説明

ズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法

【課題】小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有する大画角のズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】物体側から順に、負の屈折力を有する前群Gnと、正の屈折力を有する後群Gpとを有し、後群Gpは、物体側から順に、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズ成分Laと、正レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合負レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合正レンズLdとを有し、さらに、正メニスカスレンズ成分Laよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動する合焦レンズ群Gfを有し、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、所定の条件式を満足することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル一眼レフカメラ、フィルムカメラ、ビデオカメラ等の撮影光学系に好適なズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大画角を有するズームレンズが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−21223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来のレトロフォーカス型のズームレンズにおいて高性能化を図ろうとすれば、後群の構成を複雑にしたり、レンズ枚数を増加する傾向があった。また、当該後群は、一般に所謂変形トリプレット型又はエルノスター型の構成が一般的で、特に大きな負の屈折力を有するレンズを備えることとなるため、偏芯敏感度が高くなりやすく、レンズの組み立て性に欠点を有していた。また、従来のズームレンズで大画角化を実現しようとする場合には、非点収差、像面湾曲、コマ収差、及び球面収差の補正に有利なレンズタイプが求められていた。
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有する大画角のズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、
物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有し、
前記後群は、物体側から順に、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズ成分Laと、正レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合負レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合正レンズLdとを有し、さらに、前記正メニスカスレンズ成分Laよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動する合焦レンズ群Gfを有し、
前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、
以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズを提供する。
0.00<Fw/Fb<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記正レンズLbの焦点距離
【0006】
また本発明は、
前記ズームレンズを有することを特徴とする撮像装置を提供する。
また本発明は、
物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有するズームレンズの製造方法であって、
前記後群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズ成分Laと、正レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合負レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合正レンズLdとを有し、さらに、前記正メニスカスレンズ成分Laよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動する合焦レンズ群Gfを有するようにし、
前記ズームレンズが以下の条件式を満足するようにし、
前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行うようにすることを特徴とするズームレンズの製造方法を提供する。
0.00<Fw/Fb<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記正レンズLbの焦点距離
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有する大画角のズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願の第1実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
【図2】(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、本願の第1実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
【図3】本願の第2実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
【図4】(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、本願の第2実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
【図5】本願の第3実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
【図6】(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、本願の第3実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
【図7】本願のズームレンズを備えたカメラの構成を示す図である。
【図8】本願のズームレンズの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願のズームレンズ、撮像装置、ズームレンズの製造方法について説明する。
本願のズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有し、前記後群は、物体側から順に、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズ成分Laと、正レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合負レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合正レンズLdとを有し、さらに、前記正メニスカスレンズ成分Laよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動する合焦レンズ群Gfを有し、前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
(1) 0.00<Fw/Fb<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記正レンズLbの焦点距離
【0010】
一般に、大画角を有するレトロフォーカス型のズームレンズにおいて、マスターレンズ群である後群の構成は、主点とバックフォーカスの関係より、物体側から順に、正レンズ、正レンズ、負レンズ、及び正レンズを有するレンズ構成を基本とした変形トリプレット型又はエルノスター型が主流であった。しかしながら、斯かる後群は正レンズで発生した収差を負レンズで打ち消す手法をとるため、偏芯、レンズ厚、及び空気間隔の各々の敏感度が高くなる傾向にあった。このような現象は、特に、口径が比較的大きなズームレンズや、マスターレンズ群である後群の屈折力が大きいズームレンズにおいて顕著であった。
そこで本願のズームレンズは、この点を改善するために、物体側から順に、正レンズ群、正レンズ成分、正レンズ、接合負レンズ、及び接合正レンズを有するレンズ構成を後群の基本とすることで、後群の中央に負レンズを配置しない構成とすることに成功している。これにより、前記敏感度の低減を実現することができ、さらに球面収差、コマ収差、像面湾曲、及び非点収差を良好に補正することが可能となり、小型で良好な光学性能を有する大画角のズームレンズを達成することができる。
【0011】
次に、本願のズームレンズの特徴を各条件式に基づいて説明する。
上記条件式(1)は、後群内の正レンズLbの焦点距離の大きさ、即ち正レンズLbの屈折力を規定する条件式である。
本願のズームレンズの条件式(1)の対応値が上限値を上回ると、正レンズLbの焦点距離が小さくなる、即ち正レンズLbの正の屈折力が大きくなることを意味する。この場合、望遠端状態における球面収差が悪化してしまうため好ましくない。また、特に接合負レンズLcと接合正レンズLdに収差補正の負担がかかり、結果的には、コマ収差、像面湾曲、及び非点収差も悪化することとなってしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.90以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.80以下とすることがより好ましく、これによって良好な収差補正を行うことが可能となる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.70以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を0.60以下とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(1)の上限値を0.50以下とすることがより好ましい。
【0012】
