説明

セレン含有導電性ポリマー及び導電性ポリマーの製造方法

【課題】水に簡易に分散することができ、そして有用な貯蔵寿命及び、溶液内で安定な、本質的な導電性ポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】次の式:


(式中、XはS又はSeであり、X及びYの一方又は両方はSeである)なる化合物、及び少なくとも1種のポリアニオンからなる混合物を反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願のクロスリファレンス]
本出願は、2007年7月13日に出願された、米国特許出願第11/777,386号の一部継続出願である(参照により、当該公表を本明細書に援用する)。
本出願の主題は、2007年7月13日に出願された、米国特許出願第11/777,362号明細書、及び本出願と同日付で出願され、そして「複素環式縮合セレノフェンモノマー」と題する米国特許出願第12/353,609号明細書に関する(参照により、当該公報を本明細書に援用する)。
【0002】
本発明は、制限無く、重合された複素環式縮合環モノマーを含む導電性ポリマーを含む合成物、上記合成物の製造方法、及び上記合成物を利用する用途に向けられている。
【背景技術】
【0003】
比較的低いバンドギャップ(Eg)を有するチオフェンモノマー及び置換されたチオフェンモノマーから生成されたポリマーは、適度の導電性を実証する。上記ポリマーは、本質的に導電性ポリマーと称されることが多い。用語「バンドギャップ(Eg)」は、伝導帯と称される電子エネルギー準位と、価電子帯と称される電子エネルギー準位との間のエネルギー差を指す。所与のポリマーにより示されるバンドギャップは、ポリマーを形成するモノマーの構造を含む種々の要因によって決まる。例えば、ポリチオフェンは、2.1eVのバンドギャップを実証し、ポリ(2−デシルチエノ[3,4−b]チオフェン)は、0.92eVのバンドギャップを実証し、そしてポリ(2−フェニルチエノ[3,4−b]チオフェン)は、0.85eVのバンドギャップを実証する。
【0004】
ポリマー主鎖に芳香族繰返し単位のみを有する導電性ポリマーは、概して、水に可溶ではない。従って、上記ポリマーは、有機溶媒を用いて処理される。種々の有機溶媒内の導電性ポリマーの本質的な溶解性を高めるために、いくつかの方法が用いられている。上記方法は、(1)所与の有機溶媒内のモノマーの側鎖の溶解性を高めるために、モノマーの誘導体を生成すること;(2)オリゴマーの共役された系及び柔軟なスペーサーを用いることによるポリマー主鎖を変性すること;及び(3)電荷補償ドーパントを用いることを含む。
【0005】
米国特許第5,300,575号明細書(’575特許)は、プラスチック成形用の帯電防止コーティングとして用いるために好適なポリチオフェンの分散液を開示する(全体を参照し、本明細書に援用する)。これらのポリチオフェンは、典型的にはピロールの酸化重合のために用いられる酸化剤の存在下で、そして/又はポリアニオンの存在下で酸素又は空気を用いて、相当するモノマーを重合することにより調製される。’575特許のポリチオフェンは、2.1eVのEgを有するポリ(チオフェン)と比較して、1.7eVの比較的低いEgを有する。
【0006】
’575特許のポリチオフェンは、ポリ(スチレンスルホン酸)の存在下で、3,4−エチレンジオキシチオフェンを重合することにより調製される。得られた線状ポリマーは、アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の両方を用いて精製され、そこでは、ポリ(スチレンスルホネート)は、電荷補償ドーパントとしてはたらく。得られたポリマーは、水中のコロイド分散液を生成する。というのは、ポリ(スチレンスルホネート)は水に可溶であり、そしてカチオン性ポリマー主鎖と強いイオン相互作用を実証するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水に簡易に分散することができ、そして有用な貯蔵寿命を提供する、溶液内で安定な、産業用途向けに有用なバンドギャップを示す本質的な導電性ポリマーが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、縮合された複素環式基を含む、新規なモノ−、オリゴ−及びポリマー化合物に関する。本発明は、光学素子、電気光学素子又は電子素子における、半導体又は電荷輸送材料としてのそれらの使用にさらに関する。本発明は、新規な化合物を含む、光学素子、電気光学素子又は電子素子にさらに関する。
【0009】
本発明は、複素環式縮合環モノマー単位の重合された単位から形成された合成物を含む。
本発明の実施形態の一つでは、本発明は、次の式P1を有する繰返し単位を有するモノマー、オリゴマー及びポリマー組成物を提供する:
【化1】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、X及びYの一方又は両方はSeであり、Rは置換基である)。
Rは、P1の環構造に結合することができる任意の置換基であることができる。Rは、水素又はその同位体、ヒドロキシル、アルキル、例えば、C1〜C20の第1級、第2級又は第3級アルキル基、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール(perfluororaryl)、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、あるいは1又は2以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキル又はフェニルを含むことができる。ある実施形態では、Rは、環構造を含むセレンの、分岐した、オリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造を形成することができるα反応点を含むことができる。
【0010】
ある実施形態では、Rは、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換又は複数置換されていてもよく、そして1又は2以上の隣接しないCH2基が、O及び/又はS原子がお互いに直接結合しないような様式において、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン(naphthalenic)、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5、又はFを含むことができる。R’及びR’’は、お互いに独立して、H、アリール又は1〜12個のC原子を有するアルキルである。上記ポリマーは、官能性末端基又は非官能性末端基から独立して選択される末端基を含むことができる。本発明に従う繰返し構造は、実質的に同一(ホモポリマーを生成する)であることができ、又は共重合に好適なモノマーを選択することによるコポリマーの性質を有することができる。上記繰返し単位は、当業界に公知の好適な様式において停止させることができ、そして官能性末端基又は非官能性末端基を含むことができる。さらに、P1を含む分散物及び溶液、並びにP1の高分子量の酸ドープ化組成物。実施形態の一つでは、上記組成物は、P1に従う高分子量の酸ドープ化ポリマーの水性分散液を含む。
【0011】
本発明に従うコポリマーは、次の式C1を有する繰返し単位を有する、モノマー、オリゴマー及びコポリマー化合物を含むことができる:
【化2】

