説明

セルフレベリング性組成物

【課題】 施工初期から中長期に渡ってひび割れ発生や表面剥離が起こらずかつ表面平滑性に優れた均質な施工物が得られるセルフレベリング性組成物の提供する。
【解決手段】 (A)セメント、(B)石膏、(C)石膏よりも水和反応活性が高い膨張材、(D)水溶性セルロースエーテル、(E)単環脂環式高級アルコールと脂肪族モノカルボン酸モノエステルを有効成分とする混合物とシリカ粉からなる皮張り抑制剤、(F)減水剤、(G)消泡剤及び(H)最大粒径2.5mm以下の細骨材を含有してなるセルフレベリング性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材等に用いられる水硬質のセルフレベリング性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントや石膏等を水硬質成分とするセルフレベリング性組成物は、コンクリート製床盤などに流し込むことによって水平な表面を容易に形成できるため、コンクリート構造物の床材などに繁用されている。セメント系のセルフレベリング性組成物は、石膏系のセルフレベリング性組成物の弱点である耐水性は優れているものの、硬化収縮が大きく、また高い流動状態を得る上で混練水が比較的多い配合になることから、材料分離が起こり易く、浮遊水の発生やノロ浮き、また乾燥過程でのひび割れも多発し易く、安定した平滑面を有する施工物が得難い。このような問題に対処するため、例えば、セメントに次に示すような様々な混和成分を配合したセルフレベリング性組成物が提案されている。即ち、砂(骨材)、石灰系膨張材、分散剤、フライアッシュ及びセルロース系保水剤を配合したもの(特許文献1参照。)、骨材、高炉スラグ、膨張材、分散剤及びセルロース系保水剤を配合したもの(特許文献2参照。)、骨材、分散剤、収縮低減剤、石膏のような凝結促進剤、増粘剤及び消泡剤を配合したもの(特許文献3参照。)、骨材、膨張材及び/又は収縮低減材、減水剤、分離防止剤(微生物発酵増粘多糖類)及び消泡剤を配合したもの(特許文献4参照。)、骨材、減水剤、消泡剤、凝結調整剤及び水溶性セルロースエーテルを配合したもの(特許文献5参照。)等が提案されている。
【特許文献1】特開昭56−84358号公報
【特許文献2】特開昭60−86065号公報
【特許文献3】特開平7−267704号公報
【特許文献4】特開2003−313069号公報
【特許文献5】特開2006−56763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記のような配合手法により、施工後の材料分離現象も外観上は抑制でき、また顕著なひび割れも防止可能にはなるが、セルフレベリング性(自己水平性)を発現させるに適した流動特性から幾分外れるような配合設計にせざるを得ないことがあり、施工性に支障を及ぼす。また、顕著なひび割れは見られなくとも、長期乾燥により表層部に微細なひび割れが徐々に発生したり、表層の一部が剥離することもある。また、材料分離現象が外観上抑制できているものでも施工物表面には、軽比重成分やセメント由来の溶出成分を中心とした浮遊物が留まり易く、薄膜状の皮張りが起こることがある。皮張りが起こると、乾燥が進むに連れ下部層との乾燥収縮率の差などからひび割れや表面変形を生じることがあった。また、皮張り膜によって蒸発水分の放散が妨げられて膜下に滞留散在し、その部分が膨れとなって痕跡を留め、施工物の表面平滑性が失われる。さらに膜と下層間にブリーディング水や該滞留水分が散在すると、やがて乾燥消失又は下部層に吸収されてこの部分が空洞化し、表面と下部層が未固着の脆弱部位となるため、ひび割れや表面剥離の原因になるなど耐久面で支障が生じる。従って、本発明は、これらの問題を解消するものであって、施工初期から中長期に渡ってひび割れ発生や剥離が起こらずかつ表面平滑性に優れた均質な施工物が得られるセルフレベリング性組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、材料分離やひび割れ発生に繋がる短期から長期に渡るまで自己収縮や乾燥収縮を極力抑制した上で、表面での皮張り現象を防ぐと共に、施工物の表層強度を高めれば、表面の局所膨れ等による平滑性の喪失も起こらず、またひび割れや表面剥離が起こり難くなり、耐久性を向上できるということに着目し、これを実現するために新たなセルフレベリング性組成物を見出すべく検討を進めた。