一方、本願のズームレンズの条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、正レンズLbの焦点距離が大きくなる、即ち正レンズLbの正の屈折力が著しく小さくなる、又は正レンズLbが負の屈折力を有するようになることを意味する。この場合、望遠端状態における球面収差が悪化することとなるため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を0.01以上とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を0.05以上とすることがより好ましく、これによって諸収差をより良好に補正することができる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を0.10以上とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(1)の下限値を0.20以上とすることがより好ましい。
【0013】
また、本願のズームレンズは、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2) 0.00<Fw/(−Fc)<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fc:前記後群内の前記接合負レンズLcの焦点距離
【0014】
条件式(2)は、後群内の接合負レンズLcの焦点距離の大きさ、即ち接合負レンズLcの屈折力を規定する条件式である。
本願のズームレンズの条件式(2)の対応値が上限値を上回ると、接合負レンズLcの焦点距離の絶対値が小さくなる、即ち接合負レンズLcの負の屈折力が大きくなることを意味する。この場合、球面収差、及び変倍によるコマ収差の変動が増加してしまうため好ましくない。また、像面湾曲と非点収差も悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を0.70以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を0.60以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を0.50以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を0.40以下とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(2)の上限値を0.30以下とすることがより好ましい。
【0015】
一方、本願のズームレンズの条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、接合負レンズLcの焦点距離の絶対値が大きくなる、即ち接合負レンズLcの屈折力が著しく小さくなる、又は接合負レンズLcが正の屈折力を有するようになることを意味する。この場合、接合正レンズLdの収差補正の負担が増加してしまう。そして結果的に、球面収差、像面湾曲、コマ収差の画角による変位、及び変倍によるコマ収差の変動が増加してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値を0.01以上とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値を0.02以上とすることがより好ましく、これによって諸収差をより良好に補正することができる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値を0.05以上とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(2)の下限値を0.10以上とすることがより好ましい。
【0016】
また、本願のズームレンズは、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3) 0.05<Fw/Fa<0.80
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fa:前記後群内の前記正メニスカスレンズ成分Laの合成焦点距離
【0017】
条件式(3)は、後群内の正メニスカスレンズ成分Laの合成焦点距離の大きさ、即ち正メニスカスレンズ成分Laの屈折力を規定する条件式である。
本願のズームレンズの条件式(3)の対応値が上限値を上回ると、正メニスカスレンズ成分Laの合成焦点距離が小さくなる、即ち正メニスカスレンズ成分Laの正の屈折力が大きくなることを意味する。この場合、望遠端状態における球面色収差や軸上色収差等が悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を0.70以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を0.60以下とすることがより好ましく、これによって諸収差の補正が有利になる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を0.50以下とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(3)の上限値を0.30以下とすることがより好ましい。
【0018】
一方、本願のズームレンズの条件式(3)の対応値が下限値を下回ると、正メニスカスレンズ成分Laの合成焦点距離が大きくなる、即ち正メニスカスレンズ成分Laの正の屈折力が小さくなることを意味する。この場合、収差補正上、接合負レンズLcや接合正レンズLdが大きな負担を強いられることになる。そして結果的に、球面色収差、変倍によるコマ収差の変動、及び変倍による像面湾曲の変動が悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の下限値を0.06以上とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の下限値を0.08以上とすることがより好ましく、これによって諸収差をより良好に補正することができる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(3)の下限値を0.10以上とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(3)の下限値を0.11以上とすることがより好ましい。
【0019】
また、本願のズームレンズは、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4) 0.000<Fw/Fd<0.500
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fd:前記後群内の前記接合正レンズLdの焦点距離
【0020】
条件式(4)は、後群内の接合正レンズLdの焦点距離の大きさ、即ち接合正レンズLdの屈折力を規定する条件式である。
本願のズームレンズの条件式(4)の対応値が上限値を上回ると、接合正レンズLdの焦点距離が小さくなる、即ち接合正レンズLdの屈折力が大きくなることを意味する。この場合、コマ収差が悪化し、また、変倍によるコマ収差の変動、及び変倍による像面湾曲の変動が増加してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値を0.40以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値を0.30以下とすることがより好ましく、これによって諸収差の補正が有利になる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値を0.20以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値を0.15以下とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(4)の上限値を0.10以下とすることがより好ましい。
【0021】
一方、本願のズームレンズの条件式(4)の対応値が下限値を下回ると、接合正レンズLdの焦点距離が大きくなる、即ち接合正レンズLdの屈折力が著しく小さくなることを意味する。この場合、接合正レンズLdの収差補正能力が極端に低下し、接合負レンズLcの収差補正の負担が増加してしまう。そして結果的に、コマ収差の画角による変位、変倍によるコマ収差の変動、及び像面湾曲の変化が増加してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の下限値を0.005以上とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の下限値を0.010以上とすることがより好ましく、これによってコマ収差等の諸収差をより良好に補正することができる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(4)の下限値を0.020以上とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(4)の下限値を0.030以上とすることがより好ましい。
【0022】
また、本願のズームレンズは、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5) 0.05<Fw/Ff<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Ff:前記後群内の前記合焦レンズ群Gfの焦点距離
【0023】
条件式(5)は、後群内の合焦レンズ群Gfの焦点距離の大きさ、即ち合焦レンズ群Gfの屈折力を規定する条件式である。
本願のズームレンズの条件式(5)の対応値が上限値を上回ると、合焦レンズ群Gfの焦点距離が小さくなる、即ち合焦レンズ群Gfの正の屈折力が大きくなることを意味する。この場合、球面色収差、軸上色収差、及び望遠端状態におけるコマ収差が悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を0.80以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を0.70以下とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を0.50以下とすることがより好ましく、これによって諸収差の補正が有利になる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を0.40以下とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(5)の上限値を0.30以下とすることがより好ましい。
