セラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサ
【課題】耐久性に優れたセラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサを提供すること。
【解決手段】メイン発熱部21と、メイン発熱部21に電力を供給するための一対のメイン電極部22と、メイン発熱部21とメイン電極部22とを電気的に接続するリード部23とからなるメインヒータパターン2を、ヒータ基板上に形成してなるセラミックヒータ1。セラミックヒータ1は、メイン電極部22を加熱するためのサブ発熱部31と、サブ発熱部31に電力を供給するための一対のサブ電極部32とを有するサブヒータパターン3を設けてなる。
【解決手段】メイン発熱部21と、メイン発熱部21に電力を供給するための一対のメイン電極部22と、メイン発熱部21とメイン電極部22とを電気的に接続するリード部23とからなるメインヒータパターン2を、ヒータ基板上に形成してなるセラミックヒータ1。セラミックヒータ1は、メイン電極部22を加熱するためのサブ発熱部31と、サブ発熱部31に電力を供給するための一対のサブ電極部32とを有するサブヒータパターン3を設けてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子等を加熱するためのセラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の内燃機関には、燃焼制御を行うために、排ガス中の酸素濃度等を測定するガスセンサが用いられている。このガスセンサには、通常、測定値のばらつきを防止するために、ガスセンサ素子を加熱するセラミックヒータが内蔵されている。
該セラミックヒータは、ガスセンサ素子を加熱する発熱部と、該発熱部に電力を供給するための一対の電極部と、上記発熱部と上記電極部とを電気的に接続するリード部とからなるヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなる(特許文献1参照)。
【0003】
かかるセラミックヒータとしては、例えば、図24、図25に示すような丸棒状のものがある。このセラミックヒータ9は、セラミックの心棒99の表面にヒータ基板91(図26)を巻き付けるように配設してなる。該ヒータ基板91は、図26に示すごとく、一方の面911に発熱部93及びリード部94を設け、他方の面912に電極部95を設けてなる。上記リード部94と電極部95とは、ヒータ基板91を貫通するスルーホール913を介して接続されている。
そして、図24、図25に示すごとく、上記電極部95が外側になるように、ヒータ基板91を心棒99の表面に巻き付けてあり、電極部95にはリード線96がろう材961により接合されている。
【0004】
しかしながら、上記電極部95には、外気や排ガス中に含まれる水分が付着することがある。この水分の付着は、電極部95の腐食の原因となるおそれがある。また、水分が付着した状態において、排ガス中の腐食原因物質が吸着することにより、電極部95やろう材961、リード線96の腐食が進行するおそれがある。
その結果、電極部95に接合したリード線96が外れるおそれがあり、セラミックヒータ9の耐久性を確保することが困難となるおそれがある。
【0005】
また、セラミックヒータ9の起動時において、発熱部93は短時間で昇温するが、電極部95は発熱部93からの熱伝導により遅れて昇温するため昇温に時間がかかる。それ故、発熱部93と電極部95との間に温度勾配が生じ、ヒータ基板91やヒータパターン930に冷熱ストレスが生じる。また、電極部95と、電極部95に接合されたろう材961及びリード線96との間にも冷熱ストレスが発生する。その結果、接合部における破壊寿命が短くなるおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開11−2926649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れたセラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、メイン発熱部と、該メイン発熱部に電力を供給するための一対のメイン電極部と、上記メイン発熱部と上記メイン電極部とを電気的に接続するリード部とからなるメインヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部と、該サブ発熱部に電力を供給するための一対のサブ電極部とを有するサブヒータパターンを設けてなることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項1)。
【0009】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部を有するサブヒータパターンを設けてなる。そのため、上記メイン電極部を加熱することができ、メイン電極部への水分の付着を防止することができる。また、メイン電極部に水分が付着したとしても、サブ発熱部によりメイン電極部を加熱して、水分を蒸発除去することができる。それ故、腐食要因となる水分を除去することでメイン電極部の腐食を防ぎ、セラミックヒータの耐久性を向上させることができる。
【0010】
また、メイン電極部を予め加熱しておくことにより、セラミックヒータの起動時のメイン電極部における冷熱ストレスの発生を抑制することもできる。これにより、メイン電極部の耐久性を向上させることができる。
【0011】
以上のごとく、本発明によれば、耐久性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0012】
第2の発明は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサ素子と、該ガスセンサ素子を加熱するためのセラミックヒータとを有するガスセンサにおいて、
上記セラミックヒータは、上記ガスセンサ素子を加熱するメイン発熱部と、該メイン発熱部に電力を供給するための一対のメイン電極部と、上記メイン発熱部と上記メイン電極部とを電気的に接続するリード部とからなるメインヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなり、
かつ、上記セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部と、該サブ発熱部に電力を供給するための一対のサブ電極部とを有するサブヒータパターンを設けてなることを特徴とするガスセンサにある(請求項10)。
【0013】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記ガスセンサに設けたセラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部を有するサブヒータパターンを設けてなる。そのため、上述したごとく、セラミックヒータのメイン電極部の耐久性を向上させることができ、ひいては、ガスセンサの耐久性を向上させることができる。
以上のごとく、本発明によれば、耐久性に優れたガスセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記第1の発明(請求項1)又は上記第2の発明(請求項10)において、上記メイン電極部には、リード線が接合されていてもよい。
また、上記一対のサブ電極部は、上記メイン電極部とは別個に形成してあってもよい(請求項2、請求項11)。
この場合には、上記サブ発熱部を、上記メイン発熱部から独立して制御することが容易となる。
【0015】
また、上記メイン電極部と上記サブ電極部とは、互いに、上記セラミックヒータの長手方向にずらして配置されていることが好ましい(請求項3、請求項12)。
この場合には、メイン電極部とサブ電極部とを、互いの電気的絶縁を確保しつつ容易に形成することができる。また、メイン電極部とサブ電極部とを、充分な大きさに形成することができる。
【0016】
また、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部の一方と、上記一対のサブ電極部の一方とを共通化した共通電極を1個有していてもよい(請求項4、請求項13)。
この場合には、上記メイン電極部及び上記サブ電極部の形成が容易となる。
【0017】
また、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部と、上記一対のサブ電極部とをそれぞれ共通化した、一対の共通電極を有していてもよい(請求項5、請求項16)。
即ち、一方のメイン電極部と一方のサブ電極部とを共通化して一方の共通電極を構成し、他方のメイン電極部と他方のサブ電極部とを共通化して他方の共通電極を構成することができる。
この場合には、メイン電極部と異なる部分に特別に上記サブ電極部を形成する必要がなく、サブヒータパターンを容易に形成することができる。
【0018】
また、上記サブ発熱部は、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を加熱するよう構成してあることが好ましい(請求項6、請求項17)。
この場合には、上記メインヒータパターンへの通電開始時において、上記メイン電極部の温度を高くして、水分がメイン電極部に存在しない状態にすることが容易となる。更にガスセンサの起動時に排ガス中の腐食原因物質が漏れて、メイン電極部に達するような場合に、水分がメイン電極部に存在しない状態にすることが容易となるので、腐食環境の除去を可能とし、より確実にメイン電極部の腐食を防止することができる。
また、メインヒータパターンへの通電前に、メイン電極部を予め加熱しておくことにより、セラミックヒータの起動時のメイン電極部における冷熱ストレスの発生を抑制することもできる。これにより、メイン電極部の耐久性を向上させることができる。
【0019】
また、上記サブヒータパターンへの通電は、上記メインヒータパターンへの通電開始と同時又はその前に終了するよう構成してあることが好ましい(請求項7、請求項18)。
この場合には、メイン電極部の過熱を防止すると共に、省電力化を図ることができる。
【0020】
また、上記サブ発熱部は、上記メイン発熱部の昇温に伴う上記メイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるように、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を昇温させておくよう構成してあることが好ましい(請求項8、請求項19)。
この場合には、上記メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温によりメイン電極部に接合したリード線等の接合部材とセラミックヒータ本体との間に発生する冷熱ストレスを充分に抑制することができる。
上記昇温速度が6℃/秒を超える場合には、上記冷熱ストレスを充分抑制することが困難となるおそれがある。
なお、上記メイン電極部の昇温速度が2℃/秒以下となるように、上記メイン電極部を予め昇温させておくことが、更に好ましい。
【0021】
また、上記サブ発熱部は、PTC(Positive
Temperature Coefficient)発熱体からなることが好ましい(請求項9、請求項20)。
この場合には、PTC(Positive
Temperature Coefficient)発熱体は発熱とともにPTC発熱体自身の抵抗が増加し自ら到達温度が抑制される特性を利用するため、サブ発熱部の過熱を防いでメイン電極部の過熱を防ぐことができる。同時に、サブヒータの温度制御系を簡略化できる。
【0022】
次に、上記第2の発明(請求項10)において、上記共通電極を構成しない方の上記サブ電極部は、上記セラミックヒータを上記ガスセンサ内に保持するためのヒータホルダと接続されていることが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記ヒータホルダを介してサブヒータパターンに電力を供給することができるため、ガスセンサの構造を簡略化することができる。
【0023】
また、上記ヒータホルダは、上記ガスセンサ素子のセンサ端子にも接続されていることが好ましい(請求項15)。
この場合には、上記サブ電極部と上記センサ端子とを共通化することができるため、ガスセンサの構造を簡略化することができる。
【0024】
また、上記サブヒータパターンは、上記特定ガス濃度の検出時には通電させないよう構成してあることが好ましい(請求項21)。
この場合には、サブヒータパターンからの漏れ電流が、センサ出力に影響を及ぼすことを防止することができる。特に、微弱電流を検出するガスセンサの場合に効果を発揮する。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるセラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサにつき、図1〜図6を用いて説明する。