その結果、セメント、石膏、石灰系及び/又はエトリンガイト系の膨張材、水溶性セルロースエーテル、特定の成分からなる皮張り抑制剤、減水剤、消泡剤及び特定粒径の細骨材等を配合した水硬性の組成物が、前記課題を総じて解決できるという知見を得、本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、次の(1)〜(3)で表されるセルフレベリング性組成物である。(1)(A)セメント、(B)石膏、(C)石灰系及び/又はエトリンガイト系の膨張材、(D)水溶性セルロースエーテル、(E)単環脂環式高級アルコールと脂肪族モノカルボン酸モノエステルを有効成分とする混合物とシリカ粉からなる皮張り抑制剤、(F)減水剤、(G)消泡剤及び(H)最大粒径2.5mm以下の細骨材を含有してなるセルフレベリング性組成物。(2)さらに(I)収縮低減剤を含有してなる前記(1)のセルフレベリング性組成物。(3)さらに(J)アミロース及び/又はアミロペクチンを有効成分とする増粘剤を含有してなる前記(1)又は(2)のセルフレベリング性組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によるセルフレベリング性組成物は、コンクリート床等へ流し込むだけで容易に自己水平性が発現され、また材料分離に対する強力な抑制作用があるため、浮遊水や施工物表面の皮張りも見られず、白華や剥離、膨れ等のない滑らかな表面を有する均質な施工物が得られる。さらに、硬化や乾燥収縮によるひび割れに対する強力な抵抗性を備えるため、長期間に渡ってひび割れや表面剥離が発生し難い耐久性に優れた施工物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のセルフレベリング性組成物は、結合相形成成分としてセメントを使用する。セメントは特に限定されず、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱等の各種ポルトランドセメント、高炉セメントやフライアッシュセメント等の混合セメント、白色セメントやアルミナセメント等の特殊セメントを使用することができる。セメントの配合量は混練水を除くセルフレベリング性組成物中の20〜45質量%とするのが好ましい。20質量%未満では結合相が不足して施工物表層強度や耐久性が低下することがあり、また、45質量%を超えると硬化時の収縮が大きくなり、ひび割れが起こり易くなるので適当ではない。
【0008】
また、本発明のセルフレベリング性組成物は石膏を配合使用する。使用する石膏は無水石膏が好ましいが、例えば無水石膏に半水石膏等が混入されたものであっても良い。また無水石膏は、天然II型無水石膏でも例えば沸酸石膏等の所謂化学石膏の何れであっても良い。石膏は結合相形成成分としても作用するが、本発明では主に中長期的な収縮に起因するひび割れ発生抑制のため配合使用する。石膏の配合量は混練水を除くセルフレベリング性組成物の2〜10質量%が好ましい。2質量%未満では中長期的な収縮を十分抑えられず、ひび割れ発生が起こることがあり、また10質量%を超えると施工物の耐水性が低下するので適当ではない。
【0009】
また、本発明のセルフレベリング性組成物は石灰系及び/又はエトリンガイト系の膨張材を配合使用する。これらの膨張材は、一般に石膏よりも水和反応活性が高い水和膨張性物質が有効成分となる。石灰系の膨張材としては、例えば遊離生石灰を内包生成させたクリンカの粉砕物、石灰石の焼成粉砕物を有効成分とするもの等を挙げることができる。またエトリンガイト系の膨張材としては、例えばカルシウムサルホアルミネートを有効成分とするもの等を挙げることができる。本発明ではこの両者の何れか一方の使用でも、また併用でも良い。このような膨張材の使用によりセメント系組成物で一般に見られる硬化時〜乾燥期に渡る比較的大きな収縮を抑制し、特に初期ひび割れの発生を防ぐことができる。膨張材の配合量は混練水を除くセルフレベリング性組成物の0.3〜3質量%が好ましい。0.3質量%未満では硬化時の収縮を十分抑えられず、また3質量%を超えると逆に過膨張による膨張亀裂の虞があるので適当ではない。前記石膏との併用により、特に施工物の収縮を概ね均一に抑制し、施工物表部と下部との収縮差による表層強度の低下を抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明のセルフレベリング性組成物は水溶性セルロースエーテルを配合使用する。