(式中、X、Y及びRは、式P1において上述のように規定され、n及びmは、独立して、2以上の、n+mの合計を有する整数から選択され、そしてある場合には4超である)。
末端基は、独立して、官能性末端基又は非官能性末端基から選択される。実施形態の一つでは、nは1に等しくともよい。Rは、式P1に関して規定される基と同一である。上記コポリマーのn−単位下部構造及びm−単位下部構造は、ランダムコポリマー、グラフトコポリマー、ブロックコポリマー、及び樹状構造体(それらに限定されるものではない)を含む、上記コポリマーを作り上げる任意の様式において配置されうる。式C1構造内のMoは、チエノ[3,4−b]チオフェン、及び置換されたチオフェン(それらに限定されるものではない)を含む、式C1のn−単位下部構造と共重合性である、電気活性又は非電気活性モノマーであることができる。
【0012】
ポリマーの一つは、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)から成る。本発明のポリマーは、電気活性モノマーの重合された単位をさらに含むコポリマーを含むことができる。電気活性モノマーは、チオフェン、チエノ[3,4−b]チオフェン、チエノ[3,2−b]チオフェン、置換されたチオフェン、置換されたチエノ[3,4−b]チオフェン、置換されたチエノ[3,2−b]チオフェン、ジチエノ[3,4−b:3’,4’−d]チオフェン、セレノフェン、置換されたセレノフェン、ピロール、ビチオフェン、置換されたピロール、フェニレン、置換されたフェニレン、ナフタレン、置換されたナフタレン、ビフェニル及びテルフェニル、置換されたテルフェニル、フェニレンビニレン、置換されたフェニレンビニレン、フルオレン、置換されたフルオレンから成る群から選択されうる。電気活性モノマーに加えて、本発明に従うコポリマーは、非電気活性モノマーの重合された単位を含むことができる。
【0013】
本発明のポリマーは、セレノロ[2,3−c]チオフェンの重合された単位を含むことができ、そして末端基官能化されたセレノロ[2,3−c]チオフェンを含むオリゴマー、3,4−エチレンジオキシチオフェンの重合された単位、及びピロールの重合された単位を含むことができる。
本発明のポリマーは、一般的なp−ドーパント又はn−ドーパントでドープし、上記ポリマーの電気特性を改良することができる。
【0014】
本発明の導電性ポリマー、及びそれから生成させた組成物は、導電性ポリマーが有用である任意の用途向けに用いられうる。例えば、本発明に従う合成物は、エレクトロクロミック及びエレクトロルミネセントディスプレイ、電解コンデンサ、光学透明電極又は不透明電極、高感度電子機器(例えば、マイクロプロセッサ)のEMI遮蔽用の導電性ポリマーハウジング、赤外線、高周波及びマイクロ波吸収性遮蔽材、軟質導電性コネクタ、導電性ベアリング、ブラシ及び半導体光伝導体の接合点、電極、腐食性材料(例えば、スチール)用の光学的に透明な又は不透明腐食防止コーティング、帯電防止材料及び光学的に透明な又は不透明なコーティング(包装のため、又は電子部品を保護するため)、カーペット繊維、コンピュータルーム内の床用ワックス、ディスプレイ用の帯電防止仕上げ、自動車、航空機、及び建築物の太陽エネルギー制御用の窓のためのコーティング、エレクトロニクス用の静電気拡散包装及び取扱い容器等を含む様々な用途で利用することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態は、次の式M1のモノマー又はオリゴマー構造単位から生成されたポリチオフェン及びポリセレノフェンに関する:
【化3】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、X及びYの一方又は両方はSeであり、Rは置換基である。
Rは、P1の環構造に結合することができる任意の置換基であることができる)。
Rは、水素又はその同位体、ヒドロキシル、アルキル、例えば、C1〜C20の第1級、第2級又は第3級アルキル基、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、あるいは1又は2以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキル又はフェニルを含むことができる。
【0016】
ある実施形態では、Rは、環構造を含むセレンの、分岐した、オリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造を形成することができるα反応点を含むことができる。ある実施形態では、Rは、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換又は複数置換されていてもよく、そして1又は2以上の隣接しないCH2基が、O及び/又はS原子がお互いに直接結合しないような様式において、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5、又はFを含むことができる。R’及びR’’は、お互いに独立して、H、アリール又は1〜12個のC原子を有するアルキルである。W及びW’は、H、ハロゲン原子、例えば、F、Cl、Br、及びI、有機金属、例えば、MgCl、MgBr、MgI、Sn(R23(式中、R2は、C1〜6アルキル又はC1〜6アルキルエーテルである)、ボロン酸、ボロン酸エステル、ビニル単位、例えば、−CH=CHR3(式中、R3はH又はC1〜6アルキルである)、エーテル、すなわち、−OC1〜6アルキル、エステル、すなわち、−COOC1〜6アルキル、−S−COR4及び−COR4(式中、R4は、H又はC1〜6アルキルである)、−C≡CH、及び重合性芳香環、例えば、フェニル、ナフタレン、ピロール、及びチオフェンである。
【0017】
本発明の別の実施形態は、導電性ポリマー及びコポリマーを調製するための方法を含む。上述のモノマーの重合反応は、いくつかの反応機構を介して行われうる。本発明で用いるために好適な反応は、1)水性相/酸化剤重合、2)有機溶媒相/酸化剤重合、3)水性相/有機相/酸化剤重合、4)金属触媒重合、5)電気化学系重合、及び6)固相重合を含む。
【0018】
本発明の実施形態は、セレノロ[2,3−c]チオフェンの重合された単位を含むポリマーを生成するために十分な反応条件の下、水、ポリアニオン及び酸化剤の存在下で、セレノロ[2,3−c]チオフェンを反応させるステップを含む、セレノロ[2,3−c]チオフェンの重合された単位を含む。水性相反応内で用いるためのポリアニオンは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリホスホン酸、ポリリン酸、フッ素化スルホン酸ポリマー、例えば、NAFION(商標)、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸及びポリビニルスルホン酸から成る群から選択されうる。上記酸は、種々の物理特性及び電子特性を提供するために、分子量が変化しうる。さらに、上記スルホン酸のスルホン化水準はまた、分散物の物理的特性及び電子特性をさらに調整するために広く変化しうる。上記水性相及び有機相反応内で用いるための酸化剤は、Fe2(SO43、FeCl3、Fe(ClO43、H22、K2Cr27、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過マンガン酸カリウム、テトラフルオロほう酸銅、ヨウ素、空気及び酸素から成る群から選択されうる。
【0019】
本発明のポリマー組成物の優位性は、本発明の実施形態の一つにおいて、上記組成物を簡易に調製することができ、簡易に貯蔵することができ、そして有機溶媒から生成する分散物の使用に関連する環境問題を軽減又は排除することができることである。例えば、本発明の合成物の水性分散液は、従来法によりキャストし、エレクトロクロミックディスプレイ、光透過性電極及び帯電防止コーティングを含む非常に多くの用途における実用性を有する均一な薄膜を提供することができる。
【0020】
本発明の別の優位性は、重合反応が、有用なバンドギャップを含む、望ましい電気特性を有する本質的な導電性ポリマーを提供する、重合反応の際のモノマー成分の望ましいアライメントと共に行われる。
【0021】
本発明のさらに別の優位性は、本発明のポリマーが、光学素子、電気光学素子又は電子素子、ポリマー発光ダイオード(すなわち、PLED)、エレクトロルミネセンス素子、有機電界効果トランジスタ(すなわち、FET又はOFET)、フラットパネルディスプレイ用途(例えば、LCD)、ICタグ(radio frequency identification tag,すなわち、RFID)、プリンテッドエレクトロニクス、ウルトラコンデンサ、有機光電池(すなわち、OPV)、センサ、レーザー、小分子又はポリマー系記憶装置、電解コンデンサにおける、正孔注入材料、電荷輸送材料、半導体、及び/又は導体を含む種々の製品(これらに限定されるものではない)、又は水素貯蔵材料としての種々の製品に形成されうる。
【0022】
本発明の開示の他の特徴及び優位性は、例として、本発明の開示の原理を具体的に説明する添付の図面に関連して選択される、一定の実施形態の、下記さらに詳細な説明から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明のポリマーを含む、1又は2以上の層を含む、発光素子の概略図である。
【図2】図2は、本発明のポリマーを含む、1又は2以上の層を含む、光起電性素子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、縮合された複素環構造モノマーの重合された単位を含む、本質的な導電性ポリマーを含む合成物を含む。本明細書において、「ポリマー」は、複素環式の縮合されたモノマー構造繰返し単位の重合された単位を有する合成物を意味するものとする。本発明の実施形態に従うポリマーは、直鎖、分岐鎖又は架橋ポリマー構造であることができる。非常に多くの最終用途に望ましい種々の特性を示すこれらの合成物を調製することができる。
【0025】
詳細には、上記合成物は、次の式P1を有する繰返し単位を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー及びコポリマー化合物を含む:
【化4】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、X及びYの一方又は両方はSeであり、Rは置換基である)。
【0026】
Rは、P1の環構造に結合することができる任意の置換基であることができる。Rは、水素又はその同位体、ヒドロキシル、アルキル、例えば、C1〜C20の第1級、第2級又は第3級アルキル基、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、あるいは1又は2以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキル又はフェニルを含むことができる。ある実施形態では、Rは、環構造を含むセレンの、分岐した、オリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造を形成することができるα反応点を含むことができる。ある実施形態では、Rは、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換又は複数置換されていてもよく、そして1又は2以上の隣接しないCH2基が、O及び/又はS原子がお互いに直接結合しないような様式において、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5、又はFを含むことができる。R’及びR’’は、お互いに独立して、H、アリール又は1〜12個のC原子を有するアルキルである。さらに、P1を含む分散物及び溶液、並びにP1の高分子量の酸ドープ化組成物。実施形態の一つでは、上記組成物は、P1に従う高分子量の酸ドープ化ポリマーの水性分散液を含む。
【0027】
本明細書において、セレノロ[2,3−c]チオフェン−2,5−ジイル及びセレノロ[2,3−c]チオフェンは、次の構造:
【化5】

を意味するものとする。
【0028】
本明細書において、セレノロ[3,4−b]チオフェン−2,5−ジイル及びセレノロ[3,4−b]チオフェンは、次の構造:
【化6】

を意味するものとする。
【0029】
本明細書において、セレノロ[2,3−b]セレノフェン−2,5−ジイル及びセレノロ[2,3−b]セレノフェンは、次の構造:
【化7】

を意味するものとする。
【0030】
本明細書において、コポリマーは、複素環式の縮合されたモノマー構造繰返し単位の重合された単位と、当該複素環式の縮合されたモノマー構造と異なる重合されたモノマーとを有する合成物を意味するものとする。本発明の組成物は、上述のホモポリマー構造に制限されず、そしてヘテロポリマー(hetereopolymer)構造又はコポリマー構造を含むことができる。上記コポリマー構造は、交互コポリマー(例えば、交替するA及びB単位)、周期コポリマー(例えば、(A−B−A−B−B−A−A−A−A−B−B−B)n)、ランダムコポリマー(例えば、モノマーA及びBの無作為配列)、統計コポリマー(例えば、統計的法則に従うポリマー配列)及び/又はブロックコポリマー(例えば、共有結合により連結された2又は3以上のホモポリマーサブユニット)の組み合わせであることができる。上記コポリマーは、得られたコポリマーが導電率の特性を保持する条件下で、分岐又は連結されうる。
【0031】
本明細書において、用語「基材」は、本発明に従う合成物の堆積に好適な固形物を意味するものとする。上記基材は、ガラス、有機ポリマー、プラスチック、シリコン、無機物、半導体材料、セラミックス、金属、酸化物、合金等を含む材料から形成されうるがそれらに限定されるものではない。上記基材は、導電性又は絶縁性であることができる。
本明細書において、用語「電気活性モノマー」は、重合又は共重合することができ、導電性の特性、例えば、導電率、半導体性、エレクトロルミネッセンス、エレクトロクロミシティ(electrochromicity)又は光電池特性を有するポリマーを生ずるモノマーを意味するものとする。
【0032】
本明細書において、用語「非電気活性モノマー」は、重合又は共重合することができ、電気活性モノマーの定義の下で説明する特性を示さないモノマーを意味するものとする。
本明細書において、用語「バンドギャップ」は、伝導帯と称される電子エネルギー準位と、価電子帯と称される電子エネルギー準位との間のエネルギー差を意味するものとする。
【0033】
本明細書において、合成物に関して用いられるような、用語「置換された」は、上記合成物に加えられた電子豊富な基又は電子が不足している基を意味するものとする。有用な置換基には、H、ヒドロキシル、アリール、フェニル、シクロアルキル、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、ピリジル、シアノ、チオシアナト、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシル、スルホキシル、スルホニル、アミド、及びカルボニルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
本明細書において、用語「ヘテロアリール」は、環構造特有の環化合物を有する化合物、例えば、ピリジン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、又は他の同様の環構造(それらに限定されるものではない)を意味するものとする。さらに、上記ヘテロアリール基は、置換基それ自体が、追加の置換基(例えば、この定義の下に開示される置換基)を有することができる。
【0034】
本明細書において、用語「アリール」は、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン等の環構造の特徴(例えば、ベンゼンの6個の炭素環、又は他の芳香族誘導体の縮合された6個の炭素環)を有する化合物を意味するものとする。例えば、アリール基は、フェニル(例えば、C65)又はナフチル(例えば、C107)であることができる。さらに、上記アリール基は、置換基それ自体が、追加の置換基を有することができる(例えば、この定義の下に開示される置換基)。
【0035】
本明細書において、用語「アルキル」は、アルカンの式から水素1つを脱落させた、アルカンに由来することができるパラフィン系炭化水素基を意味する。例は、メチル(CH3−)、エチル(C25−)、プロピル(CH3CH2CH2−)、イソプロピル((CH32CH−)及びtert−ブチル((CH33C−)である。
本明細書において、用語「ハロゲン」は、周期表のVIIA族の陰性元素の1つ(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)を意味するものとする。
本明細書において、用語「パーフルオロアルキル」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を意味するものとする。
【0036】
本明細書において、用語「パーフルオロアリール」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアリール基を意味するものとする。
本明細書において、用語「スルホキシル」は、組成物RS(O)−(Rは、アルキル、アリール、シクロアルキル、パーフルオロアルキル又はパーフルオロアリール基である)の基を意味するものとする。例には、メチルスルホキシル、フェニルスルホキシル等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本明細書において、用語「スルホニル」は、組成物RS(O)2−(Rは、アルキル、アリール、シクロアルキル、パーフルオロアルキル、又はパーフルオロアリール基を意味する)の基を意味するものとする。例には、メチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本明細書において、用語「アシル」は、カルボキシル基の−ヒドロキシル−が別の置換基により置換され、構造R(C=O)−を形成する有機酸基を意味するものとする。例には、アセチル、ベンゾイル等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書において、用語「α位」は、公知の重合技法により重合を可能とする、結合、環位置、置換基又は他のポリマー成長位置を意味するものとする。
【0039】
本発明の実施形態の一つに有用なモノマーは、線状に成長する及び/又は分岐するポリマーを形成させるための3つのα位を含む、セレノロ[2,3−c]チオフェンを含む。
本発明のこの実施形態に従うポリマーは、次の式M2:
【化8】