【0024】
一方、本願のズームレンズの条件式(5)の対応値が下限値を下回ると、合焦レンズ群Gfの焦点距離が大きくなる、即ち合焦レンズ群Gfの正の屈折力が著しく小さくなることを意味する。この場合、合焦レンズ群Gfが合焦レンズ群としての役割を果たせなくなり、合焦レンズ群Gfの合焦のための移動量が増大し、本願のズームレンズ全体が大型化してしまうため好ましくない。また結果的に、球面色収差、軸上色収差、及び望遠端状態におけるコマ収差が悪化してしまうため好ましくない。
なお、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の下限値を0.10以上とすることがより好ましい。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の下限値を0.12以上とすることがより好ましく、これによって諸収差をより良好に補正することができる。また、本願の効果をより確実にするために、条件式(5)の下限値を0.15以上とすることがより好ましい。また、本願の効果を最大限に発揮するために、条件式(5)の下限値を0.20以上とすることがより好ましい。
【0025】
また、本願のズームレンズは、前記後群内の前記正メニスカスレンズ成分Laが正レンズと負レンズとの接合レンズからなることが望ましい。この構成により、ペッツバール和を適切に設定することができ、色収差を良好に補正することができる。
また、本願のズームレンズは、前記後群内の前記正メニスカスレンズ成分Laが1枚の正レンズからなることが望ましい。この構成により、本願のズームレンズのレンズ枚数を少なくすることができるため、小型化、軽量化、及び低価格化を図ることができる。また、本願のズームレンズの製造時に、光学性能の誤差の発生を少なくすることもできる。
また、本願のズームレンズは、前記後群内の前記合焦レンズ群Gfが接合レンズを少なくとも有することが望ましい。この構成により、特に望遠端状態におけるコマ収差と球面収差を良好に補正することができる。
また、本願の撮像装置は、上述した構成のズームレンズを備えたことを特徴とする。これにより、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有する大画角の撮像装置を実現することができる。
【0026】
また、本願のズームレンズの製造方法は、物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有するズームレンズの製造方法であって、前記後群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズ成分Laと、正レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合負レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合正レンズLdとを有し、さらに、前記正メニスカスレンズ成分Laよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動する合焦レンズ群Gfを有するようにし、前記ズームレンズが以下の条件式(1)を満足するようにし、前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行うようにすることを特徴とする。
(1) 0.00<Fw/Fb<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記正レンズLbの焦点距離
斯かる本願のズームレンズの製造方法により、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有する大画角のズームレンズを製造することができる。
【0027】
以下、本願の数値実施例に係るズームレンズを添付図面に基づいて説明する。
(第1実施例)
図1は、本願の第1実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
本実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群Gnと、正の屈折力を有する後群Gpとから構成されている。
前群Gnは、物体側から順に、像側に凹面を向けた両側非球面負メニスカスレンズL11と、両凹形状の負レンズL12と両凸形状の正レンズL13との接合負レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14とからなる。
【0028】
後群Gpは、物体側から順に、正の屈折力を有する合焦レンズ群Gfと、開口絞りSと、正の屈折力を有する正レンズ群Grとからなる。
合焦レンズ群Gfは、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動するレンズ群であって、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との接合正レンズのみからなる。
正レンズ群Grは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合正レンズLaと、両凸形状の正レンズLbと、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合負レンズLcと、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズと像側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合正レンズLdとからなる。
また、本実施例に係るズームレンズでは、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって、広角端状態から望遠端状態への変倍を行う。なお、図1中の矢印は、広角端状態から望遠端状態への変倍時の前群Gn及び後群Gpの移動軌跡を示している。
【0029】
以下の表1に、本実施例に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
表1において、Fは焦点距離、BFはバックフォーカスを示す。
[面データ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面の順番、rはレンズ面の曲率半径、dはレンズ面の間隔、ndはd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、νdはd線(波長λ=587.6nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、物面は物体面、可変は可変の面間隔、(絞りS)は開口絞りS、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示している。また、面番号の左側に付された米印「*」は非球面を示している。
[非球面データ]には、[面データ]に示した非球面について、その形状を次式で表した場合の円錐係数と非球面係数を示す。
X(y)=(y/r)/[1+{1−κ(y/r)}1/2]
+A4×y+A6×y+A8×y+A10×y10+A12×y12
ここで、光軸に垂直な方向の高さをy、高さyにおける光軸方向の変位量をX(y)、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をr、円錐係数をκ、n次の非球面係数をAnとする。なお、「E-n」は「×10-n」を示し、例えば「1.234E-05」は「1.234×10−5」を示す。
【0030】
[各種データ]において、FNOはFナンバー、ωは半画角(単位:度)、Yは像高、TLは光学系全長、Σdは最も物体側のレンズ面(第1面)から最も像側のレンズ面までの距離、βは撮影倍率、d0は物体面から第1面までの距離、di(i:整数)は第i面の可変の面間隔をそれぞれ示す。なお、1-POSは広角端状態における無限遠物体合焦時、2-POSは中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時、3-POSは望遠端状態における無限遠物体合焦時、4-POSは広角端状態における有限距離物体合焦時、5-POSは中間焦点距離状態における有限距離物体合焦時、6-POSは望遠端状態における有限距離物体合焦時、7-POSは広角端状態における最短撮影距離物体合焦時、8-POSは中間焦点距離状態における最短撮影距離物体合焦時、9-POSは望遠端状態における最短撮影距離物体合焦時をそれぞれ示す。
ここで、表1に掲載されている焦点距離F、曲率半径r、及びその他長さの単位は一般に「mm」が使われる。しかしながら光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
なお、以上に述べた表1の符号は、後述する各実施例の表においても同様に用いるものとする。
【0031】
(表1)第1実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
*1) 30.2329 2.0000 1.816000 46.63
*2) 10.4892 15.0000 1.000000
3) -42.5621 1.5000 1.816000 46.63
4) 37.2333 5.0000 1.688930 31.06
5) -64.4572 0.1000 1.000000
6) 38.5810 2.8000 1.672700 32.11
7) 106.0516 可変 1.000000
8) 28.1138 1.0000 1.772500 49.61
9) 15.9812 3.0000 1.487490 70.45
10) -73.1022 可変 1.000000
11) (絞りS) ∞ 0.7000 1.000000
12) 14.0547 2.5000 1.516800 64.12
13) 100.0000 0.8000 1.517420 52.32
14) 16.6009 1.5000 1.000000
15) 50.8775 5.0000 1.518230 58.89
16) -41.2126 1.5000 1.000000
17) -19.8605 1.0000 1.755000 52.29
18) 21.3857 6.0000 1.516800 64.12
19) -15.6515 0.1000 1.000000
20) -111.5170 5.5000 1.497820 82.56
21) -11.4457 1.0000 1.834810 42.72
22) -23.2681 BF 1.000000
像面 ∞