本例のセラミックヒータ1は、図1、図3に示すごとく、メインヒータパターン2を、ヒータ基板11上に形成してなる。上記メインヒータパターン2は、メイン発熱部21と、該メイン発熱部21に電力を供給するための一対のメイン電極部22と、上記メイン発熱部21と上記メイン電極部22とを電気的に接続するリード部23とからなる。
そして、セラミックヒータ1は、上記メイン電極部22を加熱するためのサブ発熱部31と、該サブ発熱部31に電力を供給するための一対のサブ電極部32とを有するサブヒータパターン3を設けてなる。
【0026】
また、セラミックヒータ1は、メインヒータパターン2及びサブヒータパターン3を表面に形成したヒータ基板11を、図2、図4に示すごとく、円柱状の心棒19の外周に巻き付けることにより形成してなる。図3は、メインヒータパターン2等を形成したヒータ基板11を展開した図であって、外側に配される外側面111の平面図、及び、内側に配される内側面112の平面図を表す。
【0027】
図2、図3に示すごとく、上記一対のサブ電極部32は、上記メイン電極部22とは別個に形成してあり、一対のメイン電極部22と一対のサブ電極部32とは、ヒータ基板11の一方の端部における外側面111に形成されている。そして、メイン電極部22とサブ電極部32とは、セラミックヒータ1の長手方向に関する同一位置において、交互に配置されている。
【0028】
また、図3に示すごとく、ヒータ基板11の内側面112には、メイン発熱部21、リード部23、及びサブ発熱部31が形成されている。上記メイン発熱部21は、ヒータ基板11における上記メイン電極部22の配設側とは反対側の端部に形成してある。また、メイン発熱部21は、本例においてはジグザグ状に形成してある。なお、メイン発熱部21の形成パターンはこれに限らず、種々のパターンに形成することができる。
【0029】
また、上記サブ発熱部31は、ヒータ基板11における上記メイン電極部22の配設側の端部に形成してある。
そして、上記サブ発熱部31とサブ電極部32とは、ヒータ基板11を貫通するスルーホール131を介して互いに接続されている。また、メイン発熱部21とメイン電極部22とは、上記リード部23及びスルーホール132を介して接続されている。
【0030】
また、図2、図4に示すごとく、上記一対のメイン電極部22には、リード線12がそれぞれ、導電性のろう材121により接合されている。同様に、上記一対のサブ電極部32にも、リード線13がそれぞれ接合されている。
また、例えば、上記メインヒータパターン2及びサブヒータパターン3は、W(タングステン)を主成分とし、上記ろう材121は、Au(金)とCu(銅)を主成分とし、上記リード線12、13は、Ni(ニッケル)を主成分とする。また、上記サブ発熱部31は、PTC(Positive Temperature Coefficient)発熱体により構成することができる。
【0031】
上記セラミックヒータ1は、図5に示すごとく、ガスセンサ素子45を加熱するために用いられる。即ち、セラミックヒータ1は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサ4に組み込まれている。
【0032】
次に、本例のガスセンサ4について詳細に説明する。
図5に示すごとく、ガスセンサ4は、筒型のハウジング40と該ハウジング40に挿通したコップ型のガスセンサ素子45と、上記ハウジング40の先端側に設けた外側カバー411と内側カバー412とからなる被測定ガス側カバー41と、上記ハウジング40の基端側に設けた大気側カバー42とを有する。
【0033】
上記被測定ガス側カバー41の内部は被測定ガス雰囲気410を構成し、ここに導入された排ガスに基づいて、上記ガスセンサ素子45が酸素濃度測定を行う。
上記大気側カバー42の基端側は撥水フィルタ422を介して外側カバー421がかしめ固定されている。大気側カバー42の最も基端側の内部には弾性絶縁部材443がかしめ固定されている。
大気側カバー42の内部は大気雰囲気420を構成し、後述するガスセンサ素子45の大気室に対しては、ここから大気が導入される。
【0034】
上記ハウジング40の内部には上記ガスセンサ素子45が挿通されるが、両者の間には粉末シール材431、絶縁部材432が配置され、気密性、液密性が確保されている。
上記絶縁部材432の基端側はリング状部材434を介して、上記ハウジング40の基端側が内側に曲げられて、かしめられている。
上記大気側カバー42の内部であって、上記弾性絶縁部材443の下方には、大気側絶縁碍子442が皿バネ441によって支承されている。
【0035】
上記ガスセンサ素子45は、有底筒型の固体電解質体49の外側面と内側面にそれぞれ外側電極と内側電極とを設けてなる(図示略)。
固体電解質体49の内部は大気室490として使用され、該大気室490の内部に別体として構成したセラミックヒータ1が配置される。
【0036】
また、ガスセンサ素子45には、外側電極、内側電極とそれぞれ電気的に導通する接触端子471、472が設けてあり、該接触端子471、472は大気側絶縁碍子442内部において、接続端子473、474を介して外部リード線403、404に接続される。上記接触端子472は、セラミックヒータ1を保持するヒータホルダ46を設けてなる。
また、上記セラミックヒータ1のメイン電極部22に接続されたリード線12は、上記大気側絶縁碍子442の内部において接続端子451を介して外部リード線401に接続される。
【0037】
ガスセンサ4においては、撥水フィルタ422を介して大気側カバー42の内側に外気が導入される。
そして、エンジン起動に伴い、ガスセンサ4による被測定ガス中の特定ガス(酸素)濃度の測定が開始される。このとき、エンジンからの排ガスは、ガスセンサ4の被測定ガス側カバー41内に入ると共に、その一部が粉末シール材431及び絶縁部材432をすり抜け、セラミックヒータ1のメイン電極部22に達することがある。粉末シール材431及び絶縁部材432は、被測定ガス側と大気側との間の気密性、液密性を確保するものの、若干の漏れが生じることもあるからである。
【0038】
それ故、メイン電極部22の周辺には、図6の曲線Aに示すごとく、エンジン起動時(t=0)よりも前から外気が存在し、曲線Bに示すごとく、エンジン起動に伴い排ガスが侵入する。また、排ガスが侵入した分、メイン電極部22の周辺における外気の量は若干減少している(曲線A)。
【0039】
また、エンジン起動時に、セラミックヒータ1のメインヒータパターン2に電力が供給され、メイン発熱部21によってガスセンサ素子45を昇温する。また、メイン発熱部21の熱は、メイン電極部22にも伝導して、メイン電極部22も徐々に昇温する。
一方、サブヒータパターン3にも通電することにより、サブ発熱部31によってメイン電極部22の昇温を促進し、より短時間で100℃以上にする(曲線C1)。これにより、サブヒータパターン3がない場合には、図6の曲線C0に示すごとく、メイン電極部22を100℃まで昇温するのに例えば約2分かかるところを、サブヒータパターン3を用いることにより、図6の曲線C1に示すごとく、例えば約10秒にてメイン電極部22を100℃まで昇温する。
【0040】
また、上記サブ発熱部31は、図6の曲線C2に示すごとく、上記メインヒータパターン2への通電前(例えば約20秒前)にメイン電極部22を加熱することもできる。即ち、エンジン起動前にサブヒータパターン3への通電を行い、メイン電極部22を昇温しておくこともできる。
【0041】
なお、図6において、曲線Aはメイン電極部22周辺への外気の導入量の時間変化を表し、曲線Bはメイン電極部22周辺への排ガスの侵入量の時間変化を表す。また、曲線C0はサブ発熱部31を用いない場合のメイン電極部22の温度の時間変化を表し、曲線C1はサブ発熱部31をエンジン起動と共に通電した場合のメイン電極部22の温度の時間変化を表し、曲線C2はサブ発熱部31をエンジン起動に先立って通電開始した場合のメイン電極部22の温度の時間変化を表す。
【0042】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記セラミックヒータ1は、図1、図3に示すごとく、上記メイン電極部22を加熱するためのサブ発熱部31を有するサブヒータパターン3を設けてなる。そのため、上記メイン電極部22を加熱することができ、メイン電極部22への水分の付着を防止することができる。また、メイン電極部22に水分が付着したとしても、サブ発熱部31によりメイン電極部22を加熱して、水分を蒸発除去することができる。それ故、腐食要因となる水分を除去することで腐食環境を排除することが可能となりメイン電極部22の腐食を防ぎ、セラミックヒータ1の耐久性を向上させることができる。
即ち、例えば、メイン電極部22とろう材121との界面や、ろう材121とリード線12との界面における腐食を防ぎ、リード線12の離脱を防止することができる。
【0043】
また、図6の曲線C1、C2に示すごとく、エンジン起動から短時間で、メイン電極部22の温度を100℃以上に昇温することができるため、水分が付着した状態でメイン電極部22が排ガスに曝される時間を大幅に短縮し、或いは無くすことができる。これにより、メイン電極部22における腐食環境を排除することができる。
【0044】
即ち、仮にサブ発熱部31がないとした場合には、図6の曲線C0に示すごとく、メイン電極部22の温度が100℃に達するまでには、エンジン起動から例えば約2分という時間がかかる。この間、メイン電極部22には水分が残っている可能性がある。そして、図6に示すごとく、排ガスがガスセンサ4内に漏れメイン電極部22付近に達することとなる。そうすると、水分が付着したメイン電極部22に排ガス中の腐食原因物質が付着するなどして、腐食環境が形成されるおそれがある。
これに対し、本例によれば、上述のごとく、メイン電極部22における腐食環境を排除することができる。
【0045】
また、メイン電極部22を予め加熱しておくことにより、セラミックヒータ1の起動時において、メイン発熱部21の発熱により素早く高温に達する部分と、その発熱部からの熱伝導により温度が遅れて上昇、均衡するメイン電極部22を含むその他の部分における冷熱ストレスの発生を緩和、抑制することができる。これにより、セラミックヒータ1の耐久性を向上させることができる。
また、一対のサブ電極部32は、メイン電極部22とは別個に形成してあるため、上記サブ発熱部31を、メイン発熱部21から独立して制御することが容易となる。
【0046】
そして、上記サブ発熱部31は、メインヒータパターン2への通電前にメイン電極部22を加熱することもできる。これにより、上記メインヒータパターン2への通電開始時において、上記メイン電極部22の温度を水分(水環境)が存在しない程度に高くしておくことができる。それ故、ガスセンサ31の起動時に排ガス中の腐食原因物質がメイン電極部22に達する際には、水分がメイン電極部22に存在しない状態にすることが容易となる。その結果、腐食要因となる水分を除去することで腐食環境を排除することが可能となり、より確実にメイン電極部22の腐食を防止することができる。
【0047】
また、メインヒータパターン2への通電前に、メイン電極部22を予め加熱しておくことにより、上述のごとくセラミックヒータ1の冷熱ストレスの発生を緩和、抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
【0048】
また、上記サブ発熱部31としてPTC発熱体を用いる場合、サブ発熱部31の過熱を防いでメイン電極部22の過熱を防ぐことができる。即ち、上記サブ発熱部31の温度が約200℃よりも高くならないように制御することができる(図6の曲線C1、C2参照)。また、PTC(Positive Temperature Coefficient)発熱体は発熱とともにPTC発熱体自身の抵抗が増加し自ら到達温度が抑制される特性を有するため、サブヒータの温度制御系を簡略化できる。
【0049】
以上のごとく、本例によれば、耐久性に優れたセラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサを提供することができる。
【0050】
(実施例2)
本例は、図7に示すごとく、メインヒータパターン2が形成されたヒータ基板11とは別個のサブヒータ基板110にサブ発熱部31を形成したセラミックヒータ1の例である。
上記サブヒータ基板110は、上記ヒータ基板11の内側面112に張り合わされる。そして、サブヒータ基板110とヒータ基板11とを張り合わせた状態で、心棒19に巻き付けられている(図2参照)。
【0051】