において描写されるモノマーのα位(アスタリスクにより表される)のところで反応を実施することにより、セレノロ[2,3−c]チオフェンから成長させ、重合された単位を生成させることができる。
【0040】
M2ポリマーの反応性α位は、追加のM1モノマーと反応して、重合された単位のホモポリマーを生成することができ、あるいは1種又は2種以上の追加の電気活性モノマー又は非電気活性モノマーと反応して、コポリマー、例えば、ランダムコポリマー、グラフトコポリマー、ブロックコポリマー、及び樹状構造体を形成することができる。
【0041】
セレノロ[2,3−c]チオフェンモノマーに関して示され、そして上述される3つのα位構造体は、セレノロ[3,4−b]チオフェン及びセレノロ[3,4−b]セレノフェンに等しく適用できる。さらに、上記構造は、置換基及び/又はコポリマー構造を含むことができる。
【0042】
電気活性モノマーは、チオフェン、チエノ[3,4−b]チオフェン、チエノ[3,2−b]チオフェン、置換されたチオフェン、置換されたチエノ[3,4−b]チオフェン、置換されたチエノ[3,2−b]チオフェン、ジチエノ[3,4−b:3’,4’−d]チオフェン、セレノフェン、置換されたセレノフェン、ピロール、ビチオフェン、置換されたピロール、フェニレン、置換されたフェニレン、ナフタレン、置換されたナフタレン、ビフェニル及びテルフェニル、置換されたテルフェニル、フェニレンビニレン、置換されたフェニレンビニレン、フルオレン、置換されたフルオレンから成る群から選択されうる。電気活性モノマーに加えて、本発明に従うコポリマーは、非電気活性モノマーの重合された単位を含むことができる。
【0043】
本発明の実施形態の一つは、次の式C1を有する繰返し単位を有するコポリマーを含む:
【化9】

(式中、X、Y及びRは、式P1において上述のように規定され、n及びmは、独立して、2以上の、n+mの合計を有する整数から選択され、そしてある場合には4超である)。
末端基は、官能性末端基又は非官能性末端基から独立して選択される。実施形態の一つでは、nは1に等しくともよい。Rは、式P1に関して規定される基と同一である。上記コポリマーのn−単位下部構造及びm−単位下部構造は、ランダムコポリマー、グラフトコポリマー、ブロックコポリマー、及び樹状構造体(それらに限定されるものではない)を含む、上記コポリマーを作り上げる任意の様式において配置されうる。式C1構造内のMoは、セレノロ[3,4−b]チオフェン、セレノロ[2,3−c]チオフェン及びセレノロ[3,4−b]セレノフェン、並びに他のヘテロアリール又はアリール(それらに限定されるものではない)を含む、式C1のn−単位下部構造と共重合性である、電気活性又は非電気活性モノマーであることができる。
【0044】
コポリマーを生成するために、本発明のポリマーに導入することができる、式C1内のMoにおいて利用されうる、置換されたチエノ[3,4−b]チオフェンは、次の式により表される:
【化10】

(式中、R=C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基、フェニル、置換されたフェニル、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、カルボン酸、カルボン酸エステル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、及びスルホン酸)。
【0045】
コポリマーを生成するために、本発明のポリマー内に導入すべき、式C1のMoにおいて利用されることができる追加の置換されたチオフェンは、次の式により表される:
【化11】

(式中、Xは、S、O、Se、又はNHを表す)。
【0046】
コポリマーを生成するために、本発明のポリマー内に導入すべき、式C1内のMoにおいて利用される追加の置換されたチオフェンは、次の式により表される:
【化12】