[非球面データ]
第1面
κ = -2.1107
A4 = 1.07754E-06
A6 = 3.75728E-09
A8 = 3.70102E-12
A10 = -8.68356E-15
A12 = 0.00000

第2面
κ = 0.1153
A4 = 2.12135E-05
A6 = 5.88073E-08
A8 = -3.66898E-10
A10 = 2.96024E-12
A12 = -0.17216E-14

[各種データ]
ズーム比 1.77

1-POS 2-POS 3-POS
F 16.48 〜 24.00 〜 29.10
FNO 4.54 〜 5.32 〜 5.88
ω 53.23 〜 41.68 〜 36.30°
Y 21.60 〜 21.60 〜 21.60
TL 132.12 〜 119.13 〜 120.94
Σd 84.84 〜 69.49 〜 63.60
BF 38.28 〜 49.64 〜 57.34

1-POS 2-POS 3-POS 4-POS 5-POS 6-POS
F&β 16.48000 24.00000 29.10000 -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 ∞ ∞ ∞ 470.0125 697.8557 851.7435
d7 22.83565 7.49367 1.60119 23.95087 8.24040 2.23273
d10 6.00001 6.00001 6.00001 4.88480 5.25328 5.36847
BF 38.28083 49.63614 57.33722 38.28083 49.63614 57.33722