上記サブ発熱部31は、サブヒータ基板110の内側面、即ちヒータ基板11との接触面とは反対側の面に形成されている。また、サブ発熱部31は、メイン電極部22の配設位置付近の裏側部分に配置されている。そして、サブ発熱部31は、サブヒータ基板110及びヒータ基板11を貫通するスルーホール131を介して、サブ電極部32に電気的に接続されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0052】
本例の場合には、メインヒータパターン2の配線位置に関わらず、サブ発熱部31を配線することができるため、メイン電極部22の対応位置に容易かつ充分に配線することができる。これにより、メイン電極部22の昇温を効率的に行うことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0053】
(実施例3)
本例は、図8、図9に示すごとく、メイン電極部22とサブ電極部32とを、互いに、セラミックヒータ1の長手方向にずらして配置した例である。
即ち、サブ電極部32を、メイン電極部22よりもセラミックヒータ1の先端側にずらした位置にオフセット配置する。
その他は、実施例1と同様である。
【0054】
本例の場合には、メイン電極部22とサブ電極部32とを、互いの電気的絶縁を確保しつつ容易に形成することができる。また、メイン電極部22とサブ電極部32とを、充分な大きさに形成することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0055】
(実施例4)
本例は、図10に示すごとく、メイン電極部22とサブ電極部32とを、互いに、セラミックヒータ1の長手方向にずらして配置すると共に、メインヒータパターン2が形成されたヒータ基板11とは別個のサブヒータ基板110にサブ発熱部31を形成したセラミックヒータ1の例である。
即ち、上記実施例3と同様のメインヒータパターン2及びサブ電極部32を形成したセラミックヒータ1において、上記実施例2と同様に、サブヒータ基板110を用いたものである。
本例の場合には、実施例2及び実施例3と同様の作用効果を有する。
【0056】
(実施例5)
本例は、図11、図12に示すごとく、一対のメイン電極部22の一方と、一対のサブ電極部32の一方とを共通化した共通電極14を1個有するセラミックヒータ1の例である。
上記共通電極14を構成しない方のサブ電極部32は、セラミックヒータ1の長手方向の略中央部分に配設されている。そして、このサブ電極部32は、セラミックヒータ1をガスセンサ内に保持するためのヒータホルダ(図5の符号46参照)と接続される。
該ヒータホルダは、ガスセンサ素子(図5の符号45参照)のセンサ端子にも接続されている。
【0057】
また、サブ発熱部32は、図12に示すごとく、メインヒータパターン2のリード部23に接続されている。これにより、メイン電極部22がサブ電極部32としても機能し、上記共通電極14となる。
その他は、実施例1と同様である。
【0058】
本例の場合には、形成する電極の数を実質的に減らすことができるため、メイン電極部22及びサブ電極部32の形成が容易となる。また、上記ヒータホルダを介してサブヒータパターン3に電力を供給することができるため、ガスセンサの構造を簡略化することができる。
また、サブ電極部32とセンサ端子とを共通化することができるため、ガスセンサの構造を更に簡略化することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0059】
(実施例6)
本例は、図13に示すごとく、一対のメイン電極部22の一方と、一対のサブ電極部32の一方とを共通化した共通電極14を1個有すると共に、メインヒータパターン2が形成されたヒータ基板11とは別個のサブヒータ基板110にサブ発熱部31を形成したセラミックヒータ1の例である。
即ち、上記実施例5と同様のメインヒータパターン2及びサブ電極部32を形成したセラミックヒータ1において、上記実施例2と同様に、サブヒータ基板110を用いたものである。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合には、実施例5及び実施例3と同様の作用効果を有する。
【0060】
(実施例7)
本例は、図14、図15に示すごとく、一対のメイン電極部22と一対のサブ電極部32とをそれぞれ共通化した、一対の共通電極140を有するセラミックヒータ1の例である。
また、サブ発熱部32は、図15に示すごとく、メインヒータパターン2のリード部23に接続されている。これにより、メイン電極部22がサブ電極部32としても機能し、上記共通電極140となる。
その他は、実施例1と同様である。
【0061】
本例の場合には、メイン電極部22と異なる部分に特別にサブ電極部32を形成する必要がなく、サブヒータパターン3を容易に形成することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0062】
(実施例8)
本例は、図16に示すごとく、一対のメイン電極部22と一対のサブ電極部32とをそれぞれ共通化した一対の共通電極140を有すると共に、メインヒータパターン2が形成されたヒータ基板11とは別個のサブヒータ基板110にサブ発熱部31を形成したセラミックヒータ1の例である。
即ち、上記実施例7と同様のメインヒータパターン2及びサブ電極部32を形成したセラミックヒータ1において、上記実施例2と同様に、サブヒータ基板110を用いたものである。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合には、実施例7及び実施例3と同様の作用効果を有する。
【0063】
(実施例9)
本例は、図17に示すごとく、積層型のガスセンサ素子5に、本発明のセラミックヒータ10を適用した例である。なお、図17はガスセンサ5を各構成要素にばらした状態を描いた展開斜視図である。後述する図18、図19も同様である。
本例におけるセラミックヒータ10は、平板状のヒータ基板11の一方の面114にメインヒータパターン2のメイン発熱部21とリード部23とを形成し、他方の面115にサブヒータパターン3のサブ発熱部31を形成してなる。
【0064】
また、ヒータ基板11の一方の面114には、メインヒータパターン2を覆う第1被覆基板15が積層されており、ヒータ基板11の他方の面115には、サブヒータパターン2を覆う第2被覆基板16が積層されている。そして、該第2被覆基板16は、ヒータ基板11とは反対側の面に、一対のメイン電極部22及び一対のサブ電極部32が形成してある。
【0065】
上記メイン電極部22には、メイン発熱部21及びリード部23が、ヒータ基板11及び第2被覆基板16を貫通するスルーホール132を介して電気的に接続されている。また、上記サブ電極部32には、サブ発熱部31が、第2被覆基板16を貫通するスルーホール131を介して電気的に接続されている。
そして、上記サブ発熱部31は、第2被覆基板16におけるメイン電極部22の配設位置付近の裏側に配設され、メイン電極部22を加熱できるよう構成されている。
【0066】
上記ガスセンサ素子5は、固体電解質板51と該固体電解質板51の表面に設けて被測定ガスに曝される被測定ガス側電極55及び基準ガスに曝される基準ガス側電極56とよりなるセンサセル50を有する。そして、一体的にセラミックヒータ10が積層されている。
【0067】
図17に示すごとく、固体電解質板51は、基準ガス室形成用のスペーサ52を介して、セラミックヒータ10の第1被覆基板15に積層されている。
また、固体電解質板51に設けた被測定ガス側電極55を覆うように、電極保護膜57が積層される。
固体電解質板51の他方の面には基準ガス側電極56が設けてあり、該基準ガス側電極56は基準ガス室に対面する。
【0068】
上記被測定ガス側電極55及び基準ガス側電極56には出力取出し用のリード部551、561及び端子552、562がそれぞれ設けてある。
上記スペーサ52はコ字状に構成されており、該スペーサ52とセラミックヒータ10における第1被覆基板15とによって、基準ガス室が構成される。
その他は、実施例1と同様であり、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0069】
(実施例10)
本例は、図18に示すごとく、一対のメイン電極部22の一方と、一対のサブ電極部32の一方とを共通化した共通電極14を1個有するセラミックヒータ10を用いた積層型のガスセンサ素子5の例である。
その他は、実施例9と同様である。
本例の場合には、形成する電極の数を実質的に減らすことができるため、メイン電極部22及びサブ電極部32の形成が容易となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0070】
(実施例11)
本例は、図19に示すごとく、メイン発熱部21及びサブ発熱部31を共に、ヒータ基板11の一方の面114に形成したセラミックヒータ10を用いた積層型のガスセンサ素子5の例である。
メイン発熱部21とサブ発熱部31とは、互いに短絡しないよう、電気的絶縁を確保できる状態に配線してある。
【0071】
また、本例のセラミックヒータ10は、実施例9、10において示した第2被覆基板16(図17、図18参照)を有しない。そして、ヒータ基板11の他方の面115に、メイン電極部22、サブ電極部32、及び共通電極14が形成されている。該共通電極14は、メイン電極部22及びサブ電極部32として機能する。
その他は、実施例1と同様である。
【0072】
本例の場合には、実施例9、10に示した第2被覆基板16(図17、図18参照)を設ける必要がないため、セラミックヒータ10の材料コストの低減、生産性の向上を図ることができる。
また、実施例10の場合と同様に、形成する電極の数を実質的に減らすことができるため、メイン電極部22及びサブ電極部32の形成が容易となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0073】
(実施例12)
本例は、図20に示すごとく、メインヒータパターンへの通電前に、サブ発熱部がメイン電極部を加熱し、上記メインヒータパターンへの通電開始前に、サブヒータパターンへの通電を終了するよう構成した例である。
即ち、サブヒータパターンに接続されたサブヒータ制御回路と、メインヒータパターンに接続されたメインヒータ制御回路が、例えば以下のごとく各パターンへの通電を制御する。
【0074】
まず、図20に示すごとく、運転手が乗込む際に自動車のドアを開けたとき(t0)に、そのドアの開放を検知して、サブヒータパターンへの通電を開始する(曲線D)。これにより、メイン電極部を100℃以上に上昇させ、水環境を除去する(曲線F)。
そして、あらかじめ設定した通電時間や投入電力量などを検知したとき(t1)、サブヒータパターンへの通電を終了する(曲線D)。
次いで、エンジン起動(t2)と同時にメインヒータパターンへの通電を開始する(曲線E)。また、このとき、ガスセンサによる特定ガス濃度の検知を開始する。
【0075】
サブヒータパターンへの通電終了(t1)後、メインヒータパターンへの通電開始(t2)までの間、メイン電極部の温度は若干下がるが、100℃以上の状態は維持している(曲線F)。
また、メインヒータパターンへの通電により、メイン発熱部の温度が上昇し、例えば600〜900℃に達した状態で飽和する(曲線G)。
一方、メイン電極部の温度も、メイン発熱部からの伝熱により、再び徐々に上昇し、例えば200〜400℃に達した状態で飽和する(曲線F)。
図20において、T1、T2がそれぞれメイン発熱部及びメイン電極部の飽和温度である。後述する図21〜図23においても同様である。
その他は、実施例1と同様である。
【0076】
本例の場合には、メイン電極部の過熱を防止することができ、メイン電極部とリード線とのろう付け接合部の劣化を防ぐことができる。また、不要な電力をサブヒータパターンへ供給しないため、省電力化を図ることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0077】
(実施例13)
本例は、図21に示すごとく、メインヒータパターンへの通電開始と同時に、サブヒータパターンへの通電を終了するよう構成したセラミックヒータ。
即ち、エンジン起動(t2)と同時にメインヒータパターンへの通電を開始すると共に、サブヒータパターンへの通電を終了する(曲線E、D)。
その他は、実施例12と同様である。
【0078】
本例の場合には、エンジン起動の信号を検知することにより、メインヒータパターンへの通電開始とサブヒータパターンへの通電の終了を行うことができるため、制御の簡素化を図ることができる。
