孔部とを持つ導体板を有し、
前記格子の前記基板は、前記格子側連結部材が取り付けられる取付部を持ち、
前記導波管側連結部材は、前記内側主面を平らにするように前記凹部に嵌まる幅広部と、前記開孔部から電磁波放射側の空間に露出して前記格子側連結部材に連結されるため前記幅広部より伸びる幅狭部とを有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項13】
前記格子の前記基板と前記導体面との間に配置され、前記基板及び前記導体面に電気的に接触する導電性部材をさらに備える、
請求項1から12のいずれか1項に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載のスロットアレイアンテナと、
前記放射用導波管に電磁波を供給する電磁波供給源と、
前記スロットアレイアンテナを回転させる回転部と、
前記スロットアレイアンテナにより受信されたエコー信号を信号処理する信号処理部と
を備える、レーダ装置。
【請求項15】
請求項1から請求項13のいずれかの請求項に記載のスロットアレイアンテナと、
前記スロットアレイアンテナを覆う、断面が略円形の円柱状カバーと、
を備え、
前記円柱状カバーの中心軸近傍に前記導体面が配置される、レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−19258(P2012−19258A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153613(P2010−153613)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】