7-POS 8-POS 9-POS
β -0.10894 -0.15684 -0.19357
d0 126.8835 130.8702 129.0616
d7 26.50661 10.99390 5.23534
d10 2.32905 2.49978 2.36586
BF 38.28083 49.63614 57.33722

[レンズ群データ]
群 始面 F
Gn 1 -23.11668
Gf 8 61.15566
Gr 12 55.05557

[条件式対応値]
(1) Fw/Fb = 0.3681
(2) Fw/(−Fc) = 0.1518
(3) Fw/Fa = 0.1335
(4) Fw/Fd = 0.04531
(5) Fw/Ff = 0.2695

【0032】
図2(a)、図2(b)、及び図2(c)はそれぞれ、本願の第1実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高、dはd線(λ=587.6nm)、gはg線(λ=435.8nm)をそれぞれ示す。なお、球面収差図では最大口径に対応するFナンバーの値を示し、非点収差図及び歪曲収差図では像高の最大値をそれぞれ示している。また、非点収差図において実線はサジタル像面、点線はメリジオナル像面を示し、コマ収差図における実線はメリジオナルコマ収差を示す。なお、以下に示す各実施例の収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。
各諸収差図より、本実施例に係るズームレンズは、球面収差、像面湾曲、非点収差、及びコマ収差を含む諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0033】
(第2実施例)
図3は、本願の第2実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
本実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群Gnと、正の屈折力を有する後群Gpとから構成されている。
前群Gnは、物体側から順に、像側に凹面を向けた両側非球面負メニスカスレンズL11と、両凹形状の負レンズL12と両凸形状の正レンズL13との接合負レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14とからなる。
【0034】
後群Gpは、物体側から順に、正の屈折力を有する合焦レンズ群Gfと、開口絞りSと、正の屈折力を有する正レンズ群Grとからなる。
合焦レンズ群Gfは、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動するレンズ群であって、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との接合正レンズのみからなる。
正レンズ群Grは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズLaと、両凸形状の正レンズLbと、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合負レンズLcと、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズと像側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合正レンズLdとからなる。
また、本実施例に係るズームレンズでは、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって、広角端状態から望遠端状態への変倍を行う。なお、図3中の矢印は、広角端状態から望遠端状態への変倍時の前群Gn及び後群Gpの移動軌跡を示している。
以下の表2に、本実施例に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
【0035】
(表2)第2実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
*1) 32.6259 2.0000 1.744429 49.52
*2) 10.2183 14.5000 1.000000
3) -38.5331 1.5000 1.816000 46.63
4) 54.6487 5.0000 1.688930 31.06
5) -62.6107 0.1000 1.000000
6) 40.5564 2.8000 1.672700 32.11
7) 126.7400 可変 1.000000
8) 28.8066 1.0000 1.772500 49.61
9) 16.1521 3.0000 1.487490 70.45
10) -66.1789 可変 1.000000
11) (絞りS) ∞ 0.7000 1.000000
12) 13.2154 3.0000 1.487490 70.45
13) 15.7805 1.5000 1.000000
14) 45.1283 5.0000 1.487490 70.45
15) -29.9147 1.5000 1.000000
16) -17.7734 1.0000 1.755000 52.29
17) 19.3882 6.0000 1.516800 64.12
18) -15.5114 0.1000 1.000000
19) -67.3602 5.5000 1.497820 82.56
20) -11.2386 1.0000 1.834810 42.72
21) -21.1249 BF 1.000000
像面 ∞

[非球面データ]
第1面
κ = -1.2907
A4 = -1.74965E-07
A6 = 5.05405E-09
A8 = 4.84603E-12
A10 = -1.19629E-14
A12 = 0.00000

第2面
κ = 0.1334
A4 = 2.67889E-05
A6 = 8.12946E-08
A8 = -2.05052E-10
A10 = 1.92258E-12
A12 = 0.54492E-14

[各種データ]
ズーム比 1.77

1-POS 2-POS 3-POS
F 16.48 〜 24.00 〜 29.10
FNO 4.51 〜 5.28 〜 5.84
ω 53.27 〜 41.65 〜 36.27°
Y 21.60 〜 21.60 〜 21.60
TL 122.32 〜 118.32 〜 120.11
Σd 84.04 〜 68.69 〜 62.79
BF 38.28 〜 49.63 〜 57.32

1-POS 2-POS 3-POS 4-POS 5-POS 6-POS
F&β 16.48000 24.00000 29.10000 -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 ∞ ∞ ∞ 469.9133 697.8252 851.7261
d7 22.83630 7.48913 1.59465 23.95726 8.23622 2.22593
d10 6.00001 6.00001 6.00001 4.87905 5.25292 5.36873
BF 38.28415 49.62644 57.31868 38.28415 49.62644 57.31868