水溶性セルロースエーテルはモルタルやコンクリートに使用できるものなら特に限定されず、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を挙げることができる。水溶性セルロースエーテルは増粘作用によって材料分離を抑制する。またその保水作用によって、例えば凹凸が見られる床に施工したときに、施工厚が薄くなる部位と厚くなる部位との乾燥期間を整合させ、施工物の乾燥収縮時期の差により生じるひび割れを抑制すると共にコンクリート駆体へ吸収され易い施工物の水分量のバランスを保つ。また、全体に薄く施工する必要がある場合などではひび割れ発生に繋がり易い急激な水分消失を抑制できる。水溶性セルロースエーテルの配合量は混練水を除くセルフレベリング性組成物の0.03〜0.3質量%が好ましい。0.03質量%未満では材料分離を十分抑えられず、また0.3質量%を超えると流動性が著しく低下し、施工性に支障を及ぼすことがあるので適当ではない。
【0011】
また、本発明のセルフレベリング性組成物は単環脂環式高級アルコールと脂肪族モノカルボン酸モノエステルを有効成分とする混合物とシリカ粉からなる皮張り抑制剤を配合使用する。単環脂環式高級アルコールは、炭素数6〜12のものであれば特に限定されず、好適例としてシクロヘキサノールが挙げられる。また脂肪族モノカルボン酸モノエステルとして、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ヘキシル、酢酸ラウリル、酢酸ステアリル、酪酸メチル、吉草酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル等が挙げられる。特に酢酸メチルが好ましい。単環脂環式高級アルコールと脂肪族カルボン酸エステルを有効成分とする混合物は、流動性を確保し、凝集固結を防ぐ上で疎水性であることが望ましく、これ以外の成分、例えばアニオン性界面活性剤、溶剤、乳化剤などの含有も許容されるが、強い親水性を有するような成分の含有は本発明の効果を減損させる可能性が高いので推奨されない。また、該混合物に単環脂環式高級アルコールと脂肪族モノカルボン酸モノエステル以外の成分を含む場合は、有効成分稀釈化を避けるため混合物中の概ね20重量%以下のものが良い。混合物中の単環脂環式高級アルコールの含有量は60〜90重量%のものが好ましく、脂肪族モノカルボン酸モノエステルの含有量は10〜40重量%のものが好ましい。また、該混合物と共に本発明で使用する皮張り抑制剤を構成するシリカ粉は、粒径約0.1〜1000μmで開口気孔を有するシリカ粒子を使用されるのが好ましい。開口気孔を有するシリカ粒子は一般に含浸機能があるため、含浸された前記有効成分が比較的長期間に渡って放出され、作用持続性が付与されるので皮張り抑制作用が向上する。皮張り抑制剤は、シリカ粉27〜74質量%含み、残部が該混合物であるものが好ましい。このような皮張り抑制剤を配合使用することで、施工後の未硬化セルフレベリング性組成物表面に薄膜が形成されるのを防ぐことができ、施工物の表面劣化、成膜による乾燥障害等が抑制される。皮張り抑制剤の配合量は混練水を除くセルフレベリング性組成物の0.03〜0.3質量%とするのが好ましい。0.03質量%未満だと皮張り抑制作用が十分得られず、また0.3質量%を超えると流動性や硬化性に支障を及ぼすことがあるので適当ではない。
【0012】
また、本発明のセルフレベリング性組成物は減水剤を配合使用する。減水剤はモルタルやコンクリートに使用できるものであれば、特に限定されず、分散剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤と称されているものでも良い。具体的にはナフタレンスルホン酸系、メラミンスルホン酸系、リグニンスルホン酸系、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系、アミノスルホン酸系等の減水剤や高性能減水剤を例示することができる。減水剤の使用により、強度低下やひび割れ発生に繋がりやすい混練水の配合量増大を抑えることができ、自己水平性に適した流動性の確保が行い易くなる。減水剤の配合量は混練水を除くセルフレベリング性組成物の0.2〜1質量%が好ましい。0.2質量%未満では強度低下に繋がる混練水量の増大によることなく自己水平性に適した流動性を確保することが困難になり、また1質量%を超えると材料分離を起こし易くなるので適当ではない。
【0013】