また、実施例5(図11、図12)に示したような、ガスセンサ素子のセンサ端子とサブ電極部とを共通化したガスセンサにおいて、温度制御を容易に行うことができる。即ち、エンジン起動前においては、サブ電極部からサブヒータパターンへ電力を供給し、エンジン起動後は、上記サブ電極部がガスセンサ素子のセンサ端子として機能し、センサ出力を取り出すことができる。
その他、実施例12と同様の作用効果を有する。
【0079】
(実施例14)
本例は、図22に示すごとく、エンジン起動前にサブ発熱部がメイン電極部を100℃以上の設定温度に維持し、エンジン起動と同時に、サブヒータパターンへの通電を終了するよう構成した例である。
即ち、エンジン起動前において、実施例12と同様に、サブヒータパターンに通電し、曲線Fに示すごとくメイン電極部を100℃以上の所定温度(例えば150℃)に到達させた後(t3の後)、この所定温度を維持するよう、サブヒータパターンへの通電の入り切りを制御する(領域D1)。
そして、エンジン起動(t2)と同時に、メインヒータパターンへの通電を開始すると共に、サブヒータパターンへの通電を終了する(曲線E、D)。
その他は、実施例13と同様である。
【0080】
本例の場合には、メイン電極部の過熱をより確実に防止すると共に水環境を確実に排除することができる。
その他、実施例13と同様の作用効果を有する。
【0081】
(実施例15)
本例は、図23に示すごとく、サブ発熱部によって、メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるように、メインヒータパターンへの通電前にメイン電極部を昇温させておく例である。
【0082】
まず、実施例12と同様に、エンジン起動(t2)前において、サブ発熱部により、メイン電極部を昇温させる(曲線F)。その後、メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるような温度となる時点(t4)まで、昇温を継続する(曲線F)。なお、エンジン起動の後も昇温を続けてもよく、メインヒータパターンへの通電開始(t2)後も続けてもよい。
その他は、実施例12と同様である。
【0083】
本例の場合には、上記メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温によりメイン電極部に接合した接合部材(リード線12、ろう材121等(図4参照))とセラミックヒータ本体との間に発生する冷熱ストレスを充分に抑制することができる。
即ち、メイン発熱部の発熱に伴って、メイン電極部が伝熱により昇温する。このとき、メイン電極部が配されたヒータ基板のセラミック材料と、ろう材及びリード線の金属材料との間の熱膨張差に起因して応力が発生する。発生する応力は昇温速度に比例するため、メイン電極部の昇温速度を変えることでこれを制御することができる。
そこで、上記のごとく、メインヒータパターンへの通電前に、予めサブ発熱部によってメイン電極部を昇温させておいて、メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温速度を低減させることにより、上記の発生応力を低減させることができる。
【0084】
例えば、メイン発熱部の最高到達温度が900℃の場合、メイン電極部の最高到達温度が345℃となる。この最高到達温度までの到達時間が40秒の場合、メイン発熱部の発熱に伴う昇温速度は、仮にサブヒータによる予熱を行わない場合(RT25℃からメイン発熱部の昇温に伴う昇温を行う場合)には、約8℃/秒である。
これに対し、サブヒータを用いて、メイン電極部の温度を事前に150℃まで上昇させておくと、メイン発熱部の発熱に伴う昇温速度は約4.9℃/秒と緩やかにすることができる。そして、こ場合、充分にメイン電極部に接合した接合部材とセラミックヒータ本体との間に発生する冷熱ストレスを抑制することができる。
その他、実施例12と同様の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例1における、セラミックヒータの模式図。
【図2】実施例1における、セラミックヒータの正面図。
【図3】実施例1における、セラミックヒータの展開図。
【図4】実施例1における、メイン電極部とリード線との接合部分付近の断面図。
【図5】実施例1における、ガスセンサの縦断面図。
【図6】実施例1における、メイン電極部の温度、外気の導入量、及び排ガスの導入量の変化を表す線図。
【図7】実施例2における、セラミックヒータの展開図。
【図8】実施例3における、セラミックヒータの正面図。
【図9】実施例3における、セラミックヒータの展開図。
【図10】実施例4における、セラミックヒータの展開図。
【図11】実施例5における、セラミックヒータの正面図。
【図12】実施例5における、セラミックヒータの展開図。
【図13】実施例6における、セラミックヒータの展開図。
【図14】実施例7における、セラミックヒータの正面図。
【図15】実施例7における、セラミックヒータの展開図。
【図16】実施例8における、セラミックヒータの展開図。
【図17】実施例9における、ガスセンサ素子の展開斜視図。
【図18】実施例10における、ガスセンサ素子の展開斜視図。
【図19】実施例11における、ガスセンサ素子の展開斜視図。
【図20】実施例12における、サブヒータパターン及びメインヒータパターンへの通電の制御と、メイン発熱部及びメイン電極部の温度変化を表す線図。
【図21】実施例13における、サブヒータパターン及びメインヒータパターンへの通電の制御と、メイン発熱部及びメイン電極部の温度変化を表す線図。
【図22】実施例14における、サブヒータパターン及びメインヒータパターンへの通電の制御と、メイン発熱部及びメイン電極部の温度変化を表す線図。
【図23】実施例15における、サブヒータパターン及びメインヒータパターンへの通電の制御と、メイン発熱部及びメイン電極部の温度変化を表す線図。
【図24】従来例における、セラミックヒータの正面図。
【図25】従来例における、電極部とリード線との接合部分付近の断面図。
【図26】従来例における、セラミックヒータの展開図。
【符号の説明】
【0086】
1、10 セラミックヒータ
11 ヒータ基板
2 メインヒータパターン
21 メイン発熱部
22 メイン電極部
23 リード部
3 サブヒータパターン
31 サブ発熱部
32 サブ電極部
4 ガスセンサ
45、5 ガスセンサ素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子等を加熱するためのセラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の内燃機関には、燃焼制御を行うために、排ガス中の酸素濃度等を測定するガスセンサが用いられている。このガスセンサには、通常、測定値のばらつきを防止するために、ガスセンサ素子を加熱するセラミックヒータが内蔵されている。
該セラミックヒータは、ガスセンサ素子を加熱する発熱部と、該発熱部に電力を供給するための一対の電極部と、上記発熱部と上記電極部とを電気的に接続するリード部とからなるヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなる(特許文献1参照)。
【0003】
かかるセラミックヒータとしては、例えば、図24、図25に示すような丸棒状のものがある。このセラミックヒータ9は、セラミックの心棒99の表面にヒータ基板91(図26)を巻き付けるように配設してなる。該ヒータ基板91は、図26に示すごとく、一方の面911に発熱部93及びリード部94を設け、他方の面912に電極部95を設けてなる。上記リード部94と電極部95とは、ヒータ基板91を貫通するスルーホール913を介して接続されている。
そして、図24、図25に示すごとく、上記電極部95が外側になるように、ヒータ基板91を心棒99の表面に巻き付けてあり、電極部95にはリード線96がろう材961により接合されている。
【0004】
しかしながら、上記電極部95には、外気や排ガス中に含まれる水分が付着することがある。この水分の付着は、電極部95の腐食の原因となるおそれがある。また、水分が付着した状態において、排ガス中の腐食原因物質が吸着することにより、電極部95やろう材961、リード線96の腐食が進行するおそれがある。
その結果、電極部95に接合したリード線96が外れるおそれがあり、セラミックヒータ9の耐久性を確保することが困難となるおそれがある。
【0005】
また、セラミックヒータ9の起動時において、発熱部93は短時間で昇温するが、電極部95は発熱部93からの熱伝導により遅れて昇温するため昇温に時間がかかる。それ故、発熱部93と電極部95との間に温度勾配が生じ、ヒータ基板91やヒータパターン930に冷熱ストレスが生じる。また、電極部95と、電極部95に接合されたろう材961及びリード線96との間にも冷熱ストレスが発生する。その結果、接合部における破壊寿命が短くなるおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開11−2926649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れたセラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、メイン発熱部と、該メイン発熱部に電力を供給するための一対のメイン電極部と、上記メイン発熱部と上記メイン電極部とを電気的に接続するリード部とからなるメインヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部と、該サブ発熱部に電力を供給するための一対のサブ電極部とを有するサブヒータパターンを設けてなることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項1)。
【0009】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部を有するサブヒータパターンを設けてなる。そのため、上記メイン電極部を加熱することができ、メイン電極部への水分の付着を防止することができる。また、メイン電極部に水分が付着したとしても、サブ発熱部によりメイン電極部を加熱して、水分を蒸発除去することができる。それ故、腐食要因となる水分を除去することでメイン電極部の腐食を防ぎ、セラミックヒータの耐久性を向上させることができる。
【0010】
また、メイン電極部を予め加熱しておくことにより、セラミックヒータの起動時のメイン電極部における冷熱ストレスの発生を抑制することもできる。これにより、メイン電極部の耐久性を向上させることができる。
【0011】
以上のごとく、本発明によれば、耐久性に優れたセラミックヒータを提供することができる。
【0012】
第2の発明は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサ素子と、該ガスセンサ素子を加熱するためのセラミックヒータとを有するガスセンサにおいて、
上記セラミックヒータは、上記ガスセンサ素子を加熱するメイン発熱部と、該メイン発熱部に電力を供給するための一対のメイン電極部と、上記メイン発熱部と上記メイン電極部とを電気的に接続するリード部とからなるメインヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなり、
かつ、上記セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部と、該サブ発熱部に電力を供給するための一対のサブ電極部とを有するサブヒータパターンを設けてなることを特徴とするガスセンサにある(請求項10)。
【0013】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記ガスセンサに設けたセラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部を有するサブヒータパターンを設けてなる。そのため、上述したごとく、セラミックヒータのメイン電極部の耐久性を向上させることができ、ひいては、ガスセンサの耐久性を向上させることができる。
以上のごとく、本発明によれば、耐久性に優れたガスセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記第1の発明(請求項1)又は上記第2の発明(請求項10)において、上記メイン電極部には、リード線が接合されていてもよい。
また、上記一対のサブ電極部は、上記メイン電極部とは別個に形成してあってもよい(請求項2、請求項11)。
この場合には、上記サブ発熱部を、上記メイン発熱部から独立して制御することが容易となる。
【0015】
また、上記メイン電極部と上記サブ電極部とは、互いに、上記セラミックヒータの長手方向にずらして配置されていることが好ましい(請求項3、請求項12)。
