セパレーテッドスカーフによる板材の接合方法
【課題】単板の厚さやスカーフ面の重なり具合に誤差があっても、良好な接合を行い得るようにする。
【解決手段】図示しない接着剤を介して、多数条の溝y1を有するセパレーテッドスカーフ状のスカーフ面a2(a1)が噛み合うように、単板A1、A2を重ね合わせると共に、単板の表裏面に対する前記スカーフ面a2(a1)の投影長さLと略同等の長さL1、L2及び単板の幅Wを上回る幅W2(W1)を有する加圧面2a(1a)と、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備する一対の加圧部材1、2を用いて、単板の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面a2(a1)を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させる場合に、前記加圧部材1、2の加熱面2a(1a)に於ける各単板の端部側に対向する部位の形状を、単板の表裏面に対するスカーフ面a2(a1)の投影形状に準ずる形状とする。
【解決手段】図示しない接着剤を介して、多数条の溝y1を有するセパレーテッドスカーフ状のスカーフ面a2(a1)が噛み合うように、単板A1、A2を重ね合わせると共に、単板の表裏面に対する前記スカーフ面a2(a1)の投影長さLと略同等の長さL1、L2及び単板の幅Wを上回る幅W2(W1)を有する加圧面2a(1a)と、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備する一対の加圧部材1、2を用いて、単板の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面a2(a1)を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させる場合に、前記加圧部材1、2の加熱面2a(1a)に於ける各単板の端部側に対向する部位の形状を、単板の表裏面に対するスカーフ面a2(a1)の投影形状に準ずる形状とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレーテッドスカーフによる板材の接合方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベニヤ単板(以下、単に単板と称す)、合板、単板積層材、無垢板(製材板)、繊維板等の板材を処理対称とし、接着剤を用いて接合処理する接合手段として、汎用されているのは、接合すべき双方の板材の端面を、単純な斜面状のスカーフ面に形成すると共に、少なくともいずれか一方の板材のスカーフ面に、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤を塗布し、次いで、双方の板材のスカーフ面同士を重ね合わせると共に、板材の表裏面に対する前記スカーフ面の投影面積を覆うに足る矩形の加圧面と、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備する一対の加圧部材を用いて、板材の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させて、板材を接合する、所謂、プレーンスカーフ式の接合手段であるが、別の公知手段の一例として、特許文献1、非特許文献1等に開示される如く、前記プレーンスカーフ式の単純な接着面に代えて、V字状、台形状等の適宜の断面形状を有する溝の多数条を、スカーフ面に並列状に形成し、双方のスカーフ面が噛み合うように重ね合わせて接合する、所謂、セパレーテッドスカーフ式の接合手段が挙げられる。
【0003】
前記セパレーテッドスカーフ式の接合手段は、汎用のプレーンスカーフ式の接合手段に比べて、スカーフ面(接着面)の形成が煩雑になる難点を有するので、今日に至るまで、斯界に於て実用化された例の伝聞は皆無であるが、接着面積の拡大に比例して、接着力が向上すると共に、接合面の立体化に伴って、接合板材の曲げに対する応力の集中化が避けられるので、総じて、接合板材の強度が著しく向上する利点があり、丈夫な接合板材の形成には、有効な技術の一つであることから、本出願人が、実用化を模索したところ、板材の厚さや板材の重ね合わせ精度に僅少の誤差が伴うのは実用上不可避であるのに対して、汎用のプレーンスカーフ式の接合手段に準ずる接合形態を採ると、後述する如く、板材の厚さやスカーフ面の重なり具合等の条件が、特定の要件を満たしている場合には、特に問題が発生する虞はないが、前記条件が、特定の要件から外れた場合には、接合が不完全となる問題が惹起されることが、本発明の開発過程に於て新たに判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−175406号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】半井勇三著「木材の接着と接着剤」(森北出版株式会社、第5版)第206頁、第17.36図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
詳述すると、例えば図12、図13に例示する如く、下向きのスカーフ面b1にV字状の断面形状を有する溝y2の多数条を並列状に形成して成る単板B1と、上向きのスカーフ面b2にV字状の断面形状を有する溝y2の多数条を並列状に形成して成る単板B2との、少なくともいずれか片方のスカーフ面b1又は/及びb2に、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤(図示省略)を塗布し、次いで、双方の単板B1、B2のスカーフ面同士が噛み合うように重ね合わせると共に、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能を具備する上下一対の加圧部材3、4を用いて、単板B1、B2の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面b1、b2を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させて、単板B1、B2を接合せんと図る場合に、前記加圧部材3、4の夫々の加圧面3a、4aを、汎用のプレーンスカーフ式の接合手段に用いる加圧部材に準じて、各単板B1、B2の表裏面に対する前記スカーフ面b1、b2の投影面積を覆うに足る矩形状、つまり、各単板B1、B2の幅Wを上回る幅W3、W4と、前記スカーフ面b1、b2の投影長さLと同等乃至は同等以上の長さL3、L4とを有する矩形状にすると、単板B1、B2の厚さやスカーフ面b1、b2の重なり具合等の条件が、特定の要件を満たしている場合には、特に問題が発生する虞はないが、前記条件が、特定の要件から外れた場合には、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することができず、接合が不完全となる問題が惹起されるのである。
【0007】
即ち、例えば図13に例示する如く、先行する単板B1の厚さt1と、スカーフ面b2に接着剤Cが塗布された後続する単板B2の厚さt2とが、誤差なく正常値Tに揃っており、而も双方の単板B1とB2のスカーフ面b1とb2が、ぴったり重なり合う適正位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図14に例示する如く、接合すべき双方の単板B1とB2の厚さt1、t2が、誤差なく正常値Tに揃っており、而も双方の単板B1とB2のスカーフ面b1とb2が、適正位置よりも若干余分に重複して重ね合わされている場合等については、たとえ上下一対の加圧部材3、4の加圧面3a、4aの形状が矩形状であり、而もその長さL3、L4が、正常な厚さTを有する単板B1、B2に形成されたスカーフ面b1、b2の投影長さ(単板の表裏面に対する投影長さ)Lと同等乃至は同等以上であっても、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することができ、接合に格別不都合は生じない。
【0008】
また、例えば図15に例示する如く、接合すべき単板B3又はB4のいずれか一方、例えば単板B4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚いものの、正常な厚さt3(=T)を有する単板B3のスカーフ面b3の先端側(尖端側)と、前記単板B4のスカーフ面b4の基端側(単板本体側)とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図16に例示する如く、接合すべき単板B5又はB6のいずれか一方、例えば単板B6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄いものの、該単板B6のスカーフ面b6の先端側と、正常な厚さt5(=T)を有する単板B5のスカーフ面b5の基端側とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合等も、たとえ一対の加圧部材3、4の加圧面3a、4aの形状が矩形状であり、而もその長さL3、L4が、正常な厚さTを有する単板B3、B5に形成されたスカーフ面b3、b5の投影長さLと同等乃至は同等以上であっても、概ね所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することができ、接合に著しい不都合は生じない。
【0009】