(式中、R1及びR2は、独立して、H、C1〜C4アルキル基、1,2−シクロへキシレン基、フェニル置換されたフェニル等から成る群から選択される)。
【0047】
本発明に従う合成物はまた、末端基官能化され、そしてブロックコポリマーに導入されるか、又は当業界に公知の2官能性反応物質(一例として、ヒドロキシル末端基を、ジイソシアネート又は酸塩化物と結合させることができる)と結合されるかのどちらかの複素環式縮合環モノマーを含むオリゴマーを企図する。上記オリゴマーは、本発明の合成物の結合長を制御するために好都合な方法を提供する。オリゴマー構造体内の結合長は、種々の用途向けに所望の特性を達成するために変化しうる。
【0048】
本発明の合成物はまた、上記非電気活性モノマーの存在により、得られた合成物の電気活性特性に悪影響がないという条件で、セレノロ[2,3−c]チオフェンと重合することができる非電気活性モノマーの繰返し単位を含むことができる。
【0049】
本発明の合成物は、水、水混和性有機溶媒の混合物、又は有機溶媒内に、所望のポリマー(コポリマー及びオリゴマーを含む)を形成する又は溶解する分散液として利用することができる。本発明に従う合成物を含む分散物は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ロール焼付け工程、スピンコーティング、メニスカス及び浸漬コーティング、スプレーコーティング、はけ塗り、ドクターブレード適用、カーテン注入成形等を含む一般的な工程を経由して適用されうる。溶液又は分散物内に導入すべきポリマー(コポリマー及びオリゴマーを含む)の量は、合成物の分子量及び最終用途を含む種々の要因によって変化しうる。分散物に導入すべき合成物の実際の量は、過度の実験を行うことなく、簡易に決定される。
【0050】
分散されたフィルムを、溶媒を蒸発させて所望のフィルムを提供することを含む一般的な技法により乾燥することができる。乾燥は、室温、又は得られるフィルムの特性に悪影響を与えない温度において実施することができる。しかし、より速い乾燥速度を得るために、上記フィルムを、高温において(当該高温が、得られるフィルムの特性に悪影響を与えない条件において)、乾燥することができる。しかし、処理条件、並びに特定のポリマー又はオリゴマーにもよるが、より高い温度が望ましい場合がある。
【0051】
本発明の合成物を、帯電防止コーティング、導電性コーティング、エレクトロクロミック素子、光起電性素子、発光ダイオード、フラットパネルディスプレイ、感光性回路、印刷性回路、薄膜トランジスタ素子、バッテリー、電気スイッチ、コンデンサコーティング、防蝕コーティング、電磁遮へい、センサ、LED照明及び他のオプトエレクトロニクス(オプトエレクトロニクスは、光の物理学を電気と組み合わせる範囲の技術である)を含む、種々の一般的な用途で利用することができる。オプトエレクトロニクスは、電気信号を光信号に転換する(逆もまた同様である)ハードウェアデバイスを研究、設計及び製造することを包含する。電気から光学、又は光学から電気変換器として作動する素子が、光電子素子とみなされる。本発明に従う合成物の導電率は、必要であれば、これらの合成物を、当業界に公知の一般的な酸性ドーパント(p−ドーパント)と、塩基性ドーパント(n−ドーパント)でドープ化することにより、上述の用途の要件に適合するように簡易に変性することができる。
【0052】
好適なp−ドーパントには、鉱酸、例えば、HCl、HNO3、H2SO4、H3PO4、HBr、HI;有機スルホン酸、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、ラウリルスルホン酸、カンファースルホン酸、有機酸色素、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、高分子量スルホン酸、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)及びコポリマー;カルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、アジピン酸、アゼライン酸、シュウ酸、及び高分子量ポリカルボン酸、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メタクリル酸)、ホスホン酸、リン酸、フッ素化イオン交換ポリマー(例えば、NAFION(商標))、並びにこれらの酸を含むコポリマーが含まれる。一般的な混合されたドーパント、例えば、鉱酸/有機酸をまた、本発明の合成物に所望の電気活性特性を付与するために利用することができる。
【0053】
p−ドーピングを用いることができるが、本発明に従う合成物はまた、Na、K、Li及びCaを含む(それらに限定されるものではない)一般的な塩基性ドーパントでn−ドープ化することができる。他の好適なドーパントには、I2、(PF6-、(SbF6-、及びFeCl3が含まれる。
【0054】
本発明の合成物は、発光ダイオード(LED)の一定の部品の製造において用いるために非常に好適である。LEDは、基材、及びインジウムスズ酸化物(ITO)アノード、正孔注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及びカソードを含む非常に多くの層を有するのが典型的である。本発明のp−ドープ化合成物は、LEDのインジウムスズ酸化物陽極を置換する方向に特に好適である。本発明のp−ドープ化合成物はまた、LEDの正孔注入層として用いる方向性に特に好適である。本発明のドープ化されていない合成物を、LEDのホール輸送層、発光層及び/又は電子輸送層において利用することができる。本発明のp−ドープ化合成物は、有機光電池内のインジウムスズ酸化物電極を置換する方向性に特に好適である。本発明のp−ドープ化合成物はまた、正孔取り出し層n有機光電池として用いる方向性に特に好適である。本発明のドープ化されていない合成物を、ホール輸送層、有機光電池における光吸収層及び/又は電子輸送層において利用することができる。本発明のp−ドープ化合成物は、電解コンデンサ内で酸化マンガン電極を置換する方向に特に好適である。
【0055】
本発明の合成物の、他の電気活性材料、例えば、色素レーザー、他の電気活性ポリマー、ホール輸送材料又は電子輸送材料(電気活性有機金属化合物を含む)との混和材料がまた、本発明において実施される。
【0056】
本発明の合成物をまた、光透過性電極、透明導電性接着剤、ステルスコーティング、透明なEMF遮蔽材、タッチスクリーン、フラットスクリーンディスプレイ、モバイル用途向けの平面アンテナ、透明な蓄電板等において用いるための光学的に透明な導電性コーティングを調製するために用いることができる。本発明に従うポリマー向けの追加の用途には、光学素子、電気光学素子又は電子素子、ポリマー発光ダイオード(すなわち、PLED)、エレクトロルミネセンス素子、有機電界効果トランジスタ(すなわち、FET又はOFET)、フラットパネルディスプレイ用途(例えば、LCD)、ICタグ(すなわち、RFID)、プリンテッドエレクトロニクス、ウルトラコンデンサ、有機光電池(すなわち、OPV)、センサ、レーザー、小分子又はポリマー系記憶装置、電解コンデンサにおける正孔注入材料、電荷輸送材料、半導体、及び/又は導体、あるいは水素貯蔵材料が含まれうるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
光起電性素子は、LEDに対する特有の類似点を有し、そして本発明の組成物を用いて製造することが同様に可能である。LED素子において、光を生成させるための、素子の両端に配置される電圧の代わりに、光(例えば、太陽光)をインプットすることにより、素子の両端に電圧差が生じ、電流が生成する。LED及び光起電性素子の層は、類似するが、等価ではない。ホール輸送/電子輸送層と共に中間体層を含む集光性有機物又はポリマーが、アノード及びカソードの間に配置される。本発明の合成物を、アノード及び正孔注入層(ドープ化)として、又は集光性層(未ドープ)内において用いることができる。
【0058】
光電池は、電磁放射を、電気エネルギーに転換させる電気化学系素子を含む。理論により拘束されることを望まないが、上記転換は、励起子と称されうる、励起状態を生じさせる、光の吸収後に生じる荷電分離事象により達成されうる。典型的には、半導体領域、例えば、n−型半導体と完全に接触したp−型半導体が、2つの電極の間の1又は2以上の活性層内に挟まれ、そこでは、少なくとも1つの電極が十分に透明であり、光子の透過が可能になる。
【0059】
光電池は、少なくとも4つの部品(その2つは電極である)を含むことができる。部品の1つは、透明な第1の電極、例えば、プラスチック又はガラス基材上のインジウムスズ酸化物層である。この層は、電荷担体、概してアノードとして機能する。さらに、上記アノードは、周辺光を上記素子に導入させる。別の部品には、金属、例えば、カルシウム又はアルミニウムから典型的には製造される第2の電極が含まれる。この金属を、支持する表面、例えば、プラスチック又はガラスシート上にコーティングすることができる。第2の電極はまた、電流を運ぶ。これらの電極の間に、p−型半導体及びn−型半導体の不連続層又はその混合物を含む第3の部品及び第4の部品がある。p−型材料は、集光性部品又は層と称されうる。p−型材料は、特定のエネルギーの光子を吸収し、そして電子が励起されたエネルギー状態に促進される状態を発生させる。電子の促進により、基底状態のエネルギー準位における正電荷又は「正孔」が残る。当業界に公知であるように、これは、励起子形成として知られている。励起子は、p−型及びn−型材料の間の接合点(荷電分離又は励起子の解離を形成する)に移動する。電子及び「正孔」電荷は、電極に関する、それぞれのn−型及びp−型材料を介して伝導し、電池から電流の流れを生じさせる。p−型半導体は、本発明の実施形態に従う、オリゴマー、コポリマー又はポリマー材料、例えば、セレノロ[3,4−b]チオフェン、セレノロ[2,3−c]チオフェン及びセレノロ[3,4−b]セレノフェン含有オリゴマー、コポリマー及びポリマーを含む材料の混合物又はブレンド(それらに限定されるものではない)を含むことができる。n−型部品は、例えば、炭素フラーレン、二酸化チタン、カドミウムセレン、並びにn−型挙動を示すように具体的に設計されているポリマー及び小分子を含む、強い電子親和性を有する材料を含むことができる。
【0060】
記載される水性分散液を、有機発光ダイオード内の正孔注入層として用いることができる。これらの素子は、図1に示されるようなサンドイッチ図形において最も良好に表される。有機発光素子は、所望の結果を得るために種々の材料の大量の層を含むことができる。最も一般的には、素子は、基材(1)、アノード(2)、正孔注入層(4)、発光ポリマー(6)、及びカソード(8)から成る。中間層を、図1に描写される種々の層の間に置くことができる。さらに、正孔注入層(3)がまた、アノード(2)並びに正孔注入層(3)として機能することができ、さらに簡易化された素子構造がもたらされる。
【0061】
本発明に従う合成物は、当業者に公知の一般的な基材の両端に電圧をかけることにより、透明な基材を介した光の透過を許可又は防止するエレクトロクロミック素子を製造するために利用されうる。本発明に従う合成物に関する他の使用には、電磁遮へい及び調光(dimmable)ミラーが含まれる。
【0062】
本発明に従うドープ化合成物を、上記定義の下で列挙される基材に、水性若しくは有機溶媒系溶液又は分散液から適用される帯電防止コーティングとして利用することができる。上記帯電防止コーティングは、導電率及びフィルム特性、例えば、適切な基材への付着のバランスを得るために、他のポリマー含有エマルションとの混和材料を含むことができる。本発明の合成物はまた、帯電防止コーティング及び電気めっき工程、印刷性回路、感光性回路、半導体素子等を含む、製品に導電性を付与するために、種々の商業製品への添加剤又はコーティングとして利用されうる。
【0063】
本発明は、式P1の構造単位から製造されたポリマーを含む光起電性素子にさらに関する。この種の光起電性素子は、次の構造を含むことができる:
第1の層:
酸化物を含む電極、例えば、プラスチック又はガラス基材上のインジウムスズ酸化物層
第2の層:
ドープ化導電性ポリマー及びポリアニオン(すなわち、PEDOT/PSS)を含む水性分散液から形成された導電性フィルム
第3及び/又は第4の層:
【0064】
p−型半導体及びn−型半導体の不連続層又は混合物、ここでp−型材料は、次の繰返し構造P1を有する、モノマー、オリゴマー、コポリマー又はポリマー材料を含む:
【化13】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、X及びYの一方又は両方はSeであり、Rは置換基である)。Rは、P1の環構造に結合することができる任意の置換基であることができる。Rは、水素又はその同位体、ヒドロキシル、アルキル、例えば、C1〜C20の第1級、第2級又は第3級アルキル基、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、あるいは1又は2以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキル又はフェニルを含むことができる。ある実施形態では、Rは、環構造を含むセレンの、分岐した、オリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造を形成することができるα反応点を含むことができる。ある実施形態では、Rは、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換又は複数置換されていてもよく、そして1又は2以上の隣接しないCH2基が、O及び/又はS原子がお互いに直接結合しないような様式において、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5、又はFを含むことができる。R’及びR’’は、お互いに独立して、H、アリール又は1〜12個のC原子を有するアルキルである;及び
第4の層:
金属、例えば、カルシウム又はアルミニウムから製造された第2の電極。
【0065】
本発明は、式P1の構造単位から製造されたポリマーを含む光起電性素子にさらに関する。
この種の光起電性素子は、次の構造を含むことができる:
第1の層:
酸化物、例えば、プラスチック又はガラス基材上のインジウムスズ酸化物層を含む電極
第2の層:
セレノロ[2,3−c]チオフェン及びフッ素化スルホン酸ポリマーのドープ化された重合された単位を含む水性分散液から形成された導電性フィルム
第3及び/又は第4の層:
【0066】
p−型半導体及びn−型半導体の不連続層又は混合物、ここでp−型材料は、次の繰返し構造P1を有する、モノマー、オリゴマー、コポリマー又はポリマー材料を含む:
【化14】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、X及びYの一方又は両方はSeであり、Rは置換基である。Rは、P1の環構造に結合することができる任意の置換基であることができる)。
Rは、水素又はその同位体、ヒドロキシル、アルキル、例えば、C1〜C20の第1級、第2級又は第3級アルキル基、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、あるいは1又は2以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキル又はフェニルを含むことができる。
【0067】