この場合には、メイン電極部とサブ電極部とを、互いの電気的絶縁を確保しつつ容易に形成することができる。また、メイン電極部とサブ電極部とを、充分な大きさに形成することができる。
【0016】
また、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部の一方と、上記一対のサブ電極部の一方とを共通化した共通電極を1個有していてもよい(請求項4、請求項13)。
この場合には、上記メイン電極部及び上記サブ電極部の形成が容易となる。
【0017】
また、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部と、上記一対のサブ電極部とをそれぞれ共通化した、一対の共通電極を有していてもよい(請求項5、請求項16)。
即ち、一方のメイン電極部と一方のサブ電極部とを共通化して一方の共通電極を構成し、他方のメイン電極部と他方のサブ電極部とを共通化して他方の共通電極を構成することができる。
この場合には、メイン電極部と異なる部分に特別に上記サブ電極部を形成する必要がなく、サブヒータパターンを容易に形成することができる。
【0018】
また、上記サブ発熱部は、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を加熱するよう構成してあることが好ましい(請求項6、請求項17)。
この場合には、上記メインヒータパターンへの通電開始時において、上記メイン電極部の温度を高くして、水分がメイン電極部に存在しない状態にすることが容易となる。更にガスセンサの起動時に排ガス中の腐食原因物質が漏れて、メイン電極部に達するような場合に、水分がメイン電極部に存在しない状態にすることが容易となるので、腐食環境の除去を可能とし、より確実にメイン電極部の腐食を防止することができる。
また、メインヒータパターンへの通電前に、メイン電極部を予め加熱しておくことにより、セラミックヒータの起動時のメイン電極部における冷熱ストレスの発生を抑制することもできる。これにより、メイン電極部の耐久性を向上させることができる。
【0019】
また、上記サブヒータパターンへの通電は、上記メインヒータパターンへの通電開始と同時又はその前に終了するよう構成してあることが好ましい(請求項7、請求項18)。
この場合には、メイン電極部の過熱を防止すると共に、省電力化を図ることができる。
【0020】
また、上記サブ発熱部は、上記メイン発熱部の昇温に伴う上記メイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるように、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を昇温させておくよう構成してあることが好ましい(請求項8、請求項19)。
この場合には、上記メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温によりメイン電極部に接合したリード線等の接合部材とセラミックヒータ本体との間に発生する冷熱ストレスを充分に抑制することができる。
上記昇温速度が6℃/秒を超える場合には、上記冷熱ストレスを充分抑制することが困難となるおそれがある。
なお、上記メイン電極部の昇温速度が2℃/秒以下となるように、上記メイン電極部を予め昇温させておくことが、更に好ましい。
【0021】
また、上記サブ発熱部は、PTC(Positive
Temperature Coefficient)発熱体からなることが好ましい(請求項9、請求項20)。
この場合には、PTC(Positive
Temperature Coefficient)発熱体は発熱とともにPTC発熱体自身の抵抗が増加し自ら到達温度が抑制される特性を利用するため、サブ発熱部の過熱を防いでメイン電極部の過熱を防ぐことができる。同時に、サブヒータの温度制御系を簡略化できる。
【0022】
次に、上記第2の発明(請求項10)において、上記共通電極を構成しない方の上記サブ電極部は、上記セラミックヒータを上記ガスセンサ内に保持するためのヒータホルダと接続されていることが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記ヒータホルダを介してサブヒータパターンに電力を供給することができるため、ガスセンサの構造を簡略化することができる。
【0023】
また、上記ヒータホルダは、上記ガスセンサ素子のセンサ端子にも接続されていることが好ましい(請求項15)。
この場合には、上記サブ電極部と上記センサ端子とを共通化することができるため、ガスセンサの構造を簡略化することができる。
【0024】
また、上記サブヒータパターンは、上記特定ガス濃度の検出時には通電させないよう構成してあることが好ましい(請求項21)。
この場合には、サブヒータパターンからの漏れ電流が、センサ出力に影響を及ぼすことを防止することができる。特に、微弱電流を検出するガスセンサの場合に効果を発揮する。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるセラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサにつき、図1〜図6を用いて説明する。
本例のセラミックヒータ1は、図1、図3に示すごとく、メインヒータパターン2を、ヒータ基板11上に形成してなる。上記メインヒータパターン2は、メイン発熱部21と、該メイン発熱部21に電力を供給するための一対のメイン電極部22と、上記メイン発熱部21と上記メイン電極部22とを電気的に接続するリード部23とからなる。
そして、セラミックヒータ1は、上記メイン電極部22を加熱するためのサブ発熱部31と、該サブ発熱部31に電力を供給するための一対のサブ電極部32とを有するサブヒータパターン3を設けてなる。
【0026】
また、セラミックヒータ1は、メインヒータパターン2及びサブヒータパターン3を表面に形成したヒータ基板11を、図2、図4に示すごとく、円柱状の心棒19の外周に巻き付けることにより形成してなる。図3は、メインヒータパターン2等を形成したヒータ基板11を展開した図であって、外側に配される外側面111の平面図、及び、内側に配される内側面112の平面図を表す。
【0027】
図2、図3に示すごとく、上記一対のサブ電極部32は、上記メイン電極部22とは別個に形成してあり、一対のメイン電極部22と一対のサブ電極部32とは、ヒータ基板11の一方の端部における外側面111に形成されている。そして、メイン電極部22とサブ電極部32とは、セラミックヒータ1の長手方向に関する同一位置において、交互に配置されている。
【0028】
また、図3に示すごとく、ヒータ基板11の内側面112には、メイン発熱部21、リード部23、及びサブ発熱部31が形成されている。上記メイン発熱部21は、ヒータ基板11における上記メイン電極部22の配設側とは反対側の端部に形成してある。また、メイン発熱部21は、本例においてはジグザグ状に形成してある。なお、メイン発熱部21の形成パターンはこれに限らず、種々のパターンに形成することができる。
【0029】
また、上記サブ発熱部31は、ヒータ基板11における上記メイン電極部22の配設側の端部に形成してある。
そして、上記サブ発熱部31とサブ電極部32とは、ヒータ基板11を貫通するスルーホール131を介して互いに接続されている。また、メイン発熱部21とメイン電極部22とは、上記リード部23及びスルーホール132を介して接続されている。
【0030】
また、図2、図4に示すごとく、上記一対のメイン電極部22には、リード線12がそれぞれ、導電性のろう材121により接合されている。同様に、上記一対のサブ電極部32にも、リード線13がそれぞれ接合されている。
また、例えば、上記メインヒータパターン2及びサブヒータパターン3は、W(タングステン)を主成分とし、上記ろう材121は、Au(金)とCu(銅)を主成分とし、上記リード線12、13は、Ni(ニッケル)を主成分とする。また、上記サブ発熱部31は、PTC(Positive Temperature Coefficient)発熱体により構成することができる。
【0031】
上記セラミックヒータ1は、図5に示すごとく、ガスセンサ素子45を加熱するために用いられる。即ち、セラミックヒータ1は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサ4に組み込まれている。
【0032】
次に、本例のガスセンサ4について詳細に説明する。
図5に示すごとく、ガスセンサ4は、筒型のハウジング40と該ハウジング40に挿通したコップ型のガスセンサ素子45と、上記ハウジング40の先端側に設けた外側カバー411と内側カバー412とからなる被測定ガス側カバー41と、上記ハウジング40の基端側に設けた大気側カバー42とを有する。
【0033】
上記被測定ガス側カバー41の内部は被測定ガス雰囲気410を構成し、ここに導入された排ガスに基づいて、上記ガスセンサ素子45が酸素濃度測定を行う。
上記大気側カバー42の基端側は撥水フィルタ422を介して外側カバー421がかしめ固定されている。大気側カバー42の最も基端側の内部には弾性絶縁部材443がかしめ固定されている。
大気側カバー42の内部は大気雰囲気420を構成し、後述するガスセンサ素子45の大気室に対しては、ここから大気が導入される。
【0034】
上記ハウジング40の内部には上記ガスセンサ素子45が挿通されるが、両者の間には粉末シール材431、絶縁部材432が配置され、気密性、液密性が確保されている。
上記絶縁部材432の基端側はリング状部材434を介して、上記ハウジング40の基端側が内側に曲げられて、かしめられている。
上記大気側カバー42の内部であって、上記弾性絶縁部材443の下方には、大気側絶縁碍子442が皿バネ441によって支承されている。
【0035】
上記ガスセンサ素子45は、有底筒型の固体電解質体49の外側面と内側面にそれぞれ外側電極と内側電極とを設けてなる(図示略)。
固体電解質体49の内部は大気室490として使用され、該大気室490の内部に別体として構成したセラミックヒータ1が配置される。
【0036】
また、ガスセンサ素子45には、外側電極、内側電極とそれぞれ電気的に導通する接触端子471、472が設けてあり、該接触端子471、472は大気側絶縁碍子442内部において、接続端子473、474を介して外部リード線403、404に接続される。上記接触端子472は、セラミックヒータ1を保持するヒータホルダ46を設けてなる。
また、上記セラミックヒータ1のメイン電極部22に接続されたリード線12は、上記大気側絶縁碍子442の内部において接続端子451を介して外部リード線401に接続される。
【0037】
ガスセンサ4においては、撥水フィルタ422を介して大気側カバー42の内側に外気が導入される。
そして、エンジン起動に伴い、ガスセンサ4による被測定ガス中の特定ガス(酸素)濃度の測定が開始される。このとき、エンジンからの排ガスは、ガスセンサ4の被測定ガス側カバー41内に入ると共に、その一部が粉末シール材431及び絶縁部材432をすり抜け、セラミックヒータ1のメイン電極部22に達することがある。粉末シール材431及び絶縁部材432は、被測定ガス側と大気側との間の気密性、液密性を確保するものの、若干の漏れが生じることもあるからである。
【0038】
それ故、メイン電極部22の周辺には、図6の曲線Aに示すごとく、エンジン起動時(t=0)よりも前から外気が存在し、曲線Bに示すごとく、エンジン起動に伴い排ガスが侵入する。また、排ガスが侵入した分、メイン電極部22の周辺における外気の量は若干減少している(曲線A)。
【0039】
また、エンジン起動時に、セラミックヒータ1のメインヒータパターン2に電力が供給され、メイン発熱部21によってガスセンサ素子45を昇温する。また、メイン発熱部21の熱は、メイン電極部22にも伝導して、メイン電極部22も徐々に昇温する。
一方、サブヒータパターン3にも通電することにより、サブ発熱部31によってメイン電極部22の昇温を促進し、より短時間で100℃以上にする(曲線C1)。これにより、サブヒータパターン3がない場合には、図6の曲線C0に示すごとく、メイン電極部22を100℃まで昇温するのに例えば約2分かかるところを、サブヒータパターン3を用いることにより、図6の曲線C1に示すごとく、例えば約10秒にてメイン電極部22を100℃まで昇温する。
【0040】
また、上記サブ発熱部31は、図6の曲線C2に示すごとく、上記メインヒータパターン2への通電前(例えば約20秒前)にメイン電極部22を加熱することもできる。即ち、エンジン起動前にサブヒータパターン3への通電を行い、メイン電極部22を昇温しておくこともできる。
【0041】