ところが、例えば図17に例示する如く、接合すべき双方の単板B1とB2の厚さt1、t2が、誤差なく正常値Tに揃ってはいるものの、双方の単板B1とB2のスカーフ面b1とb2が、適正位置よりも若干離れた位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図18に例示する如く、接合すべき単板B3又はB4のいずれか一方、例えば単板B4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚く、而も該単板B4のスカーフ面b4の基端側と、正常な厚さt3(=T)を有する単板B3のスカーフ面b3の先端側とが離れた位置に於て重ね合わされている場合(換言すると、単板B4のスカーフ面b4の先端側と、単板B3のスカーフ面b3の基端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合)、更には例えば図19に例示する如く、接合すべき単板B5又はB6のいずれか一方、例えば単板B6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄く、而も該単板B6のスカーフ面b6の先端側と、正常な厚さt5(=T)を有する単板B5のスカーフ面b5の基端側とが離れた位置に於て重ね合わされている場合(換言すると、単板B6のスカーフ面b6の基端側と、単板B5のスカーフ面b5の先端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合)等にあっては、一対の加圧部材3、4の加圧面3a、4aの形状が矩形状であり、而もその長さL3、L4が、正常な厚さTを有する単板B1、B2、B3、B5に形成されたスカーフ面b1、b2、b3、b5の投影長さLと同等乃至は同等以上であると、単板B1、B2、B4、B5のスカーフ面以外の部分へ優先的に加圧力が作用して、重ね合わされたスカーフ面b1とb2、或はスカーフ面b3とb4、或はスカーフ面b5とb6に、必要十分な加圧力が加わり難く、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することができないので、結果的に、接合が不完全となる欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、斯様な問題の解消を図るべく開発したものであって、具体的には、各々のスカーフ面にV字状、台形状等の適宜の断面形状を有する溝の多数条を並列状に形成して成る板材同士を、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤を介して、双方のスカーフ面が噛み合うように重ね合わせると共に、板材の表裏面に対する前記スカーフ面の投影長さと略同等の長さ及び板材の幅を上回る幅を有する加圧面と、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備する一対の加圧部材を用いて、板材の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させて、板材を接合する接合方法であって、前記一対の加圧部材の少なくともいずれか片方の加熱面については、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にしたことを特徴とするセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法(請求項1)と、加圧部材の加圧面の長さ方向に於ける中央を、各板材のスカーフ面を重ね合わせる基準位置に定めて、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影長さの中央乃至は略中央を、前記基準位置に合わせながら、各板材のスカーフ面を重ね合わせて成る請求項1記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法(請求項2)と、一対の加圧部材の双方共に、各板材の端部側に対向する加熱面の部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして成る請求項1又は請求項2記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法(請求項3)と、一対の加圧部材のいずれか片方の加熱面についてのみ、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして成る請求項1又は請求項2記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法(請求項4)とを提案する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る板材の接合方法によれば、一対の加圧部材の少なくともいずれか片方の加熱面については、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして、加圧部材の加圧力が、スカーフ面へ重点的に作用するようにしたから、板材の厚さやスカーフ面の重なり具合等の条件が、特定の要件を満たしている場合には、特に問題なく良好な接合が行い得るのは勿論のこと、仮に前記条件が、特定の要件から外れた場合であっても、スカーフ面以外の部分へ優先的に加圧力が作用することは実質的に殆どなく、先述の如き問題の発生を回避乃至は低減させつつ接合が行い得るので有益である。
【0012】
尚、斯様に板材の厚さやスカーフ面の重なりの誤差を許容して接合するに際し、誤差の顕在化・拡大化を避けるには、請求項2に係る発明の如く、加圧部材の加圧面の長さ方向に於ける中央を、各板材のスカーフ面を重ね合わせる基準位置に定めて、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影長さの中央乃至は略中央を、前記基準位置に合わせながら、各板材のスカーフ面を重ね合わせる構成を採るのが好ましい。
【0013】
また、加圧部材の加圧力を、重ね合わせた板材のスカーフ面へより集中的に作用させるには、請求項3に係る発明の如く、双方の加圧部材の加熱面とも、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にするのが好ましいが、たとえ請求項4に係る発明の如く、一対の加圧部材のいずれか片方の加熱面についてのみ、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状とする構成を採っても、先記プレーンスカーフ式の接合手段に準ずる接合形態の構成を採る場合に比べれば、先述の如き問題の発生が低減されるので、相応に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る接合形態の構成を示した一部破断平面説明図である。
【図2】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図3】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図4】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図5】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図6】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図7】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図8】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図9】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図10】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図11】板材のスカーフ面同士を重ね合わせる手段の側面説明図である。
【図12】汎用手段に準ずる接合形態の構成を示した一部破断平面説明図である。
【図13】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図14】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図15】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図16】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図17】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図18】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図19】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、接合すべき双方の板材の端部を、夫々セパレーテッドスカーフ状に形成する手段、少なくともいずれか片方の板材のスカーフ面へ、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤を塗布する手段、加圧部材を加熱又は冷却する手段等については、いずれも格別な制約はなく、本発明の特徴部分には当らないので、説明の冗長化を避ける便宜上、後に概要を付言するに留め、詳細な図示、説明を省略する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明に係る接合形態の構成を示した一部破断平面説明図であり、図2は、本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。図中、A1、A2は、接合処理する単板であって、図示は省略したが、予め前々段の成形行程に於て、先行する単板A1の下向きのスカーフ面a1には、台形状の断面形状を有する溝y1の多数条を並列状に、また、後続する単板A2の上向きのスカーフ面a2にも、台形状の断面形状を有する溝y1の多数条を並列状に夫々形成すると共に、前段の塗布行程に於て、少なくともいずれか片方のスカーフ面a1又は/及びa2に、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤(図示省略)を塗布して、夫々後述する上下一対の加圧部材1、2の位置へ順次移送し、双方のスカーフ面a1、a2が噛み合うように重ね合わせる。