ある実施形態では、Rは、環構造を含むセレンの、分岐した、オリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造を形成することができるα反応点を含むことができる。ある実施形態では、Rは、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換又は複数置換されていてもよく、そして1又は2以上の隣接しないCH2基が、O及び/又はS原子がお互いに直接結合しないような様式において、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5、又はFを含むことができる。R’及びR’’は、お互いに独立して、H、アリール又は1〜12個のC原子を有するアルキルである;及び
第4の層:
金属、例えば、カルシウム又はアルミニウムから製造された第2の電極。
【0068】
本発明は、式P1の構造単位から製造されたポリマーを含む光起電性素子にさらに関する。
この種の光起電性素子は、次の構造を含むことができる:
第1の層:
酸化物、例えば、プラスチック又はガラス基材上のインジウムスズ酸化物層を含む電極
第2の層:
セレノロ[2,3−c]チオフェン及びフッ素化スルホン酸ポリマーのドープ化された重合された単位を含む水性分散液から形成された導電性フィルム
第3及び/又は第4の層:
p−型半導体及びn−型半導体の不連続混合物、ここでp−型材料はポリチオフェン及び/又はポリセレノフェンであり、そしてn−型半導体は、フラーレン及び/又は小分子及び/又はオリゴマーの/ポリマーn−型半導体である
第4の層:
金属、例えば、カルシウム又はアルミニウムから製造された第2の電極。
【0069】
本発明のある実施形態は、透明な/導電性材料として合成物の使用を含むが、本発明の合成物に基づく導電性不透明コーティングは、透明性が重要ではないが導電性が重要である特定用途において実用性を有する。一定の用途、例えば、帯電防止コーティング、並びに導電性塗料用途では、顔料着色が要求される場合があり、透明性のロスが生じうる。これらの材料を用いる印刷回路はまた、透明性を要求しないのが一般的である。
【0070】
本発明は、電解質コンデンサにおける固体電解質としての、一定のポリチオフェン及びポリセレノフェン(例えば、式P1)の使用と、固体電解質としてこれらのポリチオフェン及びポリセレノフェンを含む電解質コンデンサとに関する。特に、本発明の一定の実施形態は、式P1を有する材料を含むセレノロ[3,4−b]チオフェン、セレノロ[2,3−c]チオフェン及びセレノロ[2,3−c]セレノフェン(これらに限定されるものではない)を含む、オリゴマー、コポリマー及びポリマーの水性分散液を含む。
【0071】
本発明は、式P1の構造単位から製造されたポリマーを、固体電解質として含む、電解質コンデンサにさらに関する。
この種の固体電解質コンデンサは、次の構造を有する:
第1の層:
酸化性金属、例えば、アルミニウム、ニオブ又はタンタルの箔;
第2の層:
上記金属の酸化物層;
第3の層:
【0072】
次の繰返し構造P1を有する、導電性の、モノマー、オリゴマー、コポリマー又はポリマー材料:
【化15】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、X及びYの一方又は両方はSeであり、Rは置換基である)。Rは、P1の環構造に結合することができる任意の置換基であることができる。Rは、水素又はその同位体、ヒドロキシル、アルキル、例えば、C1〜C20の第1級、第2級又は第3級アルキル基、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、あるいは1又は2以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキル又はフェニルを含むことができる。ある実施形態では、Rは、環構造を含むセレンの、分岐した、オリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造を形成することができるα反応点を含むことができる。ある実施形態では、Rは、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換又は複数置換されていてもよく、そして1又は2以上の隣接しないCH2基が、O及び/又はS原子がお互いに直接結合しないような様式において、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5、又はFを含むことができる。R’及びR’’は、お互いに独立して、H、アリール又は1〜12個のC原子を有するアルキルである;及び、必要に応じて,
第4の層:
接触、例えば、電流の良好な導体である物質、例えば、導電性銀、銅、又はカーボンブラックで満たされた塗料。
【0073】
上記コンデンサは、式P1のポリマーに関して記載されてきたが、コポリマーをまた用いることができる。本発明は、電解質コンデンサ用の固体電解質として特に好適である特定のチオフェンの酸化重合により得られるポリチオフェンを含む。これらの特定のチオフェンは、それらの導電性に影響を与えることなく、特に簡素な様式において、付着して、電解質コンデンサ内のアノードとして用いられる金属箔に適用されることができ、そして良好な電気特性、例えば、高い実質的な振動数に独立した容量により特徴付けられ、さらに低い誘電損失及び低い漏れ電流により特徴付けられるコンデンサを与える。
【0074】
本発明に従って用いられるべきポリチオフェン及びポリセレノフェンを、酸化物コーティングでコーティングされ、そしてアノードとして用いられる金属箔の一面に直接形成することができる。ある場合では、これらの箔は、アルミニウム、ニオブ又はタンタルから製造される。上記ポリチオフェン及びポリセレノフェンは、必要に応じて溶液状の、モノマー、例えば、セレノロ[2,3−c]チオフェン−2,5−ジイル、セレノロ[3,4−b]チオフェン−2,5−ジイル、又はセレノロ[3,4−b]−セレノフェン−2,5−ジイルを含む化合物及び酸化剤を、分離して、順々に、又は好適な場合には、酸化物コーティングで被覆された金属箔の一面に一緒に適用し、そして用いられる酸化剤の活性にもよるが、コーティングを加温することにより、酸化重合を完了することによる、本発明のモノマーの酸化重合により製造される。あるいは、本発明に従うポリマーを含む分散物を、金属酸化物表面に直接コーティングして、導電性層を形成することができる。
【0075】
添加剤、例えば、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、マンニトール、プロピレン1,3−グリコール、ブタン1,4−グリコール、N−メチルピロリドン、ソルビトール、グリセロール、プロピレンカーボネート及び他の適切な高沸点の有機物を、本発明の合成物の分散物に添加し、導電性を改良することができる。
追加の添加剤は、特に、低沸点及び高沸点アルコール、例えば、少なくとも1種のエタノール、イソプロパノール、ブタノールを含むことができる。これらの添加剤は、最大約90体積%の分散物を含むことができる。これらの添加剤の利用により、典型的には、良好な皮膜形成及び改良された電子特性が可能になる。これらの添加剤はまた、比較的乏しい水溶性、又は水不溶性の添加剤、例えば、界面活性剤(例えば、Surfynol(商標)界面活性剤)及びフッ素化界面活性剤を導入するための媒体として作用することができる。
【0076】
追加の添加剤には、導電性フィラー、例えば、微粒子銅、銀、ニッケル、アルミニウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等が含まれる。非導電性フィラー、例えば、タルク、マイカ、ウォラストナイト、シリカ、粘土、TiO2、染料、顔料等をまた、上記分散物に添加し、特異性、例えば、高い弾性率、表面硬度、表面カラー等を促進することができる。
【0077】
上記材料の最終用途にもよるが、添加することができる追加の水溶性又は分散性材料の例には、ポリマー、染料、コーティング助剤、カーボンナノチューブ、ナノワイヤー、界面活性剤(例えば、フルオロ界面活性剤、例えば、構造RfCH2CH2O(CH2CH2O)xH(式中、Rf=F(CF2CF2y、x=0〜約15、そしてy=1〜約7である)を有するZonyl(商標)FSOシリーズの非イオン性フルオロ界面活性剤(例えば、DuPontから市販されている)、アセチレンジオール系界面活性剤、例えば、Dynol(商標)及びSurfynol(商標)シリーズ(例えば、Air Products and Chemicals,Incから市販されている)、有機及び無機導電性インク及びペースト、電荷輸送材料、架橋剤、並びにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。上記材料は、簡素な分子又はポリマーであることができる。好適な他の水溶性又は分散性ポリマーの例には、少なくとも1種の導電性ポリマー、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアミン、ポリピロール、ポリアセチレン、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0078】
本発明の合成物の分散物はまた、特定用途において要求される場合には、酸化防止剤、UV安定化剤及び界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、安定性、表面張力、及び表面湿潤性を制御するために分散物に添加されるのが典型的である。界面活性剤は、アセチレンジオールを含むことができる。粘度調整剤(例えば、会合性増粘剤)をまた、上記分散物に添加して、特定の最終用途に関する粘度を調整することができる。
【0079】
本発明に従う合成物を、種々の方法により調製することができる。本発明に従う合成物を、水性相重合方法を利用して調製することができ、そこでは、セレノロ[2,3−c]チオフェン−2,5−ジイル、セレノロ[3,4−b]チオフェン−2,5−ジイル、又はセレノロ[3,4−b]−セレノフェン−2,5−ジイル含有化合物、ポリアニオン及び酸化剤が、ポリ(セレノロ[3,4−b]チオフェン)を生成するために十分な反応条件の下で、水の存在下で反応される。別の実施形態では、セレノロ[2,3−c]チオフェン、ポリアニオン及び酸化剤が、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)を生成するために十分な反応条件の下、水の存在下で反応される。重合を実施するための温度は重要ではないが、重合の速度に影響を与える場合がある。
【0080】
本発明の別の実施形態は、次の式M1の構造単位から生成されたポリチオフェン及びポリセレノフェンの使用に関する:
【化16】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、X及びYの一方又は両方はSeであり、Rは置換基である)。
Rは、P1の環構造に結合することができる任意の置換基であることができる。
Rは、水素又はその同位体、ヒドロキシル、アルキル、例えば、C1〜C20の第1級、第2級又は第3級アルキル基、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、あるいは1又は2以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキル又はフェニルを含むことができる。
【0081】
ある実施形態では、Rは、環構造を含むセレンの、分岐した、オリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造を形成することができるα反応点を含むことができる。ある実施形態では、Rは、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換又は複数置換されていてもよく、そして1又は2以上の隣接しないCH2基が、O及び/又はS原子がお互いに直接結合しないような様式において、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5、又はFを含むことができる。R’及びR’’は、お互いに独立して、H、アリール又は1〜12個のC原子を有するアルキルである。W及びW’は、H、ハロゲン原子、例えば、F、Cl、Br、及びI、有機金属、例えば、MgCl、MgBr、MgI、Sn(R23(式中、R2は、C1〜6アルキル又はC1〜6アルキルエーテルである)、ボロン酸、ボロン酸エステル、ビニル単位、例えば、−CH=CHR3(式中、R3はH又はC1〜6アルキルである)、エーテル、すなわち、−OC1〜6アルキル、エステル、すなわち、−COOC1〜6アルキル、−S−COR4及び−COR4(式中、R4は、H又はC1〜6アルキルである)、−C≡CH、及び重合性芳香環、例えば、フェニル、ナフタレン、ピロール、及びチオフェンである。置換された特許請求の範囲の組成物の誘導体を、第2級又は第3級官能基を付加する前、又は付加後に生成させることができる。
【0082】
ホモポリマー及びコポリマーを生成するために好適なモノマーは、W及びW’がHであり、そして次の式M3により表されるものである:
【化17】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、Rは、式M1に関して上述の基である)。
【0083】
本発明に従うポリマーは、次の式P1を有する繰返し単位を有するホモポリマーを含む:
【化18】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、X及びYの一方又は両方はSeであり、Rは置換基である)。
【0084】
Rは、P1の環構造に結合することができる任意の置換基であることができる。Rは、水素又はその同位体、ヒドロキシル、アルキル、例えば、C1〜C20の第1級、第2級又は第3級アルキル基、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、あるいは1又は2以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換されたアルキル又はフェニルを含むことができる。ある実施形態では、Rは、環構造を含むセレンの、分岐した、オリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造を形成することができるα反応点を含むことができる。ある実施形態では、Rは、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換又は複数置換されていてもよく、そして1又は2以上の隣接しないCH2基が、O及び/又はS原子がお互いに直接結合しないような様式において、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5、又はFを含むことができる。R’及びR’’は、お互いに独立して、H、アリール又は1〜12個のC原子を有するアルキルである。本発明に従う繰返し構造は、実質的に同一であり、ホモポリマーを形成することができ、又は、各単位に関して独立して選択されたRを有し、コポリマー化合物を生ずることができる。繰返し単位を、当業界に公知の好適な様式において停止させることができ、そして官能性末端基又は非官能性末端基を含むことができる。
【0085】
さらに、本発明は、分岐した又は架橋した、オリゴマー、ポリマー及びコポリマーを含む。例えば、P1及びM1に記載されるRは、α位を含むことができ、そこでは、分岐又は架橋が生じうる。
次の構造は、本発明の実施形態に従う分岐ポリマー材料を示す:
【化19】