なお、図6において、曲線Aはメイン電極部22周辺への外気の導入量の時間変化を表し、曲線Bはメイン電極部22周辺への排ガスの侵入量の時間変化を表す。また、曲線C0はサブ発熱部31を用いない場合のメイン電極部22の温度の時間変化を表し、曲線C1はサブ発熱部31をエンジン起動と共に通電した場合のメイン電極部22の温度の時間変化を表し、曲線C2はサブ発熱部31をエンジン起動に先立って通電開始した場合のメイン電極部22の温度の時間変化を表す。
【0042】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記セラミックヒータ1は、図1、図3に示すごとく、上記メイン電極部22を加熱するためのサブ発熱部31を有するサブヒータパターン3を設けてなる。そのため、上記メイン電極部22を加熱することができ、メイン電極部22への水分の付着を防止することができる。また、メイン電極部22に水分が付着したとしても、サブ発熱部31によりメイン電極部22を加熱して、水分を蒸発除去することができる。それ故、腐食要因となる水分を除去することで腐食環境を排除することが可能となりメイン電極部22の腐食を防ぎ、セラミックヒータ1の耐久性を向上させることができる。
即ち、例えば、メイン電極部22とろう材121との界面や、ろう材121とリード線12との界面における腐食を防ぎ、リード線12の離脱を防止することができる。
【0043】
また、図6の曲線C1、C2に示すごとく、エンジン起動から短時間で、メイン電極部22の温度を100℃以上に昇温することができるため、水分が付着した状態でメイン電極部22が排ガスに曝される時間を大幅に短縮し、或いは無くすことができる。これにより、メイン電極部22における腐食環境を排除することができる。
【0044】
即ち、仮にサブ発熱部31がないとした場合には、図6の曲線C0に示すごとく、メイン電極部22の温度が100℃に達するまでには、エンジン起動から例えば約2分という時間がかかる。この間、メイン電極部22には水分が残っている可能性がある。そして、図6に示すごとく、排ガスがガスセンサ4内に漏れメイン電極部22付近に達することとなる。そうすると、水分が付着したメイン電極部22に排ガス中の腐食原因物質が付着するなどして、腐食環境が形成されるおそれがある。
これに対し、本例によれば、上述のごとく、メイン電極部22における腐食環境を排除することができる。
【0045】
また、メイン電極部22を予め加熱しておくことにより、セラミックヒータ1の起動時において、メイン発熱部21の発熱により素早く高温に達する部分と、その発熱部からの熱伝導により温度が遅れて上昇、均衡するメイン電極部22を含むその他の部分における冷熱ストレスの発生を緩和、抑制することができる。これにより、セラミックヒータ1の耐久性を向上させることができる。
また、一対のサブ電極部32は、メイン電極部22とは別個に形成してあるため、上記サブ発熱部31を、メイン発熱部21から独立して制御することが容易となる。
【0046】
そして、上記サブ発熱部31は、メインヒータパターン2への通電前にメイン電極部22を加熱することもできる。これにより、上記メインヒータパターン2への通電開始時において、上記メイン電極部22の温度を水分(水環境)が存在しない程度に高くしておくことができる。それ故、ガスセンサ31の起動時に排ガス中の腐食原因物質がメイン電極部22に達する際には、水分がメイン電極部22に存在しない状態にすることが容易となる。その結果、腐食要因となる水分を除去することで腐食環境を排除することが可能となり、より確実にメイン電極部22の腐食を防止することができる。
【0047】
また、メインヒータパターン2への通電前に、メイン電極部22を予め加熱しておくことにより、上述のごとくセラミックヒータ1の冷熱ストレスの発生を緩和、抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
【0048】
また、上記サブ発熱部31としてPTC発熱体を用いる場合、サブ発熱部31の過熱を防いでメイン電極部22の過熱を防ぐことができる。即ち、上記サブ発熱部31の温度が約200℃よりも高くならないように制御することができる(図6の曲線C1、C2参照)。また、PTC(Positive Temperature Coefficient)発熱体は発熱とともにPTC発熱体自身の抵抗が増加し自ら到達温度が抑制される特性を有するため、サブヒータの温度制御系を簡略化できる。
【0049】
以上のごとく、本例によれば、耐久性に優れたセラミックヒータ及びこれを用いたガスセンサを提供することができる。
【0050】
(実施例2)
本例は、図7に示すごとく、メインヒータパターン2が形成されたヒータ基板11とは別個のサブヒータ基板110にサブ発熱部31を形成したセラミックヒータ1の例である。
上記サブヒータ基板110は、上記ヒータ基板11の内側面112に張り合わされる。そして、サブヒータ基板110とヒータ基板11とを張り合わせた状態で、心棒19に巻き付けられている(図2参照)。
【0051】
上記サブ発熱部31は、サブヒータ基板110の内側面、即ちヒータ基板11との接触面とは反対側の面に形成されている。また、サブ発熱部31は、メイン電極部22の配設位置付近の裏側部分に配置されている。そして、サブ発熱部31は、サブヒータ基板110及びヒータ基板11を貫通するスルーホール131を介して、サブ電極部32に電気的に接続されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0052】
本例の場合には、メインヒータパターン2の配線位置に関わらず、サブ発熱部31を配線することができるため、メイン電極部22の対応位置に容易かつ充分に配線することができる。これにより、メイン電極部22の昇温を効率的に行うことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0053】
(実施例3)
本例は、図8、図9に示すごとく、メイン電極部22とサブ電極部32とを、互いに、セラミックヒータ1の長手方向にずらして配置した例である。
即ち、サブ電極部32を、メイン電極部22よりもセラミックヒータ1の先端側にずらした位置にオフセット配置する。
その他は、実施例1と同様である。
【0054】
本例の場合には、メイン電極部22とサブ電極部32とを、互いの電気的絶縁を確保しつつ容易に形成することができる。また、メイン電極部22とサブ電極部32とを、充分な大きさに形成することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0055】
(実施例4)
本例は、図10に示すごとく、メイン電極部22とサブ電極部32とを、互いに、セラミックヒータ1の長手方向にずらして配置すると共に、メインヒータパターン2が形成されたヒータ基板11とは別個のサブヒータ基板110にサブ発熱部31を形成したセラミックヒータ1の例である。
即ち、上記実施例3と同様のメインヒータパターン2及びサブ電極部32を形成したセラミックヒータ1において、上記実施例2と同様に、サブヒータ基板110を用いたものである。
本例の場合には、実施例2及び実施例3と同様の作用効果を有する。
【0056】
(実施例5)
本例は、図11、図12に示すごとく、一対のメイン電極部22の一方と、一対のサブ電極部32の一方とを共通化した共通電極14を1個有するセラミックヒータ1の例である。
上記共通電極14を構成しない方のサブ電極部32は、セラミックヒータ1の長手方向の略中央部分に配設されている。そして、このサブ電極部32は、セラミックヒータ1をガスセンサ内に保持するためのヒータホルダ(図5の符号46参照)と接続される。
該ヒータホルダは、ガスセンサ素子(図5の符号45参照)のセンサ端子にも接続されている。
【0057】
また、サブ発熱部32は、図12に示すごとく、メインヒータパターン2のリード部23に接続されている。これにより、メイン電極部22がサブ電極部32としても機能し、上記共通電極14となる。
その他は、実施例1と同様である。
【0058】
本例の場合には、形成する電極の数を実質的に減らすことができるため、メイン電極部22及びサブ電極部32の形成が容易となる。また、上記ヒータホルダを介してサブヒータパターン3に電力を供給することができるため、ガスセンサの構造を簡略化することができる。
また、サブ電極部32とセンサ端子とを共通化することができるため、ガスセンサの構造を更に簡略化することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0059】
(実施例6)
本例は、図13に示すごとく、一対のメイン電極部22の一方と、一対のサブ電極部32の一方とを共通化した共通電極14を1個有すると共に、メインヒータパターン2が形成されたヒータ基板11とは別個のサブヒータ基板110にサブ発熱部31を形成したセラミックヒータ1の例である。
即ち、上記実施例5と同様のメインヒータパターン2及びサブ電極部32を形成したセラミックヒータ1において、上記実施例2と同様に、サブヒータ基板110を用いたものである。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合には、実施例5及び実施例3と同様の作用効果を有する。
【0060】
(実施例7)
本例は、図14、図15に示すごとく、一対のメイン電極部22と一対のサブ電極部32とをそれぞれ共通化した、一対の共通電極140を有するセラミックヒータ1の例である。
また、サブ発熱部32は、図15に示すごとく、メインヒータパターン2のリード部23に接続されている。これにより、メイン電極部22がサブ電極部32としても機能し、上記共通電極140となる。
その他は、実施例1と同様である。
【0061】
本例の場合には、メイン電極部22と異なる部分に特別にサブ電極部32を形成する必要がなく、サブヒータパターン3を容易に形成することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0062】
(実施例8)
本例は、図16に示すごとく、一対のメイン電極部22と一対のサブ電極部32とをそれぞれ共通化した一対の共通電極140を有すると共に、メインヒータパターン2が形成されたヒータ基板11とは別個のサブヒータ基板110にサブ発熱部31を形成したセラミックヒータ1の例である。
即ち、上記実施例7と同様のメインヒータパターン2及びサブ電極部32を形成したセラミックヒータ1において、上記実施例2と同様に、サブヒータ基板110を用いたものである。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合には、実施例7及び実施例3と同様の作用効果を有する。
【0063】
(実施例9)
本例は、図17に示すごとく、積層型のガスセンサ素子5に、本発明のセラミックヒータ10を適用した例である。なお、図17はガスセンサ5を各構成要素にばらした状態を描いた展開斜視図である。後述する図18、図19も同様である。
本例におけるセラミックヒータ10は、平板状のヒータ基板11の一方の面114にメインヒータパターン2のメイン発熱部21とリード部23とを形成し、他方の面115にサブヒータパターン3のサブ発熱部31を形成してなる。
【0064】
また、ヒータ基板11の一方の面114には、メインヒータパターン2を覆う第1被覆基板15が積層されており、ヒータ基板11の他方の面115には、サブヒータパターン2を覆う第2被覆基板16が積層されている。そして、該第2被覆基板16は、ヒータ基板11とは反対側の面に、一対のメイン電極部22及び一対のサブ電極部32が形成してある。
【0065】
上記メイン電極部22には、メイン発熱部21及びリード部23が、ヒータ基板11及び第2被覆基板16を貫通するスルーホール132を介して電気的に接続されている。また、上記サブ電極部32には、サブ発熱部31が、第2被覆基板16を貫通するスルーホール131を介して電気的に接続されている。
そして、上記サブ発熱部31は、第2被覆基板16におけるメイン電極部22の配設位置付近の裏側に配設され、メイン電極部22を加熱できるよう構成されている。
【0066】
上記ガスセンサ素子5は、固体電解質板51と該固体電解質板51の表面に設けて被測定ガスに曝される被測定ガス側電極55及び基準ガスに曝される基準ガス側電極56とよりなるセンサセル50を有する。そして、一体的にセラミックヒータ10が積層されている。
【0067】
図17に示すごとく、固体電解質板51は、基準ガス室形成用のスペーサ52を介して、セラミックヒータ10の第1被覆基板15に積層されている。
また、固体電解質板51に設けた被測定ガス側電極55を覆うように、電極保護膜57が積層される。
固体電解質板51の他方の面には基準ガス側電極56が設けてあり、該基準ガス側電極56は基準ガス室に対面する。
【0068】
上記被測定ガス側電極55及び基準ガス側電極56には出力取出し用のリード部551、561及び端子552、562がそれぞれ設けてある。