【0017】
1、2は、上下一対の加圧部材であって、単板A1、A2の表裏面に対する前記スカーフ面a1、a2の投影長さLと略同等の長さL1、L2、及び単板の幅Wを上回る幅W1、W2を有する加圧面1a、2aと、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備すると共に、夫々の加熱面1a、2aについては、各単板A1、A2の端部側に対向する部位の形状を、各単板A1、A2の表裏面に対するスカーフ面a1、a2の投影形状に準ずる形状に形成して成り、単板A1、A2の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面a1、a2を熱圧又は冷圧することにより、中に介在する接着剤を硬化させる。
【0018】
本発明に係る板材の接合方法は、述上の如く、一対の加圧部材の少なくともいずれか片方(実施例は、両方)の加熱面について、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状に形成して、板材の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧する故に、例えば図2に例示する如く、先行する単板A1の厚さt1と、後続する単板A2の厚さt2とが、誤差なく正常値Tに揃っており、而も双方の単板A1とA2のスカーフ面a1とa2が、ぴったり重なり合う適正位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図3に例示する如く、接合すべき双方の単板A1とA2の厚さt1、t2が、誤差なく正常値Tに揃っており、而も双方の単板A1とA2のスカーフ面a1とa2が、適正位置よりも若干余分に重複して重ね合わされている場合等については、たとえ加圧部材1、2の加熱面1a、2aに於ける各単板A1、A2の端部側に対向する部位の形状が、各単板A1、A2の表裏面に対するスカーフ面a1、a2の投影形状に準ずる形状に成形されていても、各加圧部材1、2の加圧力が、単板A1とA2の重ね合わされたスカーフ面a1、a2以外の部分には直接的に作用せず、スカーフ面a1、a2へ重点的に作用するので、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であって、接合が不完全となる問題が発生する虞はない。
【0019】
また、例えば図4に例示する如く、接合すべき単板A3又はA4のいずれか一方、例えば単板A4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚いものの、正常な厚さt3(=T)を有する単板A3のスカーフ面a3の先端側(尖端側)と、前記単板A4のスカーフ面a4の基端側(単板本体側)とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図5に例示する如く、接合すべき単板A5又はA6のいずれか一方、例えば単板A6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄いものの、該単板A6のスカーフ面a6の先端側と、正常な厚さt5(=T)を有する単板A5のスカーフ面a5の基端側とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合等についても、同じく加圧部材1、2の加熱面1a、2aに於ける各単板A1、A2の端部側に対向する部位の形状が、各単板A1、A2の表裏面に対するスカーフ面a1、a2の投影形状に準ずる形状に成形されていても、各加圧部材1、2の加圧力が、単板A3とA4の重ね合わされたスカーフ面a3、a4以外の部分、或は単板A5とA6の重ね合わされたスカーフ面a5、a6以外の部分には直接的に作用せず、スカーフ面a3、a4、或はスカーフ面a5、a6へ重点的に作用するので、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であり、接合が不完全となる問題が発生する虞はない。
【0020】
そして更に、例えば図6に例示する如く、接合すべき双方の単板A1とA2の厚さt1、t2が、誤差なく正常値Tに揃ってはいるものの、双方の単板A1とA2のスカーフ面a1とa2が、適正位置よりも若干離れた位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図7に例示する如く、接合すべき単板A3又はA4のいずれか一方、例えば単板A4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚く、而も該単板A4のスカーフ面a4の基端側と、正常な厚さt3を有する単板A3のスカーフ面a3の先端側とが離れた位置に於て重ね合わされている場合(換言すると、単板A4のスカーフ面a4の先端側と、単板A3のスカーフ面a3の基端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合)、更には例えば図8に例示する如く、接合すべき単板A5又はA6のいずれか一方、例えば単板A6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄く、而も該単板A6のスカーフ面a6の先端側と、正常な厚さt5を有する単板A5のスカーフ面a5の基端側とが離れた位置に於て重ね合わされている場合(換言すると、単板A6のスカーフ面a6の基端側と、単板A5のスカーフ面a5の先端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合)等については、加圧部材1、2の加熱面1a、2aに於ける各単板A1、A2(或はA3、A4、A5、A6)の端部側に対向する部位の形状が、各単板A1、A2(或はA3、A4、A5、A6)の表裏面に対するスカーフ面a1、a2(或はa3、a4、a5、a6)の投影形状に準ずる形状に成形されていることにより、前記各加熱面1a、2aの内の、少なくともいずれか片側の加熱面1a又は/及び2aが、先記図2〜図5の状態よりも一段と深くまで単板内部に沈み込んで、スカーフ面a1、a2(或はa3、a4、a5、a6)へ重点的に加圧力を作用させるので、スカーフ面以外の部分へ優先的に加圧力が作用することは実質的に殆どなく、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であって、接合が不完全となる問題が発生する虞がなくなる。
【0021】
尚、前記図2〜図8の実例の如く、双方の加圧部材の加熱面とも、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にすれば、加圧部材の加圧力が、スカーフ面へより集中的に作用するので、極めて有効であり好ましいが、先記図13〜図16の例からも明らかな通り、図2〜図5の実例の如く、板材の厚さやスカーフ面の重なり具合等の条件が、特定の要件を満たしている場合には、図示は省略したが、仮に、いずれか片側の加圧部材の加熱面が、矩形状であっても、特に問題が発生する虞はなく、また、例えば図9に例示する如く、単板A4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚いものの、正常な厚さt3(=T)を有する単板A3のスカーフ面a3の基端側と、前記単板A4のスカーフ面a4の先端側とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合については、たとえ、主として単板A4側に当接する下側の加圧部材20の加圧面20aが、正常な厚さt3(=T)を有する単板A3のスカーフ面a3の投影長さLと同等乃至は同等以上の長さL20を有する矩形状であっても、格別支障なく、スカーフ面a3、a4へ重点的に加圧力を作用させて、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であり、或は例えば、図10に例示する如く、単板A6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄いものの、該単板A6のスカーフ面a6の基端側と、正常な厚さt5(=T)を有する単板A5のスカーフ面a5の先端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合については、主として単板A5側に当接する上側の加圧部材10の加圧面10aが、正常な厚さt5(=T)を有する単板A5のスカーフ面a5の投影長さLと同等の乃至は同等以上長さL10を有する矩形状であっても、やはり、スカーフ面a5、a6へ重点的に加圧力を作用させて、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であるから、いずれも相応に有効である。
【0022】