7-POS 8-POS 9-POS
β -0.10829 -0.15598 -0.19249
d0 127.6795 131.6844 129.8867
d7 26.50628 10.97269 5.20792
d10 2.33003 2.51645 2.38675
BF 38.28415 49.62644 57.31868

[レンズ群データ]
群 始面 F
Gn 1 -23.13386
Gf 8 60.41221
Gr 12 54.99320

[条件式対応値]
(1) Fw/Fb = 0.4368
(2) Fw/(−Fc) = 0.2255
(3) Fw/Fa = 0.1367
(4) Fw/Fd = 0.05312
(5) Fw/Ff = 0.2728

【0036】
図4(a)、図4(b)、及び図4(c)はそれぞれ、本願の第2実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
各諸収差図より、本実施例に係るズームレンズは、球面収差、像面湾曲、非点収差、及びコマ収差を含む諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0037】
(第3実施例)
図5は、本願の第3実施例に係るズームレンズの構成を示す断面図である。
本実施例に係るズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する前群Gnと、正の屈折力を有する後群Gpと、固定群Gsとから構成されている。
前群Gnは、物体側から順に、像側に凹面を向けた両側非球面負メニスカスレンズL11と、両凹形状の負レンズL12と両凸形状の正レンズL13との接合負レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14とからなる。
【0038】
後群Gpは、物体側から順に、正の屈折力を有する合焦レンズ群Gfと、開口絞りSと、正の屈折力を有する正レンズ群Grとからなる。
合焦レンズ群Gfは、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動するレンズ群であって、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との接合正レンズのみからなる。
正レンズ群Grは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合正レンズLaと、両凸形状の正レンズLbと、両凹形状の負レンズと両凸形状の正レンズとの接合負レンズLcと、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズと像側に凸面を向けた負メニスカスレンズとの接合正レンズLdとからなる。
固定群Gsは、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL31のみからなる。
また、本実施例に係るズームレンズでは、前群Gnと後群Gpとの間の空気間隔を変化させることによって、広角端状態から望遠端状態への変倍を行う。なお、固定群Gsの位置は、変倍に際して固定である。また、図5中の矢印は、広角端状態から望遠端状態への変倍時の前群Gn及び後群Gpの移動軌跡を示している。
以下の表3に、本実施例に係るズームレンズの諸元値を掲げる。
【0039】
(表3)第3実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞
*1) 30.2329 2.0000 1.816000 46.63
*2) 10.4892 15.0000 1.000000
3) -42.5621 1.5000 1.816000 46.63
4) 37.2333 5.0000 1.688930 31.06
5) -64.4572 0.1000 1.000000
6) 38.5810 2.8000 1.672700 32.11
7) 106.0516 可変 1.000000
8) 28.1138 1.0000 1.772500 49.61
9) 15.9812 3.0000 1.487490 70.45
10) -73.1022 可変 1.000000
11) (絞りS) ∞ 0.7000 1.000000
12) 14.0547 2.5000 1.516800 64.12
13) 100.0000 0.8000 1.517420 52.32
14) 16.6009 1.5000 1.000000
15) 50.8775 5.0000 1.518230 58.89
16) -41.2126 1.5000 1.000000
17) -19.8605 1.0000 1.755000 52.29
18) 21.3857 6.0000 1.516800 64.12
19) -15.6515 0.1000 1.000000
20) -111.5170 5.5000 1.497820 82.56
21) -11.4457 1.0000 1.834810 42.72
22) -23.2681 可変 1.000000
23) -100.0000 2.0000 1.516800 64.12
24) -107.0000 BF 1.000000
像面 ∞

[非球面データ]
第1面
κ = -2.1107
A4 = 1.07754E-06
A6 = 3.75728E-09
A8 = 3.70102E-12
A10 = -8.68356E-15
A12 = 0.00000

第2面
κ = 0.1153
A4 = 2.12135E-05
A6 = 5.88073E-08
A8 = -3.66898E-10
A10 = 2.96024E-12
A12 = -0.17216E-14

[各種データ]
ズーム比 1.77

1-POS 2-POS 3-POS
F 16.48 〜 24.00 〜 29.10
FNO 4.62 〜 5.37 〜 5.93
ω 52.71 〜 41.70 〜 36.31°
Y 21.60 〜 21.60 〜 21.60
TL 124.56 〜 120.54 〜 122.10
Σd 87.69 〜 83.66 〜 85.23
BF 36.87 〜 36.87 〜 36.87