(式中、X、Y及びRは、式P1において、上述のように規定される)。
本発明は、上記構造に限定されず、そして置換基を含むオリゴマー及びコポリマー構造を含むことができる。
【0086】
モノマーの共重合された単位を含んで成る導電性オリゴマー及びポリマーは、本発明の別の態様であり、そして次の式P2により表すことができる:
【化20】

(式中、X、Y及びRは、式P1において上述のように規定され、そしてnは、整数である)。
A、B及びDは、お互いに独立し、そして複数の存在のケースにおいて、お互いに独立して、所望により、1又は2以上の基Rで所望により置換されている−CZ1=CZ2−、−C≡C−、又はアリーレン若しくはヘテロアリーレン基である。Z1及びZ2は、お互いに独立して、H、F、Cl又はCNである。a、b、d、eは、お互いに独立して、0、1、2又は3である整数を含む整数である。
【0087】
式P2のコポリマーは、当業界に公知の任意の方法で停止させることができ、そして公知の重合末端基を含むことができる。
【0088】
本発明の他の実施形態に従うコポリマー構造には、次の構造が含まれる:
【化21】

【0089】
【化22】

【0090】
【化23】

【0091】
本発明の他の実施形態に従う追加のコポリマー構造は、次の構造を含む:
【化24】

【0092】
【化25】

【0093】
【化26】

【0094】
本発明の他の実施形態に従う追加のコポリマー構造は、次の構造を含む:
【化27】

【0095】
【化28】

【0096】
【化29】

【0097】
上述のモノマー又はオリゴマー化合物の重合は、いくつかの反応機構の一つを介して行われうる。可能性のある反応機構は、1)水性相/酸化剤重合、2)有機溶媒相/酸化剤重合、3)水性相/有機相/酸化剤重合、4)金属触媒重合、5)電気化学系重合及び6)固相重合を含む。
【0098】
水性相重合向けの典型的な反応条件には、0℃〜約100℃にわたる温度が含まれる。重合は、所望の重合度を与えるように反応が完了するまでの時間続けられる。重合度は、本発明の不可欠な要素ではないが、最終用途によって変化すべきである。所望の重合度は、過度の実験を行うことなく当業者により簡易に決定されるように、最終用途によって決まるべきである。重合時間は、数分〜約48時間の範囲にわたることができ、そして重合に利用される反応器のサイズ、重合温度及び重合工程に利用される酸化剤を含む要因の数によって決まる。
【0099】
水性重合方法に用いられるべきポリアニオン及び酸化剤の量は、広く変化することができ、そして過度の実験を行うことなく所望の重合に関して決定されうる。例えば、セレノロ[3,4−b]チオフェンモノマーの、所望のポリアニオンに対する重量比は、典型的には0.001〜50、そしてある場合には0.05〜1.0の範囲である。セレノロ[3,4−b]チオフェンモノマーの、所望の酸化剤に対するモル比は、典型的には0.01〜12、そしてある場合には0.1〜8.0の範囲にわたる。別の例では、セレノロ[2,3−c]チオフェンモノマーの、所望のポリアニオンに対する重量比は、典型的には0.001〜50、そしてある場合には0.05〜1.0の範囲にわたる。セレノロ[2,3−c]チオフェンモノマーの、所望の酸化剤に対するモル比は、典型的には0.01〜12の範囲にわたり、ある場合では0.1〜8.0の範囲にわたることができる。
【0100】
上記ポリアニオンは、6以下のpKaの酸強度(それらに限定されるものではない)を含むコロイドを生成するための十分な酸強度を有する高分子量酸を含むことができる。好適なポリアニオンには、ポリホスホン酸及びポリリン酸、ポリカルボン酸、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、及びポリマースルホン酸、例えば、ポリスチレンスルホン酸及びポリビニルスルホン酸、混合された多価酸、例えば、ポリスチレンスルホン酸−co−マレイン酸、及びコロイドを生成する高分子量酸、例えば、フッ素化スルホン酸ポリマー及びNAFION(商標)のアニオンが含まれる。ポリカルボン酸及びポリスルホン酸がまた、ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸の、他のモノマー、例えば、アクリレート及びスチレンとのコポリマーであることができる。酸を供給する上記ポリアニオンの分子量は、1,000〜500,000、ある場合には2000〜500,000の範囲にわたることができ、そして必要に応じて約70,000であることができる。上記ポリアニオンが由来する酸は市販されるか、又は公知の方法から製造することができる。さらに、当量(EW)として表現されるのが通常である酸含有率は、所望の電子の特性を得るために有意に変化しうる。
【0101】
本発明において用いるために好適なポリアニオンの1つは、フッ素化スルホン酸ポリマーの水性分散液、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Del.)からNAFION(商標)分散物として市販されるフッ素化スルホン酸ポリマーを含む。
好適なFSAポリマーの例には、次の構造:
【化30】

を有するコポリマーが含まれる。
上記コポリマーは、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサ−7−オクテン−1−スルホン酸)(m=1である)を含む。
【0102】
本発明の別の実施形態は、構造P1に従う組成物、及びP1の高分子量の酸ドープ化組成物を含む、水性及び非水性溶媒の分散液及び溶液を含む。高分子量酸ドープ化組成物は、繰返し単位P1を含み、そして高分子量酸、例えば、フッ素化スルホン酸ポリマー又はポリ(スチレンスルホン酸)(それらに限定されるものではない)の存在下で、モノマー又はオリゴマーの反応から生じる、重合された反応生成物を有する組成物である。上記高分子量酸ドープ化組成物は、P1に従うモノマー、オリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造に、共有結合的に又はイオン的に結合された、スルホン酸ポリマー又はオリゴマー基、反応生成物あるいは化合物を含むことができる。実施形態の一つでは、上記組成物は、P1に従う高分子量の酸ドープ化ポリマーの水性分散液を含む。
【0103】
本発明と共に用いるために好適な酸化剤は、ピロールの酸化重合のために好適であることが知られている酸化剤を含む。これらの酸化剤は、例えば、J.Am.Chem.Soc.85,484(1963)に記載されている。取扱いが容易である安価な酸化剤は、例えば、鉄(III)塩、例えば、それらに限定されるものではないが、Fe2(SO43、FeCl3、Fe(ClO43、及び有機残差を含む有機酸及び無機酸の鉄(III)塩、H22、2Cr27、アルカリパースルフェート又は過硫酸アンモニウム、アルカリペルボラート、過マンガン酸カリウム、並びに銅塩、例えば、テトラフルオロほう酸銅である。さらにヨウ素、空気及び酸素が、酸化剤として有利に用いられうる。有機残差を含む有機酸及び無機酸の過硫酸塩及び鉄(III)塩が有用である。というのは、それらは、腐食性を有しないからである。
【0104】
有機酸の鉄(III)塩に関して言及されうる例は、C1〜30アルキルスルホン酸、例えば、メタン又はドデカンスルホン酸;脂肪族のC1〜20カルボン酸、例えば、2−エチルヘキシルカルボン酸、脂肪族パーフルオロカルボン酸、例えば、トリフルオロ酢酸及びパーフルオロオクタン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、及び芳香族の、所望によりC1〜20−アルキルで置換されたスルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩、並びに上述の有機酸のFe(III)塩の混合物である。有機残差を含む無機酸の鉄(III)塩の例は、C1〜20アルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、例えば、ラウリルスルフェートのFe(III)塩である。これらの有機酸のFe(III)塩の混合物をまた用いることができる。
【0105】
本発明の実施形態に従うモノマーの酸化重合のために、理論上は、モノマー1モル当たり、2〜2,5当量の酸化剤が要求される(例えば、J.Polym.Sc.Part A Polymer Chemistry Vol.26,S,1287(1988)を参照せよ)。しかし、実際には、上記酸化剤は、一定の過剰量、例えば、モノマー1モル当たり、0.1〜2当量の過剰量において適用される。
【0106】
有機基を含む有機酸及び無機酸の過硫酸塩及び鉄(III)塩の使用は、それらが腐食作用を有せず、そして特に、それらが用いられると、式M1のモノマーの酸化がゆっくり進行し、モノマー及び酸化剤を、溶液状又は印刷ペーストから、金属箔上に併せて適用することができる顕著な適用優位性を有する。この実施形態では、溶液又はペーストの適用の後、コーティングされた金属箔を加温することにより、酸化を促進することができる。
【0107】
他の上述の酸化剤、例えば、FeCl3、H22又は過ホウ酸塩が用いられる場合、酸化重合が直ちに進行するので、酸化剤及びモノマーの、コーティングすべき基剤への別個の適用が必要となる。
有機基を含む無機酸の鉄(III)塩に関して上述されうる例は、C1〜C20−アルカノールを有する硫酸のモノエステルの鉄(III)塩、例えば、ラウリル硫酸のFe(III)塩である。
【0108】
ホモポリマーを含むポリマーは、次の水性相反応により生成されうる。
【化31】

【0109】
本発明に従うコポリマーは、次の反応により生成されうる。
【化32】

【0110】
上述の共重合反応は、共重合剤として置換されたチオフェンを示しているが、本発明に従う反応において、重合させるために、任意の化合物(すなわち、任意のアリール、ヘテロアリール)を用いることができる。
【0111】
有機溶媒相における上述のモノマーの酸化重合は、用いられる酸化剤及び所望の反応時間によって変化するが、約20℃〜約250℃の温度、ある場合には、20℃〜200℃の温度において実施されるのが一般的である。
ホモポリマーを含むポリマーは、次の有機相反応により生成しうる。
【化33】