而して、所望の加圧部材の加熱面に於ける各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状とする場合に、形状の倣い精度(類似性)としては、必ずしも完全に一致するほどの精度である必要はなく、少々の形状の違いは実用的に許容されるが、スカーフ面に対する加圧力の集約性からして、各板材の端部からはみ出ないような形状、及び誤差である方が好ましい。また一方、所望の加圧部材の加熱面に於ける各板材の端部側とは逆側(裏側にある板材の端部側)に対向する部位の形状については、特段の制約はなく、反対側に位置する加圧部材の加圧力に対する反作用(反力)を発揮し得る形状であれば足りるが、加工の容易性等からすると、前記実例に例示する如き、凹凸のない平面状が適当である。
【0023】
また、前記実例に於ては、一対の加圧部材の片方(実例は、下方)のみを、上下に昇降可能とする構成を採り、該加圧部材を板材に押付けて、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧するようにしたが、本発明の実施に際しては、加圧部材の片方のみを移動させて、接合部分を加圧する形態に限定するものではなく、必要に応じては、一対の加圧部材の両方を、同期的に板材に押付けて加圧する形態に設計変更しても差支えない。
【0024】
また、斯様に板材の厚さやスカーフ面の重なりの誤差を許容して接合するに際し、誤差の非顕在化・非拡大化を図るには、加圧部材の加圧面の長さ方向に於ける中央を、各板材のスカーフ面を重ね合わせる基準位置に定めて、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影長さの中央乃至は略中央を、前記基準位置に合わせながら、各板材のスカーフ面を重ね合わせる構成を採るのが好ましく、各板材を、スカーフ面に形成した溝の延在方向と同方向へ間歇的に移送しながら接合する場合には、例えば後述する如き移送形態を採ることによって、容易に所望の位置合わせを実施することができる。
【0025】
即ち、例えば図11に例示する如く、任意定位置Mに於ける先行単板A1の後端側スカーフ面a1の突端(先端)から、加圧部材1の加圧面1aの中央に設定した基準位置Nまでの距離Sに対して、補正値=L/2を減算した距離だけ、先行単板A1を移送して停止させると共に、前記任意定位置Mに於ける後続単板A2の前端側スカーフ面a2の突端(先端)から、前記基準位置Nまでの距離Sに対して、補正値=L/2を加算した距離だけ、後続単板A2を移送して停止させる移送形態によれば、たとえ、正常な厚さTを有する各単板A1、A2の移送距離に若干の誤差が生じることがあっても、各単板A1、A2のスカーフ面a1、a2の中央を、概ね前記基準位置に合わせることができ、また、図示は省略したが、正常な厚さに対して、プラス又はマイナスの若干の厚さ誤差を有する単板につても、図11の例に準じて、同様の補正値を減算若しくは加算した距離だけ、各単板を移送して停止させる移送形態によれば、やはり、各単板の移送距離に若干の誤差が生じることがあっても、各単板のスカーフ面の略中央を、前記基準位置に合わせることができる。尚、図11に於て、5は、ラインセンサカメラ等から成る単板検知器であって、先行単板A1の後端側スカーフ面a1の突端、及び後続単板A2の前端側スカーフ面a2の突端が、前記任意定位置Mを通過する毎に、図示しない単板搬送機構の作動を制御する制御機構(図示省略)に単板検知信号を発信する。
【0026】
因に、正常な厚さTを有する単板A1(A2)のスカーフ面a1(a2)のスカーフ角度をθとし、単板A1、A2の表裏面に対する溝y1の投影高さをhとすると、スカーフ面a1(a2)の投影長さLは、数式1…L=T÷tanθ+hで求め得るから、前記補正値の具体的な値Qは、数式2…Q=(T÷tanθ+h)/2で求め得る。
【0027】
また、必要に応じては、予め各単板の厚さを実測して、誤差の正確な値を確認すれば、厚さ誤差を有する単板についても、数式3…La=(T+β1)÷tanθ+h、又は数式4…Lb=(T−β2)÷tanθ+hのいずれかによって、夫々のスカーフ面の投影長さを求めることができ、数式5…Qa=La/2、或は数式6…Qb=Lb/2を用いて、夫々の補正値を求め、先記任意定位置Mから基準位置Nまでの距離Sに対して、前記補正値Qa(或は補正値Qb)を、減算或は加算する移送形態を採れば、厚さ誤差を有する単板のスカーフ面の中央を、一層適確に前記基準位置に合わせることも可能である。
【0028】
また更に、図示は省略したが、斯様な接合行程の前々段に、スカーフ面をセパレーテッドスカーフ状に形成する手段を備えた成形行程を設け、該成形行程から直結的に接合行程まで各単板を移送する移送形態を採る場合には、前記両行程の離間距離が予め判明しているので、述上の如き数式を用いて移送距離の補正を行わずとも、前記両行程の離間距離に対応する適宜距離だけ、都度間歇的に各単板を移送するようにすれば、容易に所望の位置合わせを実施することができる。
【0029】
但し、本発明に係る板材の接合方法としては、接合形態を、述上の如き位置合わせによる接合形態に限定するものではなく、例えば加圧部材の加圧面の前端部又は後端部を基準位置として、該基準位置に、各板材のスカーフ面の端部(突端と基端)を合わせる接合形態であっても差支えない。
【0030】
勿論、後続する板材の移送方向としても、前記実例に例示する如く、スカーフ面の長さ方向と同方向に限るものではなく、図示は省略したが、例えば停止中の先行する板材に対して、後続する板材を、幅方向の斜め下方(又は上方)から、一旦、先行する板材の下方(又は上方)まで幅方向に移送し、次いで、上方(又は下方)へ移動させるか、或は例えば幅方向の斜め下方(又は上方)から、直接的に斜め上方(又は下方)に移動させて、双方のスカーフ面が噛み合うように重ね合わせる態様であっても差支えない。
【0031】
尚、図1〜図11に例示した実例では、断面形状が台形状である溝の多数条を、スカーフ面に形成する構成を採ったが、溝の断面形状としては、台形状に限るものではなく、例えば図12に例示する如きV字状を含めて、波状(正規曲線状)、凹字状(コ字状)等の、他の適当な形状に設計変更して差支えない。また、各板材の厚さや、各板材に形成するスカーフ面の角度などについても、特段の制約はなく、更に、接着剤の種類についても特段の制約はない。
【0032】
而して、スカーフ面をセパレーテッドスカーフ状に形成する手段としては、例えば公知のカッタの刃先を、所望の溝形状に成形して、各板材の端部を斜めに切削する手段が、また、スカーフ面へ接着剤を塗布する手段としては、公知の滴下式或は噴霧式の接着剤供給器を、各板材の幅方向へジグザグ状又は直線状に走行自在に備えて、スカーフ面に接着剤をジグザグ状又は直線状に滴下或は噴霧する手段の外に、溝の断面形状に対応する断面形状を有する転写部位を備えた転写体を、各板材のスカーフ面と平行方向へ走行自在に備えて、前記転写体の転写部位に塗布した接着剤を、スカーフ面に転写する手段等が挙げられるが、要するに、構成に格別の制約はなく、所要の機能を奏し得る手段であれば足り、また、加圧部材を加熱又は冷却する手段についても、例えば電熱ヒータ式、加熱油循環式、冷却水循環式等々、公知の加熱手段又は冷却手段を用いて差支えない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上明らかな如く、本発明は、従来、接合手段の一例としては公知であったが、未だ本格的に実用化されるまでには至っていなかった、セパレーテッドスカーフによる板材の接合について、実用化に到る道を開いた画期的な改良技術であり、斯界に於ける本発明の実施効果は著大である。
【符号の説明】
【0034】
A1、A2、A3、A4、A5、A6 :単板
a1、a2、a3、a4、a5、a6 :スカーフ面
B1、B2、B3、B4、B5、B6 :単板
b1、b2、b3、b4、b5、b6 :スカーフ面
h :単板の表裏面に対する溝の投影高さ
L :単板の表裏面に対するスカーフ面の投影長さ
L1、L2 :本発明に用いる加圧部材の加圧面の長さ
L3、L4 :汎用手段に用いる加圧部材の加圧面の長さ
M :任意定位置
N :基準位置
Q、Qa、Qb :補正値
T :単板の厚さの正常値
t1、t2、t3、t4、t5、t6 :単板の厚さ
W :単板の幅
W1、W2、W3、W4 :加圧部材の幅
y1、y2 :スカーフ面に形成した多数条の溝
β1、β2 :単板の厚さ誤差
θ :スカーフ面の角度
1、2 :本発明に用いる加圧部材
1a、2a :本発明に用いる加圧部材の加圧面
3、4 :汎用手段に準ずる形態の加圧部材
3a、4a :汎用手段に準ずる形態の加圧部材の加圧面
5 :単板検知器
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレーテッドスカーフによる板材の接合方法の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベニヤ単板(以下、単に単板と称す)、合板、単板積層材、無垢板(製材板)、繊維板等の板材を処理対称とし、接着剤を用いて接合処理する接合手段として、汎用されているのは、接合すべき双方の板材の端面を、単純な斜面状のスカーフ面に形成すると共に、少なくともいずれか一方の板材のスカーフ面に、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤を塗布し、次いで、双方の板材のスカーフ面同士を重ね合わせると共に、板材の表裏面に対する前記スカーフ面の投影面積を覆うに足る矩形の加圧面と、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備する一対の加圧部材を用いて、板材の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させて、板材を接合する、所謂、プレーンスカーフ式の接合手段であるが、別の公知手段の一例として、特許文献1、非特許文献1等に開示される如く、前記プレーンスカーフ式の単純な接着面に代えて、V字状、台形状等の適宜の断面形状を有する溝の多数条を、スカーフ面に並列状に形成し、双方のスカーフ面が噛み合うように重ね合わせて接合する、所謂、セパレーテッドスカーフ式の接合手段が挙げられる。