1-POS 2-POS 3-POS 4-POS 5-POS 6-POS
F&β 16.48000 24.00000 29.10000 -0.03333 -0.03333 -0.03333
d0 ∞ ∞ ∞ 478.7844 697.7664 851.6626
d7 22.83565 8.10808 2.11833 23.93137 8.85371 2.74799
d10 5.85208 5.85208 5.85208 4.75637 5.10646 5.22242
d22 1.00000 11.70369 19.25652 1.00000 11.70369 19.25652
BF 36.87278 36.87278 36.87278 36.87278 36.87278 36.87278

7-POS 8-POS 9-POS
β -0.11194 -0.15821 -0.19497
d0 125.4395 129.4634 127.9003
d7 26.54236 11.63502 5.76938
d10 2.14537 2.32515 2.20103
d22 1.00000 11.70369 19.25652
BF 36.87278 36.87278 36.87278

[レンズ群データ]
群 始面 F
Gn 1 -23.11668
Gf 8 61.15566
Gr 12 55.05557
Gs 23 -3276.74607

[条件式対応値]
(1) Fw/Fb = 0.3681
(2) Fw/(−Fc) = 0.1518
(3) Fw/Fa = 0.1335
(4) Fw/Fd = 0.04531
(5) Fw/Ff = 0.2695