【0112】
別の実施形態では、ホモポリマーを含むポリマーは、次の水性相反応により生成しうる。
【化34】

【0113】
本発明に従うコポリマーは、次の反応により生成しうる。
【化35】

【0114】
上述の共重合反応は、共重合剤として、置換されたチオフェンを示しているが、本発明に従う反応において、重合させるために、任意の化合物(すなわち、任意のアリール、ヘテロアリール)を用いることができる。
【0115】
有機溶媒相における上述のモノマーの酸化重合は、用いられる酸化剤及び所望の反応時間によって変化するが、約20℃〜約250℃の温度、ある場合には、20℃〜200℃の温度において実施されるのが一般的である。
ホモポリマーを含むポリマーは、次の有機相反応により生成しうる。
【化36】

【0116】
水性相内と同様に、追加のモノマー構造体を供給することにより、コポリマーをまた生成させることができる。式M1のモノマー及び/又は酸化剤と用いるために好適な溶媒は、特に、反応条件下で不活性な次の有機溶媒である:脂肪族アルコール、例えば、メタノール、エタノール及びi−プロパノール;脂肪族ケトン、例えば、アセトン及びメチルエチルケトン;脂肪族カルボン酸エステル、例えば、エチルアセテート及びブチルアセテート;芳香族炭化水素、例えば、トルエン及びキシレン;脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサン;塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタン及びジクロロエタン;脂肪族ニトリル、例えば、アセトニトリル;脂肪族スルホキシド及びスルホン、例えば、ジメチルスルホキシド及びスルホラン;脂肪族カルボキサミド、例えば、メチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド;脂肪族及びアルアリファティック(araliphatic)エーテル、例えば、ジエチルエーテル及びアニソール。さらに、水、又は水の、上述の有機溶媒との混合物をまた、溶媒として用いることができる。
【0117】
有機相酸化反応において用いるために好適な酸化剤は、上述の水性相酸化反応において用いるために好適な同一の酸化剤を含む。
上記モノマー又はオリゴマー及び上記酸化剤が分離して適用される場合、基剤を、上記酸化剤の溶液でコーティングし、続いて上記モノマーの溶液でコーティングすることができる。好適な場合には、上記モノマー及び酸化剤を、基材上に共に適用し、上記基材を1つの溶液(すなわち、モノマー及び酸化剤を含む溶液)でコーティングする。モノマーの一部が、この連結適用の際に蒸発するので、上記酸化剤を、モノマーの予想される損失に従って減少させた量において、この方法の手順において上記溶液に添加する。
【0118】
さらに、上記溶液は、有機溶媒に可溶である有機バインダー、例えば、ポリ(ビニルアセテート)、ポリカーボネート、ポリ(ビニルブチレート)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ(塩化ビニル)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエーテル、ポリエステル、シリコーン、及びピロール/アクリレート、ビニルアセテート/アクリレート及びエチレン/ビニルアセテートコポリマー(それぞれは、有機溶媒に可溶である)を含むことができる。また、増粘剤として、水溶性バインダー、例えば、ポリビニルアルコールを用いることが可能である。
【0119】
どのW及びW’基が存在するかによって、重合の性質及び所望のポリマーが制御されうる。炭素−炭素結合形成反応を、次の公知の方法により完了することができる。本発明のモノマーと共に用いるために好適な公知の方法には、Suzuki反応、Yamamoto反応、Heck反応、Stille反応、Sonogashira−Hagihara反応、Kumada−Corriu反応、Riecke反応、及びMcCullogh反応が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
式M1のモノマーは、それら自体を、公開文献に記載されるように金属触媒化重合に提供する。例えば、Heck,Chem.Rev.2000,100,3009−3066;Stille,Chem.Rev.2003,103,169−196;Suzuki,Chem.Rev.1995,95,2457−2483;Sonogashira−Hagihara,Chem.Rev.2003,103,1979−2017;及びKumada−Corriu,Chem.Rev.2002,102,1359−1469を参照せよ(参照により、本明細書に組み入れる)。条件は、W及びW’置換基の性質によって大きく変化しうる。
【0121】
オリゴマー及びポリマー、例えば、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)を調製するための別の方法は、電気化学系方法を含み、そこでは、セレノロ[2,3−c]チオフェンが、3電極配置を用いた電気化学セル内で重合される。好適な3電極配置には、白金、金及びガラス状炭素ボタン作用電極、白金フラッグ対電極及びAg/Ag+非水性基準電極から成る群から選択されるボタン作用電極が含まれる。好適な電解質は、テトラブチルアンモニウムパークロレート/アセトニトリル、リチウムトリフラート/アセトニトリル及びヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム/アセトニトリルから成る群から選択される。
【0122】
ホモポリマーを含むポリマーは、次の電気化学反応により生成されうる。
【化37】