上記スペーサ52はコ字状に構成されており、該スペーサ52とセラミックヒータ10における第1被覆基板15とによって、基準ガス室が構成される。
その他は、実施例1と同様であり、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0069】
(実施例10)
本例は、図18に示すごとく、一対のメイン電極部22の一方と、一対のサブ電極部32の一方とを共通化した共通電極14を1個有するセラミックヒータ10を用いた積層型のガスセンサ素子5の例である。
その他は、実施例9と同様である。
本例の場合には、形成する電極の数を実質的に減らすことができるため、メイン電極部22及びサブ電極部32の形成が容易となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0070】
(実施例11)
本例は、図19に示すごとく、メイン発熱部21及びサブ発熱部31を共に、ヒータ基板11の一方の面114に形成したセラミックヒータ10を用いた積層型のガスセンサ素子5の例である。
メイン発熱部21とサブ発熱部31とは、互いに短絡しないよう、電気的絶縁を確保できる状態に配線してある。
【0071】
また、本例のセラミックヒータ10は、実施例9、10において示した第2被覆基板16(図17、図18参照)を有しない。そして、ヒータ基板11の他方の面115に、メイン電極部22、サブ電極部32、及び共通電極14が形成されている。該共通電極14は、メイン電極部22及びサブ電極部32として機能する。
その他は、実施例1と同様である。
【0072】
本例の場合には、実施例9、10に示した第2被覆基板16(図17、図18参照)を設ける必要がないため、セラミックヒータ10の材料コストの低減、生産性の向上を図ることができる。
また、実施例10の場合と同様に、形成する電極の数を実質的に減らすことができるため、メイン電極部22及びサブ電極部32の形成が容易となる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0073】
(実施例12)
本例は、図20に示すごとく、メインヒータパターンへの通電前に、サブ発熱部がメイン電極部を加熱し、上記メインヒータパターンへの通電開始前に、サブヒータパターンへの通電を終了するよう構成した例である。
即ち、サブヒータパターンに接続されたサブヒータ制御回路と、メインヒータパターンに接続されたメインヒータ制御回路が、例えば以下のごとく各パターンへの通電を制御する。
【0074】
まず、図20に示すごとく、運転手が乗込む際に自動車のドアを開けたとき(t0)に、そのドアの開放を検知して、サブヒータパターンへの通電を開始する(曲線D)。これにより、メイン電極部を100℃以上に上昇させ、水環境を除去する(曲線F)。
そして、あらかじめ設定した通電時間や投入電力量などを検知したとき(t1)、サブヒータパターンへの通電を終了する(曲線D)。
次いで、エンジン起動(t2)と同時にメインヒータパターンへの通電を開始する(曲線E)。また、このとき、ガスセンサによる特定ガス濃度の検知を開始する。
【0075】
サブヒータパターンへの通電終了(t1)後、メインヒータパターンへの通電開始(t2)までの間、メイン電極部の温度は若干下がるが、100℃以上の状態は維持している(曲線F)。
また、メインヒータパターンへの通電により、メイン発熱部の温度が上昇し、例えば600〜900℃に達した状態で飽和する(曲線G)。
一方、メイン電極部の温度も、メイン発熱部からの伝熱により、再び徐々に上昇し、例えば200〜400℃に達した状態で飽和する(曲線F)。
図20において、T1、T2がそれぞれメイン発熱部及びメイン電極部の飽和温度である。後述する図21〜図23においても同様である。
その他は、実施例1と同様である。
【0076】
本例の場合には、メイン電極部の過熱を防止することができ、メイン電極部とリード線とのろう付け接合部の劣化を防ぐことができる。また、不要な電力をサブヒータパターンへ供給しないため、省電力化を図ることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0077】
(実施例13)
本例は、図21に示すごとく、メインヒータパターンへの通電開始と同時に、サブヒータパターンへの通電を終了するよう構成したセラミックヒータ。
即ち、エンジン起動(t2)と同時にメインヒータパターンへの通電を開始すると共に、サブヒータパターンへの通電を終了する(曲線E、D)。
その他は、実施例12と同様である。
【0078】
本例の場合には、エンジン起動の信号を検知することにより、メインヒータパターンへの通電開始とサブヒータパターンへの通電の終了を行うことができるため、制御の簡素化を図ることができる。
また、実施例5(図11、図12)に示したような、ガスセンサ素子のセンサ端子とサブ電極部とを共通化したガスセンサにおいて、温度制御を容易に行うことができる。即ち、エンジン起動前においては、サブ電極部からサブヒータパターンへ電力を供給し、エンジン起動後は、上記サブ電極部がガスセンサ素子のセンサ端子として機能し、センサ出力を取り出すことができる。
その他、実施例12と同様の作用効果を有する。
【0079】
(実施例14)
本例は、図22に示すごとく、エンジン起動前にサブ発熱部がメイン電極部を100℃以上の設定温度に維持し、エンジン起動と同時に、サブヒータパターンへの通電を終了するよう構成した例である。
即ち、エンジン起動前において、実施例12と同様に、サブヒータパターンに通電し、曲線Fに示すごとくメイン電極部を100℃以上の所定温度(例えば150℃)に到達させた後(t3の後)、この所定温度を維持するよう、サブヒータパターンへの通電の入り切りを制御する(領域D1)。
そして、エンジン起動(t2)と同時に、メインヒータパターンへの通電を開始すると共に、サブヒータパターンへの通電を終了する(曲線E、D)。
その他は、実施例13と同様である。
【0080】
本例の場合には、メイン電極部の過熱をより確実に防止すると共に水環境を確実に排除することができる。
その他、実施例13と同様の作用効果を有する。
【0081】
(実施例15)
本例は、図23に示すごとく、サブ発熱部によって、メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるように、メインヒータパターンへの通電前にメイン電極部を昇温させておく例である。
【0082】
まず、実施例12と同様に、エンジン起動(t2)前において、サブ発熱部により、メイン電極部を昇温させる(曲線F)。その後、メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるような温度となる時点(t4)まで、昇温を継続する(曲線F)。なお、エンジン起動の後も昇温を続けてもよく、メインヒータパターンへの通電開始(t2)後も続けてもよい。
その他は、実施例12と同様である。
【0083】
本例の場合には、上記メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温によりメイン電極部に接合した接合部材(リード線12、ろう材121等(図4参照))とセラミックヒータ本体との間に発生する冷熱ストレスを充分に抑制することができる。
即ち、メイン発熱部の発熱に伴って、メイン電極部が伝熱により昇温する。このとき、メイン電極部が配されたヒータ基板のセラミック材料と、ろう材及びリード線の金属材料との間の熱膨張差に起因して応力が発生する。発生する応力は昇温速度に比例するため、メイン電極部の昇温速度を変えることでこれを制御することができる。
そこで、上記のごとく、メインヒータパターンへの通電前に、予めサブ発熱部によってメイン電極部を昇温させておいて、メイン発熱部の昇温に伴うメイン電極部の昇温速度を低減させることにより、上記の発生応力を低減させることができる。
【0084】
例えば、メイン発熱部の最高到達温度が900℃の場合、メイン電極部の最高到達温度が345℃となる。この最高到達温度までの到達時間が40秒の場合、メイン発熱部の発熱に伴う昇温速度は、仮にサブヒータによる予熱を行わない場合(RT25℃からメイン発熱部の昇温に伴う昇温を行う場合)には、約8℃/秒である。
これに対し、サブヒータを用いて、メイン電極部の温度を事前に150℃まで上昇させておくと、メイン発熱部の発熱に伴う昇温速度は約4.9℃/秒と緩やかにすることができる。そして、こ場合、充分にメイン電極部に接合した接合部材とセラミックヒータ本体との間に発生する冷熱ストレスを抑制することができる。
その他、実施例12と同様の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例1における、セラミックヒータの模式図。
【図2】実施例1における、セラミックヒータの正面図。
【図3】実施例1における、セラミックヒータの展開図。
【図4】実施例1における、メイン電極部とリード線との接合部分付近の断面図。
【図5】実施例1における、ガスセンサの縦断面図。
【図6】実施例1における、メイン電極部の温度、外気の導入量、及び排ガスの導入量の変化を表す線図。
【図7】実施例2における、セラミックヒータの展開図。
【図8】実施例3における、セラミックヒータの正面図。
【図9】実施例3における、セラミックヒータの展開図。
【図10】実施例4における、セラミックヒータの展開図。
【図11】実施例5における、セラミックヒータの正面図。
【図12】実施例5における、セラミックヒータの展開図。
【図13】実施例6における、セラミックヒータの展開図。
【図14】実施例7における、セラミックヒータの正面図。
【図15】実施例7における、セラミックヒータの展開図。
【図16】実施例8における、セラミックヒータの展開図。
【図17】実施例9における、ガスセンサ素子の展開斜視図。
【図18】実施例10における、ガスセンサ素子の展開斜視図。
【図19】実施例11における、ガスセンサ素子の展開斜視図。
【図20】実施例12における、サブヒータパターン及びメインヒータパターンへの通電の制御と、メイン発熱部及びメイン電極部の温度変化を表す線図。
【図21】実施例13における、サブヒータパターン及びメインヒータパターンへの通電の制御と、メイン発熱部及びメイン電極部の温度変化を表す線図。
【図22】実施例14における、サブヒータパターン及びメインヒータパターンへの通電の制御と、メイン発熱部及びメイン電極部の温度変化を表す線図。
【図23】実施例15における、サブヒータパターン及びメインヒータパターンへの通電の制御と、メイン発熱部及びメイン電極部の温度変化を表す線図。
【図24】従来例における、セラミックヒータの正面図。
【図25】従来例における、電極部とリード線との接合部分付近の断面図。
【図26】従来例における、セラミックヒータの展開図。
【符号の説明】
【0086】
1、10 セラミックヒータ
11 ヒータ基板
2 メインヒータパターン
21 メイン発熱部
22 メイン電極部
23 リード部
3 サブヒータパターン
31 サブ発熱部
32 サブ電極部
4 ガスセンサ
45、5 ガスセンサ素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン発熱部と、該メイン発熱部に電力を供給するための一対のメイン電極部と、上記メイン発熱部と上記メイン電極部とを電気的に接続するリード部とからなるメインヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部と、該サブ発熱部に電力を供給するための一対のサブ電極部とを有するサブヒータパターンを設けてなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
請求項1において、上記一対のサブ電極部は、上記メイン電極部とは別個に形成してあることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項3】
請求項2において、上記メイン電極部と上記サブ電極部とは、互いに、上記セラミックヒータの長手方向にずらして配置されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項4】
請求項1において、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部の一方と、上記一対のサブ電極部の一方とを共通化した共通電極を1個有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項5】