また、本発明のセルフレベリング性組成物は消泡剤を配合使用する。消泡剤はモルタルやコンクリートに使用できるものであれば、何れのものでも使用できる。消泡剤の使用により、注水したセルフレベリング性組成物の混練時に巻き込まれた空気によって施工物表面に見られ易い気泡あばたの出現を防ぎ、平滑面が得易やすくなる。消泡剤の配合量は混練水を除くセルフレベリング性組成物の0.03〜0.3質量%が好ましい。0.03質量%未満では気泡を十分除去できないことがあり、また0.3質量%を超えると材料分離を起こし易くなるので適当ではない。
【0014】
また、本発明のセルフレベリング性組成物は細骨材を配合使用する。細骨材は、モルタルやコンクリートに使用することができるものであれば、含有成分や起源等を問わず、何れの細骨材でも良い。具体的には、山砂、川砂、海砂、砕砂の天然細骨材、鉱物粉等を主体とする原料を焼成してなる人工細骨材等を挙げることができる他、これらの骨材の一部を実質細骨材として担うことが可能な例えば鉱滓、石炭灰、タルク等の増量材と置換しても良い。細骨材は最大粒径が2.5mm以下の細骨材の使用が好ましい。より好ましくは最大粒径が1.5mm以下の細骨材を使用する。最大粒径が2.5mm以下の細骨材を使用することにより、材料分離がより起こり難く、施工後も安定した水平面が得られ易くなる。細骨材の配合量は混練水を除くセルフレベリング性組成物の40〜75質量%が好ましい。45質量%未満では硬化収縮によるひび割れが発生し易くなり、また75質量%を超えると施工物の強度が低下するので適当ではない。
【0015】
また、本発明のセルフレベリング性組成物は収縮低減剤を配合使用するのが好ましい。収縮低減剤はモルタルやコンクリートに使用することができるものであれば、特に限定されない。収縮低減剤は乾燥収縮を抑制し、主に施工から中長期に於いて発生するひび割れをより確実に防ぐことができる。収縮低減剤の配合量は混練水を除くセルフレベリング性組成物の0.2〜1.5質量%が好ましい。0.2質量%未満では配合効果が乏しく、また0.5質量%を超えると表面強度低下を起こすことがあるので適当ではない。
【0016】
また、本発明のセルフレベリング性組成物はアミロース及び/又はアミロペクチンを有効成分とする増粘剤を含有することができる。このような増粘剤として、具体的には、澱粉系増粘剤などを例示できる。該増粘剤は、一般に保水作用を呈することなく増粘性を付与できるため、特に水分蒸発が活発でない寒冷期や多湿の環境下で施工する場合などに、施工工期を長引かせることなく、また流動性を大きく低下させずに良好な材料分離効果が得られる。該増粘剤の配合量は、本発明のセルフレベリング性組成物の必須配合成分である水溶性セルロースエーテルの一部を置換する態様が望ましく、前記の水溶性セルロースエーテル好適配合量の最大約50%を置換使用する量とするのが好ましい。
【0017】
また、本発明のセルフレベリング性組成物の混練水の配合量は、混練水を除くセルフレベリング性組成物100質量部又は全ての液分を除いたセルフレベリング性組成物100質量部の何れかに対し、概ね17〜30質量部とするのが好ましい。概ね17質量部未満では自己水平性に適した流動性が得られないことがあり、概ね30質量部を超えると、施工物の表層強度向上が得難くなるので好ましくない。
【0018】
本発明のセルフレベリング性組成物は、本発明の効果を実質喪失させない限り、前記以外の材料を含有するものであっても良い。このような含有材料として、例えばモルタルやコンクリートに使用できる繊維、白華防止剤、凝結調整剤、防水剤、シリカフューム、スラグ微粉、石灰石微粉、潤滑剤、顔料等を挙げることができる。
【0019】
本発明のセルフレベリング性組成物の製造方法は特に限定されない。一例を挙げれば、グラウトミキサに混練水を入れ、次いで液状の配合材料を加えて混合し、さらに粉粒状の配合材料を加え、最後に細骨材を加えて混練することにより製造できる。また、本セルフレベリング性組成物の施工方法も特に限定されず、従来より一般に行われているセメント系セルフレベリング材の施工法を適用することができ、施工に際しては施工温度等にも殆ど制約を受けない。また、本セルフレベリング性組成物打設後の硬化体施工面に、さらに例えばフローリング、合成高分子系張床、カーペット張床、畳敷等の仕上げ材を施工することが望ましい。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明する。