【0003】
前記セパレーテッドスカーフ式の接合手段は、汎用のプレーンスカーフ式の接合手段に比べて、スカーフ面(接着面)の形成が煩雑になる難点を有するので、今日に至るまで、斯界に於て実用化された例の伝聞は皆無であるが、接着面積の拡大に比例して、接着力が向上すると共に、接合面の立体化に伴って、接合板材の曲げに対する応力の集中化が避けられるので、総じて、接合板材の強度が著しく向上する利点があり、丈夫な接合板材の形成には、有効な技術の一つであることから、本出願人が、実用化を模索したところ、板材の厚さや板材の重ね合わせ精度に僅少の誤差が伴うのは実用上不可避であるのに対して、汎用のプレーンスカーフ式の接合手段に準ずる接合形態を採ると、後述する如く、板材の厚さやスカーフ面の重なり具合等の条件が、特定の要件を満たしている場合には、特に問題が発生する虞はないが、前記条件が、特定の要件から外れた場合には、接合が不完全となる問題が惹起されることが、本発明の開発過程に於て新たに判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−175406号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】半井勇三著「木材の接着と接着剤」(森北出版株式会社、第5版)第206頁、第17.36図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
詳述すると、例えば図12、図13に例示する如く、下向きのスカーフ面b1にV字状の断面形状を有する溝y2の多数条を並列状に形成して成る単板B1と、上向きのスカーフ面b2にV字状の断面形状を有する溝y2の多数条を並列状に形成して成る単板B2との、少なくともいずれか片方のスカーフ面b1又は/及びb2に、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤(図示省略)を塗布し、次いで、双方の単板B1、B2のスカーフ面同士が噛み合うように重ね合わせると共に、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能を具備する上下一対の加圧部材3、4を用いて、単板B1、B2の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面b1、b2を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させて、単板B1、B2を接合せんと図る場合に、前記加圧部材3、4の夫々の加圧面3a、4aを、汎用のプレーンスカーフ式の接合手段に用いる加圧部材に準じて、各単板B1、B2の表裏面に対する前記スカーフ面b1、b2の投影面積を覆うに足る矩形状、つまり、各単板B1、B2の幅Wを上回る幅W3、W4と、前記スカーフ面b1、b2の投影長さLと同等乃至は同等以上の長さL3、L4とを有する矩形状にすると、単板B1、B2の厚さやスカーフ面b1、b2の重なり具合等の条件が、特定の要件を満たしている場合には、特に問題が発生する虞はないが、前記条件が、特定の要件から外れた場合には、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することができず、接合が不完全となる問題が惹起されるのである。
【0007】
即ち、例えば図13に例示する如く、先行する単板B1の厚さt1と、スカーフ面b2に接着剤Cが塗布された後続する単板B2の厚さt2とが、誤差なく正常値Tに揃っており、而も双方の単板B1とB2のスカーフ面b1とb2が、ぴったり重なり合う適正位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図14に例示する如く、接合すべき双方の単板B1とB2の厚さt1、t2が、誤差なく正常値Tに揃っており、而も双方の単板B1とB2のスカーフ面b1とb2が、適正位置よりも若干余分に重複して重ね合わされている場合等については、たとえ上下一対の加圧部材3、4の加圧面3a、4aの形状が矩形状であり、而もその長さL3、L4が、正常な厚さTを有する単板B1、B2に形成されたスカーフ面b1、b2の投影長さ(単板の表裏面に対する投影長さ)Lと同等乃至は同等以上であっても、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することができ、接合に格別不都合は生じない。
【0008】
また、例えば図15に例示する如く、接合すべき単板B3又はB4のいずれか一方、例えば単板B4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚いものの、正常な厚さt3(=T)を有する単板B3のスカーフ面b3の先端側(尖端側)と、前記単板B4のスカーフ面b4の基端側(単板本体側)とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図16に例示する如く、接合すべき単板B5又はB6のいずれか一方、例えば単板B6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄いものの、該単板B6のスカーフ面b6の先端側と、正常な厚さt5(=T)を有する単板B5のスカーフ面b5の基端側とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合等も、たとえ一対の加圧部材3、4の加圧面3a、4aの形状が矩形状であり、而もその長さL3、L4が、正常な厚さTを有する単板B3、B5に形成されたスカーフ面b3、b5の投影長さLと同等乃至は同等以上であっても、概ね所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することができ、接合に著しい不都合は生じない。
【0009】
ところが、例えば図17に例示する如く、接合すべき双方の単板B1とB2の厚さt1、t2が、誤差なく正常値Tに揃ってはいるものの、双方の単板B1とB2のスカーフ面b1とb2が、適正位置よりも若干離れた位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図18に例示する如く、接合すべき単板B3又はB4のいずれか一方、例えば単板B4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚く、而も該単板B4のスカーフ面b4の基端側と、正常な厚さt3(=T)を有する単板B3のスカーフ面b3の先端側とが離れた位置に於て重ね合わされている場合(換言すると、単板B4のスカーフ面b4の先端側と、単板B3のスカーフ面b3の基端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合)、更には例えば図19に例示する如く、接合すべき単板B5又はB6のいずれか一方、例えば単板B6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄く、而も該単板B6のスカーフ面b6の先端側と、正常な厚さt5(=T)を有する単板B5のスカーフ面b5の基端側とが離れた位置に於て重ね合わされている場合(換言すると、単板B6のスカーフ面b6の基端側と、単板B5のスカーフ面b5の先端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合)等にあっては、一対の加圧部材3、4の加圧面3a、4aの形状が矩形状であり、而もその長さL3、L4が、正常な厚さTを有する単板B1、B2、B3、B5に形成されたスカーフ面b1、b2、b3、b5の投影長さLと同等乃至は同等以上であると、単板B1、B2、B4、B5のスカーフ面以外の部分へ優先的に加圧力が作用して、重ね合わされたスカーフ面b1とb2、或はスカーフ面b3とb4、或はスカーフ面b5とb6に、必要十分な加圧力が加わり難く、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することができないので、結果的に、接合が不完全となる欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、斯様な問題の解消を図るべく開発したものであって、具体的には、各々のスカーフ面にV字状、台形状等の適宜の断面形状を有する溝の多数条を並列状に形成して成る板材同士を、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤を介して、双方のスカーフ面が噛み合うように重ね合わせると共に、板材の表裏面に対する前記スカーフ面の投影長さと略同等の長さ及び板材の幅を上回る幅を有する加圧面と、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備する一対の加圧部材を用いて、板材の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させて、板材を接合する接合方法であって、前記一対の加圧部材の少なくともいずれか片方の加熱面については、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にしたことを特徴とするセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法(請求項1)と、加圧部材の加圧面の長さ方向に於ける中央を、各板材のスカーフ面を重ね合わせる基準位置に定めて、