【0040】
図6(a)、図6(b)、及び図6(c)はそれぞれ、本願の第3実施例に係るズームレンズの広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差、中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差、及び望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差を示す図である。
各諸収差図より、本実施例に係るズームレンズは、球面収差、像面湾曲、非点収差、及びコマ収差を含む諸収差が良好に補正されていることがわかる。
【0041】
以上の各実施例によれば、一眼レフカメラ等の撮像装置に好適な、広角端状態で包括角2ω=106.3°を越え、Fナンバー=4.5〜5.6程度の口径を有し、レンズ枚数が少なく、前玉径が小さく即ちフィルター径が小さく、小型で、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有するレトロフォーカス型のズームレンズを実現することができる。
ここで、上記各実施例は本願発明の一具体例を示しているものであり、本願発明はこれらに限定されるものではない。以下の内容は、本願のズームレンズの光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
本願のズームレンズの数値実施例として2群、3群構成のものを示したが、本願はこれに限られず、その他の群構成(例えば、4群、5群等)のズームレンズを構成することもできる。具体的には、本願のズームレンズの最も物体側や最も像側にレンズ又はレンズ群を追加した構成でも構わない。なお、レンズ群とは空気間隔で分離された少なくとも1枚のレンズを有する部分をいう。
【0042】
また、本願のズームレンズは、無限遠物体から近距離物体への合焦を行うために、レンズ群の一部、1つのレンズ群全体、或いは複数のレンズ群を合焦レンズ群として光軸方向へ移動させる構成としてもよい。また、合焦レンズ群は、オートフォーカスに適用することも可能であり、オートフォーカス用のモータ、例えば超音波モータ等による駆動にも適している。特に、本願のズームレンズでは前群又は後群の少なくとも一部を合焦レンズ群とすることが好ましい。
また、本願のズームレンズにおいて、いずれかのレンズ群全体又はその一部を、防振レンズ群として光軸に直交する方向の成分を含むように移動させ、又は光軸を含む面内方向へ回転移動(揺動)させることで、手ブレによって生じる像ブレを補正する構成とすることもできる。特に、本願のズームレンズでは後群の少なくとも一部を防振レンズ群とすることが好ましい。
【0043】
また、本願のズームレンズを構成するレンズのレンズ面は、球面又は平面としてもよく、或いは非球面としてもよい。レンズ面が球面又は平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、レンズ加工及び組立調整の誤差による光学性能の劣化を防ぐことができるため好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないため好ましい。レンズ面が非球面の場合、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に成型したガラスモールド非球面、又はガラス表面に設けた樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれでもよい。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)或いはプラスチックレンズとしてもよい。
また、本願のズームレンズにおいて開口絞りは、後群Gp内の合焦レンズ群Gfと正レンズ群Grとの間に限られず、前群Gnと合焦レンズ群Gfとの間、又は正レンズ群Gr内の正メニスカスレンズ成分Laと正レンズLbとの間に配置することもできる。また、開口絞りは合焦レンズ群Gfと一体的に移動する構成としてもよい。また、開口絞りとして部材を設けずに、レンズ枠でその役割を代用する構成としてもよい。
【0044】
また、本願のズームレンズを構成するレンズのレンズ面に、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。これにより、フレアやゴーストを軽減し、高コントラストの高い光学性能を達成することができる。
また、本願のズームレンズは、ズーム比が2〜7程度である。
また、本願のズームレンズにおいて前群は、正レンズ成分を2つと、負レンズ成分を1つ有することが好ましく、特にこれらのレンズ成分を物体側から順に負、正、負の順番で空気間隔を介在させて配置することが好ましい。また、後群は、正レンズ成分を4つと、負レンズ成分を1つ有することが好ましく、特にこれらのレンズ成分を物体側から順に正、正、正、負、正の順番で空気間隔を介在させて配置することが好ましい。
【0045】
次に、本願のズームレンズを備えたカメラを図7に基づいて説明する。
図7は、本願のズームレンズを備えたカメラの構成を示す図である。
本カメラ1は、撮影レンズ2として上記第1実施例に係るズームレンズを備えたデジタル一眼レフカメラである。
本カメラ1において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2で集光されて、クイックリターンミラー3を介して焦点板4に結像される。そして焦点板4に結像されたこの光は、ペンタプリズム5中で複数回反射されて接眼レンズ6へ導かれる。これにより撮影者は、被写体像を接眼レンズ6を介して正立像として観察することができる。
【0046】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー3が光路外へ退避し、不図示の被写体からの光は撮像素子7へ到達する。これにより被写体からの光は、当該撮像素子7によって撮像されて、被写体画像として不図示のメモリに記録される。このようにして、撮影者は本カメラ1による被写体の撮影を行うことができる。
ここで、本カメラ1に撮影レンズ2として搭載した上記第1実施例に係るズームレンズは、その特徴的なレンズ構成により、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、高い結像性能と大画角を有している。これにより本カメラ1は、小型で、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有しており、大画角を包括する広角撮影が可能となる。なお、上記第2、第3実施例に係るズームレンズを撮影レンズ2として搭載したカメラを構成しても、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。
【0047】
最後に、本願のズームレンズの製造方法の概略を図8に基づいて説明する。
本願のズームレンズの製造方法は、物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有するズームレンズの製造方法であって、以下のステップS1〜S3を含むものである。
ステップS1:後群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズ成分Laと、正レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合負レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合正レンズLdとを有し、さらに、前記正メニスカスレンズ成分Laよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動する合焦レンズ群Gfを有するようにする。
【0048】
ステップS2:当該ズームレンズが以下の条件式(1)を満足するようにして、前群と後群を鏡筒内に物体側から順に配置する。
(1) 0.00<Fw/Fb<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記正レンズLbの焦点距離
ステップS3:前群と後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行うようにする。
斯かる本願のズームレンズの製造方法によれば、小型で、レンズ枚数が少なく、諸収差を良好に補正し、高い結像性能を有する大画角のズームレンズを製造することができる。
【符号の説明】
【0049】
Gn 前群
Gp 後群
Gf 合焦レンズ群
Gr 正レンズ群
La 正メニスカスレンズ成分
Lb 正レンズ
Lc 接合負レンズ
Ld 接合正レンズ
S 開口絞り
I 像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有し、
前記後群は、物体側から順に、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズ成分Laと、正レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合負レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合正レンズLdとを有し、さらに、前記正メニスカスレンズ成分Laよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動する合焦レンズ群Gfを有し、
前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行い、
以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
0.00<Fw/Fb<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記正レンズLbの焦点距離
【請求項2】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
0.00<Fw/(−Fc)<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fc:前記後群内の前記接合負レンズLcの焦点距離
【請求項3】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のズームレンズ。
0.05<Fw/Fa<0.80
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fa:前記後群内の前記正メニスカスレンズ成分Laの合成焦点距離
【請求項4】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.000<Fw/Fd<0.500
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fd:前記後群内の前記接合正レンズLdの焦点距離
【請求項5】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.05<Fw/Ff<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Ff:前記後群内の前記合焦レンズ群Gfの焦点距離
【請求項6】
前記後群内の前記正メニスカスレンズ成分Laが正レンズと負レンズとの接合レンズからなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記後群内の前記正メニスカスレンズ成分Laが1枚の正レンズからなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記後群内の前記合焦レンズ群Gfが接合レンズを少なくとも有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のズームレンズを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
物体側から順に、負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とを有するズームレンズの製造方法であって、
前記後群が、物体側から順に、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズ成分Laと、正レンズLbと、負レンズと正レンズとの接合負レンズLcと、正レンズと負レンズとの接合正レンズLdとを有し、さらに、前記正メニスカスレンズ成分Laよりも物体側に配置されており、正の屈折力を有し、無限遠物体から近距離物体への合焦のために物体側から像側へ移動する合焦レンズ群Gfを有するようにし、
前記ズームレンズが以下の条件式を満足するようにし、
前記前群と前記後群との間の空気間隔を変化させることによって変倍を行うようにすることを特徴とするズームレンズの製造方法。
0.00<Fw/Fb<1.00
ただし、
Fw:広角端状態における無限遠物体合焦時の前記ズームレンズ全系の焦点距離
Fb:前記後群内の前記正レンズLbの焦点距離

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−8273(P2012−8273A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142970(P2010−142970)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】