次に表すA〜Lから選定される材料を用い、表1の配合量となるよう、まず混練水をグラウトミキサを回転させながら投入し、次いで他の材料を一括投入し、約3分間混練を行い、セルフレベリング性組成物を作製した。
A;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
B;無水石膏(市販品)
C1;石灰系膨張材(商品名;太平洋エクスパン、太平洋マテリアル株式会社製)
C2;エトリンガイト系膨張材(商品名;デンカCSA、電気化学工業株式会社製)
D;水溶性メチルセルロース系増粘剤(商品名;メトローズ90SH−4000、信越化学工業株式会社製)
E;シクロヘキサノール9.43質量部、酢酸メチル1.6質量部、キサンタンガム水溶液(固形分濃度約7.4%)3.1質量部、第2級高級アルコールエトキシレートナトリウム塩系陰イオン界面活性剤(日本触媒株式会社製)0.74質量部及び水25.13質量部の混合物と多孔質シリカ(商品名;ニップシールKQ、東ソー・シリカ株式会社製)60質量部を混合してなる皮張り抑制剤
F;ポリカルボン酸系高性能減水剤(商品名;コアフローNF−100、太平洋マテリアル株式会社製)
G;消泡剤(商品名;SNデフォーマーAHP、サンノプコ株式会社製)
H1;細骨材(山形珪砂5号と6号の等重量混合砂83.4質量部と最大粒径75μmの石炭灰16.6質量部からなる細骨材)
H2;細骨材(F.M.=2.75で最大粒径6mmの小笠砂)
I;コンクリート用収縮低減剤(商品名;太平洋テトラガード、太平洋マテリアル株式会社製)
J;澱粉系増粘剤(商品名;ソヤガム、不二製油株式会社製)
K;クエン酸100質量部と亜硝酸カルシウム20質量部(何れも市販試薬)を混合してなる凝結調整剤
L;高炉水砕スラグ(ブレーン比表面積約4000cm2/g)
【0021】
【表1】

【0022】
作製したセルフレベリング性組成物について、流動性の評価として、日本建築学会規格JASS 15M−103のフロー試験方法に準じてフローを測定した。フローは、混練終了直後(注水から約5分経過時点)のセルフレベリング性組成物に対し、20℃の温度下で測定した。また、作製したセルフレベリング性組成物を20℃の屋内コンクリート床に水平に設置した内寸縦2m、横2m、高さ10cmの枠囲い内に、厚さ約1cmとなるよう流し込み施工を行った。材料分離性の評価として、施工開始から1時間放置した施工物表面に皮膜が形成されているか否かを目視で調べた。さらに3時間放置した施工物表面のブリーディング水発生有無を目視で観察した。またさらに、施工から1日経過後の表面平滑性の評価として、施工物表面に局所的な膨れや剥離及びピンホールがあるか否かを目視で確認し、加えて長さ1mの定規を表面にあてがい、定規と施工物の間に間隙が生じているか否かを目視で確認した。何れの発生も見出されなかったものについてのみ表面平滑性「良好」と判断し、1つでも発生が見られたものは表面平滑性「不良」と判断した。また、施工から同様の条件で30日経過後の施工物表面のひび割れ及び表面剥離の発生有無も目視で観察し、何れかが発生しているものを発生「有」と評価した。以上の結果を表2に表す。
【0023】
【表2】

【0024】
表2から、本発明によるセルフレベリング性組成物は何れも自己水平性に適した流動性を示し、施工後も皮張り、ブリーディング水、ひび割れが全て見られず、また表面平滑性も良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セメント、(B)石膏、(C)石灰系及び/又はエトリンガイト系の膨張材、(D)水溶性セルロースエーテル、(E)単環脂環式高級アルコールと脂肪族モノカルボン酸モノエステルを有効成分とする混合物とシリカ粉からなる皮張り抑制剤、(F)減水剤、(G)消泡剤及び(H)最大粒径2.5mm以下の細骨材を含有してなるセルフレベリング性組成物。
【請求項2】
さらに(I)収縮低減剤を含有してなる請求項1記載のセルフレベリング性組成物。
【請求項3】
さらに(J)アミロース及び/又はアミロペクチンを有効成分とする増粘剤を含有してなる請求項1又は2記載のセルフレベリング性組成物。

【公開番号】特開2008−56541(P2008−56541A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237008(P2006−237008)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】