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影長さの中央乃至は略中央を、前記基準位置に合わせながら、各板材のスカーフ面を重ね合わせて成る請求項1記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法(請求項2)と、一対の加圧部材の双方共に、各板材の端部側に対向する加熱面の部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして成る請求項1又は請求項2記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法(請求項3)と、一対の加圧部材のいずれか片方の加熱面についてのみ、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして成る請求項1又は請求項2記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法(請求項4)とを提案する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る板材の接合方法によれば、一対の加圧部材の少なくともいずれか片方の加熱面については、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして、加圧部材の加圧力が、スカーフ面へ重点的に作用するようにしたから、板材の厚さやスカーフ面の重なり具合等の条件が、特定の要件を満たしている場合には、特に問題なく良好な接合が行い得るのは勿論のこと、仮に前記条件が、特定の要件から外れた場合であっても、スカーフ面以外の部分へ優先的に加圧力が作用することは実質的に殆どなく、先述の如き問題の発生を回避乃至は低減させつつ接合が行い得るので有益である。
【0012】
尚、斯様に板材の厚さやスカーフ面の重なりの誤差を許容して接合するに際し、誤差の顕在化・拡大化を避けるには、請求項2に係る発明の如く、加圧部材の加圧面の長さ方向に於ける中央を、各板材のスカーフ面を重ね合わせる基準位置に定めて、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影長さの中央乃至は略中央を、前記基準位置に合わせながら、各板材のスカーフ面を重ね合わせる構成を採るのが好ましい。
【0013】
また、加圧部材の加圧力を、重ね合わせた板材のスカーフ面へより集中的に作用させるには、請求項3に係る発明の如く、双方の加圧部材の加熱面とも、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にするのが好ましいが、たとえ請求項4に係る発明の如く、一対の加圧部材のいずれか片方の加熱面についてのみ、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状とする構成を採っても、先記プレーンスカーフ式の接合手段に準ずる接合形態の構成を採る場合に比べれば、先述の如き問題の発生が低減されるので、相応に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る接合形態の構成を示した一部破断平面説明図である。
【図2】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図3】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図4】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図5】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図6】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図7】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図8】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図9】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図10】本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図11】板材のスカーフ面同士を重ね合わせる手段の側面説明図である。
【図12】汎用手段に準ずる接合形態の構成を示した一部破断平面説明図である。
【図13】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図14】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図15】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図16】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図17】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図18】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【図19】汎用手段に準ずる板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に例示した実施の一例と共に更に詳述するが、接合すべき双方の板材の端部を、夫々セパレーテッドスカーフ状に形成する手段、少なくともいずれか片方の板材のスカーフ面へ、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤を塗布する手段、加圧部材を加熱又は冷却する手段等については、いずれも格別な制約はなく、本発明の特徴部分には当らないので、説明の冗長化を避ける便宜上、後に概要を付言するに留め、詳細な図示、説明を省略する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明に係る接合形態の構成を示した一部破断平面説明図であり、図2は、本発明に係る板材の接合方法の行程を示した行程説明図である。図中、A1、A2は、接合処理する単板であって、図示は省略したが、予め前々段の成形行程に於て、先行する単板A1の下向きのスカーフ面a1には、台形状の断面形状を有する溝y1の多数条を並列状に、また、後続する単板A2の上向きのスカーフ面a2にも、台形状の断面形状を有する溝y1の多数条を並列状に夫々形成すると共に、前段の塗布行程に於て、少なくともいずれか片方のスカーフ面a1又は/及びa2に、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤(図示省略)を塗布して、夫々後述する上下一対の加圧部材1、2の位置へ順次移送し、双方のスカーフ面a1、a2が噛み合うように重ね合わせる。
【0017】
1、2は、上下一対の加圧部材であって、単板A1、A2の表裏面に対する前記スカーフ面a1、a2の投影長さLと略同等の長さL1、L2、及び単板の幅Wを上回る幅W1、W2を有する加圧面1a、2aと、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備すると共に、夫々の加熱面1a、2aについては、各単板A1、A2の端部側に対向する部位の形状を、各単板A1、A2の表裏面に対するスカーフ面a1、a2の投影形状に準ずる形状に形成して成り、単板A1、A2の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面a1、a2を熱圧又は冷圧することにより、中に介在する接着剤を硬化させる。
【0018】
本発明に係る板材の接合方法は、述上の如く、一対の加圧部材の少なくともいずれか片方(実施例は、両方)の加熱面について、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状に形成して、板材の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧する故に、例えば図2に例示する如く、先行する単板A1の厚さt1と、後続する単板A2の厚さt2とが、誤差なく正常値Tに揃っており、而も双方の単板A1とA2のスカーフ面a1とa2が、ぴったり重なり合う適正位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図3に例示する如く、接合すべき双方の単板A1とA2の厚さt1、t2が、誤差なく正常値Tに揃っており、而も双方の単板A1とA2のスカーフ面a1とa2が、適正位置よりも若干余分に重複して重ね合わされている場合等については、たとえ加圧部材1、2の加熱面1a、2aに於ける各単板A1、A2の端部側に対向する部位の形状が、各単板A1、A2の表裏面に対するスカーフ面a1、a2の投影形状に準ずる形状に成形されていても、各加圧部材1、2の加圧力が、単板A1とA2の重ね合わされたスカーフ面a1、a2以外の部分には直接的に作用せず、スカーフ面a1、a2へ重点的に作用するので、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であって、接合が不完全となる問題が発生する虞はない。
【0019】