請求項1において、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部と、上記一対のサブ電極部とをそれぞれ共通化した、一対の共通電極を有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記サブ発熱部は、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を加熱するよう構成してあることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項7】
請求項6において、上記サブヒータパターンへの通電は、上記メインヒータパターンへの通電開始と同時又はその前に終了するよう構成してあることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項8】
請求項6又は7において、上記サブ発熱部は、上記メイン発熱部の昇温に伴う上記メイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるように、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を昇温させておくよう構成してあることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記サブ発熱部は、PTC発熱体からなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項10】
被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサ素子と、該ガスセンサ素子を加熱するためのセラミックヒータとを有するガスセンサにおいて、
上記セラミックヒータは、上記ガスセンサ素子を加熱するメイン発熱部と、該メイン発熱部に電力を供給するための一対のメイン電極部と、上記メイン発熱部と上記メイン電極部とを電気的に接続するリード部とからなるメインヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなり、
かつ、上記セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部と、該サブ発熱部に電力を供給するための一対のサブ電極部とを有するサブヒータパターンを設けてなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項11】
請求項10において、上記一対のサブ電極部は、上記メイン電極部とは別個に形成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項12】
請求項11において、上記メイン電極部と上記サブ電極部とは、互いに、上記セラミックヒータの長手方向にずらして配置されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項13】
請求項10において、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部の一方と、上記一対のサブ電極部の一方とを共通化した共通電極を1個有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項14】
請求項13において、上記共通電極を構成しない方の上記サブ電極部は、上記セラミックヒータを上記ガスセンサ内に保持するためのヒータホルダと接続されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項15】
請求項14において、上記ヒータホルダは、上記ガスセンサ素子のセンサ端子にも接続されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項16】
請求項10において、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部と、上記一対のサブ電極部とをそれぞれ共通化した、一対の共通電極を有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか一項において、上記サブ発熱部は、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を加熱するよう構成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項18】
請求項17において、上記サブヒータパターンへの通電は、上記メインヒータパターンへの通電開始と同時又はその前に終了するよう構成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項19】
請求項17又は18において、上記サブ発熱部は、上記メイン発熱部の昇温に伴う上記メイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるように、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を昇温させておくよう構成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項20】
請求項10〜19のいずれか一項において、上記サブ発熱部は、PTC発熱体からなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項21】
請求項10〜20のいずれか一項において、上記サブヒータパターンは、上記特定ガス濃度の検出時には通電させないよう構成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項1】
メイン発熱部と、該メイン発熱部に電力を供給するための一対のメイン電極部と、上記メイン発熱部と上記メイン電極部とを電気的に接続するリード部とからなるメインヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなるセラミックヒータであって、
該セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部と、該サブ発熱部に電力を供給するための一対のサブ電極部とを有するサブヒータパターンを設けてなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
請求項1において、上記一対のサブ電極部は、上記メイン電極部とは別個に形成してあることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項3】
請求項2において、上記メイン電極部と上記サブ電極部とは、互いに、上記セラミックヒータの長手方向にずらして配置されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項4】
請求項1において、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部の一方と、上記一対のサブ電極部の一方とを共通化した共通電極を1個有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項5】
請求項1において、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部と、上記一対のサブ電極部とをそれぞれ共通化した、一対の共通電極を有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記サブ発熱部は、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を加熱するよう構成してあることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項7】
請求項6において、上記サブヒータパターンへの通電は、上記メインヒータパターンへの通電開始と同時又はその前に終了するよう構成してあることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項8】
請求項6又は7において、上記サブ発熱部は、上記メイン発熱部の昇温に伴う上記メイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるように、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を昇温させておくよう構成してあることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記サブ発熱部は、PTC発熱体からなることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項10】
被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するためのガスセンサ素子と、該ガスセンサ素子を加熱するためのセラミックヒータとを有するガスセンサにおいて、
上記セラミックヒータは、上記ガスセンサ素子を加熱するメイン発熱部と、該メイン発熱部に電力を供給するための一対のメイン電極部と、上記メイン発熱部と上記メイン電極部とを電気的に接続するリード部とからなるメインヒータパターンを、ヒータ基板上に形成してなり、
かつ、上記セラミックヒータは、上記メイン電極部を加熱するためのサブ発熱部と、該サブ発熱部に電力を供給するための一対のサブ電極部とを有するサブヒータパターンを設けてなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項11】
請求項10において、上記一対のサブ電極部は、上記メイン電極部とは別個に形成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項12】
請求項11において、上記メイン電極部と上記サブ電極部とは、互いに、上記セラミックヒータの長手方向にずらして配置されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項13】
請求項10において、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部の一方と、上記一対のサブ電極部の一方とを共通化した共通電極を1個有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項14】
請求項13において、上記共通電極を構成しない方の上記サブ電極部は、上記セラミックヒータを上記ガスセンサ内に保持するためのヒータホルダと接続されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項15】
請求項14において、上記ヒータホルダは、上記ガスセンサ素子のセンサ端子にも接続されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項16】
請求項10において、上記セラミックヒータは、上記一対のメイン電極部と、上記一対のサブ電極部とをそれぞれ共通化した、一対の共通電極を有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか一項において、上記サブ発熱部は、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を加熱するよう構成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項18】
請求項17において、上記サブヒータパターンへの通電は、上記メインヒータパターンへの通電開始と同時又はその前に終了するよう構成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項19】
請求項17又は18において、上記サブ発熱部は、上記メイン発熱部の昇温に伴う上記メイン電極部の昇温速度が6℃/秒以下となるように、上記メインヒータパターンへの通電前に上記メイン電極部を昇温させておくよう構成してあることを特徴とするガスセンサ。
【請求項20】
請求項10〜19のいずれか一項において、上記サブ発熱部は、PTC発熱体からなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項21】
請求項10〜20のいずれか一項において、上記サブヒータパターンは、上記特定ガス濃度の検出時には通電させないよう構成してあることを特徴とするガスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−32101(P2006−32101A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208809(P2004−208809)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]