【0123】
セレノロ[2,3−c]チオフェンは、約1.1Vのピークのところで、電気化学酸化を受け、作用電極の表面にポリマー、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)を供給することができる。
本発明の合成物を製造するための電気化学方法を実施するために、一般的な電解質セルを利用することができる。本発明の合成物を製造するための作用電極は、白金電極を含むことができ、そして効果的な電解質は、ヘキサフルオロホスフェートを含む。
【0124】
電極表面に電気析出した導電性ポリマーの還元及び酸化に相当するより少ないレドックスプロセスに関する電流密度の増加により示されるように、重合は明らかである。
セレノロ[2,3−c]チオフェンの酸化重合は、上記ポリアニオンとしてポリ(スチレンスルホン酸)又はNAFION(商標)を、そして化学系酸化剤として過硫酸アンモニウム及び/又は硫酸鉄(III)を利用する水性溶液内で実施されうる。
上述の重合が、単独重合に関して存在するが、セレノロ[2,3−c]チオフェンを、別のモノマー、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン又はピロールと共重合させることもまた可能である。
【実施例】
【0125】
次の実例は、上記合成物をどのように製造し、そして用いるかをさらに記載するために提供され、そして特許請求の範囲に記載される範囲を制限することは意図されない。特に明記しない限り、例中の部及びパーセンテージは、重量により与えられる。
【0126】
[例1]
[ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)の水中合成]
10mLの脱イオン水内の50mgのセレノロ[2,3−c]チオフェン及び830mgの18%ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液を、25mLの1首フラスコに添加した。混合物を、600rpmで攪拌した。113.0mg(0.48ミリモル)の(NH4228及び2mgのFe2(SO43を、反応フラスコに添加した。酸化重合を1時間超実施した。重合後、水性溶液を、イオン交換カラム(Amberlite IR−120及びMP62)で精製して、ディープブラックの水性ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)分散液を得た。導電性の表面を得るために、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)混合物を1,000rpmでガラス基材にスピンコーティングすることにより、透明なフィルムを調製した。
【0127】
[例2]
[ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)の水中合成]
45mLの脱イオン水内の50mgのセレノロ[2,3−c]チオフェン及び5.55gの18%ポリ(スチレンスルホン酸)水溶液を、100mLの1−首フラスコに添加した。混合物を、1200rpmで攪拌した。7mLの脱イオン水に溶解された300mg(1.98ミリモル)のFe2(SO43を、上記反応フラスコに添加した。酸化重合を1時間超実施した。重合後、水性溶液を、イオン交換カラムで精製して、ディープブラックの水性ポリ(1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−オン)/ポリ(スチレンスルホン酸)分散物を得た。導電性の表面を得るために、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)混合物を1,000rpmでガラス基材にスピンコーティングすることにより、透明なフィルムを調製した。
【0128】
[例3]
[ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)の水中合成]
42mLの脱イオン水内の、50mgの1セレノロ[2,3−c]チオフェン及び8.4gの12%NAFION(商標)パーフルオロ化イオン交換樹脂水分散物を、100mLの1−首フラスコに添加した。混合物を、1200rpmで攪拌した。7mLの脱イオン水に溶解された300mg(1.98ミリモル)のFe2(SO43を、上記反応フラスコに添加した。酸化重合を1時間超実施した。重合後、水性溶液を、イオン交換カラムで精製して、約2.0のpHを示す、ディープブラックの水性ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)/NAFION(商標)分散物を得た。導電性の表面を得るために、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)/NAFION(商標)混合物を、1,000rpmでガラス基材にスピンコーティングすることにより、透明なフィルムを調製した。
【0129】
[例4]
[ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)の水中合成]
42mLの脱イオン水内の、50mgのセレノロ[2,3−c]チオフェン及び8.4gの12%NAFION(商標)パーフルオロ化イオン交換樹脂水分散物を、100mLの1−首フラスコに添加した。混合物を、1200rpmで攪拌した。113.0mg(0.48ミリモル)の(NH4228及び2mgのFe2(SO43を、上記反応フラスコに添加した。酸化重合を1時間超実施した。重合後、水性溶液を、イオン交換カラム(Amberlite IR−120及びMP62)で精製して、ディープブラックの水性ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)/NAFION(商標)分散物を得た。導電性の表面を得るために、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)/NAFION(商標)混合物を、1,000rpmでガラス基材にスピンコーティングすることにより、透明なフィルムを調製した。
【0130】
[例5]
[ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)の溶媒(in−situ)合成]
280mgのセレノロ[2,3−c]チオフェンを、15mLの無水n−ブタノールに添加した。5mLの無水n−ブタノールに溶解された、2.25g(3.3ミリモル)のp−トルエンスルホン酸鉄(III)六水和物を、上記モノマー溶液に添加して、ディープレッドの溶液を得た。混合物を、ガラス基材上にドロップキャストして、そして乾燥させた。乾燥させたフィルムを、最大120℃の温度で、最大15分間硬化させた。四探針測定により決定されるように、得られたフィルムは、導電性であった。得られたポリマーフィルムは、可視スペクトルの全域を弱く且つ均一に吸収して、肉眼でグレーに見えた。
【0131】
[例6]
[ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)の電気化学合成及び特性化]
セレノロ[2,3−c]チオフェンを、5mMのモノマー及び100mMの電解質の濃度まで、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム/アセトニトリル溶液に溶解し、そして白金ボタン作用電極(2mm直径)、白金フラッグ対電極(1cm2)、及びAg/Ag+非水性基準電極(4.82V,対真空準位,フェロセン溶液を用いた較正により決定)を用いた3−電極配置を用いて、電気化学的に重合した。上記モノマーは、5.6eVの立ち上がりを伴い、低い酸化電位を示した。重合は、繰返しスキャンの際の、より低いレドックス電位で、一定間隔における電流密度の増加から明白である。
【0132】
上記ポリマー電子特性を、ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム内で100mMである、アセトニトリル溶液内で評価した。スキャン速度依存性を、25、50、100、200及び400mV/sのスキャン速度で実施した。上記ポリマーの還元工程に関するピーク電流が、スキャン速度を直線で概算することにより見出され、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)が、電極の表面に付着したことが示された。生成したポリマーを、サイクリックボルタンメトリーにより評価し、そして−4.1eVのHOMOを示した。光学バンドギャップを、0.9eVと見出した。示差パルスボルタンメトリーにより、−4.15eVのHOMOが生じた。
【0133】
[例7]
[PLED素子]
10〜15Ω/□の表面抵抗を有する3パターン化ITO基材を、洗浄剤、脱イオン水、メタノール、イソプロパノール、及びアセトンを伴う脱イオン水内で連続的に超音波処理する(それぞれ、5〜10分)ことにより清浄化した。ITO基材を、種々の溶媒の間で乾燥させた(この例で用いられる基材を、図1内の層1及び2に言及する。層1はガラスであり、そして層2はITOである)。次いで、ITO基材を、SPI Prep IIプラズマエッチングマシン内で、約10分間、酸素プラズマを用いて処理した。その後、ITO基材を、Laurell Model WS−400−N6PPスピナー上で、1500rpmにおいて、1分間、例3に由来する分散物を用いてスピンコーティングした(上記分散物は、例1において、層4に言及し、そして必要に応じて、性能を改良するために、図1において層3として表わされる1又は2以上の中間層材料を、層4が堆積される前に堆積させることができる)。次いで、ITO基材を、180℃で15分間アニールした。アニーリング後、約80nm厚のLUMATION Green 1304(Sumitomo Chemical Companyから供給される)を、トルエン溶液からスピンコーティングした(LUMATION Green 1304は、図1の層6に相当する。この層は、この例では、層4の上に直接堆積された。しかし、必要に応じて、一又は複数の中間層を、層4及び6の間に堆積し、調整された性能を得ることができる)。
【0134】
次いで、試料を、N2保護下で、ホットプレート上で、20分間、130℃で焼き付けた。次いで、試料を、アルゴン雰囲気グローブボックス内部に配置される減圧エバポレータのチャンバー内に移動した。5nm厚のBaの層を、約1.5Å/sの速度で、マスクを介して、1×10-7トル未満で、減圧堆積させ、そして120nm厚のAgの別の層を、約3.0〜4.0Å/sの堆積速度で、Ba層の頂部に堆積した(この層は、図1の層8に相当する)。次いで、素子を、アルゴングローブボックス内で、ガラスカバーフタ及びUV硬化性エポキシを用いて封入した。上記素子を、グローブボックスから取出し、次いでIV曲線及び輝度に関して評価した。上記素子は、5000cd/m2において12.5cd/Aの効率、2500cd/m2において12.6cd/Aの効率、及び1000cd/m2において12.3cd/Aの効率を示した。次いで、特性化の後、上記素子を、5000cd/m2の初期輝度において、DCライフタイム試験のためのCDT Eclipse PLED Lifetime Tester上に置いた。素子半減期は、上記素子の輝度が、5000cd/m2の初期値の50%、すなわち、25000cd/m2に達するためにかかる時間として規定される。素子半減期は、660hrであった。
【0135】
[例8]
[ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)の水中合成]
52mLの脱イオン水内の300mgのセレノロ[2,3−c]チオフェン及び18.26gの10.5重量%NAFION(商標)(EW1000)パーフルオロ化イオン交換樹脂水分散物を、100mLの1首フラスコに添加した。混合物を、600rpmで撹拌した。10mL脱イオン水に溶解された950mgのFe2(SO43を、上記反応フラスコに添加した。酸化重合を1時間超実施した。重合後、水性溶液を、イオン交換カラムで精製して、約2.0のpHを示す、ディープブラックの水性ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)/NAFION(商標)分散物を得た。未精製の分散物を、20分間超音波処理し、そして0.45μmのPVDFシリンジフィルターによりろ過した。導電性の表面を得るために、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)/NAFION(商標)混合物を、1,000rpmでガラス基材にスピンコーティングすることにより、透明なフィルムを調製した。
【0136】
[例9]
[ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン−2−イル−メタノール)の水中合成]
52mLの脱イオン水内の、300mgのセレノロ[2,3−c]チオフェン−2−イル−メタノール及び18.26gの10.5重量%NAFION(商標)(EW1000)パーフルオロ化イオン交換樹脂水分散物を、100mLの1首フラスコに添加した。混合物を、600rpmで撹拌した。10mLの脱イオン水に溶解された820mgのFe2(SO43を、上記反応フラスコに添加した。酸化重合を1時間超実施した。重合後、水性溶液を、イオン交換カラムで精製して、約2.0のpHを示す、ディープブラックの水性ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン−2−イル−メタノール)/NAFION(商標)分散物を得た。未精製の分散物を、20分間超音波処理し、そして0.45μmのPVDFシリンジフィルターによりろ過した。導電性の表面を得るために、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン−2−イル−メタノール)/NAFION(商標)混合物を、1,000rpmでガラス基材にスピンコーティングすることにより、透明なフィルムを調製した。
【0137】
[例10]
[ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン−2−イル−エタノール)の水中合成]
52mLの脱イオン水内の、300mgのセレノロ[2,3−c]チオフェン−2−イル−エタノール及び18.26gの10.5重量%NAFION(商標)(EW1000)パーフルオロ化イオン交換樹脂水分散物を、100mLの1首フラスコに添加した。混合物を、600rpmで撹拌した。10mLの脱イオン水に溶解された820mgのFe2(SO43を、上記反応フラスコに添加した。酸化重合を1時間超実施した。重合後、水性溶液を、イオン交換カラムで精製して、約2.0のpHを示す、ディープブラックの水性ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン−2−イル−エタノール)/NAFION(商標)分散物を得た。未精製の分散物を、20分間超音波処理し、そして0.45μmのPVDFシリンジフィルターによりろ過した。導電性の表面を得るために、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン−2−イル−エタノール)/NAFION(商標)混合物を、1,000rpmでガラス基材にスピンコーティングすることにより、透明なフィルムを調製した。
【0138】
本発明の開示を、一定の実施形態に関連して記載してきたが、本発明の範囲から外れることなく、種々の変更を行うことができ、均等物がそれらの要素を置換することができることが当業者に理解されるであろう。さらに、本発明の範囲から外れることなく、本発明の教示に特定の状況又は材料を適合させるために、多くの改良を行うことができる。従って、本発明が、本発明を実施するために企図されるベストモードとして開示される特定の実施形態に制限されず、本発明が、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むことを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の各ステップを含む導電性ポリマー組成物の生成方法;
下記を含む混合物を準備するステップ;
次の式:
【化1】

(式中、XはS又はSeであり、YはS又はSeであり、ここでX及びYの一方又は両方はSeであり、そしてRは置換基又はα位である)
を有する繰返し単位を含む化合物;及び
少なくとも1種のポリアニオン;
導電特性を有するポリマー材料を生成するために十分な時間及び十分な温度で、前記混合物を反応させるステップ。
【請求項2】
Rが、水素、水素の同位体、ヒドロキシル、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、並びに1又は2以上のスルホン酸、スルホン酸誘導体、リン酸、リン酸誘導体、カルボン酸、カルボン酸誘導体、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、エポキシ部分、及びそれらの組み合わせで置換されたアルキル及びフェニルから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1〜C12の第1級、第2級又は第3級アルキル基(F、Cl、Br、I又はCNにより単置換又は複数置換されていてもよく、そして1又は2以上の隣接しないCH2基が、O及び/又はS原子がお互いに直接結合しないような様式において、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されていてもよい)、フェニル及び置換されたフェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、カルボン酸、エステル及びスルホン酸基、パーフルオロ、SF5、F、並びにそれらの組み合わせ(R’及びR’’は、お互いに独立して、H、アリール又は1〜12個のC原子を有するアルキルである)から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアニオンが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリホスホン酸、ポリリン酸、フッ素化スルホン酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ビニルカルボン酸の、アクリレート又はスチレンとのコポリマー、ビニルスルホン酸の、アクリレート又はスチレンとのコポリマー、及びそれらの組み合わせのアニオンから成る群から選択されるアニオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアニオンが、約1,000〜約500,000の分子量の、アニオンを供給するポリアニオンを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が有機溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物が有機溶媒及び水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤が、鉄(III)塩、H22、2Cr27、アルカリパースルフェート、過硫酸アンモニウム、アルカリペルボラート、過マンガン酸カリウム、銅塩、ヨウ素、空気及び酸素から成る群から選択される化合物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
反応させるステップが、前記化合物を重合させるために、前記混合物を介して電流を供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物が、HCl、HNO3、H2SO4、H3PO4、HBr、HI、ドデシルベンゼンスルホン酸、ラウリルスルホン酸、カンファースルホン酸、有機酸色素、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ポリ(スチレンスルホン酸)、フッ素化スルホン酸ポリマー、スルホン酸のコポリマー、アジピン酸、アゼライン酸、シュウ酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メタクリル酸)及びカルボン酸のコポリマー、並びにそれらの組み合わせから成る群から選択されるドーパント化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物が、Na、K、Li、Ca、I2、PF6-、SbF6-及びFeCl3から成る群から選択されるドーパント化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリアニオンが、少なくとも1種のフッ素化スルホン酸ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)と、少なくとも1種のポリアニオンと、水及び有機溶媒から成る群から選択される少なくとも1つの要素とを含む組成物。
【請求項15】
前記ポリアニオンが、少なくとも1種のフッ素化スルホン酸ポリマーを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記有機溶媒が、少なくとも1種のアルコールを含む、請求項14に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−174243(P2010−174243A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−4948(P2010−4948)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】