また、例えば図4に例示する如く、接合すべき単板A3又はA4のいずれか一方、例えば単板A4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚いものの、正常な厚さt3(=T)を有する単板A3のスカーフ面a3の先端側(尖端側)と、前記単板A4のスカーフ面a4の基端側(単板本体側)とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図5に例示する如く、接合すべき単板A5又はA6のいずれか一方、例えば単板A6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄いものの、該単板A6のスカーフ面a6の先端側と、正常な厚さt5(=T)を有する単板A5のスカーフ面a5の基端側とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合等についても、同じく加圧部材1、2の加熱面1a、2aに於ける各単板A1、A2の端部側に対向する部位の形状が、各単板A1、A2の表裏面に対するスカーフ面a1、a2の投影形状に準ずる形状に成形されていても、各加圧部材1、2の加圧力が、単板A3とA4の重ね合わされたスカーフ面a3、a4以外の部分、或は単板A5とA6の重ね合わされたスカーフ面a5、a6以外の部分には直接的に作用せず、スカーフ面a3、a4、或はスカーフ面a5、a6へ重点的に作用するので、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であり、接合が不完全となる問題が発生する虞はない。
【0020】
そして更に、例えば図6に例示する如く、接合すべき双方の単板A1とA2の厚さt1、t2が、誤差なく正常値Tに揃ってはいるものの、双方の単板A1とA2のスカーフ面a1とa2が、適正位置よりも若干離れた位置に於て重ね合わされている場合、或は例えば図7に例示する如く、接合すべき単板A3又はA4のいずれか一方、例えば単板A4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚く、而も該単板A4のスカーフ面a4の基端側と、正常な厚さt3を有する単板A3のスカーフ面a3の先端側とが離れた位置に於て重ね合わされている場合(換言すると、単板A4のスカーフ面a4の先端側と、単板A3のスカーフ面a3の基端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合)、更には例えば図8に例示する如く、接合すべき単板A5又はA6のいずれか一方、例えば単板A6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄く、而も該単板A6のスカーフ面a6の先端側と、正常な厚さt5を有する単板A5のスカーフ面a5の基端側とが離れた位置に於て重ね合わされている場合(換言すると、単板A6のスカーフ面a6の基端側と、単板A5のスカーフ面a5の先端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合)等については、加圧部材1、2の加熱面1a、2aに於ける各単板A1、A2(或はA3、A4、A5、A6)の端部側に対向する部位の形状が、各単板A1、A2(或はA3、A4、A5、A6)の表裏面に対するスカーフ面a1、a2(或はa3、a4、a5、a6)の投影形状に準ずる形状に成形されていることにより、前記各加熱面1a、2aの内の、少なくともいずれか片側の加熱面1a又は/及び2aが、先記図2〜図5の状態よりも一段と深くまで単板内部に沈み込んで、スカーフ面a1、a2(或はa3、a4、a5、a6)へ重点的に加圧力を作用させるので、スカーフ面以外の部分へ優先的に加圧力が作用することは実質的に殆どなく、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であって、接合が不完全となる問題が発生する虞がなくなる。
【0021】
尚、前記図2〜図8の実例の如く、双方の加圧部材の加熱面とも、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にすれば、加圧部材の加圧力が、スカーフ面へより集中的に作用するので、極めて有効であり好ましいが、先記図13〜図16の例からも明らかな通り、図2〜図5の実例の如く、板材の厚さやスカーフ面の重なり具合等の条件が、特定の要件を満たしている場合には、図示は省略したが、仮に、いずれか片側の加圧部材の加熱面が、矩形状であっても、特に問題が発生する虞はなく、また、例えば図9に例示する如く、単板A4の厚さt4が、正常値Tに比べて誤差β1だけ厚いものの、正常な厚さt3(=T)を有する単板A3のスカーフ面a3の基端側と、前記単板A4のスカーフ面a4の先端側とがぴったり重なり合う位置に於て重ね合わされている場合については、たとえ、主として単板A4側に当接する下側の加圧部材20の加圧面20aが、正常な厚さt3(=T)を有する単板A3のスカーフ面a3の投影長さLと同等乃至は同等以上の長さL20を有する矩形状であっても、格別支障なく、スカーフ面a3、a4へ重点的に加圧力を作用させて、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であり、或は例えば、図10に例示する如く、単板A6の厚さt6が、正常値Tに比べて誤差β2だけ薄いものの、該単板A6のスカーフ面a6の基端側と、正常な厚さt5(=T)を有する単板A5のスカーフ面a5の先端側とが上下に重複する位置に於て重ね合わされている場合については、主として単板A5側に当接する上側の加圧部材10の加圧面10aが、正常な厚さt5(=T)を有する単板A5のスカーフ面a5の投影長さLと同等の乃至は同等以上長さL10を有する矩形状であっても、やはり、スカーフ面a5、a6へ重点的に加圧力を作用させて、所望通りの熱圧作用又は冷圧作用を奏することが可能であるから、いずれも相応に有効である。
【0022】
而して、所望の加圧部材の加熱面に於ける各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状とする場合に、形状の倣い精度(類似性)としては、必ずしも完全に一致するほどの精度である必要はなく、少々の形状の違いは実用的に許容されるが、スカーフ面に対する加圧力の集約性からして、各板材の端部からはみ出ないような形状、及び誤差である方が好ましい。また一方、所望の加圧部材の加熱面に於ける各板材の端部側とは逆側(裏側にある板材の端部側)に対向する部位の形状については、特段の制約はなく、反対側に位置する加圧部材の加圧力に対する反作用(反力)を発揮し得る形状であれば足りるが、加工の容易性等からすると、前記実例に例示する如き、凹凸のない平面状が適当である。
【0023】
また、前記実例に於ては、一対の加圧部材の片方(実例は、下方)のみを、上下に昇降可能とする構成を採り、該加圧部材を板材に押付けて、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧するようにしたが、本発明の実施に際しては、加圧部材の片方のみを移動させて、接合部分を加圧する形態に限定するものではなく、必要に応じては、一対の加圧部材の両方を、同期的に板材に押付けて加圧する形態に設計変更しても差支えない。
【0024】
また、斯様に板材の厚さやスカーフ面の重なりの誤差を許容して接合するに際し、誤差の非顕在化・非拡大化を図るには、加圧部材の加圧面の長さ方向に於ける中央を、各板材のスカーフ面を重ね合わせる基準位置に定めて、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影長さの中央乃至は略中央を、前記基準位置に合わせながら、各板材のスカーフ面を重ね合わせる構成を採るのが好ましく、各板材を、スカーフ面に形成した溝の延在方向と同方向へ間歇的に移送しながら接合する場合には、例えば後述する如き移送形態を採ることによって、容易に所望の位置合わせを実施することができる。
【0025】
即ち、例えば図11に例示する如く、任意定位置Mに於ける先行単板A1の後端側スカーフ面a1の突端(先端)から、加圧部材1の加圧面1aの中央に設定した基準位置Nまでの距離Sに対して、補正値=L/2を減算した距離だけ、先行単板A1を移送して停止させると共に、前記任意定位置Mに於ける後続単板A2の前端側スカーフ面a2の突端(先端)から、前記基準位置Nまでの距離Sに対して、補正値=L/2を加算した距離だけ、後続単板A2を移送して停止させる移送形態によれば、たとえ、正常な厚さTを有する各単板A1、A2の移送距離に若干の誤差が生じることがあっても、各単板A1、A2のスカーフ面a1、a2の中央を、概ね前記基準位置に合わせることができ、また、図示は省略したが、正常な厚さに対して、プラス又はマイナスの若干の厚さ誤差を有する単板につても、図11の例に準じて、同様の補正値を減算若しくは加算した距離だけ、各単板を移送して停止させる移送形態によれば、やはり、各単板の移送距離に若干の誤差が生じることがあっても、各単板のスカーフ面の略中央を、前記基準位置に合わせることができる。尚、図11に於て、5は、ラインセンサカメラ等から成る単板検知器であって、先行単板A1の後端側スカーフ面a1の突端、及び後続単板A2の前端側スカーフ面a2の突端が、前記任意定位置Mを通過する毎に、図示しない単板搬送機構の作動を制御する制御機構(図示省略)に単板検知信号を発信する。
【0026】
因に、正常な厚さTを有する単板A1(A2)のスカーフ面a1(a2)のスカーフ角度をθとし、単板A1、A2の表裏面に対する溝y1の投影高さをhとすると、スカーフ面a1(a2)の投影長さLは、数式1…L=T÷tanθ+hで求め得るから、前記補正値の具体的な値Qは、数式2…Q=(T÷tanθ+h)/2で求め得る。
【0027】
また、必要に応じては、予め各単板の厚さを実測して、誤差の正確な値を確認すれば、厚さ誤差を有する単板についても、数式3…La=(T+β1)÷tanθ+h、又は数式4…Lb=(T−β2)÷tanθ+hのいずれかによって、夫々のスカーフ面の投影長さを求めることができ、数式5…Qa=La/2、或は数式6…Qb=Lb/2を用いて、夫々の補正値を求め、先記任意定位置Mから基準位置Nまでの距離Sに対して、前記補正値Qa(或は補正値Qb)を、減算或は加算する移送形態を採れば、厚さ誤差を有する単板のスカーフ面の中央を、一層適確に前記基準位置に合わせることも可能である。
【0028】
また更に、図示は省略したが、斯様な接合行程の前々段に、スカーフ面をセパレーテッドスカーフ状に形成する手段を備えた成形行程を設け、該成形行程から直結的に接合行程まで各単板を移送する移送形態を採る場合には、前記両行程の離間距離が予め判明しているので、述上の如き数式を用いて移送距離の補正を行わずとも、前記両行程の離間距離に対応する適宜距離だけ、都度間歇的に各単板を移送するようにすれば、容易に所望の位置合わせを実施することができる。
【0029】
但し、本発明に係る板材の接合方法としては、接合形態を、述上の如き位置合わせによる接合形態に限定するものではなく、例えば加圧部材の加圧面の前端部又は後端部を基準位置として、該基準位置に、各板材のスカーフ面の端部(突端と基端)を合わせる接合形態であっても差支えない。
【0030】
勿論、後続する板材の移送方向としても、前記実例に例示する如く、スカーフ面の長さ方向と同方向に限るものではなく、図示は省略したが、例えば停止中の先行する板材に対して、後続する板材を、幅方向の斜め下方(又は上方)から、一旦、先行する板材の下方(又は上方)まで幅方向に移送し、次いで、上方(又は下方)へ移動させるか、或は例えば幅方向の斜め下方(又は上方)から、直接的に斜め上方(又は下方)に移動させて、双方のスカーフ面が噛み合うように重ね合わせる態様であっても差支えない。
【0031】
尚、図1〜図11に例示した実例では、断面形状が台形状である溝の多数条を、スカーフ面に形成する構成を採ったが、溝の断面形状としては、台形状に限るものではなく、例えば図12に例示する如きV字状を含めて、波状(正規曲線状)、凹字状(コ字状)等の、他の適当な形状に設計変更して差支えない。また、各板材の厚さや、各板材に形成するスカーフ面の角度などについても、特段の制約はなく、更に、接着剤の種類についても特段の制約はない。
【0032】
而して、スカーフ面をセパレーテッドスカーフ状に形成する手段としては、例えば公知のカッタの刃先を、所望の溝形状に成形して、各板材の端部を斜めに切削する手段が、また、スカーフ面へ接着剤を塗布する手段としては、公知の滴下式或は噴霧式の接着剤供給器を、各板材の幅方向へジグザグ状又は直線状に走行自在に備えて、スカーフ面に接着剤をジグザグ状又は直線状に滴下或は噴霧する手段の外に、溝の断面形状に対応する断面形状を有する転写部位を備えた転写体を、各板材のスカーフ面と平行方向へ走行自在に備えて、前記転写体の転写部位に塗布した接着剤を、スカーフ面に転写する手段等が挙げられるが、要するに、構成に格別の制約はなく、所要の機能を奏し得る手段であれば足り、また、加圧部材を加熱又は冷却する手段についても、例えば電熱ヒータ式、加熱油循環式、冷却水循環式等々、公知の加熱手段又は冷却手段を用いて差支えない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上明らかな如く、本発明は、従来、接合手段の一例としては公知であったが、未だ本格的に実用化されるまでには至っていなかった、セパレーテッドスカーフによる板材の接合について、実用化に到る道を開いた画期的な改良技術であり、斯界に於ける本発明の実施効果は著大である。
【符号の説明】
【0034】
A1、A2、A3、A4、A5、A6 :単板
a1、a2、a3、a4、a5、a6 :スカーフ面
B1、B2、B3、B4、B5、B6 :単板
b1、b2、b3、b4、b5、b6 :スカーフ面
h :単板の表裏面に対する溝の投影高さ
L :単板の表裏面に対するスカーフ面の投影長さ
L1、L2 :本発明に用いる加圧部材の加圧面の長さ
L3、L4 :汎用手段に用いる加圧部材の加圧面の長さ
M :任意定位置
N :基準位置
Q、Qa、Qb :補正値
T :単板の厚さの正常値
t1、t2、t3、t4、t5、t6 :単板の厚さ
W :単板の幅
W1、W2、W3、W4 :加圧部材の幅
y1、y2 :スカーフ面に形成した多数条の溝
β1、β2 :単板の厚さ誤差
θ :スカーフ面の角度
1、2 :本発明に用いる加圧部材
1a、2a :本発明に用いる加圧部材の加圧面
3、4 :汎用手段に準ずる形態の加圧部材
3a、4a :汎用手段に準ずる形態の加圧部材の加圧面
5 :単板検知器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々のスカーフ面にV字状、台形状等の適宜の断面形状を有する溝の多数条を並列状に形成して成る板材同士を、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤を介して、双方のスカーフ面が噛み合うように重ね合わせると共に、板材の表裏面に対する前記スカーフ面の投影長さと略同等の長さ及び板材の幅を上回る幅を有する加圧面と、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備する一対の加圧部材を用いて、板材の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させて、板材を接合する接合方法であって、前記一対の加圧部材の少なくともいずれか片方の加熱面については、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にしたことを特徴とするセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法。
【請求項2】
加圧部材の加圧面の長さ方向に於ける中央を、各板材のスカーフ面を重ね合わせる基準位置に定めて、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影長さの中央乃至は略中央を、前記基準位置に合わせながら、各板材のスカーフ面を重ね合わせて成る請求項1記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法。
【請求項3】
一対の加圧部材の双方共に、各板材の端部側に対向する加熱面の部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして成る請求項1又は請求項2記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法。
【請求項4】
一対の加圧部材のいずれか片方の加熱面についてのみ、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして成る請求項1又は請求項2記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法。
【請求項1】
各々のスカーフ面にV字状、台形状等の適宜の断面形状を有する溝の多数条を並列状に形成して成る板材同士を、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等の適宜の接着剤を介して、双方のスカーフ面が噛み合うように重ね合わせると共に、板材の表裏面に対する前記スカーフ面の投影長さと略同等の長さ及び板材の幅を上回る幅を有する加圧面と、前記接着剤の性状に適応する加熱機能又は冷却機能とを具備する一対の加圧部材を用いて、板材の表裏面から、重ね合わせたスカーフ面を熱圧又は冷圧することにより、前記接着剤を硬化させて、板材を接合する接合方法であって、前記一対の加圧部材の少なくともいずれか片方の加熱面については、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にしたことを特徴とするセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法。
【請求項2】
加圧部材の加圧面の長さ方向に於ける中央を、各板材のスカーフ面を重ね合わせる基準位置に定めて、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影長さの中央乃至は略中央を、前記基準位置に合わせながら、各板材のスカーフ面を重ね合わせて成る請求項1記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法。
【請求項3】
一対の加圧部材の双方共に、各板材の端部側に対向する加熱面の部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして成る請求項1又は請求項2記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法。
【請求項4】
一対の加圧部材のいずれか片方の加熱面についてのみ、各板材の端部側に対向する部位の形状を、各板材の表裏面に対するスカーフ面の投影形状に準ずる形状にして成る請求項1又は請求項2記載のセパレーテッドスカーフによる板材の接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−31396(P2011−31396A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163647(P2009−163647)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】
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